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ロシアが抱えている最大の問題はウラジミル・プーチン大統領が新自由主義から抜け出せないことにあると言われてきた。経済部門は今でもボリス・エリツィン時代の延長線上にある。政府への従属を受け入れられない強欲なオリガルヒはロンドンやイスラエルへ逃げたが、ウォール街やシティとつながる勢力がプーチン政権でも大きな役割を果たしてきた。 建前はどうであれ、このイデオロギーに公正さは含まれていない。「個人の自由」と言えば聞こえは良いが、殺す自由、破壊する自由、盗む自由も含まれる弱肉強食の思想。そうした世界における「法」とは強者の意思にすぎず、「法の支配」とは富豪たちによる独裁にほかならない。 G20首脳会議が6月28日から29日にかけて大阪で開催されたが、その直前にプーチン大統領はモスクワでイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューを受け、その中で「リベラルな思想は時代遅れになった」と語っている。その例として挙げられているのが移民政策。プーチンによると、移民は処罰を受けずに殺人、略奪、レイプが可能になっているという。 西側の移民政策は労働者の賃金を押し下げることを主な目的にしていることは少なからぬ人が指摘している。その通りだろう。「人道」は単なる建前だ。パレスチナでの虐殺を放置してきた「国際世論」が人道的だとは思えない。 数年前、ヨーロッパへ移民が押し寄せて大きな社会問題なったが、その原因を作ったのはアメリカを中心とする西側諸国による中東や北アフリカへの侵略戦争。殺戮、破壊、略奪で破壊された国を脱出してヨーロッパへ向かった人は少なくないだろう。しかも、その中には西側の支配者が侵略戦争の傭兵として使った戦闘員が紛れ込んでいた。メキシコを経由してアメリカへ流れ込む人びとが少なくない理由はアメリカの巨大資本がラテン・アメリカの政治経済を破壊してきたからだ。 西側は侵略戦争を正当化するために「民主化」や「人道」といった看板を掲げていたが、実際に行ったことは民主主義の破壊であり、人びとから生きる権利を奪うことだった。バラク・オバマ政権はイギリスやアメリカの情報機関が作り上げたムスリム同胞団の武装勢力を使い、非宗教的な体制を破壊した。 こうしたことは「真のリベラル」ではないと言う人もいるだろう。確かにその通りだが、宗教やイデオロギーは権力者に取り込まれ、腐敗していく。「リベラル」もそうした道をたどってきたのである。 ところで、エリツィン時代の経済政策はアナトリー・チュバイスやエゴール・ガイダルを含む集団が決めていた。このふたりともハーバード大学のジェフリー・サックス教授や投機家のジョージ・ソロスと近い関係にあった。つまりエリツィン政権の経済政策は米英の巨大金融資本にコントロールされていたということ。プーチン政権にでそうした人脈につながっている人物にはドミトリ・メドベージェフ首相や大統領府第1副長官のセルゲイ・キリエンコも含まれている。 西側の巨大金融資本に影響されて打ち出された経済政策の一例が「年金改革」だ。こうした新自由主義に毒された人びとは富が一部の人間へ流れていく構造に手をつけず、緊縮財政や金融政策でごまかそうとする。そして大多数の庶民は貧困化していく。エリツィン時代の露骨な新自由主義はなくなっているが、完全には決別していない。だからロシアでプーチンの支持率が落ちているのだ。
2019.07.31
アメリカやイギリスは以前からクーデターの前段階として大規模な抗議活動を演出してきた。1991年12月にソ連が消滅した後、その抗議活動とプロパガンダでプレッシャーをかけ、体制転覆につなげる「カラー革命」もしばしば使われている。かつて、CIAは労働組合を抗議活動で利用していたが、中国では若者が使われているようだ。 香港でも今年3月から大規模な抗議活動が展開されている。勿論、これもアメリカ政府と連携、3月や5月に活動の指導者、例えば李柱銘(マーチン・リー)がアメリカを訪れ、マイク・ポンペオ国務長官やナンシー・ペロシ下院議長らと会談している。 香港は中国(清)がアヘン戦争で敗北して以来、侵略と犯罪の拠点として「発展」してきた。それを「民主化」と呼ぶ人もいる。すでにイギリスから中国へ返還されたことになっているが、イギリスやアメリカの支配システムは生きている可能性が高い。 2014年9月から12月まで続いた「佔領行動(雨傘運動)」の際、李柱銘はワシントンDCを訪問、NEDで物資の提供や政治的な支援を要請している。そのほかの指導者には香港大学の戴耀廷(ベニー・タイ)副教授、陳日君(ジョセフ・ゼン)、黎智英(ジミー・ライ)が含まれ、余若薇(オードリー・ユー)や陳方安生(アンソン・チャン)も深く関与していた。黎智英はネオコンのポール・ウォルフォウィッツと親しいとも言われている。 本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、NEDは1983年にアメリカ議会が承認した「民主主義のための国家基金法」に基づいて創設された組織で、政府から受け取った公的な資金をNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターへ流しているのだが、そうした資金がどのように使われたかは議会へ報告されていない。その実態はCIAの工作資金を流す仕組みなのだ。ここに挙げた組織が登場したら、CIAの工作だと考えて間違いない。 現在、ロシアではウラジミル・プーチン大統領の西側に対する忍耐強い政策に対する不満が少し前から高まっている。プーチンが支持されてきた大きな理由はボリス・エリツィン時代の新自由主義的な政策に対する怒り。別にプーチンが「独裁的」だからではない。そうした政策を速やかに捨て去り、西側による軍事的、あるいは経済的な挑発や攻撃に対して強く出ろというわけである。 そのロシアより10年ほど前から新自由主義的な政策を導入したのが中国。この政策の教祖的な存在であるミルトン・フリードマンは1980年に中国を訪問、レッセフェール流の資本主義路線を採用させ、88年には妻のローザと一緒に中国を再び訪れ、趙紫陽や江沢民と会談している。 新自由主義は鄧小平、胡耀邦、趙紫陽を軸に進められたが、フリードマンが中国を再訪した当時、すでに労働者たちから新自由主義に対する怒りが噴出し、中国政府も軌道修正せざるをえなくなる。 それに対し、新自由主義的な政策の継続を求める学生が抗議活動を展開、それを理由にして胡耀邦が1987年に総書記を辞任させられ、89年には死亡した。そして天安門広場での大規模な抗議活動につながるわけだ。その当時、カラー革命を考え出したジーン・シャープも中国にいたのだが、中国政府は国外へ追放している。 1989年にホワイトハウスの主が交代している。新しい主はジョージ・H・W・ブッシュ。ジェラルド・フォード政権が実行したデタント派粛清の一環として1976年1月からCIA長官を務めた人物。ロナルド・レーガン政権では副大統領として安全保障(秘密工作)分野を指揮していた。 大統領になったブッシュは中国駐在大使に個人的に親しいと言われるCIA高官のジェームズ・リリーを任命。ふたりとも大学で秘密結社のスカル・アンド・ボーンズに所属していた。キャンパスでCIAにリクルートされた可能性が高い。 1989年6月に天安門広場で学生が虐殺されたと西側の有力メディアは主張しているが、そうした事実がなかった可能性が高いことは本ブログで繰り返し書いてきた。天安門広場から少し離れた場所で治安部隊と衝突した人びとはいたのだが、その大半は労働者で、学生と主張は違った。この衝突では双方に死傷者が出ている。 中国では鄧小平がアメリカと一線を画し、カラー革命は押さえ込まれたのだが、ソ連ではミハイル・ゴルバチョフが1991年夏まで欧米信仰を捨てず、ボリス・エリツィンによるソ連解体へつながった。 アメリカには限らないが、分割統治は支配の基本である。人種、民族、宗教、宗派、思想、性別などを利用して分断し、対立させ、支配者へ矛先が向って階級闘争へ発展しないようにするわけだ。 アメリカの支配者は中東を細分化する計画を持ち、それを実現しようとしてきた。アラブ統一を掲げたエジプトのガマル・ナセルを西側の支配者が憎悪した理由もそこにある。当然、中国の細分化も考えているはずだが、それを口にした日本の政治家がいる。石原慎太郎だ。この人物は口が軽いようで、どこかで聞いた話を自慢げに話すのが好きらしい。 石原は2000年4月、ドイツのシュピーゲル誌に対し、中国はいくつかの小さな国へ細分化する方が良く、それは可能性があるとしたうえで、そうした流れを日本は精力的に促進するべきだと語っている。日本はともかく、アメリカとイギリスは精力的に動いている。香港におけるアメリカ政府の工作も中国細分化策の一環だろう。
2019.07.30
ウクライナで7月21日に議会選挙があり、ボロディミル・ゼレンスキー大統領が創設者にひとりとして名を連ねる「国民のしもべ」が全体の約6割、254議席を獲得した。ゼレンスキーは大統領選でロシアとの関係修復を訴えていた人物で、議会選挙の直前にウクライナ東部にあるドンバス(ドネツクやルガンスク)における包括的な停戦でロシア政府と合意している。 それに対し、ヒラリー・クリントンと親しい前大統領のペトロ・ポロシェンコが率いる「ヨーロッパ連帯」は25議席、2014年のクーデター時にロシア人を殺せと叫んでいたオリガルヒのユリア・ティモシェンコの「故国」は26議席にすぎない。ウクライナ国民の意思は明確に示されたと言えるだろう。 しかし、2014年のクーデターでバラク・オバマ政権が使ったネオ・ナチの武装集団は存在、経済を握っているオリガルヒも健在であり、クーデターを仕掛けたアメリカの仕掛けも残っている。 アメリカの支配層はソ連消滅後、ウクライナの選挙結果を2度にわたり、クーデターでひっくり返している。2004年から05年にかけてビクトル・ヤヌコビッチ政権を転覆させ、手駒のビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた「オレンジ革命」とやはりヤヌコビッチ政権を倒した2014年のクーデターだ。 アメリカがヤヌコビッチを嫌うのは、ロシアと手を組む方がウクライナにとって利益になると判断したからである。実際、その通りで、ユシチェンコが推進した新自由主義は政府高官と癒着した腐敗勢力が巨万の富を手にし、国民を貧困化させた。そこで、排除されたヤヌコビッチが再び登場してくるわけだ。 2014年のクーデターで大統領になったポロシェンコはクリントンと親しく、反ロシア。ウクライナの利益を無視してネオコンの命令に従って経済は破綻、街はネオ・ナチのメンバーが支配している。 こうした情況を変えて欲しいと国民は思い、ゼレンスキーに期待しているのだろうが、ネオコン、ネオ・ナチ、オリガルヒが存在している以上、情況を変えることは難しい。ネオコンはまたクーデターを仕掛けるか、ロシアを挑発して戦争へ突入しようとするかもしれない。7月25日にウクライナの治安機関SBUはロシアのタンカーを拿捕した。クーデター後、SBUはCIAの指揮下にある。
2019.07.29
ロバート・マラーが7月24日にアメリカ下院の司法委員会と情報委員会に出席、いわゆる「ロシアゲート」について議員から質問を受けた。この疑惑が事実であることを示す証拠が存在しないことはマラーが特別検察官として4月18日に発表した報告書でも認めているが、何とか巻き返しを図りたい民主党はマラーの発言に期待していたのだろう。その期待は砕け散った。 現在、FBIによる「ロシアゲート」に関する捜査の経緯をコネチカット州の連邦検事だったジョン・ドゥラムが調べているのだが、その結果ではマラーやFBI長官だったジェームズ・コミーらが刑事罰の対象になる可能性がある。 そもそも、マラーが特別検察官に任命された段階で「ロシアゲート」が作り話であることはわかっていた。アメリカの電子情報機関NSAの技術部長を務め、通信傍受システムの開発を主導し、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている内部告発者のウィリアム・ビニーが指摘しているように、NSAはすべての通信を傍受、保管している。もし疑惑が事実ならFBIは必要な証拠をすべて手にすることができたのだ。 民主党が流したシナリオによると、ロシア政府が民主党のサーバーをハッキングさせたことになっているのだが、コンピュータの専門家、例えばIBMでプログラム・マネージャーを務めていたスキップ・フォルデンは転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないとしている。インターネットから侵入したにしては、データの転送速度が速すぎにのである。つまり、内部でダウンロードされている。 この「疑惑」の出発点はヒラリー・クリントンの電子メール。2016年3月にウィキリークスは民主党の幹部やヒラリー・クリントンの不正行為を明らかにする電子メールを公表、7月にはヒラリーを起訴するに十分な証拠を公表していくとジュリアン・アッサンジが発言、実際に発表することになる。 それに対して民主党はサーバーがGuccifer 2.0にハッキングされ、その黒幕はロシアの情報機関だと主張した。それがウィキリークスへ渡されたというシナリオだ。 その当時、すでに民主党の候補者選びでバーニー・サンダースへの支持が強まっていた。民主党の大統領候補はサンダースになる可能性が高くなったということである。そうした中、民主党の幹部はヒラリー・クリントンを支援するかのような行動をとり、それが批判されていた。 そうした中、7月10日にDNC(民主党全国委員会)のスタッフだったセス・リッチが射殺される。