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イスラエル軍は9月27日から南レバノンを空爆、ヒズボラの指導者、ハッサン・ナスララも死亡したという。イスラエルでの報道によると、27日の攻撃では「バンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)」約85発が使用され、人口密集地で使われたため、少なからぬ市民が犠牲になっている。ウクライナでもアメリカはネオ・ナチを使って東部や南部の住民を虐殺したが、ロシア軍の反撃で目的を達成できなかった。反撃力の足りないレバノンやパレスチナでは虐殺を続けている。 この攻撃についてハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授は次のように書いている:「これは非常に単純なことです。誰かに何かをしてほしくないなら、それを実行する手段を与えなければいいのです。」 そうした手段を与えたのはアメリカ政府。昨年12月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はアメリカ政府は100発のバンカー・バスター爆弾BLU-109をイスラエルに供与したと伝えている。つまり、アメリカ政府はイスラエルがそうした手段を使うことを認めているということになる。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、イスラエルの武器輸入の69%はアメリカが占め、その次がドイツで30%だ。 イスラエルは2006年にもレバノン南部を攻撃しているが、その時にもアメリカが供給したバンカー・バスター爆弾を使用した。同時にクラスター爆弾や白リン弾も使っている。 しかし、それ以外の兵器も使われた疑いもある。ヒズボラとイスラエル軍が激しい戦闘を繰り広げたキアムとアトティリで着弾地点で濃縮ウランをクリス・バスビー博士が発見したのだ。新タイプの核分裂装置/兵器、あるいは濃縮ウランを使用したバンカー・バスター爆弾をイスラエルは使ったのではないかと言われたのだ。通常、バンカー・バスター爆弾は劣化ウランが使われる。 イスラエル軍がレバノンでウラン兵器を使用していたかどうかというイギリスのインディペンデント紙の質問に対し、イスラエル外務省の報道官だったマーク・レゲブは「イスラエルは国際法や国際条約で認められていない兵器は使用していない」と答えたのだが、ジュネーブ条約などのルールが策定された当時、現在のウラン兵器は発明されていないため、答えを回避したと考える人もいた。レバノンをアメリカは新型兵器の実験場として使っているとも言われている。 レバノンで謎の兵器が使われた可能性があるのだが、それをアメリカが1962年に北太平洋のジョンストン島でドミニク作戦の一環として実施した大気圏内核実験、フーサトニックと結びつける人もいる。 フーサトニックでLRL(ローレンス放射線研究所)はリップル・コンセプトと呼ばれる新しい設計をテスト、その実験は99.9%クリーンだったとされている。それ以前およびそれ以降に設計されたすべての核兵器を凌駕する性能特性が実証されたという。 アメリカのジョー・バイデン大統領は9月28日午後に声明を発表、ナスララ「と彼が率いるテロ組織ヒズボラは40年間の恐怖政治で数百人の米国人を殺害した責任がある」と主張、イスラエルの空爆による彼の死は数千人のアメリカ人、イスラエル人、レバノンの民間人を含む多くの犠牲者に対する正義だ」と述べている。アメリカ軍はビズボラやその同盟者による報復に対する準備を開始、イスラエルによる大量虐殺を後押しする姿勢を見せている。 本ブログでも繰り返し書いてきたように、パレスチナで大量殺戮を持ち込んだのはイギリスにほかならない。アメリカやイギリスはパレスチナやウクライナを戦乱で破壊しようとしている。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。これがいわゆる「バルフォア宣言」だ。 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃した。 パレスチナに地獄を出現させたのはシオニズムだと言えるだろう。パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうというのだが、当然、先住民を追い出すか皆殺しにすることになる。そのシオニズムがイギリスに出現したのはエリザベス1世が統治していた16世紀後半のことだという。この時期にイギリスではアングロ-サクソン-ケルトが「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信仰が出現した。ブリティッシュ・イスラエル主義とも呼ばれている。 ちなみに、旧約聖書の記述によると、イスラエル民族の始祖はヤコブだとされている。彼には12人の息子があり、それぞれ支族を形成、そのうちユダ族とベニヤミン族の後裔とされる人びとが「ユダヤ人」と呼ばれているのだ。残りは行方不明で、旧約聖書を信じる人びとから「失われた十支族」と呼ばれている。「ユダヤ人」でないので旧約聖書から忘れられたのだが、それを引っ張り出して妄想を膨らませたと言えるだろう。 スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)も自分を「イスラエルの王」だと信じていたが、その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑された。 その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルもカルバン派に属すピューリタン。彼の私設秘書だったジョン・サドラーもブリティッシュ・イスラエル主義を信じていたという。アメリカへ渡ったピューリタンは当初、アメリカの先住民(アメリカ・インディアン)を「失われた十支族」のひとつだと考えたようだ。 実権を握ったクロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧、さらにアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺。侵攻前の1641年には147万人だった人口は侵攻後の52年に62万人へ減少した。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 シオニズムの背後にはブリティッシュ・イスラエル主義があり、その信仰は帝国主義と結びついて侵略、殺戮、略奪につながった。パレスチナだけでなく南北アメリカ大陸、東アジア、アフリカ、つまり全世界が侵略の対象になった。 帝国主義が出現するのは19世紀のイギリスだが、その当時、イギリスを動かしていたのは金融の世界に君臨していたナサニエル・ロスチャイルド、その資金を使って南部アフリカを侵略し、ダイヤモンドや金を手にしたセシル・ローズ、そのほかウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、アルフレッド・ミルナーたちだ。 世界支配の戦略を立てたのはローズだと言われているが、この人物は1877年にオックスフォード大学を拠点とする秘密結社「アポロ・ユニバーシティ・ロッジNo.357」へ入会、その直後に「信仰告白」を書いている。 それによると、ローズはアングロ・サクソンが「世界で最も優れた種族」だと主張、そのアングロ・サクソンが住む地域が広ければ広いほど人類にとって良いことだとし、そうした戦略を実現するために秘密結社は必要だとしている。その根底にはブリティッシュ・イスラエル主義があり、彼らは手先としてイスラエルを「建国」させた。ガザやレバノンでの大量虐殺もその延長線上にある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.30
ヒズボラは9月28日、指導者のハッサン・ナスララが死亡したことを公式に確認した。イスラエル軍は27日から南レバノンに対して激しい空爆を開始、ナスララがいることを確認した上でヒズボラの本部を爆撃したとされている。 地上戦でイスラエル軍はヒズボラに勝てないため、アメリカ軍と同じように空爆で地上を破壊しようとしているのだろうが、これは住民の皆殺しにする作戦だ。ガザでも同じ戦法を使っているが、いまだにハマスを屈服させられていない。様々な人に指摘されているが、ヒズボラやハマスは特定のキーパーソンやグループに依存していないため、幹部を殺害しても抵抗は続く。 ヒズボラは9月25日、ハイファ南部の海軍基地にドローン攻撃を仕掛け、テル・アビブ郊外のモサド本部に向かってカデル 1弾道ミサイルを発射したと言われている。イスラエルでは報道管制が敷かれているため被害状況は不明だが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は国連総会への出発を延期、そしてヒズボラ本部への攻撃を行なったことを考えると、イスラエル側に大きな損害があったのかもしれない。 ナスララ殺害でヒズボラのイスラエル国内に対する攻撃は激しくなることが予想されるが、それだけでなくイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)は勿論、イラクやシリアの反シオニスト・グループもイスラエルに対する攻撃を本格化させることが予想できる。 アメリカはソ連消滅直後の1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。その当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、プロジェクトの最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。 そのドクトリンの基盤を考え出したのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。いずれもシオニストの一派であるネオコンだ。その背後にはシティやウォール街を拠点とする私的権力が存在する。 その戦略に基づき、ネオコンは21世紀に入ってからウクライナの制圧に乗り出し、2013年11月から24年2月にかけてネオ・ナチを手先として使ったクーデターを成功させた。そのクーデターを推進したのは副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバン。 バイデンが大統領に就任してから国務長官になったトニー・ブリンケンもヌランドやサリバンと同様、ロシアとの戦争を推進している。彼らはロシアを過小評価し、簡単に勝てると信じて戦争に突入した。ルビコンを渡ったのだが、ロシアは強かった。致命的な計算間違いだ。 こうしたアメリカの好戦派が存在しなければイスラエルはガザやレバノンで住民を虐殺できない。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、イスラエルの武器輸入の69%はアメリカが占め、その次がドイツで30%。この2カ国で大半を占める。 ナスララ殺害でイスラエルに対する攻撃は激しくなることが予想されている。イスラエル政府としては、状況を悪化させ、アメリカ軍に介入させようとしているのだろうが、イスラエルにとって戦況が好転するとは思えない。 さらにネオコンは東アジアでも軍事的な緊張を高めている。1992年に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンの目的は新たなライバルの出現を防ぐことで、その対象には旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアも含まれる。ドイツと日本の場合、アメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れて「民主的な平和地域」を創設するともされている。日本が中国やロシアとの戦争に向かっているのはそのためだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.29
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9月25日に国連総会で演説したが、その際、ロシアがウクライナの原子力発電所へのより深刻な攻撃を計画していると主張した。同国で9月5日から外務大臣を務めているアンドリー・シビハは9月21日に同じことを語っている。 しかし、原子力発電所を攻撃してきたのはウクライナだ。8月6日に同国軍はスーミからロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、その目的はクルスク原発に対する攻撃だったと見られている。この原発だけでなく、ウクライナ軍は8月11日にザポリージャ原発の冷却塔をドローンで攻撃、火災が発生した。 そのザポリージャ原発をウクライナ軍は2022年8月、イギリスで開発された空対地ミサイルの「ブリムストーン」、あるいは「M777榴弾砲」で攻撃している。この原発には6つの原子炉があり、それらが破壊された場合、その被害はヨーロッパやロシアだけではすまなかった。 ザポリージャ原発は2022年3月中旬からロシア軍の管理下にあり、ロシア軍の兵士がいる。その兵士を攻撃するとウォロディミル・ゼレンスキー大統領は公言していた。つまりザポリージャ原発と発言していた。その予告通りの攻撃があったわけだ。 ゼレンスキー政権は同年2月下旬からロシアのウラジミル・プーチン政権と停戦交渉をイスラエルやトルコを仲介役として行い、ほぼ合意に達した直後のことだ。その交渉をアメリカ政府やイギリス政府が潰したことは明確になっている。 2023年6月6日にウクライナ軍はノヴァ・カホウカ・ダムを爆破、ヘルソンのロシアが支配している地域は洪水で水浸しになっている。ウクライナ軍の侵攻を防ぐために作られた地雷原は今回の洪水で押し流されたが、破壊されたダムはクリミアの水源であると同時に電力の供給源。ザポリージャ原子力発電所もダムの水力発電所から電力の供給を受けている。原子力発電所にとって電源喪失がいかに危険なことかは東電福島第一原発の事故を見てもわかる。 ウクライナ軍がダムの破壊を計画していることは昨年の段階で指摘されていた。ワシントン・ポスト紙は2022年12月に同軍のアンドリー・コバルチュク少将をインタビュー、ドニエプル川を氾濫させるという構想を聞いている。その構想に基づき、HIMARSでノヴァ・カホウカ・ダムを攻撃し、3カ所に穴を開けたとコバルチュク語った。 ウクライナの原発を攻撃してきたのはウクライアン軍だが、ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領はザポリージャ原発やチェルノブイリ原発を攻撃したと主張、ロシアがリブネとフメリニツキーにある原発を攻撃した場合、ポーランドは「直ちに介入し、専門家を派遣する必要がある」と宣言している。 ウクライナの敗北は決定的で、降伏も時間の問題だと見られているのだが、そうしたことをポーランド政府も受け入れられない。イギリス政府はウクライナにロシアとの戦争を続けるように要求してきた。アメリカのジョー・バイデン政権も同じだが、ここにきて国防総省がロシアとの核戦争勃発を懸念してか、ブレーキをかけ、安全保障部門や国務省と対立ているようだ。 西側でも戦争継続を嫌う勢力が増える中、ウクライナを利用してロシアを疲弊させ、あわよくば壊滅させようとしている勢力はウクライナの原子力発電所で偽旗挑発を目論んでいる可能性があると懸念する人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.28
厚生労働省は9月24日、今年7月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は12万7479人。「COVID-19騒動」が始まる前年、2019年の同月に比べて2万0885名増えた。デジタル庁は「新型コロナワクチンの接種状況」の発表を止めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2024.09.28
海上自衛隊の護衛艦(駆逐艦)「さざなみ」が台湾海峡を通過した。アングル・サクソン系国としてアメリカやイギリスに従属しているオーストラリアとニュージーランドの艦艇と一緒だったという。この挑発行為は岸田文雄首相の指示に基づくものだとされているが、アメリカ政府の命令だろう。同じ9月25日に中国軍は模擬弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)を太平洋の公海に向かって発射し、ミサイルは予想海域に落下したという。アメリカに対する警告のメッセージだろう。 日本列島から台湾へ連なる島々は東アジアを侵略しようと考える勢力にとって重要な意味を持つ。イギリスやアメリカの金融資本を後ろ盾とするクーデターで誕生した明治体制は琉球国を併合、さらに台湾派兵、朝鮮侵略、日清戦争、日露戦争、中国への軍事侵略へと進んだ。イギリスのアーネスト・サトウ、アメリカのチャールズ・デロングやチャールズ・ルジャンドルといった米英の外交官は明治政府に対してアジア侵略をけしかけたというが、それも影響したのだろう。 イギリスは19世紀の半ばに中国侵略を試みた。1839年から42年にかけての「第1次アヘン戦争」と1856年から60年にかけての「第2次アヘン戦争」だ。一応勝利したのだが、内陸部を支配することはできなかった。戦力が圧倒的に足りなかったのである。その戦力を日本が補充する形になる。 第2次世界大戦後、大英帝国の後継者とも言えるアメリカは沖縄(琉球)から台湾にかけての島々を軍事基地化したが、これは明治政府の政策と同じだ。日本がそうだったように、日本列島から台湾にかけてはアメリカにとって東南アジアや中国を侵略する拠点になる。 アメリカは昔から対外政策はシオニストがコントロールしてきた。その一派であるネオコンはジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防総省を支配、ソ連消滅直後の1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。 その最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官だが、このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。 このプロジェクトの目的は新たなライバルの出現を防ぐことで、その対象には旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアも含まれる。ドイツと日本の場合、アメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れて「民主的な平和地域」を創設するともされている。 しかし、細川護煕政権は国連中心主義を打ち出して抵抗、ネオコンの怒りを買うことになり、1994年4月に倒された。その年の6月に自民、社民、さきがけの連立政権が誕生、村山富市が首相に就任して抵抗してネオコンを怒らせた。 そうした状況をネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に訴え、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。そこには、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。 こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。 1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは、この1995年だと言えるだろう。 このプロジェクトが本格的に始動するのはニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された2001年9月11日のことだ。その前にユーゴスラビアを攻撃していたが、9/11を口実にアフガニスタン、そしてイラクを先制攻撃している。 アメリカは現在、ウクライナや中東だけでなく東アジアでも軍事的な緊張を高めている。そうした中、同国海軍のリサ・フランケッティ作戦部長は9月18日、「習近平国家主席が台湾侵攻の準備をするよう軍に指示した」2027年に注目していると発言、募集の増加、海軍インフラの改善、船舶整備の遅れの解消、ドローンなど自律システムの使用増加などを含む計画を発表した。 習近平主席は2023年11月、サンフランシスコでジョー・バイデン大統領と会談した。ディフェンス・ニュースによると、習近平主席は「いいか、アメリカでは2027年や2035年に軍事行動を計画しているという報道がたくさんある。そんな計画はない。誰も私にこの件について話していない」と言ったとアメリカの当局者は語っていると伝えた。 ビル・バーンズ元CIA長官は2023年2月にテレビのインタビューで次にように語っている:「習近平主席はPLA(中国人民解放軍)に対し、2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう指示したが、それは習主席が2027年、あるいは他の年にも侵攻すると決めたことを意味するものではない」。 2027年に中国が侵攻すると最初に主張したのはフィル・デビッドソン元インド太平洋軍司令官。2021年のことだ。言うまでもなく、こうした話が広まる理由はアメリカの好戦派にとって都合が良いからにほかならない。アジア太平洋地域におけるアメリカの軍事力増強を口実とした資金投入に役立つ。 しかし、デビッドソン発言の前から中国を中距離ミサイルで包囲する計画は進んでいた。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入された。その後、朴槿恵は失脚している。 こうした配備がアメリカ軍の戦略に基づいていることは2022年4月、国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」の報告書に記載されている。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するというのだ。 専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたというが、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。 2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点への先制攻撃が可能。「専守防衛」は日本の国内に向けた宣伝文句にすぎず、アメリカは先制攻撃を想定している。 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。 アメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を編成、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。 2021年9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカがAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があり、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。 山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明、岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 この過程でアメリカは日本と韓国の軍事同盟を推進し、台湾では「独立派」を利用して中国を挑発、さらにフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)も取り込み、日本はフィリピンとの軍事的なつながりを強めている。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)だが、日本とフィリピンをAUKUSへ加盟させるという動きもある。日本がAUKUSに参加することで、ロボット工学とサイバー技術の分野で成果を上げることが期待されているのだという。 またジョー・バイデン政権が中国敵視を明確にした2022年の12月、アメリカではNDAA 2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。 1992年2月にアメリカの好戦派が世界征服プロジェクトをスタートされた当時、彼らは簡単に目的を達成できると考えていたのだろう。その思い込みはその後も消えず、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近い、つまり核戦争で中露に勝てるとしている。ソ連の消滅でアメリカは核兵器の分野で優位に立ち、近いうちにロシアや中国の長距離核兵器を先制攻撃で破壊できるようになるだろうと主張しているのだ。 リーバーとプレスはロシアの衰退や中国の後進性を信じ、アメリカが技術面で優位にあるという前提で議論している。その後、そうした前提が間違っていることを現実が繰り返し示しているのだが、修正できていない。今でも「神風が吹く」と信じている、あるいは信じたがっている人がいるようだ。彼らは人類、いや生態系を死滅させかねない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.27
ポケベル(ページャー)やトランシーバーを利用した爆破テロを実行した直後、イスラエル軍はレバノン南部を爆撃した。ヒズボラはすでに軍事的な通信は光ファイバー・ネットワークを通して行ない、軍事拠点や兵器庫は地下に隠されていると言われている。何人かの幹部が死亡しているようだが、全体から見れば、イスラエル軍の爆撃はガザと同じように市民を大量虐殺するだけだ。 アメリカのジョー・バイデン政権はイスラエルによる住民虐殺を防衛のためだと弁護しているが、イスラエル軍の高官はハアレツ紙に対し、アメリカがイスラエル軍に武器を供給していなければ、数カ月以上同軍が戦争を続けることは困難だったと語っている。外部から見ても、そう言う結論になる。ガザでの虐殺やレバノンへの攻撃はウクライナでの戦闘と同様、バイデン政権が後ろ盾になっている。バイデン政権が和平を望んでいるとは言えない。 ソ連が消滅して以来、アメリカを戦争へと導いているのはシオニストの一派であるネオコン。ジョージ・H・W・ブッシュ政権の時点で国防総省は国務省と同様、ネオコンに支配されていたのだが、2003年頃までは統合参謀本部がブレーキ役になっていた。そのブレーキは軍事産業のカネで効かなくなってきたが、ロシアとの核戦争が目前に迫ってきた現在、国防総省が再びブレーキ役になっている。 イスラエルによるレバノン攻撃に対し、ヒズボラはレバノン国境から80キロメートルほどイスラエル領内へ入った場所にあるハイファ南部の海軍基地にドローン攻撃を仕掛けたと伝えられた。ヒズボラの発表によると、9月25日、ハイファよりさらに遠いテル・アビブ郊外のモサド本部に向かってカデル 1弾道ミサイルを発射したと発表している。イスラエルでは報道管制が敷かれているため被害状況は不明だが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は国連総会への出発を延期したようで、延期せざるをえない状況が生じているのだろう。 イスラエルは戦乱を広げ、アメリカの好戦派が軍事介入しやすい状況を作りたいのかもしれないが、そうなるとイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)やイラクの抵抗グループもイスラエルに対する攻撃を本格化させる可能性がある。アンサール・アッラーはすでにテル・アビブを極超音速ミサイル攻撃している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.26
レバノンやシリアでポケベル(ページャー)やトランシーバーが爆破されるテロ攻撃があったのは9月17日と18日のこと。ヒズボラの戦闘員が狙われたとされたが、その話に疑問が生じている。2006年7月から9月にかけてイスラエル軍がレバノンへ軍事侵攻した当時、すでにヒズボラは無線データの送信を回避するために光ファイバー・ネットワークをベイルート南部から南レバノン、そしてベカー高原まで築いていたとイスラエルのメディアが2017年に報じていたのだ。 ヒズボラはポケベルやトランシーバーを社会福祉部門で使用していたことから、イスラエルのテロ攻撃で犠牲になった人の大半は子どもを含む非武装の市民で、戦闘員へのダメージは少なかったと見られている。社会不安を煽ろうとしたのかもしれないが、今回のイスラエルによるテロ攻撃はヒズボラにとって軍事的なダメージにはなっていない可能性が高い。 テロ攻撃の直後、イスラエル軍はレバノン南部を爆撃した。通信が混乱する中、イスラエル軍はヒズボラの幹部を暗殺、軍事施設を破壊して優位に立っているとする主張もあるのだが、そうした見方に反する情報があったのだ。 こうした事実をイスラエルも認識していたはずで、ポケベルやトランシーバーへの工作がヒズボラへの攻撃で有効ではないと認識していたはず。ガザと同じように、イスラエルは市民を死傷させただけだ。 ハマスをはじめとするパレスチナ勢力にガザで拘束された後、11月24日に解放されたイスラエル人女性のアディナ・モシェによると、イスラエル軍はハマスの地下トンネル網について何も知らない。病院や学校にハマスが軍事拠点を築いているという話は嘘であり、攻撃のための口実にすぎないということだ。現在、イスラエルはレバノンに対して激しい攻撃を始めているが、そのターゲットがヒズボラの拠点だという主張も怪しい。ガザと同じように、市民を虐殺することが目的なのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.25
アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドなるグループを編成している。このクワドの首脳会談が9月21日、アメリカのデラウェアで開かれ、「最近の海洋における危険で攻撃的な行動に深刻な懸念」を表明したようだ。 イギリスの戦略を引き継いだアメリカは他国に比べて優位に立っていた海軍力を使い、ユーラシア大陸の周辺部を支配してきたが、その状況が変化している。ミサイルの発達は航空母艦を含む水上を航行する艦船を脆弱なものにし、アメリカの制海権が揺らいでいると言えるだろう。 そうした状況に対応するため、アメリカはさまざまな方策を講じているが、そのひとつがクワドだ。岸田文雄首相が言うところの「自由で開かれたインド太平洋」には、その前に「アメリカにとって」という文言が隠れている。 アメリカは2017年11月にオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋から太平洋にかけての海域を一体のものとし、太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされたのだが、インドネシアはアメリカと一線を隠す動きを見せ、ここにきてインドもアメリカに従属しない姿勢を見せている。 そこでアメリカが目をつけたのがフィリピンにほかならず、軍事的な連携を強めている。そしてバングラデシュでは今年6月から8月にかけて学生が主導する反政府運動によってシェイク・ハシナ政権は倒され、ムハマド・ユヌスを首席顧問とする暫定政府へ移行した。デモは雇用配分制度に対する不満が原因で、火炎瓶が飛び交う激しいものだった。 ハシナはインドや中国と友好的な関係あったが、暫定政権はパキスタンやアメリカの支援を受けていたとされている。そのアメリカはベンガル湾の北東部にあるセント・マーチン島に注目してきた。この島に軍事基地を設置し、ミャンマーの港湾を利用している中国に対抗しようとしていたと言われている。ハシナはクーデターの背景にこの島があると示唆している。ベンガル湾をアメリカに支配させていたら、権力を維持できたかもしれないというのだ。ハシナは今年5月、外国の軍事基地許可を拒否していた。 バングラデシュはアメリカ海軍にとって重要な物流拠点になる可能性があり、同国の海軍基地は中国とインド洋をつなげるCMEC(中国・ミャンマー経済回廊)を監視できるとアメリカは指摘、マラッカ海峡のコントロールにも役立つとも考えているようだ。バングラデシュのクーデターは自然発生的なものだとしても、アメリカの戦略にとって願ってもない結果をもたらす。ベンガル湾地域でアメリカが中国に対して優位に立つことができるというわけだ。 暫定政権を率いるユヌスはアルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞(ノーベル賞ではない)を受賞した人物だが、トム・ハイネマンが2019年に制作した「マイクロ債務」というドキュメンタリーによると、商業銀行の金利が通常12から13%のところ、ユヌスが1970年代に設立したグラミン銀行は30から40%。高利貸しと言うべきだろう。こうした高利で借りた人は返済のため、さらに高利の業者からカネを借りなければならず、多くの貧困層を借金漬けにした。かつて、日本でも問題になった仕組みだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.24
ソ連消滅後、旧ソ連圏は米英をはじめとする西側諸国の強大な私的権力に支配されるようになった。その手先になったオリガルヒにはミハイル・ホドルコフスキー、アレックス・コナニヒン、ロマン・アブラモビッチ、ボリス・ベレゾフスキーが含まれている。ベレゾフスキーは40歳代の半ばだったが、残りは20歳代の後半。背後に黒幕がいることは明らかで、こうした勢力はクレムリンを支配、ロシアの富を盗み続けた。 この構造を変えたのがウラジミル・プーチンをはじめとする勢力。オリガルヒに対し、政府の命令に従うように要求、従わない場合は不正行為を摘発していった。そこで、少なからぬオリガルヒはイギリスやイスラエルなど国外へ逃亡している。ここからロシアの再独立は始まった。 中国も当時のロシアと同じ問題を抱えている。西側の巨大資本と結びついた富豪が北京の政策を無視、地方政府とも手を組んだ。そのために新自由主義は続き、バブルを生み出すことなった。こうした私的権力の問題を解決できなければ中国は真の意味で独立することはできない。 1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。1990年代のロシアや1980年代以降の中国は西側諸国と同じように、ファシズム体制に近かったと言えるだろう。 そうした実態を示す出来事が北極海で起こっている。ロシアが進めているLNG(液化天然ガス)2プロジェクトをアメリカ政府は潰そうとしている。このプロジェクトに参加したなら「制裁」を課すと恫喝しているのだが、インドのムンバイに登録されているゴティックとプリオ・エナジーの2社が制裁の対象になった。LNG2プロジェクトで生産されるLNGを「輸出しようとした」疑いだとされている。 ロシアはインド企業に参加を呼びかけているものの、まだインドからの参加はない。ただ、インドはロシア産原油の最大の顧客で、駐露インド大使ビナイ・クマールは9月5日、ウラジオストクで開かれたEEF(東方経済フォーラム)で、インドはロシアからのエネルギー輸入を増やしたいと述べている。 それに対し、中国のエネルギー企業はLNG2プロジェクトに対するアメリカの「制裁」に従うことで同意、中国の銀行はロシアとの間の支払いを禁止した。また、TikTokはロシアのメディア、RTとSputnikのアカウントを削除させている。ロシア政府はTikTokの決定に怒っているようだが、中国の政府と経済界の力関係にも関心が集まっている。 中国にとってロシアが重要な戦略的な同盟国である事実に変化はないが、アメリカから完全に独立しているわけでもない実態が再確認されたとは言える。今後、中国でも私的権力をどのようにコントロールするかが問題になってきそうだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.23
