アオイネイロ
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「私、外に出たい。いつまでもここに閉じ込められているのはいや……」差しのべられた手を取って、私の口からは考える間も無くそんなセリフが飛びだしていた。「うんっ、行こう行こう。やったねテン、賑やかになるよ」『しっかしまあ、俺にナイフ向けてきた時とは偉い違いだな』嬉しそうににへらと笑って言うソラに、黒い狼は苦笑交じりでそう返す。「あっ、あれは……、街人が、そういう風に喋れと……」『何だ、何から何まで自分達とは違うって線引がしてぇらしいな。胸糞悪ィ』慌てて言いわけをする私に対し、狼は不機嫌そうにフンと鼻を鳴らした。「まあまあ、テン。それより早くここを出ようよ、僕お腹空いちゃった」『全く、お前はマイペースだよな。まあいい、これ以上ここにいる必要もねぇしな。行くか』狼の発したその言葉を聞いて、ソラが待ってましたとばかりにぴょこりと立ち上がって外へと飛び出す。『改めて自己紹介するが、俺はテンだ。宜しくな、楓』私の方に向き直ったテンがそう言って尻尾を軽く振った。改めて呼ばれた名前に、なんだか胸がドキドキと騒いだ。「よ、よろしく。テン」『おう、じゃあ行こうぜ。ソラが待ち侘びてる』ぎくしゃくとした挨拶を返せば、テンはひらりと身を翻してそう言った。低く、落ち着いた声色はどこか安心をおぼえるものだ。「テン、かえで、早く!」ソラの言葉に促されて、一番最後に自分の部屋を出る。ひゅるりと吹いた風が私の長い髪を攫っていく。地面に足をついて土を踏みしめた瞬間、言いようのない高揚感が私の全身を支配する。嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、どうにかなってしまいそうだった。自由。これが、自由。どこに行ってもいいのだ。これから目の前にいる猫のように掴みどころのないソラという少年と、テンというぶっきらぼうな黒い狼と一緒に、遠くへ、行けるのだ。『さて、まずはメシだな』「うんうんっ。早く行こう」歩き出した二人の後ろにぴったりとくっつくようにして、私は私が今まで育ったその小さな社を後にしたのだ。
January 18, 2013
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