うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2022.11.02
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カテゴリ: 百人一首



源兼昌(みなもとのかねまさ)


淡路島かよふ千鳥の鳴く声に
     いく夜寝覚めぬ須磨の 関守 せきもり



金葉和歌集 270

淡路島を行き来する千鳥の泣く声に
幾夜目覚めてしまっただろう
須磨の関守は。


紫式部『源氏物語・須磨』で光源氏が詠む歌「友千鳥もろ声に鳴くあかつきはひとり寝覚の床も頼もし(千鳥が仲間同士で声を合わせて鳴く声に、朝早く独り目覚めてしまった寝床の心細さが慰められて頼もしい)」を踏まえる。光源氏は朧月夜とのあやまちが露見し、自らひとり須磨に隠遁した。

淡路:阿波国(あわのくに、現・徳島県)へ行く路の意味。

淡路島かよふ:「淡路島から通ってくる」「淡路島に通う」「淡路島(と須磨)を行き来する」の3説があり、厳密には定めがたい。いずれにせよ、大意にさほど大きな影響はない。

(いく夜寝覚め)ぬ:古くから文法的に議論がある箇所。「(いく夜寝覚め)ぬる」(完了の助動詞「ぬ」の連体形)のいわば省略(詩的許容)として終止形としたとも思われるが、ここでいったん切れる(四句切れ)と見ることも出来なくはないと思われる。同じような問題は現代短歌でもしばしば起こる。
ただ、個人的には、文法的な疑問(引っかかり)を抱かせることは和歌・短歌表現ではあまり好ましくないと思う。字余り破調でも「~ぬる」の方が良かったという気がする。
なお、「いく(夜)」は疑問の意味を含むので係り結びを構成することもあるが、「か」「や」などの文法的に明確な疑問の係助詞と異なり、必ずしも(係り結びとならず)文末は連体形でなく終止形となる例も少なくない。

須磨(の関守):摂津国、現・兵庫県神戸市須磨区付近。当時は寂寥たる辺境の流謫地と見られていた。平安初期頃までは関所が置かれていた。清少納言『枕草子』にも見える。





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最終更新日  2022.11.02 12:18:22
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