警察は強盗に遭ったと発表するが、それに納得できないリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始めた。 この探偵によると、セスはウィキリークスと連絡を取り合い、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをウィキリークスへ渡したとしている。この発言はウィラーが雇い主に無断で行ったことから問題になり、その後、探偵から情報は出なくなった。 結局、選挙ではトランプが勝利するが、腹心で国家安全保障補佐官だったマイケル・フリンは民主党や有力メディアだけでなくトランプ政権の内部からも攻撃を受け、2017年2月に辞任させられる。 その翌月、アダム・シッフ下院議員が下院情報委員会で前年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出し、「ロシアゲート」なる茶番劇の幕が上がった。 シッフが主張の根拠にしたのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)の元オフィサー、クリストファー・スティールが作成した報告書。根拠が薄弱だということはスティール自身も認めている代物だ。このスティールに調査を依頼したのはフュージョン、そのフュージョンを雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。 こうした流れを考えると、マラーはハッキングされたというサーバーを調べ、リッチ殺害について捜査、ウィキリークスのジュリアン・アッサンジやスティールから事情を聞く必要がある。が、こうしたことは行われなかった。 大統領選挙が展開されている段階でFBIの内部にトランプを引きずり下ろすための工作が始まっていたことが明らかにされている。そこで2013年9月から17年5月までFBI長官を務めたコミーの責任が問われるという話だ出ているわけだ。 特別検察官になったマラーが胡散臭い人物だということは本ブログでも指摘したこと。彼は1988年にパンナム103便の爆破事件で主席捜査官を務め、リビア政府に責任が押しつて「リビア制裁」の口実を作ったが、実際はCIAが実行したのではないかと疑われている。 またBCCIという銀行のスキャンダルの捜査を司法省で指揮した。この銀行はCIAがあるガニスタンで行っていた秘密工作の資金をロンダリングしていたことで知られているが、その真相を隠蔽したのだ。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとアーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された当時はFBI長官。この攻撃の背後にサウジアラビアとイスラエルが存在している疑いが濃厚だったのだが、これも封印した。 もうひとつ注目されているのが結婚相手。1966年にアン・キャベル・スタンディッシュと一緒になったのだが、この女性は1953年4月から62年1月までCIA副長官を務めたチャールズ・キャベルの一族。 チャールズやダレスは統合参謀本部議長だったライマン・レムニッツァーや空軍参謀総長だったカーティス・ルメイらと一緒にキューバ侵攻を目論んでいる。 また、ダレスの側近のひとりで1959年1月から62年2月にかけてCIAの破壊工作(テロ)部門を統括していたリチャード・ビッセルはマラーの親戚だ。 マラーがFBI長官だったのは2001年9月から13年9月までの機関だが、その間、08年にFBIはジェフリー・エプシュタインを情報屋として雇っている。最初に起訴された時期と重なる。この時は「寛大な処分」ですんだ。この事件を地方検事として担当したアレキサンダー・アコスタによると、エプシュタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたという。 ロシアゲート話と小児性愛ネットワークは地下で結びついている可能性があり、CIAやMI6の影も見える。ヒラリーは上院議員時代から軍需産業のロッキード・マーチンを後ろ盾とし、巨大金融資本とも結びついている。漏洩した彼女の電子メールの中には投機家のジョージ・ソロスが政策的な指示を彼女に出していることを示すものが含まれていた。 また、彼女はバラク・オバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めようとしていた。1992年に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提条件、ロシアの属国化を再び実現しようとしているが、これは全面核戦争を覚悟しなければ不可能だ。そのロシアとの関係修復を訴えたトランプ大統領と側近のフリンが攻撃されたのは必然だった。
2019.07.27
東京琉球館で8月17日の午後6時から「ジェフリー・エプシュタイン逮捕の意味」と「日本敗戦とファシズムの勝利」について話します。予約制とのことですので、興味のある方は事前に下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/ ブログでも書きましたが、エプシュタインには情報機関や捜査機関の人脈がつながり、有力者をおびき寄せてスキャンダルを作り、それを利用してコントロールするという工作が行われてきた可能性があります。同じことが日本でも実行されている疑いもあります。逮捕されたエプシュタインが防衛のために事実を話した場合、アメリカの支配層はパニックになりかねません。この話が出てきたということは、アメリカで権力抗争が激しくなっているのかもしれません。 日本が第2次世界大戦で降伏したのは1945年9月2日のことですが、昭和天皇(裕仁)が日本人に対して生命を発表された8月15日に戦争に関する催しがあるようですので、その辺のことを話したいと思います。 この戦争は民主主義とファシズムの戦いで民主主義が勝ったと言う人もいますが、それほど単純ではありません。本ブログでは繰り返し書いてきましたが、日本は明治維新からイギリス資本の影響下に入り、関東大震災からはアメリカのウォール街に支配されています。そのウォール街で中心的な存在だったJPモルガンが日本へ駐日大使として送り込んできたのがジョセフ・グルーでした。1932年のことです。 この年にはアメリカで大統領選挙があり、ウォール街と対立関係にあるニューディール派が勝利、フランクリン・ルーズベルトが大統領に選ばれました。ルーズベルトは1933年2月15日の狙撃事件をくぐり抜けますが、大統領に就任した直後から巨大金融資本はニューディール派を排除し、ファシズム体制を樹立する目的でクーデターを計画します。 そのクーデター派と最も近い日本人は井上準之助だったと考えられています。アメリカのマサチューセッツ工科大学で学んだ三井財閥の最高指導者、団琢磨もアメリカ支配層と太いパイプがありました。井上や団の背後にはアメリカのファシズム勢力がいたということです。 そのクーデター計画はスメドレー・バトラー海兵隊少将らによって阻止されますが、クーデター派は排除されませんでした。1935年9月10日にはニューディール派より労働者寄りのヒューイ・ロングが暗殺されます。 1940年5月にイギリスではウィンストン・チャーチルが首相に就任、その年の9月から翌年の5月にかけてドイツ軍はロンドンを空襲しました。その5月にヒトラーの側近だったルドルフ・ヘスが飛行機でスコットランドへ飛びます。当然、イギリス政府の高官と話をしたはずです。 そして1941年6月、ドイツ軍はソ連へ向かって進撃を開始します。バルバロッサ作戦ですが、この作戦には約310万人が参加し、西の守りのために残されたのは約90万人。ドイツ軍首脳の反対を押し切り、ヒトラーが決定しました。 この状態で西から攻められたならドイツは窮地に陥りましたが、イギリスもアメリカも攻めません。西ヨーロッパでドイツ軍と戦っていたのは事実上、コミュニスト主体のレジスタンスだけでした。 米英が傍観する中ドイツ軍は快進撃、1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、42年8月にはスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まります。 ここへたどり着くまでの戦闘でもドイツ軍は苦しみ、予定より遅れていたようですが、まだ夏。ところが11月になってもソ連を降伏させられません。それどころか猛反撃にあい、ドイツ軍は包囲されて壊滅、43年1月に降伏します。ドイツ軍の主力が壊滅したとうことは、ドイツの敗北は決定的になったということです。アメリカとイギリスが慌てて動き始めるのはこれからです。 そのアメリカとイギリス、つまりルーズベルトとチャーチルも激しく対立していました。ドイツ軍を打ち破ったソ連軍は西に向かって進撃を開始しますが、ルーズベルトはその阻止に熱心ではなく、チャーチルは激怒しました。チャーチルにとって好都合なことに、ルーズベルトは1945年4月に急死、ホワイトハウスはウォール街が奪還します。 5月になってドイツは降伏、チャーチルは米英両軍とドイツの将兵でソ連を奇襲攻撃する作戦(アンシンカブル作戦)を立てますが、これは参謀本部の反対で実行されませんでした。 その直後にチャーチルは下野しますが、ソ連打倒の熱意は冷めません。1946年にはアメリカのミズーリ州フルトンで「鉄のカーテン」演説を行い、FBIの文書によりますと、1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対してソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得して欲しいと頼んだということです。 ドイツ軍がスターリングラードで敗北してからナチスの幹部がアメリカの軍や情報機関と接触、国際情勢の次のステージについて話し合っています。アメリカ側の中心はOSSのアレン・ダレスなどウォール街の代理人でした。その後、アメリカがナチス幹部の闘争を助け、保護、雇用することになります。 日本では戦前戦中に国民を弾圧した特高警察、思想検察、裁判官は事実上、責任を問われないまま戦後も要職につき、天皇制官僚システムは護持されました。その戦後日本を築いたジャパン・ロビーの中心にいたのは、あのジョセフ・グルーです。日本の戦後民主主義とはその程度の代物だということも言えるでしょう。 2014年にバラク・オバマ政権はウクライナで実行したクーデターでネオ・ナチを使いました。これは必然なのです。
2019.07.26
独房内で「ほぼ意識をなくし」、倒れているジェフリー・エプシュタインを看守が発見したと報じられている。首にけがをしているようで、病院へ運ばれた。自殺を図ったのか、病院へ移りたかったのか、ほかの囚人に襲われたのか、あるいは別の原因があるのかは不明だ。 本ブログでも書いたように、エプシュタインは「友人」のリストを反撃の材料に使おうとしていたと言われている。このリストをエプシュタインの自宅から2009年に持ち出した人物によると、それは「小児性愛ネットワーク」を解き明かすものだという。しかも顧客には著名人の名前が記載されている。日本なら容疑者が「練炭自殺」しそうな事件だ。 10年余り前にもエプシュタインは同様の容疑で起訴されているが、その時は「寛大な処分」ですんだ。担当地方検事でドナルド・トランプ政権の労働長官だったアレキサンダー・アコスタによると、エプシュタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたという。 その話の信憑性を高める背後関係もある。エプシュタインの妻だったギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルだが、この人物は1960年代からイスラエルの情報機関に協力、あるいはそのエージェントだったと言われている。しかもイギリスやソ連の情報機関ともつながっていた可能性がある。 小児性愛の問題はアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、占領を始めた当時にも問題化している。その事実を隠蔽、あるいは自身も参加していたと噂されたひとりがデイビッド・ペトレイアス。当時は第101空挺師団の司令官だった。後にCIA長官を務めるが、2012年に辞任している。陸軍情報部に所属していた予備役中佐との性的な関係と情報の漏洩が原因だとされているが、真の理由は別にあるとも言われている。 こうした問題はアメリカ以外、例えばイギリスや日本でもあると言われているが、もみ消されているようだ。
2019.07.25
竹島(独島)の近くをロシア軍に所属するTu-95戦略爆撃機2機とA-50早期警戒管制機、中国軍に所属するH-6戦略爆撃機2機とKJ-2000早期警戒管制機が飛来、そのうち1機のロシア軍機と2機の中国軍機が韓国の設定する防空識別圏の中に入ったため韓国軍の戦闘機F-16とF-15が緊急発進、照明弾を落とし、警告射撃を行ったと韓国の国防省は発表していた。 それに対しロシア国防省は韓国側の対応を批判。飛行ルートは予定通りで、領空は侵犯していないと主張、当該海域には国際的に認められた防空識別圏はないとしている。無線でコンタクトせずにロシア軍機の前を韓国軍機は横切るなど危険な行為をしたものの、銃撃はなく、もし銃撃があればロシア側は「応じた」としている。銃撃し返したということだろう。中国は防空識別圏と領空は違うとしている。 軍用機の接近もさることながら、今回の出来事で目を引くのはロシア軍と中国軍が共同で「パトロール」していたこと。韓国軍やアメリカ軍へのメッセージのように見える。 竹島近辺での出来事は7月23日のことだが、20日にアメリカのジョン・ボルトン国家安全保障補佐官はアメリカから日本へ向かった。日本と韓国の対立を緩和し、イランとアメリカの対立でアメリカへ協力させることが目的だとされている。 そして23日にボルトンは韓国へ到着。同じことが話し合われたのだろうが、朝鮮半島の緊張緩和を目指し、ロシアや中国と経済的な関係を強めている韓国をアメリカ側へ引き戻すことが目論まれているようにも思える。 アメリカ軍と韓国軍は来月に合同軍事演習を実施する予定、朝鮮を刺激している。朝鮮との対話を進めつつある韓国の文在寅政権としては好ましくない流れだ。今後、韓国の軍や情報機関の動きにも注意する必要がありそうだ。
