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Meiji Seika ファルマなる製薬会社が立憲民主党の原口一博議員を東京地裁に近く提訴すると伝えられている。同社が製造販売する「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」について、安全性が確認されていないと議員が批判してきたことが誹謗中傷に当たるとしているのだ。 しかし、議員の主張は事実である。少なからぬ研究者が科学的根拠な根拠に基づいて原口と同じようにmRNA技術を利用した新薬を批判、特にレプリコン・ワクチンのリスクが高いとしている。「Meiji Seika ファルマの現役社員」を名乗る人、あるいはグループが書いた『私たちは売りたくない!』という書籍も出版されている。 このタイプの新薬が高リスクであることを製薬会社や厚生労働省が認識しているであろうことは、重要な情報が開示されていないことからも類推できる。つまり「国と取り組んできた公衆衛生向上への取り組み」が問題なのであり、これは水俣病などの公害と同じ構造だ。 原口議員の主張が「非科学的断定でないなら名誉毀損等は成立しないので、製薬会社も提訴しません」と別の議員がXに書き込んでいたが、この議員は会社が提訴した時点で原口議員の主張は「非科学的断定」であると断定していることになる。原口議員に対する誹謗中傷だと言われても仕方がないだろう。 原口議員に批判的なこの議員は「科学的判断は科学的機関が行」うと考えているようだが、その「科学的機関」とは何を指しているのだろうか。そもそも判断するのは人間であり、この場合は科学者だと言うべきだ。さまざまな判断が出てくるだろう。何が正しいのかはそこから議論することになる。 過去の薬害や公害では政府主導の「科学的判断」が押し付けられ、少なからぬ人を苦しめることになった。mRNA技術を利用した新薬の場合、そうしたケースよりもリスクは大きい。 COVID-19騒動が始まって間もない頃からサーシャ・ラティポワは騒動の黒幕はアメリカ国防総省で、バラク・オバマ政権が始めたと主張している。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 しかも、レプリコン・ワクチンの仕組みから想定される特性はアメリカがウクライナで研究開発していた「万能生物兵器」と似ている。ロシア議会が発表した報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 かつて日本では軍医学校、東京帝国大学医学部、京都帝国大学医学部が中心になって生物化学兵器の開発が進められていた。その一環として生体実験をおこなう加茂部隊を中国に設置している。その責任者が京都帝国大学医学部出身の石井四郎中将であり、その後ろ盾は小泉親彦軍医総監だったとされている。その後、加茂部隊は東郷部隊へと名前を替え、1941年には第七三一部隊と呼ばれるようになり、捕虜として拘束していた中国人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人を使って生体実験していた。 こうした部隊の隊長を1936年から42年、そして45年3月から敗戦まで務めた人物が石井四郎。途中、1942年から45年2月までを東京帝国大学医学部出身の北野政次少将が務めている。こうした第七三一部隊の幹部の大半は日本へ逃亡、1946年に入ると幹部たちはアメリカ軍の対諜報部隊CICの尋問を受けることになるが、厳しいものではなく、資料はアメリカ側へ引き渡された。 尋問の過程でGHQ/SCAPの情報部門G2の部長を務めていたチャールズ・ウィロビー少将と石井は親しくなり、隊の幹部たちはアメリカの保護を受けるようになる。日本が提供した資料や研究員はドイツから提供された知識と同じように、アメリカにおける生物化学兵器開発の基盤になった。 1950年6月に朝鮮戦争が勃発、52年2月に朝鮮の外務大臣はアメリカ軍が細菌兵器を使用していると国連に抗議した。アメリカ側は事実無根だと主張したが、1970年代にウィリアム・コルビーCIA長官は議会証言の中で、1952年にアメリカ軍が生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が始まると、アメリカ軍は輸血体制を増強しなければならなくなり、「日本ブラッドバンク」が設立されたが、北野政次が顧問に就任するなど、この会社は第七三一部隊と深い関係がある。後に社名は「ミドリ十字」へ変更され、「薬害エイズ」を引き起こすことになった。現在は田辺三菱製薬の一部だ。 大戦後、第七三一部隊を含む日本の生物化学兵器人脈は「伝染病対策」の中枢を形成し、その拠点として1947年には国立予防衛生研究所(予研)が創設された。当初は厚生省の所管だったが、1949年には国立になる。1997年には国立感染症研究所(感染研)に改名され、現在、「COVID-19対策」で中心的な役割を果たしている。 Meiji Seika ファルマが原口議員を提訴した場合、正常な裁判が行われれば、これまで隠されていた情報が出てくる可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.31
