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2025.11.11
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カテゴリ: 報徳記を読む
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二宮翁夜話巻の3



仏に、「衆善奉行」(もろもろの善を行え)という。
しかしながらその「善」というものは、どのようなものかということは、確かでないから、人々は善をなすつもりで、そのなすところが皆違ってしまうのだ。
もともと善悪は一円である。
泥棒の仲間では、よく盗むものを善とし、人を害しても盗みさえすれば善とするであろう。
しかるに、世間の法では盗みを大悪とする、
その隔たりはこのようである。
天には善悪はない。
善悪は、人道にて立てたものである。
たとえば草木のようなものに、どうして善悪があろうか。
この人体があるから、米を善とし、田に生える草を悪とする、
これは食物になるのと、ならないとをもってするのだ。
天地がどうしてこの別があろうか。
田に生える草は、生えるのも早く茂るも早い。
天地生々の道に随うことが速かであるから、これを善草といってもおかしくあるまい。
米や麦のように、人力を借りて生ずるものは、天地生々の道に随うことが、大変隔たっているから悪草といってもおかしくあるまい。
そうであるのにただ食うことができるのと、食うことができないをもって、善悪を区別しているのは人体から出た癖道というべきであろう。
この理を知らなければならない。
上下貴賤はもちろん、貸す者と借りる者と、売る人と買う人と、また人を使う者、人に使われる者に引き当てて、よくよく思考してみよ。
世の中すべての事は皆同じだ。
彼に善であればこれに悪しく、これに悪しきは彼によし、
生を殺して喰う者はよいが、喰われるものには大変悪い。
しかしながら、既に人体があり、生物を食わなければ、生を全うすることができないことをどうしようか。
米や麦や野菜といっても、皆生物ではないか。
私はこの理を尽して
「見渡せば遠き近きは無かりけり己々が住処(すみど)にぞある」
と詠んだのだ。
しかしながら、これはその理をいったのみだ。
人は米食い虫である。
この米食虫の仲間であって立てた道は、衣食住になるべき物を、増殖するものを善とし、この三つの物を、損害するを悪と定めた。
人道でいうところの善悪は、これを法定規とするのである。
これに基いて、すべて人のために便利であるのを善とし、不便であるのを悪と立てたものであるから、天道とは別のものであることは論を待たない。
しかしながら、天道に違うのではない、天道に順いながら違うところがある道理を知らせたのみである。


二宮翁夜話巻の3

【38】翁曰く、
儒に、至善に止(とどま)るとあり、
仏に、衆善奉行(しゆぜんぶぎやう)と云へり。
然れども其の善と云ふ物、如何なる物ぞと云ふ事、慥(たしか)ならぬ故に、人々善を為す積りにて、其の為す処皆違へり。
夫れ元善悪は一円なり。
盗人(ぬすびと)仲間にては、能く盗むを善とし、人を害しても盗みさへすれば善とするなるべし。
然るに、世法は盗みを大悪とす、其の懸隔此の如し。
而して天に善悪あらず、善悪は、人道にて立たる物なり、
譬へば草木の如き、何ぞ善悪あらんや、
此の人体よりして、米を善とし、莠(はぐさ)を悪とす、食物になると、ならざるとを以てなり、天地何ぞ此の別ちあらん、
夫れ莠草(はぐさ)は、生(はえ)るも早く茂るも早し、
天地生々の道に随ふ事、速かなれば、是を善草と云ふも不可なかるべし、
米麦の如き、人力を借りて生ずる物は、天地生々の道に随ふ事、甚だ迂闊(うかつ)なれば、悪草と云ふも不可なかるべし、
然るに只食ふべきと、食ふ可からざるとを以て、善悪を分つは、人体より出たる、癖(へき)道にあらずして何ぞ、此の理を知らずばあるべからず、
夫れ上下貴賤は勿論、貸す者と借る者と、売る人と買ふ人と、又人を遣ふ者、人に遣はるゝ者に引き当て、能々思考すべし、
世の中万般の事皆同じ、彼に善なれば是に悪しく、是に悪きは彼によし、
生を殺して喰ふ者はよかるべけれど、喰はるゝ物には甚だ悪し、
然りといへ共、既に人体あり、生物を喰はざれば、生を遂ぐる事能はざるを如何せん、
米麦蔬菜(そさい)といへ共、皆生物にあらずや、
予此理を尽し
「見渡せば遠き近きは無かりけり己々が住処(すみど)にぞある」
と詠めるなり、
され共、是は其の理を云へるのみ、
夫れ人は米食ひ虫なり、此の米食虫の仲間にて、立てたる道は、衣食住になるべき物を、増殖するを善とし、此の三ッの物を、損害するを悪と定む、
人道にて云ふ処の善悪は、是を定規とする也、
此に基きて、諸般人の為に便利なるを善とし、不便利なるを悪と立てし物なれば、天道とは格別なる事論を待たず、然りといへども、天道に違ふにはあらず、天道に順ひつゝ違ふ処ある道理を知らしむるのみ。





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最終更新日  2025.11.11 23:20:41


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