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いくつかの駅をすぎて、自宅付近の駅に到着して。 車両を降りてホームに足を踏み入れると、少し前を、和之が歩いていた。 彼の姿に気づいた私は、少し驚いてしまったけれど。 和之は周囲を気にする様子もなく、歩いている。 私はその少し後ろを、歩いていた。 いつ声をかけてくるのかと、身構えながら。 けれど和之は、改札口をすぎても、駅を出ても、私に気づくことなく歩いている。 それは私のマンションの近くまで続いた。 てっきり、声をかけてくるものとばかり思っていたから、何も言ってこない和之が意外でならなかった。 だから、自然と、和之の背中を見ながら歩きつつ。 自分でも気づかないうちに、彼の後を追う形となっていた。 そうわかったのは、和之に聞かれてからだった。 あと十数メートルで私の自宅マンションに着くといった場所で、和之は足を止めた。 それから大きく息をついて肩を落とし、ゆっくりと振り向いてくる。 私も、和之につられて自然と足を止めていた。 周囲は道のところどころに外灯が灯るだけで、薄暗い闇に包まれている。 つと、静かな眼差しを向けた和之は「……なに?」とつぶやいた。「……え?」 聞かれた意味がわからなくて、問い返してしまう。 それを和之は、言葉をおぎなって再度、聞いてきた。「さっきから、後をついてきて。 何か用?」「ついて、きた?」 鸚鵡返しにつぶやく私に、和之は眉をひそめる。「距離が空いたと思ったら、速足で間を詰めてたろ? それも何度となく」 言われて、驚いた。 そうしているつもりは、全くなかったから。 何も言えずにいる私に、和之は口元に小さな笑みを浮かべた。「いい気味だって、笑いに来た?」「そんなつもりは……」 ……なかった。 口をつぐんだ私で、沈黙がおりたって。 それからしばらくしてから。「……大、丈夫?」 そう、伺うように。 そろりと和之に、たずねていた。
2008年06月30日
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昔と変わらず、律儀なこと。 ……と、内心、ため息をついてしまう。 そんな昔のこと、いまさら謝ることでもないだろう。 気になっていたなら、就職した直後に、そうした話をするものじゃない? そんなことを、考えつつ。 だけど実際、そんなことをされていたら困っただろうなとも、思っていた。 特にあの頃は、できるだけタカ兄と接触しないように心がけていたから。 それは……昔ほどひどくはないけれど、今も続行中だ。 だから、こうして車内に二人っきりという状況は、非常に心苦しい。 落ち着かない。 体がむずがゆくなりそうだった。 それからは、会社のこととか、最近あったできごととか。 そんな世間話をしていた。 タカ兄も、一番話したかったのは、昔のアルバイトの件と、今の会社に就職した件だったのだろう。 それ以上、重要と思えるような話はしてこなかった。 そうして家に着いて。 ついでだから、動物病院まで送っていく。 ……なんて言い出したタカ兄を「ほ、ほかにも寄るところ、あるから!」って、ウソをついて。 二人きりの空間継続を、どうにかしのいだ。「……そう?」と、残念そうにつぶやくタカ兄は……気のせいだろうか。気落ちしているように思えた。 その時の私は「これ以上、一緒に居るなんて耐えられない!」とその一心で断っていた。 走り出したタカ兄の車を見送って、どっと疲れがのしかかってきた体を引きずるように、うちに戻って。 玄関を開けると、小太郎が行儀よく、きちんと座って帰りを待っていた。 私に気づくと、座ったまま、緩やかにシッポを振っている。「ただいま。小太郎」 名前と正反対な体格の小太郎の頭を撫でると、気持ちよさそうに目をとじている。 小太郎は、もうお爺さんの年齢になっている。 昔は体格のわりに動きが俊敏だったけれど、寄る年波には勝てなくて。 今では何をするでもスローペースになっている。 そんな小太郎の頭を撫でながら、ふと、タカ兄の残念そうな顔を、思い出していた。「……もしかしたら、小太郎に会いたかったのかな」 小太郎は、私が幼少の頃、もらわれてきた子犬だ。 私の年からかんがみても、かなり高齢の犬になる。 もともと、わが松井家とタカ兄の久坂家は、昔は何の関係もなかった。 近所ってだけで、親しいわけでもないし、接点もなかった。 だいたい。 久坂の家って、このあたりの住宅街から、ちょっと浮いた存在でもあったから。 家の規模が。 ……まあ、なんというか。 桁違いだったから。 いったい、部屋がいくつあるんだって豪邸まがいの家だったし。 おまけに、どうしてこんな、ごくごくフツウの一般家庭が持ち家を構える界隈に、なぜ好き好んで、ドデカイ家を建てたんだって、みんな不思議がっていた。 そんな、周囲と距離を置いていた久坂家が。「その他大勢」にくくられてもおかしくない「松井家」との付き合いが始まったのが。 幼いタカ兄が、小太郎にほれ込んだのが、きっかけだった。