朝鮮軍の兵士がウクライナへ部隊を派遣したという話を広げようという動きが強まっているが、いつものように、証拠や根拠は示されていない。ロシアとの戦争に積極的な姿勢を見せているNATOの新しい事務総長、マーク・ルッテはロシアに派兵された朝鮮軍部隊がロシアのクルスク地域に配備されたことを確認したと主張しているのだが、どのように確認したのかは不明。そもそもクルスクはロシアだ。 この怪しげな話を流し始めたのは韓国のようだが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やアメリカ政府の好戦派も同調している。ウクライナでの戦闘でアメリカ/NATOがロシアに敗北したことは明確で、東部戦線ではロシア軍の進撃が続いている。 1万人から3万人ほど兵力でウクライナ軍は8月6日にクルスクへ軍事侵攻したが、ロシア軍の反撃により、すでに2万数千人が戦死していると見られ、残った部隊はロシア軍に包囲された。 兵器も兵士も不足しているウクライナ軍にはアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドなどの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているのだが、クルスクのケースでも基本的に同じだ。クルスクの北西にあるブリャンスクではウクライナ軍の破壊工作/偵察部隊がロシア軍の待ち伏せにあい、4名が戦死した。そのうちのひとりの腕にはアメリカ軍のレンジャー連隊を示す刺青があった。そのほかカナダ国旗、ポーランドの祈祷書、英語で戦術を記したメモ帳などもFSB(ロシア連邦保安庁)は公開している。 すでにウクライナ軍は降伏するか殺されるかという状態。2004年にオレンジ革命という形でウクライナ制圧プロジェクトを始めたネオコンは2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、ウクライナを植民地化するのだが、クーデターに強く反発した東部と南部の住民は戦い続けてきた。 その戦闘でキエフ政権は敗北が必至の状態だが、ロシアに戦争を仕掛けた欧米の勢力はロシアに勝利させないと主張し、NATO諸国をロシアとの戦争へ引き摺り込みつつある。 2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブは2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている。 NATOの新事務総長に選ばれたルッテはオランダで首相を務めた経験があるが、独身で親しい友人も少ない。本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、NATOは米英の支配層がヨーロッパを支配するために作り上げたシステム。そうした支配層はルッテのことを熟知しているのだろうが、一般人は彼の私生活について知らない。 そうしたルッテは事務総長に就任した当日、ウクライナがNATO諸国から受け取った兵器をロシアの深奥部を攻撃するため、自由に使用できると主張。ウクライナをできるだけ早くNATOに加盟させるともしている。ロシアと戦争をすると宣言したわけだ。そうした考えはルッテを新事務総長に選んだ人びとの意思でもある。 彼らがロシアと戦わせるウクライナ人は不足、イギリスの国防大臣を2023年8月31日まで務めたベン・ウォレスは同年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘。最近では45歳とも言われている。国外から兵士を連れてきたいのはロシアでなくアメリカ/NATOだ。 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロットだった。韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留していると言われている。韓国はアメリカに従属している国の中でウクライナへ兵器を供与する余裕がある国のひとつでもある。 NATOを含む西側諸国から兵士をウクライナへ送り込まなければロシアとの戦争を継続できない。地上部隊も韓国を含む東アジアの国から派遣されているとする噂もある。そうした戦力増強策を正当化するために朝鮮軍兵士の話が流された可能性もあるが、韓国内部の事情もあると言われている。 韓国の尹錫悦大統領は検事時代の2016年、大統領だった朴槿恵を巻き込む崔順実スキャンダルの捜査を指揮、朴大統領弾劾につながった。2017年5月から19年7月までソウル中央地方検察庁検事長を、また19年7月から21年3月まで検事総長を務めているが、その間、アメリカから嫌われていた文在寅政権を攻撃し、文大統領に近い曺国法務部長官を起訴、曺を辞任させた。 アメリカの支配層は文在寅だけでなく朴槿恵も嫌っていた。彼女が中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたからだ。尹の働きがなければTHAADを韓国へ搬入することは難しかっただろう。 尹錫悦は大統領に就任してからアメリカ政府の好戦的な政策に従い、中国やロシアとの関係を悪化させ、国民の支持率は20%台に低下したと言われている。韓国をアメリカの戦争マシーンに組み込み、経済を悪化させているからだろう。 尹錫悦は妻の金建希が引き起こしたスキャンダルでも苦しんでいる。税金を払わず賄賂を受け取ったと言われ、輸入車販売会社ドイッチェ・モーターズの株価を操作した疑惑で捜査対象になっている。さらに論文の盗作も指摘されている。検事総長や大統領の権限を使っても揉み消しきれない何かがあるのかもしれないと言う人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.30
