全4件 (4件中 1-4件目)
1
頭が働き始めると、今までとは雰囲気が違っていることに気付く。外に出ても誰一人として見かけないが、どこかに気配だけで感じられる。近づくにつれてその気配は異様なものだと分かり、その現場が見えたときには、思わず身を潜めた。目の前には戦争が繰り広げられている。規模としては小さいものだが、命を懸けた攻防である。その様子に気を取られ、背後に迫る影に気付くことができなかった。「お前はどっちの味方をするんだ?」その声にビクッとして振り返るとこの前の流れ者がいた。「今んところ、どっちが勝つとも言えねぇな。そうなると・・・」流れ者が言うには、奇襲をかければそのまま勝てるという。そうすれば報酬がもらえるだろう、と。「お前だって、この町にはまだ用があるんだろ?どういう用かは知らねぇが」「わかった。この町のもんにはまだ聞いておきたいことがある」「よし。俺はリグラー、分け前は半分な」「俺はビルク。そうと決まれば早く行こう、相手は軍隊ぽいしな」作戦を確認してリグラーが先に出てから、ビルクも移動を始める。戦況は拮抗しているように見えていたが、少しずつ町側が押され始めている。(今ならまだ間に合うか。いくぞ)屋根の上から降りかかる。敵側は乱れて奇襲が成功する。(ここからリグラーのほうへ斬り進む)という思いとは裏腹に現実はうまくはいかない。「伏兵に構うな!前に進めっ」という指示が飛び、人の流れが変わる。(くそっ。もしかして戦況が悪化しているのか?)確認はできないが、やることはひとつしかない。相手にする人数が減ったことで、着実に前に進めるようにはなった。「いいかげん、くたばれっ」と蹴っ飛ばされる。起き上がることさえ苦痛に感じるようになっている。そこへ、「ほー、まだ生きてんのか。意外にしぶてぇなぁ」「お前こそ。来てくれたんだな、たすかった・・・」リグラーの姿がそこにはあった。逆光の中、手を差し伸べている影だけが見える。ビルクは左手をついて起き上がる。「なるほど、だまされてたってわけか。・・・わらえる」ビルクの剣先に血が垂れる。「笑えねぇよ。気付くのは死んでからっていうのが、おもしれぇのに」
2017/08/27
コメント(0)
レイト一行は予定通りの日程を終え、フューリッドへと帰国した。国民投票は予想通り、代理政権を肯定する結果で終わっていた。「やはりこうなりましたか。致し方ないことではありますが・・・」「今は我慢するしかない。どうなるかはわからないが、5年後に備える」それから2年が経ち、とある場所にて。ひとりの男が北風荒ぶ町で一軒の飲食店に入っていく。「見たことのない顔だな。こんな辺鄙なところになんか用があるのか?」常連らしき客の一人に話しかけられ、「ちょっと人探しを・・・」と答える。「人探し、ねぇ。それはまたご苦労なことだ」「まぁな」と返した後で「ここがだめならもう諦めようかとも思ってる」「なんだ?資金が足りなくなったのか?」「実は、もう探し始めて2年になるからな。それに、依頼者も死んじまったし・・・」「そんなに探してるのか?依頼者も亡くなったんならもういいんじゃねぇか?他人事だけど。 んなら、ひとつ協力してやるか。報酬次第だが」そう言われて「アロギラ」という名前を教える。だが、相手は無反応だ。「聞き覚えがあったらこんな苦労しねぇわな」男は店を出て見知らぬ町を散策し始める。荒れた大地の向こうには国境線に沿って造られた壁が並んでいる。そして、過去を思い出した。「お前には人探しを頼みたい。行き先はわからないが、北の方にいる可能性が高い」そう頼まれ、一緒に渡されたのは、捜索資金と何かの鍵だった。「この鍵を見せれば、相手はわかってくれる。どんなにかかっても構わない。託したぞ」結局はこれが最後の言葉になってしまった。資金の方はまだ残って入るものの、探す場所は少しずつ減ってきている。(帰って墓前に報告する分も残しておかねぇとな・・・)そのとき、向こうから来る人とすれ違う。「すいませんが、この町の人?」と聞かれ、「いや」と返すと、「そんじゃぁ、仲間?俺、よそから流れてきたんだけど、ここもヤバそうだなぁ」それから「なんか仕事ねぇかなぁ」とぶつぶつ言いながら歩いていく。男は数日、訪ね歩いてみたものの、探し人を見つけ出すことはできなかった。だが、数回反応が違った。「ん~。どこかで聞いたような気もするが・・・。聞き違いだったか?」曖昧ではあるが、手ごたえを感じ始めていた。久しぶりに感じた興奮で、翌日起きたときには陽が高く昇っていた。
2017/08/20
コメント(0)