2008年06月29日
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しん、と、周囲に沈黙が降りたって、張り詰めた緊張に包まれた。 その中心にいる和之と彼女は、そんな周囲の状況に気づいているだろう。 けれど、彼女は和之を険しい眼差しでにらみ付け、和之はその視線を静かに見つめ返していた。 そうしてしばらく、互いが互いを見た後。 彼女は荒々しい素振りで和之に背を向けると、激しい足取りでホームを後にして、改札口へと向かっていった。 そんな彼女の背を、和之は静かに見ていた。 沈黙に包まれていた周囲から、静かなざわめきが生じ始めている。 そんな周囲に、和之が一瞥をくれると、噂話をしていた人はバツが悪そうな表情をのぞかせて口をつぐみ、視線をそらせていた。 私は、ぼうぜんと、和之を見ていた。 そうすることしか、できなかった。 何がどうなっているのか、わからないから。 ふと、脳裏をかすめたのは、二人の関係に対して、和之が彼女に何か言ったのではないのかということ。 けれどそれにしては、彼女の嫌悪、怒りが激しすぎる。 曖昧だった二人の関係を、明確にしただけで、あれだけ感情が高まるのだろうか。 困惑を胸に、和之を見ていると、周囲に目を向けた彼と、つと視線があった。 目が合って、私も和之も、互いに軽く目を見張った。 和之は、私がいるとは思っていなかったのだろう。 バツが悪いのか、すいっと、視線を反らせただけで、今日は側にくることも、話しかけてくることもなかった。 すぐに電車が到着して、それぞれ、目の前の車両に乗り込んで。 和之が乗った車両より、一つ後ろの車両に、私は乗車した。 そうして自宅までの行程を揺られながら。 向こうの駅についてからのことを、考えていた。 これまでの経緯を考えたら。 多分……向こうの駅で、声をかけてくるだろうから。
2008年06月29日
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それからは、意図的に帰宅時間を替えて――と言うより、電車の乗車時刻をずらしたためか、和之と遭遇することはなかった。 時間をずらすのも、いつもの電車の時刻より、30分早くしたり、1時間遅らせたりと、同じ時に偏らないように気をつけていた。 ……わかっている。 逃げて、いるのだと。 和之から、彼から。 どうして私がそんな気遣いをしなければならないの。と、腹立たしくもあったけれど。 じゃあ逆に。いつもの時刻の電車で、和之と遭遇して。 平然としていられるかと聞かれたら……口をつぐむしかない。 ホント言うと……怖い。 また、いつかのように、和之に求められるような、状況に陥ったら。 その手を、振り払えるのか。 断固として、拒否できるのか。 ……自信が、なかった。 っ、じゃなくて! うつむきそうになる心と顔を、「えいっ」と意気込んで上を向かせて。 拳を握り締めて「また何かしてこようとしたら、殴りつけよう!」と、後で考えると、結構理不尽なことを考えていた。 けど、この時は本気だった。 それくらい、和之に流されそうになっている自分を……感じていたから。 そうして、気概を奮い立たせた、時だった。 パンっ! と、小気味よく、甲高い音が駅のホームに響いたのは。「いい音」だけれど。 自分の身に起きたわけでもないのに、痛みを覚えてしまう。 耳にした音に、反射的に肩をすくめて「……痛そ~」と胸のうちでこぼしていた。 そうしてそろりと、音の原点をうかがい見て。 え。と。 驚いてしまう。 はたかれた小気味のいい音で、周辺から視線を集めている、その中心には。 赤くなった頬を、ぬぐうようにこすった和之と。 いつかの、白いコートの女性が。 和之の頬をはたいた格好で。 上気して真っ赤になった頬で。 和之を、にらみつけていた。
2008年06月29日
