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2024.09.06
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第20話

塗山璟(トザンケイ)は許嫁・防風意映(ボウフウイエイ)とは結婚しないと断言。
実は傷だらけの身体を見られてしまい、意映に毛嫌されていると教えた。
「ただの傷痕でしょう?うわべのことだわ、勘違いじゃない?」
しかし小夭(ショウヨウ)にとってたかが外見のことでも、世間では多くが称号や家柄に惹かれるものだという。
塗山璟はそんな小夭が一番だと笑顔を見せたが、かつての玟小六(ビンショウロク)が今や誰もが絶賛する皓翎(コウレイ)の第一王姫・皓翎玖瑤(コウレイキュウヨウ)となり、自分では釣り合わないとうつむいた。
「あなたはあなたでしょう?…そうだ、昨夜ある男に口づけするよう迫られたわ
 でも今はあなたにしたい」

塗山璟は驚きを隠せず、小夭から身を引いた。
「やめよう…時期尚早だ」
「はて?男は女子を見れた誰にでもすぐ口づけしたいのかと…」
「私は違う」
「じゃあ…いつできるの?」
「分からない」
塗山璟は以前のように″いつ″とは約束できなかった。
…時機を決めるのは君だ、私ではない、私が欲しいのは君の愛であり、哀れみではない…
その時、小夭を探しにきた西炎瑲玹(セイエンソウゲン)の声が聞こえて来た。



瑲玹が海岸で小夭を探している、小夭がひょっこり現れた。
「なぜ髪が乱れている?!…いつの間に塗山璟と一夜を共にする仲になった?!」

確かに小夭は髪の毛に海藻を絡ませ、衣は塩水でシワシワになっていた。
「あなたの可愛い妹妹に海へ突き落とされたのよ!」

その頃、阿念(アネン)は小夭が翌朝になっても戻らないと知って心配になっていた。
すると突然、侍女が止めるのも聞かず小夭が寝宮に乗り込んでくる。
小夭は鍵を閉めてから阿念を挑発、2人は取っ組み合いの大げんかになった。

「母親の身分が高い私を羨んでいるんだろう?
 だが母親が王姫大将軍だったばかりに国の大義を背負って出征、2度と帰らぬ人になった
 …なんなら母親を交換するか?」
「嫌よ!」
「…瑲玹と私は互いを唯一のよすがとしている、私を虐げるお前を許すと思うか?
 どちらに味方するか分かっているから嫉妬しているんだろう?!」
これまで唯一の王姫として愛されてきた阿念、確かに突然、小夭が現れ、自分の居場所を奪われてたのだから無理もない。
そこで小夭は姉妹として仲良くできなくても、互いに干渉しないことで折り合いをつけようと提案した。
「いいわ、関わらない」
阿念は小指を差し出し、小夭と指切りして平和協定を結んだ。



防風意映は旅先で塗山篌(トザンコウ)との密会を楽しんでいた。
すると偶然、塗山篌が隠し持っていた鴛鴦の刺繍入り手巾を発見する。
浮気がばれた塗山篌は一夜の遊びだったとなだめたが、意映は裏切られたと激高、出て行ってしまう。
その頃、小夭は塗山璟を訪ねていた。
彼が皓翎を離れたら次はいつ会えるか分からない。
しかし塗山璟は外出してしまったという。

瑲玹は赤水豊隆(セキスイホウリュウ)、辰栄馨悦(シンエイケイエツ)兄妹と塗山璟たちを誘って船遊びに出かけた。
すると豊隆は塗山篌までいることに困惑する。
「なぜあいつが?」
「″兄も一緒に″と言われたんだ」
豊隆は塗山璟がまだ兄弟の和解を諦めていないとため息を漏らしたが、瑲玹には何の話か分からなかった。

瀛州へ足を伸ばした小夭は露店で珊瑚の装飾がついた箱に目を止めた。
そこで店主に価を聞いたが、突然、どこかの令嬢が現れ、箱を横取りされてしまう。
小夭は傲慢な令嬢が辰栄馨悦と防風意映だと気づき、箱を譲って帰ることにした。
すると瑲玹が帷帽(イボウ)で顔を隠した小夭に気づく。
「小夭?…小夭!お前も散策していたのか?」
辰栄馨悦は自分が箱を奪った相手が瑲玹の従妹で第一王姫の小夭だと知った。
そこで仲直りの印に箱を返し、謝罪する。
「明日、帰るのでお土産にしたくて無礼な真似を…
 そうだ、今から皆で船遊びに行くの、一緒にどう?」

