全33件 (33件中 1-33件目)
1
インドとパキスタンとの間で軍事的な緊張が一気に高まり、核戦争が懸念される事態になった。パキスタン政府は2月27日、2機のインド軍戦闘機をカシミール上空で撃墜してパイロットを拘束したと発表、同じ日にインド政府はパキスタンの戦闘機1機を撃ち落としたとしている。 パキスタンを拠点とするジャイシュ-エ-ムハンマドが2月14日にカシミールでインド軍部隊を狙った自爆攻撃を実施、40名の兵士が死亡した。この攻撃が軍事的な緊張を高める切っ掛けになったようだ。 この地域はインドとパキスタンが帰属を巡って争っているのだが、中国とインドも国境線を巡り、対立している。両国はドクラム高地でも領土問題を抱え、2017年6月にはインド軍の部隊が中国の進めていた道路の建設工事を妨害するために侵攻、一触即発の状況になった。8月に両国はそれぞれの部隊を速やかに撤退させることで合意、軍事的な緊張は緩和されたものの、根本的な解決にはなっていない。 中国とインドとの間で軍事的な緊張が高まった直後、つまり6月27日にインドのナレンドラ・モディ首相はワシントンでドナルド・トランプ大統領と会談、7月7日にはイスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相と会っている。モディはイスラエルと緊密な関係にあると言われている。 アメリカはイギリスと同じようにユーラシア大陸の沿岸地域を制圧して内陸部を締め上げていくという長期戦略を持っている。ハルフォード・マッキンダーのハートランド理論はそれをまとめたもの。 この理論によると、世界を制覇するためにはロシアを支配しなければならない。ロシアには耕作地が広がり、19世紀には領内で油田が発見された資源国であり、国民の教育水準も高いためだという。 ユーラシア大陸の沿岸地域とは、西ヨーロッパ、パレスチナ(1948年にイスラエル建国を宣言)、サウジアラビア(サウード家のアラビアを意味するサウジアラビアが登場するのは1932年)、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」、そしてその外側の「外部三日月帯」を想定している。その西の果てがイギリス、東の果てが日本だ。 前にも書いたように、イギリスが長州と薩摩を支援して徳川体制を倒そうとしたのは大陸を侵略する拠点作りと地上部隊の編成。イギリスの支配層は日本人を傭兵にしようとしたのだ。 そうしたイギリス支配層の一端を担っていた麻薬業者のジャーディン・マジソンが日本へ送り込んできたのがトーマス・グラバー(長崎)とウィリアム・ケズウィック(横浜)。ケズウィックの父はジャーディン・マジソンで働いていたが、母方の祖母は同社を創設したひとりであるウィリアム・ジャーディンの姉にあたる。 1859年にイギリスの駐日総領事は長州から5名の若者をイギリスへ留学させることを決め、63年に選ばれた井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)がロンドンへ向かった。密航だ。 このときに船の手配をしたのがジャーディン・マジソン。グラバーは1861年に武器商人として独立していたが、密航の手助けをしている。 グラバーは内戦で大儲けしていたのだが、予想外に早く戦争が終結したために武器を抱え込んで倒産してしまう。それを助けたのが三菱だ。イギリス支配層は内戦で徳川体制と薩長を共倒れにし、完璧な傀儡体制を築くつもりだったのだろう。 長州の若者5名がロンドンへ向かう6年前、インドで東インド会社の傭兵(セポイ)が反乱を起こしている。この反乱の責任を問われて東インド会社は解散、イギリス政府が乗り出してくるが、侵略の基本構造に変化はない。 インド大反乱の前、1840年に中国でイギリスはアヘン戦争を仕掛けている。この侵略戦争の主体も東インド会社。アヘン取り引きで大儲けした会社のひとつがジャーディン・マジソンである。 イギリス、その戦略を引き継いだアメリカはこの当時から長期戦略に変化はない。明治維新で日本はイギリスの戦争マシーンに組み込まれたのだが、関東大震災から巨大金融資本JPモルガンの影響下に入る。 ところが、1933年にこの従属構造が大きく揺らぐ。ウォール街と対立していたニューディール派の大統領、フランクリン・ルーズベルトが出現したからだ。ウォール街が1933年から34年にかけてファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画したことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 1932年に駐日大使として日本へ乗り込んできたジョセフ・グルーはJPモルガンを率いるジョン・ピアポント・モルガン・ジュニアの義理の従兄弟。大戦後の日本を形作ったジャパン・ロビーの中心人物でもある。そして今の日本はアメリカの戦争マシーンの一部だ。 そのアメリカは昨年(2018年)5月、米太平洋軍という名称を米インド・太平洋軍へ変えた。担当地域が太平洋から太平洋とインド洋へ拡大したのだ。太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うという。ディエゴ・ガルシア島も重要な役割を果たすことになる。 アメリカの戦略にとってインドは重要なのだが、そのインドにロシアが食い込んでいる。インドはロシアや中国と同じようにBRICSやSCOの一角を占めるが、それだけでなくロシアは新型防空システムS-400を2020年にインドへ引き渡すと見られている。 今後、インドを巡る綱引きが強まる可能性が高い。
2019.02.28
CIAの工作資金を動かしているUSAIDの「人道的援助物資」を積んだトラックがコロンビア領からベネズエラ領へつながっている橋の近くで炎上したが、そのトラックへ反ニコラス・マドゥロ派のメンバーが火炎瓶を投げる様子が撮影されていた。 現在、アメリカ政府のベネズエラ工作はエリオット・エイブラムズ。アメリカ支配層は2002年にもベネズエラでクーデターを試みた。当時のアメリカ大統領はジョージ・W・ブッシュ。クーデターの黒幕はオットー・ライヒ、ジョン・ネグロポンテ、そしてエイブラムズだと伝えられている。 エイブラムズは2月13日に下院の外交委員会に出席、そこでイルハン・オマール下院議員から辛らつな言葉を浴びせかけられ、感情をあらわにする場面もあった。エイブラムズはイラン・コントラ事件で偽証、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の恩赦で刑務所行きを免れたのだが、議員はこの事実を指摘、そうした人物の話をどうして信頼できるのかと述べたのだ。 当時、エイブラムズは2700万ドル相当の武器を「人道的援助物資」だとしてニカラグアの反革命ゲリラ、コントラへ渡す工作に参加していた。ベネズエラで同じことをしないという保証はない。 そうした物資が含まれている可能性があるほか、一緒にコロンビアの特殊部隊員など、シリアやリビアのジハード傭兵やウクライナのネオ・ナチと同じように破壊活動要員が侵入することも懸念されていた。 勿論、ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権が破綻しているという宣伝にも物資搬入は使われるだろう。西側では物資をベネズエラへ運び込む口実として物資の欠乏が宣伝されている。 しかし、これは現地を取材したジャーナリスト、マックス・ブルメンソールがそうした事実を否定する映像をインターネットで伝えている。 しかし、そうした物資の運び込みを認めるようマドゥロ政権に求める人も西側にはいる。国民の苦境を救えということなのだろうが、それは侵略の容認につながる。そうした人のひとりがバーニー・サンダース上院議員だ。2016年の大統領選挙では途中、ロシアとの核戦争も辞さない姿勢を見せていたヒラリー・クリントン支持に回ったが、今回の発言を聞き、サンダースは理想的な支配者の手先ではないかと疑う人も出てきた。 ところで、2月23日がイギリスの富豪主催で開かれたコンサートには事前の宣伝の1割に満たない人しか集まらなかった。昨年、アメリカ政府はベネズエラ軍幹部に接触してクーデターに協力するように求めたが、説得に失敗したと言われている。 そうした中、アメリカの傀儡として大統領を名乗っているフアン・グアイドは軍事介入を求め、アメリカのマルコ・ルビオ上院議員は自身のツイッターにムアンマル・アル・カダフィの元気な時の姿と惨殺される寸前の様子を撮影した写真を並べて載せている。マドゥロに対する脅し、あるいは自分はマドゥロを脅すマッチョだというアピールをしているが、そのツイッターは恐怖ではなく嘲笑の対象になっている。
2019.02.27
1991年12月にソ連は消滅するが、その前からミハイル・ゴルバチョフ書記長は朝鮮を見捨てていた。アメリカ軍の情報機関DIAによると、そうした中、朝鮮に食い込んだのが統一教会。1990年代には統一教会の資金が朝鮮へ流れ込んでいた。 その一方、アメリカ軍の内部では1998年に金正日体制を倒す目的でOPLAN-5027-98を作成、99年には朝鮮の国内が混乱して金体制が崩壊した場合を想定した「概念計画」のCONPLAN-5029が作られ、2003年には核攻撃も含むCONPLAN-8022も仕上げられている。 そうした中、2010年3月、米韓両軍が合同軍事演習「フォール・イーグル」を実施している最中に韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没する。韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域での出来事だった。 この沈没に関して5月頃から李明博政権は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始める。この主張には疑問が多く、CIAの元高官でジョージ・H・W・ブッシュと親しく、駐韓大使も務めたドナルド・グレッグもこの朝鮮犯行説に疑問を投げかけた。アメリカ支配層の内部でもこの人脈はこの時点で朝鮮半島の軍事的な緊張が高まることを望んでいなかったということだろう。 そして11月には問題の海域で軍事演習「ホグク(護国)」が実施され、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加したと言われている。そして朝鮮軍の大延坪島砲撃につながった。 ちなみに、2010年6月には東アジアの平和を訴えていた鳩山由紀夫首相が検察やマスコミの圧力で辞任している。そして誕生したのが菅直人政権。尖閣諸島(釣魚台群島)の付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、尖閣列島の領有権問題に火をつけて日中関係を悪化させ、東アジアの軍事的な緊張を高めた。安倍晋三はその政策を引き継いでいる。 2011年夏にロシアが行った提案はこうした流れにブレーキをかけるものだったが、金正日の急死もあり、軍事的な緊張は続く。 そうした状態が一気に変化させたのが2018年4月の文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の会談だった。これが米朝会談につながる。 南北首脳会談の前、金正恩体制からアメリカに対する恐怖を消し去る出来事があったように思える。例えば2017年4月のアメリカ軍によるシリア攻撃だ。地中海に配備されていたアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスが巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、6割が無力化されてしまった。 その1年後、2018年4月には100機以上の巡航ミサイルをアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍がシリアに対して発射したが、7割は無力化されている。アメリカ側は発射ミサイル数を倍増させ、それ以外にも対策を練ったのだろうが、ロシア側も対策を練っていた。最も大きかったのは短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1の配備だと言われている。 この2度のアメリカ軍による攻撃の失敗は朝鮮の金正恩体制兵も少なからぬ影響を受けただろう。かつてアメリカを「張り子の虎」と表現した人がいたが、そう考える人が増えているかもしれない。 今のところアメリカの支配層は基本戦略を変更していない。長期戦略と見られているのはハルフォード・マッキンダーがまとめたハートランド理論。世界の覇者となるためには、耕作地が広がり、19世紀には領内で油田が発見されるなど資源に恵まれ、教育水準も高いロシアを支配しなければならないというもの。 そのため、ユーラシア大陸を囲むように西ヨーロッパ、パレスチナ(1948年にイスラエル建国を宣言)、サウジアラビア(サウード家のアラビアを意味するサウジアラビアが登場するのは1932年)、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」を、またその外側に「外部三日月帯」を想定している。その三日月帯で内陸部を締め上げようというわけだ。その西の果てがイギリス、東の果てが日本だ。 アヘン戦争で勝利しても内陸部を支配できなかったイギリスは陸上部隊として日本に目をつけ、明治維新につながったが、ハートランド理論でも日本は戦略的に重要な位置を占めている。その戦略をイギリスから引き継いだのがアメリカだ。 1991年12月にソ連が消滅、ロシアはアメリカやイギリスをはじめとする西側の支配層に操られていたボリス・エリツィンが大統領。この段階で世界制覇は実現、アメリカは唯一の超大国になり、単独で行動できる時代になったとネオコンなど西側支配層は思ったように見える。そして潜在的なライバルを潰し、資源を支配することを目的としたウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された。 この日程表を狂わせたのがロシアのウラジミル・プーチンであり、そのロシアと戦略的な同盟関係に入ったのが中国の習近平体制。米英支配層はそのロシアと中国を潰そうと必死だ。そうした状況の中、トランプ大統領は金委員長と会う。(了)