2019.07.24
韓国が領有を宣言している竹島(独島)の領空を7月23日にロシア軍機が侵犯、迎撃した韓国軍機が警告射撃を行ったと韓国の通信社、聯合が伝えている。ロイターによると、飛来したのはロシア軍機が3機と中国軍機が2機。そのうちロシア軍機1機と中国軍機2機が防空識別圏の中に入ったと韓国国防省は発表している。 現在、韓国では文在寅政権が朝鮮との会話を進めようとしているが、アメリカの影響を強く受けている同国の軍や情報機関は別の動きをしている。来月にアメリカ軍と韓国軍が合同軍事演習を計画しているのも、そうした動きの一環。 この演習に対し、朝鮮政府は文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の合意に反していると強く反発している。韓国政府は防衛的なものだと弁明しているが、アメリカ軍が関与している以上、防衛的ではありえない。 アメリカ政府の内部も統一されていない。ドナルド・トランプ大統領は朝鮮の金正恩労働党委員長との会話を継続したいように見えるが、マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官などは大統領の動きを妨害してきた。 朝鮮半島を含む東アジアで経済的な交流を深め、軍事的な緊張を緩和させ、発展につなげようという戦略をロシアや中国は立てている。韓国政府はその両国とのつながりを強め、そのつながりに朝鮮も参加したのが現状。韓国と日本との対立は韓国を中露へさらに接近させてしまう。この関係を破壊する必要にアメリカ政府は迫られている。 そこでアメリカ政府は経済戦争(一種の兵糧攻め)や軍事的な威嚇で相手を屈服させようとするわけだが、今回のロシア軍機と中国軍機の飛来はそうしたアメリカ政府に対するメッセージなのだろう。いざというとき、ロシアと中国は連携して動くということだ。
2019.07.23
絶望は抵抗する気力を失わせ、服従につながる。国際情勢は勿論、自分の置かれた状況にも無関心で、刹那の快楽に走る。つまり支配者は被支配者を絶望させようとする。「どうせ無駄だよ」と思わせられれば、支配システムは安泰だ。 そうした意味で、2009年8月の総選挙は大きな節目だった。選挙で世の中を変えられるという希望を持っていた国民は小沢一郎の率いる民主党に投票、獲得した議席は総議席の3分の2に迫ったのである。ウォール街やシティの支配者に従い、その手先として日本支配に協力してきた日本人たちは動揺しただろう。 アメリカにはCIA、イギリスにはMI6という情報機関が存在する。CIAはウォール街、MI6はシティが作った組織だ。こうした情報機関は米英の巨大資本のカネ儲けシステムを築き、障害を排除する仕事をしてきた。当然、日本にもそのネットワークは張り巡らされている。アメリカが各国で行う情報活動の拠点は大使館だということも有名。日本とアメリカとの関係を考える際、在日アメリカ大使館を見ることも重要だ。 自衛隊、警察、検察、裁判所だけでなく、霞ヶ関の官僚機構は、おそらく、がんじがらめである。本ブログでは繰り返し書いてきたが、CIAはメディア支配にも力を入れてきた。ここ20年ほどは広告会社の存在感が強まっている。 それだけでなく、犯罪組織やテロ組織との親和性も強い。アメリカではユダヤ系やイタリア系のギャングと手を組み、中東ではサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を使い、ヨーロッパではネオ・ナチだ。 ムスリム同胞団はハッサン・アル・バンナによって1928年に創設された組織だとされているが、19世紀にイギリスの情報機関がその基礎は作ったと言われている。社会奉仕団体的なイメージを持つ人も少なくないが、その内部には暴力的な集団が存在、第2次世界大戦当時から暗殺を繰り返してきた。 1948年12月にもムスリム同胞団はエジプト首相を暗殺するが、その報復で49年2月にバンナが殺され、組織は解体。現在のムスリム同胞団は1950年代に入ってからCIAとMI6が復活させたもの。その指導者になったサイード・クトブはフリーメーソンのメンバーで、ジハードの生みの親と言われている。こうした歴史を考えると、CIAが日本で犯罪組織やカルト団体と手を組んでいても不思議ではない。 ところで、週刊現代の2006年6月3日号に「小沢一郎の“隠し資産6億円超”を暴く」という記事が掲載されている。この段階で小沢と鳩山を軸にした民主党が警戒されている。 そして総選挙の3カ月後には「市民団体」が小沢の政治資金管理団体である「陸山会」の2004年における土地購入で政治収支報告書に虚偽記載しているとして小沢の秘書3名を告発する。それを受け、翌年の1月に秘書は逮捕された。また「別の市民団体」が小沢本人を政治資金規正法違反容疑で告発し、2月には秘書3人が起訴される。 これは事実上、冤罪だったのだが、この起訴で小沢の影響力は大幅に弱まった。それだけでなく、小沢と組んでいた鳩山由紀夫は2010年6月に総理大臣の座から降りざるをえなくなる。一種のクーデターだ。 鳩山を引き継いだ菅直人や野田佳彦は民主党に投票した人びとの期待に反する政策を打ち出す。ギリシャの首相になったアレクシス・チプラスと似ている。 菅直人政権時代の2010年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を日中漁業協定無視で取り締まる。当然、中国との関係は悪化した。その時、海上保安庁を指揮する立場にあった国土交通大臣は前原誠司だ。菅と前原は領土問題の棚上げ合意を壊し、日本と中国との関係悪化を図ったのである。前原はその翌月、衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と発言しているが、関係者の証言を聞いても、そういう事実はある。 菅直人は首相に就任した直後、消費税率の引き上げと法人税の軽減を打ち出すなど内政面でも有権者の希望を打ち砕いた。当然のことながら民主党の支持率が急落、そこで衆議院を解散して党は惨敗し、そこから安倍晋三政権が始まる。 安倍政権は日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込む政策を続けるだけでなく、国を破壊している。中曽根康弘、小泉純一郎の系譜だ。日本を食い物にしていると言われても仕方がないだろう。1990年代のロシアでボリス・エリツィンが果たした役割に近いことを行っている。 その状態をマスコミは伝えない。「毒饅頭の食べ過ぎ」で毒が全身に回っているという人もいる。絶望的な状態だ。 しかし、マスコミが急速に腐敗し始めたのは1980年代。同じ時期に官僚の腐敗も進んでいた。当時、東大法学部で警察官僚が一番人気だという話を聞いたこともある。 ジャーナリストの、むのたけじは1991年に開かれた「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭で語ったように、その時点で「ジャーナリズムはとうにくたばった」(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)情況だったのである。そうした絶望的な情況を換えられず、30年近くになるわけだ。昨日今日に始まった話ではない。その中から希望を見いだすしかないのだ。
2019.07.22
スコットランドのノーザン・マリーンが運行するタンカー、「ステナ・インペロ」がホルムズ海峡の近くでIRGC(イラン革命防衛隊)に拿捕された。国際的な海事規則に違反したことが理由だとしている。 その直後にスコットランドのノーボークが運行する「メスダー」も拿捕されたという情報が流れたが、この船は規則に則った航行を始め、拿捕されなかったようだ。イギリスが始めた危険なゲームはイギリスやアメリカを追い詰めることになる可能性がある。 ノーザン・マリーンが規則に違反した航行をしていたかどうかは不明だが、イギリスの海兵隊がジブラルタル沖でイランが運行するタンカー、「グレイス 1」を拿捕したことに対する報復である可能性は高い。 今回、ステナ・インペロはイラン艦船よりタンカーが圧倒的に大きいことを利用して逃げ切ろうとしたようだが、IRGCはヘリコプターから兵士を降ろし、制圧した。イギリスやアメリカの軍隊が反応する間もなく、タンカーはコントロールされてしまったのである。 タンカーの拿捕を阻止するために軍艦を護衛につけるという話があるが、アメリカやイギリス以外の国の腰は引けている。現在のイギリスより愚かな国は数が限られている。しかも、戦争になれば軍艦をエスコートさせても輸送船を守り切れるとは言えない。 今回の出来事で再確認できたことがある。日本が主張してきた「シーレーン防衛」が戯言だということだ。輸送船を守りたいなら、少なくとも全ての船に軍艦を護衛のためにつける必要がある。その程度のことはアメリカ軍も自衛隊もわかっていたはず。つまり、シーレーン防衛とは大陸の国に対する海上封鎖作戦。当然、中国もロシアも理解、対抗してくる。それが東シナ海や南シナ海で軍事的な緊張を高める大きな要因なのだ。
2019.07.21
ある国を奪い取る際、アメリカの支配層はまずターゲット国の有力者たちに接近して買収を試み、それが失敗した後に本当のヒットマンが送り込むと自分自身の経験に基づいて主張した人物がいる。ジョン・パーキンスだ。John Perkins, “Confessions of an Economic Hit Man,” Berrett-Koehler, 2004(日本語訳:ジョン・パーキンス著、古草秀子訳『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』東洋経済新報社、2007年) 買収、スキャンダルを使った恫喝、社会的な抹殺、肉体的な抹殺、クーデター、軍事侵攻といったことをアメリカは行ってきた。要するに、アメリカは帝国主義国だということだ。それに背くことは大統領でも許されない。 体制転覆の下準備をする仕組みもある。ベトナム戦争のような軍事侵略やラテン・アメリカにおける軍事独裁政権を使ったあからさまな侵略に対する国民の反発が強かったため、1980年代、つまりロナルド・レーガン政権は「民主主義」や「人道」といった標語を使って侵略することにする。それが「プロジェクト・デモクラシー」だ。 そうした戦術の変更に対応するため、1983年にはNED(民主主義のための国家基金)が創設された。CIAの工作資金を流すパイプのひとつだが、そこから資金はNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターを経由して配下のNGOへ流される。この仕組みはUSAID(米国国際開発庁)とも連携している。 ターゲット国の体制を転覆させても支配は容易でない。そこで手先になる勢力を選び、育て、支援する。操るひとつの手段としてスキャンダルを握ることも少なくない。 アメリカやイギリスの情報機関が通信を傍受、記録、分析するシステムを全世界に張り巡らせてきた理由のひとつはスキャンダルを握ることにあった。ジェフリー・エプシュタインの仕事は有力者のスキャンダルを作り出すことにあったのだろう。その前任者がルイス・ローゼンスティールだと見られている。 日本でもそうしたことは昔から行われていたようだが、表面的な「倫理」が厳しくなってから脅しの威力は増した。エリート予備軍のちょっとした油断が原因で、生涯、犯罪集団に操られることになるのだ。
2019.07.20