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ようやく!! ネット環境が整いました!! やった!! 早いぞ、ADSL!!(笑) と、言うのも、引越し先からNTTの営業所が見えるという、近場だっていうのが、通信速度早い、一番の要因なんですが。 ネットなくても、大丈夫っちゃ大丈夫なんですが。 何かこう、したいことができなくて、やきもき度合いが、すんごく高かったです。 ちょっとパソコンの調子が悪そうなので、ムリをしすぎない程度で更新していきます。 問題は。 毎日更新してたペースが、すぐ取り戻せるかどうかなんですけどね。(苦笑)
2008年06月28日
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はす向かい~。の、最新更新分に、誤字があります。わかってますが、PCから繋げないので、また後日訂正します。
2008年06月22日
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おじさんの性格を考えれば、私に話をもちかける可能性が多分にあったと気づくべきだったと、タカ兄は悔やんでいた。 そして話がアルバイトの一件で終わればよかったのだろうけれど、よもや就職まで尾を引くとは思わなかったそうだ。 そうしてタカ兄は「本当に、悪かった」と暗く沈んだ声でつぶやいた。 そんなふうにタカ兄は自責の念にかられていたけれど。 私としては、特に感慨はなかった。 ただ「ああ、そういうことだったのか」って、納得の方が大きかっただけ。 おじさんの性格は私もある程度、把握してる。 私がタカ兄と同じ状況に置かれたとしても、同じことを何気なく口にしただろう。 そんなに気に病む必要、ないのに。 むしろ、あのおじさんの行動を先読みしようって方が無理な話だ。 タカ兄が話したいことって、そのことだったのかって、安堵を覚えつつ「そんな、気にしなくても」苦笑交じりに告げていた。「おかげでいいトコ就職できたんだから。 私としては助かったから」 私の言葉に「え」とタカ兄は驚いていた。「けど、ソラ、語学を生かせるとこに行きたいって……。 旅行代理店、狙ってたんじゃ……?」 そのタカ兄の言葉に、私の方が驚いてしまう。 それは留学する前。 ぽつりと、世間話のような気軽さでこぼした本音だ。 どうして、覚えているの。 ほんのわずか、体が強張ってしまうのを感じながら、また一つ、私の中で納得の色が濃くなった。 そのことを覚えているから。 だから余計、気に病んでいたのだと。 私は少し肩をすくめて、おどけてみせた。「実態を知らない子供の夢物語よ。 私、旅行プラン組んだりするの、苦手だから。 自分のならいざ知らず、初めて顔を合わせるようなお客さんのは、ね。 今も、結構語学は生かせてるよ? そっち関係の書類、結構任されるし」 これは本当の話だ。 働き出して知った話だけれど、友達の中に、旅行代理店に勤めてる子がいて。 その子から、仕事の内容を聞く限り「私には向いてない」と思ったものだ。 添乗員として引率なんて、ムリだもの。 それに。 今の部署では、主任の次に英文に明るいのが私だから。 主任に頼みにくい分、私にお鉢が回ってくる。 そして主任がはずせ内容があるとき。 私が代役として通訳を務めるから。 秘書課に配属となって、初めに感じたのは。 今の部署には、そこそこ英文を訳せても、辞書の力を借りずに、即、訳文を使えるほど長けた人はいないってこと。 アルバイト当初の私のように、日常会話はドンと来い。でも、専門用語がちらほらと混じってしまうと、それだけで尻込みしてしまう。 私だって堪能って、わけじゃない。 こればかりは、場数をこなしたカンなるものがものをいうから。 その点、私はアルバイトで経験している分、アルバイトが終わってからも、専門用語とか気になって、独自で単語覚えをしていたから。 まさか、こんなふうに役に立つとは思わなかったけど。 タカ兄は運転をしつつ、チラチラと私を伺い見ていた。 そうして私が本心を告げていると感じると「……そう」と幾分ほっとしたように、息をついていた。
2008年06月22日
