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2020年11月29日
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カテゴリ: 日本社会の病巣
「ひきこもり死」を防げるか――高齢親失った中高年



2年前の冬のことだった。取材班は、あるひきこもり男性の死に直面した。

神奈川県横須賀市に暮らす56歳の男性は、10年前に両親が死亡した後、自宅に一人取り残され、貯蓄を切り崩しながら暮らしていた。ガスや水道は止まり、家屋の外壁は朝顔のつるで覆い隠され、庭先はゴミであふれていた。市の福祉職員は支援の必要性を感じ、訪問を続けていた。56歳男性はこう話していたという。

「いざという時にお金がないと困るので、なるべく使わないようにしている」

男性はゴミに埋もれた状況で亡くなっていた。栄養失調による衰弱死。1月初旬、冷えこみの厳しい日のことだった――。

男は高校卒業後、英語を使った仕事に就きたいと英文科を目指して大学受験に取り組んだ。しかし、成績は思うように上がらなかった。やがて進学を諦め、ハローワークで仕事を探し始める。非正規で複数の職場を渡り歩いたのち、診療所の医療事務で正規採用される。喜んだのもつかの間、伸一さんは厳しい現実に直面する。経営拡大路線を進める職場の業務は多岐にわたり、覚えなければならないことも多く、伸一さんは深夜まで残業する日々を送っていた。当時の上司はこう言っている。

「まじめな性格のあまり、できないことをできないと言えない人だった」

結局、伸一さんは職場を去る。その後、再就職に苦戦。心のバランスを崩し、30年以上にわたりひきこもることになっていくのだった。この間、伸一さんは何を考えていたのか。部屋から見つかった遺品に目を凝らしていくと、本人はこの生活から抜け出したいと願っていたことがわかった。

ノートには、英文法を勉強していた証拠が残されていた。痕跡は亡くなる直前まで続いている。あるページには「ハローワーク」「申し込み締め切り」などの文字が残されていた。最期まで、伸一さんは仕事を見つけたいという意思を持っていたことがうかがえた。しかし、それがかなうことはなかった。ノートの最後のページには、こう書き残されている。




支援員の石橋真由美さんは、ひきこもりの2人を救えなかったことをいまも悔やんでいる。

「忘れることができないし、反省してもいますけど、どうすれば命を助けることができたのか、正直わからない」

生活保護や障害年金などの制度で支えるすべはある。ただし、これらは本人の希望があってはじめて動ける。また、いくら心配とはいえ、命の危険があると断定できない状態では、家屋に踏みこむことはプライバシーの観点から難しい。全国の支援窓口への取材では、「ひきこもり死」に至ってしまったケースのうち、7割以上が支援拒否の壁にぶつかっている。石橋さんはこう言う。

「社会で傷つき、自宅に閉じこもっている人にとって、周囲に助けを求めることは簡単なことではない。声を上げられずに亡くなってしまう方は多いんです」





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最終更新日  2020年11月29日 18時59分34秒


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