2019.02.26
アメリカのドナルド・トランプ大統領と朝鮮の金正恩労働党委員長は2月27日と28日にベトナムのハノイで会談する予定だという。すでに金委員長はベトナムへ入り、トランプ大統領も26日中にハノイ入りすると見られている。 朝鮮半島の問題では緊張を緩和させて経済を発展させようと望んでいるロシア、中国、韓国が主導権を握り、朝鮮を引き込むことに成功した。アメリカ中心の支配システムを揺るがしている中国やロシアに対抗、主導権を奪還しようとしているのがトランプ政権だ。アメリカの支配層には軍事的な緊張を高めたいと考えている勢力が少なくない。 米朝両首脳は昨年(2018年)6月12日にシンガポールで会談、韓国の文在寅大統領と金正恩委員長が4月27日に合意した「朝鮮半島の非核化」を確認したのだが、その後、アメリカ大統領は朝鮮半島の非核化を朝鮮の一方的な核兵器放棄に替えてしまい、朝鮮側の反発を招いた。アメリカ支配層は朝鮮半島の制圧を狙っているのであり、必然的な展開だった。 しかし、朝鮮を引き込むことに成功した中国、ロシア、韓国は東アジアでの緊張を緩和を望んでいる。朝鮮とアメリカとの首脳会談は望むところだろう。そして今年の元旦、金委員長はトランプ大統領といつでも会う用意があると発言、トランプ大統領は金委員長と再会談する準備はできていると応じた。 朝鮮半島の情勢を動かしている最大の要因はおそらくロシアの戦略にある。高速鉄道やエネルギー資源を運ぶパイプラインでロシア、中国、そして朝鮮半島をつなごうとしているのだ。この計画で最大のネックだったのが朝鮮だった。 そこで、2011年夏にロシアのドミトリ・メドベージェフ首相はシベリアで金正日総書記、つまり金正恩の父親と会談、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすることで合意している。 ところが、金正日は2011年12月に急死してしまう。その直後、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺説を唱えていた。 2011年12月17日に列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こして死亡したと朝鮮の国営メディアは19日に伝えているが、元院長によると、総書記が乗った列車はそのとき、平壌の竜城駅に停車中だった。 NISは金の動向を15日まで確認しているが、その後は行方をつかめなくなったともいう。22日に総書記は何らかの予定が入っていて、韓国側もそのために追跡していたともしている。 長期にわたり、金正日が暗殺のターゲットになっていた可能性もある。例えば、2004年4月に危うく龍川(リョンチョン)の大爆発に巻き込まれるところだったと噂されている。爆発の2週間前にインターネットのイスラエル系サイトで北京訪問の際の金正日暗殺が話題になっていたようだ。一応、貨車から漏れた硝酸アンモニウムに引火したことが原因だとされている。 朝鮮は2006年に核実験を実施、国連の安全保障理事会では制裁決議が採択された。日本政府が主導したと決議だと言われている。その後も朝鮮側はミサイル発射や核兵器の爆破実験を盛んに行うが、これはアメリカ支配層にとって好都合だった。 イスラエルの元情報機関幹部によると、1980年代、アメリカ政府がイランへ武器を密輸していた当時、そのイランへ売る旧式ミサイルをイスラエルは朝鮮で調達している。(つづく)
2019.02.26
鳩山由紀夫内閣は検察やマスコミによって潰されが、傍若無人な安倍晋三内閣は疑惑を物ともしない長期政権。彼は官僚やマスコミから忖度されているらしい。安倍には沖縄県民の意思を踏みにじるだけの力がある。 首相という地位が安倍に力を与えているわけではない。それなら鳩山も潰れなかったはずだ。かつて警察も検察も押さえていると思われていた田中角栄もスキャンダルで失脚している。鳩山や田中を潰し、安倍を生きながらえさせている人物、あるいはグループこそが日本の支配者にほかならない。 東電福島第1原発が事故を引き起こした後に行われた反原発デモには17万人が参加、60年安保の時には30万人以上が参加したとも言われているが、それでも支配体制は倒されていない。デモの力はその程度だということだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカの支配層はカネ儲けの邪魔になる体制を倒す際、経済戦争を仕掛け、プロパガンダで攻撃、抗議活動を演出する。その先には軍事クーデターや軍事侵略も用意されている。 こうした抗議活動は圧倒的な資金力を持つ勢力が行う工作の一部だということ。だからこそ体制転覆につながるのだが、抗議活動だけで体制を倒すことは困難だ。 安倍晋三政権はアメリカの支配層が動かす戦争マシーンの一部として働いている。一部支配層からは嫌われているようだが、アメリカの基本戦略から外れない限り、鳩山のようなことにはならない。その基本戦略のうち長期戦略はハートランド理論、中期戦略はウォルフォウィッツ・ドクトリンだと言えるだろう。それらを理解する必要がある。支配層は民意で動いているわけではない。
2019.02.26
ベネズエラでは民意を否定するため、アメリカ支配層は傀儡のフアン・グアイドに大統領というタグをつけ、選挙で選ばれたニコラス・マドゥロ政権を倒そうとしている。西側の有力メディアはアメリカ支配層の利益に反する政策を推進する政権を「独裁」と呼ぶのだが、ベネズエラでもそうした呼び方が使われている。 そのアメリカ支配層に従属している安倍晋三政権は沖縄県名護市辺野古での新基地建設を推進している。アメリカ軍の普天間飛行場を移設させるのだとしているが、はっきりしているのは新基地建設だけ。普天間飛行場がなくなる保証はない。 普天間基地の返還合意が発表されたのは1996年4月のこと。そのときの首相は橋本龍太郎、駐日アメリカ大使はウォルター・モンデールだった。 この合意は1995年に引き起こされたアメリカ兵による少女暴行事件が理由だとされているが、その年の2月にはアメリカの国防次官補だったジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、日本に対し、国連中心主義の立場を放棄してアメリカの単独行動を容認するように求めている。この年に日本はアメリカの戦争マシーンへ組み込まれたのだ。 アメリカ支配層が単独行動主義を打ち出したのは1992年のことである。この年の2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランが作成されている。当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はリチャード・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィツ。DPG草案は次官だったウォルフォウィッツを中心に書き上げられた。そこでこのプランはウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 このドクトリンは新たなライバルの出現を阻止することに主眼を置いている。ソ連は1991年12月に消滅、ボリス・エリツィンを大統領とするロシアはウォール街やシティ、つまりアメリカやイギリスの巨大金融資本の植民地と化していた。残された国の中で潜在的ライバルと見られたのが中国。そこでアメリカ政府は東アジア重視を打ち出す。 敵対勢力が力の源泉でもあるエネルギー資源を支配することも防がなければならない。そこで中東支配もアメリカ支配層の重要な政策になった。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、このドクトリンが作成される直前、ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っている。(3月、10月) 近代日本は明治維新から始まるとされているが、これはイギリスを後ろ盾とする長州と薩摩が徳川体制を倒したクーデターにほかならない。当時、イギリスは中国(清)を侵略、略奪している最中だった。 1840年から42年にかけてアヘン戦争、56年から60年にかけてアロー戦争(第2次アヘン戦争)を仕掛けて勝利、広州、厦門、福州、寧波、上海の開港とイギリス人の居住、香港の割譲、賠償金やイギリス軍の遠征費用などの支払いを最初の戦争で認めさせた。次の戦争では中国に賠償金を払わせ、天津の開港や九龍半島の割譲を認めさせている。香港はイギリスによるアヘン密輸と侵略戦争の象徴だ。 しかし、イギリスには内陸部を支配するだけの戦力がなかった。そこで目をつけられたのが日本。傭兵を供給させようとしたわけだ。役割はアル・カイダ系武装集団などジハード傭兵と同じだ。明治政府は琉球併合、台湾派兵、江華島事件、日清戦争、日露戦争へと進んでいく。 関東大震災で復興資金の調達を頼って以来、日本に大きな影響力を及ぼすようになったのはウォール街の巨大金融資本、JPモルガン。この金融資本を中心とする勢力が1933年から34年にかけて反ニューディール派のクーデターを計画したことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 ニューディール派の中心、フランクリン・ルーズベルトが初めて大統領選挙に勝ったのは1932年。その年にハーバート・フーバー大統領が日本へ大使として送り込んできたのがJPモルガン総帥の義理の従兄弟にあたるジョセフ・グルーだ。そのグルーは政界や財界だけでなく皇族にも強力な人脈を張り巡らせていた。第2次世界大戦後の日本の進路を決めたジャパン・ロビーの中心はこのグルーにほかならない。 大戦後、アメリカはソ連に対する先制核攻撃を計画する。実戦を想定したドロップショット作戦が作成されたのは1957年だと言われている。300発の核爆弾をソ連の100都市で使うというもので、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、攻撃は1963年後半に実行されることになっていたが、その前にはジョン・F・ケネディ大統領という大きな障害があった。この障害が排除されたのは1963年11月22日。テキサス州ダラスで暗殺されたのだ。 このドロップショット作戦が作成される直前、1953年4月に沖縄では布令109号「土地収用令」が公布/施行された。これに基づき、沖縄では武装米兵を動員した暴力的な土地接収が実行され、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になった。これがアメリカの先制核攻撃計画と密接に結びついていることは言うまでもないだろう。 そうした土地の接収が行われていた1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めたライマン・レムニッツァーはドワイト・アイゼンハワー政権の時代に統合参謀本部議長へ就任、ドロップショット作戦でも中心メンバーのひとりだった。 この当時から沖縄の基地はアメリカによる侵略戦争のために存在している。防衛を前提にした議論は無意味なのだ。ウォルフォウィッツ・ドクトリンで中国が第1のターゲットになったわけで、沖縄の基地は先制攻撃のために整備する必要に迫られたはずだ。1996年4月にはそうした意味がある。安倍政権が新基地の建設を急いでいる理由はそうした背景から考えなければならない。
2019.02.25
アメリカ政府を後ろ盾とするフアン・グアイドは何かが23日に起こると予告していた。その23日にイギリスの富豪が主催するコンサートが開かれ、グアイド支持勢力は参加者を20万人とも30万人とも主張している。が、その様子を撮影した写真をみると1万5000人ほどにすぎない。 似たような手口がウクライナのクーデターでも使われた。そのときは2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で抗議活動が始まる。その演出はEUへの憧れを刺激するカーニバル的なものだった。その演出が功を奏したのか、12月に入ると50万人が集まったと言われている。その再現をベネズエラで狙ったのかもしれないが、成功しなかった。 コンサートが開かれた23日には「人道的援助物資」を積んだUSAID、つまりCIAのトラックがコロンビア領内に出現、現在は使われていない橋を渡ってベネズエラ領へ侵入しようとする。不法入国を目論んだわけだ。こうした「援助」を容認した場合、プロパガンダに利用されるだけでなく、CIAの要員が侵入してくるとベネズエラ政府側が考えても不思議ではない。 そうした物資の持ち込みを阻止するためにベネズエラは治安部隊を配置、それに対してグアイド派の一団は石と火炎瓶を投げ始める。その直後にトラックが火に包まれた。その原因はベネズエラ側にあるとグアイド派のメディアは主張、西側の有力メディアは同調する。催涙弾が原因だというのだが、通常の催涙弾で火がつくというような話は聞いたことがない。 ウクライナでは人びとが集まったところでネオ・ナチが登場し、棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を警官隊に投げつけるだけでなく、ピストルやライフルを持ち出す。 2014年2月7日にロシアのソチで冬季オリンピックが開幕、それに合わせて抗議活動は暴力的になり、街は人血の海に化した。2月中旬になると広場で狙撃が始まる。 西側の政府や有力メディアは狙撃の責任はビクトル・ヤヌコビッチ政権側にあると主張したが、25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相はその翌日、EUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったイギリス人のキャサリン・アシュトンへ電話で次のように報告している:「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新しい連合体(クーデター派)が調査したがらないほど本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合体(反ヤヌコビッチ派)の誰かだというきわめて強い理解がある。」 当時、広場で抗議活動を指揮していたのはネオ・ナチのアンドリー・パルビー。ヤヌコビッチ政権でSBU(ウクライナ治安局)の長官を務めていたアレクサンドル・ヤキメンコはそのパルビーが狙撃の責任者だと言っていた。 その後、この狙撃に関するテレビ番組が2017年11月にイタリアで放送される。その中に自分たちが狙撃したするジョージア人3名が登場、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたとしている。この3名は狙撃者グループの一部で、治安部隊のメンバーとしてジョージアから送り込まれたいう。(その1、その2)この3人も狙撃の指揮者はアンドレイ・パルビーだと語っていた。 ソチのオリンピックが閉幕する前日、2月22日にヤヌコビッチ大統領は憲法を無視する形で排除された。このクーデターで中心的な役割を果たしたのはネオコンでヒラリー・クリントンと親しいというビクトリア・ヌランド国務次官補だ。 ベネズエラ軍の掌握に失敗したアメリカ政府は暴徒を利用したウクライナ、あるいは武装勢力を侵入させてリビアやシリアの再現を狙うかもしれない。 ニコラス・マドゥロ政権を倒し、アメリカ支配層が傀儡体制を復活させたたがっている理由は石油にあるとジョン・ボルトンも口にしているが、その石油はグアヤナ・エセキバという地域の地下に眠っているという。この油田は2015年に発見されたのだが、ここはベネズエラとガイアナが自国領だと主張している場所。石油を利権を獲得し、大儲けしたい欧米の石油資本は自分たちの言いなりになる人物、たとえばグアイドを大統領にしたいのだろうとジャーナリストのF・ウィリアム・イングダールは指摘している。
2019.02.25
権力者に媚びず、事実を追求するためには皆様のカンパ/寄付が必要です。このブログを維持するために支援していただきたくお願い申し上げます。 日常生活であろうと政治経済であろうと、情報に基づく判断にしたがい、行動します。そこで支配層は情報を支配し、人びとの行動をコントロールしようとしてきました。 本ブログでは繰り返し書いてきましたが、権力者は情報を支配するためにあらゆる手段を使います。その中には教育機関、マスメディア、広告会社も含まれ、そうした組織を操るためにアメリカでは第2次世界大戦が終わった直後、モッキンバードと呼ばれるプロジェクトをスタートさせました。 そのプロジェクトを動かしていたのはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、フィリップ・グラハムの4人ですが、このうちダレスとウィズナーはウォール街の弁護士、ヘルムズの母方の祖父は国際決済銀行の初代頭取、グラハムの義理の父は世界銀行の初代総裁。つまり4人とも巨大金融資本の人脈です。 グラハムはワシントン・ポスト紙の社主でしたが、1963年8月、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺して妻のキャサリンが新聞社を指揮することになります。 キャサリンが社主の時代に同紙はウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込みますが、その取材で中心になったカール・バーンスタインは大統領辞任から3年後の1977年に新聞社を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いています。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) その記事によりますと、20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけての時期にニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員へ架空の肩書きを提供したといいます。 2014年2月にはフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテがドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出しました。 彼によりますと、ドイツを含む多くの国でCIAはジャーナリストを買収、人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開しているといいます。 その結果、人びとはロシアとの戦争へと導かれ、引き返すことのできない地点にさしかかっているという危機感を彼は抱き、事実を明るみにだしたそうです。 しかし、このジャーナリストは2017年1月、56歳のときに心臓発作で死亡しました。出版されたはずの英語版は流通していません。 アメリカ政府は大量破壊兵器を口実にしてイラクを先制攻撃、ウクライナ、リビア、シリアなどでは国民弾圧という話を広めながら傭兵に侵略させました。使われた傭兵はウクライナがネオ・ナチ、リビアとシリアはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする人びとです。 侵略後、アメリカ政府の嘘は発覚してきましたが、その後も政府やその宣伝機関である有力メディアを信じている人が少なくありません。そうした状況を打破するためにも事実を伝える必要があると考えています。「櫻井ジャーナル」が活動を続けるため、支援をお願い申し上げます。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2019.02.24
ベネズエラでは物資が欠乏し、国民は食事もままならないと西側では伝えられているが、現地を取材したジャーナリスト、マックス・ブルメンソールはそうした事実を否定する映像をインターネットで伝えている。西側は物資欠乏を内政干渉の口実にしているのだが、それが大量破壊兵器や化学兵器と同じように嘘だとブルメンソールは報道している。 物資が欠乏しているとしても、その責任はニコラス・マドゥロ大統領にないが、そうした状況ではないということだ。アメリカは配下のメディアを使って物資が欠乏しているというイメージを広め、「支援」という口実で国境を超えて強引に物資を持ち込もうとしている。侵略の一環だと言えるだろう。その結果、軍事的な緊張が高まっている。コロンビアとの国境近くにベネズエラ軍が派遣されているともいう。 アメリカ支配層の傀儡、フアン・グアイドはマドゥロ政権の一部が国外へ逃亡したかのように主張しているが、これも怪しい。アメリカなどによるシリア侵略の失敗はバシャール・アル・アサド大統領夫妻が国内に留まったところから始まっている。 西側支配層としては、マドゥロに逃げ出して欲しいわけだろうが、そうした状況にあるとは思えない。イギリスの富豪が企画した「支援」コンサートに20万人以上が集まったとワシントン・ポスト紙が伝えたようだが、その様子を撮影した写真から実際は1万5000人くらいと推測されている。 それに対し、ピンク・フロイドのメンバーだったロジャー・ウォルタースはカラカスにいる彼の友人から伝えられた現地の様子を書いている。それによると、現地では内戦も混乱も殺人も独裁も反対派の大量拘束も言論封殺もないという。今回もいつも通り、西側の有力メディアは偽情報を流しているようだ。ま、プロパガンダ機関なので当然なのかもしれない。(追加)イギリスの富豪が企画した「支援」コンサートに20万人以上が集まったとする記述をワシントン・ポスト紙はその後、削除した。
2019.02.24
シリアでの空爆をアメリカのバラク・オバマ政権はシリア政府の承諾を得ずに始めた。つまり侵略戦争だ。空爆を始めた当時に国務長官だったジョン・ケリーがこの事実を認める音声もインターネット上で公開されている。そのせいなのか、ベネズエラでは配下のフアン・グアイドに大統領を勝手に名乗らせ、そのグアイドはアメリカの軍事介入を「承認」する可能性を排除しないと口にしている。 アメリカの支配層は他国を侵略する際、まずそのターゲット国のエリートを買収しようとする。それに失敗すると暗殺やクーデターを試みるのだが、クーデターの前に経済戦争を仕掛け、メディアや広告会社などを使ったプロパガンダを展開、コントロール下においている労働組合やNGOを使って抗議活動を実行、軍事行動に移る。こうして引き起こされる混乱の目的は巨大資本の利権獲得にあり、そのために民主主義や人権は踏みにじられるのだ。 オバマ大統領は師匠と言われるズビグネフ・ブレジンスキーと同じようにジハード傭兵を使ったが、ジョージ・W・ブッシュ政権のようにアメリカを中心とする軍隊、あるいはNATO軍で攻撃することもある。 ラテン・アメリカでは軍事クーデターの準備という意味もあり、第2次世界大戦の直後に訓練施設をパナマで創設した。SOAだ。 この施設は1984年にパナマ政府から追い出され、アメリカのジョージア州フォート・ベニングへ移動、2001年にはWHISC(またはWHINSEC)へ名称を変更した。設置場所と名称は変わったが、行っていることに大差はない。 しかし、現在のベネズエラ軍がアメリカ支配層の思い通りに動く気配は見られない。そこで東ヨーロッパで使われた「カラー革命」の手法を採用したようだ。 アメリカ支配層が大統領を名乗らせているグアイドは2007年にアメリカのジョージ・ワシントン大学へ留学、新自由主義を信奉している人物。政権を奪取した暁には私有化を推進、国営石油会社のPDVSAをエクソンモービルやシェブロンへ叩き売るつもりだと言われている。 本ブログでも書いたことだが、グアイドがアメリカへ留学する2年前、アメリカ支配層は配下のベネズエラ人学生5名をセルビアへ送り込んだ。 セルビアにはCIAから資金が流れ込んでいるCANVASと呼ばれる組織が存在しているが、そこでベネズエラの学生は訓練を受けている。 CANVASを生み出したオトポール(抵抗)!はスロボダン・ミロシェビッチの体制を倒すため、アメリカ支配層などによって1998年に作られた組織。運動の目的はごく少数の富豪による富の独占だ。 こうした組織は民主化、人権、人道といった耳触りの良い用語を使うが、実態は逆。一種のイメージ戦略だが、この戦略を始めたのはロナルド・レーガン政権の時代だった。1983年1月にレーガン大統領が署名したNSDD 77が始まりだと考えられている。 その前、1982年6月にレーガン大統領はイギリス下院の本会議でプロジェクト・デモクラシーという用語を使ったが、これはイメージ戦略の名称でもある。「民主主義」という旗を掲げながらアメリカの巨大資本にとって都合の悪い国家、体制を崩壊させようというのだ。いわゆるレジーム・チェンジ。国内での作戦はプロジェクト・トゥルースと名づけられた。その延長線上にカラー革命はある。 アメリカの支配層はウゴ・チャベスが大統領選挙に勝利した1998年から再植民地化を目指してきた。2002年のクーデター未遂は有名だが、そのときの黒幕はエリオット・エイブラムズ、オットー・ライヒ、ジョン・ネグロポンテだと報道されてた。クーデター計画はこれ以外にもあったが、暗殺も試みられた可能性がある。なお、アメリカ支配層が敵視したチャベスは2013年3月、58歳の若さで死亡した。その後継者がニコラス・マドゥロだ。 マドゥロ政権に対する経済戦争は苛烈を極めているが、庶民はこの政権を支持している。最近の世論調査の結果を見ると、国民の57%はマドゥロ支持、グアイドを支持しているのは32%。2018年5月に実施された大統領選挙でマドゥロの得票率が67.8%だったことを考えると支持率は低下したようだが、まだ高い水準だ。 この状態でマドゥロ政権を倒すことは難しい。歴史的にアメリカ資本の手先として働いてきたヨーロッパ系住民はグアイドを支持しているが、マドゥロの支持者よりかなり少ない。そこでアメリカ支配層はさまざまなことを仕掛けてきているのだ。 マドゥロ政権は民意が生み出したのであり、それを否定してアメリカ支配層にとって都合の良い政権を作り出すということは民意の否定にほかならない。混乱の原因はアメリカ支配層がベネズエラ国民の意思を粉砕するために内政干渉していることにある。この構図はウクライナでもシリアでもリビアでも同じだった。 そうしたアメリカ支配層の工作を漫然と眺めていることは許されない。それは民主主義者がとるべき態度ではなく、怠慢なだけだ。「乱暴はしないでね」と言いながら不正を容認することにほかならない。勿論、それでアメリカ支配層が暴力の行使を思いとどまるわけではない。繰り返しになるが、アメリカによるベネズエラ侵略は1998年、ビル・クリントンが大統領のときに始まり、大統領が交代しても続いている。これはアメリカ支配層の意思なのである。
2019.02.23