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は9月17日に欧州委員候補を発表、新設の軍事担当にはリトアニアの元首相、アンドリウス・クビリウスを起用した。この人物は激しくロシアを敵視、6年から8年後までにロシアとの軍事対立に備えるべきだと語っている。 しかし、バラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けた2014年2月の時点でアメリカはロシアに対する軍事作戦を本格化させたと言える。2022年2月以降、ウクライナにおける戦闘はロシアとNATOの衝突という様相を強めてきた。2022年の段階でアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はロシアと直接的な軍事衝突を始めようとしている。 2022年から本格化したロシアとNATOの衝突はロシアが圧倒的に優勢だということは本ブログでも繰り返し書いてきた。クビリウスが6年から8年後と言っているのは、態勢を立て直すのにそれだけの時間が必要だということだろうが、その間、ロシアが漫然と眺めていることはないだろう。 リトアニアを含むバルト三国や北欧諸国ではソ連消滅後にナチズムが復活、ロシアとの戦争に備えるように訴える声が高まっている。リトアニアではロシアとの「危機や戦争が起こったらどうするか?」と題された一般市民向けのリーフレットが9月と10月に配布されるようだ。 この地域は北方神話の影響を受けているが、1918年にドイツで創設されてナチスの母体になったトゥーレ協会も北方神話と関係が深い。 その名称は北方神話の土地、ウルチマ・トゥーレに由来し、そのシンボルはナチスと同じ鉤十字だった。フィンランド空軍が現在でも鉤十字を使用している背景も同じだ。トゥーレ協会が母体となり、1919年にドイツ労働者党が結成され、その翌年には国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)へ改称された。アドルフ・ヒトラーが指導者となったのは1921年からだ。 トゥーレ協会の源流はゲルマン騎士団だとされている。この騎士団から派生した秘密結社だということもあり、メンバーには多くの貴族が名を連ね、人種差別的な雰囲気を漂わせていたという。 リトアニアは16世紀から18世紀にかけてポーランドとポーランド・リトアニア連邦を構成、その領土が最も広かった1600年当時の復活を夢見る人びとがポーランドにはいる。このバルト海と黒海に挟まれた中央ヨーロッパにはカトリック教徒が多く、カトリックの帝国を作ろうという動きとつながり、インテルマリウム構想に発展した。 こうした運動があったことから第2次世界大戦の終盤からカトリック教会はナチスの幹部や協力者を逃す工作に協力していた。その工作を仕切っていたのはウォール街人脈、その象徴的な人物がアレン・ダレスである。 ウクライナにはOUN(ウクライナ民族主義者機構)なる組織があった。当初はポーランド人のグループとプロメテウス同盟なる運動を展開していたのだが、途中で分裂、イェブヘーン・コノバーレツィなる人物を中心としてOUNが創設されたのだ。 コノバーレツィが暗殺された後、アンドレイ・メルニクが組織を引き継ぐが、この新指導者は穏健すぎると反発するメンバーが若者を中心に現れる。そうしたメンバーは反ポーランド、反ロシアを鮮明にしていたステパン・バンデラの周辺に集まった。このグループはナチスや米英の情報機関と手を組みながら生き残り、現在、ウクライナをナチズムに基づいて支配している。バンデラの信奉者はウクライナの西部を拠点にしているが、決して人数は多くない。 ウクライナの西部はカトリックの影響が強いが、東部や南部は東方正教会の影響下にある。一般市民の間では大きな問題ではなかったが、欧米の支配層はこの違いを利用し、仲違いさせようとしている。ウクライナのクーデター体制が東方正教会を禁止した理由もそこにある。 ネオコンをはじめとする西側の好戦派はウクライナでロシアと戦争を始め、中東ではイスラエルを支援して再び影響力を強めようとし、東アジアでは中国との戦争へ向かっている。東アジアでアメリカ国防総省が戦争の準備を進め、日本も1995年からアメリカの戦争マシーンに組み込まれたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む計画は1992年2月には出来上がっている。ネオコンをはじめとするアメリカの一部支配層は1991年12月にソ連が消滅した後にアメリカが唯一の超大国になったと信じた。 それを前提として世界制覇プロジェクト、いわばパックス・アメリカーナを築き上げる戦略を1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。それ以降、アメリカでは大統領が交代してもこの戦略に基づいて動いている。 このドクトリンを作成した時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官、そしてI・ルイス・リビー、ザルメイ・ハリルザドがいた。 チェイニー、ウォルフォウィッツ、リビー、ハリルザド、いずれもネオコンだが、このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。 この人物はバーナード・ルイスなる学者から世界観を学んだのだが、そのルイスはイギリスで情報活動に従事したことがあり、イスラエルやサウジアラビアを支持していた。そのルイスから教えを受けたマーシャルも親イスラエル派で、ソ連や中国を脅威だと宣伝したきた人物としても知られている。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005) ネオコン系シンクタンクのPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)は2000年に『アメリカ国防の再構築』という報告書を発表したが、そのベースはウォルフォウィッツ・ドクトリン。2001年に成立したジョージ・W・ブッシュ政権はこの報告書に基づいて政策を決めている。ジョー・バイデン政権もこうしたネオコンの計画から抜け出せず、ロシアとの全面戦争に向かっている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.22
9月17日と18日にレバノンやシリアでポケベル(ページャー)やトランシーバーが爆破され、子どもを含む市民も犠牲になった。爆発物はバッテリーの中に仕掛けられていたと見られている。新学期初日のラッシュ時に爆破されたことから渋滞で救急車も身動きがとれず、死亡者を増やす一因になった。 そうした電子機器を誰が使っているかを犯行グループは掌握できていないようだが、こうした攻撃の準備には情報収集、技術開発、販売などで半年から数年は必要だと推測されている。 ポケベルは台湾の会社、アポロ・ゴールドの製品。同社によるとハンガリーを拠点とするBACがライセンス生産したという。この会社はイスラエルの情報機関が設立したペーパーカンパニーで、生産能力はないと伝えられている。トランシーバーはアイコム社製の「IC-V82」で、同社によると10年前に製造を中止している。 BACのCEOで唯一の従業員はイギリスで教育を受けたイタリア人女性のクリスティアナ・ロザリア・バルソニー-アルシディアコノ。この女性はポケベルの製造への関与を否定し、自分は仲介者にすぎないと主張。誰がどこで製造したのか、現段階では明確でない。 ターゲットになったと見られているヒズボラのハッサン・ナスラッラは9月19日にテレビ演説を行い、テロ攻撃で死亡した人びとの遺族に哀悼の意を表した。攻撃について調査していると語ったが、イスラエルが実行したとは断定、報復を誓っている。 ポケベルやトランシーバーを使ったテロ攻撃の直後にイスラエル軍はレバノン南部を爆撃したが、ヒズボラは9月20日、レバノン南部からイスラエル軍の主要軍事施設を150発以上のロケット弾で攻撃した。 ヒズボラはイスラエル軍がガザでの住民虐殺を止めるまでイスラエルを攻撃するとしている。サウジアラビア、ペルシャ湾岸の産油国、ヨルダンなどは傍観しているが、イラクのカタイブ・ヒズボラ、アサイブ・アル・アルハク、バドルなどのシーア派の戦闘集団、あるいはイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイスラエルやその後ろ盾になっている西側諸国との対決姿勢を強めている。 最も激しくイスラエルや西側を攻撃しているのはイエメンで、イスラエルへ向かう船舶を攻撃してきたが、9月15日にはイスラエルのテル・アビブ南部にある軍事施設をミサイル攻撃した。「パレスチナ2」と名付けられたこのミサイルは2040キロメートルを11分半で飛行したとされているので、時速1万1000キロメートル近く、つまりマッハ8以上の極超音波ミサイルだ。イスラエルは極超音速ミサイルだということを否定しているが、実際に極超音速だったようだ。 このミサイルを供与できる国はイランかロシア。衛星に誘導されたはずで、ロシアが何らかの形で支援したと見られている。先週、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はロシアを極秘訪問したと言われている。そうした問題をウラジミル・プーチン大統領と話し合うためだったと考えられているが、目的を達成することはできなかったようだ。 ウクライナでアメリカをはじめとするNATO諸国はロシア深奥部を攻撃できる長距離ミサイルを供与した。これを使うためには衛星や偵察機からの情報、そしてオペレーターが必要だ。それに対抗してロシアはアメリカの敵対国に高性能兵器を供給すると見られていた。 アメリカが派遣していた2隻の空母、セオドア・ルーズベルトとエイブラハム・リンカーンは中東を離れたと言われているが、これはロシアがイエメンに対艦ミサイルを供与する可能性を考えてのことかもしれない。対艦ミサイルを使われたなら、空母を中心とする艦隊は撃沈される可能性が高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.21
モスクワから北西約400キロメートルの地点にあるトロペツで9月18日に大規模な爆発があり、キノコ雲が撮影されている。トロペツにはミサイル、弾薬、爆発物を保管する兵器庫があり、そのロシアの深奥部にある兵器庫が数百機のドローンによって攻撃されたとされている。ウォロディミル・ゼレンスキー政権はウクライナの治安機関、情報機関、特殊部隊による攻撃だとしている。 兵器は地下深くに保管されているため、ドローンでの攻撃では破壊できないと言われているが、ロシアの深奥部が攻撃されたことは事実。破壊工作チームが潜入したか、現地の工作員が動いた可能性もあるが、ウクライナから長距離兵器で攻撃したとするならば、アメリカ/NATO諸国が支援していた可能性が高い。軍事衛星、偵察機、人的な情報網などで集めた情報なしにロシア深奥部を攻撃することは困難だからだ。長距離ミサイルの場合、アメリカ/NATOがオペレーターがいなければ使用できないだろう。 1991年1月の湾岸戦争でアメリカ主導軍がイラクへ軍事侵攻した際、ソ連軍が動かなかった。そこでネオコンは大胆に軍事力を行使するようになった。ソ連消滅後、ロシア軍も動かないと思い込んでいる。南オセチアやシリアでロシア軍は動き、その強さを示したのだが、それでも強く出れば動かないと信じているようだ。 ロシア政府はアメリカ政府がウクライナ政府に対し、ロシア深奥部を長距離ミサイルで攻撃することを承認したと考えている。もし攻撃があれば、NATO諸国が軍事衛星、偵察機、人的な情報網などで集めた情報を提供、その軍人がオペレーターとしてミサイルを操った、つまりロシアを攻撃したのはウクライナでなくNATOだということになる。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領が「西側の長距離ミサイルをロシアに使用すれば、NATO諸国、アメリカ、欧州諸国がウクライナ戦争の当事者になることを意味する」と発言したのはそうしたことを意味している。「NATO諸国、つまりアメリカと欧州諸国がロシアと戦争状態にあることを意味する」ということだ。 しかし、ネオコンはそうした警告を口先だけだと考え、軍事的な緊張を高めている。敗北濃厚のウクライナを逆転勝利へ導くため、核戦争勃発寸前までエスカレートさせ、核戦争を避けたいロシアを屈服させようとしているように見えるが、ロシアが屈服するとは考えられない。アメリカをはじめとする西側諸国で言論統制が強化されているのも戦争の準備だと考えられる。アメリカ大統領選挙を前にして世界は危険な状況になっている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.20
9月17日と18日にレバノンやシリアで引き起こされたテロ攻撃の捜査を進めているレバノンの警察当局によると、ポケベルを製造したハンガリーを拠点とするBACはイスラエルの情報機関が設立した「企業舎弟」だったという。その企業にライセンス生産を認めた台湾のゴールド・アポロ社がイスラエルの工作にどの程度関係しているのかを今後、調べる必要があるだろう。 イスラエルにはアメリカのNSAやイギリスのGCHQと協力関係にある電子情報機関8200部隊が存在する。この機関は多くの「企業舎弟」を抱え、情報活動に使っている。イスラエルは電子機器だけでなく、中東の重要なインフラにも爆発物を仕掛けていると話す元イスラエル工作員もいる。そうした企業舎弟以外の会社にもエージェントが潜り込んでいる可能性は高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.19
レバノンとシリアでヒズボラとその関係者が使用していた数千台の暗号化ポケベル(ページャー)が9月17日に爆発、10名以上が死亡、数千名が負傷したと伝えられている。爆発したのはリチウムで、爆発を作動させるメッセージが引き金になる。死者の中には8歳の少女も含まれているという。この爆発装置は空港などの検査装置でチェックすることができない。 爆発したと見られるポケベルのブランド名は親イスラエル国の台湾を拠点とするアポロ・ゴールド。同社によるとレバノンやシリアで爆発した製品はハンガリーを拠点とするBACがライセンス生産したものだという。ただ、それを裏付ける証拠は示されていない。 問題のポケベルはレバノンに到着する前に手が加えられとする話も伝えられているが、どのような経緯かはともかく、爆発物を仕掛ける作戦の黒幕はイスラエルの情報機関だと推測されている。アメリカ政府が事前に知らなかったとは考えにくい。 ポケベルに仕込んだ爆発物はイスラエルがヒズボラと全面戦争を始める際に使う予定だったが、ヒズボラ側が作戦に気づくおそれが出てきたことから現時点で使ったとする話も伝えられている。 イスラエルにはアメリカのNSAやイギリスのGCHQと協力関係にある電子情報機関8200部隊が存在する。この機関は多くの「企業舎弟」を抱え、情報活動に使っている。イスラエルは電子機器だけでなく、中東の重要なインフラにも爆発物を仕掛けていると話す元イスラエル工作員もいる。そうした企業舎弟以外の会社にもエージェントが潜り込んでいる可能性は高い。 この8200部隊の入っているグリロット基地はヒズボラの攻撃で破壊されたと見られている。イスラエルが誇ってきた防空システムのアイアン・ドームの無力さが明らかにされるているのだが、この防空システムがイスラエルの好戦的な政策を支えてきた。このまま殺戮と破壊を続けた場合、早晩、イスラエルは破綻してしまう。【追加】 レバノンでは18日に2度目のテロ攻撃があった。ベイルート、南レバノン、ベカーでトランシーバーが爆破されたとされている。2度目のテロ攻撃で14人が死亡、450人以上が負傷したという。このテロ攻撃に合わせてイスラエル軍はレバノン南部を爆撃しているようだ。 アル・アラビーヤによると、日本の無線メーカー、アイコム社製のトランシーバー「IC-V82」が爆発した可能性があるとする話が広がっている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.19
イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)が9月15日、イスラエルのテル・アビブをミサイルで攻撃した。イエメン軍のヤヒヤ・サリー報道官によると、テル・アビブ南部の軍事施設が目標だったという。 イスラエルが誇る防空システム、アイアン・ドームを突破した「パレスチナ2」と名付けられたこのミサイルは2040キロメートルを11分半で飛行したとされているので、時速1万1000キロメートル近く、つまりマッハ8以上ということになる。極超音波ミサイルだ。 イエメン側の主張によるとこのミサイルの射程距離は2150キロメートルで、固体燃料を2段階で作動させる2段式固体燃料ミサイルで、ステルスだという。マッハ16の速度で飛行するというが、これは最高速度という意味だろう。 すでにヒズボラやイランはアイアン・ドームを突破できる能力があることは明らかにされている。例えば、4月1日にイスラエル軍がシリアのイラン領事館を攻撃、IRGC(イスラム革命防衛隊)の上級司令官や副官を含む将校7名を殺害した報復としてイランは4月13日、ドローンやミサイルでイスラエルのネバティム空軍基地、ラモン空軍基地、そしてハルケレン山頂にある「サイト512」基地のAN/TPY-2 Xバンドレーダー施設を攻撃した。大半のミサイルはアイアン・ドームや西側諸国の防空システムを突破、目標にヒットしたと伝えられている。 イスラエルは7月30日にヒズボラの幹部、フアード・シュクルを殺害したが、それに対する報復としてヒズボラは8月25日にレバノンからイスラエルに占領されている地域をミサイルとドローンで報復攻撃した。数百のミサイルを発射してアイアン・ドームと迎撃ミサイルを消耗させた上で無数のドローンを目標に向かわせたという。 ヒズボラによると、この攻撃で目標にしたテル・アビブ近くにあるグリロット基地はイスラエル軍情報部アマンの拠点であり、電子情報機関の8200部隊も入っている。イスラエル側は被害に関する情報の発信を禁止しているが、ヒズボラの情報は事実だと見られている。 イスラエルが誇ってきた防空システムのアイアン・ドームの無力さが明らかにされる中、アンサール・アッラーはテル・アビブを極超音速ミサイル攻撃したわけだが、これをイエメンが独自で開発した可能性は小さい。イランかロシアが供与したと推測されている。イランはイスラエルへの報復の一環として供与する可能性があり、ロシアは米英政府がウクライナに長距離ミサイルをロシア深奥部への攻撃に使う許可を出したことに対する報復として渡す可能性がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.18
ドナルド・トランプは9月15日にフロリダ州ウエスト・パーム・ビーチでゴルフをしていた。その2、3コース前を歩き、安全を確認していたシークレット・サービスの捜査官が金網のフェンス越しにスコープ付きのAK-47ライフルを構えていた人物を発見、発砲したのち、逮捕した。容疑者はライアン・ウェズリー・ラウスとされている。 逮捕後、この人物がウクライナのクーデター体制を支持、2022年6月にはメディアのインタビューも受けている。その年にウクライナで数か月過ごしたと言われ、同国内務省のアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)を支援する集会に参加しているところを目撃された。 アゾフ特殊作戦分遣隊は2014年5月にネオ・ナチの武装部隊として組織され、同年11月には内務省の国家親衛隊に編入された。2014年2月にバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、アメリカの属国体制を築いた。戦略的に重要なアゾフ海沿岸地域のマリウポリを拠点としたことから「アゾフ」という名称が使われたようだ。マリウポリを制圧する際、クーデター軍は戦車部隊を突入させ、少なからぬ住民を殺傷、その様子はスマートフォンなどで世界に発信された。 ウクライナには外人部隊が存在、各国から傭兵、ファシスト、指名手配されている逃亡者、あるいは変人が集まっていると言われている。ラウスはウクライナで戦う傭兵を集めていたとされているが、本人は昨年3月、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、アフガニスタンでタリバーンと戦っていた戦闘員をウクライナへ送り込む取り組みについて話している。 クーデター後、ウクライナへは西側から多額の資金が流れ込み、その資金を当てこんで怪しげな人物も入り込んでいたので、ラウスの話がどこまで事実かは不明だが、もしラウスが実際に傭兵を集める仕事をしていたなら、アメリカの政府機関が彼に関する情報を持っていなかったとは思えない。ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の際、犯人役に仕立てられたリー・ハーベイ・オズワルドを連想する人もいたようだ。今回の暗殺未遂には何か裏があるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.17