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◇◇ ◇◇ それから和之は、残っていたコーヒーを飲みきると部屋をあとにした。 一人きりになった部屋で。 和之が部屋を出て玄関のドアを閉めてから、ほう、と我知らず、吐息がこぼれてしまう。 意識したわけではないけれど……自分でも知らないうちに緊張していたようだった。 あとになって、よくよく考えれると。 いろいろと腑に落ちないところがあって、その日の出来事を思い返すたびに、自然と眉を寄せてしまう。 和之が何をしたかったのかが、イマイチ、わからなかった。 私の身辺調査? けど、何のため? もう、何の関わりもないのに――。 その、答えに行き着くと。 寄せた眉がさらに間隔を縮めて、眉間に皺が生じてしまう。 ふと、思い出すのはいつかの和之の腕の中。 触れた唇。 そして、告げられた言葉。 都合のいい関係を、暗に匂わせられているようで……何ともいえないわだかまりが胸の奥に生じた。
2008年06月22日
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連日、雨続きでまいってます。 今年、梅雨にしても雨、多すぎ。 現在、未だ無線でつないでいるので、雨が降ると、回線の繋がりが悪いんですよね……。 表示が遅かったり、タイムアウトもしばしば。でした。 昨日も更新しようとしたけれど、管理画面にすら繋がらない……。 もしくは、回線選状態悪すぎで、更新なんてムリムリムリ。 ……な、現状でした。 久々ですが、更新しようと考えてます。 美容室に行く予定なので、それまでに間にあえば。 ですが。
2008年06月22日
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ネット環境が整うまでに、もう少しかかりそうです。 今は実家から更新してます。 今週中にはできる予定となってます。 早く引っ越し先でもネットができるようになればな。
2008年06月16日
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依然として、痛んでます。 おとといは実家に泊まって、その次の日は引越し先に戻ったんですが。 それからが悪かった……。 夜、痛くて何度も目が覚めて。 歯でなく頭痛です。 で、どうやら歯ぎしりでなく、グッと歯を食いしばって寝ているようなんです、私。 それで炎症を治めようとしているところへ、いらぬ負担をかけてしまっていて。 ピーク時ほどではありませんが、ズキズキと頭痛が続いて参ってます。 くうううう~~~。(><) 薬飲んでも効かないってのがきついですね……。 本当はマウスピースしたらいいんでしょうが……市販で売ってるもの?? 個人の歯形に合わせて作るから、結構なお値段したような記憶が……。 昨日は、ハンカチを口に含んで(上下の歯ではさむように)寝たら、歯に力をいれて寝るのは防げたようなので、しばらくはこれで様子みるつもりです。 で、ここ一週間ほど、まともに食事ができてなかったせいで、一週間で2キロ近く、体重落ちてました。 嬉しいんですけど。 なんか、素直に喜べません。(苦笑)
2008年06月08日
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現在、更新中の「冷えた指」。 今回(23)で、他ブログ掲載分が終わりました。 これからは、本当の意味での更新になっていきます。 引越し先のネット事情が整えば、サクサク更新できるんですけどねぇ……。 今は不定期でないと無理かな。 中旬以降は整う予定です。 それまで、お待ちください。m(_ _)m
2008年06月07日
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身を強張らせていると、クッ、と和之は低い声で笑った。 喉にこもるその声は、明るいものでなく、皮肉を含んでいるように聞こえる。「……なんてな。 こんなことになりかねないんだ。 男を部屋に上げるときは、用心したほうがいいと思うけど」 そう言いながら、つかんでいた腕から指をそっとはずした。 戒めから逃れた腕を自分のそばに戻して、互いを互いでかばうように胴にからませながら、無性に悔しくてしかたなかった。 和之の物言いは。 私が無防備すぎると指摘しているように聞こえてならない。 私だって。 よく知りもしない人を部屋にあげたりなんてしない。 理由もなく、部屋に招いたりしない。 ただ、今回は和之だったから。 たとえ昔の関係であっても、その性格をよく知っている彼だったから。 無理強いなんて、することないと思っていた彼だったから。 