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鳥友から先月読書会でとりあげた「ヤマケイ文庫山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書」に掲載されているウソの名前の由来の件で質問をもらいました。「ウソの名は嘘つきのうそからくるものではありません。笛のような声で鳴くことから口笛の意味である嘯くからきています」と記されていますが、何を根拠に断言するような表現になっているのでしょうかとの内容でした。質問を受けて確認してみると、筆者の小林さんは、1950年に安倍幸六さんの太宰府天満宮の鷽替とのタイトルで日本野鳥の会会報野鳥誌に掲載されたものを参考に記されたものと思われました。以前メンバーで読み合わせた文献は、蒲谷鶴彦さんの日本野鳥大鑑に記載されていた「本種の名は鳴き声が口笛によく似ていることから口笛を吹く意味の嘯く(うそぶく)に由来していると言われている」との件でした。このくだりは、榮川省造さんの異説鳥名抄に記載されていたものを紹介したものです。前記文献のほかには、石田(2015)が「口笛のような声で鳴くことから口笛を意味する古語うそから名づけられた」と述べています。さらに、出典は不明ですが、「フィー、フィー」という口笛のような声で鳴き、それが「おそぶえ」(口笛の古語)のようだというので「オソ」が「ウソ」という名前になったといいます」と紹介しているWebもあります。文献などを確認してみると、口笛の古語がルーツと表現して差し支えないと思います。(引用)蒲谷鶴彦.1996.日本野鳥大鑑.下巻.p132.小学館.石田光史.2015.野鳥図鑑.p357.ナツメ社.南三陸町VIRTUAL MUSEUM.https://www.town.minamisanriku.miyagi.jp/小林さやか.2023.ウソで精算する?天神様の鷽替え神事.山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書.p305-307.ヤマケイ文庫.(写真)私のライブラリーより
2023.11.05
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渡辺・平野(2009)は、ヒクイナの越冬分布について知見を整理し報告しています。それによると、ヒクイナの1986年の冬期の生息は、九州地方と山口県の一部で越冬が確認されていたに過ぎなかったが、2006年から2009年3月までの越冬期は、1都2府22県で分布が報告され1980年代中ごろに比べると,明らかに拡大したと述べています。また、その分布は西から東へ拡大したことが判明したと記しています。さらに、ヒクイナの越冬分布の拡大は,近年の地球温暖化にともなう冬期の気温の上昇と関係していることが推測されると報告しています。このほか、環境省が実施した調査結果でも1980年代と比べて2016年以降越冬分布が拡大していると報告されています。拙宅の亭主のデータベースによると、1972年から2019年の間では、1978年6月19日、6月25日に手賀沼での観察記録以外は報告が見当たりません。それが、2019年11月以降の冬季(11月から翌3月)になると、つぎのような観察記録が寄せられています。2019/11/07岡発戸、2020/01/11岡発戸、2020/02/04手賀沼、2020/03/19手賀沼、2020/03/30岡発戸、2020/11/05手賀沼、以降、2021/春、2021/11以降2022年春以降も継続して観察報告が寄せています。手賀沼とその周辺地域では、湿地性植物の生息面積の極端な減少なく、草の実や根等の植物質を採食することができれば冬季でも滞在できると言えるのではないかと思います。(引用)渡辺美郎・平野敏明2009. ヒクイナ 越冬分布の拡大.Bird Research News Vol.6 No.11.p4-5.環境省.2023.全国鳥類越冬分布調査最終報告.2016-2021年日本語版最終報告.https://www.bird-atlas.jp/pub.html(参考)我孫子野鳥を守る会.会報.no1-294.1975年-2023年9月.(写真)2023年11月3日柏市で撮影
2023.11.04
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昨日も前日に引き続き、松戸市千駄堀にある21世紀の森と広場を訪ねました。ネイチャーセンターに立ち寄り、来場なさった方の観察メモを閲覧したところ、マヒワの観察情報が記されていました。年によってまったく見かけない年とまとまって姿を見かける年があります。出会う確率を高めるには、この時期にマヒワが好む実をつける木がどこにあるかを把握しておくことをお勧めします。百日紅、ヒノキ、ハンノキには好んで飛来する印象があります。一枚目は、2011年2月に柏市南部で見かけた百日紅の実をついばんでいた雄個体です。二枚目は、2012年11月4日松戸市千駄堀で枝に止まっていた雄個体です。三枚目は、2019年10月20日に柏市内でヒノキの実をついばんでいた雌雄ペアです。四枚目は、2017年1月1日に都内水元公園で見かけた雌個体です。五枚目は、2013年1月20日に松戸市千駄堀の地面で水浴びしていた光景です。
2023.11.02
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先週読書会を開催した後、山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書(以下、山階2023)に所蔵されていたオナガの件で質問をもらいました。内容は、柏市の鳥がオナガと選ばれた経緯についてでした。ホームグランド手賀沼沿岸の千葉県柏市の鳥は、1994年11月に市制施行四十周年を記念して市民から募集し身近に見られる鳥であるなどの理由で市の鳥に制定されました。(オナガの世界的分布)茂田(2023)は、オナガが東アジアとイベリア半島のスペイン、ポルトガルに隔離分布している件を紹介しています。東西に分かれた分布は、人間によって持ち込まれた人為的なものと元々ユーラシア大陸に広く分布していたが両端を残して消滅してしまった自然分布なものという二つの説が存在していた件を記しています。その後、1997年にイベリア半島南端のジブラルタル付近の三ヶ所から約4万4000年前のオナガ4個体の化石が出土し自然分布であることが判明したと報告されしています。さらに、DNA解析によると100万年から120万年前にはユーラシア大陸東西の端に分布するようになったと推定され、イベリア半島に分布しているオナガは亜種ではなく独立種として扱われるようになっていると述べています。(国内の分布)原田(2009)は、オナガの分布、生態などの知見について整理し報告しています。分布については、「日本、朝鮮半島、中国北東部、アムール川流域の極東アジアとヨーロッパ西端のイベリア半島に隔離分布する。日本では、福井県、岐阜県、愛知県以東、青森県までの東日本に分布する」とし、「九州北部では1960年代まで生息し、島根県、兵庫県、和歌山県、愛媛県でも記録がある」とも報告しています。西日本に分布しなくなった理由については、言及されていないがカササギと競合していたことで消滅したなどの説をしていますが、定かではありません。(引用)原田俊司.2009.オナガ.Bird Research News Vol.6 No.6.p2-3.茂田良光.2023.山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書.p243-244.ヤマケイ文庫.(写真)私のライブラリーより
2023.10.29
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日本の高山帯、森林、草原、里地、湖沼、湿原沿岸、浅海、小島について1000箇所程度のモニタリングサイトを設置して2003年から調査が行われています。この調査で注目はしたい変化があります。それは、越冬期の出現率の上位10位にミソサザイが突然登場したことです。モニタリングサイト(2021)が「ミソサザイは,繁殖期は山地の湿った林、や渓流沿い,崖地などに生息し,標高の高い場所で繁殖する個体は低地に移動して越冬します。林床や岩の上を移動しながら採食するので,越冬地の林床環境の変化が影響しているのかもしれません。林床環境の変化といえば,シカが林床植物を採食することによる藪の減少が思いつきます」と述べています。我孫子野鳥を守る会のホームグランド手賀沼とその周辺地域の観察記録を振り返ってみると、冬季の観察記録は1975年から1990年12月以前では報告されていないものの、1990年12月、1994年1月いずれも手賀沼沿岸の葦原で観察され、2007年1月柏市、2020年2月10日から28日手賀沼沿岸の公園、2020年12月7日、14日手賀沼沿岸の公園、2021年2月8日、12日手賀沼沿岸の公園、2022年1月6日から2022年3月7日手賀沼沿岸の公園で観察したと報告が寄せられています。(2021年12月公園付近の資材置場の火災の影響で公園の一部が焼け、林床が開けた変化で長期間の滞在につながった可能性があります)今冬、手賀沼沿岸でのミソサザイの出現はどうか注視したいと思います。(引用)モニタリングサイト1000. 2021.陸生鳥類調査情報 Vol.13 No.1環境省 自然環境局 生物多様性センター.(参考)我孫子野鳥を守る会.会報.no1-294.1975年-2023年9月.(写真)2022年3月千葉県市川市で観察・撮影
2023.10.25
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鳥友たちと新しく刊行された本を読みあう読書会を開催しました。とりあげたのは、ヤマケイ文庫の山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書でした。中でもみんなの興味を引いたのが、岡 奈理子さんが執筆なさった食べ物が筋胃の大きさを決めるとのタイトルがつけられたキンクロハジロについての章でした。岡(2023)は、湖沼や川、内湾で越冬するキンクロハジロは、主に水底に住む二枚貝や巻貝を採食しますが、島根県中海と宍道湖におけるキンクロハジロに関して調査した結果を整理し報告しています。その中で、中海と宍道湖に生息するキンクロハジロの体重は筋胃を除く体重は平均約800g、全身脂質量も約17-18gで良好な栄養状態だったが、筋胃の重さは中海で平均37g、宍道湖で平均73gと大きく隔たりがあったと報告しています。その原因は、宍道湖に生息する固い殻のヤマトシジミを粉砕するのに筋胃の大きな力が必要される点にあると記しています。(中海の場合は指でつぶせるホトトギスガイ)柔らかなホトトギスガイが生息する中海の方が暮らしやすいとの印象を持ちますが、2月になるとカモによってホトトキスガイがほとんど食べつくされてしまい、多数のカモの採食圧で餌が底をつく事態となり、出雲平野の湖沼を発ち柔らかい餌生物を求めて大移動する必要となりどちらに軍配があがるかは議論の余地があると指摘しています。(引用)岡 奈理子.2023.食べ物が筋胃の大きさを決める.キンクロハジロの重装備、軽装備.山階鳥類研究所のおもしろくてためになる鳥の教科書.p55-60.ヤマケイ文庫.