エマニュエル・マクロン仏大統領は反シオニズムを人種差別として取り締まると宣言した。フランスを含むヨーロッパではイスラエルがパレスチナで行っている殺戮と破壊に抗議するため、民間レベルでBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動が展開されてきた。そうした運動の根幹には反シオニズムがあるとマクロンは判断しているのだろう。 ところで、シオニズムとはエルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという思想。ナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされている。 近代シオニズムの創設者とされているセオドール・ヘルツルはその3年後に『ユダヤ人国家』という本を出版したのだが、ビルンバウムより前、1891年にキリスト教福音派のウィリアム・ブラックストーンなる人物がアメリカでユダヤ人をパレスチナに返そうという運動を展開、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけていた。 そのブラックストーンより前からエルサレムで動いていたのがイギリス政府。1838年にエルサレムで領事館を建設しているのだが、そのイギリスは第1次世界大戦の最中にオスマン帝国の解体と分割を決める。 両国の話し合いはイギリスのマーク・サイクスとフランスのフランソワ・ジョルジュ-ピコが行った。のちに帝政ロシアが加わり、1916年に締結された秘密協定がサイクス・ピコ協定。この協定は1917年11月のロシア十月革命で成立したボルシェビキ政権によって暴露されてしまう。シリアやリビアへの侵略にイギリスやフランスが参加した理由のひとつはこの協定を生み出した両国の戦略にあるだろう。この戦略はシオニズムと深い関係にあるとも言える。 イギリスのパレスチナ戦略を考える上で忘れてならない書簡がある。1917年11月、ロシアにボルシェビキ政権が出現したその月に同国のアーサー・バルフォアはシオニズムを支援していたライオネル・ウォルター・ロスチャイルドへ書簡を送り、「ユダヤ人の民族的な故郷」の建設を支持したのだ。これがいわゆるバルフォア宣言。サイクス・ピコ協定の露見を見通しての宣言だったかもしれないが、同協定を生み出した戦略は生きていたはずで、それがバルフォア宣言とも考えられる。 また、イギリスのヘンリー・マクマホンは1915年7月から16年3月にかけてフサイン・ビン・アリと書簡をやりとりし、アラブの独立を認めている。バルフォア宣言と矛盾しているが、この宣言もマクマホンとビン・アリの書簡でもパルスチナに住む人々は無視されていた。 マクロンはシオニズムだけでなくグローバリズム、つまり巨大資本が世界を支配する仕組みを作ろうという戦略とも結びついている。2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系投資銀行へ入り、200万ユーロという報酬を得ていたという経歴を見るだけでもその理由は推測できるだろう。 その後、2012年から14年にかけてフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進、マクロンのボスだったオランドはアメリカ政府の侵略政策にも加わる。 そうしたオランドの政策に対するフランス国民の憎悪は強まるとマクロンは社会党から離れて2016年4月に「前進!」を結成した。 みえみえの目くらましだが、それに騙された人が少なくなかったようで、2017年5月の大統領選挙で勝利し、大統領になれた。その選挙でライバルだったマリーヌ・ル・ペンに有力メディアは「極右」というタグをつけて宣伝、これもマクロンの勝利に貢献しただろう。 しかし、大統領に就任した後、マクロンの支持率は大きく下落して今では20%台になっている。ロスチャイルド資本をはじめとする富裕層を後ろ盾にしているマクロンは大方の予想通りに庶民に負担を強い、富裕層を優遇する政策を推進した結果だ。 そうした中、昨年(2018年)11月に始まったのが「黄色いベスト」運動。マクロンの政策を批判している運動で、庶民の怒りの受け皿になっている。30万人近くが集まったこともある抗議活動の鎮圧に政権側は必死で、2月中旬までに8000人以上を逮捕したという。 おそらく根幹でつながっているシオニズムとグローバリズムがフランスで噴出、その鎮圧に巨大資本の操り人形は両方を押さえ込もうとしている。
2019.02.22
ドナルド・トランプ米大統領は2月1日にINF(中距離核戦力)全廃条約の破棄をロシアへ通告、それを受けてロシアは条約義務履行の停止を宣言した。アメリカはロシアの開発した弾道ミサイル、イスカンダル(9M729)が条約に違反していると主張している。 条約では射程距離が500から5500キロメートルの地上発射型核ミサイルの開発を禁止しているのだが、イスカンダルは280から400キロメートルで、禁止の対象外。その程度のことはアメリカ側も承知しているだろう。 アメリカ支配層が軍拡の方向へ舵を切ったのは遅くとも2002年のこと。ジョージ・W・ブッシュ政権が一方的にABM(弾道弾迎撃ミサイル)から離脱したのだ。 バラク・オバマ大統領もこの決定に逆らっていない。2014年当時、核兵器関連でアメリカは30年間に1兆1000億ドルを投入するとしている。 21世紀に入ってウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたとはいうものの、ボリス・エリツィン時代にロシアは疲弊、アメリカに対抗できる軍事力は存在しないと考えられていた可能性が高い。 例えば、アメリカ支配層の機関誌的な存在であるフォーリン・アフェアーズ誌が2006年3/4月号に掲載したキール・リーバーとダリル・プレスの論文は、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いとしている。つまりアメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てるというわけだ。そうした判断に基づき、アメリカ支配層はABMから離脱したのだろう。 しかし、イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃した際、ロシア軍の反撃で侵略軍は粉砕されてしまった。つまり、アメリカやイスラエルの軍隊はロシア軍と同じような規模で衝突すると負けるということだ。シリアでの戦争でロシア製兵器の性能は高いことが確認されている。 アメリカは2010年7月にポーランドとイージス・アショアの設置で合意、ルーマニアが続いた。日本も購入することになっているこのシステムが使用するランチャーは攻撃型の巡航ミサイルであるトマホークと同じで、ソフトウェアーを変更すれば攻撃用の兵器になるとされている。アメリカ軍は韓国へTHAAD(終末高高度地域防衛)を強引に配備した。 そしてINF条約の廃棄。プーチンは2月20日に行って演説でアメリカ側がこの条約で禁止されていたようなミサイルをヨーロッパへ配備した場合、配備された国だけでなくアメリカもターゲットにすると釘を刺している。その意味を戦争で自国が戦場になることを想定していないアメリカの支配層は理解できるのだろうか?
2019.02.21
ユーフラテス川沿い、シリアとイラクの国境に近いハジンでアメリカ主導軍はダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を攻撃した際、自分たちのリスクを下げるために戦闘を長引かせ、その結果として住民の犠牲を増やし、インフラを破壊することになったとフランス軍のフランソワ-レジス・レグリエル大佐が報告、懲罰の対象になった。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする傭兵で、士官クラスは侵略勢力の訓練を受けている。 侵略勢力には1970年代末から連携しているアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、そしてオスマン帝国の再興を夢見るトルコなどが含まれる。それぞれ配下の傭兵が存在するが、最大の雇い主は三国同盟だ。 2015年9月末にロシア軍がシリア政府の要請で介入してから侵略勢力が分裂、その頃から傭兵間の対立が伝えられている。ハジンにおけるアメリカ主導軍のダーイッシュ攻撃もそうした背景があるのだろうが、何ヶ月も前からアメリカ軍は武装グループの幹部をヘリコプターで救出してきた。現在、残っている戦闘員は救出の対象外なのかもしれない。 アメリカ主導軍がシリアを攻撃し始めたのは2014年から。この年の1月にダーイッシュがイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードして存在をアピールした。 当然、そうした動きをアメリカの軍や情報機関は偵察衛星、偵察機、通信傍受、地上の情報網などでつかんでいたはず。それにもかかわらず傍観していた。 しかし、こうした展開になることを2012年の段階でアメリカ軍の情報機関DIAは予測し、バラク・オバマ政権に警告していた。 同政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために武装勢力を支援、それは「穏健派」だと弁明していたのだが、DIAは武装勢力の主力をサラフィ主義者やムスリム同胞団、そしてアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)だとしていた。ちなみにアル・ヌスラ(現在はジャブハト・アル・シャム)の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 こう警告した報告書には、オバマ政権の政策がシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるともしていた。この予測通り、ダーイッシュは出現、それを口実としてアメリカ主導軍はシリアに対する空爆をはじめたのである。 アメリカ軍機によるシリアに対する最初の空爆は2014年9月だが、その様子を現地で取材していたCNNの中東特派員、アーワ・デイモンは翌朝の放送でダーイッシュの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手し、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと伝えていた。破壊された建物は蛻の殻だったというのだ。その後、アメリカ主導軍の攻撃は市民を殺傷、住宅やインフラを破壊、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ、つまりジハード傭兵は支配地域を拡大していった。そうした展開はロシア軍の介入まで続く。 そうしたシリアに対する侵略戦争の一端をレグリエル大佐は明らかにしたのだが、当然のことながら、それはアメリカ主導軍のタブーだった。
2019.02.20
アメリカはベネズエラの再植民地化を1998年にウゴ・チャベスが大統領選挙に勝利してから目論んできたが、まだ実現できないでいる。ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2002年にはエリオット・エイブラムズ、オットー・ライヒ、ジョン・ネグロポンテを中心とするクーデターを試みたが失敗、13年3月にカリスマ性のあったチャベスが58歳で死亡したが、後継者のニコラス・マドゥロも倒されていない。 アメリカ政府を後ろ盾とするフアン・グアイドは勝手に大統領を名乗り、2月23日に何かをするようなことを言っているが、世論調査の結果を見ると国民の57%はマドゥロ支持、グアイドを支持しているのは32%。軍隊もマドゥロ派。ラテン・アメリカでは定番のCIAが操る軍事クーデターは難しい状況だ。 キューバ政府によると、アメリカは特殊部隊をベネズエラの周辺に派遣、カリブ海諸国の基地へ輸送機を送り込んだという。軍事作戦の一環とも見られている。 その前にはイギリス海兵隊の部隊が中米ベリーズにあるイギリス軍の施設へ入り、ジャングルで軍事演習を実施していると伝えられていた。 軍事侵略が実行される場合、その作戦に合わせてグアイドは抗議活動を演出、戦闘には傭兵が投入される可能性がある。そうした動きを牽制するためにキューバ政府は情報を流しているのかもしれない。
2019.02.19
アメリカ議会で好戦派のひとりとして知られているリンゼイ・グラハム上院議員によると、ドナルド・トランプ大統領はヨーロッパ各国に対し、シリア北部に「緩衝地帯」を儲けるために軍隊を派遣するように求めているという。 トランプ大統領はアメリカ軍の地上部隊を撤退させると決断、その意向に従ってジェームズ・マティス国防長官は部隊をシリアから撤退させる命令書に署名している。 この命令があるにもかかわらず、アメリカ軍はシリア北部へ軍事物資を運び込み、イラクとの国境周辺で軍備を増強しているともいう。 トランプの命令は有力メディアや議会だけでなく、閣内にも反対派が存在する。すでにマティス長官は辞意を表明し、ボーイングの副社長を務めたパトリック・シャナハンが長官代理として国防総省を指揮している。マイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官、マイク・ポンペオ国務長官もトランプの決定を否定するような言動を繰り返してきた。 ユーラシア大陸の沿岸地域を支配して内陸部の中国やロシアを締め上げるというアメリカやイギリスの長期戦略を考えると中東を手放すことは考えられず、何らかの形で支配を続けるつもりだろう。イギリスやフランスもシリア占領を続け、その一部を奪おうとしているので、アメリカの誘いに乗る可能性はある。 ユーフラテス川の北側には油田地帯が存在、アメリカ支配層はそれを手放そうともしないだろう。彼らはその地域に「満州国」を築こうとしているのだ。 2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAがバラク・オバマ政権に提出した報告書の中で、政権が反政府軍を支援するという政策を変更しないと東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると警告していた。 この警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になったが、これもシリア北部の油田を支配することがひとつの目的だったと考えられている。この支配地域が「満州国」的な存在だ。 現在、イラン情勢を巡ぐる姿勢でアメリカとEUは対立しているが、シリアの油田という餌をEUへ示している可能性もある。
2019.02.18