迷いを感じつつも部屋に招いたのだ。 そんな葛藤があったことさえ、和之はなかったように話している。 人の気持ちも知らないで。 と、悔しくてならなった。 だいたい。「……そっちが、言い張ったんじゃない」 部屋に入れるようにと。 そうしなければ、私が知りたいことを話してくれそうになかったから。 だから部屋にまねいたのだ。 それだけの言葉だったけれど、和之は私の意をくんでいた。「交換条件のこと?」 つぶやく声にもまた、低い笑いがこもっている。「それでも志穂なら。 部屋にあげることなかったよ。 そんな条件、のむくらいなら知らなくていい。 ……とか言ってさ。 だから少し、期待、したところもあるけど」「なにバカなこと――」 口元だけで笑う笑みを浮かべながら告げる和之に。 間髪いれずに否定したけれど。 和之への想いを見透かされたようで。 どきりと鼓動がはねていた。
2008年06月07日
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告知を。 アルファポリスさんのサイトに「羽衣」という作品を、公開しています。 以前から、挑戦してみたいと思ってたものです。 サイトへはこちらから。 「羽衣」 小説の概要は。「天狗の鼻をとってきた者に、家督をゆずろう」 室町後期。九州の奥地、出水。 統領、遠江義高は3人の子にそう告げた――。 平安、室町、そして現代。時を隔てつつも繋がりのある物語。 ほんのりファンタジーテイスト。 こういった感じのものです。 歴史風だけれど、凝り固まった感じではないようにしています。 恋愛ベース……なんですけどねぇ。(苦笑) 今回登録している「ドリームブックスクラブ」は。 公開している作品が気にいっていただければ「支援」という形で「出資」「購入予約」「携帯投票」という方法が取れます。 で、規定のポイントに到達すれば、審議のあと「出版」となります。
2008年06月07日
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保管庫更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。
2008年06月06日
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滑り出した車の中。 私は助手席に座って、シートベルトを締めて。 慣れない座席に、身の置き所のなさを感じていると「悪いね」とタカ兄が声をかけてきた。「急に、ムリ言って」「……いえ……」 か細い声でつぶやくと、タカ兄は苦笑をもらした。「ここではいいよ。 いつもどおりで。 変に気を張らなくていいから。 ……そっちのほうが、俺もいいし」 ……本当は、少し迷ったけれど。 変な問答になるよりはと考えて、素直にうなずいていた。 ここで「イヤです」なんて反論して、話がこじれるのは避けたかったから。 それより。 こうしてムリを押して接触をはかってくる、タカ兄の話ってなんだろう? それは私が聞くより先に、タカ兄が切り出してくれた。「ホントは……前から謝りたかったんだけど……。 ソラには悪いことをしたと、今でも後悔してる」 ………………。 言いにくそうに、切り出したタカ兄の言葉に。 私は目を点にして。 ……何のことか、まったく話が見えてこない。「…………。 ……なんのこと?」 そう私が聞いて、タカ兄も「ああ、そうか」って気づいたほど。 それは私には、予想だにしていなかったことだった。「親父がムリ言ったんだろ? 『うちの会社に来ればいい』って」「……ムリ、って、いうか……。 うちの親が安請けあいしたって、言うか……」「……やっぱり」と、タカ兄は息をついた。 車は順調に我が家への道をたどっている。 獣医の二宮先生のところへは、会社からだと、一度家の前を通るルートになってしまう。 私は「……『やっぱり』?」とタカ兄の声を反芻して、首をかしげた。 やっぱりって……どういうこと? それからタカ兄は言いにくそうに、苦いものを噛んでるような表情で言葉を続けた。「前、親父からアルバイト、もちかけられたことあるだろ」「……うん」「悪い。 それ、俺のせい」「…………え?」 意味が。 わかんなくて、私は首をかしげるばかり。「ちょうどその時、親父通訳してくれそうな人材、さがしててさ。 俺が深く考えずに『ソラなら留学してたけど』って話したから。 それでソラに白羽の矢がたったみたいで」 いつものソラって呼び名に戻っているのに、少しの安堵と、少しの胸の高鳴りを覚えつつ。 いまだ事情が飲み込めなくて、私は「……え?」と聞き返すことしかできなかった。 それが、どう繋がるかがわからない。 それからタカ兄が話してくれた事情によると。 私が今の会社に就職するはめになった一番の原因は、タカ兄の一言にあると、本人は思っているらしい。