2023.10.22
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標高の高い環境の鳥というイメージのアカゲラ、バードリサーチ(2018)が報告しているように、1980年代までは千葉県では冬期での観察記録はありませんでした。ところが、2010年代になると千葉県北西部周辺で冬期の観察記録が報告されるようになったと述べています。手賀沼とその周辺地域の観察記録を振り返ると、2006年9月、12月に柏市南部で、翌2007年1月と2月および3月に手賀沼沿岸、2008年6月に我孫子市内で採餌していたのが観察されています。その後、2008年6月以降、2019年10月までは観察記録が見当たらないままでしたが、2019年11月再び手賀沼沿岸で観察されてからほぼ毎年観察されています。今年も10月18日に柏市内で飛来し、観察できました。越冬するか注視しています。まだ繁殖は観察されていませんが、将来繁殖分布が変化する可能性も否定できません。(引用)バードリサーチニュース2018年4月.https://db3.bird-research.jp/news/201804-no2/(写真)2013年2月9日柏市、2016年7月11日日光市、2020年1月13日柏市で撮影
2023.10.21
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アトリは、黒と橙色のパッチワークのセーターを着たようなイメージがある大好きな鳥です。和名の由来が大群で行動することから集鳥(あつとり)と呼ばれ、それが転じてアトリとなったとの説があります。(千葉県北西部でのアトリの飛来)ホームグランドとしている千葉県北西部松戸市、柏市では2016年11月から12月、翌年3月の間にかけて90~80羽の群れが公園、谷津田といった環境に飛来しました。飛来した環境に着目してみると、ケヤキの実が豊富にある環境に滞在した傾向がありました。今冬のアトリの日本への飛来がどうなるか興味のあるところです。(写真)2017年1月9日柏市内、2017年3月19日柏市内で撮影(2015年冬から2021年冬の間のアトリの飛来状況)さて、NPOバードリサーチが日本への渡来を整理し報告しています。https://www.bird-research.jp/1_katsudo/fuyudori/index_fuyudori.html(1)2015年東北地方から北関東ではアトリの大群は記録されず。(2)2016年冬大きな群れは観察されなかったものの情報件数は過去最多で、その半数が21~50羽以下の小さな群れでした。また、各地市街地の公園や雑木林に群れが飛来したと報告があります。(3)2017年冬報告があった36件のうち55.6%が50羽以下で、201羽以上の群れが30.6%という状況と報告されています。大きな群れに着目してみると、最大6000羽、5000羽、3000羽といった群れの観察報告も寄せられたと記されています。(4)2018年冬観察記録件数が最も多かったと報告があり、東京都などの市街地の緑地や公園で群れが観察されたのが特徴だったと述べています。(5)2019年冬200羽以上の大きな群れが報告されたのは長野県と新潟県の2ヶ所だけで、情報件数の約2/3が山地で越冬した個体数が多く、平野部では少なかったのがと特筆されると記しています。(6)2020年冬東日本では小さい群れでの越冬だったのに対して西日本では大きな群れで越冬していた可能性が高いと報告しています。(7)2021年冬小規模な群れで越冬していた可能性があったと述べ、日本海側の大雪の影響で大きな群れを維持するだけの餌が少なかったのではないかと推察しています。
2023.10.20
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昨日、八柱霊園でジョウビタキの雌雄各1羽が餌をフライキャッチしているのを目撃しました。過去、手賀沼および柏市南部エリアでのジョウビタキの初認日を整理してみると、つぎの通りです。(ただし、データの欠損あり)1979/9/9手賀沼、1980/10/11手賀沼、1998/10/31手賀沼、2001/10/25柏市内、2002/10/31柏市内、2003/10/24柏市内、2004/10/28柏市内、2005/10/31柏市内、2006/10/29柏市内、2007/10/31柏市内、2008/10/26柏市内、2009/10/13柏市内、2010/11/6柏市内、2019/11/10手賀沼沿岸、2020/11/1柏市内2021/11/4柏市内2022/11/7柏市内整理した結果からは、1979年が9月上旬と最も早く、続いて1980年が10月2週で、その他では年による違いが小さい傾向にあると言えそうです。(バードリサーチによるジョウビタキの渡りの阻害要素について)バードリサーチ(2022)によると、渡りのピーク日にあたる中央値もジョウビタキは年による違いが小さく、10月20-24日の短い期間にほぼ収まっている(ただし2013年と2017年は10月27日と大きく外れていた)と報告しており、同じような傾向を示しています。ただし、2013年と2017年は普段の年とは違い渡りの時期が遅れ、10月25-31日のあいだに最も多くの初認が報告されたと述べており、要因として台風の影響を受け渡るのが遅かったと言えそうだと記しています。(引用)db3.bird-research.jp/news/202211-no3/(写真)1枚目:2021年12月26日柏市内、2枚目:2021年1月31日都内で撮影
2023.10.14
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モズは動物食で、捕えた獲物をなわばり内の木々の枝先などに突き刺して「はやにえ」を作ります。長年解明されていなかったはやにえの機能について大阪市立大学西田有佑さんと北海道大学高木昌興さんが、共同研究の結果、モズの雄は非繁殖期のみはやにえを作り繁殖期が始まる前にほとんど食べ尽くすことを発見しました。大阪市立大学(2019)には、両氏の調査概要、結果などを整理したものが掲載されています。それによると、大阪府の里山にてモズのオスのなわばり内の木々などを観察し、はやにえの生産時期と消費時期を詳細に調べた結果、モズのオスは非繁殖期にのみはやにえを生産し、そのほとんどを繁殖期が始まるまでに食べ尽くすことが分ったとし、はやにえの消費数は気温が低くなるにつれて増え、一年で最も寒い月にピークに達することが分かり、はやにえが冬の保存食であることを示唆していたと記しています。検証結果では、繁殖期のオスのなわばりを定期的に巡回してオスの歌を録音し、歌唱速度とはやにえの消費量の関係を調べた結果、はやにえの消費量が多かったオスほど歌唱速度が速いことが判明したと報告しています。このことからモズのオスのはやにえがメスの獲得で重要な歌の質を高めるための栄養食として機能していることを突き止めたと記しています。 貯食行動は生存に関わる自然選択によって進化したという解釈がこれまでの定説で、モズにおいても、貯えたはやにえには「冬の保存食」としての機能はあったが、さらに「歌の質を高める栄養食」としても機能していることが明らかになり、貯えた餌の消費がオスの性的な魅力を高める効果をもつことを世界ではじめて実証したと述べています。(引用)https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2019/190513モズの『はやにえ』の機能をついに解明!―はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる.大阪市立大学大学院理学研究科の西田有佑特任講師、北海道大学大学院理学研究院の高木 昌興 教授との共同研究.(写真)私のライブラリーより2018年10月29日手賀沼沿岸、2013年9月15日手賀沼沿岸
2023.10.11
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セグロセキレイは、日本固有種でその誕生は日本というのが常識と思われています。ところが中村(2013)が報告しているように、韓国で3つの河川、東海岸で繁殖が確認され、1875年5月にロシアウスリー川上流で古い繁殖記録があり、ロシアサハリン南部で雄の採集記録があるなどセグロセキレイが日本列島、朝鮮半島、サハリン南部を含む日本海沿岸に分布していたことを示唆しています。見かけた鳥がどこからやってきたか、そのルーツはどこかに夢をはせるのも観察の醍醐味と私共は思っています。(引用)中村一恵.2013.日本列島におけるセキレイ属近縁2種の分布変遷と種分化.神奈川県県立博物館研究報.第42巻.p71-90.(写真)2022年1月27日、2020年11月30日いずれも松戸市千駄堀で観察・撮影
2023.10.09
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鳥友から水元公園で観察した所謂ベンケイヤマガラについて亜種でなく変異個体ということだが、変異の原因は何かと質問をもらいました。観察されている個体のDNAを調べないと確定的なことは申し上げられないものの、ヤマガラとコガラの交雑、ナミエヤマガラの羽色変異個体が飛来している可能性などが考えられると返事をさせてもらいました。なお、写真はイメージとしてアップしもので水元の濃色化した個体ではありません。(1)ベンケイヤマガラの論文への登場私共の手元には論文がないのですが、理学博士黒田長禮氏の「本邦産ヤマガラの色變型と雑種」に博士が1925年3月銀座松坂屋でベンケイヤマガラとして入手し、飼育したとの記載があると友人より教えてもらいました。なお、三島(1969)に本邦産ヤマガラの色變型と雑種に報告されているヤマガラは、ヤマガラとコガラの交雑個体である旨の記載があります。(2)亜種ナミエヤマガラで見られる高い羽色変異について上田ほか(2006)は、2003年から2004年の繁殖期に伊豆諸島神津島でに亜種ナミエヤマガラPv. namiyeiを捕獲し羽色などを調査した結果を報告しています。報告によると、本土に生息する亜種ヤマガラPv. variusや伊豆諸島南部に生息する亜種オーストンヤマガラP.v. owstoniでは見られないほどに、頬のパッチの色彩が幅広く変異し乳白色から煉瓦色まで様々な個体が存在すると記しています。また、要因として、神津島個体群が複数の亜種からなっている、さまざまな雑種の存在、浸透交雑、近親交配などの可能性を指摘しています。このうち、浸透交雑について、亜種ヤマガラPv. variusや亜種オーストンヤマガラPv. owstoniが神津島に侵入し、雑種を形成していれば、遺伝子が浸透する可能性は充分考えられるとしている点は注目されます。(引用)三島冬嗣.1969.ヤマガラ× コガラの雑種およびアオジの淡色型について.山階鳥研報.第5巻.第6号.p92-94.上田恵介•山口典之・森本元•福永杏.2006.稀少鳥類ナミエヤマガラの基礎生態研究一少ない生息数が引き起こす独特な生活史形質一.プロ・ナトゥーラ・ファンド第15期助成成果報告書.p39-46.(写真)2020年10月25日柏市内で撮影一般的な亜種ヤマガラの写真で、濃色化した個体ではありません。
2023.10.04
