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2011/03/28
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カテゴリ: 災害
今日の1通目
東電、8月の電力供給力は約4600万キロワット 最大需要に約900万キロワット不足


CNN、ロイターも流したトンデモ情報

東日本大震災が発生してから、もう2週間近くが経とうとしている。アメリカに住む私も、多くの日本人と同じように、地震と津波、そして原発に至るまで、日本が直面しているこの危機的状況から目を離すことができなかった。

一報を聞いて、息を飲んでから一週間、寝ている時を除けば、ほぼインターネットの前に張り付いた。刻一刻と変わる被害状況を、各新聞や通信社のウェブサイトで確認して回りながら、NHKが震災のために特別配信していたリアルタイム放送をネットで流しっぱなしにした。

米国メディアに目を向けても、状況は同じだった。米国のニュース番組やサイトが、日本で起きた震災の報道で埋め尽くされた。日本の出来事が、これほど大きく扱われ続けたことが過去にあっただろうか。

その報道は、日米ともに地震と津波を伝えることから始まった。最初は地震のパワーやメカニズムの解説に始まって、時間を追うごとに被害の全容が明らかになり、変わり果ててしまった被災地を映し出した。

この頃、世界中から記者たちが現地に入り、被災者の様子も詳細に伝えられた。

妻子の遺体を体育館で発見して泣き崩れる男性や、買い物に出かけた先で津波が起こり、家で寝かしつけていた娘を遺体で発見した母親の話…。

被災地の惨状を伝える内容は、こちら米国でも大量に報じられ、読めば読むほど心が折れそうになった。それは、米国人の心も動かした。丁寧に取材された報道から、震災の様子が世界中に伝わり、日本に対する注目度が一気に高まった。

ところが、ここから米国をはじめとした世界の報道が、大きく軌道を外れていく。

次々と外国人記者たちから「ニッポンの震災の凄惨さ」が報じられた。

当初は好意的な内容も多かった。これだけ大変な状況で、暴動が起こらない。水の配給に数時間じっと待ち、配給を受けられなくても文句を言わずに帰っていく。避難所で互いに助け合う日本人が報じられ、その秩序を乱さない国民性が、海外メディアによって賞賛された。

こうしたことは、国内メディアにとっては当たり前のことで、きっと日本人の良さとして気づいて報じることはなかっただろう。

だが、海外メディアの冷静な報道は、ここまでだった。

「東京はゴーストタウンになった」

そこから地震と津波の報道が、東京電力の福島原発への「恐怖」にはっきりと切り替わった。

福島第一原発からの爆発音や放射性物質漏れの速報が流れた15日、国民の間にも不安が広がった。爆発音が起こって2時間も過ぎてから東京電力の会見が開かれ、しかも十分な説明がなかった。何が起こったのか把握できなかったことが、不信感につながった。

しかし、この状況に震え上がったのは、海外メディアだった。

ニューヨークタイムズ電子版3月16日付けの報道では、こんな記事が出た。

「U.S. Calls Radiation " Extremely High;" Sees Japan Nuclear Crisis Worsening」(放射線が極めて高く、日本の原発危機が深刻化していると米国は認識)。この記事の中で、米国原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤッコ氏が福島第一原発に対する米国の見解を述べている。要約するとこうなる。

「原発危機の脅威は日本政府の認識よりもはるかに暗澹としたものだ。米国人には、日本政府が発表している距離よりも、さらに遠くに避難するようにと忠告した。特に4号機のプールにはほとんど、もしくは全く水がない状態であり、そこで露出されたままになっている燃料棒から、放射能が外に放出されている可能性が高い」

この記事が、ニューヨークタイムズ電子版のトップ画面に、大きく特報として掲載された。写真には、建屋が吹き飛び、白煙を上げている原発の写真が使われていた。

「日本政府は信用できない」「東電は完全な隠蔽体質」。この後、米国人記者が明らかに、こうした強い思いを持って報じ始めることになる。米国の報道は、自国の専門家に話を聞いて、事態を解明しようとする。日米の見識の違いについて、どちらが正解に近いのか、私には判断がつかない。しかし、ここから海外報道は、日本の報道と大きくかけ離れていった。そして、人々を混乱に巻き込んだことは事実だ。

現地に派遣された外国人レポーターやキャスターの言葉が、だんだんセンセーショナルなものに変わっていった。

16日付けのCNNのウェブサイトには、「After disasters comes the exodus from Tokyo」(災害が起こり、東京から大量脱出)という記事が掲載された。

Exodusは、「大量の脱出」「集団脱出」という意味だ。東京在住者は分かると思うが、西日本などに避難する人がいるとはいえ、現在の東京を表現する言葉としては、明らかにそぐわない。海外メディアの報道が、ヒステリックでセンセーショナルなものに変わってきた。

