inti-solのブログ

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2012.07.31
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カテゴリ: 環境問題
先週の木曜から土曜まで、家族で八ヶ岳山麓に行ってきたのですが、その際、行き帰りの列車内で元福島県知事佐藤栄作久の「福島原発の真実」(平凡社新書)を読みました。「えっ、まだ読んでいなかったの」と言われそうですが、実は読んでいなかったのです。


もう一つ、この本を読んで「そうか!」と気がついたことがあります。プルサーマル計画に反対する佐藤知事が、六ヶ所村の再処理施設を抱える青森県から批判を受けた、という話です。

核燃料サイクルをグル問題点は、過去何回か記事を書いたことがあります。

何故、このときに撤退しなかったのか
ここにも危険きわまりない原発が


使用済み核燃料からプルトニウムを抽出して再利用するのが「核燃料サイクル」ですが、実際にはなまったくの絵に描いた餅に過ぎないのが現状です。
プルトニウムを使う原子炉の本命だった高速増殖炉「もんじゅ」は完成以来20年間、ほとんど稼働していません。プルトニウムは原爆の原料になるので、その在庫を持たないことが日本に課せられた責務となっています。しかし、高速増殖炉がないとプルトニウムの使い道がない。使い道がないなら再処理などやめて核燃料サイクルなど放棄すればいいのですが、日本はそうせず、プルサーマル、つまり通常の軽水炉で、MOX燃料をウラン燃料と混ぜて使っています。そんなことをやったって、プルトニウムの使用量はたかが知れているんですけどね。
だいたい、六ヶ所村に建設された再処理工場だって、2兆円もの予算をつぎ込んで、まだほとんど稼働していないのはリンク先の過去記事に書いたとおりです。コスト的には、とても採算が合わないような代物です。

そのプルサーマルに反対した佐藤知事は、原子力村から総攻撃を浴びて、最終的にはスキャンダルによって知事の座を追われました。
なんでそこまでして核燃料サイクルにこだわるのだろうかと考えると、理由の一つは、核武装の下準備ではないかと疑らざるを得ません。しかし、それだけがすべてではないことに、この本を読んで気がつきました。



ではもう一つの目的は何かというと、結局は問題の先送りのため、ということでしょう。
何度も書いているように、日本は使用済み核燃料の最終処分場が決まっていません。いや、日本だけではなく、フィンランドを唯一の例外として、世界のどこの国でも決まっていないのですが。(米国は一回決まったが、後に白紙撤回された)
では、実際使用済みの高レベル廃棄物はどこの保管されているかというと、青森県六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターです。ここは、中間貯蔵施設とされており、つまり六ヶ所村は高レベル廃棄物の一時保管は受け入れるけど、最終保管場所は嫌だと言っているわけです。どう考えたって、中間貯蔵施設を受け入れたら最終処分場の候補地としても狙われやすいと思うんですけど、中間貯蔵施設受け入れのためにもらえる補助金が魅力だったのでしょうか。

核燃料サイクルを掲げていれば、使用済み核燃料はまだプルトニウム抽出のための原料ですから、廃棄物ではない、ということになります(もう、すでにプルトニウム抽出後の高レベル廃棄物の保管も始まってはいますが)。最終処分場の問題は、しばらくは先送りできる。
しかし、核燃料サイクルをやめると、使用済み核燃料はただの高レベル放射性廃棄物ですから、最終処分場の問題を先送りできなくなります。六ヶ所村と青森県も、自分のところが最終処分場にされるのが嫌だから、この問題は先送りしてほしい。
だから、佐藤栄作久がプルサーマルに抵抗することに、最終処分場を受け入れたくない六ヶ所村と青森県が反発するわけです。(再処理工場受け入れに伴う補助金が消えることも、反発の一因でしょうが)
どう考えても破綻している核燃料サイクルに、日本がそれでもこだわる理由の一つが、この最終処分場を巡る問題の先送りのためであるようです。

再処理しようが何しようが、最後には必ず高レベル廃棄物は残るのです。たとえ今すべての原発を廃炉にしても、これまでも廃棄物は残る。先送りしているうちに問題が消滅するならいいのですが、そうではありません。

それにしても、「トイレのないマンション」とはよく言ったもので、廃棄物をどうするか考えないままで、それでもなお原発推進なんてのは、場当たり主義の極みとしか言いようがありません。まあ、中には高レベル廃棄物は日本海溝に投棄すればよいなどと 、キチガイじみたことをいう評論家 もいますけど、そんなことが絶対不可能であることは明白です。





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最終更新日  2012.08.01 00:20:52
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