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千葉県東葛地区のとある駅前にはイソヒヨドリが2006年以降、営巣、抱卵、子育てをしています。お買い物でたまたま今日昼過ぎに立ち寄ったときにも雄が縄張を監視している姿を見つけました。先月、8月20日には雄が営巣した商業施設の屋上に帰還し、以来縄張りを見回っています。縄張りを見張る場所は、8階に相当する高さにある工作物の一角、隣りの商業施設の避雷針、駅の反対側にある商業施設のアンテナです。このほか、4階に相当する高さにある飲食店の看板の隙間を休み場所としています。このほかにも、今年の酷暑下で直射日光をされてきたスポットがあるものと考えています。イソヒヨドリの都市進出のいくつかの報告があるものの、都市に生息している個体の空間利用に焦点を当てた研究は限られたものがあるのみです。鳥居・江崎(2014)がイソヒヨドリの空間利用について兵庫県での調査結果を報告しています。調査結果よると、イソヒヨドリは調査地の中でも特に、高層マンション区に偏って分布し、オスは繁殖期、高層建築物の屋上など上層によく出現しそこでは高い確率でさえずっていたと報告しています。私共が観察してきたイソヒヨドリにも同様の縄張防衛が認められます。ただし、イソヒヨドリの餌は地表性の動物であり、私共の観察しているイソヒヨドリがどこで餌を獲っているのかは不明なので、その生活の把握が不十分という課題があります。(引用)鳥居憲親・江崎保男.2014.イソヒヨドリのハビタットとその空間構造 ―内陸都市への進出―.山階鳥学誌第46号p15‒24.(写真)2023年1月18日、4月3日、5月25日柏市で撮影
2023.09.30
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野鳥誌最新号にヘビのような声と動きをするアリスイについての記事が掲載されていました。筆者上田恵介さんが「脅かされると首をヘビのようにくねらせシューシューという声を出して威嚇する」と記しています。この点は、複数の研究者が首振り行動が発生する状況とその行動の機能と効果について解明が待たれると指摘しています。橋間・加藤(2015)が「巣内雛も孵化16日目以降には首ふりを行なう。この行動はヘビの擬態であるともいわれており、捕食者に対する防衛行動だと考えられている。捕食者に対する行動であることを確かめるために、カラスやイタチの剥製を巣箱の近くに提示してみた。その結果,アリスイは剥製に対し警戒声を発したり,スズメやコムクドリなどとモビングをしたが、首ふり行動は観察されなかった。少なくとも巣の近くに捕食者がいるだけでは首ふり行動をしない」と報告しています。アリスイを観察する機会はなかなか少ないのですが、手賀沼沿岸、印旛沼沿岸では姿を見かけることがあります。その行動に注目し、何をしていたかを記録したり、首振りをしていたなどの行動内容を記録しておくのも生態を解明するベースとなります。(引用)橋間清香・加藤貴大.2015.アリスイ.首ふり行動Bird Research News Vol.12 No.8.p6-7.上田恵介.2023.ヘビのような声と動きをする奇妙な鳥アリスイ.野鳥.第88巻.第5号.p8-9.日本野鳥の会.(写真)3枚とも2014年3月22日手賀沼にて撮影
2023.09.27
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普段、見慣れているはずのスズメですが、案外その変化には気がついていない方も多いのではと思います。玉田・池田(2019)が、北海道の札幌市と江別市のスズメ個体群を対象に,嘴基部の色に着目して鳥類標識調査と野外観察を実施し,嘴基部の色の変化を調査した結果を報告しています。それによると、6月から 7月までの間、幼鳥の嘴基部の色は黄色であったが、成鳥は黒色であった。9月から 12月は,ほとんどすべて個体が黄色になり、1–2 月には黒色の個体の割合が増加し,3–5 月にはすべて黒色であった。この結果から、北海道に生息するスズメの成鳥には嘴基部の色が黄色と黒色の個体が存在し、色は季節により変化すると考えられたと結論づけています。しかし、三重県での調査結果を報告している文献に、成鳥は、繁殖期の 5–6 月の嘴は黒色であるが、早いものでは 7 月下旬から口角付近と嘴底に淡色部が現れ、8 月中旬から 9月中旬には幼鳥と同じ形色になるとし、10月から成鳥の嘴は黒色になると記されていると指摘しています。我が町やホームグランドで見かけるスズメの嘴は何色だろうと思い、画像を復習。嘴の黒色の個体、嘴基部が黄色、嘴の大部分が黄色の若鳥と実にいろいろ。同じフィールドで記録をしてこなかったので、反省しています。(引用)玉田克巳・池田徹也.2019.北海道のスズメにおける嘴基部の色の季節変化と外部計測値による性判定の可能性.日本鳥学会誌.第68巻.第2号.p349-355.(写真)#:2008年12月14日柏市内で撮影、2枚目:2023年2月16日柏市内で撮影、3枚目:2023年2月28日手賀沼沿岸で撮影、4枚目:2022年4月8日手賀沼沿岸で撮影#嘴基部が黄色5枚目:2010年12月18日柏市内で撮影#嘴が大部分が黄色の若鳥6枚目:2020年8月15日野田市江川で撮影
2023.09.24
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昨日、買い物でオフィスの近くのコンビニエンスに向かう途中の公園でエナガが群れで移動しているのを目撃しました。個体数は把握できませんでしたが、今後散歩や買い物途中での楽しみが増えました。文献をおさらいしていたら、赤塚(2012)に「繁殖期前の冬季には5羽から20羽程度の構成メンバーが安定した群れで行動するが、巣立ちビナが集合する春から秋にかけては、50羽を超す大型の群れも現れる。群れは縄張りを持ち、この群れ縄張りは主として群れから出生したオスによって継承される」とありました。また、中村(1969)が、本州中部で行ったエナガの冬季群の行動圏を調査した結果によると、冬季群の大きさは平均7.6羽、群れの観察頻度が高くなるのが11月から1月、行動圏の大きさは約0.2k㎡と報告しています。また、エナガの行動圏が、採餌場所・水浴・ねぐらという基本空間、移動コース、防衛行動をとるエリアの3つから構成させていると記していますから、目撃したエナガの行動がどれに当たるのかを把握してみるのが大切だと思いました。(引用)中村登流.1969.エナガの個体群の行動圏構造.山階鳥研報.第5巻.第5号.p433-460.赤塚隆幸.2012.エナガ.Bird Research News Vol.9 No.7.p2-3.(写真)2013年1月19日、2013年12月28日、2018年1月2日いずれも柏市内で撮影
2023.09.23
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(モズとカケスが物真似をした野鳥)モズとカケスは、ほかの鳥たちの鳴き声を真似上手として知られています。蒲谷(1996)は、文献に報告されているモズ、カケスが物真似をした種類を報告しています。それによると、モズはコジュケイ、オオジシギ、セグロセキレイ、ミソサザイ、ヒヨドリ、ウグイス、コヨシキリ、オオヨシキリ、キビタキ、オオルリ、サンコウチョウ、エナガ、ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、ノジコ、カワラヒワ、イカル、コムクドリを物真似をしていたと記しています。また、カケスについては、クマタカに似た声、猫に似た声、アカゲラに似た声、ウグイス、フクロウ、クロツグミの声を真似していたと報告があると述べています。(モズとカケスの物真似の違い)加藤(1981)は、モズとカケスの物真似の対象に違いがあることを指摘しています。カケスの場合、自分の恐れる天敵の声が多いが、モズは自分より弱い小鳥の真似が多いと述べています。俗説では、小鳥を呼びよせて捕えるためだというが、実際モズは近くに現われた小鳥を襲撃することは多いが、モズの物真似にさそわれて近よって行く小鳥は見たことがないと述べています。(引用)加藤昌宏.1981.神戸の野鳥観察記.神戸市教育委員会.蒲谷鶴彦.1996.日本野鳥大鑑.下巻.p29、p145.小学館.
2023.09.22
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オフィスのある柏市内の公園を散策し木陰で休んでいましたら、木の切り株に黄緑色のハラビロカマキリが近寄ってきました。暖かい地方に多い種類と聞いていたのでまさか柏市内で目撃するとは思いませんでした。帰宅後、フィールドノートを見返し、カマキリを捕食する鳥類の記録を復習。オフィスの近くの公園でカマキリの卵を食べていたシジュウカラ、手賀沼沿岸の谷津田でサシバ成鳥が捕食していたこと、ヒヨドリがヒナに与える餌としてカマキリを食べやすくするのに砕いていたことなどが記されていました。カマキリ類の卵をスポンジ状の保護材で包んだ卵嚢を捕食する鳥類について文献を調べてみました。赤塚(2006)は、岐阜県南部および愛知県で2005年3月から6月の間で調査結果と文献に報告されている結果を報告しています。それによると、捕食鳥類ではシジュウカラ、ヤマガラ、コゲラ、ハシボソガラス、カケスの報告があると記しています。くわえて、赤塚(2006)は、鳥類と卵雲や繭における捕食被捕食関係は、特別な事例ではないものの研究は少ないと指摘しています。フィールドで見かける鳥たちの行動、もっと注目したいと思いました。(引用)赤塚隆幸.2006.鳥類によるオオカマキリの卵雲に対する捕食.Strix.第24巻.pp69-75.日本野鳥の会.(写真:カマキリの捕食とは直接関連はありません)カマキリ:2023年8月25日撮影サシバ:2023年6月手賀沼沿岸、シジュウカラ:2023年1月柏市内、ヤマガラ:2023年2月柏市内で観察・撮影
2023.08.25
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フィールドでカワウが翼を広げているのを指して、ポーズをとっていると市民の方が話しをしていらっしゃるのを耳にしました。しかし、その行動は、翼を広げて乾かしている行動です。カワウは潜水を繰り返して魚を捕獲しますが、羽はあまり水をはじきません。カワウは尾脂腺があまり発達していないので羽毛が水を吸いやすく羽毛のなかには空気を溜められないという特徴があります。山本(2008)が述べているように、水のしみこみやすい性質は体に働く浮力が減少し潜水する時のエネルギー量が少なくてすむというメリットがあります。その反面、水がしみこみやすい羽毛は保温性が悪いので水中での体温維持のため1日500gもの餌を必要となっています。(引用)山本麻希.2008.カワウってどんな鳥..全国内水面漁業協同組合連合会.pp49.(写真)2018年8月18日谷津干潟、2020年5月5日水元公園、2021年2月22日銚子市で撮影
2023.08.14