米国でも買い占め騒ぎに

その一方で、海外メディアに冷静な報道を呼びかけ、センセーショナリズムを批判する動きがあることも明記しておく。

津波と原発報道に不信感を抱いた人たちが立ち上げたのが「Journalist Wall of Shame(ジャーナリスト、恥の壁)」だ。海外メディアが報じたセンセーショナリズムで間違った報道を指摘するためのサイトだ。投稿している人の多くが日本に住む外国人であり、英語やスペイン語、フランス語など、多くの言語でニュースの「煽り」を報告している。

ウェブサイトにある指摘の一部を紹介する。

英The Sun紙は17日付けで、「Starving Brit Keely: My nightmare trapped in city of ghosts -Tokyo」(食べる物も無い、英国人ケリーさんからの報告:ゴーストタウン東京に閉じ込められた私の悪夢)という記事を掲載した。

これは、東京都練馬区に住む一般の英国人女性、ケリーさんからのレポートとして掲載された記事。例えば、こんな一節がある。

「今、私はゴーストタウンとなった街の、アパートの3階に閉じ込められています。窓から外をのぞいても、いつもは人で溢れ帰っているはずの場所に、すっかり人かげがありません。街はゾンビ映画「28 days later」の中の、ロンドンみたいな状況です。私たちは東京の都心に住んでいますが、街は全く動いていません」

また、3月17日付けの米国版CNNテレビのヘッドラインバナーで「原発の冷却に失敗。放射能が(翌日)金曜日に米国に到達する可能性あり」と流れたことへの批判もある。

CNNはかつての湾岸戦争報道などで評価を高め、米国では信用あるメディアの1つだ。

「ジャーナリスト、恥の壁」にレポートされている記事の中には、大衆紙であるThe Sunや、煽るような報道を批判されることがあるFoxニュースなども含まれている。それだけならば、一笑に付すこともできる。しかし残念ながらCNNやロイターといった信頼性の高いメディアが報じた「煽り」まで指摘されており、海外メディアがいかに混乱しているかが見て取れる。

さらに悪い事に、そうした過激な報道が視聴者にも伝わり、パニックを引き起こしている。

「風に乗って、日本からの放射能が米国西海岸にやってくる」という報道はまたたく間に米国に広まり、恐怖におびえる国民に対してオバマ大統領が「福島第一の漏えい事故による放射性物質汚染は、アメリカの領土を脅かすほどではない」とコメントしなければならなかった。各紙も、専門家が「心配はすることはない」という見解を示した。

それでも、パニックに陥った米国人は、放射能による被曝の予防になるとして、ヨウ化カリウムの買い占めに走っている。

日本を知らないアメリカのスター記者たち

米国民の平静を取り戻すには、政府や専門家が正確な情報を流し続けるしかない。海外メディアは、日本から正確な情報がなかなか入らず、困惑と恐怖からセンセーショナルな報道に走ってしまった面がある。日本政府や東電にも、迅速かつ詳細な情報開示が求められる。

それでも、海外メディアは見直すべきことが多い。日本で取材をしている外国人ジャーナリストたちは明らかに準備不足だった。このことが、事実とかけ離れた報道になってしまった大きな原因だと見られる。

日本の被災地に現地入りしたのに、日本語を理解できない記者が多かった。そればかりか、日本の文化や日常生活など、独自の事情をほとんど理解していないと見られる。それでは、各メディアがいくらスター記者を送り込んでも、身のある取材は難しい。日本の役所や企業の取材対応の特徴を知らなければ、はっきりしない独特のものの言い回しから情報を正確に理解することは難しい。

実際に、海外メディアには原発で作業する職員を「フクシマ・フィフティーズ」と賞賛する報道もあった。しかし、実際は多くの作業員が交代で作業に取り組んでいる。アメリカで起きたことの報道で、日本のメディアが苦戦することと同じように、今回の震災報道では、米国のスター記者たちでも日本のメディアに歯が立たないということも浮き彫りになった。

こうして見てみると、東電と日本政府が「信用できる情報」を迅速に出していれば、ここまで海外メディアが混乱することはなかったかもしれない。それでも、メディアが準備や確認を怠り、パニックを引き起こすようなことを拙速に報じてはいけないことも事実だ。

結局、情報を受け取る側としては、そうした状況を俯瞰して、特定の情報に振り回されない「判断力」が、ますます重要な世の中になってきた。ネットも含めた膨大なニュースや情報の渦から、真実を浮かび上がらせる能力、とも言える。いわゆる「メディア・リテラシー」である。

そして、私は考えさせられる。高度な「メディア・リテラシー」を読み手に必要とさせるメディアの現状は健全なのだろうか。書き手として、重たい問題を突きつけられた「震災報道」だった。

(出典:日経ビジネスオンライン)





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最終更新日  2011/03/28 07:10:23 AM
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