2004年01月19日
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カテゴリ: 食生活
夕方、制作プロダクションのオーナーであるI さんと、ショッピングセンターのWeb販促について打ち合わせをした後、営業担当のK先輩ともども食事に招待される。向かったのは、心斎橋にある明治14年創業という「すき焼き」専門店。外観からしていかにも老舗、という雰囲気の店構えで良い感じ。 昨年の日記

暖簾をくぐって中に入ると玄関から奥へと続く土間の左右両サイドに個室がいくつもあり、そのうちの一室に通される。そこは床の間のある四畳半ほどのシブい和室の小部屋で、地元の土建屋とお役人なんかが「今度の公共工事の入札は、なんとかウチでよろしゅう頼みますわセンセイ」「わかってまんがな小池はん、その代わりあっちの方はあんじょうアレしといてや、ぐははは」みたいな裏取引に使いそうな感じの部屋である。直前で合流したデザイナーのFさんも加わり、やや照明を落とした和室に4人で瓶ビールを注いでいると、なんとなくそんな感じで、不思議と皆、腹黒そうな表情に見えてくる。

和装の50代半ばと思しき仲居さんが具材一式を持って部屋にやって来た。さっそく、厚みのある完璧な霜降りの高級和牛ロースを鉄鍋で焼き始める。割り下を使わず、砂糖と醤油だけを溶きながら具材に絡めていく関西風の焼き方で仲居さんはせっせと肉を焼き、「ハイ、ドウゾ!」の合図で早速全員が箸を伸ばす。むむむ、これはうまい。なんというか、これはもう肉なのか何なのか。牛さんに、心の中ですまぬすまぬと言いながら口に中に入れた瞬間に、噛むというよりも舌の上でトロケテいく感じ、とでも言おうか。もうみんな馬鹿みたいに「ほほう」とか「うまいうまい」とか「あぁぁー」とか会話にならない。

仲居さんは非常に仕事熱心で、次から次へと鍋の進行管理をしながら「ハイ、今です!」「ハイ、焼けてます!」「ハイ、ビールおかわりどうですか!」と全面的にハイハイ型の厳しい指示を飛ばし続け、我々に休むスキを与えない。
一通り鍋の中身を食べ終わり、仲居さんも姿を消したところで我々もようやくくつろぎ、アレコレ談笑をしていると、ふすまがササーっと開いて今度はおひつを抱えた仲居さん、再び登場。「ハイ、ごはんどうですか!」「おかわりいいですか!」と攻めてくる。


さすがに我々も満腹になり「本当にもういいですよ、後は勝手にやりますから」と言うと、仲居さんは突然ちょっと悲しそうな表情で部屋の隅っこに行き、下を向いたまま黙って座っている。食事も終わった狭い部屋に仲居さんがじっと一緒にいるのもなんとなく気まずい感じがしていたところ、陽気なK先輩が「ほら、仲居さんもトークの仲間に入りましょーよ」と声をかけると、仲居さんは声を出さずに少し笑った。が、よく見ると眼だけは全然笑っていなかったのを、ワシは見逃さなかった。
なんだか少し怖くなり、背筋が寒くなった。

翌日、どうしても気になってもう一度昨夜の店の前まで行ってみると、驚いたことにすき焼き屋なんかどこにもなく、そこには荒れ果てた墓地が広がっていて・・・なんてオチはないです。






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最終更新日  2005年08月25日 18時01分00秒
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