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手賀沼沿岸や柏の葉キャンパス近郊などで何度も子育てをしているツバメのペアを見ていると、雄の喉部の赤い毛の面積がある個体がほとんどです。雌に好まれる雄の特徴にはどんなものがあるのかと文献を調べてみました山口(2012)は、ツバメの配偶者防衛行動、交尾行動、雌の浮気のモチベーションを反映した行動について観察・調査を行った結果を報告しています。雌ら好まれる雄の形質として、太り具合(体調がよい)、喉部の赤い羽毛の面積を持つ雄がつがい相手としての雌に好まれることが明らかになったと述べています。注目されるのは、雌は喉部の赤い羽毛の面積が小さい雄と番となった際に雄による配偶者防衛行動からよく逃げ出し、つがい外配偶行動を求めることが明らかになったと報告している点です。このような雌はつがい外子を残していること、つがい外配偶をより多く求める雌とつがいとなった雄は給餌努力を減らすことが確認されたとも記しています。研究者の間では、雌雄間の対立が影響しあうことを示したはじめての研究と評されています。(引用)山口 典之.2012.つがい外配偶に起因する繁殖時期決定に関する雌雄間の対立.科学研究費助成事業研究報告書.pp6.(写真)2021年8月22日手賀沼沿岸、2007年6月2日柏市内で撮影
2023.08.01
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昨日、手賀沼沿岸でコムクドリ17羽の群れを目撃しました。帰宅後、亭主と2005年長野県で開催された日本鳥学会で北海道東海大学の竹中万紀子さんが口頭発表なさったコムクドリ雄の頭部栗色斑の大きさ、模様、形状の講演内容を思い出していました。竹中さんは、2004年までコムクドリ雄の頭部羽色の追跡調査を実施しとの結果を報告しています。それによると、頭部栗色斑は加齢と共に頭部栗色斑が拡大する可能性は低いが、栗色斑は雄の繁殖行動の特徴を示している可能性が高いと述べています。具体的には、栗色部分が最も小さく、両頬に斑状に分布する個体のほうが一夫二妻になる個体が多く、逆に頬斑の面積が広く頭全体をえりまきのようにとりまいている個体では一夫二妻となる個体は観察されなかったとするものでした。また、抱卵期と育雛初期に着目してみると、両頬に栗色斑が分布している個体は営巣への貢献度が低く、頬斑が広い個体は配偶相手と同等の時間を抱卵に割いていたと興味深い内容を指摘しています。あわせて、コムクドリでは雄が2番目の配偶者を得る時期は1番目の巣の抱卵期が多く、第一雌に抱卵を任せ第ニ雌を得ることに時間を割いている可能性があるとしています。これらのことは、頭部羽色パターンが子育ての協力度合いを示している可能性があると結んでいます。(引用)竹中万紀子.2005.コムクドリ雄の変異と繁殖行動.2005年日本鳥学会学会報告.(写真)2023年7月29日手賀沼沿岸で撮影
2023.07.30
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今朝、公園を探索していたら、2羽のハシブトガラスが木陰で長時間休んでいる姿を目撃しました。過日もハシボソガラスが地面に横ばいになっている姿を見ていたお子さんがカラスが死んでると教えてもらいました。でも、覗き込み撮影をしていたらすぐに立ち上がり生きているよとばかりに鳴き声をあげてくれました。獣医師の鳥友に聞くと、鳥類の体温は一般に40~42度の範囲で、多くの哺乳類より数度高いのだそうです。体温が高いのは、新陳代謝を促進させて空を飛ぶという激しい運動に伴う大きなエネルギーを得るためなのだそうです。自動車に例えると直ちに高速回転できるように常時アイドリング状態を保つ役割なのだそうです。鳥類は、パンティング(あえぎ呼吸)で熱を蒸発させるので口をあけて浅く早い呼吸を行い、気道からの蒸発を活発して熱の発散を行っているのだと教えてもらいました。なお、パンティング以外にも体温を下げるさまざまな機構があり、羽毛におおわれていない足の表面温度はぐっと低く、コウノトリの場合、体温40度に対して足は15度程度で足は放熱に重要な役割を果たしているのだそうです。(写真)2023年7月28日、7月17日撮影
2023.07.28
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鳥友からサギ科のヒナで成長の差が大きいのはどうしてかと質問をもらいました。チュウサギ、コサギ、ヨシゴイなどは非同時孵化の鳥類として知られています。第1卵から完全抱卵を開始するため、育雛初期は雛間の成長の差が大きく一腹の雛数が多い場合には、遅く孵化した雛が育たない場合もあります。アップした画像は、埼玉県越谷市で撮影したものですが、一枚目の右端の個体はほかのヒナたちよりも一回り以上小さいものでした。また、二枚目の写真の生まれたばかりのヒナ3羽の右端の個体が最も小さく、こんなに差があるのかと思いました。益子(2014)は、チュウサギの生態や行動に関する知見などを整理し報告しています。それによると、孵化日にずれが生じる非同時孵化の巣では、後に孵化したヒナは,先に孵化したヒナとの体サイズ差により、親からの餌をめぐる競争において孵化直後から不利な状況に置かれると記しています。さらに、非同時孵化は、親の餌供給量に見合ったヒナ数を生き残らせてヒナの全滅を回避する戦略と考えられコサギやアマサギでも同様のことがあると紹介しています。(引用文献)益子美由希.2014.チュウサギ 餌を巡る兄弟間の競争.Bird Research News Vol.11 No.3.p4-5.
2023.07.26
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7月13日山階鳥類研究所から2022年9月3日に茨城県稲敷市でフラッグを装着していたトウネンについての報告を受領、北海道紋別市コムケ湖でフラッグ(HM8)を装着され2022年9月1日に放鳥された個体と判明した旨を報告しました。コムケ湖についてその特徴などを調べてみました。桑江(2012)によると、北海道紋別市コムケ湖は泥干潟で、トウネンはバイオフィルム(微細藻類、バクテリア、およびそれらが細胞外に放出する多糖類粘液で構成されているた薄い層の総称)に依存度が高く、小型シギであるほど多く利用されるのだそうです。環境省(2023)によると、2022年秋のシギ・チドリは、チュウシャクシギの増加数が最も大きく26%増加、個体数はあまり多くないもののオグロシギ、コアオアシシギ、ツバメチドリ、ケリなどの湿原や水田、耕地などでよく観察される種が前年度と比べて増加傾向にあった半面、トウネン、ミユビシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、シロチドリが減少した結果でした。このうち、トウネンが個体数の多くを占める北海度濤沸湖、コムケ湖、風連湖で大きく個体数が減少したことが記されています。(引用)桑江 朝比呂.2012.トウネンもハマシギもバイオフィルムを食する.Bird Research News Vol.9 No.3.p2-3.環境省.2023.シギ・チドリ類調査 ニュースレター.2022年度秋期調査結果の概要.p1-2.環境省自然環境局生物多様性センター.(写真)2021年8月28日、2022年9月3日いずれも茨城県浮島にて観察・撮影
2023.07.16
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時折、小雨がふったりやんだりなので出かけたフィードで撮影した画像の整理と復習をしていました。先月末都内都市公園で観察したカイツブリ、普段なかなか記録できない弁足の形状がわかるものがありました。カイツブリの各趾は木の葉状の弁膜になっていて水かきの役目をはたしています。研究者によると、カイツブリは脚を前方に戻す寸前でひねり弁膜の向きをかえ、水抵抗を少なくしているのだそうです。また、脚を後方へ蹴るとき、弁足の面積を最大にしていること、弁足の面を大きくしたり、角度をかえて水の抵抗を減らしていることのだそうです。潜水して予想しているより遠くの水面に顔を出すのはそんなことが貢献しているのですね。(写真)2023年6月13日都内で観察・撮影
2023.07.14
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近年は都市で繁殖しているイソヒヨドリ、興味深い給餌行動が知られています。井澤・松井(2011)はイソヒヨドリの調査結果から親子関係等などについて報告しています。給餌行動についてては、巣の中に雛がいる間は区別せず雌雄で餌を行う与え、巣の中の糞の処理などの世話をします。ところが、ヒナが巣立ってからは給餌行動が変化し、雄だけが雛に餌を与える、雌だけが雛に餌をやる、ヒナにより雄の専属給餌を受ける個体と雌による専属給餌を受ける個体の3タイプの行動が見られる旨を述べています。また、ヒナ分けを行っているペアでは、自分が世話をしていないヒナから餌ねだり行動を受けた親は高い割合(80%以上)でヒナを威嚇すると記しています。(引用)伊澤雅子・松井 晋.2011. イソヒヨドリ.多様な親子関係.Bird Research News Vol.8 No.8.p4-5.(写真)私のライブラリーより2022年4月柏市内、2021年1月茨城県内で観察・撮影
2023.07.08
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8月に入ると三番瀬にミユビシギの姿を見かけるようになります。奴賀(2016)がミユビシギの渡りを調査した結果や知見を整理し報告してます。それによると、北極圏のノヴォシビルスク諸島で繁殖が集中していることが判明し、繁殖地での滞在は32日から66日で、繁殖を終えるとサハリン島北部のオホーツク沿岸を利用し、中国、台湾の沿岸沿いで数カ所で滞在し、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどの少なくとも1カ所の中継地を利用し南下していると述べています。また、興味深い内容として、ミユビシギの雌が遅くまでヒナの世話をしている分、雄より繁殖地を離れるのが遅くなるという論文の一部を紹介しています。(ミユビシギの二重巣卵性)石塚(2016)が紹介しているように、ミユビシギは繁殖地に戻ると雌が一つの巣で産卵を終えると、別のところでまた巣を作り産卵する二重巣卵制の鳥類です。二つの巣の卵の両親は同じですが、最初の巣の子育ては雄が、後の巣の子育ては雌が受け持つ分業制をとっていることを記しています。抱卵がはじめまると番関係はもう解消されてそれぞれがまた別の相手を見つける。次の相手とも二つの巣を持ち、あくまで1つ目の巣は雄が、二つ目の巣が雌が受け持つと述べています。奴賀(2016)がミユビシギの雌が遅くまでヒナの世話をしている分、雄より繁殖地を離れるのが遅くなると記しているのは、雌が雄よりも後から抱卵を担当していることと関係しているのではないかと思われます。(引用)奴賀俊光.2016.7000kmをひとっ飛び?.オーストラリアで越冬するミユビシギの渡りルート.バードリサーチニュース2016年6月石塚徹.2016.見る聞くわかる野鳥界.生態編.p170信濃毎日新聞社.(写真)私のライブラリーより2018年8月11日、2021年8月11日、2015年9月19日いずれも三番瀬で観察・撮影
2023.07.06