2008年06月06日
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「言ったろ?『復讐』だって。 それを『聞きたいから』ってだけで、明かすと思う? そんな危険をおかすマネ、するわけなだろ」「危険って……そんな……」 間近にいる和之から身を引くように、後方に体を傾けつつ、私はそうつぶやいていた。 その言葉を聞いて、和之の口が皮肉げにゆがんだ。「ほらな。 わかってない」 私は何も言えなくて、口をつぐむしかなかった。 和之は変わらず、身を乗り出せば触れ合えるほど、間近にいる。「『復讐』の意味、よく考えたらわかりそうなものだけど。 仕返しを、考えてる相手にさ。 情報が漏れるような危険、するわけないだろ。 話すのは協力するときか――」 言って、和之は顔をよせて小声でささやいた。「―― それなりの見返りが、あるときだけだよ」 つぶやいた吐息が、頬にふれた。 それほど間近に、和之は顔を寄せてきた。 反射的に体を傾けて距離をとろうとして……バランスがとれなくて、後方に手をついて支えなけらばならなくなった。「ちょっと……離れて」 息が触れ合いそうなほど近くにいる和之に、顔をそむけて。 片腕で体を支えつつ、もう一つの腕で和之の胸に手をあて、押し戻そうとしたけれど。 その腕を、つかまれた。 ぎょっとして和之を見ると、さっきよりもさらに近距離にいて息を呑んでしまった。 息だけでなく、頬も、鼻も、唇も。 触れそうなほど近い。 それだけだって驚いているのに、さらに距離を縮めようとする。 つかまれた腕を振り払おうとしたけれど。 強くつかまれているわけでもないのに、腕は離れなかった。「な……何もしないって言ったじゃない!」「信じたの?」 苦しまぎれに叫んだ言葉は、和之に一蹴された。 その言葉に驚くと同時に、衝撃を受けていた。 前の和之なら。 私の知ってる和之なら。 言ったことは守ってくれた。 こんな約束をたがえるようなこと、絶対しなかったのに。
2008年06月06日
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しばらくは、実家と引越し先を行ったり来たり日々だと思ってましたが。 向こうでそろえるものが多くって、結局、あちらに泊り込んでる日々です。 で、おとといからは歯痛で、もだえてました。 歯が痛いってわけじゃないんです。 歯より、頭痛がひどくって。 薬飲んでも効かないし、昨日はピークを迎えて、あまりの痛みに、気が狂いそうでした。(涙) 行きつけの歯医者で頼んでも「予約がいっぱいで……」と断られたし。 まあ、その時は「一日くらいもつか」と思ったのが、甘かった……。 そんなわけで、ここ三日、まともに考え事すらできてません。 でもって、おとといの痛みピーク時に、お客さんが来て。 話かけてくるんだけれど、こっちは笑顔で相槌打ってるんだけれど、内容なんてまったく頭に入ってませんでした。ごめんなさい。 で、今日、診てもらったら。 かみ合わせの問題で、歯茎が炎症起こして、歯が浮いてる状態だったそうです。 虫歯ではなかったです。 ぐらついてたので(銀歯)、それを動かないように調整してもらって、それで不思議と痛みは治まりました。 まだ炎症はあるので、完全に痛みがとれたわけではないんですが、比べ物にならないくらい、楽になりました。 やっぱ専門家ってすごいなぁ。 話し変わって。 引越し先のネットは、中旬以降、使える予定なので、それまでは更新があまりできそうにありません。 実家から車で30分のところなんですけど、昨今のガソリン事情じゃあ、ねぇ……。 今日は実家に泊まる予定なので、これからチョコチョコ更新します。 あ、あと、ちょっとしたお知らせもありますので。 お知らせというより、告知かな? 以前から試してみたかったものがあったので。
2008年06月06日
