おしゃれ手紙

2013.07.26
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テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: 父の麦わら帽子

そのひとつが布団の洗いはりだ。

夏になると掛け布団がいらなくなる。
当時、うちには布団カバーや毛布などがなかったので、一年の汚れを洗って落とす必要があった。

これを布団の 洗いはりと 言い、暑い間の仕事だった。

「手伝(てつどぅ)て」と母に言われると、私はすぐ、手伝った。

「布団のガワと綿を分けて」と母が言う。

ガワというのは、布団の生地だ。

そこで母は握りばさみを使って、縫い目を切り、私はそこから糸を抜いていった。

バラバラになった布団のガワと綿。

綿は、洗濯竿にかけ日光にこれでもかというほど当てる。

綿がふっくらするし、日光消毒というわけだ。

たらい ガワは、たらいに入れ、洗濯石鹸をつけて丁寧に洗う。

あらった布団のガワは、両端に針のついた40cmほどの細い竹棒でひっぱりながら干した。

こうすれば、皺がないのだ。
これを伸子張りというが、子どもの頃にはよく見なれた風景だった。
伸子張り写真


アイロンの無い時代には(この時代、アイロンはあっても、炭火を入れるもの)この方法しかなかった。

布が乾くと、それを布団に縫い直す。

母は裁縫は得意ではないから
「三針(みはり)一寸じゃ」と笑っていた。
今で言えば3センチ内に3針ということだが、そこまで荒くはなかった。
私も母と一緒に縫っていた。

長方形の布団の一辺だけは、縫わないでおいた。

布団の形に縫い直された布を表裏にして部屋の真ん中に置く。

そこに、たっぷりと日光を含んでフワフワになった布団綿を置く。

ここからが、布団の洗いはりの一番楽しい時だった。
布団の角の綿とガワをまとめて掴み、対角線状にクルクルと巻きこむ。
端まで行くと、母がクルリとまわして、綿を布団のガワ(布)の中に入れ、表と裏をひっくり返した。

これまでは、布団綿とガワだったものが一気に布団になるのだ。

そして、布団の縫い残した一片を縫えば、ふかふかした綿の入った清潔な掛け布団が出来あがった。

こうして母は、家族全部の布団を洗いはりした。

掛け布団が全部終わると、敷布団にと母は休むことなく続けた。
何日もかけてやっと全部の布団が縫い終わると、清潔で太陽のにおいのする布団に私は嬉しくてわくわくした。

掛け布団は寒くなるまで、押し入れに仕舞い、秋になると日光に当て使った。

今から50年以上前の夏、布団カバーがなくても、いつも太陽にあて風を通すので、布団は清潔だった。
そしてそれを保つために母は懸命に働いた。

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昔 ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。
★2013年7月26日 *父の麦わら帽子:目次 *
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Last updated  2013.07.26 20:07:14
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