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小高(2014)は、北海道札幌市北大キャンパスで標識を装着して調査したアカゲラについて、自分のなわぼりと巣を持つ2羽のオスと1羽のメスがつがいとなり、メスはそれぞれのオスの巣に卵を産み子育てしていた(同時的一妻二夫)と報告しています。(2羽のオスと同時に2つの巣を構えることができたのか)その理由のひとつとして、オスとメスの子育てへの関わり方をあげています。通常の一夫一妻で繁殖する場合、雌雄交替で巣穴を掘り、抱卵、花雛を行い、雌雄ともに雛への給餌を行います。さらに、オスはメスよりも長い時間巣穴を掘り、日中の抱卵・抱雛は雌雄交替で行いますが、夜間巣穴に残って卵やヒナを抱くのはオスの役割です。北大の場合、2羽のオスが積極的に子育てに参加し、夜間巣穴をオスに任せることができるため、2羽のオスと同時につがいになれたことによるものと見解を示しています。くわえて、北大キャンパスでは森林が孤立化し不均質に分布し、狭い森に巣が集中するような環境のためオスのなわぼりの質にも差が生じています。発見後も北大キャンパスでは複数の一妻二夫のトリオによる繁殖が観察されたことから、都市緑地のような森林が極度に分断化した環境条件で一妻二夫のトリオが生じやすくなるのではないかと指摘しています。(引用)小高信彦.2014.北大キャンパスのアカゲラ研究.北海道野鳥だより.第175号.p6-7.北海道野鳥愛護会.(写真)私のライブラリーより2013年2月柏市で撮影、2016年7月栃木県で撮影
2023.06.30
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米田(2015)は、タマシギの繁殖生態を調査した結果や知見を整理し報告しています。その中で、興味深いのが、「メスが何回かオスを変えて繁殖することは一妻多夫を裏付ける証拠と言えるのですが、オスも何回かメスを変えて繁殖するため、私は一妻多夫とは言えないのではないかと思っています。むしろ産卵前3~4日から産卵中の4日間はずっと番いで過ごすことからこの期間は厳密な一夫一妻制の繁殖生態をしている」と述べている点です。多くのウォッチャーは、タマシギ雌は体が大きく、目立つな色彩で大きな声で鳴き、オスは目立た色合いで抱卵や育雛などの子育てを行い、オスとメスの形態と習性の特徴が普通の鳥と逆になっているために、一妻多夫の変わった生態を持った鳥と理解されています。(タマシギのペアが一緒にいるのは1週間)米田(2015)は、調査した結果から、番いのオスとメスがどれくらいの時間一緒にいるかを整理し述べています。それによると、合計200時間の観察で、産卵を始める3~4日前から産卵期の前半まではいつもオスとメスが一緒に行動し、巣から離れる時も必ず連れ立って飛んでいき、後半になるとオスは巣に留まって抱卵をしますが、メスはどこかに飛んでいくことが多くなり、4個の卵を産み終えるとメスはその巣から離れてしまい、その後巣に戻ってくることはなく、オスは1羽だけでヒナが孵化するまでずっと抱卵を続け、オスとメスが一緒にいる期間は約1週間だけで、その後はバラバラになって暮していたことが判明したと記しています。(多くの図鑑のタマシギについての記述)多くの図鑑では、タマシギの雄は営巣から抱卵、子育てまでを担当し、多くの鳥類と雌雄の役割が逆転していると述べています。しかし、米田(2015)のように観察と調査結果から導かれた結論によって記載しているものはとても少ないのが現況です。(引用)米田重玄.2015.タマシギの繁殖生態「一妻多夫?」.山階鳥研ニュース2015年7月号.第4面-第5面.(写真)私のライブラリーより2023年2月都内で撮影
2023.06.24
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鳥友から手賀沼沿岸ではかつてチュウサギが少ないと聞いていたが、その原因はどのようなところにあるのかと質問をもらいました。(明治時代から昭和初期のチュウサギがいなかった時代)我孫子市(1995)は、鳥類の観察記録などを整理し報告しています。その中でチュウサギは明治から昭和初期までは記録は認められなかったとし、1959年頃からまた記録されるようになったと報告しています。(手賀沼本体では観察されなくなった)手賀沼の鳥(2004)が報告しているように、手賀沼とその隣接する水田地帯でのチュウサギは通年姿が観察されるものの、年総個体数(1月から12月の個体数の合計)は1970年代5羽、1980年代6羽、1990年代10羽、2000年代7羽と非常に少ない状態が続ています。(チュウサギの減少の要因)益子(2014)は、文献に報告や知見、調査結果などを整理し報告しています。チュウサギの減少が著しいのは、「水田の圃場整備による餌生物の減少が一因と考えられている。(中略)水生の小動物を主食とするチュウサギは、整備済み水田で有意に少なかった」と報告しています。手賀沼沿岸には印西市と柏市の境界に広大な水田地帯存在していますが、整備済み水田(コンクリート製の用水路)であり、小動物の存在がほとんどないものと思われ、少なさの要因と考えられます。(引用)我孫子市.1995,我孫子市自然環境調査 鳥類調査報告.p61-62.手賀沼の鳥.2004.手賀沼の鳥Ⅱ.p190.我孫子野鳥を守る会.益子美由希.2014.チュウサギ.「準絶滅危惧種」の歴史といま.Bird Research News Vol.11 No.3.p4-5.(写真)私のライブラリーより2023年6月15日手賀沼沿岸で撮影
2023.06.22
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鳥友からもともと高原の鳥だったカッコウがいつごろから託卵をはじめたのかなどの質問をもらいました。(カッコウの平地への進出)中村(1991)は、長野県でのカッコウの調査結果や知見を整理し報告しています。1960年代まではカッコウは高原の鳥だったが1974年に松本と佐久の地域でオナガへの託卵が発見されたと述べています。その後、1991年では長野県全域でオナガが分布するようになった記しています。調査をはじめた1981~1983年頃にはオナガへのカッコウの託卵率は29.6%だったが1985年には60.6%、1988年には79.6%と急激に増加したと報告しています。(カッコウの卵の擬態)田中(2012)は、託卵鳥に関する研究と最新の研究結果を整理し報告しています。卵の擬態、宿主が排除しない理由、カッコウが宿主の卵より小さい卵を産むとの報告が特に興味深いので紹介します。(宿主に対する卵の擬態)カッコウ1種が托卵する宿主は複数の種にわたるが、それぞれの種の巣に産み込まれるカッコウの卵は宿主の卵とよく似ていると記しています。(カッコウが小さい卵を産む理由)カッコウが産み付けた卵は、宿主の卵の大きさに近くなっていた小さいサイズのものとなること紹介し、カッコウが小さい卵を産むのは、孵化までの期間をできるだけ短くし、孵化したカッコウの雛が効率よく巣を独占するための適応と考えられていると報告しています。(宿主がカッコウを排除しない理由)宿主の雛よりも先に孵化し、その後すぐに宿主の卵や雛を排除する托卵鳥では、卵排除では効果をもつ刷り込み学習が雛排除に関しては対托卵戦略として効果を持たないこと生涯で最初の繁殖で托卵された場合、カッコウの雛を自身の子であると間違って刷り込み学習してしまうことになる。(中略)ただし、直接的に雛排除を行う認知メカニズムは現時点では未解明であると指摘しています。(引用)中村浩志1991.託卵をめぐる攻防.動物たちの地球.通巻828号.p300-303.朝日新聞社.田中啓太.2012.騙しを見破るテクニック:卵の基準,雛の基準─托卵鳥・宿主の軍拡競争の果てに─.日本鳥学会誌第61巻第1号p60–76.(写真)2018年6月2日、2017年7月19日戦場ヶ原で撮影
2023.06.16
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今月2日から3日にかけての大雨の影響で湿原・水田などの水位が急上昇し営巣している前記の鳥類に影響が出たのではないかと思っています。ホームグランド手賀沼でも水位が3m前後まで急上昇し、葦原で営巣していたセッカ、ヨシゴイなどに影響が及んだのではないかと思います。今日11時現在の水位は約2m程度で一時期に比べると、かなり水が引けた状態です。特に、セッカはチガヤやススキなどの地上20cmほどのところにクモの卵嚢から取った糸で,生の葉を縫い合わせて作った巣をつくりますから増水した沼沿岸の葦原のものは全滅した可能性が高いものと思います。しかし、水田にも生息しますから、水位が下がってからもう一度造巣するのではと期待しています。今朝11時現在の沼の水位は1.94mなのでもう少し下がってからヨシゴイとあわせて様子を確認したいと思っています。上田(2006)が「繁殖期のオスの頭部上面は一様な褐色であるのに対し、メスの頭部上面は淡い褐色の地に黒褐色の縦班が存在するため一見してザクザクした感じになる。セッカでは中央の2枚を除く10枚の尾羽の先端部に白色部があらわれるが、この白部分がオスでは鮮明であるのに対しメスではかすかに褐色がかっている」と記していることや永井(2014)が「雄の会合線は黒く、雌では会合線が黒くない」と述べていることを参考にして雌雄の動きに気を付けて観察してみたいと思います。(引用)上田恵介.2006.セッカ.分類と形態.Bird Research News Vol.3 No.5.p2-3.永井真人.2014.野鳥図鑑.670.p124.文一総合出版.(写真)1枚目は2020年5月3日茨城県浮島で撮影(頭部黒っぽく、尾羽先端部に現れた白色部が鮮やかに見えたので雄と思われます)2枚目は2016年7月10日茨城県浮島で撮影(頭部上面が褐色で尾羽先端部が褐色がかっているので雌と思われます)
2023.06.12
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昨日、柏の葉キャンパス駅近郊でヒメアマツバメの造巣を観察しました。昨日造巣を観察したものは、先月30日にスズメ、イワツバメに破壊されたものをペースに枯れ草や羽毛を唾液で固めて壁面にくっつけていたものてす。そうかと思うと、三枚目の写真のようにイワツバメの古巣をベースに羽毛、枯れ草でリノベーションしているものも目撃することがあります。また、四枚目の写真は真夏にもかかわらず羽毛と枯れ草で覆った巣に入っていた光景です。造巣についてのいくつかの文献を閲覧してみました。平田(2019)は、ヒメアマツバメについてつぎのように報告しています。「空中に飛んでいる枯れ草や羽毛を集め、それらを唾液固めて巣を作ります。このように巣を自作できるにもかかわらず、しばしばコシアカツバメやイワツバメの巣を利用します。家主を追い出して乗っ取ることもあれば、空いている古巣を使うこともあるようです。乗っ取った巣はそのまま使わず、巣の内壁に枯れ草や羽毛などの巣材を塗り固めて使います。言わば、ツバメ類の巣を外壁にして、その中に巣を自作するような感じです」と述べ、同様のことを記しています。(引用)平田和彦.2019.ヒメアマツバメ. 真冬の空を切り裂くツバメ?.房総の山のフィールドミュージアムニュースレターしいむじな.2019年冬.p2.千葉県立中央博物館房総の山のフィールド・ミュージアム.(写真)私のライブラリーより一枚目:2023年6月10日、二枚目:2023年5月30日、三枚目:2022年6月30日、四枚目:2018年8月22日撮影
2023.06.11