7月6日に性犯罪の容疑で逮捕されたジェフリー・エプシュタインは「友人」のリストを反撃の材料に使おうとしているようだ。検察官や裁判官の対応次第では支配システムを揺るがす事態に発展する可能性がある。そこで妥協してくるだろうとエプシュタイン側は期待しているのだろう。勿論、彼が裁判が終わるまで生きていられればの話だが。 エプシュタインは10年余り前にも同様の容疑で起訴され、有罪を認めて懲役18カ月の判決を受けている。2008年6月のことだ。ただ、このときは刑務所に収監されていない。 検察側の姿勢が甘かったことが原因だという批判があり、その時に地方検事として事件を担当したアレキサンダー・アコスタは7月19日に労働長官を辞任した。ドナルド・トランプはアコスタを閣僚にしていたのだ。この件についてアコスタは次のように語っている。エプシュタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと当時、言われたとしている。 前にも書いたことだが、エプシュタインの妻だったギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。この人物は1960年代からイスラエルの情報機関に協力、あるいはそのエージェントだったと言われ、イギリスやソ連の情報機関ともつながっていたとされている。 また、ジャーナリストのウィットニー・ウェッブはエプシュタインの興味深い背後関係を記事にしている。 その記事によると、鍵を握る人物のひとりは1985年にHIVで死亡するまでトランプの弁護士を務めていたロイ・コーン。1953年から54年にかけてジョセフ・マッカーシー上院議員の顧問として「赤狩り」の最前線にいた人物でもある。このコーンとエプシュタインは交友関係が重なると指摘されている。 マッカーシー議員はFBIに君臨していたJ・エドガー・フーバー長官に操られていたが、その間に入っていたのがコーン。このふたりには同じ嗜好がある。同性愛だ。 法律の仕事を始めた当時、コーンは性的な恐喝を生業としている暗黒街の一味の下で働いていた。このときの経験が「赤狩り」で生かされたのだろう。小児性愛を含む性的な行為を利用した恐喝は、政府を後ろ盾とする「反コミュニスト十字軍」だったとコーンは言っている。 性的な恐喝を生業としている暗黒街の一味のボスは禁酒法時代に大儲けしたひとり、ルイス・ローゼンスティールだと推測されている。ローゼンスティールとコーンは親子のようだったとする話も伝わっている。仕事の関係でローゼンシュタインは同業者のサミュエル・ブロンフマンとも知り合いだった。 ローゼンスティールもコーンから性的な恐喝は反コミュニスト十字軍」だと聞いたと話しているが、そうした恐喝の矛先はフーバーにも向けられていた。 ローゼンスティールの妻だったスーザン・カウフマンによると、この元夫はメイヤー・ランスキーとも親しくしていた。言うまでもなく、ランスキーはユダヤ系ギャングで、CIAとも緊密な関係にあった。親しくしていたCIA幹部のひとりが秘密工作やモサドとの連絡を務めていたジェームズ・アングルトン。 カウフマンによると、コーンが1958年にマンハッタンのプラザ・ホテルの233号室で開いたパーティーに参加した際、ローゼンシュタインも参加していた。そこには未成年の少年もいたという。 ランスキーやアングルトンはフーバー長官の性的な嗜好の世界へ入っている時の写真を持っていたと言われているが、その出所はOSS長官だったウィリアム・ドノバンだとも言われている。この人物はアレン・ダレスと同じようにウォール街の弁護士だった。フーバー時代にFBIが犯罪組織に手を出さなかった一因はここにあると言われている。 カウフマンは元夫も未成年の少年を相手にした無節操なパーティーを主催、そこには政府要人や犯罪組織の幹部が参加していた。それを元夫はカメラとマイクで記録していたという。 ローゼンシュタインに対し、アメリカで酒の販売が合法になる準備をするよう、1922年にアドバイスした人物がいるという。フランスのリビエラに滞在中、「偶然」会ったウィンストン・チャーチルだとされている。高校中退で無名だったローゼンシュタインになぜチャーチルがそうしたことを言ったのか不明だ。 日本は明治維新以来、戦前も戦後もアングロ・サクソンに従属している。関東大震災以降はウォール街の影響下にあるのだが、その住人たちが日本を支配するために同じ手口を使うことは十分にありえる。
2019.07.19
公正取引委員会はジャニーズ事務所に対し、独占禁止法違反につながるおそれがある行為をしたとして「注意」したと伝えられている。2016年12月に解散したSMAPのメンバーだった稲垣吾郎、香取慎吾、草薙剛の3人を番組などへ出演させないよう、テレビ局などに圧力をかけた疑いがあるのだという。 言うまでもなく、こうした話はしばしば聞く。マスコミを含む芸能の世界の「秩序」、あるいは「しきたり」を乱す人間は制裁されるということだ。 そうしたことは芸能界に限った話ではないと言う人もいるだろう。確かにその通りで、「国策」に異を唱える人が社会的に不利益を被ることは公然の秘密だ。若者がものを言わない一因である。 芸能界の暗部に触れたことで訴えられ、敗訴した人物が存在するが、そうした人びとより過激なことを書いていながら訴えられていない人もいる。2代目松浦組元組長で大日本新政會総裁の笠岡和雄だ。彼は自著『狼侠』(大翔、2017年)の中で芸能界を中心に腐敗しつつある日本の実態を明らかにしている。 笠岡は芸能界における番組出演に関する圧力だけでなく、麻薬の蔓延、そして殺人依頼を受けた経験を明らかにした。しかも、そうした実態を知っているはずの国税、検察、警察、そして裁判所も見て見ぬふりだという。そこまで日本は腐敗しているとうことだろう。 構造的な問題も指摘している。笠岡によると、1992年に暴対法が施行された後、テレビコマーシャルで荒稼ぎするための会合がバリ島で開かれたとしている。出席したのは芸能界からK社長など、広域暴力団のT組長など、右翼団体のE会長、そして広告代理店のCM担当役員たちだったというのだ。 テレビ広告を出すような企業のスキャンダルを調べ、右翼団体や総会屋を使って脅し、広告代理店が芸能界の某人物につなぐ。いわゆる出来レースなので脅しは止まるのだが、その代償として特定の芸能事務所に所属するタレントを使ってCMを流さなければならなくなる。スキャンダルを作り出す仕組みも存在していると言われている。 この仕組みの核は広告代理店だろう。テレビをはじめ、マスコミの収入に対する大きな影響力を広告代理店は持っている。マスコミへの影響力という点で、広告代理店は融資という切り札を持つ銀行と双璧をなしている。 国際的に見ると、広告代理店は1990年代から政治との結びつきを深めている。例えばイラク軍がクウェートへ軍事侵攻した後の1990年10月、アメリカ下院の人権会議でイラク軍の残虐性をひとりの少女「ナイラ」が証言している。アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置し、赤ん坊は死亡したと訴えたのだが、この話は全てが嘘だった。この証言を演出したのが広告代理店のヒル・アンド・ノールトン。証言した少女はアメリカ駐在のクウェート大使だった人物の娘で、イラク軍が攻め込んだときにクウェートにはいなかった。 ジョージ・W・ブッシュ政権はプロパガンダに広告代理店を使っている。例えば、「アフガニスタン再建グループ」の一員としてアメリカ大使にアドバイスしていたジェフ・ラリーはヒル・アンド・ノールトンの元重役であり、ドナルド・ラムズフェルド国防長官のスポークスマンになったビクトリア・クラークも同社の出身だ。(Solomon Hughes, “War On Terror, Inc.”, Verso, 2007) クラークは「埋め込み取材」を考え出し、広告の専門家やロビーストたちと秘密裏にこの戦争に関するプランを検討している。その結果、アメリカの大衆に納得させるためには、「アル・カイダ」のような正体不明の存在でなく、具体的な国と結びつける必要があるということになった。そこで考え出されたのが「悪の枢軸」、つまりイラン、イラク、朝鮮の3カ国だ。 また、コリン・パウエル国務長官が次官に据えたシャルロット・ビアーズは「マディソン街の女王」と呼ばれる人物で、ふたつの大手広告会社、オグルビー・アンド・マザーとJ・ウォルター・トンプソンのトップになった経験の持ち主。 ビアーズの手法は「単純化」と「浅薄化」。イラクへの先制攻撃をアメリカ政府は「イラクの自由作戦」と命名したが、これもビアーズのアドバイスに従っている。小泉純一郎も同じ手法を採用し、効果的だった。
2019.07.18
安倍晋三政権が韓国に対する半導体の製造に必要な材料の輸出規制を強化、日本と韓国との関係がこれまで以上に悪化する様相を見せている。韓国政府はアメリカと話し合いを始めたようだが、元徴用工の問題と同じように、今回の問題も震源地はアメリカだろう。日本政府が独断でできるようには思えない。 フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出許可手続きを厳密化、輸出先として信頼できる国のリストから韓国を外す手続きを安倍政権は進めているのだが、その結果、韓国のサムスン(三星)電子、SKハイニックス、LGディスプレイといったメーカーはダメージを受けているのだろうが、同時にそうした企業と取り引きしてきた日本企業にとっても痛手になる。 元徴用工の問題と半導体の問題はつながっていると韓国では見ているようだが、そう思われても仕方はない。その元徴用工の問題が注目されるようになったのは昨年(2018年)10月のこと。韓国の大法院(最高裁)が新日鉄住金に対して元徴用工へ損害賠償合計4億ウォンを支払うように命じる判決を出したのである。 この問題に関係している日本企業はこうした展開になることは予想していたはずで、訴えられた企業は和解の道を探っていた。今後のビジネスを考えても、それが得策だ。その動きを安倍政権は潰したと言われている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、明治維新から現在に至るまで日本の支配構造は基本的に変化していない。その連続性を象徴する人物がウォール街の中枢から大使として日本へ派遣されていたジョセフ・グルーだ。第2次世界大戦の前、グルーが所属するウォール街は親ファシストで、ニューディール派を敵視していた。そのため、フランクリン・ルーズベルトが大統領に当選すると、クーデターを計画したわけだ。 関東大震災以降、グルーと緊密な関係にあるJPモルガンが日本に大きな影響力を及ぼしていた。この巨大金融資本は親ファシズムだ。この問題と向き合わないようにするため、「軍国主義」というタグが使われているのではないだろうか。 このJPモルガンはロスチャイルドから派生した。明治維新はそのロスチャイルドを含むイギリスの支配層から強い影響を受けていた。清(中国)を侵略するためにイギリスはアヘン戦争を仕掛けたのだが、本ブログでも指摘したように、大陸を支配するための戦力がなかった。イギリスが日本の軍備増強を支援した理由はそこにある。傭兵にしようとしたのだ。そして作り出されたのが天皇制官僚国家。これが日本の国体だ。 イギリスの手先として日本は琉球を併合、台湾へ派兵、江華島で軍事的な挑発、日清戦争、日露戦争と大陸侵略を進めていく。モスクワが革命で揺れていたとはいえ、戦争が長引けば日露戦争で日本が勝つことは難しかった。そこで、棍棒外交で有名なシオドア・ルーズベルト米大統領が仲裁のために登場してくるわけである。 日清戦争で日本が勝利した1895年、日本の三浦梧楼公使たちは朝鮮の閔妃(明成皇后)を含む3名の女性を惨殺した。その際、性的な陵辱を加えているのだが、筆者個人の経験では、そうした日本側の行為に憤っている韓国のエリートは今でもいる。なお、暗殺に加わった三浦公使たちを日本の裁判官は「証拠不十分」で無罪にしている。その後、三浦は枢密院顧問や宮中顧問官という要職につく。 日本でどのような教育や宣伝がなされても、少なからぬ韓国人は日本に支配されていた時代を忘れてはいない。何かの切っ掛けで、そうした感情は噴出する。今回、韓国で日本製品の不買運動が始まっているようだが、当然の結果だ。 元徴用工の問題も日本による支配の中で生じたのであり、安倍政権の言動はそうした感情を噴出させることが目的だったとしか思えない。安倍政権には中国との関係を破壊しようとした菅直人政権と同じものを感じる。 ロシアや中国との関係を強める韓国を引き戻すために脅しているのかもしれない。日本に脅させ、アメリカが「白馬の騎士」として登場するつもりかもしれないが、安倍政権の行動は韓国の自立を促進、ロシアや中国へ追いやる可能性がある。そうしたことがロシアや中国でも起こった。
2019.07.17

ドナルド・トランプ米大統領は7月14日付けのツイッターでアメリカ民主党の「進歩的」な女性議員を揶揄した。政府が破綻し、堕落した国から来ながら偉大なアメリカの国民にとやかく言わず、国をどうにかしろというようなことを書き込んでいる。 その女性議員とはイルハン・オマール下院議員とアレキサンドリア・オカシオ-コルテス下院議員を指しているようだが、オカシオ-コルテスはニューヨーク生まれ。このふたりは2016年の大統領選挙で民主党の幹部を動揺させたバーニー・サンダース人気の波に乗って登場してきた議員に含まれる。 オカシオ-コルテスは既存システムで定められた枠内で活動しているが、オマールは枠を無視している。 例えば、パレスチナ問題ではイスラエルを批判し、BDS運動を規制する法律に反対した。BDSとはイスラエルをボイコットし、投資を引き上げ、制裁するべきだとする運動だ。 彼女はベネズエラの政権を転覆させようというアメリカ政府の政策にも反対、この政権転覆工作を指揮するエリオット・エイブラムズが下院外交委員会に登場した際、オマールはエイブラムズのイラン・コントラ事件における役割を口にした。 エイブラムズ自身が事件に関わったことを議会に隠した罪を1991年に認め、大統領だったジョージ・H・W・ブッシュの恩赦で助けられたと議員は指摘、そうした人物の証言を信用できるのかと皮肉っている。 若い頃、エイブラムズはヘンリー・スクープ・ジャクソン上院議員の事務所で働いているが、そこでは後にネオコンの中心メンバーになるリチャード・パール、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなどが育成されていた。 ロナルド・レーガン政権になるとエイブラムズは国務次官補に就任、イラン・コントラ事件に連座する。ジョージ・H・W・ブッシュ政権では大統領特別補佐官、その息子のジョージ・W・ブッシュ政権では中東問題担当の主席顧問を務めている。 2016年の大統領選挙で民主党の幹部が15年までの段階で候補者に内定していたヒラリー・クリントンはネオコンに担がれていた人物。そうした事情があるため、ネオコンの政策を公然と批判するオマール議員はこれまで有力メディアや民主党からも嫌われてきた。そうしたオマールの立場をトランプは計算しているのだろうか?