翌朝、レイトたちはゼリクトアに向け出発する。三日かけて拠点となる小城を経由しながら、ゆっくりと進んでいく。レイトは王の間に通されると、改めて感謝の口上を述べ、頭を下げた。「いえいえ、お父上には大変お世話になりました。 我々にできることであれば、何なりとお申し付けください」そう言うゼリクトア王にレイトは重々しく口を開いた。「早速で申し訳ありませんが、お願いしたきことが・・・」ゼリクトア王はわかり申した。と返答、他の者たちには下がるよう指示する。それを受けてレイトも付き添ってきている者たちに出ていくように促した。「では、我が国・フューリッドについてどのように思われますでしょうか?」「どのようにとは、何とも曖昧な表現ですな。弟殿を筆頭によく支えておられると思いますが」「どうもあの叔父上は国を乗っ取る腹積もりではないかと・・・」「乗っ取りですか。何とも物騒ですな・・・。そのような証拠がおありで?」「確かな証拠があるわけではありません。ですが、貧しき者たちはずっと捨て置かれ続けております。 これは、父王の遺志に反しているのではないかと」「確かにお父上のときとはやり方が変わってきているようだが・・・」話が続いている最中で扉を叩く者が現れる。「火急、お知らせしたきことが」火急の用とは、フューリッドで起きていることだった。「フューリッドで国民投票だと!?一体どういうことなんだ?」その内容は代理政権を務めたこの10年についての信を問う、というもの。「投票は7日後!?帰国の前日に行われるというのか・・・」もちろん、レイト襲撃から襲撃犯アジト制圧、そして今回の懇親会開催までも判断材料として加味してほしいと謳ってはいるが・・・。「となると、ほぼ間違いなく肯定されるであろう、ということか」レイトの説明にゼリクトア王は理解を示す。「大変申し訳ありませんが、お願いについては一旦持ち帰らせてください」「では、またそのときに。これからの予定はいかがなされる?」レイトはこのあとは予定通りでお願いいたします、と一礼して退室する。王の間を出れば、皆心配そうな顔で待ち構えている。「そっちでの話はどうなった?」と聞くと、「よりよい同盟関係を望む。と」レイト一行は一旦控室に入り、休憩がてら話を進める。「では、話自体することを取りやめた。ということですか」「ゼリクトア王にも迷惑をかけることになる案件だ。 こちら側がしっかりせねば、了承も得られないだろうしな」「これからは予定通り、ここの文化を学んでいく」
2017/08/13
コメント(0)
「しかし、なんとも手厳しいですな」「任務とあれば手を抜くことなど許されません。では、今日はこれにて・・・」ディエイズは一礼して退室する。「いきなり親衛隊長という話が出てきましたので、正直焦りましたが・・・。 あの者は中立にいるようですな」「わからねぇぞ。まんまと騙されている、という可能性もある。 それでも、こちら側に引き寄せるぐらいでなければ、この状況は変えられねぇ」レイトの言葉にウェントソンも頷いた。それから数日後、懇親会に招待するため、同盟国・ゼリクトアから護衛団が迎えに来る。「この度ははるばるよくおいでくださりました」「とんでもない。過去の礼節に倣い、お迎えに参らせていただいただけのこと。 それに、あの事件があったにもかかわらず、予定通り行うと伺い、 その想いに応えられるよう万全をもって護らせていただきます」「なんともありがたいお言葉。ですが、本来は昨年執り行われる予定であったものを、 こちら側の都合により遅らせていただいた上、 今回もまたとなれば、何とも申し訳が立ちません」「それは致し方のないことです。幼くして父王様を亡くされたのですから。 準備が整うまで我々はお待ちしようと決めておりましたので」「お気遣い感謝いたします。今宵はささやかではありますが、会席をご用意させていただきました」護衛団は一夜、この城にて過ごし、翌朝レイトたちを自国へ伴っていく。その陰でヨーディは一人、課題に向き合っている。人と会話したのは今朝のことだ。相手はウェントソンである。「お前も食事会ぐらいは参加するか?」「いや、遠慮しておく。それよりやらなきゃならないことがあるから」「そうか。なら、明日の見送りの方はどうする?」「ついていくのが役目のはずなのに、その力量が足りてない・・・。 そんな奴に見送られてもレイトは喜ばない、と思う」「お前の気持ちはよくわかった。レイト様にもそう伝えよう」ヨーディはただレイトの安否が気がかりだった。「その点は抜かりなく準備している。向こうの護衛団も来ているし、 前回のようなことは起こさせぬ。もちろん、帰り道もな」最後に「しかと励めよ。留守を頼む」と残して出ていった。(あれ?何日後に帰ってくるんだっけ?)
2017/08/06
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1