アメリカは韓国と8月19日から29日にかけてウルチ(乙支)フリーダムシールド合同演習を、また8月26日から9月7日までにかけて両国は双竜水陸両用上陸演習(海と空の両方)を実施した。9月6日にはドイツと韓国が黄海で合同海軍演習を行なっているが、そのドイツの艦船2隻、フリゲート艦バーデン・ヴュルテンベルクと補給艦フランクフルト・アム・マインが台湾海峡を通過、中国を挑発している。 9月5日にはフォーマット2+2会議がオーストラリアのビクトリア州クイーンズクリフで開催され、同国のペニー・ウォン外相とリチャード・マーレス国防相、そして日本の上川陽子外相と木原稔防衛相が参加。アメリカはオーストラリアを西太平洋における彼らの軍事的な拠点にしつつある。 アメリカは2017年11月、オーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更したが、これはインド洋から太平洋にかけての海域を一体のものとして考えるということだろう。 2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。そして2021年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があり、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。 その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 こうした動きに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘しているが、その通りだ。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにしている。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。自力開発が難しいのか、事態の進展が予想外に早いのだろう。 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。 太平洋におけるアメリカの軍事拠点になりつつあるオーストラリアでは言論統制が強化されている。同国のアンソニー・アルバニージ首相はソーシャル・メディア・プラットフォームへの誤情報対策法案を提出した。これが成立すると、基準を満たさなかった企業に年間売上高の最大5%の罰金を科す権限を規制当局は持つことになる。 プラットフォームXを所有するイーロン・マスクはこの法案を提出したオーストラリア政府をファシストと呼んだ。アルバニージは激怒しているが、オーストリア政府が言う誤情報対策とは、政府にとって都合の悪い情報を封印する仕組みにほかならず、検閲法案だと言わざるをえない。マスクの表現は間違っていないということだ。 オーストラリアをコントロールしているアメリカやイギリスの支配層はウクライナの戦況やガザの惨状、あるいは「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の深刻な副作用に関する情報を隠蔽しようとしてきた。こうした情報も誤情報対策法の対象になるはずだ。 アメリカやイギリスでは外交部門がロシアとの全面戦争へ向かっている。彼らはすでに戦時体制下にあり、情報統制を強化しているとも考えられる。 NATO諸国から供与された長距離精密ミサイルをロシア国内の重要な軍事目標に対して使用することを認めることをアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とイギリスのデイビッド・ラミー外務大臣はキエフで強く示唆したと報道された際、ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ軍に西側諸国から供給された最先端の高精度長距離システムを使用する能力はないと指摘、事実上、NATOとロシアが直接的な軍事衝突を意味すると警告している。ロシアがNATO諸国を直接攻撃する局面がありうるということだ。 そうした中、ロシアは9月10日から16日までオーシャン2024と名付けられた演習を太平洋、北極海、地中海、カスピ海、バルト海で実施、大西洋に原子力潜水艦11隻を配備したとも言われている。ロシアに対する大規模な攻撃をアメリカが始めたなら、ロシアはアメリカ本土を攻撃すると警告していると見られている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.16
ガザでパレスチナ人虐殺を続けているイスラエル軍はヨルダン川西岸でも住民弾圧を強化、9月6日にはイスラエル人による違法入植地拡大に抗議していたアメリカの人権活動家アイセヌル・エズギ・エイギを射殺した。その前に11人の入植者がパレスチナ人や支援者を鉄パイプなでで襲撃している。エイギらは平和的に活動していたが、イスラエル兵は彼女の頭部を狙撃したと伝えられている。 ガザでは昨年10月から4万1000人以上の住民が虐殺され、そのうち約4割が子ども、女性を含めると約7割に達すると言われているが、それは瓦礫の下に埋まっている遺体を勘定に入れないでのことだ。こうした実態を封じ込めるため、現地で取材しているジャーナリストも攻撃の目標になり、犠牲になってきた。本人だけでなく家族が狙われるケースもある。 アル・アフバール紙のレバノン人ジャーナリスト、アマル・ハリルの場合、「レバノンを離れなければ首を切る」と言われたという。同紙のファラー・オマールやラビー・アル・マーマリはロイターのイサム・アブダラーと同様、殺されているため、ハリルへの脅しは深刻だ。 また最近、オーストラリアの有名ジャーナリスト、メアリー・コスタキディスはイスラエルを批判するXのツイート2件をリツイートしたことから人種差別法違反の疑いで告訴された。ヒズボラ指導者ハサン・ナスララの演説を撮影したビデオを含む書き込みのリツイート、イギリスのジャーナリスト、リッチ・メドハーストによる書き込みのリツイートが問題にされた。 メドハーストはイスラエル軍によるガザでの虐殺を伝えていたジャーナリストで、虐殺を続けるイスラエルやその虐殺を支えている欧米諸国から睨まれていた。彼は8月15日、ロンドンのヒースロー空港で逮捕されている。 ガザ地区への侵略と大量虐殺戦争の開始以来、殺されたジャーナリストは172人に上り、数百人がイスラエル占領下の刑務所や拘留施設に拘留され、最も凶悪な虐待や拷問を受けているという。イスラエル軍はジャーナリストを意図的に攻撃している。 ウクライナでもジャーナリストが狙われている。 西側の有力メディアの仕事をしている記者はウクライナ軍が支配している地域に入るだけだが、ドンバスの反クーデター軍が支配している地域で取材してきたジャーナリストもいて、アメリカやその属国の政府にとって都合の悪い事実を伝えてきた。そうしたジャーナリストも弾圧の対象になっている。 ドンバスではドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者らが取材を続けてきた。ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収されている。獄中で拷問の末に死亡したゴンサロ・リラもそうしたジャーナリストに含まれる。 イスラエルによる虐殺を暴き、ウクライナの実態を伝えていたアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターはパスポートを空港で押収され、家宅捜索を受けている。 ウクライナやガザでの状況は現地からの情報として世界に発信され、西側有力メディアの嘘を知る人は少なくない。そうした情報を発信する有力な手段のひとつがテレグラムだが、そのCEOを務めるパベル・ドゥロフが8月24日にパリのル・ブルジェ空港で逮捕された。 ドゥロフはプライベート・ジェットでアゼルバイジャンからフランスへ向かったのだが、そのジェットのパイロットがフライト・プランを提出した時、フランスで逮捕令状は出ていない。飛行中に出たという。 フランスでの報道によると、パベルは警察に対し、エマニュエル・マクロン大統領と夕食を共にするためにパリを訪れたと語ったとも伝えられている。西側の支配者に睨まれていることがわかっていながら彼はパリを訪問した。そうした行動に疑問に感じる人は少なくないが、大統領と会う約束があったとするならば、納得できる。 偽パンデミックを演出し、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」と名付けられた遺伝子操作薬の危険性を訴えていたドイツ人弁護士のライナー・フュールミッヒは現在、ドイツの刑務所に収監されている。「コロナ調査委員会」でフュールミッヒのパートナーを務めていたビビアン・フィッシャーにこの委員会が集めた寄付金を横領したと訴えられ、昨年10月に逮捕された。フュールミッヒに対する容疑は立証されていないようだが、有罪判決はすでに書き上げられているとも言われている。 内部告発を支援していたWikiLeaksの象徴であるジュリアン・アッサンジは長期にわたって刑務所で拘束され、ウクライナに住みながら同国のクーデター体制を取材していたチリ系アメリカ人ジャーナリストのゴンサロ・リラは刑務所内で拷問され、死亡している。 事実を伝えようとするジャーナリストや活動家が弾圧され、殺されている一方、有力メディアは西側支配層の宣伝機関として活動し続けている。その代表格のように見られているCNNだが、このメディアが報道を放棄した時期がある。 CNNは1998年6月、アメリカ軍のMACV-SOG(ベトナム軍事援助司令部・調査偵察グループ)が1970年に逃亡米兵をサリンで殺害したと報じている。その作戦名はテイルウィンド(追い風)。CNNは軍関係者だけでなく有力メディアから攻撃され、調査を行ったふたりのプロデューサーは誤報だと認めるように要求されるが拒否、解雇された。そのひとり、エイプリル・オリバーによると、放送では示されなかった重要な情報をCNNは隠しているという。 その作戦に関する重要な証言をしたひとり、トーマス・ムーラー提督は1970年から74年まで統合参謀本部議長を務めた人物。それに対し、MACV-SOGは情報機関と特殊部隊が母体で、指揮系統は正規軍と別である。つまりムーラー提督はテイルウィンドと無関係であり、沈黙を守る必然性もなかった。 その放送の翌年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群の隊員が2週間ほどCNNの本部で活動していたことも明らかになっている。「産業訓練」というプログラムの一環で、編集に直接はタッチしていなかったとしても、心理戦の部隊を受け入れると言うこと自体、報道機関としては許されない行為だ。アメリカ軍の広報担当だったトーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。 この事実を最初に報じたのはフランスのインテリジェンス・ニューズレターで、オランダのトロウ紙が2000年2月21日に後を追う。アメリカ軍の広報担当、トーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。(Trouw, 21 February 2000) そして2001年9月11日、あの事件が起こった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.15
NATO諸国から供与された長距離精密ミサイルをロシア国内の重要な軍事目標に対して使用することを認めることをアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とイギリスのデイビッド・ラミー外務大臣はキエフで強く示唆したと報道された。 これに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月12日、サンクトペテルブルクで開かれた国際文化フォーラムに出席した後、この件について報道陣に語った。キエフ政権はすでに無人航空機やその他の手段を使って攻撃を行っているとした上で、ふたつのことを指摘した。 まず、ウクライナ軍には西側諸国から供給された最先端の高精度長距離システムを使用する能力はないということ。衛星からの情報データなしにそうした兵器は使用できないため、EU、アメリカ、常識的に考えるとNATOの衛星を使うしかない。そして兵器を操るオペレーターとしてNATOの軍人を送り込む必要がある。 つまり、NATO諸国がロシアとの軍事衝突に直接関与することを意味するとしているのだが、こうしたことはすでに指摘されていた。それをロシアの大統領が確認したということだ。これはロシアがNATO諸国を直接攻撃する局面がありうるということでもある。 2022年2月にロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた直後、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はイスラエルやトルコを仲介役としてロシアのプーチン政権と停戦交渉を開始、3月5日には停戦が内定、仲介していたイスラエルナフタリ・ベネット首相はドイツへ向かい、シュルツと会っている。 ところが、その3月5日にウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。現在のSBUはCIAの下部機関だ。 4月9日にはイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。 それ以降、ウクライナでの戦闘はロシア軍とNATO軍の戦いという様相を強めていき、ロシア軍の報復攻撃の質も変化してきた。最近は西側が送り込んだ特殊部隊員、傭兵、オペレーターなどをターゲットにするようになっている。 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃した際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。 最近の例では「ポルタバ軍事通信大学の士官候補生」が攻撃され、そこにいた情報・監視・偵察、電子戦の専門家700名が全滅したと推測する人もいる。一部報道によると、死亡したNATO要員の多くはスウェーデン人で、早期警戒管制機サーブ340 AEW&Cの使用をウクライナ人要員に訓練するために派遣されていたという。その直後、同国のトビアス・ビルストロム外相は辞任すると発表した。この辞任とロシア軍の攻撃に因果関係があるかどうか不明だが、「奇妙な偶然」に興味を持つ人は少なくない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.14
アメリカ政府はソ連が消滅した1991年からウクライナを支配するための工作を開始、2013年までに50億ドルをウクライナに投入したとアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は2013年12月13日に米国ウクライナ基金の大会で明らかにしている。ヌランドが立った壇上には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。 それを含め、ウクライナの対外債務は増加し続け、IMFや同国の財務省によると、対外債務は1037億9000万ドル、公的債務の総額は1521億6000万ドルになる。今年7月31日にウクライナ政府は債務返済を一時的に停止することを可能にする法律を発動、8月から債務返済を停止した。2022年7月にウクライナは2年間の支払い猶予が認められたが、その期限が今年8月1日だ。 ウクライナのクーデター体制は金融資本に支配されている。表に出ているのは「闇の銀行」とも呼ばれている資産運用会社のブラックロック(アメリカ)やアムンディ(フランス)。西側から供給される兵器や資金の使い道についてアドバイスしているのはブラックロックだという。そのほか、JPモルガンやゴールドマン・サックスともゼレンスキー政権は協力関係にある。ちなみに、軍需産業も医療産業も闇の銀行に支配されている。 債務の支払い猶予期限が来る2カ月前、ロスチャイルド&Coはこうした金融会社とウクライナ政府を直接会談させたと伝えられている。ロスチャイルド資本が金融会社やウクライナ政府に今後の計画を示したのかもしれない。 西側の金融資本がウクライナへ多額の資金を融資している目的のひとつは言うまでもなくカネ儲けである。ウクライナは穀倉地帯が広がり、豊富な資源を抱えている。例えばチタン、マンガン、鉄鉱石、水銀、石炭など。そうした資源を「担保」にしたレベレッジド・バイアウトを行なっているのだろう。勿論、西側資本は石油も狙っている。だからこそ、ヌランドが立った壇上にシェブロンのマークが飾られていたのだ。 ウクライナにおける怪しげな工作で中心的な役割を果たしていると見られているのが「ブリスマ」だ。この会社はミコラ・ズロチェフスキーが設立したウクライナのエネルギー会社で、その重役には元ポーランド大統領のアレクサンデル・クファシニェフスキー、元CIA高官のジョセフ・コファー・ブラック、ジョー・バイデン大統領の息子であるハンター・バイデンも名を連ねていた。ブラックはブラックウォーター(後にXe、そしてアカデミに名称変更)の副会長を務めている。 2014年4月16日、ハンター・バイデンはビジネスパートナーであるデボン・アーチャーとホワイトハウスで会談し、その5日後にはウクライナを訪問、アーチャーは4月22日に、またハンターは5月12日にそれぞれブリスマの取締役会に加わった。2014年11月から15年11月までの期間、ブリスマはハンターやアーチャーが経営するロズモント・セネカ・ボハイなる会社へ350万ドル支払っている。 アーチャーはサリバンと同じようにエール大学の出身。そこでルームメートだった人物がジョン・ケリー元国務長官の義理の息子であるクリス・ハインツだ。 アメリカ政府はウクライナを従属させるため、中立政策をとるビクトル・ヤヌコビッチを2度にわたって排除している。最初は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」。ジョージ・W・ブッシュ政権は西側の金融資本とつながるビクトル・ユシチェンコを大統領に据えたが、彼の新自由主義政策は国全体の経済力を低下させ、貧富の差を拡大させた。 そこで、2010年の大統領選挙でもヤヌコビッチが勝利したのだが、その際、WHOはパンデミックを宣言、ウクライナで致死的な豚インフルエンザが発生したとも報道された。そうした実態はなく、戒厳令を発令するための政治的な報道だったと言われている。 そして2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権はクーデターでヤヌコビッチ政権を倒した。手先として動いたのはネオ・ナチ。このクーデターではヤヌコビッチを抹殺する予定だったとも言われている。 ちなみに、クーデターが始まる前年の2012年5月にジェイコブ・ロスチャイルドとデイビッド・ロックフェラーは手を組んでいる。ジェイコブ・ロスチャイルド氏が率いる投資会社RITキャピタル・パートナーズがデイビッド・ロックフェラーのロックフェラー・ファイナンシャル・サービシズが発行している株式の37%を取得すると発表したのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.14