2019.07.16
安倍晋三政権は投機市場のバブルを支え、日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込むという政策を進めてきた。その政策は1%に満たない富裕層を豊かにし、大多数の庶民を貧困化させることになる。つまり、政策を変えない限り、いつまでたっても庶民が豊かになることはない。 その実態を隠すために考えられた呪文が「トリクルダウン」である。富裕層を豊かにすれば富が非富裕層へ流れ落ちて国民全体が豊かになるというのだ。荒唐無稽なおとぎ話にすぎないことは明白だが、そのおとぎ話を今でも宣伝し、それを信じている人がいるらしい。 来年、東京でオリンピックが開催されるようだが、開催地が東京に決まった2013年9月のIOC(国際オリンピック委員会)の総会で安倍は事実に反することを口にしている。プレゼンテーションで「福島の状況はアンダーコントロール」であり、「汚染水による影響は0.3平方キロメートルの範囲内に完全にブロックされている」と語ったのだ。 2011年3月に炉心溶融という大事故があった東電福島第1原発の話だが、炉心が溶融してデブリ(溶融した炉心を含む塊)が落下、地中へ潜り込んでいる可能性もある。コントロールできていないことは明白だ。 日本政府は2051年、つまり34年後までに廃炉させるとしているが、イギリスのタイムズ紙はこの原発を廃炉するまでに必要な時間を200年だと推定していた。その推測も甘い方で、数百年はかかるだろうと考えるのが常識的だ。廃炉作業が終了した後、10万年にわたって放射性廃棄物を保管する必要もある。今から10万年前と言えば、旧石器時代だ。 すでに原発事故が原因で相当数の人が死んでいる可能性が高い。例えば、医療法人の徳洲会を創設した徳田虎雄の息子で衆議院議員だった徳田毅は事故の翌月、2011年4月17日に自身の「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いていた: 「3月12日の1度目の水素爆発の際、2km離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」 事故当時に双葉町の町長だった井戸川克隆によると、心臓発作で死んだ多くの人を彼は知っているという。セシウムは筋肉に集まるようだが、心臓は筋肉の塊。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしている。 事故の翌日、2011年3月12日には1号機で爆発があり、14日には3号機も爆発、15日には2号機で「異音」がり、4号機の建屋で大きな爆発音があった。そして建屋の外で燃料棒の破片が見つかるのだが、この破片についてNRC(原子力規制委員会)新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は2011年7月28日に開かれた会合で語っている。発見された破片は炉心にあった燃料棒のものだと推測するというのだ。 また、マンチェスター大学や九州大学の科学者を含むチームは原子炉内から放出された粒子の中からウラニウムや他の放射性物質を検出している。 事故に伴って環境中に放出された放射性物質の放出総量をチェルノブイリ原発事故の1割程度、後に約17%に相当すると発表しているが、その算出方法に問題があるとも指摘されている。 この計算の前提では、圧力抑制室(トーラス)の水で99%の放射性物質が除去されることになっているが、今回は水が沸騰していたはずで、放射性物質の除去は困難。トーラスへの爆発的な噴出で除去できないとする指摘もある。そもそも格納容器も破壊されていた。 原発の元技術者であるアーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2~5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)が、10倍程度だと考えても非常識とは言えない。 放射線の影響は20年から30年後に本格化するともいわれているが、甲状腺の異常は数年前から増えている。2013年12月に成立した「特定秘密の保護に関する法律」によって政府は被害の実態を合法的に隠そうとしているのだろう。 中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三、菅直人、野田佳彦といった日本の総理大臣が推進した新自由主義がどういう情況を生み出すかは先例を見れば想像がつく。 例えば、ソ連消滅後にボリス・エリツィンが新自由主義を推進したロシアの場合、一部のグループが国民の資産を盗み出して国外の巨大資本へ渡し、自らも巨万の富を築いた。そして生まれたのがオリガルヒ。日本にもオリガルヒになろうとしている人物がいる。 言うまでもなく、そうした政策を続けていれば国は衰退していく。ロシアにしろ、日本にしろ、実権を握っている人びとは「自国」の衰退を気にしているとは思えない。個人的な利益を追いかけているだけだ。
2019.07.16
7月6日に逮捕されたジェフリー・エプシュタインはビル・クリントンやドナルド・トランプといった有名人を友人に持つ金融業者で、元妻はギスレイン・マクスウェル。この女性の父親はイギリスのミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルだ。 ロバートは1960年代からイスラエルの情報機関に協力、あるいはそのエージェントだったと人物で、イギリスやソ連の情報機関ともつながっていたと言われている。 1980年代に彼はイスラエルの情報機関がトラップドアを組み込んだコンピュータ・システムを販売しているが、その際、彼の下でジョン・タワー元米上院議員も働いていた。 タワーは1985年に議員を引退したが、86年に国家安全保障会議やそのスタッフとイラン・コントラ事件の関係を調べる特別委員会(タワー委員会)の委員長に就任している。 1989年にジョージ・H・W・ブッシュ大統領はタワーを国防長官にしようとするが、議会に拒否された。アルコールや女性の問題が原因だとされたが、実際はタワーがイスラエルの「スリーパー」だということが発覚したためだと言われている。 ロバートは1991年8月にCIAの工作資金8億ドル近くを持ってソ連へ入り、KGBの幹部へ渡したとされている。その工作とはソ連の体制転覆(ハンマー作戦)だったという。 その4カ月前、1991年4月にタワーは搭乗していた近距離定期便がジョージア州ブランズウィック空港付近で墜落して死亡した。同じ年の11月にはマクスウェルの膨張した裸の死体がカナリア諸島沖で発見されている。ギスレインがアメリカへ渡るのはその直後だ。 こうした背景があるため、ジェフリー・エプシュタインはイスラエルの情報機関モサドと関係があるという噂もある。パーティーに有力者を誘い、そこで若い女性をあてがい、寝室での一部始終を撮影、後にエプシュタインは女性が未成年だということを明かし、脅していたと言われている。そこで麻薬が使われるかもしれない。そこに情報機関が関与していたのではないかというわけだ。 エプシュタインはベア・スターンズで投資の世界へ入り、何らかの手段で大金持ちになった人物である。カリブ海に「乱交島」と呼ばれる島や「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれる航空機を所有できる人はウォール街にも多くない。単純な売春ビジネスでそれほど儲けることはできないだろう。 弱みを握られた富豪はエプシュタインのファンドに「出資」していたのではないかという推測がある。資金はオフショア市場へ流れ、姿は見えなくなる。その資金がさまざまな企業へ投資されることもありえるだろう。その企業が日本で言うところの企業舎弟やフロント企業であっても不思議ではない。
2019.07.15
ロシア政府はカザフスタンとの国境地域からベラルーシに至る有料自動車道路の建設を承認したという。1兆円を超すと見られている総工費は中国を含む民間からの出資で賄われるようだが、ロシア政府には最低限の収入(約600億円)の保証が求められている。 中国とロシアは2015年に一帯一路(BRI/帯路構想)をユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)と連結させると宣言しているが、これに合致すると言えるだろう。 ロシアが2011年夏の段階で経済的なつながりを朝鮮半島へ延ばそうとしていた。ドミトリ・メドベージェフ首相がシベリアで朝鮮の最高指導者だった金正日と会い、110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案した。 朝鮮がロシアのプランに同意すれば、シベリア横断鉄道を延長させ、朝鮮半島を縦断、釜山までつなげることが可能。鉄道と並行してエネルギー資源を輸送するパイプラインの建設も想定されていたはずだ。 このプランは現在も生きていて、中国のBRI(帯路構想)と結びついている。朝鮮半島の問題が解決されれば、釜山からドイツのハンブルグまで鉄道や道路でつながることになる。 これは日本にとってもメリットのある話だが、それは日本のアメリカへの従属度が低下することを意味する。これはアングロ・サクソンの支配グループに従属することで自らの地位と富を維持してきた日本のエリートたちにとって好ましくない。アメリカの意向に沿う形で中国との関係を悪化させたが、その副作用が強すぎて軌道修正しているようだが、今は韓国との関係を悪化させている。
2019.07.14
トルコ国防省によると、ロシア製防空システムS-400の配備が始まった。アメリカ政府からの圧力を跳ね返しての購入で、トルコのアメリカ離れが加速するかもしれない。NATOの加盟国がアメリカを離れ、ロシアへ接近する意味は小さくない。 S-400の購入をトルコがロシアに持ちかけたのは2016年11月頃、その翌年の9月には購入契約が結ばれたと発表される。トルコにアメリカ離れを決意させたのは、その年の7月15日の出来事だろう。武装蜂起があったのだ。 2015年までトルコはシリア侵略でアメリカと手を組み、11月24日にはトルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜している。 勿論、トルコが独断で実行できる作戦ではない。アメリカ軍の承認、あるいは命令があったはずだ。撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問していた事実は無視できない。 ところが、トルコは翌年の6月下旬にロシア軍機の撃墜を謝罪、7月13日にトルコ首相はシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆する。戦争が長引き、トルコは経済的に耐えられなくなっていた。 ロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入したのは2015年9月末。その年に入るとバラク・オバマ大統領は戦争体制を整え、シリアへアメリカ軍は直接侵攻すると見られていた。実は、リビアと同時にシリアへもアメリカ、イギリス、フランスを中心とする連合軍は軍事侵攻することになっていたのだが、シリアだけ延長されていた。2015年に軍事侵攻しようとしたのだろうが、ロシア軍の介入でそれができなくなった。 トルコのロシア接近を見てアメリカはクーデターを目論んだと見られているが、この計画は事前にロシアが察知、トルコ政府へ伝えていた。クーデターが失敗したのはそのためだ。当然のことながら、「同盟国」であるはずのアメリカからは通報はなかった。 このクーデター未遂に関し、レジェップ・タイイップ・エルドアン政権はその首謀者をアメリカへ亡命中でCIAの保護下にあるとも言われているフェトフッラー・ギュレンだと主張、そのギュレンを引き渡すように要求したが、拒否されている。 それだけでなく、トルコはクーデター計画の背後にはアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官やジョン・キャンベルISAF司令官がいたと主張している。 トルコはイランとも友好関係を結びつつあるが、シリア西部のイドリブではシリア政府と対立している。シリア政府を転覆させるために送り込んだ傭兵をどうするのかは大きな問題。イドリブの問題をロシアが解決したなら、アメリカの置かれた状況はさらに悪くなる。そうならないよう、あらゆる手段をアメリカは使うだろう。
2019.07.13
イランが運行するタンカー「グレイス 1」をイギリスの海兵隊がジブラルタル沖の公海上で拿捕した後、IRGC(イラン革命防衛隊)の元司令官が報復としてイギリスの艦船を拿捕するべきだと発言した。 それを受けてイギリスのBPが運行する「ブリティッシュ・ヘリテイジ」はサウジアラビアの沿岸近くへ避難。アメリカ政府の高官はIRGCの艦船5隻が「ブリティッシュ・ヘリテイジ」に近づいたと話しているが、IRGCの司令官はそうした事実はないと否定している。 イギリスによるイランのタンカー拿捕は海賊行為に等しく、報復されても仕方がない。アメリカやイギリスはそれを狙っていたのだろう。自分たちの行為は棚に上げてイランを批判、攻撃の口実にしようということだ。 本ブログでは何度か指摘したが、アメリカ軍の幹部はイランへの軍事侵攻を嫌がっている。イラクを先制攻撃したときは大量破壊兵器、今回は核開発を口実にしようとしている。イラクの大量破壊兵器は嘘だった。今回は核兵器の開発に結びつけようとしているが、これも事実の裏付けがない。 アメリカ軍が開戦に反対しているもうひとつの理由はイラクの時と同じで、作戦が無謀だということ。 2003年にイラクを侵略する際、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は10万人で十分だと主張していたが、エリック・シンセキ陸軍参謀総長(当時)は治安を保つためには80万人が必要だとしていた。結局、約31万人が投入されたのだが、足りなかった。 そのイラクの人口は約2600万人であるのに対し、イランは8100万人。3倍強だ。イラクで80万人が必要だったという想定が正しいとするならば、イランでは240万人以上が必要ということになる。そこでヨーロッパや日本のような属国に派兵を求めるつもりなのだろうが、それでも足りない。 シリアでも言えることだが、「限定的な戦争」を望んでも、都合良く短期間で終えることは簡単でない。イランの場合、中東全域に戦乱が拡大する可能性も小さくはない。短期間で終結させるという前提で戦争を始めること自体、無謀だ。 こうした無謀な戦争を誰が望んでいるのかということだが、国ではイスラエルやサウジアラビア。いずれもイギリスが作り上げた国だ。 アメリカとイランとの関係が一気に緊張するのはドナルド・トランプ米首相が5月8日、JCPOA(包括的共同作業計画)からの一方的な離脱を宣言してから。 このJCPOAは2015年7月に発表されて翌年の1月に発効。署名したのは国連の常任理事国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)とドイツのP5+1、さらにEUとイランだ。 このときのアメリカ大統領はバラク・オバマだが、その年にはシリアに対する軍事侵略の準備を整えつつあった。シリアに対する直接的な軍事介入に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長が排除され、好戦派に交代させているのだ。ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任が拒否されている。 ヘーゲルの後任長官に選ばれたアシュトン・カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張、ダンフォードの後任議長のジョセフ・ダンフォードはロシアをアメリカにとって最大の脅威だと主張する軍人だ。 2014年にはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)が売り出されたが、12年の段階でそうなることを警告する報告がホワイトハウスへ提出されている。 この報告をしたのはアメリカ軍の情報機関DIA。当時、オバマ政権はシリアの反政府軍への支援を進めていた。すでにリビアの戦争でアメリカ/NATOはアル・カイダ系武装集団を使っていることが判明、そこでシリアでは「穏健派」を助けているのだと主張していた。 それに対し、DIAが2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書には、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)という名称も書かれていた。 さらに、オバマ政権の武装勢力支援策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告が2014年にダーイッシュという形で現実なったのだ。 DIAが報告書を出した2012年8月当時、オバマ政権はシリアを軍事侵略する口実として化学兵器を考えていたことがわかっている。シリアに対する直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃するときと同じ手口だ。オバマはチェンジしていない。 その化学兵器を口実に使うという策略はロシアのアドバイスでシリア政府が化学兵器を廃棄したこともあり、思惑通りには進んでいない。そうした中、登場してきたのがダーイッシュ。その残虐性が演出され、アメリカ軍の介入を正当化しようとした可能性が高い。 このダーイッシュを使った計画は2015年9月末にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入したことで破綻する。それから間もなくして、シリア侵略でアメリカの同盟国だったトルコが離脱、ロシアへ接近している。 1992年にソ連が消滅、ロシアがアメリカの属国になったという前提で始まったアメリカの世界制覇プランはロシアの再独立で迷走している。ロシアを再属国化するのが先か、イランが先かでシオニストは割れた。しかもシオニストの戦略にアメリカ軍が異を唱えている。 軍も割れているようだ。統合参謀本部ではイラン攻撃に否定的な意見が多いようだが、中央軍や特殊作戦軍は違う。6月17日と18日にヘンリー・キッシンジャーは国防総省を訪問、17日にはマイク・ポンペオがフロリダのマクディル空軍基地で央軍や特殊作戦軍の人間と会っている。 支配層内部の反対を押し切って開戦に持って行くためには、それだけ衝撃的な出来事を演出する必要があるだろう。