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昨日、栃木県の神社で巣立ちしたフクロウを観察できました。その折、巣立ちできたのはよかったけれどその後はどうやって暮らしていくのかと鳥友から質問をもらいました。しかし、巣立ち後のヒナの行動や移動、環境などを明らかにしたものは少ないのですが、樋口・青木(2000)が、山梨県と新潟県の傷病鳥保護記録と新潟県での調査をした結果から報告しています。(1)フクロウのヒナの巣立ち巣立ちから3ヶ月を巣のある営巣林に留まっていることがわかったと記しています。そして、巣立ち後約1ヶ月間は営巣木から200m以内に留まっており、巣立ち後30日をすぎる頃になるとヒナは日没とともに隣接する林を伝って営巣林から離れるようになり夜間の行動域を広げていったとしています。なお、夜間の行動域を広げる頃になっても夜明けとともに営巣林に戻ったと記しています。(2)ヒナは親に空腹のアピールヒナ同士は互いに樹上に留まり同じ枝上にいることが多く観察され、親への空腹の主張として絶えず大きな声で鳴き交わしていたことを紹介しています。(3)昼間の休憩時の隠れ場所周囲が開けた環境の場合、トビ、カラスといった天敵からの発見されることが多く、繁殖林が昼間の休憩時の休み場所として役割を果たしていると記しています。(4)文献報告から読み取れること樋口・青木(2000)に目を通して、樹洞をもつ大径木を残す社寺林、屋敷林などのいわゆる緑の回廊がフクロウ類の生息に大きな役割を果たしていることが理解できました。(引用)樋口亜紀・青木進.2000.緑の回廊に関する研究.フクロウを事例として.第9期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成成果報告書.p7-13.公益財団法人自然保護助成基金.(写真)すべて2023年6月5日栃木県で撮影
2023.06.06
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複数の鳥友からホームグランド手賀沼沿岸のヨシゴイについて、昨日からの大雨の影響で巣は全滅していないだろうかと質問をもらいました。現地の確認できていないので確定的なことは申し上げられませんが、ヒメガマの群生地に営巣したヨシゴイの巣は全滅した可能性が高いものと思います。ただし、アシに営巣した単独巣は被害を免れた可能性があります。後日、現地を確認したいと思っています。(1)ヨシゴイが好む営巣環境上田(1996)が埼玉県でのヨシゴイの繁殖地を調査した結果を整理し報告しています。その中で「ヨシゴイはあきらかに巣をかける植生としてはアシよりヒメガマを選ぶ」と述べています。手賀沼沿岸でも同様でヒメガマの群落に集団で営巣する傾向があります。一方、アシの単独巣は捕食にはあいやすいが、高さが高いためにヨシゴイの繁殖時期である梅雨後期の大雨や台風時の増水によって冠水しない利点があると指摘しています。手賀沼沿岸でも単独でアシに営巣している個体も見受けられますのでほぼ同様と推察されます。(2)巣の水面の高さと繁殖成功上田(1996)は、単独巣の多いアシ原では巣は高い位置(*)につくられるがヘビなどの捕食率は高く、集団で巣がみつかるヒメガマの沼地では、巣の位置はアシ原とくらべて相対的に低い(*)が,捕食率も低いと述べています。(*)水面からの巣の高さ調査した結果では捕食されなかった巣の高さは76.5~67.7cm、捕食された巣の高さは99.9~68.8cm但し、巣下の水深が浅いと捕食されやすく、深いと捕食されにくいと述べています。(*)巣下の水深捕食されなかった巣下の水深は28.2~21.2cm、捕食された巣下の水深は20.8~9.0cm(3)なぜヒメガマを好むか上田(1996)は、巣下の水深が深いヒメガマは、捕食の被害を受けにくいことと葉がやわらかく、折り曲げやすい傾向があることを記しています。(引用)上田恵介.1996.ヨシゴイはなぜ集団で繁殖するのか:巣場所選びと繁殖成功.STRIX Vol. 14, pp. 55-63.日本野鳥の会.(写真)私のライブラリーより2020年7月12日手賀沼沿岸で撮影したヨシゴイの幼鳥と巣、2021年6月13日手賀沼沿岸で撮影した成鳥
2023.06.03
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昨日、手賀沼沿岸で複数のサシバを目にしました。3月下旬に姿を見かけた際には谷と水田が入り組んでいる谷津田の一角でカエルを採食していたのが昨日は親鳥2羽のうち1羽が捕獲してきたのがヘビで、もう一羽は巣近くの水田の電柱にとまって待ち伏せして捕獲していました。1977年からの手賀沼沿岸での観察ではネズミ、小鳥などを採食しているのも目撃しています。谷津田に生きる小動物がその採食対象となっていることを実感します。サシバの採食地点が季節で変化するという興味深い報告がありますので紹介します。東(2007)はサシバの分布、食性と採食行動、生態などについて調査結果と知見を整理して報告しています。採食対象としては、シマヘビやニホンカナヘビなどの爬虫類、トノサマガエルやニホンアカガエルなどの両生類、トノサマバッタやアブラゼミ、ヤママユガの幼虫などを見つけて飛びかかり、足で捕らえる。その他にはハタネズミやヒミズなどの小型哺乳類やスズメやホオジロなどの小鳥類、アメリカザリガニやサワガニなどの甲殻類などをあげています。つぎに、採食場所について「谷津田のある里山では、渡来直後から育雛期初期にかけて水田周辺で主にカエル類を採食するが、育雛期中期から後期にかけて採食場所がしだいに雑木林に移行し、それにともない昆虫類の採食割合が高まる。このように、季節の進行にともない採食場所を変えながらその時期に採食しやすい獲物を狩る」と興味深い内容を記しています。図示しているものを見ると、採食地点が5月上旬では畔・土手が約60%、5月下旬では畔・土手が約40%、雑木林が約40%、6月上旬では畔・水田が約80%、6月下旬では雑木林が約50%、7月上旬では雑木林が100%と結果となっています。(引用)東淳樹.2007.サシバ 食性と採食行動.Bird Research News Vol.4 No.5.p4-5.(写真)私のライブラリーよりモグラを採食している光景:2015年4月12日手賀沼沿岸、林のてっぺんに止まっていた光景:2018年7月8日手賀沼沿岸雑木林にとまっていた光景:2019年7月6日手賀沼沿岸
2023.06.02
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鳥友からサギのコロニーができて繁殖までについて質問をももらいました。基礎的な知識を整理したものを提供します。(サギのコロニーについて)藤岡(2003)は、サギ類(サギ科、コウノトリ科、トキ科)の特徴、形態、生息環境、繁殖などにの知見を整理し報告しています。(1)つがいになる期間つがいの相手を選ぶことからはじまります。つがい相手を探しているサギは雄も雌も虹彩や脚、目とくちばしの間の皮膚などが種ごとに固有の婚姻色となっているのですぐわかります。独身雄は美しい飾り羽を広げて求愛ダンスを踊ります。ふつう2日から4日でつがいになります。(2)巣づくり巣はふつう4日から1週間でできますが巣材はその後も追加されます。(中略)巣材はコロニーの内外の林から集められますが、もし空き巣があるとそれをそのまま利用したりそこから巣材を抜いていきます。(3)産卵期間繁殖は非同調的で、繁殖地全体での産卵期間は2ヶ月以上におよぶのが普通です。(中略)孵化に要する日数は約24日です。つぎに、昨日観察したコロニーについての概要が示されている文献があるので内容の一部を紹介します。(28日に観察したコロニーについて)尾上(2019)は、コロニーの概要、成り立ちの背景などについて調査と知見を整理したものを報告しています。(A)コロニーの食性と規模植生は、マダケを中心とする。サギは、コロニーに三月中旬に集まり始め、九月中旬頃にいなくなる。2000年に近郊地区から移動しコロニーが形成された。個体数は、2016年の江戸川河川事務所の調査によると約2880羽が確認されていて、3000羽規模と予想されると述べています。(B)コロニーができた背景河川敷にあり近くに人家がないこと、採食場所が多いこと、他地域のコロニーからの流入の3項目をあげています。このうち、採食場所についてはサギコロニーから10キロから最大15キロ圏内の水田、湿地がサギの採食圏となっていて、コロニーから10キロ圏内の採食範囲では、水田分布が多いと報告しています。(引用)藤岡正博.2003.かながわ野生動物リハビリテーター養成フォローアップ講座フィールドワーカーが語る野生動物 サギ類.pp9.尾上 愛美.2019.サギコロニーを未来へ繋げるために.第19回高校地球環境論文賞報告.中央大学.(写真)4枚とも2023年5月28日撮影
2023.05.29
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今週24日に筑波山麓にてコシアカツバメを観察した件を閲覧した鳥友からコシアカツバメの分布について質問をもらいました。その分布について文献に報告されているものを整理してみました。(1)繁殖分布が北上した時代仲真晶子(1984)が報告しているように、.かつては西日本で繁殖するとされていましたが、1950年から1977年にかけて南関東で繁殖分布を北上する動きがみられました。a.神奈川県小田原市内で1940年以前から繁殖していたとの記録があり、1950年代に入り鎌倉市で営巣が記録され、平塚市、茅ヶ崎市、藤沢市、三浦市と海岸沿いの街秦野市、横浜市などの内陸にむけて分布を拡大していきました。b.千葉県1938年に成東町(当時)、1938年から1940年に千葉市で繁殖し、勝浦市では1950年代後半から営巣していたとの報告や鴨川市、大原町、茂原市といった海岸沿いに分布を拡大していきました。手賀沼の鳥(1994)が北西部の我孫子市湖北台で1986年7月、1987年4月、7月に営巣した記録を報告しているのもこうした動きでした。(2)急速に減少傾向に転じた2016年以降全国繁殖地図調査(2018)が報告しているように、コシアカツバメは1977年から2002年にかけて記録できた39件が2016年から2018年の間では26件と減少傾向をたどり、野生生物調査協会(2019)が報告しているように28都道府県で絶滅危惧I類などの何らかの絶滅危惧の指定を受けています。(3)建物の選択性仲真晶子(1984)が述べているように、モルタルおよびコンクリートの建物に強い選択性を示し、2階以上を営巣場所として選択することが多い種類ですが、建物の老朽化に伴う建て替えによって繁殖できなくなっている傾向が進行しています。(引用)仲真晶子.1984.関東地方およびその周辺部におけるコシアカツバメの繁殖分布と営巣場所の選択.Strix.第3巻.p55-65.日本野鳥の会.我孫子野鳥を守る会.1994.手賀沼の鳥 20年の観察記録.p41.全国繁殖地図調査.2018.日本の鳥の今を描こう 2016-2018.pp5.福井 亘.2019栃木県大田原市に生息するコシアカツバメの繁殖個体群に関する研究.中谷医工計測技術振興財団調査研究助成報告.pp4.(写真)2023年5月24日茨城県で撮影
2023.05.27
