《櫻井ジャーナル》

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2020.06.19
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると安倍晋三政権は発表した。配備が予定されていた場所は秋田県と山口県で、システム2基の価格は4664億円だが、1機約40億円というミサイルは別売りのため、建設費などを入れると合計7000億円以上になるという。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、明治維新以降、日本はイギリスやアメリカ、つまりアングロ・サクソン系国が描く長期戦略の強い影響下にあり、そうした国々が日本へ技術を提供、資金を供給してきた理由もそこにある。彼らは日本列島を東アジア侵略の拠点、日本人を傭兵と考えてきたとしか考えられない。イギリスが自力で中国を制圧する戦力がないことはアヘン戦争を見ても明白だ。

 アングロ・サクソンの長期戦略は、ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にはロシア/ソ連を制圧、覇権を握るというもの。制海権を握っていたことを利用しての戦略だ。

 イギリスは海を支配するために海賊を使った。イギリスはエリザベス1世の時代、海賊を使い、富を築いたのである。例えば西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売りさばき、金、真珠、エメラルドなどを手に入れている。海賊は略奪だけでなく、反乱の鎮圧にも利用されている。

 もっとも、イギリスに襲われたポルトガルやスペインは南アメリカなどでの略奪で富を築いていた。例えば1521年にスペインのエルナン・コルテスはアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を侵略、莫大な金銀を奪って国を滅亡させている。同じスペインのフランシスコ・ピサロはインカ帝国(現在のペルー周辺)を侵略して金、銀、エメラルドなどを略奪して国を滅ぼした。

 ヨーロッパ人は莫大な量の貴金属品を盗んだだけでなく、先住民を奴隷として使い、鉱山開発も行った。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山。盗み出した資源の総量は不明だが、そうした財宝や資源がヨーロッパ支配層の支配力を強めることになった。欧米、特にアングロ・サクソンは今でも強盗の習性から抜け出せないでいる。

 この長期戦略は1991年12月のソ連消滅で達成された、と考えた人たちがいる。ネオコンもそう考え、潜在的なライバル国や従属度の足りない体制を破壊し、力の源泉である資源を支配しようと目論む。そして1992年2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成した。この思い込みが現在、ネオコンを苦しめている。21世紀に入り、ウラジミル・プーチンが曲がりなりにもロシアを再独立させたからだ。

 当時の国防長官はリチャード・チェイニーだが、国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが作成の中心。そこでこのプランはウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。

 このプランのベースを考えたのは国防総省内のシンクタンクONAで室長を務めていたアンドリュー・マーシャルで、マーシャルの師と言われている人物はイギリス出身のバーナード・ルイス。ネオコンはこのルイスの戦略を信奉している。

 ソ連消滅後、ネオコンを含むアメリカの好戦派は自分たちが世界の覇者になったと考え、単独行動主義を打ち出す。日本もアメリカの命令に従えば良いと彼らは考えたであろうが、細川護煕政権は国連中心主義を維持した。

 そこで細川政権は潰されるが、同政権が設置した諮問機関の防衛問題懇談会はその後、「日本の安全保障と防衛力のあり方」という報告書を発表した。いわゆる樋口レポートだ。

 この報告書が国連中心主義に基づいて書かれていたことからネオコンは激怒する。最初にこのレポートを問題にしたのはマイケル・グリーンとパトリック・クローニンで、ふたりはカート・キャンベル国防次官補を説得してジョセイフ・ナイ国防次官補らに自分たちの考えを売り込んだという。そしてナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表。そこには在日米軍基地の機能を強化、その使用制限の緩和/撤廃が謳われていた。

 日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込んでいくということだが、それに抵抗する政治家もいた。日本側の反応は鈍い。そうした中、1994年6月に松本サリン事件、95年3月の地下鉄サリン事件が引き起こされる。その直後には警察庁長官だった國松孝次が狙撃され、1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われるスターズ・アンド・ストライプ紙が日本航空123便に関する記事を掲載、その中で自衛隊の責任を示唆している。

 その1995年には大和銀行ニューヨーク支店で巨額損失が発覚、98年には長銀事件。この当時、証券会社や銀行の不正が相次いで明るみにでたが、こうした問題には大蔵省(現在の財務省)が深く関与していたはずで、アメリカに脅されたとしても不思議ではない。

 1995年以降、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。旧ソ連圏での工作には深く関与していないだろうが、ネオコンたちが最も警戒すべき潜在的ライバルと考えている中国の問題では日本に重要な役割を求めてくる。そうした流れの中でイージス・アショアの配備は決まった。

 こうした防衛システムは先制核攻撃の後、破壊を免れた相手の報復攻撃を迎え撃つことが目的だとする考え方があるが、それだけでなく、先制第1撃に使われるという見方もある。

 イージス・アショアではSM-3というミサイルが使用されるが、その発射装置は射程距離が2500キロメートルという巡航ミサイルのトマホークも使えると言われている。防衛という名目でロシアや中国の周囲にランチャーを配置、INFの廃棄でトマホークを配備するということになると懸念する人もいる。

 こうしたミサイル・システムのアメリカは強引に東アジアでも配備してきた。そのひとつが2017年4月に韓国へ持ち込まれたTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システム。

 そうしたシステムの持ち込みを朴槿恵政権は、保守派ではあるが、嫌がっていた。その朴大統領は2017年3月にスキャンダルで罷免され、文在寅が大統領に就任するまでの空白期間にアメリカは強引に配備したわけだ。

 安倍晋三政権の場合、ここにきてアメリカの支配層から見切りをつけられたように見える。そしてイージス・アショアの配備計画を停止する決断をした。






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最終更新日  2020.06.19 18:52:03


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