2008.10.30
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カテゴリ: 本・雑誌の紹介
4-2-3-1、この数列が何を表しているか分かりますか?(等差数列の書き間違いでも、マイカーのナンバーでもありません。)
サッカー通なら直ぐに分かると思いますが、サッカーの試合のチームフォーメーション(ポジション配列)を指しています。

そして、サッカーの戦術について、このフォーメーション(布陣)から評論した本(解説本ではありません!)が、これから紹介する『4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する』です。著者は、サッカージャーナリストと言うか、スポーツライターの杉山茂樹氏です。杉山氏は、欧州の数々の代表戦、クラブチーム・タイトルマッチを16~7年間見てきて、また色んな監督へのインタビュを通じて分かってきたことがあると言っています。
分析的視点はありますけど、多角的視点からの解説ではありません。

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【布陣図で示す内容例】
2006年ドイツW杯 日本 vs 豪州
(3-4-1-2 対 3-3-3-1)
4-2-3-1 と 3-4-1-2 のサイドの関係
(4-2-3-1はサイド攻撃が利きやすい)
06~07 欧州スーパーカップ
(●セビーリャ VS バルセロナ○)
2006W杯_日本vs豪州.JPG
4231vs3412.JPG
バルセロナ-1.JPG

豪州は右サイドを全体的に1列押し上げるような布陣で、三都主の上がりを完全に押さえ込んだ。また後半には、日本の3バックに3FWをぶつける作戦に出て、日本は5バックになることを余儀なくされた。これはヒディングの戦術によるものである。
ヒディング曰く(2002年初頭のインタビュー)「3-4-1-2 ではタッチライン際のサイドに一人しか居ないが、4-2-3-1 では2人になり、サイドの攻防が有利になる。」 これは、欧州の監督の間ではスタンダードな考え方である。
欧州スーパーカップで、MVPに輝いたダニエウ・アウベス(セビーリャの右サイドバック)は、対峙するロナウジーニョを完全に無視するように積極果敢に攻撃参加し、その功績でバルセロナを3-0で破るという番狂わせを演じた。


本書の根底にある思想は、「1-0で勝つサッカーを最高の試合と考える、イタリア気質の守備的なサッカーと、面白いサッカーなら2-3で負けても潔しとする攻撃的サッカーと、どちらが好きですか?」、「1990年代後半にイタリアを中心に主流となった、守備的3-4-1-2の布陣は廃れ、現在は攻撃的な4-2-3-1の布陣が世界の潮流である。」ということです。
また、「サイドを制するものが試合を制す」という考え方です。

上記の思想をベースにした内容の一例を下記に示します。

【日本への辛口評論、他】
  • 加茂監督のゾーンプレスが機能しなかった理由
    加茂さんもジーコと同じ4-2-[2]-2の布陣を敷き、そのうちの[2]がサイドにまでプレスをかけ、プレスの方向(360度)と範囲の広さの重労働で、後半には動けなくなり破綻した。サイドバックが高い位置に居ないのと、サイドエリアの手薄さで相手を追い込めなかった。


  • 日本代表、空白の8年間
    かなり後ろ向きの発言ですが、戦術的フォーメーション(布陣)の観点から見て、攻撃的サッカーを謳っている(トルシエもジーコもこれを標榜していました)割には、世界の流れから見て時代遅れのシステムを採用していたし、布陣と戦術のズレがあったと云うこと。そして課題があっても、その布陣の拙さに気付かないために世界で通用しなかった。


  • ファンタジスタとユーティリティプレイヤ
    ロナウジーニョにしろジダンにしろ、とかくファンタジスタは中に入りたがる習性がある。また守備は苦手な傾向があり、ポジションを固定されるのを嫌う。オシムが言うには、このファンタジスタに対峙する選手は思いのほか楽なものである。上図の欧州スーパーカップのロナウジーニョの例だけでなく、03~04 チャンピオンズリーグの準々決勝で、レアル・マドリッドはジダンが中に入り手薄になったサイドを突かれ失点し、これが決勝点となってモナコに大逆転負けを喫している。一方、名将が良く使う戦術的交替(下げる選手とは違うポジションの選手を投入)は、色んなポジションをこなせるユーティリティプレイヤの存在がキーとなる。ヒディングが2002年W杯の韓国vsイタリア戦で取った戦術的交替は、3度の交替で8つのポジションに変化を与え、イタリアを慌てさせた。韓国の選手が元からユーティリティ性を持っていたのではなく、ヒディングの戦術によってユーティリティ性が高まったと言える。

以上の他にも、『攻撃的サッカーのルーツ、オランダ』(リナス・ミホルス/ヨハン・クライフ→アリゴ・サッキ→ルイス・ファンハール→ライカールト/テンカーテ→...)、日本の決定力不足の原因、1トップに3バックを当てる拙さ、etc に触れています。

「面白いサッカーなら2-3で負けても潔しとするオランダの攻撃的サッカー」を推奨しているようでいて、ジダンやロナウジーニョの守備不足で負けたと批判しているような記述もあり、「一体、どっちを推しているんだい!」と突っ込みたくなるような面もあり、また、分析の視点がサイドの攻防とフォーメーションに偏っている嫌いはありますが、読む価値は大いにあると思います。

本書ではユーティリティプレイヤが戦術上重要になることを説いていますが、選手のユーティリティ性より、ファンタジスタも含め状況に応じて多彩な戦術を取れる監督のユーティリティ性の方が大事だと思います。

最後に、もっとも気になる『岡田ジャパンで大丈夫なの?』というテーマがありますが、あとがきで触れており、 岡田監督は今までのサッカーの歴史認識、特に日本サッカーの正しい課題認識が出来ていないと嘆いています。 何とかしなければ...
しょんぼり





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最終更新日  2008.11.01 08:08:33
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