2019.07.12
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領によると、ロシア製防空システムS-400を輸送機へ積み込む作業が進んでいて、予定通りにトルコへ配備されるという。 この取り引きにアメリカ政府は強く反対、アメリカ製戦闘機F-35の売却を中止すると警告していた。ほかにもさまざまな圧力も加えられているはず。トルコはアメリカから購入した武器や兵器の部品をストックのために大量購入しているとも言われている。 F-35が欠陥機であることは有名な話で、現在はロシアの戦闘機の方が低価格で高性能。問題は切り替えがスムーズに進むかどうかだろう。 トルコはロシアから天然ガスを運ぶパイプラインの建設をアメリカからの圧力もあって2015年12月に中止したが、16年に入ってトルコはロシアへ再接近、建設再開を決めた。2018年11月には完成している。 現在、ロシアと戦略的な同盟関係にある中国ともトルコは関係を強化している。6月28日から29日にかけて大阪でG20首脳会議が開催されたが、その直後にエルドアンは中国を訪問、経済的な結びつきを強めるための話し合いを行った。 中国にとってトルコとの関係強化は経済だけでなく、新疆ウイグル自治区の問題でもプラスになると見られている。この地域はBRI(帯路構想、かつての一帯一路)にとって重要で、サラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)、ムスリム同胞団を中心とする傭兵をアメリカはこの地域へ潜り込ませていると言われている。 この地区から相当数のウイグル人がシリアなどへ戦闘員として送り込まれていたが、シリアではロシア軍の攻撃で傭兵部隊は敗走、ウイグル人も出身地へ戻る可能性がある。 新疆ウイグル自治区の場合、アメリカは戦略として戻そうとするだろうが、中国とトルコの友好促進は新疆ウイグル自治区の安定化につながる可能性が高い。 ロシアと中国はトルコだけでなくインドやパキスタンとの関係を強めつつある。アメリカが経済的、あるいは軍事的に恫喝するほど相手をロシアや中国の方へ追いやっているようだ。
2019.07.11
南シナ海は周辺国、つまりブルネイ、中国、台湾、マレイシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムが領海を巡って対立しているのだが、軍事的な緊張を高めているのはアメリカだ。 フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は7月5日、アメリカを皮肉る演説をしたようだ。アメリカはフィリピンに中国を攻撃させようと圧力をかけ、扇動し、誘惑していると指摘したうえで、戦乱を望んでいるならアメリカ自身が軍用機や軍艦をその海域へ派遣し、最初の一撃をアメリカが発射しろと口にしたと伝えられている。1、2隻の軍艦を航行させるだけでなく、戦争したいなら自分でしろというわけだろう。 ドゥテルテは2016年に実施された選挙でベニグノ・アキノ3世を破り、同年6月から大統領を務めている。この人物は暗殺されたベニグノ・アキノとその妻で大統領になるコラソン・アキノの息子。両親と同じようにアメリカの支配層と緊密な関係にあり、CIAの活動に協力していた。ベニグノ・アキノ3世は南シナ海の問題で中国との対決姿勢を鮮明にしていた。 それに対し、ドゥテルテ大統領は大統領に就任した直後からアメリカの属国から脱する意思を見せ、中国と友好的な関係を結ぼうと積極的に動く。 中国と戦争を始めても勝てる見込みはなく、アメリカが介入してくると国がどのような状態になるかは、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナを見れば明確。外交的に解決しようとするのは合理的な判断だが、それをバラク・オバマ政権もドナルド・トランプ政権も許せなかった。 ドゥテルテによると、2016年9月の段階でフィリピンの情報機関からオバマ政権が彼を殺したがっているという報告を受けたという。そして2017年5月、フィリピン南部にあるミンダナオ島のマラウィ市をマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)系の武装集団が制圧した。この島では以前からダーイッシュが活動、市内には500名程度の戦闘員がいると推測されていたが、アメリカ軍は活動を容認していた。勿論、中東と同じように、ここでもダーイッシュはアメリカの傭兵だ。
2019.07.10
有名人を顧客にした「小児性愛ネットワーク」を運営していた疑いが持たれ、7月6日に逮捕されたジェフリー・エプシュタインの元恋人、ギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループの総帥だったロバート・マクスウェルだ。 ロバート・マクスウェルはイギリスやイスラエルの情報機関に協力していた人物で、1991年にソ連のミハイル・ゴルバチョフを排除してソ連を消滅させたCIA人脈とKGBの腐敗幹部が共同して実行したハンマー作戦で両機関をつなぐ役割を果たしたと言われている。 ソ連消滅は1991年12月だが、その前の月にマクスウェルの膨張した裸の死体がカナリア諸島沖で発見された。それからまもなくしてギスレイン・マクスウェルはイギリスからアメリカへ渡り、ジェフリー・エプシュタインと親しくなる。そのジェフリーが生まれ育ったイギリスでも「小児性愛ネットワーク」が問題になり、1998年には摘発されそうになっている。 グレーターロンドンのランベス区の警察の捜査で小児性愛の容疑者12名が浮上、その中にはトニー・ブレア政権の閣僚も含まれていたのだが、上層部の命令で捜査は中止になり、捜査官は別の部署へ異動させられた。ブレア自身にも小児性愛者だという噂がある。
2019.07.09
ジェフリー・エプシュタインなる人物が7月6日に性犯罪の容疑で逮捕された。同時に家宅捜索も受けているのだが、その際に金庫から猥褻な少女の写真が発見されたと発表されている。 この事件が表面化する切っ掛けは、2005年にフロリダの警察を訪れた女性の話。14歳になる義理の娘がエプシュタインの自宅で猥褻な行為をされたというのだ。そこから内偵捜査が始まり、11カ月後に家宅捜索している。 捜査の中でエプシュタインが有力者へ少女を提供、行為を秘密裏に撮影して恐喝の材料に使っていたことが捜査で浮かび上がる。エプシュタインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けるのだが、刑務所へは入っていない。寛大な処置と言えるだろう。 有力者への少女提供が大がかりなものだった可能性もある。ある人物がエプシュタインの自宅から少なからぬ有名人の連絡先が書かれた「黒い手帳」を持ち出し、5万ドルで売ろうとして情報が漏れたのだ。2009年のことである。その人物は手帳について、「小児性愛ネットワーク」を解き明かすものだとしていた。 2016年に実施されたアメリカ大統領選挙の投票日の直前、ひとりの女性がドナルド・トランプから13歳の時にレイプされたと訴え出た。ヒラリー・クリントン陣営は喜んだようだが、この話はクリントン陣営にとっても好ましくなかった。そのリストの中にはビル・クリントンも含まれていたのだ。 リストにはトランプやクリントンのほか、イスラエルの首相だったエフード・バラク、ハーバード大学のアラン・ダーショウィッツ教授、イギリスのアンドリュー王子の名前も含まれ、エプシュタインの事件を掘り下げることは難しいだろうという見方もあった。実際、エプシュタインは軽い処罰で終わっている。 ダーショウィッツは法律の専門家で、エプシュタインの弁護団に名を連ねていたが、イスラエルを批判する人物を激しく攻撃してきたことでも知られている。中でも有名な犠牲者がイスラエルによるパレスチナ弾圧を批判していた研究者のノーマン・フィンケルスタイン。 デポール大学で働く任期制の教員だったフィンケルスタインが終身在職権を得ることが内定した際、ダーショウィッツは反フィンケルスタインのキャンペーンを数カ月に渡って展開、大学に圧力をかけて彼との雇用契約を打ち切らせてしまったのである。ダーショウィッツのようなシオニストはフィンケルスタインのようなユダヤ人を「自己憎悪」という用語を使って批判する。 さらに、フィンケルスタインの著作が世に出ると聞くとダーショウィッツ教授はカリフォルニア大学出版やカリフォルニア州の知事だったアーノルド・シュワルツネッガーに働きかけて出版を止めさせようとしている。 有力者を相手にした「小児性愛ネットワーク」が存在するという話は1988年にも浮上している。偽情報だということになっているが、事実だとする見方は消えていない。2016年の大統領選挙で「ピザゲート」が話題になったのも、こうした権力犯罪がもみ消されてきたと少なからぬ人が思っているからだろう。 勿論、日本でそうしたことが行われていないとは言えない。
2019.07.09
ギリシャで行われた総選挙でND(新民主主義党)が議席が過半数を獲得、同党のキリアコス・ミツォタキスが新しい首相に就任する見通しだ。アレクシス・チプラス首相が率いるシリザ(急進左派連合)は大きく議席を減らした。シリザは5月下旬の欧州議会選で敗北、10月までに予定されていた選挙を前倒しで実施したわけで、予想通りの結果である。 シリザが有権者の支持をなくした理由は明確。公約を破ったからだ。ギリシャで財政危機が表面化した際、ECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)、そして欧州委員会で編成される「トロイカ」は欧米の巨大金融機関を救済するために尻拭いを庶民に押しつけようとする。それが緊縮財政。 ギリシャの財政危機を招いたのは年金制度や公務員の問題だと西側のメディアは宣伝していたが、それでは危機が急に深刻化した理由が説明できない。そもそもギリシャの財政を悪化させた最大の要因は第2次世界世界大戦や軍事クーデターによる国の破壊だ。 そうした経済状態だったギリシャだが、それでも破綻が差し迫っていたわけではなかった。経済破綻に向かってギリシャが暴走をはじめた直接的な原因は、2001年に通貨をドラクマからユーロへ切り替えたことにある。この切り替えでギリシャは経済的な主権を失い、ギリシャ政府は独自の政策を打ち出すことができなくなっていた。 実は、EUのルールに従うとこの通貨切り替えはできないはずなのだが、切り替えられた。そこには不正が存在している。財政状況の悪さを隠したのだ。その作業で中心的な役割を果たしたのが巨大金融機関のゴールドマン・サックス。財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませたのである。 その手法とは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などを使って国民に事態を隠しながら借金を急増させ、投機集団からカネを受け取る代償として公共部門の収入を差し出すということが行われていたという。借金漬けにした後、「格付け会社」がギリシャ国債の格付けを引き下げて混乱は始まった。 ギリシャを破綻させる作業が続いていたであろう2002年から05年にかけてゴールドマン・サックスの副会長を務めていたマリオ・ドラギは06年にイタリア銀行総裁、そして11年にはECB総裁に就任している。 昔から金融資本は緊縮財政を主張してきた。年金や賃金を減額し、社会保障の水準を下げ、失業者を増やすことになる政策だ。つまり、庶民へ流れるカネの流れを絞り、金融機関を儲けさせようというわけだ。 そうした理不尽な要求をギリシャ人は拒否、2015年1月に行われた総選挙でシリザを勝たせたのである。その年の7月に行われた国民投票で61%以上がトロイカの要求を拒否したのは当然だろう。 そこでアメリカのバラク・オバマ政権はギリシャの内政に干渉する。2015年3月にネオコンのビクトリア・ヌランド国務次官補をギリシャへ派遣したのだ。ヌランドはチプラス首相に対し、NATOの結束を乱したり、ドイツやトロイカに対して債務不履行を宣言するなと警告、さらにクーデターや暗殺を示唆したとも言われている。イギリスのサンデー・タイムズ紙は7月5日、軍も加わったネメシス(復讐の女神)という暗号名の秘密作戦が用意されていると伝えていた。 チプラス政権は西側金融資本を救済する政策を実行するだけでなく、アメリカやイスラエルとの間でEMA(東地中海同盟)を結ぶ。2018年春からギリシャのラリサ空軍基地はアメリカ軍のUAV(無人機)、MQ-9リーパー(プレデターBとも呼ばれる)の拠点として運用されている。 さらに、カルパトス島でアメリカ軍とギリシャ軍の基地を建設、アメリカ軍のF22戦闘機の拠点にしようという計画もあるようだ。この島はエーゲ海のデデカネス諸島に属し、ロードス島とクレタ島の中間にある。 また、ギリシャ政府は同国の東北部にあるアレクサンドルポリをイスラエルから天然ガスを運ぶためのハブ基地にしようと目論んでいる。地中海の東側、リビア、エジプト、パレスチナ(ガザ)、イスラエル、レバノン、シリア、トルコ、ギリシャを含む地域に天然ガス田があり、その利権をイスラエルとそのスポンサーが手に入れようとしている。この資源調査に加わったノーブル・エナジーのロビイストにはビル・クリントン元米大統領が含まれている。 ノーブル・エナジーは2010年、イスラエル北部で推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模ガス田を発見したと発表したが、USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。 昨年(2018年)8月、ギリシャに対するESM(欧州安定メカニズム)の第3次金融支援が終了し、8年間におよぶ支援を脱却したと報道されたが、予定通り進んでも債務の返済にはあと半世紀は必要だとされている。しかも「支援」の過程で経済は大幅に縮小、若者や専門技術を持つ人びとを中心に約40万人のギリシャ人が国外へ移住、メンテナンスを放棄したことからインフラを含む700億ユーロ相当の資産が失われた。ギリシャ危機が終わったのではなく、ギリシャという国が終わったのだと言われるのは、そのためだ。 チプラス政権は西側の巨大金融資本のために働いた。そのチプラスから首相の座を引き継ぐミツォタキスはアメリカで仕込まれた人物。つまり、1986年から90年にかけてハーバード大学、92年から93年にかけてスタンフォード大学で学び、93年から95年にかけて在籍したハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を得ている。
2019.07.08