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私が物心ついたころから、タカ兄はよく家に遊びに来ていた。 家に泊まることもしばしば。 その目当ては小太郎だった。 私がまだ、幼稚園に入る前だったから。 タカ兄は、小学校低学年ってところだったかな。 そんな小太郎の事情だから。 今回は勘弁してくれないかな。 そう、含ませての言葉だったけど。 タカ兄も、わかってくれたけど。「そう」 タカ兄はそうつぶやくと、腕時計で時間を確認した。「だったら送るよ。病院まで」「…………。 …………え?」 タカ兄が何を言ってるのか、わからなかった。 どうして、そういう話になるの? タカ兄は私の反応にまるで気づいていないようで。「二宮先生のところだろ?」と言ってくる。 反射的にうなずく私を見て、先に歩き出していた。 話の展開についていけない私は、中途半端になった話のために、タカ兄のあとについていくことになって。「お……送っていくって……?」 どういうこと? タカ兄の後に続きながら、まだ社内だから、他の社員の目があるから。 砕けた言葉になりすぎないように、注意しながら、小声でそう問いかけると。 タカ兄はこともなげにこう言ってきた。「帰るついでに、病院まで送るよ」「そ……そんな!」 困る。 いろんな意味で困る。「いいです!」と、慌てて告げると、タカ兄は私が遠慮していると思ったらしい。「気にすることないよ。ついでだから。 家から近いし」 それは知ってるけど! けど、そうじゃなくて!「ほんっっっとに!! 結構ですから!!」「いいっていいって」 だから! こっちはよくないっての!! 何度も声を張り上げて断ったけれど。 タカ兄の足は止まることなくて。 必然的、私も後をついていくことになって。 ……結局。 駐車場まで来てしまった。 話しながらタカ兄のあとを追ってたものだから、息があがってしまって。 ゼーゼーと荒い呼吸の私に、タカ兄は苦笑していた。 ……なんで笑うの、そこで。 少しむっとしていると、私の感情に気づいたのだろう。「ごめん」と一言、タカ兄は謝った。「強引なのはわかってる。 ……どうしても、早いうちに話がしておきたくてね」「……話?」「そう。 病院までの間でいいから。 時間、もらえないか?」 ホントは、イヤだったけど。 けどそこまでいうタカ兄の頼みを、断りきれなくて。 私は不承不承、うなずくしかなかった。
2008年06月01日
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――松井さん そう呼んだタカ兄の声が、耳の奥でこだましている。 いつもタカ兄は、私のことを「ソラ」と呼んでいる。 私だけが彼を「タカ兄」と呼ぶように、彼だけが私を「ソラ」と呼んでいる。 特に示し合わせたわけでもない。 暗黙の了解として成り立った、互いの専売特許。 なのに、さっきタカ兄は。 私を姓で呼んだ。 だから正直、彼が私を呼んでいるのだと認識するまでに、数秒のタイムラグが生じた。 呼ばれたのが自分だとわかっているけれど、けど、私を呼んだのがタカ兄だと、思えなくて。 ……信じられなくて。 そう、思いたくなくて。 今一番、会いたくない人だったから。 だから余計、私の方へ足を進めてくる人が誰か、認めたくなかった。 私に声をかけたのだと、思いたくなかった。 私は、その場に凍りついたように立ち尽くして。 目を見張って、まじまじと側に来た彼を見上げていた。 ……多分すごく、顔が強張っていたと思う。 彼はそれを、私の本心とは違うように解釈した。 声をなくして立ち尽くす私に、口元だけの苦笑を浮かべている。「……驚いた? 俺がここにいて」 ぎこちなくうなずく私に、タカ兄は苦笑を深める。「だろうな。 急だったから。 こっちに来ることになったの。 前もって話す暇もなかったし。 ……俺も、こんな急にことが進むとは思ってなかったから」 私が驚いたのは、彼がこの会社にいるとは思ってなかったから。 ……そう、判断したらしい。 本当の理由は違うけど。 私はタカ兄の勘違いに便乗して、うなずいていた。「……さっき、主任から……話を聞いたばかりで……。 まさか……いるなんて……」 私に、声をかけるなんて、思ってなかった……。 続けようとした言葉を飲み込むと、タカ兄は勘違いして「……だろうな」とつぶやいた。 そして「ところで」と話題を変えてくる。「今からちょっと、どうかな」「え?」「話を……ちょっとね」 困った。 今日はこれから予定がある。 ……と言っても、たいしたことでは、ないんだけど。 