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18日に柏の葉キャンパス駅近郊でイワツバメが巣に入っているのを観察しました。日中はその行動を観察できるのですが、夜間はどのように過ごしているのかは不明です。しかし、イワツバメが飛行しながら寝ている可能性や興味深い報告がありますので紹介します。氵の鳥仲間でイワツバメのコロニーのある町で飲み会をしてその夜の生態を見に行こうよとの提案してみようかと思っています。(1)寝ながら寝ている可能性西(2013)は、イワツバメの生態、生活史、興味深い行動などについて知見や調査結果などを整理し報告しています。その中でヒナの巣立ちが近づくと巣でねぐらをとらない親鳥が観察されるようになり、ヒナは巣立つと巣にはほとんど戻らなくなると述べています。2004~2013年までに山梨県東部の2箇所のコロニーで1回目の繁殖でヒナが巣立った後の6~8月に合計26回標識調査をおこなった結果、夜明け後に巣から出てきた個体に幼鳥は1羽もいなかった。しかし,コロニー周辺では早朝に多数の成鳥や幼鳥が建物の屋上に止まったり飛翔したりしている。夜間に建物の屋上や周辺の樹木を探索したがイワツバメは発見できないことから、夜明け後にコロニーに飛来した個体であると思われるとし、このような群れは、コロニーから繁殖個体の渡去が完了するまで観察されると記しています。前記のことから、イワツバメもアマツバメと同様に飛びながら寝ている可能性が考えられると結んでいます。(2)夜間集魚灯に集まるアマツバメとイワツバメイワツバメの夜間の生態を知る上で貴重な観察報告があります。平田(2007)は、北海道大学練習船が2005年9月8日の20時から22時頃にかけて錨泊していた折、イカ釣り用の集魚灯にアマツバメ10羽とイワツバメ1羽が集まっていたのを目撃したことを報告しています。観察時間前後で睡眠していたかは不明なものの、集魚灯近くで方向転換していた飛行を観察したと述べています。(引用)平田 和彦.2007.夜間集魚灯に集まるアマツバメとイワツバメ.山階鳥学誌.第38巻.p108-109.西 教生.2013.イワツバメ.Bird Research News Vol.10 No.9.p4-5.(写真)一枚目、二枚目:2023年5月18日柏の葉キャンパス駅近郊で撮影三枚目:2018年6月24日柏市で撮影四枚目:2013年6月2日柏市柏で撮影
2023.05.23
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濱尾・秋葉・棗田(2013)が述べているように1970年代の繁殖分布はアオサギが北に偏り、南に多かったダイサギと一緒に観察できることは少なかったものの、2種の繁殖地域が拡大しを同所で観察できるようになっています。非繁殖期の両種の分布は1980 年代から重なっており、2 種の間であいだで潜在的に食物をめぐる競争があると考えられると言われています。米の消費量減少や稲作農家の減少傾向などで水田環境が変化することが予想される中、2種の分布が変化していく可能性も考えられます。身近な鳥が観察できたかどうかの記録を蓄積していくのも大切だと思います。(アオサギとダイサギの餌などについて)濱尾・秋葉・棗田(2013)は、千葉県九十九里浜の水田地帯で2012年11月8日から12月26日の間に18 日間の調査を行った結果を報告しています。それによると、アオサギとダイサギはいずれもタニシ・ドジョウ・アメリカザリガニを採食し、ダイサギでのみダルマガエルを採食した1 例はあるものの、2 種の餌生物種は似かよっていたと述べています。ただし、統計上有意ではないもののダイサギが小型のタニシを多く採食するのに対し、アオサギはより大きなドジョウやアメリカザリガニを多く採食する傾向がみられたと記しています。アオサギとダイサギで餌生物や大きさが異なる理由は、採食方法(餌生物の発見方法)の違いであり、ダイサギが水の中をゆっくりと歩いて餌を探すのに対してアオサギはじっと立ち止まって餌生物が近づいてくるのを発見する待ち伏せるという採食方法の違いによるものと報告しています。また、2種の嘴の形状の違い(アオサギはダイサギよりも明らかに太い嘴、ダイサギは細い嘴)も関係があるものと考えられると指摘しています。(引用)濱尾章二・秋葉 亮・棗田孝晴.2013.採食環境が競合するアオサギとダイサギにおける餌生物および獲得食物量の比較.Bird Research Vol. 9, A23-A29.(写真)私のライブラリーからダイサギ:2020年5月2日手賀沼沿岸、2018年9月16日手賀沼沿岸、アオサギ:2020年8月2日柏市内で撮影
2023.05.20
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夏鳥との出会いにむけて鳴き声、生態などの復習をしていたら、ホオジロについて興味深い内容を目にしたので情報提供します。これからのホオジロの繁殖期で注意深く観察してみようと思います。(1)季節を追って巣の高さが上がる山岸(1970)は、長野県長野市で1965年2月から1967年10月の間で行った調査結果を整理し報告しています。その中で、季節の進行と共に巣の位置が垂直的に上っていくことを述べています。原因は4月から5月上旬にかけての第1回目の営巣の頃は未だ芽ぶきだった木本の葉が季節を追って茂ってくるということ、梅雨期をむかえての地面の湿りや巣の流失及び草本の成長しすぎによる地上の草いきれ(湿度)に大きく関係していることにあるのではないかと記しています。また、巣高が上った結果として卵やヒナが地上性の天敵からの捕食をまぬがれるという利益もあるものと考えられると述べています。(2)一夫二妻の繁殖の可能性手井(2015)は、1997年4月に石川県金沢市で行った調査で、ホオジロの雄1羽のソングエリア内で雌2 羽それぞれが繁殖が1 例観察したと報告しています。なお、雄1羽による2羽の雌の巣内雛への給餌等は観察されず、一夫二妻を示唆する行動だったと述べています。(引用)山岸 哲.1970.ホオジロの繁殖期の生活について.(財)山階鳥類研究所研究報.第6巻.p103-130.手井修三.2015.ホオジロにおける一夫二妻繁殖の可能性.Strix.第31巻.p165-172.(写真)私のライブラリーより2014年1月27日、2月23日いずれも手賀沼で撮影
2023.05.15
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アオバトの復習をしていた折、拙宅の亭主から昨年の暮れ、北大と森林総合研究所の研究チームが、夜間に単独で渡ると考えられていたヤマシギのうち一定数が、日中の生息環境や生態が異なるアオバトなどの他種とペアになって渡ることを発見したとのプレスリリースの内容を紹介されました。春と秋はアオバトの渡りの時期であり、夜空を注目してみようと思います。北大と森林総合研究所の研究チームは、デジタル機器を用いて地上観察から夜空を渡る鳥類を識別する手法を確立し、2021年10~11月に室蘭、津軽鳥類観測所の二カ所での調査を実施したところ、観察された48羽のヤマシギのうち、約17%(8羽)が他種とペアになって渡っていたことが判明したと報告しています。内訳は、アオバト(5羽)、キジバト(1羽)、オオコノハズク(1羽)、ツグミ属鳥類の1種(1羽)で、捕食者をいち早く見つけたり、目的地への飛翔距離を短縮したり、飛翔エネルギーを節約したりしている可能性を示唆していると記しています。(ヤマシギとアオバトの渡りについて)研究チームは、ヤマシギとアオバトの渡りについてつぎのように述べています。いずれも、従来は渡りは夜間で単独で行うと考えられてきたことを述べています。調査により他種と夜間に渡ること、北海道室蘭と青森県津軽を結ぶルートで異種の鳥が移動しているという点が関係者の中で大きく注目されている点です。・ヤマシギ 北海道を含む北日本の森林地帯で夏に繁殖し、冬は関東以南に渡る。夜行性で、渡りも夜間に単独で行う。・アオバト 北海道を含む北日本では夏に繁殖し、冬には関東以南に渡る。昼行性だが、春と秋には夜間に単独で渡る。(引用)北海道大学・森林総合研究所.2022年12月7日PRESS RELEASE.夜空で密会するシギとハト~鳥類の夜間渡りにおける驚きの種間関係を発見~.(写真)私のライブラリーよりヤマシギ2023年2月28日茨城県、アオバト2021年7月26日神奈川県大磯町で撮影
2023.05.08
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大磯町のアオバトが先月27日に初認され、朝早い時間に姿を見せていると鳥友からニュースをもらいました。これから姿や鳴き声に遭遇する時期となります。鳴き声について復習をしていたら興味深い研究報告を目にしました。こまたん・吉村(2019)は、アオバトの鳴き声の構造と成幼の鳴き声に関する調査を行った結果を報告しています。(1)標準的な鳴き声声紋をカタカナに表すと、『オーオーゴアッゴ(句1)、オー(句2)、オー( 句3)、オアオ( 句4)、オアオ(句5)、アオアーオ( 句6)、オーアー( 句7)、アーオアオ(句8)、オアオ( 句9)、オー( 句10)』という鳴き声に聞こえると述べ、これが標準的な鳴き声と述べています。(2)求愛行動時の鳴き声アオバトの鳴き声で『ポポポポ』という鳴き方で求愛行動時に鳴く。ポポポ鳴きは0.3 秒~ 1.5 秒程度の長さでポポポポと鳴き続け間隔を置きながら繰り返す鳴き声と記しています。(3)前年生まれの個体の鳴き声行徳野鳥観察舎に保護されたメス1 羽(調査時、孵化後1 年未満)の繁殖期における鳴き声を調査した結果、繁殖期が始まった当初は前年生まれの個体はごく一部だけが不完全な鳴き声で鳴き、成長に伴い標準的な鳴き声に移行して2年目の初夏から順次成長して、秋にはすべて標準的な鳴き声に移行した可能性があると報告しています。なお、飼育かつ非繁殖個体である行徳でのメスも野生のアオバトと同じような鳴き声の季節周期を示したことをあわせて述べています。(引用)こまたん・吉村理子.2019.行徳野鳥観察舎に保護されている幼鳥アオバトのタイマー録音による鳴き声調査-初めての繁殖期を迎えた前年生まれの個体の鳴き声-.日本野鳥の会神奈川支部研究年報 第26集.p1-12.(写真)私のライブラリーより2019年8月3日大磯町にて撮影
2023.05.07
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鳥友からアオバトが繁殖期のみ塩水を飲むのはどういった理由によるものかと質問をもらいました。いくつかの文献を復習してみました。大坂ほか(2011)、加藤(2019)が述べているように、アオバトが繁殖期に海水を飲む行動が北海道小樽市張碓や神奈川県大磯町照ヶ崎,静岡県浜名湖などで繁殖期に観察されているほか、北海道美瑛町、秋田県田沢湖町玉川、群馬県上野村、福井県大野市などで鉱泉水や温泉水の吸飲するのが観察されています。アオバトがナトリウムを含む水を吸飲するのは、繁殖期に水分の多い木の実(液果)を主食としていることによることを加藤(2019)が報告しています。あわせて、卵殻形成や骨格構造の維持に必要なカルシウムを液果から十分に摂取できないからという説も存在しているが生理的に実証はされていないことも指摘しています。あわせて、アオバトが時折海水に尾を浸す行動はどんな意味があるのかといった点を指摘しており、その行動をよく観察してみる必要もあります。(引用)大坂英樹、金子典芳、斎藤常實、田端裕.2011.アオバト 海水の吸飲行動.Bird Research News Vol.8 No.9.p4-5.加藤ゆき.2019.アオバトのふしぎ.自然科学のとびら.第2巻.第2号.p10-11.神奈川県立生命の星・地球博物館.(写真)2017年7月22日、2018年7月3日いずれも大磯照ヶ崎で撮影