イランが運行するタンカー「グレイス 1」をイギリスの海兵隊がジブラルタル沖で拿捕した。シリア向けの石油を運んでいる疑いが拿捕の理由だというのだが、それはイギリスやアメリカの勝手な言い草であり、海賊行為以外の何物でもない。 ちなみに、ジブラルタルはイベリア半島の南端近くにあり、地中海と大西洋を結ぶ狭い通路。そこをイギリスが占領、領土としている。海運を支配する一環だ。 かつて、中国から西アジアを経由して地中海へ至るシルク・ロードという交易ルートがあったが、物流の中心はやはり海運だった。その海路を支配することで勢力を伸ばした国のひとつがイギリスである。海路を支配するということは、自由な航行を許さないということでもある。 その戦略を体系化したのがハルフォード・マッキンダーというイギリスの学者。1904年に世界制覇のため、ユーラシア大陸の沿岸地域を制圧して内陸部を締め上げていくという戦略を発表している。 マッキンダーは世界を制覇するためにロシアを支配する必要があると考えた。ロシアには耕作地が広がり、19世紀には領内で油田が発見された資源国であり、国民の教育水準も高い。ロシアの南にある中国も古くから栄え、莫大な資産が蓄えられている。 ロシアや中国を締め上げるため、マッキンダーは西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ内部三日月帯を、その外側に外部三日月地帯を想定した。 内部三日月帯を海路でつなぐためにスエズ運河がイギリスにとっていかに重要かということは言うまでもないだろう。地中海からスエズ運河を通って紅海へ入り、そこからインド洋へ抜ける際に通過するアデン湾はアラビア半島の南端(イエメン)とアフリカの角(ソマリア)に挟まれている。 マッキンダーが想定する内部三日月帯はアラビア半島を通過しているが、かつて、そこにイギリスの拠点はなかった。そしてイギリスはイスラエル(1948年)とサウジアラビア(1932年)を作る。その三日月帯の東端に日本はある。大陸を侵略する拠点として格好の場所だ。 イギリスは19世紀から中国(清)を食い物にしようとしてきた。そして実行されたのが1840年に勃発したアヘン戦争と56年に始まった第2次アヘン戦争だ。 前にも書いたことだが、アヘン戦争と第2次アヘン戦争でイギリスは勝利したものの、内陸部を支配する戦力がない。アヘン戦争に投入されたイギリス軍は5000名。7000名はインドの兵士だった。第2次アヘン戦争でイギリス軍は兵士の数を増やしたが、それでも1万3127名。フランスから7000名ほどが参加している。 要するに、イギリスは戦力が圧倒的に不足している。そこで目をつけられたのが日本だ。明治維新はそうした側面から考える必要がある。ちなみに日清戦争で日本軍は24万人が投入された。明治維新以降、日本は大陸侵略の拠点であり、日本人はアングロ・サクソンの傭兵としての側面があるのだ。明治維新によって安藤昌益を生んだ徳川時代は終わり、大陸を侵略する天皇制の明治時代が始まる。 イギリスがアヘン戦争を仕掛けたのは資本主義が破綻したからにほかならない。資本主義は富を循環させるのではなく集中させる。必然的に貧富の差が拡大し、経済は持続できない。そこで国外で略奪するしかないのだ。世界市場の形成、原料の入手と言えば聞こえは良いが、押し売りと略奪だ。押し売りの商品の中には麻薬も含まれている。 今回のタンカー拿捕はアメリカが東シナ海や南シナ海で展開している軍事行動の性格も示している。中国などアメリカに楯突く国の海上輸送をいつでも断ち切れる体制を確立したいということだ。日本はその手先にされている。
2019.07.07
安倍晋三政権は強大な権力を握っているように見える。例えば、安倍と親しい関係にある山口敬之元TBSワシントン支局長のケース。 前後不覚の状態になった知り合いの女性を山口は引きずるようにホテルへ連れ込み、性交渉を持つ。監視カメラやタクシー運転手の証言などで女性の訴えは事実と判断した所轄の高輪署は山口の逮捕状を取り、2015年6月8日に成田空港でアメリカから帰国する山口を逮捕する手はずになっていた。 デイリー新潮によると、その日、担当の警部補とその上司を含めた複数の警察官が成田空港で被疑者となる人物を逮捕すべく待ち構えていたところ、突如、上層部から「山口逮捕は取りやめ!」と命令される。 この件に関して取材していた週刊新潮に対し、警視庁刑事部長だった中村格は山口を逮捕する必要なしと「私が判断した」と語ったという。中村は2012年12月から菅義偉内閣官房長官の秘書官を務めた人物だ。 政権を揺るがすと見られていた森友学園への国有地売却をめぐる背任や決裁文書改竄で安倍首相の力を感じる人もいるだろう。文書の300カ所以上が改竄されていたのだが、責任者の佐川宣寿前国税庁長官ら財務省関係者全員を検察は不起訴にしている。 しかし、検察に力がないわけではない。その気になれば政治家を失脚させることも彼らは厭わない。かつて東京地検特捜部は事実上の冤罪で小沢一郎衆議院議員を攻撃、鳩山由紀夫を総理大臣のポストから引きずり下ろすために働いている。小沢に「犯罪者」というラベルを貼るため、東京地検特捜部は虚偽の捜査報告書を検察審査会に提出、検察審査会を騙して「起訴すべき」との議決を引き出し、「強制起訴」を実現している。 2012年4月に東京地裁は小沢に無罪を言い渡したが、その間に小沢や鳩山から力は奪われ、平和を目指そうとする動きが断ち切られた。そして再び戦争へと向かい始めるわけである。その背景にウォルフォウィッツ・ドクトリンがあることは言うまでもない。 虚偽捜査報告書を作成、検察審査会へ送付した責任を問われた佐久間達哉特捜部長(当時)をはじめとする検事はその年の6月に不起訴となり、同年12月には安倍が5年ぶりに首相へ返り咲いた。 第2次世界大戦後、日本で最も大きな力を持っていた政治家は田中角栄だと考える人は少なくないだろう。その田中はロッキード事件で葬り去られた。 田中角栄の逮捕が決まったというアメリカのニューズレターに掲載された記事を見た某ジャーナリストが田中本人にその事実を知らせた際、警察も検察もおさえているので大丈夫だと言われたという。が、実際は逮捕された。田中以上の影響力を検察に対して持っていた勢力が存在するということだ。 本当のロッキード事件は軍用機に絡むもので、その最重要容疑者は別の政治家だとする見方がある。警察はその政治家の逮捕令状をとっていたのだが、重要証人が急死したので逮捕は見送られたとする話が警視庁の内部から漏れていた。 日本国内で見る限り、資金調達力にしろ、判断力にしろ、行動力にしろ、演説力にしろ、人気にしろ、田中は安倍を圧倒している。安倍周辺には山口より質の悪い人物が少なくないとする噂も流れている。それでも法的に問題となっていない。 こうした流れを見れば、安倍の力の源泉が「内閣総理大臣」というポストでないことは明らかである。ある種の人びとが好んで口にする朝鮮半島の国でもない。力の源泉はアメリカに存在する。 安倍の場合もネオコンと関係が深い。特にハドソン研究所の上級副所長を務めるI・ルイス・リビー、通称スクーター・リビーだ。都知事だった石原慎太郎が尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言したのはこの研究所で行った講演の中でだった。 リビーはエール大学出身だが、そこでネオコンの中枢グループに属するポール・ウォルフォウィッツの教えを受けている。ソ連消滅後、1992年初めに露見した世界制覇プランは、このウォルフォウィッツが中心になって作成されている。当時、この人物は国防次官だった。 安倍が尊敬しているという祖父の岸信介がウォール街と親密な関係にあったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。いわゆる戦前レジームが反ファシストのニューディール派と対立関係にあったことは事実だろうが、親ファシストのウォール街とはつながっていたのだ。戦前レジームへの回帰とは、ウォール街への従属を意味している。
2019.07.06

ロシアのウラジミル・プーチン大統領が7月4日にイタリアを訪問、ローマ教皇フランシスコとシリアやウクライナの問題を話し合ったという。さらにイタリアのジュゼッペ・コンテ首相とセルジオ・マッテレッラ大統領とも会談するようだ。 2011年春に始まったシリアでの戦争について、西側の政府や有力メディアは「民主化を求める人民に対する独裁者による弾圧」というストーリーを描き、アメリカやNATOの軍事介入を正当化しようとしていた。 ホムスで住民が虐殺された際には政府軍が虐殺したように伝えていたのだが、その虐殺を現地で調査した東方カトリックのフランス人司教はそうした西側の話を否定していた。虐殺を実行したのは政府軍と戦っているサラフ主義者や外国人傭兵だと報告していたのである。 その報告で司教は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」とする証言を紹介している。 こうした報告も影響したのか、ローマ教皇庁はこれまでアメリカの好戦派が進めるシリアでの戦争を肯定するようなことはなかった。 ほかにも西側での宣伝を批判するカトリック関係者がいた。例えば2010年からシリアで活動を続けていたベルギーの修道院のダニエル・マエ神父は住民による反政府の蜂起はなかったと語っている。シリアで宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。 イタリアはかつてのシルクロードと同じように、中国が進めるBRI(帯路構想、かつての一帯一路)の西端。アメリカやイギリスが進める中国やロシアに対する敵対的な政策に批判的な国と言えるだろう。プーチンのイタリア訪問はアメリカやイギリスの好戦派に対する揺さぶりになりそうだ。
2019.07.05
安倍晋三政権は韓国への輸出規制強化策として、半導体の製造に必要な材料3品目、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出許可手続きを厳密にしはじめたという。さらに、輸出先として信頼できる国のリストから韓国を外す手続きを進めている。韓国の元徴用工を巡る問題に絡んでいると考える人が少なくない。 元徴用工の問題が注目されるようになったのは昨年(2018年10月、韓国の大法院(最高裁)が新日鉄住金に対して元徴用工へ損害賠償合計4億ウォンを支払うように命じる判決をだしてからだろう。 安倍政権は朴正熙政権下の1965年に締結した日韓請求権協定でこの問題は「完全かつ最終的に解決している」という立場。それを大法院は否定したのだが、日本の外務省も国会でこの協定は日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということであり、個人の請求権そのものを消滅させたものではないとしてきた。 この問題に関係している日本企業はこうした展開になることは予想していたはず。そこで訴えられた企業は和解の姿勢を見せていた。今後のビジネスを考えても、それが得策だと判断したのだろう。 ところが、2013年7月にソウル高裁が新日鉄住金に賠償を命じた後に同社が判決を受け入れるかどうかを検討し始めると、安倍政権は判決を受け入れないようにと圧力をかけたと報じられている。主導したのは菅義偉官房長官らだという。 こうした姿勢を政府にとらせているのは日本の財界、つまり経団連、経済同友会、日本商工会議所、日韓経済協会だとされているが、アメリカからの指示、あるいは命令がないとは思えない。アメリカの支配層は東アジアが団結することを恐れている。その団結を壊す役割を担ってきたのが日本、そして一時期の朝鮮。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、韓国は中国やロシアと経済的な結びつきを強めている。その結びつきの背景になるビジョンを描いているのはロシアのウラジミル・プーチン政権。2011年夏にはドミトリ・メドベージェフ首相がシベリアで朝鮮の最高指導者だった金正日と会い、110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案しているが、これもそうしたビジョンの一環だった。 朝鮮がロシアのプランに同意すれば、シベリア横断鉄道を延長させ、朝鮮半島を縦断、釜山までつなげることが可能。鉄道と並行してパイプラインの建設も想定されていたはずだ。このプランは現在も進行中で、中国のBRI(帯路構想)と結びついている。 BRIは最近まで一帯一路と呼ばれていた。「陸のシルクロード」と「海のシルクロード」でユーラシア大陸の東と西をつなぐという構想で、国家主席に就任した習近平が打ち出したという。 2014年にバラク・オバマ政権がウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、EUとロシアを分断しようとしたが、ロシアは目を東へ向け、中国もロシアと手を組む。 中国は1980年から新自由主義を導入、80年代後半にそうした経済政策を修正して天安門事件につながるが、それでもウクライナでのクーデターまで中国とアメリカの関係は揺るがないとアメリカの支配層は考えていた。 エリート予備軍の若者をアメリカへ留学させて洗脳していたことに加え、中国人はカネ儲けしか考えていないという偏見があったようだが、アメリカの属国になることを中国政府は拒否したのである。 一方、ロシアからの提案を受け入れた金正日は2011年12月に急死、その後、朝鮮はミサイル発射実験や核兵器の開発をアピールして東アジアの軍事的な緊張を高めることになる。朝鮮半島に鉄道やパイプラインを建設するというロシアのプランはアメリカ主導の「制裁」で難しくなった。朝鮮の言動は中国やロシアを軍事的に恫喝したいアメリカ支配層にとって都合が良かった。 その朝鮮が2018年4月27日に方針を変更する。韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が板門店で会談したのだ。その後、朝鮮とアメリカとの首脳会談が行われるが、これはロシア、中国、韓国、そして朝鮮の4カ国が進めようとしている経済交流の促進にアメリカを絡めようという4カ国側の意向が反映されているように見える。 オバマ政権はロシアに経済戦争を仕掛け、軍事的な恫喝を強めていたが、ドナルド・トランプ政権は中国に経済戦争を仕掛け、軍事的な恫喝を進めている。 昨年12月1日にはバンクーバーの空港で中国の大手通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為)のCFO(最高財務責任者)で同社を創業した任正非の娘でもある孟晩舟をカナダ当局が逮捕している。その時、アメリカのドナルド・トランプ大統領は中国の習近平国家主席と貿易問題について話し合っていた最中だった。トランプは逮捕を事前に知らされていなかったという。 しかし、先月末にトランプはファーウェイに絡んだ規制を緩和させる動きを見せた。この方針に反発する人物がホワイトハウスの中にもいるだろう。そのタイミングでの安倍政権による韓国への輸出規制強化。日本とアメリカの関係を象徴しているようだ。
2019.07.04