どうしたものかと、思案していると、察したタカ兄が「予定、あるの?」と聞いてきた。 話すのを、ためらったけど。 タカ兄なら知ってるから。 そう、思って話すことにした。「これから小太郎の検査結果を聞きに行くことに、なってて……」 小太郎というのは、我が家で飼っているセントバーナードのこと。 最近、調子が悪いのか、食が細くなっていた。 念のために、かかりつけの獣医さんのところで、検査してもらっていた。 簡単な検査では、異常が見つからなかったから、ちょっと詳しい検査をすることになって。 これから結果を聞きにいくところだった。 結果を聞くだけだから、先延ばしにしてもいいけど……。 逡巡する私の様子で、タカ兄は事情がわかったようだった。 古くからの近所づきあいがある仲だから。 タカ兄は小太郎のことも知っている。 ……むしろ、一時期は周囲が驚くほど夢中になっていた。
2008年06月01日
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保管庫、久々に更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。 できれば。 これから連日更新していきたいです……。(願望)
2008年06月01日
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……とまでは行かないんですが。 とりあえず、入居しました。 ……何だかいろいろ大変です。 必要最低限で済ましたいんですが、これがなかなか……。 結構、買うもの、ありますねぇ……。 近いっちゃ、近いので、しばらく自宅と行ったり来たりの日々になりそうです。 ……向こうでネットできるようになるの、7月からだし……。
2008年06月01日
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「コーヒー、飲む? 飲むなら一緒につくるけど」「いらない」 意地で、そう返事をしていた。 なんとなく、おもしろくなかったから。「そう?」 と、だけ答えた和之は、自分の分をつくって、もといた場所に座りなおす。 手にしたコーヒーに一口つけたあと、安堵するような息をついた。「で。 復讐って、なに? どういうこと?」 席に戻るなり私が聞いても、和之はあいまいな相槌をうつだけで、答えようとしない。 気になるのと、意地になっていたこともあって、私は何度も何度も、根気強く聞いていた。 最後には和之が根負けして、ため息をおとすほどに。「話してもいいけど――いいの?」「……なにが」「聞いて、平気でいられる? 後悔しない?」 そう告げる眼差しは、まっすぐに私をとらえていた。 冗談じみた様子もなければ、からかいを含んだ様子もない。 本気で、そう思って言っているんだ。 私は軽く、息をのんでしまった。 深刻な様相に、戸惑いをきんじえなかったし、和之の眼差しにのまれてもいた。「……話すって、言ったじゃない。 部屋でなら話すって、だから――」 こうして部屋に、呼んだのに。「話したよ。理由については。 それ以上話すとは――すべてを話すとは、言ってない」「そんな――、中途半端なことでわかるわけないじゃない」「『話さない』とは言ってないよ。 だから聞いてる。 『話してもいいのか』って」「……そんなこと、いちいち伺いをたてなくったって……」「聞いてからのほうがいいと思ったから、言ってるんだけど。 俺も考えなしに……からかってこんなこと、言ってるんじゃないよ。 『聞かなきゃよかった』ってことも、世の中にはあるだろ。 志穂だったら、そう思いそうなことだから、聞いてるんだけど」 そんなふうに言われると、私も言葉につまって、それ以上、何もいえなくなる。 どう答えたらいいのかわからなくて、自然とうつむいていた。 和之は確信に触れずに、あいまいに告げるから、どういった内容かは、はっきりわからないけど。 彼がそう言うのだから、私はおそらく、聞いたら後悔する。 それは確かだと、思えた。「それでも聞きたいなら、話すけど。 ……まあ、そのときは協力してもらうけどね」「協力って――」 話を聞いただけで、そんなこと……。 そう、思って顔をあげたときには、目の前に和之がいて。 私は驚いて、息と、言葉を、飲み込んでいた。
2008年06月01日
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