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2021年12月24日
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「我々の国民はあなたたちが思っているより民主的」「ロシアを孤立させるべきではない」ゴルバチョフ元ソ連大統領インタビュー【全文掲載】


1991年のソ連崩壊から12月25日で30年を迎えます。ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領に、JNNはメディア1社と合同で書面インタビューを行い、今年のノーベル平和賞からウクライナ情勢などをめぐる欧米との関係、日ロの平和条約交渉まで聞きました。

90歳になるゴルバチョフ氏は、新型コロナウイルス感染予防のため、医療施設で隔離生活を送っていて、面会は禁じられています。

インタビューの全文は以下の通りです。
※()内は補足説明。

■ノーベル平和賞ムラトフ氏は「本物のファイター」

ーーソ連崩壊30年となる節目の年に、あなたが支援に携わった「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ムラトフ氏がノーベル平和賞に選ばれたことをどう受け止めていますか。ロシアでは現在、独立系メディアの活動が制限され、野党が自由に選挙に参加できないなど、あなたが進めた「ペレストロイカ(政治体制改革)」や「グラスノスチ(情報公開)」に逆行するかのような動きが目立っています。コロナ禍が強権的な政治に拍車をかけたとも指摘されていますが、これからのロシアに真の民主主義が根付くのでしょうか?

ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領:
これは非常に重要なイベントです。ノーベル委員会は今回の決定で、現代の世界におけるメディアの重要性を強調しました。ドミトリー・ムラトフ氏とは長い間、それこそ、30年以上の付き合いがあります。我々は友人でもあります。彼は、正直で、勇気と責任感があり、あらゆることに関心を持っています。彼は真実と正義の信奉者です。そして、彼は本物のファイターでもあります。ノーベル委員会は今回、ジャーナリズムを専門にする人たちが、どのような気質を持っているべきかを示しました。



■国民を「主役」にするためだった

しかし、私は、ペレストロイカが歴史的に正しかったと確信しています。ペレストロイカは必要でした。私たちは正しい方向に進んでいました。なぜなら、ペレストロイカには1つの「ライトモティーフ(=オペラなどで繰り返される主題・動機)」があったからです。これはすべての段階において、一貫して、我々の「模索」を導く“赤い糸”でした。 ペレストロイカ は国民に向けられたものでした。 その目的は、国民を解放し、自らの運命と自らの国の「主役」に据えること でした。ですから、ペレストロイカは大規模な人道的プロジェクトでした。何世紀にもわたって、国民が専制国家、全体主義国家に従属していた中で、それは過去との決別であり、未来への突破口でした。これは現代にもつながるペレストロイカの真理です。異なる方法をとれば国が行き詰まることになりかねません。

グラスノスチは、改革そのものだけでなく、国民をそこに参加させるためにも、最も重要な手段でした。この言葉がペレストロイカとともに、ほとんど毎回、言及されているのは偶然ではありません。あなたも質問で言及しています。グラスノスチは古いロシアの言葉です。社会の開放、言論の自由、そして、国民に対する当局の説明責任など多くの意味を持っています。他の言語に翻訳することが不可能だというのも不思議ではありません。私は、グラスノスチこそ、自分の最大の協力者だとみなしていました。いまも同じ意見ですが、グラスノスチを批判する人たちがいつの時代も一定以上います。私は、国の状態と周りの世界について、国民に真実を伝えることが、私の役目だと思っていました。グラスノスチは、当局への批判を含め、自分の考えを自由に言えるようになった人たちからの声でもありました。つまり、国民が真実を知る権利です。

ですから、私はムラトフ氏とともに11月18日、「メモリアル(=ロシアの人権団体でソ連時代のKGBによる人権侵害・抑圧など調査、スパイを意味する「外国の代理人」に指定されている)」を解散させようとする動きに抗議するため、ノーベル平和賞受賞者同士として初の共同声明を発表しました。「メモリアル」は、抑圧の時代に殺害され、負傷した何十万人もの人たちに関する歴史的記憶を掘り起こし、現在や将来に二度と起きないようにすることを目的としています。「メモリアル」の活動を続けることは、社会と国の利益に一致します。

■ロシアの未来は1つ、民主主義だ

私を批判する人や、時代の本質を理解していない人は、ソ連崩壊がペレストロイカの最終的な結果だと、今も主張し続けていますが、決してそうではありません。勿論、間違いもありましたが、ペレストロイカは大きな成果を収めました。冷戦の終結、核武装解除に関する前例のない合意、さらに言論の自由、集会、宗教、国を離れる自由、政権選択が可能な選挙、複数政党制など、国民が獲得した権利と自由です。最も重要なことは、改革が後戻りできないところまで進めることができたということです。

しかしながら、現在においても、定期的な政権交代や、国民が政府の決定プロセスに関わることができる体制づくりは整っておらず、改革の当初の目標はまだ実現していません。私はこれまで、時には厳しく批判的に、時には前向きに評価しながら、ペレストロイカの理想と価値観を持ち続けることを求めてきました。それが道しるべであり、それなしでは迷いかねません。

では、ロシアはどこへ行くのでしょうか?私はよくこの質問を受けます。そこには真の民主主義に到達するロシアの能力に疑問があるかのようなトーンが含まれています。彼らは時折、ロシア政府が採択する法律や決定が民主主義に即したものなのか尋ねます。私はいつもこう答えます。我々の国民はあなたたちが思っているより民主的です。

