うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2013.05.13
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鉄道唱歌 東海道篇 下

31 見よや徳川家康の
    おこりし土地の岡崎を
矢矧 やはぎ の橋に残れるは
    藤吉郎のものがたり

32 鳴海しぼりの産地なる
    鳴海に近き大高を
   下りておよそ一里半
    ゆけば昔の桶狭間

33 めぐみ熱田の やしろは
    三種の神器の一つなる
   その草薙の神つるぎ
    あおげや同胞四千万

34 名だかき金の しゃちほこ
    名古屋の城の光なり
   地震のはなしまだ消えぬ
    岐阜の 鵜飼 うかい も見てゆかん

35 父やしないし養老の
    滝は今なお大垣を
   三里へだてて流れたり
    孝子の名誉ともろともに

36 天下の旗は徳川に
    帰せしいくさの関が原
   草むす かばね いまもなお
    吹くか 胆吹 いぶき の山おろし

37 山はうしろに立ち去りて
    前に きた るは琵琶の海
   ほとりに沿いし米原は
北陸道 ほくろくどう の分岐線

38 彦根に立てる井伊の城
    草津にひさぐ うば が餅
   かわる名所も名物も
    旅の 徒然 とぜん のうさはらし

39 いよいよ近く馴れくるは
    近江の海の波のいろ
   その八景も居ながらに
    見てゆく旅の楽しさよ

40 瀬田の長橋横に見て
    ゆけば石山観世音
   紫式部が筆のあと
    のこすはここよ月の夜に

41 粟津の松にこととえば
    答えがおなる風の声
   朝日将軍義仲の
    ほろびし深田は いず かたぞ

42 比良の高嶺は雪ならで
    花なす雲にかくれたり
矢走 やばせ にいそぐ舟の帆も
    みえてにぎおう波の上

43 堅田におつる雁がねの
    たえまに響く 三井 みい の鐘
   夕ぐれさむき唐崎の
    松には雨のかかるらん

44 むかしながらの山ざくら
    におうところや志賀の里
   都のあとは知らねども
    逢坂山はそのままに

45 大石良雄が山科の
    その 隠家 かくれが はあともなし
   赤き鳥居の神さびて
    立つは伏見の稲荷山

46 東寺の塔を左にて
    とまれば 七条 しちじょう ステーション
   京都々々と呼びたつる
    駅夫のこえも勇ましや

47 ここは桓武のみかどより
    千有余年の都の地
   今も雲井の空たかく
    あおぐ 清涼紫宸殿 せいりょうししんでん

48 東に立てる東山
    西に そび ゆる嵐山
   かれとこれとの麓ゆく
    水は加茂川桂川

49 祇園 清水 きよみず 知恩院
    吉田 黒谷 くろだに 真如堂
   ながれも清き水上に
    君がよまもる加茂の宮

50 夏は 納涼 すずみ の四条橋
    冬は雪見の銀閣寺
   桜は春の嵯峨 御室 おむろ
紅葉 もみじ は秋の 高雄山 たかおやま

51 琵琶湖を引きて通したる
    疏水の工事は南禅寺
   岩切り抜きて舟をやる
    智識の進歩もみられたり

52 神社仏閣山水の
ほか に京都の物産は
   西陣織の 綾錦 あやにしき
    友禅染の花もみじ

53 扇おしろい京都 べに
    また加茂川の さぎ しらず
   みやげを げていざ立たん
    あとに名残は残れども

54 山崎おりて淀川を
    わたる向うは男山
行幸 ぎょうこう ありし先帝の
    かしこきあとぞ忍ばるる

55 淀の川舟さおさして
    くだりし旅はむかしにて
   またたくひまに今はゆく
    煙たえせぬ くが の道

56 おくり迎うる程もなく
    茨木 吹田 すいた うちすぎて
   はや大阪につきにけり
    梅田は我をむかえたり

57 三府の いつ くらい して
    商業繁華の大阪市
豊太閤 ほうたいこう のきずきたる
    城に師団はおかれたり

58 ここぞ昔の 難波 なにわ の津
    ここぞ 高津 こうづ の宮のあと
   安治川口に入る舟の
    煙は日夜たえまなし

59 鳥も かけ らぬ大空に
    かすむ五重の塔の影
   仏法最初の寺と聞く
    四天王寺はあれかとよ

60 大阪いでて右左
    菜種ならざる はた もなし
神崎川 かんざきがわ のながれのみ
浅黄 あさぎ にゆくぞ美しき

62 神崎よりはのりかえて
    ゆあみにのぼる有馬山
   池田伊丹と名にききし
    酒の産地もとおるなり

63 神戸は五港の一つにて
    あつまる汽船のかずかずは
   海の西より東より
    瀬戸内がよいも交じりたり

64 磯にはながめ晴れわたる
    和田のみさきを控えつつ
   山には絶えず 布引 ぬのびき
    滝見に人ものぼりゆく

64  七度 ななたび うまれて君が代を
    まもるといいし 楠公 なんこう
   いしぶみ高き 湊川 みなとがわ
    ながれて世々の人ぞ知る

65 おもえば夢か時のまに
    五十三次はしりきて
   神戸のやどに身をおくも
    人に翼の汽車の恩

66 明けなば更に乗りかえて
    山陽道を進ままし
   天気はあすも のぞみ あり
    柳にかすむ月の影



作曲:多梅稚(おおのうめわか)
明治33年(1900)5月10日
「地理教育 鐵道唱歌」として発表。

* 原文は旧仮名づかい、旧字体。



200px-PD-icon_svg.jpg creative commons.jpg   ウィキメディア・コモンズ  新橋ステーション





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最終更新日  2013.05.21 11:19:02
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