7月4日はアメリカの独立記念日である。1776年7月4日に独立宣言が採択されたことを記念して定められたのだ。 ヨーロッパからの植民者がイギリスからの独立を宣言したのだが、その執筆者はトマス・ジェファソン。「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と謳っている。 宣言に署名した人びとが何を考えていたかはともかく、宣言にある「人間」に制限はついていない。すべての人間は人種、民族、性別、思想、信仰、身分、家柄などに関係なく平等であり、人間としての権利を持っているということだ。 当然、生まれながらに持っている能力を発揮するために必要な環境がすべての人間に保証されなければならない。人種、民族、性別、思想、信仰、身分、家柄などによって、そうした環境に差があってはならない。安心して生活でき、教育を受けることができ、働くことができなければならない。 こうした権利を保障しない政府を人びとは「改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有する」と独立宣言は主張している。 さらに、「権力の乱用と権利の侵害が常に同じ目標に向けて長期にわたって続き、人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らかであるときには、そのような政府を捨て去り、自らの将来の安全のために新たな保障の組織を作ることが人民の権利であり義務である」ともしている。 アメリカでは19世紀に「泥棒男爵」と呼ばれる人びとが出現した。不公正な手段で財産を手に入れ、巨万の富を築いた人たちだ。石油業界を支配することになるジョン・D・ロックフェラー、金融帝国を築いたJ・P・モルガン、鉄鋼業界のアンドリュー・カーネギー、ヘンリー・クレイ・フリック、鉄道のエドワード・ヘンリー・ハリマン、金融や石油で財をなしたアンドリュー・W・メロンなどが含まれている。 こうした人びとの権力が強大化する切っ掛けになった出来事が1913年12月にあった。連邦準備制度が創設され、連邦準備理事会が金融政策の樹立と遂行を監督、12の連邦準備銀行が政策を実行することになったのだ。このシステムを支配するのは富豪たちだ。 連邦準備制度を作るための秘密会議が1910年11月にジョージア州のジキル島で開かれている。会議に参加したメンバーはクーン・ローブやJPモルガンの使用人やジョン・D・ロックフェラー・ジュニアの義父、つまりロスチャイルド、モルガン、ロックフェラーの代理人たちだった。こうした人びとがアメリカの通貨を発行する特権を持つことになる。 こうした富豪が拠点にしている場所がウォール街やシティ。そこの住人に立ち向かった大統領もかつてはいた。フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディたちだ。 ルーズベルトは1932年の大統領選挙で勝利したのだが、その時にライバルだったハーバート・フーバーは現職の大統領。スタンフォード大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働いていた人物。政治家になってからはウォール街から支援を受けていた。 そのフーバーとは違い、ルーズベルトは労働者の権利を認めてファシズムに反対するニューディール派を率いていた。そのルーズベルトをウォール街は嫌った。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、1933年から34年にかけてウォール街の大物たちはニューディール派を排除するためにクーデターを計画する。そのため、軍の内部で大きな影響力を持っていた海兵隊のスメドリー・バトラー退役少将を抱き込もうとするのだが、失敗してしまう。計画の内容はバトラー、そしてバトラーと親しかったジャーナリストが議会で証言、記録として残っている。 クーデターで中心的な役割を果たしたのはJPモルガンだったとされているが、その総帥であるジョン・ピアポント・モルガン・ジュニアの妻のいとこ、ジョセフ・グルーは1932年に駐日大使として来日している。 ちなみに、JPモルガンの共同経営者だったエドワード・ストーテスベリーと結婚したエバ・ロバーツ・クロムウェルの娘の夫はダグラス・マッカーサーである。 グルーは皇族を含む日本の支配層に強力なネットワークを持つ人物で、特に松岡洋右と親しかった。松岡の妹が結婚した佐藤松介は岸信介や佐藤栄作の叔父にあたる。 日本軍が真珠湾を奇襲攻撃して日本とアメリカが戦争を始めてしばらくの間、グルーは日本に滞在。離日したのは1942年8月だが、その直前に彼がゴルフをした相手は岸信介だ。大戦後、日本の進む方向を決めたジャパン・ロビーの中心にもグルーはいた。グルーが親ファシスト勢力に属していたことを忘れてはならない。 すでにアメリカでは強大な私的権力が国を上回る力を持っている。その結果、「権力の乱用と権利の侵害が常に同じ目標に向けて長期にわたって続き、人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らか」になっていると言える。 2011年9月11日以降、アメリカでは国外での侵略戦争、国内での刑務所化が急速に進んでいる。アメリカの属国である日本もその後を追っている。そうした現状を見ながら、「それでもアメリカは民主主義国だ」とか「それでもアメリカの方がましだ」という「左翼」、「リベラル派」、「革新勢力」が日本にはいる。
2019.07.03

ネオコンの影響下にあったバラク・オバマ大統領は2011年春にサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵をシリアやリビアへ送り込んで体制を転覆させようとする。リビアはその年の10月に目的を達成したが、シリアには手こずる。 オバマ政権はリビアで戦わせていた戦闘員を武器/兵器と一緒にシリアへ運び、2012年には「穏健派」を助けるとして軍事的な支援を強化する。それを批判する報告書を出したのがアメリカ軍の情報機関DIAだ。 DIAが2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書には、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)という名称も書かれている。2012年当時のDIA局長はマイケル・フリン中将だった。 さらに、オバマ政権の武装勢力支援策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実なる。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ政府が軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めたのはDIAが報告書を出した2012年8月。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。 2012年12月になると、国務長官だったヒラリー・クリントンがシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。 そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールの中に書かれているとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された) その後、シリア政府軍が化学兵器を使ったとする話を西側の政府や有力メディアは何度か主張してきたが、いずれも嘘が明らかにされている。それでもアメリカ政府は同じシナリオを繰り返し、有力メディアはそれを垂れ流している。 こうしたオバマ政権の作戦を察知したのか、ロシア政府のアドバイスでシリア軍は生物化学兵器を廃棄していた。その作業は公開されている。そのため、アメリカ側の宣伝は説得力がなくなっていた。 そして2014年1月に出現したのがダーイッシュ。この武装勢力はイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言し、6月にモスルを制圧する。その際にトヨタ製小型トラック「ハイラックス」の新車を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられて広く知られるようになった。 こうしたパレードは格好の攻撃目標。偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などでアメリカの軍や情報機関は武装集団の動きを知っていたはずだが、攻撃していない。それどころか、ダーイッシュ的な集団の出現を警告していたフリンは2014年8月にDIA局長のポストを追われた。ダーイッシュの出現はオバマ政権の政策だったと言われても仕方がない。 2015年に入るとオバマ政権は戦争体制を整える。シリアに対する直接的な軍事介入に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長が排除されるのだ。ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任が拒否されている。 ヘーゲルの後任長官に選ばれたアシュトン・カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張、ダンフォードの後任議長のジョセフ・ダンフォードはロシアをアメリカにとって最大の脅威だと主張する軍人だ。 オバマ政権はシリアへアメリカ軍、あるいはNATO軍を軍事侵攻させようとしていたのだろうが、それを不可能にする出来事が統合参謀本部議長が交代した直後、2015年9月30日にあった。ロシア軍がシリア政府の要請で介入してきたのだ。これで戦況は一変、オバマ政権が送り込んだ傭兵は敗走、支配地域は急速に縮小していった。 アメリカも参加したJCPOA(包括的共同作業計画)が公表されたのは、オバマ政権がシリアに対する戦争の準備を整えつつあった2015年7月だ。ネオコンの戦略を考えると、シリアに対する軍事侵略はイランへの攻撃に結びついている。JCPOAへ参加したからといって、オバマ政権がイランの体制転覆を諦めたと判断することはできない。 オバマ政権の中東戦略はアメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所が2009年に出した報告書に基づいていると考える人がいる。報告書のプランと実際の政策が似ているからだ。 その報告書には、イランを空爆する前にイランからの挑発を引き出す必要があるとしている。勿論、都合良くイランがそうした挑発をする可能性は小さい。世界に気づかれることなく、アメリカがイランによる挑発を演出すれば良いということになる。オバマ政権が核問題を話し合いで解決しているように思わせるためにJCPOAを利用したと考えることもできるということだ。オバマ大統領の言動を見聞きしていると、その可能性は小さくないように思える。 ちなみに、9/11の前年、2000年にネオコン系シンクタンクのPNACが発表した報告書「アメリカ国防の再構築」には、「革命的な変革」を迅速に実現するためには「新たな真珠湾」のような壊滅的な出来事が必要だとする記述があった。(了)
2019.07.02
アメリカのドナルド・トランプ政権は板門店で朝鮮の金正恩労働党委員長と会談する一方、イランに対する経済戦争は続けている。朝鮮もイランと同じようにアメリカとの交渉に意味はないとしていた。トランプ大統領は譲歩するようなメッセージを伝えたのかもしれないが、所詮は形式的なものにすぎないだろう。トランプ政権に限らず、アメリカが交渉したがる理由は時間稼ぎが必要なときだ。 1979年にイスラム革命で倒されたイランのパーレビ朝はイギリス、アメリカ、そしてイスラエルの強い影響下にあった。そのパーレビ朝は陸軍の将校だったレザー・ハーンが1921年にテヘランを占領し、25年にカージャール朝を廃してから始まる。 その背景には油田の発見があった。1909年にイギリスは石油利権を支配するためにAPOC(アングロ・ペルシャン石油)を創設している。オスマン帝国を解体して中東を支配するため、イギリスは第1次世界大戦の最中、1916年5月にフランスとサイクス・ピコ協定を結んでいる。 協定が結ばれた翌月、イギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こす。その部署にトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。その際、イギリスの工作員がワッハーブ派のイブン・サウドに接触。この人物は後にサウジアラビア国王を名乗ることになる。1927年にサウドは国を作り上げ、32年から国名はサウジアラビアになった。一方、APOCは1935年に社名をAIOC(アングロ・イラニアン石油)へ変更した。 第2次世界大戦が始まるとレザー・ハーンは親ドイツの姿勢を示し、イギリスとソ連は1941年8月にイランへ軍事侵攻。国王は逮捕されて国外追放、そして退位させられた。替わって即位したのが息子のムハマンド・レザーだ。 イランはイギリスの植民地になり、ムハマンド・レザーを介して支配するようになるのだが、大戦後に民主化の機運が高まり、選挙でムハマド・モサデクが首相に選ばれた。 議会はAIOCの国有化を決めるが、イランの石油利権を手放せないイギリスの支配層はアメリカの力を借りてクーデターを実行、1953年8月にモサデクを排除することに成功、ムハマンド・レザーを国王とする体制が復活する。この体制は1979年1月に国王が国を脱出するまで続く。 当初、アメリカやイスラエルは革命政権の一部と結んで支配を目論むが、失敗。1970年代にアメリカで台頭した「イスラエル第一」のネオコンは80年代にイラクのサダム・フセイン体制を倒し、シリアとイランを分断、最終的にイランを制圧するというプランを描いた。 このプランはフセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤と認識していたアメリカの一部支配層とネオコンを対立させることになり、イラン・コントラ事件などスキャンダルの発覚につながる。 1991年12月にソ連が消滅する頃になるとネオコンの力が相対的に強くなり、92年2月にはネオコンの中核グループに属すポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)らは国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成する。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。 このドクトリンはアメリカが唯一の超大国になり、誰もアメリカの軍事行動に刃向かえなくなったという前提で描かれている。国連も無視、単独で行動できるという考えだが、そうした方針に反する考え方をしていた細川護熙内閣は1994年に潰された。その翌年にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」で日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれることになる。 ところが、ウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提条件が21世紀に入って崩壊する。ウラジミル・プーチンがロシアを曲がりなりにも再独立に成功させてしまったのだ。そこでネオコンはロシアを再度、属国化しようとする。それに対し、ベンヤミン・ネタニヤフのようなウラジミール・ジャボチンスキーの流れにある人びとは大イスラエルの実現を優先、イランの体制転覆をまず実行しようとしている。 もっとも、ネオコンにとってもイランの現体制は倒すべき相手。ロシア打倒を優先するべきだと考えているだけだ。(つづく)
2019.07.02
アメリカのドナルド・トランプ大統領と朝鮮の金正恩労働党委員長が6月30日に板門店で約50分間にわたって会談した。今後、両国は交渉チームを編成するようだが、アメリカ側はマイク・ポンペオ国務長官が選定するという。 今年2月27日と28日にかけて両国はベトナムのハノイで首脳会談を実施しているが、このときは合意に至らなかった。朝鮮側が制裁を部分解除する条件として核施設の廃棄を提示したところ、アメリカ側はそれを拒否、核プログラムの完全的な廃棄を要求、さらに生物化学兵器も含めるように求めたとようだ。これは朝鮮側の説明だが、ほかの情報を勘案するとこれが正しいようだ。 アメリカ側の要求はマイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障補佐官が決めたと見られているが、このふたりはマイク・ペンス副大統領と同じように相手は自分たちに屈服するべきだという類いの人びと。イランがアメリカとの交渉を拒絶しているのは、アメリカのそうした姿勢があるからにほかならない。 アメリカと朝鮮の対話を再開したいならそうした姿勢を改めるべきだとし、残された時間は長くないと警告していたのは朝鮮外務省の北米事務局を統括する権正根局長。6月27日にそうしたメッセージを出していた。その要求をアメリカ側が呑んだのだろうが、それがいつまで続くかは不明。いつものように時間稼ぎの可能性が高いからだ。 しかし、朝鮮や韓国だけでなく中国やロシアも米朝会談を歓迎しているだろう。東アジアの経済的な交流を盛んにして安定させようという中国やロシアのビジョンに適っているからだ。ポンペオやボルトンはそれをどのように崩し、朝鮮半島を支配し、中国やロシアを制圧するかを考えているだろう。 そうした揺さぶりから体制を守るためには両国とも新自由主義を放棄する必要がある。 新自由主義を1980年頃から導入している中国では中低所得層が疲弊している。これは政策上の必然。1980年代の半ばには深刻なインフレで社会が不安定化、そのために「経済改革」を実施したが、労働者は満足しなかった。その一方、エリート予備軍の学生は新自由主義の推進を求めて大規模な抗議活動を展開していた。 ロシアも経済分野は新自由主義者に支配されている。21世紀に入ってから政府に従うという条件でビジネスを続けているのだが、西側の巨大資本との関係が切れているわけではない。新自由主義的な政策を放棄しないことに対する不満がロシア国内にはある。
2019.07.01
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