回顧録を出したアンドリュー・マッケイブ元FBI副長官がアメリカのネットワーク局CBSのインタビュー番組に登場、2017年5月にドナルド・トランプ大統領がジェームズ・コミーFBI長官を解任した後、彼は同僚とトランプ大統領をホワイトハウスから追放する謀議を行ったと語り、話題になっている。 マッケイブによると、目的を達成するために閣僚を雇えるかどうかを討議、副司法長官だったロッド・ローゼンスタインはトランプの近くにいる人物に盗聴器をつけさせようと提案したという。ローゼンシュタインはこの話を否定しているが、事実なら大きな問題になる。 FBIはCIAなどと同じようにロシア政府が2016年の大統領選挙に介入した疑惑を主張している。2015年の段階で支配層はヒラリー・クリントンを次期大統領に内定していたのだが、16年に入ってから風向きが変わったのだが、その原因はロシアにあるというわけだ。 流れの変化が言われ始めたのは2016年2月3日にヘンリー・キッシンジャーがモスクワでウラジミル・プーチンと会談してきら。3月からウィキリークスはヒラリー・クリントンの電子メールを公表しはじめ、そうした流れは加速する。 7月22日にはDNC(民主党全国委員会)の電子メールも明らかにされるのだが、その中には、民主党の幹部へバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう求めるものも含まれていた。 この電子メールはハッキングされたと主張する人もいるが、データの分析からハッキングではなく内部でダウンロードされたと推測する専門家は少なくない。7月10日に射殺されたDNCのスタッフ、セス・リッチがウィキリークスへ渡したと考える人もいる。 警察は強盗がリッチを殺したと発表しているが、それに納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始める。 この探偵によると、セスはウィキリークスと連絡を取り合い、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルがセスからウィキリークスへ渡されているとしている。のちにウィラーガーが雇い主に無断で調査結果を外部で話したことが問題になり、情報は出なくなった。 リッチが殺される5日前、コミーFBI長官はヒラリー・クリントンが国務長官だった時代の電子メールに関する声明を発表、その中で彼女は機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、またそうした情報をきわめて軽率に扱っていたことを認めているのだが、その上で司法省に対して彼女の不起訴を勧告していた。 声明の中に出てくる「きわめて軽率(Extremely Careless)」という表現は元々「非常に怠慢(Grossly Negligent)」だったとされている。それをFBI捜査官のピーター・ストルゾクが書き換えたのだ。 この書き換えは重要な意味を持つ。「非常に怠慢」だと認められた場合、罰金、あるいは10年以下の懲役が科せられるのだ。クリントンが刑務所行きになることを防ぐために書き換えたと見られている。 不起訴の理由としてクリントンが3万2000件近い電子メールを消去してしまったことも挙げられているのだが、全てのメールはNSAが記録しているので理由にならない。この件をFBIは封印したいのだ。 その後、2016年秋にフュージョンなる会社はCIAの仕事をしていたネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼した。フュージョンを雇ったのは民主党の法律事務所であるパーキンス・コイだ。 ネリーの夫、ブルース・オーは司法省の幹部で、このオーはフュージョンの経営者、グレン・シンプソンとこの年の11月に会っている。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはクリストファー・スティールに調査を依頼することになった。 本ブログでは何度も書いてきたことだが、スティールはイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)の「元」オフィサーで、1990年から93年までモスクワで活動していた。スティールは長期にわたるFBIの情報提供者だったとも言われている。 このスティールが作成した報告書は根拠薄弱で信頼できない代物。この事実はスティール本人も認めているが、その報告書を元に下院情報委員会で告げたのがアダム・シッフ下院議員はロシア疑惑劇の開幕を宣言した。2016年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を2017年3月に出したのだ。そして同年5月にロバート・マラーが特別検察官に任命される。 この後にFBIの幹部たちはトランプを排除するための謀議を行ったとマッケイブは語ったわけだ。マッケイブの妻、ジルは2015年3月にバージニア州上院議員選挙への出馬を表明、67万5000ドル以上をクリントンと親しいテリー・マコーリフなどから受け取っている。 そもそもアメリカの投票で不正があると指摘されたのは裁判所がジョージ・W・ブッシュの当選を決めた2000年の選挙。この選挙ではバタフライ型投票用紙などが原因で混乱、通信社のAPが「スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)」の投票予測でクリントンが圧倒、勝利は確定していると宣伝してブッシュ当選の雰囲気が作られたことでも話題になった。 その後投票の電子化が進み、不正は容易になったと指摘され、2016年の選挙ではヒラリー・クリントンを当選させるために不正システムが使われるのではないかと懸念する声が高まっていた。
2019.02.17
ロシアのウラジミル・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、そしてイランのハッサン・ロウハウニ大統領が2月14日にロシアのソチでシリアの和平プロセスについて話し合った。 シリアを侵略、不法占領しているアメリカのドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍の地上部隊を撤退させると決断、その意向に従ってジェームズ・マティス国防長官は部隊をシリアから撤退させる命令書に署名したと伝えられている。 しかし、その決定に対する反発は強い。有力メディアからの批判だけでなく、マティス長官は辞任を表明、マイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官、マイク・ポンペオ国務長官もトランプの決定を否定するような言動を繰り返している。 こうしたことからトルコ大統領はアメリカ軍の撤退に懐疑的になっているのに対し、ロシア大統領は期待を口にしているのだが、プーチン大統領は2017年にロシアが西側との関係で犯して最も重大な間違いはロシア側が西側を信用しすぎたことだと記者に答えている。 ロシア、トルコ、イランは連携、この3カ国にシリアやイラクも加わってアメリカに対抗している。トルコはアメリカ政府の恫喝を無視、ロシアから防空システムのS-400を購入する意向だ。 その3カ国だが、不協和音も聞こえてくる。トルコはクルド系のPKK対策だとして軍隊をシリア領内へ侵攻させたが、これは1998年のアダナ合意に従ってのことだと主張している。 しかし、イランやシリアはトルコが資源を支配するために占領地を作ろうとしていると疑い、アダナ合意はトルコが2011年春からシリア侵略に加担したことで意味をなさなくなったと考えている。 それに対し、ロシア政府は最大の問題はアメリカ軍の存在だと指摘、アダナ合意を再び機能させようとしている。とりあえず、ロシア、イラン、トルコの連携は維持されている。
2019.02.16
ドナルド・トランプがベネズエラの体制転覆工作を指揮させる目的で特使に任命したエリオット・エイブラムズが下院外交委員会に登場した。 その公聴会でイルハン・オマール下院議員がエイブラムズを追求する場面があった。本ブログでも書いたように、オマール議員はイスラエル・ロビーの影響力を問題にした議員だ。 そのオマール議員はエイブラムズがイラン・コントラ事件と自身の関わりについて議会へ情報を隠した罪を1991年に認め、大統領だったジョージ・H・W・ブッシュの恩赦で助けられたと指摘、そうした人物の証言を信用できるのかと皮肉っている。 イラン・コントラ事件とはイスラム革命後のイランへの武器密輸とニカラグアの革命政権に対する秘密工作。アメリカやイスラエルの属国的な存在だったイランの王制が1979年2月に倒されたが、その年の11月にテヘランのアメリカ大使館が「学生」に占拠され、53名が人質になった。 アメリカでは1980年に大統領選挙があった。現職のジミー・カーターはイスラム革命を阻止できなかった上、イスラエルへの忠誠度が足りないということで支配層から批判されていたが、投票前に人質を解放できれば勝利する可能性はあった。 逆に共和党は人質が解放されては困る。そこでロナルド・レーガンやジョージ・H・W・ブッシュの共和党陣営はイスラエルを巻き込み、イラン側と人質解放の遅延交渉を始めた。イランの新体制に親米グループを形成する狙いもあったのだろう。共和党陣営はそうした工作を否定しているが、行われたとする信頼できる複数の証言や証拠が存在する。(この辺の事情は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』で説明した。) 結局、選挙ではレーガンが大統領に選ばれ、1981年1月20日に就任するのだが、レーガンが宣誓した20分後に人質は解放された。 エイブラムズが関係したのは中米での秘密工作。議会から政権転覆工作を禁止されて予算がでなかったこともあり、CIAなど工作グループは麻薬(コカイン)取引で稼いでいたことがCIA内部の調査でも確認されている。 その確認されている事実を捜査していたロサンゼルス市警の特捜隊は解体されてメンバーは追い出され、記事にした記者は有力メディアから総攻撃を受けて新聞社を追い出されて自殺に追い込まれた。 中米での工作はニカラグアだけが対象でなく、エル・サルバドルでも「汚い戦争」が実行された。その中でCIAの手先になっていた軍人や警官は1980年3月にカトリックのオスカル・ロメロ大司教を暗殺、その年の12月にはカトリックの修道女ら4名が惨殺された。 1981年12月にはエル・モソテの村で住民900名から1200名が殺された。この事件についてエイブラムズはコミュニストのプロパガンダだと主張している。オマール下院議員はその発言についても指摘している。 虐殺やクーデターと関わってきたエイブラムズだが、オマール議員の追及で興奮、その映像が放送されてしまった。
2019.02.15
資金力と情報力は支配システムを支える重要な柱であり、資金と情報の独占は独裁体制を生み出す。安倍晋三政権もインターネット上の情報規制に乗り出しているが、その目的もそこにある。 日本の宗主国、アメリカでは第2次世界大戦の直後にモッキンバードと呼ばれる情報支配プロジェクトが始められた。マスメディアを統制し、支配層にとって好ましい情報を流し、好ましくない情報は隠すということだ。勿論、作り話を広めることもある。 1970年代にエレクトロニクス技術が急速に進歩、監視技術の高度化が進むのだが、その一方で被支配層が既存メディアを頼らずに情報を集め、発信することも可能になった。支配層の情報統制を揺るがしかねない事態だ。そこで情報規制の強化が図られている。 支配層が警戒する情報はタブー視される。アメリカの場合、戦争やイスラエル/シオニストの実態を明らかにすることは許されない。日本で最も厳しく規制されているのはアメリカの闇だ。 当然、アメリカでは議員も通常、タブーを犯すことはないのだが、そのタブーを犯す議員が現れた。TPP、内政干渉、戦争などに反対してきたタルシ・ガッバード下院議員やイスラエルのロビー団体AIPACによるアメリカへの影響力を批判するイルハン・オマール下院議員だ。当然、有力メディアの攻撃対象になっている。 このふたりはベネズエラに対する内政干渉にも反対しているが、この問題でははロ・カンナ下院議員やバーニー・サンダース上院議員も同調している。 2016年の大統領選挙でサンダースは民主党から立候補したが、ヒラリー・クリントンを候補者とすることを内定していた民主党の幹部はサンダース潰しを画策したと言われている。その内幕を明らかにする電子メールを公表したのがウィキリークス。 当然、サンダース支持者は怒る。ヒラリーがドナルド・トランプに負けた大きな要因だが、民主党の幹部や有力メディアはその事実を封印、トランプとロシアの関係が怪しいという怪しい話を流布しはじめる。これがロシアゲートだ。作り話であり、証拠などはない。 民主党の幹部がサンダース潰しを画策しなければならなかったのは、サンダースの人気が急上昇したからだ。ヒラリーが巨大軍需企業ロッキード・マーチンをスポンサーにしていることは有名で、しかも金融機関やシオニストなども後ろ盾にしていることがわかっていた。 彼女を担いでいた好戦派はロシアを再びアメリカ支配層の植民地、あるいは属国にしようと目論んでいたが、彼らの手法は脅して屈服させる。脅しに屈しないロシアを脅そうとすれば、到達地点は核戦争だ。この点はバラク・オバマも同じだった。 こうした支配層の狂気を危険だと考える人がロシアとの関係修復を訴えていたドナルド・トランプを支持したとしても不思議ではない。 支配層の内部では2015年の段階で大統領に内定していたヒラリー・クリントンがトランプに敗れたのは支配層に対する庶民の反発がそれだけ強いことを意味しているが、そうした怒りは新たな議員も生み出した。そのひとりが2016年の選挙で初当選したカンナ下院議員や18年の中間選挙で初当選したオマール下院議員だ。2013年に初当選したガッバード下院議員は2020年の大統領選挙に出馬する意向だという。
2019.02.14
