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2023.05.02
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テーマ: 読書(8266)
カテゴリ: 本日読了
2023/05/02/火曜日/素晴らしきかな五月






〈DATA〉
講談社 / 著者 多和田葉子
2022年10月18日  第一刷発行


〈私的読書メーター〉


『地球に散りばめられて』『星に仄めかされて』に続く三部作の最終巻となるのかな。

いつかスピンオフとかエピローグが生まれるのかもしれないけれど。

これらの物語が生まれた背景には、著書がどう発言しているかは全く知らないけれど、どうしたって3.11があるのだ、と思う。

彼女にとってドイツは既にホームランドであるから、日常触れることのない祖国は彼女の日々において余り意識に上らない、本当にその国があるかどうかさえあやふやな存在だろう。

欧州では、世界では?国境は動き続け、今はない国があれば新たに生まれた国もある。

東アジアの片隅の島国を呑み込んだ津波

繰り返し電波に乗って流れた、黒い水に奪われる家、車、諸々と自分と近しい姿をした罹災者、焼き尽くされる沿岸の街、そして神の怒りに触れたかのような原発事故。

多和田葉子さんは既にそこを離れ何十年?だが、ここまで近しくいたわしく切なく覚えた祖国の姿は無かった筈だ。

何とか言葉で物語で、希望に続くか或いはディストピアか、紡がずにおれない。

そんな多和田さんだったのではないか。

彼の国の物語、基盤となる一番古い物語であるところの祖国の神話を辿れば

あの列島から最初に流された、かもしれないヒルコという存在、に出会う。

一方に、母の国へ帰りたいと暴れ狂ったスサノオという存在。

その両人?両神?が思い浮かぶではないか。

多和田さんは、その二人の周りに、インドの、性のお引越し中なるアカッシュ。彼はクヌートに思いを寄せる。

ところでクヌートはヒルコの編み出したパンスカ語に関心を抱くデンマークの若き言語学者。

日本人に間違えられるグリーンランドイヌイットの多言語話者ナヌーク。

そんなナヌークに惹かれる、意識高い系ドイツ人女性ノラ

と多士済々、多言語、多様性。

その過ぎたる複雑さを Hirukoは何によって結びつけるのか。

それは「空洞」かもしれないと思うのだ。


Hirukoとは何か。

帰るべき所が失くなった、そんな切迫感に苛まされる空虚を内に抱いているのは、ひょっとして今地上に存在する全てのわたしたち。かもしれない。

その空虚をどこか共有するゆえに、旅の、道行の同行者はより空洞を持つヒルコに対して、わずかでも、あるモノ、思い、を盛ることはできるだろう。


太陽の中心爆発が日食で塞がれれば観測できるあのコロナ現象はまさに空洞の見える化。
原子炉ならぬ太陽の溶鉱炉

そして天照らすヒルコになりゆく。


物語はフィクションと現実、今と昔と未来を行きつ戻りつする。そしてたまにはっとするような詩が浮かび上がる。

鳥の声が王冠か花輪を空に描き、それが地上に降りて来る、あの表現の美しさ。

何ページであったか。探したけど見つからない。

さて。一行も訪れるリガ。そこで得たhoney &moonで、ヒルコに魔法が掛かる。

「空洞」はヒルコによって「家になる」意識、意志に変換されていく、それが希望に他ならない。


ラトビアの、白樺のジュース
黒い太陽のようなパン
自家製の、お手製の多種多様な金のハチミツ
緑なす森の豊かなマーケット
歌と踊りと手仕事

市民が、彼らの手のリレーで蔵書を新設図書館に運んだ、街で最も立地な建物は教会でも市庁舎でもなく、図書館!そんな街リガを再び訪ねたい。













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最終更新日  2023.05.02 09:18:15
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