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とイギリスのデイビッド・ラミー外務大臣はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーと9月11日にキエフで会い、西側諸国から供与された長距離ミサイルをロシア国内の重要な軍事目標に対して使用することを認めることを強く示唆したという。ロシア政府を刺激することは間違いない。 こうした兵器がウクライナが使用する場合、軍事衛星や偵察機からの情報が必要で、オペレーターもNATOから送り込む必要がある。当然のことながら、そうした西側の要員もロシア軍による報復のターゲットになるはず。すでにNATO諸国の特殊部隊員や傭兵、あるいはオペレーターがロシア軍の攻撃で死傷しているが、今後、犠牲者が増える可能性がある。 アメリカやイギリスの「外交部門」がこうした好戦的な主張をしている。これまで彼らは外交的な解決を潰し、話し合いで解決する道を断ってしまった。ウクライナ、つまりアメリカやイギリスが負けているという印象が広がることを彼らは恐れ、虚勢を張るしかないのだろう。 ウクライナ軍が8月6日にクルスクへ軍事侵攻した。兵力は1万人から3万人だったと言われている。数少なくなった軍事車両を投入、ドンバスからも兵力割いたようだが、ウクライナ軍の兵士を死傷させ、兵器を破壊するだけだった。 ロシアがクルスクに配置していたのは国境警備隊で、装甲車両を連ねた部隊に当初は対抗することができなかったが、すぐに航空兵力で反撃を開始、続いて予備兵力も投入されてウクライナ軍を包囲しながら殲滅している。兵力が裂かれたドンバスではロシア軍の進撃スピードが上昇した。 クルスクへの軍事侵攻がこうした展開になることは予想されていたことで、軍人が計画したとは思えないと言う人もいる。「ウクライナ軍は勝っている」というイメージを演出したい何者かが軍事を無視して実行させたのではないかと言うのだ。 長距離ミサイルのロシア深奥部への攻撃に使うことを許すという決定を正当化するため、ロシアがイランから弾道ミサイルを受け取っているとブリンケンは9月10日に主張したが、そうした主張の根拠や証拠は示していない。 兵器の製造能力を比較すると、ロシアはNATO全体の数倍だと言われ、その性能もロシアが上回っている。高性能兵器をロシアがイランから受け取っている可能性は小さい。ロシアとイランもそうした主張を否定している。 ロシア深奥部に対する攻撃にアメリカの国防総省は反対していると言われている。そうした攻撃を実行した場合、ロシアはそれに応じた報復をすることが確実だからだ。ロシアが直接攻撃しなくても、イラン、シリア、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)にロシア製の高性能兵器、例えば防空システム、長距離ミサイル、対艦ミサイルなどを供与することは想定できる。対艦ミサイルは地中海、紅海、アラビア海などにいるアメリカの艦隊にとって脅威だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.13
1973年9月11日にチリでオーグスト・ピノチェトが主導する軍事クーデターがあった。ピノチェトを操っていたのはCIAの破壊工作部門であり、その背後にはリチャード・ニクソン大統領の国家安全保障補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーがいた。ピノチェト政権が導入した新自由主義をイギリスの首相だったマーガレット・サッチャーが欧米で初めて採用、その後世界を席巻することになる。 新自由主義はレッセフェール(自由放任主義)に近く、市場を絶対視する。その市場は資金力や情報力が同じ圧倒的多数の個人、または組織が取り引きすることを前提にしているが、そのようなものは存在しない。資金にしろ情報にしろ、強大な能力を持つ私的権力が市場には存在し、公正な取り引きなどはありえない。必然的に富は強大な私的権力へ集まり、彼らの力は雪だるま式に大きくなる。 2001年9月11日にはニューヨークのWTC(世界貿易センター)とバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された。いわゆる9/11だ。 WTCの場合、ツインタワーだけでなく、攻撃を受けていない7号館(ソロモン・ブラザース・ビル)も爆破解体のように崩壊、そこに保管されていた金塊、エンロンや国防総省の使途不明金に関する捜査資料は消えてしまった。 ネオコン(新保守主義)に担がれたジョージ・W・ブッシュ大統領は詳しい調査をしないままアル・カイダが実行したと断定、その象徴的な存在だったオサマ・ビン・ラディンを首謀者だと主張した。 しかし、攻撃直後にオサマ・ビン・ラディンはその攻撃に自分たちは関与していないと主張、9月16日にはカタールのテレビ局、アル・ジャジーラに送った声明の中で、やはり自分たちが実行したのではないとしている。 そもそもアル・カイダとはCIAがアフガニスタンでソ連軍と戦わせるために訓練した戦闘員の登録リストであり、そうした武装組織は存在しない。イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは05年7月、「アル・カイダ」についてCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだと説明している。この指摘をした翌月、2005年8月6日にクックは休暇先のスコットランドで散歩中に心臓発作で急死した。 アル・カイダの仕組みを1970年代に作り上げたのはズビグネフ・ブレジンスキーであり、アフガニスタンへ戦闘員を送り込む仕事をしていたひとりがサウジアラビアの富豪の息子、オサマ・ビン・ラディン。このビン・ラディンをジハード(聖戦)の世界へ引き込んだのはムスリム同胞団のアブドゥラ・アッザムだと言われている。 ビン・ラディンは1984年にアッザムと一緒にMAK(礼拝事務局)のオフィスをパキスタンのペシャワルで開設。このMAKがアル・カイダの源流だと考えられている。戦闘員の中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だ。 ウェズリー・クラーク元NATO欧州連合軍最高司令官によると、9月11日の攻撃から10日ほど後、統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。そこのスタッフは攻撃する理由がわからないと口にしていたという。 その6週間ほど後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。そこに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。5年間に7カ国を破壊することになっていた。いずれも9/11とは無関係の国だ。 9/11を利用し、憲法の権利条項を停止させる「PATRIOT法(愛国者法)」がその年の10月26日に発効した。この法律は「テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化する2001年法(Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001)」の略語だ。 この法律は340ページを超す代物だが、それを議会は提出されて1週間で承認、憲法の機能を停止させてしまった。この法律によってアメリカでは令状のない盗聴や拘束、拷問が横行することになった。国内の治安機能を強化するため、2002年10月にはUSNORTHCOM(アメリカ北方軍)が設置された。 ドナルド・ラムズフェルド国防長官は9/11の直後、偽情報を外国メディアの報道内に埋め込み、民衆の心理を操ろうとした。そのために設置された機関がOSI(戦略影響局)。この機関の存在が発覚するとラムズフェルドは廃止を宣言するが、実際に廃止されたことを裏付ける証拠はない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.12
昨年11月、アメリカは23億5000万ドルでブロックIVタイプ200発とブロックVタイプ200発、2種類のトマホークを売却することを承認、今年1月にトマホーク購入の契約が成立した。 ここにきて注目されているのはタイフォン・ミサイル・ランチャー。陸上配備の多目的SM-6ミサイルと巡航ミサイルのトマホークを発射できる。今年4月にタイフォンがフィリピンに作戦配備され、9月4日にはアメリカが日本側へ「タイフォン」ミサイルシステムの配備を通知したとクリスティーン・ウォーマス米陸軍長官は述べた。 アメリカでは1992年2月、ネオコンが国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。このウォルフォウィッツが中心になってDPG草案は書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 その中でドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐと謳われている。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは1995年だ。 明治維新以降、第2次世界大戦も前も後も、一時期を除き、日本はイギリスやアメリカの傭兵として活動してきた。アル・カイダやネオ・ナチと似たような役回りだ。そうしたことを口にした総理大臣もいた。 イスラエルは米英が中東に作り上げた「不沈空母」だとするならば、日本は彼らは東アジアに作り上げた「不沈空母」であり、米英にとってウクライナがロシアを制圧する拠点だとするならば、日本は中国やロシアを破壊する拠点だ。 1982年11月に内閣総理大臣となった中曽根康弘は翌年の1月にアメリカを訪問、ワシントン・ポスト紙の編集者や記者たちと朝食をとるが、その際に彼はソ連のバックファイア爆撃機の侵入を防ぐため、日本は「不沈空母」になるべきだと言ったと報道された。 中曽根はそれをすぐに否定するが、発言が録音されていたことが判明すると、「不沈空母」ではなく、ロシア機を阻止する「大きな空母」だと主張を変える。このふたつの表現に本質的な差はなく、日本列島がアメリカ軍がロシア軍を攻撃するための軍事拠点だと中曽根は認めたのである。 ニューヨーク・タイムズ紙は今年2月25日、CIAが2022年までの10年間にウクライナのロシアとの国境沿いに12の秘密「前方作戦基地」を設置したと書いているが、中国で共産党政権が成立する直前、OPC(後にCIAの破壊工作部門の中核になる)の拠点が日本に設置されている。1950年代には沖縄全域を軍事基地化し、中国やソ連に対する先制核攻撃の準備を整えている。 現在、ロシアと中国は共同で極東地域の開発を進めている。ロシアの極東開発と中国東北部の活性化だが、そこへ朝鮮、モンゴル、ASEAN(東南アジア諸国連合)を巻き込もうとしている。現政権はアメリカに従属しているものの、韓国、台湾、フィリピンの国民はこの経済圏へ加わることに魅力を感じているようだ。そうした中、日本は自らが破滅することを厭わずアメリカへ従属しようとしている。 日本の「エリート」はアメリカ信仰の持ち主で、アメリカに従っていれば自分たちも傍若無人な振る舞いが許されると思っているようだが、所詮は手先にすぎいない。「日米同盟」などは戯言。そうした「エリート」は日本の国土と国民を米英の私的権力へ叩き売ることで自分たちの富と地位を手にし、維持しているのだ。 しかし、日本の「エリート」が信奉しているアメリカの私的権力、つまり支配者は衰退している。軍事力だけでなく知的水準も低下、プロパガンダ機関によって描く幻影で人びとをコントロールしているが、その手法も限界がきている。言論統制を強化しているのはそのためだが、そうした行為は支配システムをさらに揺るがすことになる。 こうした状況にあるにもかかわらず、アメリカの支配層は世界を自分たちの所有物だと今でも信じている。彼らの暴力装置である国防総省は準中距離、あるいは中距離弾道ミサイルをロシア、中国、朝鮮の周辺に配備、先制攻撃能力を高め、そうした国々を追い込もうとしている。アメリカがヨーロッパで行っていることと同じだ。 国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表した。専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたというが、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。 RANDが計画を発表する前から準備は進んでいた。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入された。その後、朴槿恵は失脚している。 2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点への先制攻撃が可能。「専守防衛」は日本の国内に向けた宣伝文句にすぎず、アメリカは先制攻撃を想定している。 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。 そしてトマホーク購入の契約成立。アメリカは2010年代に作成した中露に対する攻撃計画を状況が大きく変化した現在も変えずに実行しようとしている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.11
韓国の韓正副主席が9月6日から8日までモンゴルを訪問、7日には同国のロブサンナムスライ・オユン-エルデネ首相と会談した。両国関係の深化、協力の拡大について話し合われ、韓副主席はエネルギーやインフラの建設での協力などを求めたという。 韓副主席はその直前、EEF(東方経済フォーラム)へ出席するためにロシアを訪問、4日にはウラジミル・プーチン大統領と会談、その際、ロシア極東地域の発展と協力を積極的に支持、そして参加すると語ったという。中国東北部の活性化とロシアの極東開発を連携させようということだが、それだけでなく中国、モンゴル、ロシアを結ぶ経済回廊を加速させて人の交流も盛んにしようとしている。 ロシアのプーチン大統領は9月2日、モンゴルのウランバートルにあるチンギスハーン国際空港に降り立ち、歓待を受けた。歓迎レセプションでは儀仗兵と伝統的なモンゴル騎兵隊に扮した騎馬隊が登場、両国の国歌が演奏され、プーチン大統領は少女から赤いバラの花束を贈られている。 プーチン大統領はモンゴルのウフナーギン・フレルスフ大統領をカザンで開かれるBRICS首脳会議に招待、フレルスフ大統領は招待を受け入れることを確認した。この首脳会議は10月22日から24日にかけて開催される予定だ。 ICC(国際刑事裁判所)は3月17日、ロシアのウラジミル・プーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行した。子どもを「ウクライナから強制移住させた」ことが理由だというが、実態は違う。ウクライナ軍によるドンバス攻撃が切迫する中、子どもを含む住民を避難させたのだ。これを犯罪行為だとICCは主張、モンゴル政府に対してプーチン大統領を逮捕するように求めたものの、無視された。 本ブログでも指摘したことだが、ウクライナでは人身売買が横行、子どもの売買で重要な役割を果たしていると疑われている慈善団体が存在する。ウォロディミル・ゼレンスキーの妻、エレナ・ゼレンスカヤの財団だが、ICCは問題にしていない。 フランス人記者のロベル・シュミットの調査によると、未成年の子ども数十人がウクライナから連れ出されて、その多くが性的搾取を稼業とする犯罪組織に引き渡されたとする元財団従業員の証言がある。ゼレンスカヤの財団がフランス、イギリス、ドイツの小児性愛者へ子どもを組織的に引き渡していたことを示す内部文書をシュミットは入手したともいう。 衰退しつつある帝国アメリカは民主主義を装う余裕をなくした。有力メディアを支配下においてプロパガンダ機関化し、事実を伝える人や団体を露骨に弾圧しているのもそのためだ。刑務所で拘束されたり金融口座を閉鎖されたジャーナリストも少なくない。中には獄中死した人もいる。ICCのような国際機関がアメリカに操られていることも明確になってしまった。アメリカを中心として支配システムは崩れ始め、新たな仕組みが築かれようとしている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.10
イスラエルの大量虐殺 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナからパレスチナ人を一掃しようとしている。イスラエル軍がガザ住民を大量虐殺する中、ジョー・バイデン政権は「停戦案」を提示したというが、これは11月の大統領選挙をにらんだパフォーマンスにすぎないだろう。ヨルダン川西岸でも虐殺が始まった。ネタニヤフがパレスチナ人との停戦や和平を真剣に考えているとは思えない。虐殺を継続させるための時間稼ぎだと推測する人もいる。イスラエルを支援しているアメリカをはじめとする欧米諸国もそうしたことを熟知しているはずだ。 昨年10月7日にハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、「われわれの聖書(キリスト教における旧約聖書)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用しているのだが、そこには神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。アマレク人は歴史の上で存在が確認されていないが、この民族をパレスチナ人と重ねていることは確かだろう。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだ。ネタニヤフの思考の中にはパレスチナ国家どころかパレスチナ人も存在しないだろう。イスラエル政府が行おうとしていることは併合でなく民族浄化だ。ピューリタンとシオニズム パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうというシオニズムがイギリスに出現したのは16世紀のことである。スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)は自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑された。イギリスにおける宗教改革で中心的な役割を果たしたのはカルバン派に属すピューリタン。その革命で重要な役割を果たした人物がオリヴァー・クロムウェル。彼の私設秘書だったジョン・サドラーもジェームズ6世と同じように自分をイスラエルの王と考えていたようだ。 実権を握ったクロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧、さらにアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺する。侵攻前の1641年には147万人だった人口は侵攻後の52年に62万人へ減少。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 クロムウェルを支援していた富裕層の中にポルトガル出身のフェルナンデス・カルバジャルというコンベルソ(ユダヤ教からキリスト教へ改宗した人びと)が含まれていた。イングランドでは13世紀からユダヤ教徒が追放されていたが、クロムウェルとカルバジャルの関係も一因になり、再び移民を認めようという動きが現れる。その中心的な存在がポルトガル出身でオランダのラビ(ユダヤ教の聖職者)だったメナセ・ベン・イスラエルだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) しかし、このピューリタンの体制は長く続かなかった。クロムウェルは1658年9月に死亡、その2年後に王政復古、一部のピューリタンはアメリアへ亡命している。 ピューリタンは1620年にメイフラワー号でアメリカへ渡り、ピルグリム(巡礼者)・ファーザーズと呼ばれるようになるが、北アメリカでイギリスが植民した地域でピューリタンは「新イスラエル」を建設していると信じていたという。その過程で先住民であるアメリカ・インディアンは虐殺された。アメリカでは先住民が「アマレク人」だった。 このように、シオニズムはイギリスから始まり、アメリカへ広がっていく。ユダヤ教シオニストが現れるのは19世紀になってからだ。1896年にセオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』という本を出版している。