イラクが侵略される2年前、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された。クラーク元最高司令官によると、その数週間後にドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺で攻撃予定国リストが作成されていた。そこにはイラク、シリア、イランのほか、レバノン、リビア、ソマリア、そしてスーダンが載っていた。 このうちリビアとシリアは2011年春に攻撃される。西側の有力メディアは今でも「内戦」だと言い張っているが、アメリカなどが送り込んだジハード傭兵が戦争を始めたのだ。 両国に対する攻撃は2001年の段階で決定済みで、07年にはジハード傭兵を使うことが決まっていたが、その作戦を最終的に承認したのはバラク・オバマ大統領。2010年8月にPSD-11を出したのだ。そして「アラブの春」が始まる。 シリアより1カ月早い2011年2月に戦争が始まったリビアで侵略側は飛行禁止空域を導入して制空権を握り、米英は艦船から巡航ミサイルを発射する。5月にはNATO軍機が空爆を開始、10月にはムアンマル・アル・カダフィが惨殺された。 カダフィが殺されたとCBSのインタビュー中に知らされたヒラリー・クリントンは「来た、見た、死んだ」と口にして喜んでいるが、この時にベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、NATOとアル・カイダ系武装集団が同盟関係にあることが発覚してしまう。(ココやココ) リビアでカダフィ体制が崩壊すると侵略勢力は戦闘員や武器/兵器をシリアへ移動させるが、その過程でアメリカなどがアル・カイダ系武装勢力を使っていたことが明確になった。 ベンガジはアメリカの軍や情報機関が拠点としていたが、そこのアメリカ領事館が戦闘員や武器をシリアへ運ぶ工作の拠点になっていた。その領事館が2012年9月に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されている。PSD-11ではムスリム同胞団が中心に据えられていたが、これに反発した勢力が実行したとも推測されている。 NATOとアル・カイダ系武装集団の同盟関係が発覚すると、オバマ大統領は「穏健派」なるタグを持ち出して弁明するのだが、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAがオバマ政権に提出した報告書の中で、シリア政府軍と戦っている主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団であり、オバマ政権が政策を変更しないと東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると警告する。この警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になった。 オバマ大統領は2015年、シリアに対する直接的な軍事侵攻の準備を始めたと思える動きを示す。2月に国務長官をチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーターへ、9月に統合参謀本部議長をマーティン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させたのだ。ヘイゲルは戦争に慎重な立場で、デンプシーはサラフィ主義者やムスリム同胞団を危険だと考えていた。 ジハード傭兵を危険だと考える人物からシリアの体制転覆に積極的な好戦派へ替えられたのだが、これに対してロシア軍はシリア政府の要請で9月末に軍事介入、ジハード傭兵を攻撃して占領地域を急速に縮小させはじめる。 その後、ロシア政府はアメリカ政府との連携を模索、状況はこじれてしまう。ウラジミル・プーチン露大統領は2017年10月に記者からの質問に答え、「西側との関係で我々が犯した最も深刻な間違いは信用しすぎたということだ」と語ったが、遅くとも西側が信用できないことは1990年代にわかっていたはず。ロシアでは親西側派の力がそれだけ強いということなのだろうが、それはロシアにとって大きなハンデになっている。 イドリブ制圧作戦をシリア政府は中断してきたが、その前、アメリカをはじめとする西側勢力は艦船や爆撃機を派遣するだけでなく、化学兵器話を使おうとしていたと見られている。当時、44名の子どもが誘拐されたと伝えられたが、その子どもをイギリスの情報機関MI6が犠牲者に仕立て上げようと計画、SCD(シリア市民防衛)、別名「白いヘルメット」が偽旗作戦の主役を演じるとも伝えられていた。イドリブ制圧作戦の再開でこのシナリオが復活する可能性もある。(了)
2019.02.14
シリアで軍事的な緊張が高まっている。今月に入ってトルコから約1500名の戦闘員がイドリブへ入ってアル・カイダ系のジャブハト・アル・シャム(ジャブハト・アル・ヌスラ)と合流したと伝えられている。 この武装グループはシリア政府軍に対して攻撃を続けてきたが、政府軍部隊に対して化学兵器が使用されたともいう。それに対し、政府軍はイドリブ周辺に物資を運び込んで戦闘の準備をしているようだ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アル・カイダとはロビン・クック元英外相が指摘したように、CIAの訓練を受けたムジャヒディンの登録リスト。そうした武装集団は存在しない。勿論、革命軍でも造反軍でもない。傭兵だ。 アラビア語でアル・カイダは「ベース」を意味、「データベース」の訳語としても使われる。オサマ・ビン・ラディンは派遣ムジャヒディンのリクルート担当だった。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟は遅くとも2007年の段階でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを攻撃する秘密工作を始動させている。この段階で傭兵の雇い主はこの三国同盟だったと言えるだろうが、その後、侵略勢力にイギリス、フランス、トルコ、カタールなどが加わった。その連合体が後に分離、必然的に傭兵も雇い主に合わせて分離することになる。武装勢力間の戦闘が起こる主因はそこにあると言えるだろう。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年の段階でネオコンのポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしたというが、2003年にイラクは侵略、残るシリアとイランが攻撃されるのは必然だった。当時、ウォルフォウィッツは国防次官を務めていた。(3月、10月)(つづく)
2019.02.13

国際金融機関、つまりWB(世界銀行)、IMF(国際通貨機関)、OECD(経済協力開発機構)、BIS(国際決済銀行)などがアメリカ支配層の影響下にあるが、そうした支配関係をアメリカが戦争の道具として使っていることを示す文書をウィキリークスが公表した。先月28日のことだ。 こうした国際機関は欧米の私的金融機関と連携して弱小国の富を収奪してきた。私的な金融機関がターゲット国の腐敗勢力(買収されたエリート)と手を組んでターゲット国を借金漬けにしたり、買収に失敗した場合は融資をストップするなどして揺さぶりをかける。これは常套手段だ。融資された資金を腐敗勢力はオフショア市場にある自分の口座へ沈める。 そうした工作と並行してメディアなどを使ったプロパガンダを展開、上層部を配下に納めた労働組合を使った抗議活動を始めるなどして社会を不安定化、その上で暴力も使われることも少なくない。例えばウクライナではネオ・ナチ、リビアやシリアではジハード傭兵だ。軍事クーデターも行われてきた。 そもそもイギリスのMI6はシティ、アメリカのCIAはウォール街、つまり両機関とも金融機関と歴史的に深く結びついている。アメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラーがかつて語ったように、軍隊は巨大資本の金儲けのために働いてきた。 軍隊、情報機関、金融機関は連携して侵略戦争を実行してきたが、本ブログでも繰り返し書いてきたように、1990年代から宣伝会社の役割が大きくなっている。支配層にとって望ましいイメージを庶民に埋め込み、操ろうということだ。そうした役割を戯画化した映画が「マトリックス」だろう。 アメリカ支配層は第2次世界大戦の直後、モッキンバードと呼ばれる情報操作プロジェクトを始めた。イギリスで2009年に始動した政治的手腕研究所、その団体が始めたインテグリティ・イニシアティブなるプロジェクトの目的も情報操作。その手先が有力メディアだ。 モッキンバードが開始された当時の中心メンバーはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしフィリップ・グラハム。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、ヘルムズの母方の祖父は国際決済銀行の初代頭取。グラハムはワシントン・ポスト紙のオーナーだったが、義理の父親(つまりキャサリンの父親)は世界銀行の初代総裁だ。
2019.02.12
イギリス海兵隊の部隊が中米ベリーズにあるイギリス軍の施設へ入り、ジャングルで軍事演習を実施しているようだ。言うまでもなく、その近くにはアメリカが政権転覆を仕掛けているベネズエラがある。 ドナルド・トランプ政権はベネズエラでのクーデターを指揮させるためにネオコンのエリオット・エイブラムズを特使に任命したが、この人物は2002年にジョージ・W・ブッシュ政権がウゴ・チャベス転覆を倒すために試みたクーデターにも参加していた。 2002年のクーデター計画の中心人物はエイブラムズのほかにオットー・ライヒやジョン・ネグロポンテがいる。その際、アメリカ海軍の艦船がベネズエラ沖に待機していたとも言われている。 こうした外国軍が実際に軍事侵攻しなくても、威嚇にはなる。1月28日にジョン・ボルトン国家安全保障補佐官は記者会見の場へ「5000名の部隊をコロンビアへ」と書き込んだノートを持ち込んだが、これも脅しのつもりだろう。言うまでもなくコロンビアはベネズエラの隣国だ。 中東/北アフリカや東アジアでも言えることだが、このところイギリスの好戦的な動きが目につく。そのイギリスで労働者の権利を主張して戦争に反対するジェレミー・コービンが労働党の党首になっているが、これはイギリス国民の意思を反映したものだろう。 しかし、有力メディアのコービンに対する姿勢は友好的でない。一部の富裕層に利益を集中させ、侵略で富を盗もうという支配層の意思を反映しているのだろう。
2019.02.11
アメリカのバーニー・サンダースと同じように、イギリスでは労働党のジェレミー・コービン党首が有力メディアなどから批判されている。新自由主義者/ネオコンのトニー・ブレア一派に乗っ取られた労働党をコービンは取り戻した人物とも見られているが、だからこそ有力メディアに嫌われていると言えるだろう。 コービンはベネズエラへの内政干渉、つまり体制転覆工作に反対しているが、それは欧米支配層の意向に反する態度であり、保守党のウィリアム・ヘイグ元外相もコービンを批判している。ヘイグによると、他国の政策に干渉しないとイギリスの外交政策が制御不能に陥るらしい。つまり、イギリスの外交とは内政干渉だと宣言しているわけだ。 ヘイグが外相を務めていたのは2010年5月から14年7月、つまりリビアやシリアに対する侵略戦争をイギリスがアメリカなどと一緒に始めた時期と重なる。侵略こそがイギリスの外交だという考え方を体現したとも言える。 コービンはインテグリティ・イニシアティブなるプロジェクトからも攻撃を受けている。このプロジェクトは2006年に創設され、09年に始動した政治的手腕研究所が始めたもの。アノニマス(匿名)を名乗るハッカー集団が昨年(2018年)11月にこのプロジェクトに関する文書を公開している。 それによると、このプロジェクトの目的はイギリスの軍と情報機関による極秘の心理作戦を実行することにあり、その活動範囲はアメリカにも拡大、同国の国務省、FBI、DHS(国土安全保障省)、あるいは有力シンクタンクに強力な同盟者を育成しているという。原資の200万ドルはイギリスの外務省が出したという。 このプロジェクトはアメリカで第2次世界大戦が終わった直後に始められた情報操作プロジェクト、モッキンバードに似ていると言われている。(今回はこのプロジェクトに関する説明を割愛する) インテグリティ・イニシアティブと結びついている人物のひとり、ウィリアム・ブラウダーはボリス・エリツィン時代のロシアでクレムリンの腐敗勢力と手を組み、不正な手段を用いて巨万の富を築いた。 不正な手段で手に入れた資産をロシアから持ち出すために使われた銀行の中にリパブリック・ナショナル銀行ニューヨークがある。この銀行を創設した人物とプラウダーはヘルミテージ・キャピタル・マネージメントなる会社を共同で創設、その会計士がセルゲイ・マグニツキー。受託者はHSBC(昔は香港上海銀行と呼ばれた)だった。マグニツキーは2008年にロシアで逮捕され、取調中の09年、政治的手腕研究所が始動した年に死亡する。 アメリカのCIAがウォール街と深い関係にあるのと同様、イギリスの対外情報機関MI6はシティと関係が深いのだが、HSBCは治安機関のMI5とも結びき、その元長官を重役として迎え入れている。
2019.02.10
アメリカの支配層はベネズエラに対して経済戦争を仕掛けているが、これまでの手口を振り返ると、同時にメディアなどを使ったプロパガンダを展開、配下の労働組合、最近ではNGOを使った抗議活動で社会を不安定化させ、さらに暴力的な手段へ移行することが多い。 軍事クーデターも多用されてきたが、ターゲット国の内部に対立する勢力が存在すればそれを利用する。そうした対立がなければ外部から傭兵を投入する。リビアやシリアではサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵が投入された。 ラテン・アメリカでは軍事クーデターが繰り返されてきた。その黒幕はアメリカの巨大資本だが、今回、ベネズエラではクーデターの主体となる軍人を確保することに失敗したようだ。特殊部隊は侵略軍に対するレジスタンスの準備をしているともいう。 そこでアメリカの支配層はベネズエラ政府の資産を押さえ、傭兵を雇うという話が流れている。その傭兵でニコラス・マドゥロ政権を倒し、フアン・グアイドを中心とする傀儡政権を作るつもりではないかというわけだ。 アメリカ支配層はラテン・アメリカを支配する仕組みの一部として配下の軍人を訓練する施設を作った。1946年にパナマで設立したSOAだ。ここでは対反乱技術、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などを教え込んだ。 しかし、この施設は1984年にパナマから追い出され、アメリカのジョージア州フォート・ベニングへ移動、名称は2001年からWHISC(またはWHINSEC)へ変更されている。訓練内容は基本的に変化していないようだ。そのネットワークを使えば容易に傭兵は集まるだろう。 戦争が始まることを想定してなのか、マドゥロ政権は保有する金を売却しているが、その仲介をしたのが2018年に設立されたトルコの業者だという。
2019.02.09
