《櫻井ジャーナル》

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

サイド自由欄

寄付/カンパのお願い

巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2013.02.10
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 尖閣諸島/釣魚台群島の領有権問題は存在しないと日本政府は主張、中国や台湾の政府を「相手にせず」という姿勢だが、アメリカ政府は中立の立場をとっている。日本に組するとは言っていない。

 かつて、アメリカ政府のこうした姿勢が戦争を引き起こしたこともあった。1990年8月2日のイラク軍によるクウェートへの軍事侵攻だ。

 1990年7月24日にアメリカ国務省のスポークスパーソンは、アメリカがクウェートを守る取り決めを結んでいないと表明、翌25日にイラクのサダム・フセインはアメリカの エイプリル・グラスピー大使と会 談している。その際にイラク側はアメリカに友好的な姿勢を表明し、米大使は「アラブの問題」には中立だと語っていた。

 一応、紛争は平和的に解決するよう、アメリカ大使はイラク側に伝えているが、戦争の可能性があることは十分に認識していたはず。ジャーナリストのジョナサン・クックによると、その2年前、CIAはイラクがクウェートへ軍事侵攻すると予想していたのである。にもかかわらず、イラクに対して中立だと伝えたわけだ。軍事衝突してもアメリカは介入しないと理解されても仕方がない。

 当時、イラクは経済的に苦しい状況に陥っていた。イランとの戦争で多くの犠牲者を出し、負担が膨らみ、石油収入も減少していたのだ。減収の理由は輸出量の減少と相場の下落にあったのだが、相場を押し下げていた原因のひとつがサウジアラビアやクウェートの増産。

 しかも、クウェートに石油を盗掘されているとイラク側は信じていた。湾岸の産油国をイスラム革命から守ったとイラク側は自負していただけに、クウェートなどへの怒りは大きかった。

 アメリカ大使との会談で、イラク側はホワイトハウスの内部にフセインを排除する動きがあることを指摘、気にしている。国防総省の内部で勢力を拡大していたネオコン(親イスラエル派)の一派のことだろう。

 ネオコンやイスラエルは1980年代にフセインを明確に敵視、排除しようとしていた。すでの何度も書いたことだが、1991年にネオコンはシリア、イラン、イラクの「掃除」を決めていたと ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っている

 また、1996年に作成された「決別」と題されたネオコンの文書でも、サダム・フセインをイラクから排除して親イスラエルの体制の国に作り替えとしている。その中で、ヨルダンからトルコに至る「親イスラエル国」の帯を作り、中東を不安定化して国力を衰退させようと提言されている。パレスチナ人に対する敵対的な姿勢も明確だ。

 そして2001年1月、大統領に就任したジョージ・W・ブッシュはアンドリュー・マーシャル仕込みの中国脅威論を叫ぶが、これは 米太平洋軍の司令官だったデニス・ブレア提督から批判 される。まだネオコンは絶対的な力を握っていたわけではないということだ。

 ネオコンがホワイトハウスを制圧するのはこの年の9月11日。この日、ニューヨークの世界貿易センターにそびえていた超高層ビル2棟に航空機が突入し、国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのである。この出来事を切っ掛けにしてネオコンが実権を握ることになった。

 この年の4月、日本ではネオコン色が濃く、社会的に優位な立場にある強者が富を総取りする新自由主義経済の信奉者、小泉純一郎が首相に就任している。2006年に小泉の次の首相となったのが安倍晋三。その安倍が昨年12月、再び首相となった。

 2010年の前原誠司、11年の石原伸晃、12年の石原慎太郎は東アジアの軍事的な緊張を高める言動を見せてきたが、今年1月には陸上自衛隊の第1空挺団が「離島防衛」のシナリオで訓練を実施、尖閣諸島の近くを中国機が飛行した場合は警告射撃する可能性があると防衛相や官房長官が発言している。

 16日に安倍晋三首相は自民党の河井克行をベルギーに派遣してアンス・フォ・ラスムセンNATO事務総長に「NATOとの安全保障上の連携強化を呼びかける首相親書」を手渡す一方、自身はベトナム、タイ、インドネシアの歴訪に出発した。

 第2次安倍政権もネオコンの戦略に基づいて中国に圧力をかけているようだが、小泉政権や第1次安倍政権の時代と現在では大きな違いがある。アメリカでネオコン勢力が衰えているのだ。現在、ネオコンは起死回生を図り、チャック・ヘイゲル元上院議員の国防長官就任を阻止しよう必死である。

 ネオコンには彼らなりの「戦略」があるのだが、日本の支配層やその追随者にそうしたものは感じられない。単に「威張りたい」、「稼ぎたい」というだけに見える。そんな日本の「暴走路線」はリスクが大きい。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2013.02.11 00:43:47


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: