関本洋司のblog

2006年04月25日
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テーマ: 戦争反対(1190)
カテゴリ: 日記










先月、ピースボート船上で、若い人たちにおすすめの本を紹介する機会があった。僕は『老子』を紹介したが、この本が出版されていれば、真っ先に推薦していただろうと考えると、少し残念なことをしたと思う。ポジティブな響きを持つ書名に加え、777円という安さも魅力だ。以下、読んだばかりのメモです。

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『世界共和国へ』で、柄谷行人はまずチョムスキーを援用し(p4)※、

  国家 ネーション
  資本 アソシエーション

という4種類の交換様式図を『トランスクリティーク』に引き続き再解説している(p5,9)。
そこには、

不平等←→平等
統制


自由、

といったベクトルが加わったため、資本/ネーション/国家/アソシエーションという4つの要素の位置付けが恣意的でないものとして理解できるようになった(p5,9,22,39)。「複数の基礎的な交換様式の連関を超越論的に解明すること」(p40)に成功していると言える。ちなみに、上の図の統制に関しては、プルードンに倣って、権威と言い換えてもいいだろう。


また、プルードンに関する記述が多い点も指摘できる。最終章に「カントの構想」(p179)に引き続き「プルードンの構想」(p185)という節があるのだ。
ただ、晩年プルードンが国際政治(フェデレーション=連合の原理を提唱した)に関して考察したことが触れられていないため、プルードンが国家を内側からしか考えていないということになってしまっている(p194)。プルードンがヘーゲルやカントよりもすぐれている点はアンチノミーを維持した点であって、なおかつそれを相互主義的な交換的正義の理念、連合主義にまで高めた点だ。プルードンのいう「真実社会」(p190、現実の世界と訳されることもある)はまた、疎外論と一緒には出来ない。なぜならプルードンにとっては政治、経済、宗教の三要素がアソシエーション内部(=真実社会)にアウフヘーベンされずに残っているからである。

さらに、プルードンは交換銀行を国営で行うために議員(p191)となったことが重要であり、経済的革命(こちらの方が社会革命よりも用語的にわかりやすい)を目指す視点は一貫していたと考えるべきだ。
とはいえ、プルードンとマルクスを安易に対立させていない点や(p12,26,191)、ルソーの社会契約論をプルードンが交換的正義において徹底化したとする評価(p187)は的確だと思う。
プルードンに関しては、生産様式より交換様式(p20,27)を重視した点においては歴史的先行者なのだし、その重要性は明らかだ。不幸なことに他の思想家と比べ、テキストが入手しにくいため、岩波新書のようなスタイルで入門書が必要になると思う。


細かく述べるなら、柄谷氏の過去の同種の本より良くなった点は以下(箇条書き)である。
まず、ウェーバー(p90.124)、ウィットフォーゲル(p34)のラインを加えたことで、国家への視点が明瞭化し、マルクスの立場が比較的相対化された。。
またモース(p21)、クラストル(p42)、サーリンズ(p46)、ポランニー(p49.83)への言及で、文化人類学的な互酬的交換の位置づけがはっきりした。

モンテスキューの名前を出したので、「くじ引き」=民主主義説の説得力が増した (p54)。

一言で言えば、全体的にコンパクトでわかりやすくなった点が何よりの収穫であろう。『原理』のような実効性はないが、この書の浸透は確実に世界を変えるだろう。初学者には参考文献一覧や索引があればと親切かとも思う。さらに、記述としてはガンジー等の具体例が加わればもっとわかりやすくなるのだろうが、それは読者個人個人の課題だと思う。

※注
『世界共和国へ』(p4)で紹介されている1970年(1971年は間違い)のチョムスキーの講演「未来の国家」(Government in the Future)が以下で聞けます。

チョムスキー・インフォサイト?


http://www.chomsky.info/audionvideo/19700216.mp3

Government in the Future. Poetry Center, New York. February 16, 1970.





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最終更新日  2006年04月25日 23時02分14秒
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