バルフォア宣言 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。これがいわゆる「バルフォア宣言」だ。 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃した。イスラエル建国 シオニストはパレスチナからアラブ人を追い出すため、1948年4月4日に「ダーレット作戦」を始めるが、これは1936年から39年にかけて行われたパレスチナ人殲滅作戦の詰めだったという見方もある。1948年当時、イスラエルの「建国」を宣言したシオニストの武装組織に対して無防備な状態となっていた。 4月6日にはハガナ(後にイスラエル軍の母体になった)の副官、イェシュルン・シフがエルサレムでイルグン(シオニストのテロ組織)のモルデチャイ・ラーナンとスターン・ギャング(同)のヨシュア・ゼイトラーに会い、ハガナのカステル攻撃に協力できるかと打診。イルグンとスターン・ギャングは協力することになる。 まず、イルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンという村を襲うが、この村が選ばれた理由はエルサレムに近く、攻撃しやすかったからだという。村の住民は石切で生活し、男が仕事で村にいない時を狙って攻撃するプラン。早朝ということで、残された女性や子どもは眠っていた。 国連総会で1948年12月に採択された決議194号はシオニストに追い出されたパレスチナ人が故郷に帰還することを認めているが、実現していない。皆殺しの最終兵器 パレスチナ人を皆殺しにしようとしていることをネタニヤフ政権は隠していない。西側の有力メディアはその宣言を聞かなかったことにしているだけだ。 アメリカやイスラエルは小型核兵器を使っているという噂が以前から流れている。そして現在、アメリカ平和情報評議会(APIC)とイギリスのグリーン・オーディットは、イスラエルがガザと南レバノンで小型核兵器を使用している可能性について調査しているという。 クリストファー・バスビー教授によると、ガザやレバノン南部の爆撃地域を走行した救急車のエンジンエアフィルター、爆撃地域に住んでいる人の髪の毛、爆撃痕跡のガイガーカウンターの測定値と土壌サンプルを提出するよう求めているようだ。この調査への協力をレバノン赤十字社は拒否しているともいう。 イスラエル軍は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻してヒズボラに敗北した。その際にイスラエルが誇るメルカバ4戦車も破壊されている。 その侵攻作戦の直後にバスビー教授はレバノンへ入り、残されたクレーターを調査したところ、濃縮ウラニウムが見つかったという。レバノンやガザを走っていた自動車のフィルターからもそうした物質が発見されたという。同教授はイラクの2011年10月にイラクのファルージャでも調査、そこで濃縮ウラニウムが人の髪の毛や土の中から検出されたと語っている。 バスビーによると、彼が濃縮ウラニウムに関する調査を始めた切っ掛けは、キアムにあるイスラエルの爆弾の穴が放射能に汚染されているという2006年の記事。レバノンの新聞が掲載したという。アリ・コベイシ博士がガイガーカウンターをクレーターに持ち込んでクレーター内の放射線レベルを調べたところ、近隣の20倍であることを発見したとされている。こうした発見に基づく記事をロバート フィスクが2006年10月、イギリスのインディペンデント紙に書いている。 ファルージャに放射性物質の汚染があることは知られていたが、劣化ウラン弾によるものだと理解されていた。その理解が濃縮ウランの発見で揺らぐことになる。 バスビーはイタリアの核物理学者、エミリオ・デル・グイディーチェから濃縮ウランがなぜ存在しているのかという理由を2006年に聞いたという。 グイディーチェは1970年代初頭の超弦理論のパイオニアで、後にイタリアのINFN(国立原子核物理学研究所)でジュリアーノ・プレパラータと共同研究している。 そのグイディーチェによると、ウランに重水素を溶かした野球ボールほどの弾頭を固体に向けて発射すると水素は常温核融合を起こしてヘリウムになり、強力なガンマ線を放出するという。高温の放射線フラッシュと中性子で人を殺す新しいタイプの核兵器で、セシウム137のような核分裂生成物は出さないという話だった。この兵器をアメリカはファルージャやコソボで使用したとバスビーは説明している。 ドミニク作戦をアメリカは1962年10月、太平洋で一連の核兵器実験を実施している。ドミニク作戦だ。その中にジョンストン島で行われたホーサトニックと名付けられた実験がある。ウィキペディア(英文)でさえ、アメリカ最後の核兵器空中投下で、99.9%クリーンであると報告されたとされている。 バスビーの解説によると、フラッシュを直接浴びた場合、体の一部、腕、脚、遮蔽物のない場所が黒焦げになり、エアロゾル化したウランの粉塵は吸い込まれて肺を破壊し、リンパ系に移行してリンパ腫や白血病を引き起こす。ウランの粒子が臓器に蓄積すれば癌の原因になる。ウラン粒子が飲み込まれると、大腸で固定化され、そこでがんを引き起こす可能性がある。また遺伝的な影響、乳児死亡率の上昇、先天性奇形、流産、出生時の性比の乱れ、不妊なども指摘されている。 イスラエルは世界有数の核兵器保有国である。その実態を初めて具体的に告発者したのはモロッコ出身のモルデカイ・バヌヌ。1977年8月から約8年間、技術者としてディモナの核施設で働いていた。彼の証言は1986年10月にサンデー・タイムズ紙が掲載した記事に書かれている。それによると、その当時、イスラエルが保有していた核弾頭の数は150から200発。水素爆弾をすでに保有し、中性子爆弾の製造も始めていたという。中性子爆弾は実戦で使う準備ができていたとしている。後にカーターはイスラエルが保有する核兵器の数を150発だとしている。 また、イスラエルの軍情報機関ERD(対外関係局)に勤務、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベン-メナシェによると、1981年時点でイスラエルがサイロの中に保有していた原爆の数は300発以上。水爆の実験にも成功していたという。(Seymour M. Hersh, "The Samson Option", Faber and Faber, 1991)**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.09
リチャード・チェイニーとリズ・チェイニーの親子は11月に予定されているアメリカ大統領選挙でカマラ・ハリスに投票すると発言した。この親子はネオコンの中核グループの一員であり、ネオコンに担がれていたジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務め、ネオコンの政策を実現しようとしているハリスを支援するわけで、不思議ではない。 ハリスは2004年1月から11年1月までサンフランシスコ第27地区検事を、また11年1月から17年1月までカリフォルニア州司法長官を務めているが、州司法長官だった当時、ハリスは冤罪の可能性が高いと言われているケビン・クーパーという死刑囚のDNA鑑定を求める訴えを退けている。 ハリスは自分自身を「進歩派」と称しているが、決して進歩的な検察官ではなく、社会的強者には優しく、弱者には厳しかったと指摘されている。だからこそ副大統領になれ、大統領候補に選ばれたと言えるだろう。 州司法長官時代のカマラは人びとを刑務所へ入れることに熱心で、不登校の子どもの親も刑務所へ送り込んでいたほか、安い労働力を確保するため、保釈金を引き上げて仮出所を拘束し続けたと伝えられている。 それに対し、社会的に強い立場の人には寛容で、例えば支払いが滞っている自宅所有者を正当な手続きを経ずに追い出し、その家を競売にかけ、起訴が相当だとされたワンウエストに対する法手続きをハリスのオフィスは拒否している。 支配者たちが隠している秘密を明らかにする手助けをしていたウィキリークスに対してもハリスは厳しい姿勢を見せ、この団体を支持しないと語っている。 ディック・チェイニーが表舞台に登場したのはジェラルド・フォード政権の時。リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で1974年8月に辞任、副大統領からフォードは昇格したのだ。 この政権ではデタント派が粛清されたが、特に注目されたのは国防長官とCIA長官の交代。国防長官は1975年11月にジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ、またCIA長官はウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ交代している。コルビーは議会でCIAの秘密工作について証言、支配層を激怒させていた。 この粛正を主導したのはラムズフェルド大統領首席補佐官とリチャード・チェイニー大統領副補佐官だが、その背後にはポール・ニッツェやアルバート・ウールステッターを中心とするグループが存在した。この人脈は後にネオコンと呼ばれるようになる。 チェイニーはジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防長官を務めたが、その下でポール・ウォルフォウィッツ国防次官が中心になり、DPG(国防計画指針)という形で世界征服計画を作成している。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。旧ソ連圏を制圧するだけでなく、ドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、新たなライバルの出現を防ぐと謳っている。その後、政権がかわってもこのドクトリンは維持されてきた。 2001年1月にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任、チェイニーは副大統領になった。この政権では事実上、チェイニーが大統領だったとも言われている。 その年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃され、人びとがショックを受けている間にアメリカ政府は侵略戦争を本格化させたのだが、イラクへの侵略戦争で早くも挫折する。しかもロシアが再独立、ウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提が崩れたのだが、ネオコンは計画を修正しなかった。 ブッシュ・ジュニア政権はアメリカ軍を侵略戦争に投入したが、彼らが信じていたほどアメリカ軍は強くない。思い通りに進まず、次のバラク・オバマ政権は戦術を「チェンジ」した。1970年代にズビグネフ・ブレジンスキーはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を利用して傭兵の仕組みを作ったが、ブレジンスキーの弟子だということもあり、オバマはその戦術を採用した。つまり、アル・カイダを使ったのだ。 アル・カイダはCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだとイギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは2005年7月に書いている。アラビア語でアル・カイダはベースを意味し、データベースの訳語としても使われる。2014年にはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が生み出されたが、これも同じだ。 アメリカはロシアに対してウクライナを、パレスチナではユダヤ教シオニストを傭兵として使っている。明治維新以降、東アジアでは日本がアングロ・サクソンの傭兵としての役割を果たしてきた。チェイニーを含むネオコンはハリスを操り、傭兵を使ってウォルフォウィッツ・ドクトリンを進めるつもりだろう。ドナルド・トランプもこのドクトリンから逃れられないと思うのだが、チェイニー親子の発言を聞くと、トランプでは不安なのだろうと思える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.08
ウクライナにおけるロシアとの戦争でアメリカ/NATOは敗北が避けられない状況だ。西側でも敗北を前提にした言動が出てきているが、アメリカ政府の中にはロシア深部、例えばモスクワを攻撃できる兵器を供与して戦闘をエスカレートさせようとする動きもある。そうした事態になればロシアはそれに応じた反撃を実行するはずだが、ルビコンを渡ったジョー・バイデン政権は負けるわけにいかず、全面核戦争へ向かって歩調を速めている。 バイデン大統領自身、ウクライナで不正行為を働いた疑いが濃厚で、マネーロンダリングが行われていた可能性も高い。そしてアメリカの国防総省は生物兵器の研究開発を行っていた。 ネオコンのような好戦派が計画したような展開にならなかったひとつの要因は、ウクライナ人の多くがロシアを敵視していなかったことにある。特に歴史的にロシアとの関係が深い東部や南部ではそうした傾向た強く、住民はクーデター体制を拒否、クリミアでは長年主張していたロシアとの一体化を実現、ドンバスでは武装抵抗を始めた。 クーデターのスポンサーだった西側の私的権力はロシア海軍の基地があるクリミアを制圧し、耕作地や資源がある東部を手に入れて投資を回収し、さらに儲けようと考えていたはずだ。ウォロディミル・ゼレンスキーがクリミアやドンバスを取り戻すと叫んでいる理由はその辺にあるのだろう。 アメリカをはじめとする西側は8年かけてウクライナの戦力を増強、地下要塞をポイントに要塞線を築いたのだが、その計画は2022年2月にロシア軍がウクライナを攻撃、粉砕された。それ以降、ロシアとの戦争はNATO色を強めていく。 ロシア軍はドンバス周辺に集まっていたウクライナ軍部隊を叩いただけでなく、ウクライナ全域の軍事基地や生物兵器の研究開発施設を攻撃し、機密文書を回収している。 ロシア軍の放射線化学生物防護を指揮しているイーゴリ・キリロフ中将は2022年5月、ウクライナ国内での生物学的研究プログラムにはアメリカだけでなく、ドイツとポーランドも参加していると発表した。 ウクライナにはアメリカ国防総省のDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が約30カ所あったというが、キリロフによると、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められた。 こうした生物兵器の研究開発が進められていることは遅くとも2013年には指摘されていた。アメリカの国防総省がハリコフ周辺にレベル3のバイオ研究施設を作ろうとしていると訴えるリーフレットがまかれ、実際、建設されたのだ。 ジャーナリストのディリヤナ・ゲイタンジエワによると、ドニプロ、ミコライフ、リビフ、ウジホロド、テルノポリ、ビンニツヤ、キエフにも施設があり、各研究所は2010年から13年の間に建設されたという。 ロシア軍は回収した機密文書を分析、2023年4月に報告書が発表された。その中で、アメリカがウクライナで「万能生物兵器」を開発していたと指摘されている。人だけでなく動物や農作物にも感染でき、大規模で取り返しのつかない経済的損害を与える遺伝子組換え生物兵器を開発していたというのだ。そうした兵器を秘密裏に標的を絞って使い、「核の冬」に匹敵する結果をもたらすという。 キリロフ中将がウクライナにおける生物化学兵器の研究開発について発表した翌月、つまり2022年6月にウラジミル・プーチン露大統領は連邦金融監視局のユーリー・チハンチン局長と会談、マネーロンダリングについて話し合っている。特に農業、医療、建設、輸送建設、防衛調達などの分野に注目していた。 また、金融監視局はFSB(連邦安全保障局)と共同で、外国の製薬会社が医療機関の責任者や医療従事者と結んだ契約に関する事件に取り組んでいるとしている。製薬会社は医薬品を売るために医療関係者を利用し、その見返りに多額の報酬を支払っていたとしている。この説明に対し、プーチンはヨーロッパを含むあらゆる場所でこうしたことが行われていると応じた。日本でもこうしたことが行われているはずだ。 この時期、世界では「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」なるタグがつけられた遺伝子導入薬の接種が世界的に推進されていた。この薬物を接種させる引き金はWHO(世界保健機関)のパンデミック宣言。2020年3月11日のことだ。 その年の12月には「COVID-19ワクチン」なる遺伝子導入剤の接種をイスラエルが本格的に開始するのだが、翌年の4月に十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が増えていることが発覚、問題になる。それ以外にも深刻な副作用が明らかになり、大多数の国はこの薬物の大規模な接種をやめた。例外的な存在が日本だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.07