2023.05.05
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オオヨシキリの飛来がどうかと思い、手賀沼沿岸の遊歩道を探索しました。9時から11時の間で囀りを聞いたのは2個体のみでした。オオヨシキリについては、西海(2007)が「早く渡来したオスはアシ原の植生密度が高い場所を好んでアシの穂先やヤナギなどの高所で盛んにさえずってなわばりを確保する。最初のメス(第一雌)がなわばり内に入るとオスはさえずりをやめ、メイトガードを行なう。第一雌が産卵を始めるころ(初卵日の前後3日間)にメイトガードをやめて再度さえずり始め第二雌を誘引する」と述べており、囀りが活発になるのは複数回あることを示唆しています。ところが、大山(1992)が1991年5月から7月の行った囀っていた個体数と囀り個体数と姿のみを確認した個体数に関する調査結果では、手賀沼では囀りのピークは6月11日の1回だったと報告しています。これに対して長野県での観察記録では囀りのピークは5月中旬で、手賀沼の場合は一ヶ月遅れているとの結果だったと記しています。その要因については、つがい形成時期にばらつきがあるとしていますが、限られた葦原しかない手賀沼沿岸では第ニ雌が第一雌の巣から離れた場所に巣をつくりずらくそうしたことも要因のひとつではないかと私は考えています。(引用)大山紀子.1992.オオヨシキリのさえずり個体数の季節変化.我孫子市鳥の博物館研究報告.第1巻.p5-7.西海功.2007.オオヨシキリ.Bird Research News Vol.4 No.8.p4-5.(写真)私のライブラリーものを使用2022年5月20日、同年5月28日、同年7月7日いずれも手賀沼で撮影
2023.05.02
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今月21日に過去の猛禽ツミが営巣・子育てをした緑地の一角に針金ハンガーを利用したカラスの巣を見つけました。ツミが針金ハンガーを巣材として利用しているのは目撃したことがありませんが、そういえば、カラスはよく利用するのを見かけます。和田(2014)は1997年4月から1999年1月にかけて大阪府を中心としたエリアでカラスの巣材を調査した結果を報告しています。それによると、調査した194巣のうち約三分の一に針金ハンガーが使われていたと述べています。しかも、都心である大阪市が周辺部より針金ハンガーが使われ、巣の周囲(約500m)の緑被率が低いほど針金ハンガーをよく利用していることが判明したと述べています。巣材の樹木の枝と針金ハンガーが入手しやすいからと指摘しています。ツミが巣材にハンガーを利用しているのを目撃したことはありませんが、平野(2000)が栃木県宇都宮市の住宅地で1999年の繁殖期に巣材にハンガーを利用した1つがいのツミを観察した内容を報告していますから、目撃した巣がカラスのものか、ツミのものか注目しています。(引用)平野敏明.2000.八ンガーを巣材に使用したツミ.Strix第1巻.p137-139.日本野鳥の会.和田 岳.2014.カラスと針金ハンガー.むくどり通信.第230号.p15.日本野鳥の会大阪支部報.(写真)1枚目2023年4月21日柏市内、2枚目2023年4月23日柏市内、3枚目2023年4月19日撮影
2023.04.30
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今週、手賀沼沿岸にコムクドリの姿を観察したとニュースをもらいました。近年、4月中旬から下旬に桜の花をついばんでいるのが観察されています。観察していないので断定的なことは申し上げられませんが、花ごと食いちぎり、花のつけ根に入っている蜜を吸っているのでないかと思われます。コムクドリは、ボルネオやフィリピンで越冬し、北海道や東北北部で繁殖することが知られています。手賀沼では越冬した個体が北海道・東北にむかう途中に立ち寄ったものと思われます。拙宅の亭主に尋ねてみると、春は遭遇していないものの、1977年7月当時柏市中十余二のでコムクドリを観察し、その後1994年9月19日、24日に柏市新柏周辺地域で若鳥を観察している由。ずっと以前からムクドリなどと混群となり移動しているのではないかと思われます。小池(2007)は、コムクドリの分布・生態などの知見を整理し報告、日本の本州中部から北海道,南千島,サハリン南部で繁殖すると記しています。あわせて、1978年から2005年の間新潟県新潟市で調査した結果を報告しています。それよると、新潟市では4月上旬から5月上旬にかけて渡来し、営巣・産卵・子育てをしていることを述べています。(引用)小池重人.2007.コムクドリ.Bird Research News Vol.4 No.9.p4-5.(写真)私のライブラリーから2013年7月7日東京都江戸川区葛西で撮影
2023.04.15
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チュウシャクシギは干潟では甲殻類(カニ類)を主に捕食しているのを観察します。これに対して水田地帯に降り立ち採食しているチュウシャクシギが何を捕食しているかに着目した観察報告が渡辺(2006)によってされています。渡辺(2006)は、千葉県旭市周辺で観察した結果、チュウシャクシギは嘴の使用方法として首振り型(*)とつつき型(*)があり首振り型は圃場整備前の水田で観察され、つつき型は圃場整備後の水田で観察されたと報告しています。首振り型は嘴で触れる範囲でアメリカザリガニを探索している際に見られ、つつき型は視覚で食物として判断できたものをつついていたと述べています。その使い分けでは、アメリカザリガニを一定量捕食できる場合は首振り型で採食し、あまり期待できない場合には視覚で探すつつき型を用いていたと考えられると記しています。アメリカザリガニは1927年に食用ガエルの餌として持ち込まれた外来種で、水田畦畔の掘削や稲の根の食害をおこし、タガメや両生類等を捕食してしくまうので水田の生態系を破壊してしまうとされていますから、チュウシャクシギが採食してくれるのは水田を維持する上で欠かせないとも言えると思います。フィールドでどのように採食していたのか記録しておきたいものです。(*)首振り型=首を左右にふり、嘴の先端でふれる範囲の水底の表面を何回かつつく方法(*)つつき型=嘴の先端で泥の表面にふれ1回もしくは2・3回つついて餌をつまみとる方法(引用)渡辺朝一.2006.春期の関東平野水田におけるチュウシャクシギの採食行動.我孫子市鳥の博物館研究報告第14巻.p65-69.(写真)私のライブラリーより2021年5月9日柏市、2020年5月2日柏市、2016年5月14日印西市で撮影のもの
2023.04.12
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夏の小鳥が本格的に飛来し囀りを聞く機会が多くなります。囀りは「なわばり防衛」や「配偶者の獲得」「つがい相手の繁殖のための生理状態の促進」といった意味があるとされています。手井(2017は)、石川県金沢市の海岸保安林に生息するホオジロを対象として,終日観察による年間の囀り頻度を調べた結果を報告しています。ホオジロの独身期とつがいとなった時期で囀りの頻度がどのように変化しているか、雄の囀りと雌の行動の関係といった興味深い内容となっています。その一部を紹介します。(よく囀る時期について)1 月から 2 月上旬の独身期には囀りは非常に少なかった。しかし、2 月中旬から 1,000 回を超えることもあり、5月から 8月中旬には4,000 回(独身期の最大 4,822 回)を超えることも 6 日間あったと述べています。つがい期の3月から 5月上旬に1,000 回を超える日は 2 日間あり、500 回以下も 20 日間と多かった。しかし、つがい期の 6 月から 8月上旬は,3 日間いずれも 3,400 回以上を記録した(つがい期の最大 3,708 回)と記しています。8 月下旬から12月の34日間では、0–10 回が 5日間、11–100 回が10日間、101–500 回が16 日間あったと報告しています。上記の結果を見ると、独身期に年間で最も多い囀りの頻度が記録されたことがわかり、これに続いてつがい期、8月以降で囀りの頻度が減少したことがわかります。(雄の囀りと雌の行動)造巣時に雌が巣に入った時や雌が巣材を集めている時に雄が囀ることがあり、雌の巣材運搬中に雄が小声で囀ることもあったことを報告しています。また、抱卵期には雌が巣から出ると直ちに雌の近くに行き、その後に囀ることがあったことを述べています。また、抱卵期に雄が地鳴きを連続で発声している時には,巣の外にいた雌は巣に近づかないが、雄が弱々しく囀ると間もなく雌は巣に戻り、雌が巣に戻り抱卵を続けると,雄はただちに大声で囀りを始めたとも記しています。このことは、雄の囀りが雌の行動に影響を与えていることを意味しているものです。(引用)手井修三.2017.ホオジロの終日観察における囀り頻度の季節変化:周年調査で見られた傾向.日本鳥学会誌.第67巻.第1号.p117-126.(写真)私のライブラリーから2022年5月20日、2022年8月11日、2022年4月8日いずれも手賀沼沿岸で撮影
2023.04.07
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開けた空間の地上に造巣するのがコチドリです。意外なところでコチドリを見かけたら、そこで繁殖している可能性があります。笠原(2020)は、コチドリの生態、生活史、行動などの知見を整理し報告しています。この中で、ディスプレーとつがい形成について、つぎのように報告しています。「雄は,ピュオー,ピュオーと鳴きながら、体を左右に傾けて上空を旋回するディスプレイフライトをする。地上では体を水平にして互いに並走し、相手に突進するほか、体を起こして胸を張り、対峙することもある。つがい形成や巣場所決めでは、雄が胸を地上に押しつけて脚で砂を後ろに蹴飛ばし、体を回転させながら窪みを造り,ピッピッピ・・・と雌を呼ぶ。雌が興味を示さない場合は,場所を変えながら繰り返す。雌が近くに来ると、窪みのふちに立って体を水平位して尾羽を扇のように窪みの上に開き、雌はその尾羽の傘の下に入って窪みに座るか,掘るしぐさをする。交尾は巣の近くで見られることが多く、水平位を維持した雌の後ろから胸を張った雄が小刻みに足踏みをするようにしながらゆっくりと近づいた後に行われる」アップした画像は、柏市のオフィスの近くにあった砂礫地で造巣、産卵、子育てをしたコチドリを観察・記録した際のものです。一枚目から二枚目は、雄が尾羽を扇状にして開き、雌がその下に移動してきてその後着座する前の光景です。三枚目から五枚目は、ディスプレーを目撃した後、翼をひろげて地面に座り込んで時の光景です。(引用)笠原里恵.2020コチドリ ディスプレイとつがい形成.Bird Research News Vol.17 No.4.p3-4.(写真)私のライブラリーの中から、2009年5月31日柏市内、2014年5月31日柏市内で撮影
2023.04.04
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