シリアでアメリカ軍が軍備を増強、撤退するようには見えない。アメリカ軍がイラクからシリアにある同軍の平坦拠点へ軍事車両や軍備品を150両近いトラックで運び込んでいると伝えられている。ドナルド・トランプ大統領の命令とは逆の動きだと言えるだろう。 善意に解釈すると、トランプは大統領としての権限を持っていない。その推測が正しいなら、朝鮮半島に関する話し合いも無意味だ。 ソ連消滅の直後、1992年2月にアメリカ国防総省においてDPG草案という形で作成された世界制覇プランに基づき、ビル・クリントン政権の第2期目からアメリカ政府は動いている。このプランは国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを軸に作成されたが、そのウォルフォウィッツは1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。 アメリカ軍がロシア軍を圧倒していると信じていたクリントン政権とジョージ・W・ブッシュ政権は正規軍を投入したが、イラクやアフガニスタンでの戦争が泥沼化、ジョージアを使った南オセチアへの奇襲攻撃でロシア軍の強さを認識したこともあり、バラク・オバマ政権はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵を投入した。オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を出し、ムスリム同胞団を中心に据えた。 しかし、ジハード傭兵を使った侵略は失敗に終わった。シリアに対する侵略戦争が長引く中、オバマ大統領は2015年に政府を好戦的な布陣にする。つまり、2月に国防長官をチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーターへ、9月に統合参謀本部議長をマーティン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させたのだ。 これに対し、ロシア軍はシリア政府の要請に基づいて9月30日に軍事介入、アメリカ側が侵略の道具として使っていたジハード傭兵を攻撃し、その支配地域を縮小させていく。 そして2016年に入るとアメリカと手を組んでいたトルコがロシアに接近する。戦争の長期化で国内経済が苦境に陥り、アメリカに従うことが難しくなったのだ。 レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はこの年の6月下旬、ロシアに対してロシア軍機の撃墜を謝罪、7月13日にはトルコ首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆した。軍事蜂起(クーデター未遂)が引き起こされたのはその直後、7月15日のことだ。黒幕はアメリカだと見られている。 この後アメリカはクルドを手先として使うことになるが、それもここにきて難しい状況になっている。トランプ大統領がアメリカ軍をシリアから撤退させると決断したのは間違っていないが、ウォルフォウィッツが所属するネオコンは反発した。現在、アメリカ軍はシリア領の約30%、油田地帯を占領している。イスラエル、サウジアラビア、フランス、イギリスなどもアメリカ軍の撤退に反発した。 トランプ大統領はスタート時点から手足を縛られているが、その後、自由度はさらに小さくなっている。交渉相手とは見なされなくなっている可能性が高いが、トランプを押さえ込んでいる支配層の戦術はアメリカの崩壊を早めることになると見られている。
2019.02.08
アメリカのドナルド・トランプ政権は2月1日にINF(中距離核戦力全廃条約)の破棄をロシア政府へ通告、それを受けてロシア側は条約義務の履行停止を宣言した。アメリカの戦争マシーンに組み込まれつつある日本にとっても無縁ではない。 例えば日本政府が導入するとしている弾道ミサイル防衛システムのイージス・アショア。ポーランドやルーマニアに続いて日本でも配備するという。 日本政府は4664億円でシステム2基を購入するというが、1機約40億円というミサイルは別売りで、建設費などを入れると合計7000億円以上になるという試算もある。 弾道システム防衛システムは先制核攻撃とセットになっているという考え方もある。破壊を免れた相手の報復攻撃を迎え撃つということだ。防衛システムの導入が国際問題になる理由のひとつがここにある。 イージス・アショアの場合、別の批判もある。このシステムではSM-3というミサイルが使用されることになっているが、その発射装置は射程距離が2500キロメートルという巡航ミサイルのトマホークも使えると言われているからだ。防衛という名目でロシアや中国の周囲にランチャーを配置、INFの廃棄でトマホークを配備するということになっても不思議ではない。 第2次世界大戦後、アメリカは世界規模で戦争を行ってきたが、いずれも侵略戦争である。イージス・アショアに限らないが、アメリカの戦力を防衛を前提として議論するのは間違っている。
2019.02.07
アメリカ政府はベネズエラの民主的な政権をクーデターで潰そうとしている。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。 アメリカ支配層が潰そうとしているニコラス・マドゥロ大統領は昨年(2018年)5月に実施された大統領選挙において67.8%の得票率でアメリカ支配層を後ろ盾とする候補者に圧勝した。マドゥロ政権は民意によって成立したのだ。 このマドゥロ政権を倒そうとしているアメリカ支配層にEUや「リマ・グループ」も従っている。この「リマ・グループ」は「平和的な移行プロセス」を求めている。その主張を垂れ流す人たちもいるが、それは民意の否定にほかならない。 アメリカ政府は昨年、ベネズエラ軍の幹部に接触してクーデターに協力するように求めたが、説得に失敗したと言われている。特殊部隊は侵略軍に対するレジスタンスの準備をしているともいう。ロシアの存在もあり、「軍事的な移行プロセス」は難しい状況なのだ。 しかし、フアン・グアイドなる自称大統領へ権力を移行させるとする意思に変化はない。グアイドは2007年にアメリカのジョージ・ワシントン大学へ留学、新自由主義を信奉している。政権を奪取した暁には私有化を推進、国営石油会社のPDVSAをエクソンモービルやシェブロンへ叩き売るつもりだと言われている。 グアイドがアメリカへ留学する2年前、アメリカ支配層は配下のベネズエラ人学生5名をセルビアへ送り込んだことは本ブログでも書いた通り。セルビアにはCIAから資金が流れ込んでいるCANVASと呼ばれる組織が存在、そこでベネズエラの学生は訓練を受けた。CANVASを生み出したオトポール(抵抗)!はスロボダン・ミロシェビッチの体制を倒すため、1998年に作られた組織で、ジーン・シャープの理論に基づいて運動していたと言われている。運動の目的は富の略奪だ。 ベネズエラに限らず、アメリカの支配層は民主的な政権を潰してきた。例えば1953年のイラン、54年のグアテマラ、60年のコンゴ、73年のチリなどで民主的な政権をクーデターで倒している。 1965年のインドネシアで実行したクーデターではスカルノを排除しただけでなくアメリカ支配層に刃向かいそうな人びとを大量殺戮、カルト化が進められ、その影響は今も続く。 2011年3月にはシリアへジハード傭兵が送り込まれて戦争が始まるが、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は選挙で選ばれている。その前の月にはリビアでも体制転覆作戦が本格化しているが、この国の生活水準はEU並み、あるいはそれ以上だった。 2014年にアメリカ支配層はウクライナでクーデターを実行、やはり民主的に選ばれた政権を倒している。その手先になったのはネオ・ナチのグループで、このグループは今でもウクライナで大きな影響力を持っている。 アメリカの巨大金融資本は1932年の大統領選挙でニューディール派のフランクリン・ルーズベルトが当選するとクーデターを計画した。ファシズム体制の樹立を目指したのだが、これはアメリカ軍の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将によって阻止され、その議会証言が記録に残っている。ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の背後にアメリカ支配層が暗躍していたと信じる人は少なくない。それを示す事実も明らかにされてきた。 そのアメリカ支配層は体制転覆を正当化する口実として「民主化」や「人道」などを掲げる。そうした手法を政策として採用したのはロナルド・レーガン時代。「プロジェクト・デモクラシー」だ。アメリカ国内では偽情報で庶民を騙す目的で「プロジェクト・トゥルース」が始められている。こうした心理操作は効果的だった。
2019.02.06
ベネズエラには選挙で選ばれたニコラス・マドゥロという大統領が存在する。その大統領が気に入らない人びとはフアン・グアイドなる勝手に大統領を名乗っている人物への支持を表明、そうした動きを西側の有力メディアは煽っている。 アメリカの支配層は自分たちの利益にかなう場合、その国の政権を正当だと認める。アメリカの巨大資本に搾り取られることを拒否したなら、「独裁者」や「コミュニスト」といったタグをつけられ、否定されてきた。アメリカ支配層から認められるには、グアイド支持を打ち出さなければならない。 アメリカへの従属を拒否するウゴ・チャベスが大統領選挙に勝利した1998年からアメリカ支配層はベネズエラの政権を転覆させようと試みてきた。その間、アメリカ大統領はビル・クリントン、ジョージ・H・W・ブッシュ、バラク・オバマ、そしてドナルド・トランプへと交代してきたが、ベネズエラに対する姿勢に大差はない。 今年(2019年)1月にマイク・ペンス副大統領がグアイドに電話、その直後にグアイドは自らが大統領だと宣言、アメリカ政府はグアイドを「暫定大統領」だと承認した。アメリカ支配層に従う人びとは同調する。 しかし、ベネズエラ国内での工作は失敗したようだ。ここにきてベネズエラ空軍の幹部がグアイド支持を表明したが、アメリカ政府は昨年、ベネズエラ軍の幹部に接触してクーデターを持ちかけて説得に失敗したと言われている。特殊部隊は侵略軍に対するレジスタンスの準備をしているという。 クーデターが成功した場合、国営石油会社のPDVSAはエクソンモービルやシェブロンへ叩き売られると言われているが、石油は儲かる商品というだけでなく、ドル体制を維持する重要な柱でもある。 選挙で選ばれたわけでもない人物を勝手に「暫定大統領」として支持するような行為は内政干渉以外の何ものでもない。その内政干渉を打ち出したのは共和党のドナルド・トランプ政権だが、民主党の大半の議員は沈黙している。例外はロ・カンナ下院議員、タルシ・ガッバード下院議員、イルハン・オマール下院議員、そしてバーニー・サンダース上院議員。有力メディアから誹謗中傷のターゲットにされている。 2016年の大統領選挙で有力視されていたヒラリー・クリントンを失速させた一因はウィキリークスが公表したヒラリー・クリントンらの電子メールだった。その中にはサンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあり、サンダースの支持者を怒らせたのである。民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールもあった。 怒ったサンダース支持者の相当部分はヒラリーへ投票せず、ロシアとの関係修復を訴えていたトランプに敗北する大きな要素になったと言われている。有力メディアはその事実に触れず、ロシア政府が選挙に介入したとする話を証拠もなしに宣伝してきた。それがいわゆる「ロシアゲート」だ。このスキャンダルがでっち上げである可能性が極めて高いことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 グアイドを暫定大統領と認めることに反対した議員のひとりがこのサンダース。ガッバード議員はシリアへの軍事介入にも反対している。カンナはサンダース旋風が巻き起こった2016年の選挙で当選、オマールは昨年の中間選挙で選ばれた議員。ヒラリー・クリントンを担いでいた支配層に反発した人びとの支援を受けて当選したと言えるだろう。 本ブログでは何度も書いてきたように、西側の有力メディアの内部にはCIAのネットワークが張り巡らされている。CIAは歴史的にウォール街の機関である。有力メディアが巨大資本の意向に従って動き、「偽報道」をまき散らすのは必然だ。
2019.02.05
