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2006.02.18
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「結局は大路社長の命が本当の目的かどうかわからない。でもこれだけは言える。」
赤石は強い意志を込めて話す。
「誘拐は俺じゃなくても良かったってことだ。誰でも良かったんだ。俺達は利用されただけだ。」

なんてこった。
赤石を信用しているわけではないが、聞けば聞くほど、赤石の言っていることが本当に思えてくる。
テツは頭がグラグラ揺れている錯覚に襲われた。

赤石は続ける。
全てのを吐き出すように。
「身代金10億っていうのも、そうだが、それを3時間で用意しろなんて無理に決まっている。」


だから、自分の口で話していても言葉に自信が持てなかった。

「あんたが指示した、廃墟の方面は、事務所から1時間はかかるんだぞ!実質2時間でどうやって用意できるんだ。」

テツは依頼人と話した時のことを思い出す。
その時感じた、違和感。

(あの目撃者殺人は、偶然だ。)
(君達が林に突っ込んだのを見たのだろうが)
(林に突っ込んだのを見た)
(林に突っ込んだ)

テツは、ヒロの方へ振り返った。
ヒロは人形のようにその場に立っていた。
冷たい目。


林に突っ込んだことなど、依頼人には報告していない。
殺された三波晴之が、目撃したことは、ニュースなどで予想がつく。
だが、林に突っ込んで事故したことなどは、絶対に知るはずない情報だ。
それを、なぜ、依頼人が、あの段階で、知っていたんだ。

簡単なことだ。

口封じに間違いなく殺したのだ。

誰が・・・・?
それは・・ヒロに違いない。
事故をして、目撃されたのを、見ていたヒロは、依頼人に報告。
指示通りに口封じをして、この小屋に現われる。
何食わぬ顔をして、俺達に指示を伝えている。
・・・・と同時に、監視もしている。

いつか、依頼人の本性に気づき、逃げ出すかもしれないことに備えて。

「冷静に、考えれば、あんた達ならわかってたことだ。それが、どうしでも金が欲しいという焦りで、判断を鈍らせたんだ。」
赤石が生意気にも分析を始めた。
「仕方ないさ、サトシなんかは姉ちゃんを助けたいがためだろ?必死になるのは無理もない。」
サトシが叫んでいたのを、聞き覚えていたのか、なかなか抜け目ない奴だ。

「うっうるせぇ!俺達はもう元に戻れないんだよ!」
同情されたと思ったのか、サトシが怒鳴った。

間髪入れずに赤石が言葉を被せた。
「だから、俺があんた達の必要な金を出してやる。逃げよう、これで解決だ。」

「そんな保証はどこにある?」
イクオが怒りを抑えて声を出した。
利用されたかもしれない不安と、サトシの言う通り、元に戻れない苛立ち。
一体何を信じて、何にすがればいいのか。

「・・・正直言ってさ、最初は、払う気なんて全然なかったよ。」

「なに!!」
サトシが赤石を睨んだ。
やはり、さっきの2人きりで何かあったのだ。

「でも今は違う。やったことは間違いだけど。身内を助けたいという目的は、悪いとは思わない。やり方が違っただけだろう?」

こんなクソガキに心揺さぶられる言葉が出ようとは思わなかった。
助けたい。
俺は、助けたいんだ。
愛する人を。

わかった・・・と言いかけた時。
鋭い視線が身体に刺さる。
立ち塞がるのは、その無言の大男、ヒロ。

確信した。
目撃者を殺したのは、こいつだ。
そして、依頼人は初めから大路の命が目的だったのか。
誰だろうと構わない。
大路と一緒についてきた奴が、依頼人だ。
ここから、逃げ出して、そいつの顔に1発くれてやりたい。

ヒロの姿を見たテツは一度踏み入れたリスクのある仕事、抜けるのも相当なリスクがあることを覚悟した。

つづく。

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最終更新日  2006.02.18 19:00:36
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