ただ、ロシアには困難の歴史があります。250年間にわたる「タタールのくびき(=13世紀に始まったモンゴルによる侵攻と支配)」、農奴制、スターリン時代の弾圧。国民は奴隷のように扱われることに馴らされていました。それらが終わったはずの90年代(=90年代、ロシアの政治・経済が大きく混乱)にも、国民は、民主主義とは名ばかりの、混乱と無秩序に耐えなければなりませんでした。

ロシアの未来は1つしかありません。それは、民主主義です。

■止められない「連鎖反応」起きる前に

ーーいまのロシアと欧米の関係は冷戦後最悪ともいわれていますが、かつて「冷戦終結」を宣言した立場として、どのような思いで見ているのでしょうか。また、これからの国際社会でロシアのあるべき立ち位置をどう考えていますか?

ゴルバチョフ元ソ連大統領:
私は、美化することなく、正直に言わなければなりません。 現代の世界は、主要な大国間でほとんど制御不能な軍事的・政治的対立に直面しています。 これまで作られてきた枠組みは壊れているか、緩んでいるか、あるいは脅威にさらされています。このままでは大惨事になりかねません。

遅かれ早かれ、目を覚ますだろうと私は確信しています。

■再び冷戦の“足音”聞くためではない

現状を打開する方法はあるのか?勿論あります!唯一合理的なもの、それは交渉です。相互非難、好戦的なレトリック、軍備拡大から、責任ある対話への移行が一刻も早く行われるよう、できることは何でもしなければなりません。

現代の国際政治において、ロシアと欧米の信頼関係の再構築ほど、重要かつ困難な課題はありません。ロシア抜きで深刻な国際問題を解決することは不可能であるため、欧米もその必要性を認めています。しかし、欧米は現在の状況に対するすべての責任をロシアに負わせようとしています。ロシアの方から歩み寄ることだけを待っていて、すべての争点に関し、欧米の立場に同意することを求めています。これではロシアと話ができないことを理解すべきです。ましてや、ロシアと他の国との関係を悪化させてまで、ロシアを孤立させるべきではありません。

ロシアには、何世紀にわたる豊富な外交経験があります。それは対話と建設的な協力の形を示したペレストロイカによって、さらに豊かなものとなっています。冷戦を終結させたのは、再び冷戦の“足音”を聞くためではありません。

近年起きている信頼の崩壊は、致命的で取り返しがつかないものだとは思いません。挫折や失敗、過ちの一種だと考えています。過ちであれば修正できます。過ちを正すには、時間、忍耐、常識、交渉など多くのことが必要になるでしょう。しかし、最も重要なのは、我々は同じ地球に暮らし、将来の世代に対し、この壊れやすい惑星の運命に責任を持っていることを理解すべきです。

最初の質問に対し、私はロシアの未来はただ一つ、民主主義だけだと言いました。効果的な外交を行うために我々に必要なのは、民主的で強いロシアです。これが私の信念です。21世紀にふさわしい新たな国際政治を築き上げるにあたって、ロシアは建設的な役割を果たす運命にあると確信しています。

■最も困難な問題を俎上に載せるために

ーーあなたはかつて、日ロの間に領土問題が存在することを公式に認めましたが、いまのプーチン政権は領土問題の存在を否定する強硬姿勢に戻っています。いまだに日ロ両国の間に平和条約が結ばれていないことをどう考えますか?両国はどのような関係を築くべきだと考えますか?

ゴルバチョフ元ソ連大統領:
私がソ連の大統領として公式に来日してから、30年以上が経過しました。「新思考外交」に基づく日ソ関係の新たな局面の始まりとして、私はその訪問を受け止めていました。「新思考外交」は、冷戦終結、東西ドイツの統一、国際紛争・戦争の終結、パリ憲章(=1990年、欧州における冷戦体制の終結を宣言)の採択、集団安全保障の議論など世界で大きな成果を上げていました。

ですから、私の立場は、協力関係を築き、互いの国民の認識を変え、さらに、地域・国際情勢の変化によって、問題解決のための最適なアプローチを探すことでした。日ソ関係においても、このようにして両国の関係を新しいレベルに引き上げようとしました。訪問の結果、私と海部首相は、日ソ共同声明と一連の分野に関する15の文書に署名することができました。

しかし、ペレストロイカが中断し、残念ながら私たちの関係発展は行き詰まってしまいました。新しい政権は、我々とは異なる彼ら自身の政策とビジョンを持っていました。私は今でも、大きな成果を上げるためには、あらゆる分野での協力発展、それに首脳、閣僚、専門家レベルでの協議が必要であると確信しています。これが相互の信頼を醸成できる唯一の方法であり、それなくして、困難な問題の解決につなげることはできません。議題を拡大することも必要です。 たとえ難しい時でも、対話を中断すべきではありません。交渉を恐れずに、最も困難な問題を議論の俎上に載せなくてはなりません。

古代インド・ヴェーダの格言があります。ラテン語の文書や聖書、世界の古典作品など、世界中で使われてきた言葉です。

「歩かなければ目的地にはたどり着かない」

JNNモスクワ支局長 大野慎二郎
(23日12:00)





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最終更新日  2021年12月24日 18時07分34秒
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