アメリカの支配層は少なからぬ民主的に選ばれた政権を破壊してきた。そして今、彼らはそのリストにベネズエラを書き込もうとしている。アメリカは民主主義を押しつけているのでなく、民主主義を破壊してきたのだ。 第2次世界大戦後にアメリカが行った最初の内政干渉はイタリアに対して行われた。戦争中、ヨーロッパで国としてドイツ軍と戦ったのはソ連だけ。西側でドイツ軍と戦ったのは市民で編成されたレジスタンスだった。 その中心メンバーがコミュニストだったこともあり、大戦後のフランスやイタリアではコミュニストが強く、その勢力をアメリカやイギリスを支配する人びとは潰そうとしたのだ。そうした戦略に基づいてNATOは作られ、破壊工作(テロ)部隊がNATOの内部で活動することになる。 イタリアで1960年代から80年代にかけ、極左を装って「爆弾テロ」を繰り返したグラディオはそのひとつだが、1962年8月にシャルル・ド・ゴールを暗殺しようとしたジャン-マリー・バスチャン-チリー大佐の背景も同じだった。 この人物が所属したOAS(秘密軍事機構)という秘密組織は1961年、ド・ゴールに反発する軍人らによって構成されたが、その黒幕はCIAの破壊工作部門だったのである。 OASは1961年4月にクーデターを計画するが、これをアメリカの新大統領、ジョン・F・ケネディが阻止した。クーデター軍がパリへ侵攻したならアメリカ軍を投入するという意思を明らかにしたのだ。CIAは驚愕した。1962年にOASの一派はド・ゴール大統領の暗殺を試みたものの失敗、ド・ゴールを救ったケネディ大統領は1963年11月に暗殺された。 アメリカは1953年にイランで合法政権をクーデターで倒している。大戦後、イラン政府はイランを食い物してきたAIOCの国有化を決める。クーデター後、1954年にAIOCは社名をBPへ変更した。 AIOCが生み出す収入で支配システムを維持していたイギリス支配層は激怒、アメリカ支配層を巻き込んでクーデターを実行しようとしたのだ。このクーデターはアメリカ側が主導権を握ることになった。 まずアメリカは反政府デモを開始、その際にコミュニストを装ったグループに暴れさせる。反政府デモの一部はモサデク支持の新聞社や政党、政府施設などを襲撃、CIAのエージェントがテヘラン・ラジオを制圧、首相だったモハマド・「モサデク解任の命令が国王から出され、ファジオラー・ザヘディが新首相に就任した」とする情報を流してクーデターは終わる。モサデクの支持派と反対派の衝突で約300名が死亡たと言われている。 イランの民主的な体制をクーデターで倒したアメリカ支配層は中央アメリカのグアテマラの政権を倒しにかかる。1950年に行われた総選挙で勝利、翌年に大統領となったヤコボ・アルベンス・グスマンが農地改革法を公布して国有地を分配、大地主の土地買い上げを実施、アメリカの巨大資本、ユナイテッド・フルーツの利権を脅かした。 そして1953年にアメリカ政府はクーデターを計画、CIAの破壊工作部門が指揮することになる。CIA配下の軍人が軍事蜂起するが、一般国民はクーデター軍と戦う意思を示した。それをアルベンス大統領は押しとどめ、1954年にに大統領官邸を離れる。流血の事態を避けたかったという。 クーデター政権は労働組合の結成を禁止、ユナイテッド・フルーツでは組合活動の中心にいた7名の従業員が変死、コミュニストの疑いをかけられた数千名が逮捕され、その多くが拷問を受けたうえで殺害されたとされている。その後40年の間に軍事政権が殺した人の数は25万人に達するという。クーデターを間近で見ていたひとりがエルネスト・チェ・ゲバラだった。 1973年9月11日にはチリでアメリカ政府を後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトが、軍事クーデターで民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ政権を倒した。アメリカ政府でクーデターを指揮していたのは大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー。その命令でCIAの破壊工作部門が動いている。 まずCIAは選挙に介入した。メディアや映画だけでなく、パンフレット、リーフレット、ポスター、郵便物、壁へのペインティングなどを総動員したのだが、アジェンデが勝利する。 一方、アメリカ資本と結びついていたチリの支配層は生産活動を妨害、アメリカの巨大金融機関はチリへの融資をストップ、世界銀行も同国への新たな融資を止めた。1972年になるとトラックの運転手がストライキを実施、商店主、工場経営者、銀行なども同調して全国的なロックアウトに発展する。アメリカ自身を含めてCIAは労働組合の幹部をコントロール、自分たちの手先として使ってきた。 クーデターの結果、アメリカの巨大資本に盾突く勢力は潰滅、新自由主義が導入される。シカゴ大学のミルトン・フリードマン教授のマネタリズムに基づき、大企業/富裕層を優遇する政策を実施したのだ。その政策を実際に実行したのがいわゆるシカゴ・ボーイズ。フリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授といった経済学者の弟子たちだ。 現在、ベネズエラの大統領は2018年5月の選挙で選ばれたニコラス・マドゥロだが、アメリカやEUは勝手に大統領を名乗っているフアン・グアイドを支持している。その直前、2月にアメリカの国務長官だったレックス・ティラーソンはベネズエラでのクーデターを示唆、ラテン・アメリカ諸国を歴訪してベネズエラへの経済戦争に協力するように要請している。それでもマドゥロは勝利した。 ドナルド・トランプ政権はベネズエラに経済戦争を仕掛け、石油の輸出を止めようとしている。イランの石油も買うなと各国を恫喝、猶予期間は過ぎ去ろうとしている。アメリカの命令に従う人びとはどのようにエネルギー資源を確保するつもりなのだろうか?
2019.02.04
ドナルド・トランプ政権はロシアや中国に対する攻撃を強め、石油に対する支配力を強めようとしているが、これはビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマといった大統領の政策も基本的に同じだった。ヒラリー・クリントンはロシアとの核戦争を厭わない姿勢を見せていた。 アメリカの支配層は1991年12月のソ連消滅によって自国が唯一の超大国になり、世界の覇権を手中に収める寸前だと信じた。そして新しい新秩序を確立するため、1992年2月にネオコンは国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成している。 当時のアメリカ大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官がディック・チェイニー、国防次官がポール・ウォルフォウィッツ。リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚した後、副大統領から昇格したジェラルド・フォード大統領の下でこの3名は重要なポストについている。 この政権ではデタント派が粛清され、ブッシュはCIA長官へ、チェイニーは大統領首席補佐官へそれぞれ就任、ウォルフォウィッツはブッシュCIA長官が指導させたCIA内の反ソ連プロパガンダ集団チームBのメンバーに選ばれた。ジミー・カーター政権では国防副次官補だ。 DPG草案はウォルフォウィッツを中心に書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれる。このドクトリンに基づいてネオコン系シンクタンクのPNACが2000年に「アメリカ国防の再構築」という報告書を出した。この年に行われた大統領選挙で大統領に選ばれたジョージ・W・ブッシュはこの報告書に基づいて国際問題に関する政策は決めた。 国防政策を「革命的に変化させる」としているのだが、そのためには「新たな真珠湾」のような何かが必要だとも主張している。ネオコンに好都合なことに、2001年9月11日にそうした衝撃的な出来事が引き起こされた。 ウォルフォウィッツ・ドクトリンの第1の目的は新たなライバルの出現を阻止すること。敵対勢力が資源を支配することも防がなければならないとしている。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、このドクトリンが作成される直前、ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っていた。(3月、10月) また、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから数週間後、国防長官の周辺で攻撃予定国リストが作成され、そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、イラン、そしてスーダンが載っていたともいう。 ところが、この後にウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることに成功する。2014年にネオコンはネオ・ナチを使い、ウクライナでクーデターを成功させるが、それを切っ掛けにして中国とロシアが戦略的な同盟関係に入った。アメリカに対する危機感を中国も抱いたということだ。 ロシアは世界有数の資源国だということもあり、米英支配層はロシアを再属国化しようと目論む。その一方、エネルギー資源を支配するために中東、そしてベネズエラを支配しようとしている。 ロシアや中国の制圧が先か、資源国の制圧が先かでアメリカ支配層内で対立があるようだが、結果として同時進行する形になっている。ウォルフォウィッツ・ドクトリンに執着しているとも言えるが、このドクトリンはロシアの再独立で破綻している。この事実を認めたくないネオコンは正気を失ったようで、人類を破滅へと導きつつある。
2019.02.03
ベネズエラ政府はイングランド銀行に金塊31トンを預けていると言われている。その金塊を引き揚げようとしたところ、銀行に拒否されたという。 アメリカ支配層は1999年にウゴ・チャベスが大統領に就任して以来、政権転覆を目論んできた。その間のアメリカ大統領はビル・クリントン、ジョージ・H・W・ブッシュ、バラク・オバマ、そして今はドナルド・トランプ。 各国は保有する金塊の多くをアメリカのニューヨーク連銀やケンタッキー州フォート・ノックスにある財務省管理の保管所に預けている。ドルの信頼感が低下する中、いくつかの国がそうした金塊を引き揚げようとしたが、スムーズには進んでいない。そこで、アメリカに預けた金塊は何者かによって持ち去られたのではないかという疑惑もあるが、ベネズエラの場合、アメリカからは引き揚げられたようだ。 貿易の決済に広く使われてきたドルは紙製の印刷物にすぎず、いつ無価値になっても不思議ではない。ドルに依存した場合、アメリカからの金融攻撃に対して脆弱だということもある。ロシアや中国をはじめとする国々は現物の金を買っている理由はそのためだ。 アメリカから自立するためにはドル体制から離脱する必要があると考える人は少なくない。そのひとりがリビアに君臨していたムアンマル・アル・カダフィだった。アフリカを自立させるため、金貨をアフリカの基軸通貨にしようとしたのだ。 そのリビアをアメリカが主導する勢力が2011年2月に先制攻撃したが、フィナンシャル・タイムズ紙によると、その当時、リビアの中央銀行が保有する金の量は少なくとも143.8トン。リビア国内に保管していたという。 ウィキリークスが公表したシドニー・ブルメンソールからヒラリー・クリントンへ宛てた電子メールによると、アメリカがリビアを攻撃した理由はその金と石油利権だったことを暗示している。 2011年10月、カダフィが惨殺されたことをテレビのインタビュー中に知らされたヒラリーは「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいる。バラク・オバマ大統領にリビア攻撃を強く迫ったのはこのヒラリー、そしてサマンサ・パワーとスーザン・ライスだったとされている。 リビア侵略ではフランスが積極的だったが、その理由も通貨にあったと言われている。西アフリカや中央アフリカにはフランを使っている国があり、金貨ディナールが流通するとフランスのアフリカにおける利権が消失する可能性があった。 2014年2月にオバマ政権はウクライナをクーデターで乗っ取ることに成功した。クーデターを実行した中心グループはネオコンであり、その手先はネオ・ナチ。 クーデター直後の3月、何者かがウクライナ政府の保有していた金のインゴットをアメリカへ秘密裏に運び去った疑いが持たれている。 その日、ポリスポリ空港に4輌のトラックと2輌の貨物用のミニバスが現れ、そこから40個以上の箱をマークのない航空機へ運び込まれたと報道されている。箱の中身は金だというのだ。車両はいずれもナンバー・プレートが外され、黒い制服を着て武装した15名が警戒する中での作業だった。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃された際、攻撃されていない7号館も爆破破壊のように崩壊しているが、そこに保管されていた金塊も消えたと言われている。 ソ連が消滅する直前、ゴスバンク(旧ソ連の国立中央銀行)に保管されている金塊2000トンから3000トンが400トン程度を残して消えたとも言われている。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ソ連消滅はアメリカ大統領だったジョージ・H・W・ブッシュを中心とするCIA人脈とソ連の情報機関KGBの中枢を占めていた腐敗勢力によって実行されたクーデター(ハンマー作戦)によると言われている。そうした背景があったので、30歳前後の若者がクレムリンの腐敗勢力、つまりボリス・エリツィンの周辺と手を組んで国の資産を盗んで巨万の富を手にすることができたわけだ。 アメリカ支配層はベネズエラが保有する金塊も盗み出そうと狙っているはずである。
2019.02.02
欧州議会は1月31日、ベネズエラの大統領を選挙で選ばれたニコラス・マドゥロから勝手に大統領を名乗り始めたフアン・グアイドへ交代するべきだとする決議を可決、EU加盟国は決議に従うように求めた。ベネズエラのクーデターを支援すると宣言したのだ。 欧州議会は選挙で選ばれた議員によって構成されているが、EUの政策を決定しているのは欧州連合理事会。つまり欧州議会は民主主義を装うための飾りに近い存在だ。 堀田善衛はEUの前身であるECについて「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年)としているが、これは欧州連合理事会の説明としても通用するだろう。 今回の決議は各国で実施された選挙の結果をEUは否定することができるという宣言であり、EU加盟国に対しても適用できる。自分たちがアメリカと同じ世界帝国になったということなのか、アメリカ支配層の決定に従うという従属宣言だということなのだろう。 アメリカやEUの支配層によるベネズエラの体制転覆工作には大きな問題がある。経済戦争を仕掛けてきたが、ロシアや中国は支えてきた。NATO加盟国のトルコもマドゥロ政権を支持している。 昨年12月12日に2機のTu-160戦略爆撃機をベネズエラへ派遣し、同国軍のSu-30戦闘機とF-16戦闘機とカリブ海上空を約10時間にわたって飛行させたロシア政府が軍事介入するかどうか不明だが、ベネズエラ軍はアメリカ政府の命令に従うようには見えない。特に特殊部隊は侵略軍に対するレジスタンスの準備をしていると言われている。国民の大多数もマドゥロを支持している。つまり、グアイドを支持しているのはベネズエラの富豪たちや欧米の支配層にすぎない。 石油の埋蔵量はサウジアラビアを上回ると言われているベネズエラをアメリカの支配層は支配したいのだろうが、容易ではない。ベネズエラがイラク、シリア、リビアのような状態になった場合、アメリカ自体が不安定化する。
2019.02.01
全33件 (33件中 1-33件目)
1


