“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2018.07.05
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テーマ: フレンチ(280)




店は角川ビルの裏側にあります。まだ、オープンしたばかりだからか、入り口に入ると少し手際の悪いレセプションで待たされます。セキュリティの関係か、全員が揃わないと、メインダイニングにはあげない模様。ブルガリの本店のようにはいかないですね。
私は早めに着き、トイレに行きたいので、しばし待たされ、ようやく9階のフロアへ。
トイレのあと、サロンでしばし待ち、学友が上がってきました。





 オープン前、私の野草仲間でお花のスペシャリスト袴田裕美さんがが招待され、お食事をしたことを後から聞きました。そこにはそうそうたるメンバーがおり、例えば、海藻研究所の新井章吾さん、能登で海の摘み草をしている長竹(幸子)さんご夫妻、山梨で摘み草をしている鶴岡舞子さんなど私は面識がないですが、高名なスペシャリストが集まったそうです。
家に帰ってから知って、そうだよな、そうでないとああならないよな、と思いました。

CH1 シトラス




沖縄県産のスナックパイナップル 四種類の柑橘(シトラス)の取り合わせです。柚子の花が添えられています。味わいは、昆布をローストして作った昆布オイルとシトラスの酸。
長年の友人で植物学者のフランソワ・クープランがブルターニュで海藻のワークショップを始めてどれくらいになるでしょうか。昆布はヨーロッパに独特な形で定着しましたね。


CH2 枝豆


私の庭に咲き乱れるロケッタ(ルッコラ)の花が添えられています。しっかりした豆感とルッコラの花の香り。
槍烏賊の出汁に山椒とラベージュ、レモンライムのアクセントです。

CH3 バナナパイ




上には沖縄のバラシマノリのガレット、真ん中に焼いた島バナナ下味噌風味のガレットの構造になっています。
カリカリのテクスチャと酸味、後味にジリジリした辛さがきます。


手はかなりオイリーです…


ペアリングのビールは、最初コクあるややフルーティで軽快でしたが、バナナパイと合わせると、味わいはずしっとしました。

CH4 赤いフルーツ




スイカと沖縄のブラジリアンチェリーとも言われるピタンガのお料理。
上には昆布で作った花、コリアンダーの花

酸味の後にドライトマトからきているのか塩っぱさがあります。出汁は乳酸発酵させた水に蜜蝋を溶かしているそうです。この店に酸の使い方に特徴があるそうです。


こちらにはロゼのワインを合わせます。

CH5 湯葉


続いては出来立ての湯葉です。


こちらは意外性のある詰め物の料理で、中にはナスタチウム、胡瓜の花、ラディッシュの花、茴香の花が綺麗に入っていいます。

柚子をふった豆乳マヨネーズのような味わいのソースで、胡麻のような風味と山山葵の辛さがあります。

CH6 舞茸




5日間冷蔵庫で熟成させて炭の上で水を土鍋に入れて2日間ローストした舞茸です。




入れた水は、まず、味噌ブレンドした水をポタポタ一日かけて落とした味噌ウォーターを作り、松の木を入れるそうです。

寺田本家の日本酒

CH7 丸茄子


丸茄子の上には胡桃とホースラディッシュを刻んだものがのっています。
南瓜の種のソースを添えています。
南瓜はゆっくりローストして、石臼でゆっくりとひいてペーストにするそうです。
おお、これは私の蕎麦屋で使えそうです。

CH8 蟹と豆腐


豆腐とズワイガニに、海藻バターのソースをかけたものです。
ブルターニュのボルディに言ったときに海藻バターが人気だと店員の女性にすすめられましたね。あのことを思い出しました。
豆の味がしっかりする甘さのある豆腐です。


蟹と豆腐にはエルバセットというカタルーニャのワインです。
ワカベオとシュナンブランというセパージュ。

CH9 海藻と雲丹


岩手の雲丹と能登の8種類のピクルスにした海藻です
スープは松の葉と山椒の葉を漬けてつくったそうです。海藻のピクルスと松の葉のニュアンスが海の情景を感じさせます。
白アスパラとミズの実のようなカシスの実が入っています。

CH10 えのきのステーキ


えのきの軸のステーキです。私が研修でよく使う『塚田農場』の名物ですね。まあ、『塚田農場』もどこかの店で探してきたのでしょうけど・・
出汁醤油で香ばしく焼いています。
上にはイタリア産黒トリュフ、下には卵黄のソースです。


あわせてオーストリアのシャルドネ

Ch11 ご飯と蜂の子


二つのアプローチの蜂の子のご飯です。
低温のバターで揚げたカリカリの蜂の子と出汁で炊いてたたいた蜂の子の二種類です。
浜茄子野生の薔薇、ナスタチウムの花びらが添えてあります。
最後に好みで出汁を煮詰めてバターで乳化させたソースをかけます。


ご飯のお供は、花のピクルスで、梅のピクルス、未熟のカシス、白い花のニセアカシヤ、ピンク桜、黄色フェンネルなどです。

デザートはラウンジに移動します・・


フーレーのコーヒー

CH12 トウヒとサルナシ


豆乳のアイス 下に猿梨 上にはトウヒ(エゾマツの変種)の新芽がたっぷりとのっています。
おお、フランソワのワークショップみたいですわ。

CH13 餅


餅の中に南瓜の種のアイス
上にはセップなどと黒麦麹

27名のシェフの50席2回転の店だそうです。
チームの店故、わかり安い高級食材というよりは、ローカル性ある珍しい食材を駆使して、レイバーコストを手間という形で吸収する経営方法ですね。会計は、ワインのペアリングをつけて、53,460円(税、サービス料10%込みで)でした。わかりやすい高級食材だけを見てしまうととてもコスパが悪く感じるかもしれませんが、経営的な観点から、スタジエのいない日本では妥当な価格かと思います。私は塾生には、人を一人増やしたら2%原価を減らすように言っていますが、その方程式はあてはませんね。コース29,000円のうち、10,000万円を人件費と考えて、19,000円の料理を出しているという感じですかね。
最初の料理を食べたときに、私の友人のフランソワ・クープランのワークショップの料理のようだな、と感じました。そう言う意味で関わった専門家の方の力をうまく引き出したと言えるでしょう。
外国人のフィルターを通して日本のテロワールが芸術的にユニークに表現されていると感じました。

フランス料理というのは枠組みと技法であり、どこに着眼点を置くかで、食べ手も作り手も評価が変わるものだと思います。認識のレベルが合致すれば好感を抱くわけです。その合致する人が多ければ高い評価になるわけです。
野草が好きな人や、未知に対して成長の機会ととらえられるレベルにあれば、その面白みは高いと思います。

INUA
東京都千代田区富士見2-13-12 KADOKAWA富士見ビル9F
電話 03-9983-7570





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Last updated  2018.07.08 07:52:59
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