フィリピン沿岸警備隊の艦船が今年4月に南沙諸島の仙賓礁(サビナ礁)へ入って停泊、その艦船へ物資を運ぶとして、フィリピンはユーロコプターEC-145を飛ばしたと伝えられている。この艦船は日本がフィリピンに供与したものだ。 この岩礁は中国、フィリピン、台湾、ベトナムが領有権を主張、行動は慎重でなければならないのだが、フィリピンは中国を挑発すような行動に出た。背後にアメリカ政府が存在していると見られている。 岸田文雄首相は4月10日にワシントンDCでジョー・バイデン米大統領と会談、軍事、バイオ、教育を含む「国家改造計画」的な取り決めを打ち出している。アメリカの支配層による日本支配のシステムを強化する内容で、軍事面では1960年代以来の大幅な増強だ。アメリカは東アジアの軍事的な緊張をこれまで以上に高めようとしはじめたと言えるだろう。 アメリカは軍事的な緊張を高めるため、台湾独立を主張してきた民主進歩党を支援、同党の蔡英文、続いて頼清徳を総統に据えたが、台湾人の多くは中国と友好的な関係を望んでいる。韓国もアメリカの好戦的な政策にしたがっているのは尹錫悦政権だけだ。新たな発火点としてフィリピンを考えているのかもしれない。 故安倍晋三は総理大臣だった2015年6月、赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍政権下、着々と対中国戦争の準備が進められていることを明らかにしたのだ。安倍は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していたのだろう。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表した。 専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたというが、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。 RANDが計画を発表する前から準備は進んでいた。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入された。その後、朴槿恵は失脚している。 ネオコンはソ連が消滅した直後、1992年2月に世界制覇計画を作成、軍事侵略を始めた。ソ連に勝ったアメリカは唯一の超大国になったと彼らは考え、本性を見せてしまったとも言える。 アメリカが侵略戦争を本格化するのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後だが、その前提はソ連が消滅、ロシアはアメリカの属国になったということだった。そこで潜在的ライバルの中国を重視すべきだということになる。 ところが、その前提が21世紀に入って間もなく崩れた。ロシアが再独立に成功したのだ。そこでロシアを再び屈服させようと考えるグループも出てきた。 アングロ・サクソン系の国々はウクライナをロシア征服の鍵を握る国だと考えてきた。ウクライナを支配し、ミサイルを配備すればロシアをいつでも破壊できる態勢が整うのだが、それだけでなく、ウクライナにはロシアからヨーロッパへ安価な天然ガスを運ぶパイプラインが通っている。 ウクライナを制圧し、天然ガスの輸送を抑えてしまえばロシアからマーケットを奪い、ヨーロッパから供給源を奪うことになり、両者を弱体化させることができるとネオコンは考えたようだが、ロシアと中国は関係を強化、同盟国になった。アメリカの政策でヨーロッパは弱体化したが、その怒りが国民の間で高まっている。 ウクライナが「独立」した当時から国民の大半はロシアとの関係を悪化させたいとは考えていなかった。中立を掲げたのはそのためだが、東部や南部の歴史的にロシアとの関係が深い地域ではウクライナからの離脱を望む声が小さくなかった。 特にクリミアはそうした傾向が強く、ソ連時代の1991年1月に実施された住民投票では94%がウクライナから離脱してロシアと統合されることを望んでいた。翌月にはクリミア自治ソビエト社会主義共和国が復活している。そして1992年5月にクリミアは独立を宣言、憲法を採択している。クリミアの住民は一貫してロシアへの復帰を望んでいたのだ。アメリカ政府がキエフでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させた際、クーデター政権に反対する運動を鎮圧しろというキエフからの命令をクリミアに駐留していたウクライナ兵2万2000名のうち2万名が拒否している。(Jacques Baud, “Operation Z,” Max Milo, 2022) 西側での「報道」とは違い、ウクライナのクーデター体制は脆弱だった。アメリカ/NATOはネオ・ナチを中心として内務省に親衛隊を組織し、自国の特殊部隊や傭兵を派遣したが、それでも反クーデター派が優勢だった。そこで8年かけ、兵器を供給、将兵を訓練、軍事訓練だけでなく思想教育も子どもに施したのだ。その時間稼ぎに使われたのがミンスク合意にほかならない。 しかし、アメリカ/NATOを後ろ盾にするウクライナの軍事作戦はロシア軍によって粉砕された。平和が訪れたなら、アメリカの国防総省、私的権力、民主党などがウクライナで行ってきた悪事、例えばマネーロンダリング、人身売買、生物兵器の研究開発などが明るみに出る可能性がある。 それだけでなく、彼らが支援しているイスラエル軍によるパレスチナ人虐殺はイスラエルの存続を危うくする状況を作り出し、西側の支配層は窮地に陥っている。そこで、欧米の支配者は東アジアを戦乱で破壊しようとしている。 バラク・オバマ政権の中でウクライナのクーデターを担当していたのは副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。そのサリバンが8月27日に中国を訪問した。歓迎されたとは言い難い。 アメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を編成、オーストラリアやイギリスとは「AUKUS」なる軍事同盟を組織した。NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言している。 ジョー・バイデン政権が中国敵視を明確にした2022年の12月、アメリカではNDAA 2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。 フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)を取り込んだアメリカはJAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟が築かれようとしている。フィリピン情勢は日本と深く関係している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.06
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権が沈没しそうだ。イリーナ・ヴェレシュチュク副首相兼再統合相、オルハ・ステファニシナ欧州・欧州大西洋統合担当副首相、アレクサンドル・カムイシン戦略産業相、デニス・マリウスカ法相、ルスラン・ストリレツ環境相がウクライナ議会に辞表を提出、また大統領はドミトリー・クレーバ外相を含む複数の高官の解任も検討しているという。そのほかウクライナ国有財産基金(SPFU)のヴィタリー・コヴァル総裁も辞表を提出、デニス・シュミハリ首相の解任も噂されている。 ゼレンスキー大統領は2月8日にバレリー・ザルジニー軍最高司令官を解任し、後任にオレクサンドル・シルスキーを据えた。ザルジニーは兵士の犠牲を少なくする作戦を採用しようとしていたが、米英政府の意向を受けたゼレンスキーは「玉砕攻撃」を繰り返させようとしてきた。アヴデフカでの戦闘でザルジニーは全面撤退を計画していたという。 ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントだと言われているが、昨年11月1日付けエコノミスト誌にザルジニーが「戦闘は膠着状態にある」とする論説を発表した段階で欧米支配層の内部にゼレンスキー下しの動きがあると言われていたが、その一方でロシア領内への攻撃を求める勢力も存在する。 2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでクーデターを仕掛けた。その手先がネオ・ナチだが、指揮していたのは副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。2021年1月にバイデンが大統領に就任するとサリバンは国家安全保障補佐官になった。ヌランドは同年5月から国務次官に就任するが、今年3月に辞任している。 ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民で、夫はネオコンの重鎮であるロバート・ケーガン、義理の弟はフレデリック・ケーガン、フレデリックの妻はISW(戦争研究所)を設立したキンベリー・ケーガン。マデリーン・オルブライトやヒラリー・クリントンと親しく、ビル・クリントン政権でアメリカをユーゴスラビア侵略へと導いた仲間。アントニー・ブリンケン国務長官の父方の祖父もウクライナ出身だ。 サリバンはエール大学出身で、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。奨学金はオックスフォード大学の大学院生に与えられ、学費を支払うローズ・トラストは1902年にセシル・ローズの意志で創設された。 ローズはナサニエル・ド・ロスチャイルドの資金でダイヤモンドや金が発見された南部アフリカを侵略して財を築いた人物で、優生学を信奉していた。ローズは1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) セシル・ローズの時代からイギリスはロシア征服を目指していた。そのためにユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、傭兵を組織しながら内陸を締め上げる戦略を進めている。1991年12月のソ連消滅でこの戦略はほぼ達成できたとアメリカやイギリスの支配層は考えたのだが、21世紀に入ってからロシアが再独立、そこで米英はロシア再征服を目論む。 アメリカをはじめとする西側諸国がウクライナ制圧作戦を本格化させたのは2004年から05年にかけての「オレンジ革命」からだ。ウクライナはそれまで中立政策を掲げていたが、それを変えさせて西側の私的権力に従属する体制を築こうとしたのだ。そこで中立政策を進めようとしたビクトル・ヤヌコビッチを潰すために「オレンジ革命」を仕掛けた。 その「革命」で大統領に就任したのは西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコ。この政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利した。そこでオバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけである。 このクーデターをヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部は拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは武装闘争を始めた。軍や治安機関の約7割は新体制を拒否したと言われているが、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。そこで西側はキエフ体制の戦力を増強するために必要な時間をミンスク合意で稼いだ。 2014年に誕生してからキエフ体制は欧米の傀儡にすぎず、22年春にはドンバスへの大規模な軍事攻勢を計画していたことがわかっている。その直前にロシア軍はウクライナ軍に対する攻撃を始めたが、すぐにゼレンスキー政権はロシア政府と停戦交渉を開始した。それをイギリスとアメリカが止めさせたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 米英はウクライナを使ってロシアを疲弊させ、あわよくばロシアを屈服させようとしたのだが、思惑は外れた。西側の有力メディアの宣伝とは違い、ウクライナは劣勢になり、欧米諸国はウクライナへの軍事支援をエスカレートさせなければならなくなる。そしてウクライナだけでなくNATOの兵器庫は空になった。こうした状況になっても戦争を継続させようとしている勢力がアメリカやイギリスには存在する。 今年8月6日、アメリカとロシアが「捕虜交換」をした直後、ウクライナ軍は1万人から3万人の部隊をスーミからロシアのクルスクへ軍事侵攻させた。ドンバスから戦力を割いたほか、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加、この作戦を立てたのはイギリス軍だとも言われている。 その当時、クルスクに配備されていたのは国境警備隊だけ。装甲車両を連ねた部隊に対抗することはできなかった。西側では喝采が贈られていたが、軍事に多少でも興味のある人なら、ロシア軍の反撃で侵攻軍が壊滅的な打撃を受けることは見通せたはずだ。 実際、ロシア軍は航空兵力に続いて予備兵力も投入、ウクライナ軍を押し返している。ウクライナ軍がクルスクへ送り込んだ貴重な戦闘車両は破壊され、虎の子の部隊では多くの死傷者が出た。ウクライナ側はクルスクを防衛するためにドンバスで戦っている部隊の一部を移動させると考えていたようだが、予備兵力を投入しただけ。その結果、ドンバスでロシア軍の進撃速度が早まった。しかもクルスクではロシア軍の反撃でウクライナ軍は壊滅状態だ。 ロシア壊滅を目論んで失敗した西側各国は責任をゼレンスキー大統領に押し付けて逃げようとしている。ゼレンスキー政権が崩壊し始めたのはそのためだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.05
200億ドルを超える債務再編計画を国際債券保有者が正式に承認したとウクライナ政府が発表したのは今年8月28日のこと。この債務再編により、キエフ政権は今後3年間で114億ドルを節約できる。31日にウクライナ政府は債務返済を一時的に停止することを可能にする法律を発動し、8月からの債務返済を停止する。 ロシア軍は2022年2月にウクライナ軍を攻撃、8月までにウクライナと債権者は2年間の債務凍結で合意したとされている。今年、その期限が来たわけだ。 支払い猶予期限が迫ってきたことからウクライナの財務顧問を2017年から務めるロスチャイルド・アンド・カンパニーは会議を設定。ブラックロック、ピムコ、アムンディを含む資産運用会社の代表者、その法律顧問、そして財務顧問が7月16日にパリへ到着し、ウクライナの債務管理局長を務めるユーリー・ブツァ、法律顧問のホワイト・アンド・ケース、そしてロスチャイルドのチームと合流した。 1990年代のウクライナは中立を掲げ、EUとロシアのどちらにも与しない姿勢を見せていた。ビクトル・ヤヌコビッチもそうした考え方の持ち主だが、ロシア征服を目指す西側の強大な私的権力は戦略上、ウクライナを属国化する必要があり、そうした人物を大統領にするわけにはいかなかった。そこで仕掛けたのが「オレンジ革命」にほかならない。 しかし、その「革命」で大統領に就任したビクトル・ユシチェンコは西側の傀儡で、新自由主義政策を推進した。必然的に貧富の差が拡大してウクライナ人の怒りを買うことになる。そこで2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利した。 ヤヌコビッチを受け入れられないアメリカのバラク・オバマ政権はより強硬な手段に出る。2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたのだ。 ところがウクライナにはネオ・ナチ体制を拒否する人が少なくなかった。特にロシア語圏でヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部にそうした傾向が強い。 南部のクリミアではロシアの保護下に入る選択をしたが、そうしたことが可能だったのは住民の圧倒的多数が自分たちをロシア人だと考えていたことだけでなく、駐留していたウクライナ兵の9割近くが新体制を拒否、軍を離脱したからだ。東部のドンバスでも似た状況で、反クーデター軍が編成された。ウクライナ全体でも軍人や治安機関メンバーの7割はネオ・ナチ体制を拒否して離脱、一部はドンバス軍へ合流したと言われている。 クーデターの前からアメリカがウクライナの石油を奪おうとしていたとビクトリア・ヌランドは語っている。2013年12月13日、米国ウクライナ財団主催の会合に彼女は登場、アメリカは1991年からウクライナに対して50億ドル以上を投資したと語っているのだ。アピールしている相手は演壇に示されていた。アメリカの巨大石油会社、エクソンモービルとシェブロンの文字があった。 クーデターの後、ロシアからの支援を失ったウクライナの経済は破綻し、ウクライナ国債の価格は下落する。それを買い占めていたフランクリン・テンプルトンというファンドは額面総額50億ドルの国債を買ったという。このファンドを操っているのはロスチャイルド家だ。フランクリン・テンプルトンを設立した人物の息子、ジョン・テンプルトン・ジュニアはバラク・オバマの選挙キャンペーンに多額の寄付をしていたことで知られている。 破綻した国の国債を安値で買いあさり、満額で買い取らせるというのが「ハゲタカ・ファンド」のやり口。ウクライナにはIMFがカネを貸しているが、そのカネでファンドの要求通りに支払うことができる。債権者になったIMFは債務者である破綻国の政府に対して緊縮財政を要求、庶民へ回るカネを減らさせる。規制緩和や私有化の促進で国の資産を巨大資本に叩き売らせ、大儲けさせてきた。 私的権力の手先はクーデター直後の3月7日深夜、ポリスポリ空港に4輌のトラックと2輌の貨物用のミニバスで乗り付け、40個以上の箱をマークのない航空機へ運び込んだと伝えられている。 車両はいずれもナンバー・プレートが外され、黒い制服を着て武装した15名が警戒する中での作業だった。作業が終わるとすぐに航空機は飛び立ち、車両も走り去ったという。その箱の中身は金塊だという情報がある。当時、ウクライナ政府42.3トンの金塊を保有していたとされている。 西側の私的権力は消滅間近のソ連でも暗躍していたが、そのひとりがミハイル・ホドルコフスキー。彼はソ連時代の1989年、リチャード・ヒューズなる人物と「ロシア人モデル」をニューヨークへ送るビジネスを始めた。この年にホドルコフスキーはメナテプ銀行を設立するためのライセンスを取得するが、違法送金やマネーロンダリングが目的だった可能性のだろう。このビジネスをソ連当局も怪しみ、モデルに対する出国ビザを出し渋るのだが、ホドルコフスキーはKGB人脈を持っていた。そのコネクションに助けられてビザを入手できたという。 ソ連が1991年12月に消滅し、ボリス・エリツィンが西側支配層の代理人としてロシアを支配するようになると、ホドルコフスキーはエリツィン政権を支える顧問のひとりに就任。彼は1995年にユーコスなる石油会社を買収、中小の石油会社を呑み込み、その一方でモスクワ・タイムズやサンクトペテルブルグ・タイムズを出している会社の大株主になっている。 ホドルコフスキーはユーコスの発行済み株式のうち25から40%をアメリカの巨大石油会社、エクソン・モービルとシェブロンへ売り渡そうとしたが、プーチンに阻止された。プーチンの動きが遅れれば、ロシアは米英支配層の植民地になっていたことだろう。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,“ Next Revelation Press, 2015) プーチンが実権を握った後、少なからぬオリガルヒはロシアからロンドンやイスラエルへ逃亡するが、ホドルコフスキーはロシアに残った。そして2003年10月、彼はノボシビルスクの空港で横領と税金詐欺の容疑で逮捕されている。 ホドルコフスキーのユーコス株の支配権は先に結ばれた「取り引き」によってジェイコブ・ロスチャイルドへ渡ったとサンデー・タイムズ紙は報じていた。ホドルコフスキーがロスチャイルドとの関係を語った映像が5月22日にインターネットで公開された。その中で、モスクワに本社があるルクオイルの真のオーナーはジェイコブだったとホドルコフスキーは明らかにしている。 ロスチャイルドが支配しようとしていたロシアとウクライナは世界有数の穀倉地帯であり、鉱物資源、石油や天然ガスといったエネルギー資源が豊富。こうしたロシアの富を「担保」にしてロスチャイルドのような金融資本は融資したのだろうが、富を盗めなければ不良債権になってしまう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.04
イスラエル軍が住民を大量虐殺しているガザでポリオが流行しはじめたと7月から言われている。そこで100万回分以上のポリオ・ワクチンがイスラエルへ発送され、ユニセフ(国連児童基金)、WHO(世界保健機関)、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)などが配布するというのだが、何か裏がありそうだと疑う人も少なくない。 MEE(ミドル・イースト・アイ)によると、ガザ南部での深刻な伝染病によってイスラエルは勝利に近づき、イスラエル軍兵士の犠牲者は減るだろうとイスラエル国家安全保障会議のジオラ・アイランド元議長は発言していた。 昨年10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだ直後、イスラエルの首相を務めているベンヤミン・ネタニヤフは「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。 彼は聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、この「アマレク人」をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せたのだ。「アマレク人」を家畜ともども殺した後、イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。皆殺しにするだけでなく、歴史の上から消し去れと言っているのだ。 イスラエルは数カ月にわたってガザを兵糧攻めにし、食料、水、医薬品の流入を阻止してきた。それが飢餓と病気の急増につながっているわけで、もしガザの子どものことを少しでも考えているなら、兵糧攻めや住民に対する攻撃を止めることが先決だ。そこでイスラエルやその後ろ盾の西側諸国に疑惑の目を向ける人が少なくないのである。 すでに野生ポリオは大方根絶されているが、ワクチン由来の株が病気を引き起こす可能性がある。弱毒化ポリオウイルスが毒性を回復するということだ。 例えば、2020年8月9日、スーダン連邦保健省は国内で循環ワクチン由来ポリオウイルス2型が検出されたことをWHOに通知している。 最初の症例は48か月の乳児。2020年3月7日に麻痺を発症した。この乳児が生まれた南ダルフール州はスーダン西部にあり、中央アフリカ共和国、南スーダンと国境を接し、チャドとの国境に近い。もうひとりはガダレフに住んでいた。ふたりとも直前にポリオのワクチンを接種されていたとされている。 ポリオ・ワクチンは1950年代に開発されたが、そのワクチンを投与したサルがポリオを発症することはその直後に判明している。そうした警告が無視されたことから多くの被害者が出たのだ。 バーニス・エディという研究者はワクチンの中に発癌性のSV(シミアン・ウイルス)40が混入していることにも気づく。これはサルを宿主とするポリオーマウイルスで、人間の体内に入り込むと癌を誘発するとエディは講演の中で語っている。SV40は「COVID-19ワクチン」でも問題になった。 エディはアメリカのNIH(国立衛生研究所)に所属していたのだが、その発言にNIHの上司は激怒したと言われている。組織の幹部は警告を封印し、医薬品メーカーはワクチンの製造を続けた。 製造が止まるのは1961年7月。リコールが宣言されたものの、NIHは市場へ出回っている製品全てを回収することを命じなかった。そこでアメリカ人は発癌性のワクチンを1961年から63年にかけて接種されることになる。 ジョン・F・ケネディ大統領の甥に当たるロバート・ケネディ・ジュニアによると、その結果、1996年の時点で血液サンプルの23%、精子サンプルの45%からSV40が発見され、80年から95年にかけて生まれた新生児の6%が感染していたという。(Judy Mikovits & Kent Heckenlively, “Plague of Corruption,” Skyhorse, 2020) 次にアルバート・サビンが「安全なワクチン」を開発したのだが、製造に使われた猿の腎臓には人間を癌にするウイルスが存在、ワクチンに癌を誘発するウイルスが混入することになったとも言われている。 猿の腎臓にエイズの原因になる病原体が含まれていたとする説も存在する。アメリカでエイズが社会的問題になるのは1980年代に入って間もない頃。そうした中、1984年に免疫学者のアンソニー・ファウチがNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長に就任した。その時の部下のひとりがHIVで有名になったロバート・ギャロだ。 今回のガザにおけるポリオ問題でもWHOが重要な役割を果たしているが、その主任科学者を務めるジェレミー・ファラーは医療利権団体のウェルカム・トラストで理事長だった人物。同トラストの関連団体のウェルカム・リープのCEOは2020年5月からレジーナ・デュガンが務めているが、この人物は2009年7月から12年3月までDARPA(国防高等研究計画局)の局長だった。COVID-19プロジェクトの中心的な存在だと思われる組織だ。ガザでのポリオ・ワクチン接種でもDARPAが関係している疑いがある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.04
厚生労働省は8月30日、今年6月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は11万7631人。「COVID-19騒動」が始まる前年、2019年の同月に比べて1万5277名増えている。デジタル庁は「新型コロナワクチンの接種状況」の発表を止めているが、接種者数は多くないと推測できる。盛んに接種していた頃より死亡者数は減っているが、それでも騒動の前に比べると高い水準を維持している。 この「ワクチン」の接種が始まったのは2020年12月頃だが、早い段階から深刻な副作用が報告されている。早い段階から帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)が報告され、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告されるようになった。2021年4月にはイスラエルで十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が発症して注目されている。接種前から懸念されていた「ADE(抗体依存性感染増強)」も起こっているようだ。 「mRNAワクチン」はSARS-CoV-2のスパイク・タンパク質を体内で製造、それによって抗体を作り出すとされている。抗体には感染を防ぐ「中和抗体」と防がない「結合(非中和)抗体」があり、結合抗体はウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させる可能性があるというのだ。 接種が始まって半年ほど後、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所は「スパイク・タンパク質」自体が病気の原因になっている可能性があると発表している。(ココやココ)血管にダメージを与え、ウイルスでなくスパイク・タンパク質が脳へ侵入し、神経にダメージを与えている可能性を指摘したのだが、それは正しかったようだ。そのスパイク・タンパク質を人間の細胞が作り続ける。 そのほか、mRNAを細胞内へ送り込むために使われているLNP(脂質ナノ粒子)も副作用の原因になっていると見られている。この物質は人体に有害で、肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布すると報告されている。そこでLNPが卵子に悪い影響を及ぼすのではないかた言われていたが、ここにきて精子にもダメージを与えると言われている。しかも遺伝する恐れがあるという。生殖に問題が生じる可能性がある。 スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「mRNAワクチン」の中に「酸化グラフェン」があることを電子顕微鏡などで発見したと発表、11月には周波数の分析で酸化グラフェンが「ワクチン」に含まれていることを確認したと発表している。その論文を読んだドイツの化学者アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく水酸化グラフェンだろうと解説したが、その直後に死亡したという。 こうした物質は体に炎症を引き起こすだろうが、「COVID-19ワクチン」は人間が持っている免疫を弱めることも判明している。免疫力が低下すると、通常なら問題にならない微生物が原因で病気になる。つまりAIDS(後天性免疫不全症候群)状態になるわけだ。VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も使われ始めている。 帯状疱疹もその結果。癌が増えていると言われているが、その原因もここにあると見られている。「ワクチン」によって「症状が緩和される」とも宣伝されているが、これも免疫力の低下が原因。症状が出ないまま病気が進行、突然死するわけだ。高齢者なら「老衰」で片付けられるだろう。 製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきたサーシャ・ラティポワは情報公開法で入手した資料の分析に基づき、COVID-19騒動をアメリカ国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦だとしている。日本の厚生労働省はアメリカの国防総省からの命令に従っているのだろう。国防総省は自分たちの計画に従って行動しているのだろうが、その国防総省を後ろ盾にすることで製薬業界は超法規的な手段でカネ儲けしている可能性が高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.03
8月24日にパリのル・ブルジェ空港で逮捕されたパベル・ドゥロフが28日、保釈された。保釈金は500万ユーロ。週2回警察署へ出頭し、フランス国内に留まるという条件がついている。この逮捕劇は刑事捜査の一環とは到底言えず、政治的なものであることは明白だ。 ドゥロフはプライベート・ジェットでアゼルバイジャンからフランスへ向かったのだが、そのジェットのパイロットがフライト・プランを提出した時、フランスで逮捕令状は出ていない。飛行中に出たという。 フランスでの報道によると、パベルは警察に対し、エマニュエル・マクロン大統領と夕食を共にするためにパリを訪れたと語ったとも伝えられている。マクロン自身はそれを否定しているが、西側の支配者に睨まれていることがわかっていながら、なぜパリを訪問したのか疑問に感じる人は少なくない。大統領と会う約束があったとする話はありえる。 パベルはロシアのほか、英連邦王国のセントクリストファー・ネイビス、イギリスと関係が深いアラブ首長国連邦、そしてフランスの国籍を持つ。パベルがフランス国籍を持つ切っ掛けはマクロン大統領と2018年に会食したことにあるとも言われている。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、マクロンはテレグラムの本社をパリへ移転するように提案、パベルはそれを断ったものの、2021年にフランス国籍を手にした。 パベルは兄のニコライ・ドゥロフと2013年にテレグラムを創設し、イギリス領バージン諸島とドバイ(アラブ首長国連邦)で登記しているが、いずれもシティが築いたオフショア市場のネットワーク、つまり大英金融帝国に含まれている。ちなみに、ニコライはロシアとセントクリストファー・ネイビスのほか、ナチスが復権しているラトビアの国籍も保有している。 ドゥロフ兄弟、特にパベルは西側の情報機関が仕掛けた網に引っかかたように見える。もし、ふたりが「自由」を求めてロシアを飛び出したとするならば、あまりにも世間知らず。ソ連時代、インテリの一部は西側が自由と民主主義の体制だと錯覚している人がいた。ミハイル・ゴルバチョフもそのひとりだ。ドゥロフ兄弟もその仲間なのかもしれない。 パベルのiPhoneはフランスとアラブ首長国連邦の情報機関に盗聴されていたが、彼と一緒に逮捕された女性からも情報が伝えられていた疑いが持たれている。 西側の支配層が狙っているのはパベルの兄、ニコライだとも言われている。3歳までに成人レベルの読み書きができ、8歳までに3次方程式を解くことができたニコライは高校時代に国際数学オリンピックで金メダルを3年連続で獲得、プログラミングの能力も高く、サンクトペテルブルク国立大学とボン大学で博士号を取得している。 テレグラムを技術面から支えているのはこのニコライ・ドゥロフだ。西側はパベルを人質にしてニコライと取り引きしたいのかもしれない。西側のシステムと同じように、アメリカ、イギリス、イスラエルの情報機関が全てのデータにアクセスできるようにさせたいのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.02
パレスチナ人との連帯を訴え、イスラエルによる虐殺を批判してきたサラ・ウィルキンソンが8月29日、イギリスの警察に逮捕された。8月上旬にはパレスチナ行動の共同創設者で、イスラエルによるガザでの虐殺に抗議していたリチャード・バーナードらも「テロ対策法」に違反したとして逮捕されている。 8月15日にはジャーナリストのリッチー・メドハーストがロンドンのヒースロー空港で逮捕された。メドハーストはイスラエル軍によるガザでの虐殺を伝えていたほか、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジがイギリスで拘束された事件についても取材していた。 ウィルキンソンやメドハーストも「テロ対策法」に違反したとされている。イスラエルによるパレスチナ人虐殺を伝えることは「テロ行為」だということなのだろうが、この判断にキア・スターマー首相の意向が反映している可能性は高い。 スターマーが所属している労働党はイスラエルが建国されて以来、親密な関係にあったのだが、1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプ、サブラとシャティーラにおいて難民が虐殺されてから変化する。殺害された難民の人数はイスラエル側によると700名、パレスチナ側によると2750名だ。 この虐殺はイスラエルの国防相だったアリエル・シャロンが1982年1月にベイルートを極秘訪問したところから始まる。キリスト教勢力と会い、レバノンにイスラエルが軍事侵攻した際の段取りを決めたのだ。 その月の終わりにはペルシャ湾岸産油国の国防相が秘密裏に会合を開いた。イスラエルがレバノンへ軍事侵攻してPLOを破壊してもアラブ諸国は軍事行動をとらず、石油などでアメリカを制裁しないという内容のメッセージをアメリカへ送ることで合意することが目的だった。 6月3日に3名のパレスチナ人がイギリス駐在のイスラエル大使、シュロモ・アルゴブの暗殺を試みているが、命令したのはアラファトと対立していたアブ・ニダル派だと言われている。イスラエル人ジャーナリストのロネン・ベルグマンによると、暗殺を命令したのはイラクの情報機関を率いていたバルザン・アッティクリーティ(Ronen Bergman, “Rise and Kill First,” Random House, 2018)だが、この組織には相当数のイスラエルのエージェントが潜入、暗殺の目標を決めたのもそうしたエージェントだとされている。この事件を口実にしてイスラエルはレバノンへ軍事侵攻、市民1万数千名を殺した。(Alan Hart, “Zionism: Volume Three,” World Focus Publishing, 2005) イスラエル軍がレバノンへ軍事侵攻、ベイルートを占領しても、事前の取り決め通りアラブ諸国は動こうとしない。PLOが孤軍奮闘する形になるが、ついに8月下旬から9月上旬にかけてレバノンから撤退せざるをえなくなる。 PLOがいなくなった直後、イスラエルと協力関係にあったマロン派キリスト教徒の中核的存在、ファランジスト党のバシール・ジェマイエル党首が爆殺される。その報復として同党は無防備のサブラとシャティーラ、ふたつのパレスチナ難民キャンプで虐殺したのだが、それをイスラエル軍が支援していた。 サブラとシャティーラでの虐殺に対する怒りはイギリスの労働党内部だけでなく、ヨーロッパ全体に広がる。そうした流れを危惧したロナルド・レーガン米大統領は1983年、メディア界に大きな影響力を持つルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスを呼び、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について話し合っている。そしてスタートしたのがBAP(英米後継世代プロジェクト、後に米英プロジェクトへ改名)。このプロジェクトには編集者や記者も参加しているため、その実態はあまり知られていない。 イギリスでは労働党を親イスラエルへ戻す工作も始まる。そこで目をつけられたのがトニー・ブレアだ。彼と妻のチェリー・ブースは1994年1月にイスラエル政府の招待で同国を訪問している。ふたりが帰国して2カ月後、ブレアはロンドンのイスラエル大使館でマイケル・レビーという富豪を紹介された。その後、レビーはブレアの重要なスポンサーになる。そして1994年5月、労働党の党首だったジョン・スミスが心臓発作で急死、その1カ月後に行われた新党首を決める投票でブレアが勝利した。 ブレア時代の労働党は「ニュー・レイバー」と呼ばれ、「第3の道」というスローガンを掲げる。第1の道とはクレメント・アトリー労働党政権が打ち出した「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家路線。第2の道とは1979年からマーガレット・サッチャー保守党政権が進めた新自由主義的な路線。こうした路線とは別の新しい道を歩くというわけだが、実態はサッチャーに近かった。 イギリスでは1994年に労働党が政策を大きく変更、福祉国家路線を放棄し、イスラエルとの関係を緊密化されているが、その翌年、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれている。(この問題は本ブログでも繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。) ブレアのネオコン/新自由主義的な政策を一般の労働党員が支持していたわけではない。そうした党員に後押しされて2015年9月から労働党の党首を務めたのがジェレミー・コービン。労働党的な政策を推進しようとした政治家で、アッサンジを支援、イスラエルのパレスチナ人虐殺を批判している。 こうした政策変更に怒ったのが米英の支配層。両国の情報機関はコービンを引きずり下ろそうと必死になり、有力メディアからも「反ユダヤ主義者」だと攻撃されて党首の座から引き摺り下ろされた。2020年4月4日からスターマーが党首を務めている。 彼は自分の妻ビクトリア・アレキサンダーの家族がユダヤ系だということをアピールしてきた。彼女の父親の家族はポーランドから移住してきたユダヤ人で、テル・アビブにも親戚がいるのだと宣伝している。イスラエル軍によるガザにおける住民虐殺にスターマーは反対していないが、これは必然だ。 イスラエルによる虐殺を暴き、さらにウクライナでの実態を伝えていたアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターの場合、パスポートを空港で押収され、家宅捜索を受けた。 7月にはオーストラリア・シオニスト連盟がオーストラリアの有名ジャーナリスト、メアリー・コスタキディスを人種差別法違反で同国の人権委員会に苦情を申し立てると発表している。彼女がXでイスラエルを批判するツイート2件をリツイート、それが人種差別法に違反していると主張しているのだ。 その前からアメリカを中心とする支配システムの権力者は言論弾圧を強めている。内部告発を支援していたWikiLeaksの象徴であるジュリアン・アッサンジは長期にわたって刑務所で拘束され、ウクライナに住みながら同国のクーデター体制を取材していたチリ系アメリカ人ジャーナリストのゴンサロ・リラは刑務所内で拷問され、死亡した。 パレスチナにおける虐殺の生々しい実態を知る最善の方法はテレグラムを調べることだろうが、そのテレグラムを創設、同社のCEOを務めているパベル・ドゥロフは8月24日、パリのル・ブルジェ空港で逮捕されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.09.01
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