一行に小夭が加わり、送別の宴となった船遊びは和やかに始まった。
辰栄馨悦が小夭を兄の隣に座らせてくれたおかげで、赤水豊隆は美しい小夭に釘付け。
するとすっかり気を良くした豊隆が酔った勢いで海に飛び込んだ。
「魚を捕って来る!」
泳げない瑲玹は驚いたが、防風意映と仲違いしてむしゃくしゃしていた塗山篌まで飛び込んでしまう。
「私も捕って来る!」
それを見た意映は自分も泳ぎたいと口実をつけ、塗山篌を追った。
すっかり感化された馨悦は泳げないという瑲玹に自分が教えると迫り、道連れにしてしまう。

船に残ったのは小夭と塗山璟だけとなった。
思いがけず塗山璟と2人だけの時間を過ごせることになった小夭。
しかし塗山璟と防風意映が一緒にいる姿を見るのはやはり辛い。
「他の女に思われている男は好きにならない
 どんなにいい人でも自分が損をするなら見限る」
一方、塗山篌と防風意映は小島に上陸していた。
意映はまだ怒っていたが、塗山璟は2人の馴れ初めを思い出させ、機嫌を取る。
「許してくれ…意映、あの年の端午節のことを覚えているか?
 出会いはやはり船の上だったな」
「忘れるわけない、北方育ちの私は初めて水景を見て興奮のあまり川に飛び込んだわ」
「お前はまだ泳げず、霊力を使うことも忘れるほど慌てていたな」
そんな意映を助けたのが塗山篌だった。
「あの時から私の心を占めているのはお前だけだ、本当に好きなのはお前だけ」
塗山篌は手巾の主が弟の間者だったため利用したとごまかし、意映と仲直りした。

塗山璟は防風意映にも自分への情がないのは事実だと訴えた。
しかし残念なことに清水(セイスイ)鎮とは事情が異なり、自分も小夭も自由に動けなくなったという。
「君の父王に婚姻を申し入れる、猶予をくれないか、堂々と君の前に立ちたい!
 私以外を思わないで欲しい」
「あなたは本当にずる賢い、青梅酒を贈って来たりして何かと約束を思い出させる
 ″過分な望みは抱かない″と言いながら決して諦めようとしないのね」
「すまない、私にはもったいない人だと分かっているが、どうしても諦められない」

瑲玹たちは無事に船に戻り、身なりを整えた。
するとわざと時間をずらして塗山篌が最後に海から上がって来る。
その手には深海で仕留めた魚妖の魚丹があった。
魚丹は装身具や薬材、道具作りに用いられ、上質になると呼吸を助ける道具が作れるという。
色によって魚丹紅・魚丹紫・魚丹黄に分けられるが、多くはまだらのため、塗山璟が持っていた真っ赤な魚丹は貴重だった。

小夭と瑲玹は五神山に戻った。
船で2人きりになった小夭と塗山璟の様子が気になる瑲玹、しかし逆に小夭から辰栄馨悦に色目を使われていたとからかわれてしまう。
瑲玹は馨悦が色目を使うのは自分が西炎王の孫だと知ったからだと冷ややかだったが、自分も同類だと認めた。
「辰栄馨悦だからこそその気持ちを拒まなかった
 嫌いな者の恨みは買えず、好きな者には近づけない、辛いさ
 だが西炎を得るには避けられぬ代償だ」
「西炎山に戻れば骨肉の争いが待っている、覚悟はできているの?」
「来年の姑姑の命日に私は朝雲(チョウウン)峰に立つ」
「…もう長いこと母親の墓参りをしていないわ」
すると小夭が瑲玹に手を差し出した。
「瑲玹…私たち帰りましょう」
「はお、一緒に帰ろう」
瑲玹は小夭の手を握りしめた。



西炎王は小夭こと皓翎玖瑤(コウレイキュウヨウ)の墓参りを許した。
内心、面白くない五王・西炎徳岩(セイエントクガン)と七王・西炎禹陽(セイエンウヨウ)だったが、父王の手前、小夭を手厚くもてなすしかない。
すると叔父たちは小夭を温かく出迎えながら、一緒に帰ってきた瑲玹を完全に無視した。
「瑲玹は拝謁できぬ」
小夭は仕方なく自ら瑲玹の手を引いて城門に向かったが、門衛が立ちはだかった。

つづく



( ̄▽ ̄;)これどうするよ?…と思ったら西炎に帰国で俄然、やる気になる管理人w





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最終更新日  2024.09.06 22:23:54
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