ウクライナと同様、アメリカによる内政干渉のターゲットになってきたジョージアで10月26日に議会選挙が実施され、与党である「ジョージアの夢」が過半数を獲得した。その結果を親米派のサロメ・ズラビシビリ大統領は認めず、自分自身を「この国に残された唯一の独立機関」だと称し、抵抗運動で選挙を否定するよう国民に呼びかけている。「カラー革命」、つまりクーデターを扇動しているわけだ。 ズラビシビリは1952年にフランスのパリで生まれ、1974年にフランス外務省へ入った。2003年から2004年にかけての期間、ジョージア駐在大使を務めているが、2003年11月にジョージアでは「バラ革命」が引き起こされ、アメリカ支配層の手先だったミヘイル・サーカシビリが実権を握っている。 サーカシビリの経歴を調べると、1994年にコロンビア・ロー・スクールで学び、翌年にはジョージ・ワシントン大学ロー・スクールに通っている。その後、ニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーで働き、そこでエドゥアルド・シェワルナゼの下で働いていた旧友に誘われて政界入りしたとされている。 2000年10月にサーカシビリはシェワルナゼ政権の司法大臣に就任するがすぐに辞任、2001年10月にUNM(統一国民運動)なる政党を創設。ジョージアでは2003年11月に議会選挙があり、シェワルナゼの政党が勝利するのだが、サーカシビリは選挙に不正があったと主張、混乱がはじまった。 実は、選挙前にCIA系のUSAIDは投票のコンピュータ化を求め、150万ドルを提供している。コンピュータ化によって投票数の操作が容易になることはいうまでもない。コンピュータ化を求めたのはアメリカが不正選挙を目論んでいたからだと推測する人もいる。 クーデターの黒幕はジョージア駐在のアメリカ大使だったリチャード・マイルズ。工作資金はCIA系のNEDを経由して配下のNGOなどへ供給されているが、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ・インスティテュートも重要な役割を果たした。 マイルズはジョージア駐在大使の前にブルガリア駐在大使、1996年から1999年までセルビア・モンテネグロの在外公館長を務めている。その頃、アメリカでは有力メディアがユーゴスラビアに対する先制攻撃を主張、ビル・クリントン政権はそれを拒否していた。 しかし、国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代した後、1998年4月にアメリカ上院はNATOを東へ拡大することを承認、その年の秋にオルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃している。その際、スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊し、中国大使館を爆撃した。この攻撃でもマイルズは重要な役割を果たしていたと言われている。 2001年9月にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、本格的な調査をしないまま「アル・カイダ」の犯行だと断定、そのアル・カイダが弾圧されていたイラクを2003年に先制攻撃した。 2004年にズラビシビリはジョージア国籍を取得、同国の外務大臣になった。2008年1月にはズラビシビリと同じ従米派のミヘイル・サーカシビリが大統領に就任、その年の8月7日にジョージア軍は南オセチアを奇襲攻撃した。その翌日から北京で夏季オリンピックが開催される予定で、ロシア政府は動きにくいという計算があったと見られている。 その当時、南オセチアに駐留していた平和維持部隊は軍事的な能力は低く、アメリカやイスラエルの軍事訓練を受けているジョージア軍の前になす術がなかったが、ロシア軍は戦闘車両150両を送り込むなど即座に反撃、ジョージア軍に対する空爆も開始、ジョージア軍を粉砕した。 この攻撃の約1カ月前、7月10日にアメリカの国務長官だったコンドリーサ・ライスがジョージアを訪問、奇襲攻撃から間もない8月15日にもライスはジョージアを訪問、サーカシビリと会談している。 ジョージア軍の攻撃を無謀だという人もいたが、イスラエルは2001年からジョージアへ武器を提供、それと同時に軍事訓練を行っていた。訓練を担当していたのはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアへ入っていた。 それだけでなく、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣している。MPRIはユーゴスラビアへの攻撃でも名前が出てきた会社だ。 イスラエルがジョージアを軍事面から支えてきたことはジョージア政府も認めている事実であり、アメリカのタイム誌によると、訓練だけでなくイスラエルから無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008) このジョージア軍による南オセチアへの奇襲攻撃はアメリカとイスラエルが入念に準備した作戦であり、しかも衝突した部隊の規模はほぼ同じ。その戦闘でロシア軍は圧勝した。勝利までに要した時間は96時間にすぎない。同じ規模のロシア軍とアメリカ軍が通常兵器で戦った場合、同じ結果になるということである。(Andrei Martyanov, “Losing Military Supremacy,” Clarity Press, 2018) ジョージアの近くにあるカスピ海の周辺には石油が存在しているが、それだけではなく、ロシアに対する攻撃の拠点、イランに対する出撃基地として重要な場所だ。 ズラビシビリは2018年の大統領選挙に出馬するが、彼女がフランス国籍を放棄したのは選挙を2か月後に控えた同年8月23日のこと。そして選挙で勝利、大統領に就任している。任期は今年までだ。アメリカとしては今回の議会選挙を何としてもひっくり返したいだろう。 自分たちの描いた計画通りにならなかった選挙に「不正」というタグをつけ、「カラー革命」で政権を奪取するのはアメリカの常套手段である。すでにアメリカの植民地になっている国では軍、検察、警察が手先になっているが、そこまで支配が及んでいなくてもメディアやNGOが手先として利用されている。 ジョージアでも外国の政府や私的権力が内政干渉のためにNGOが使われている。その活動を透明にするため、同国の議会はアメリカのFARA(外国代理人登録法)をベースにして、外国から一定以上の資金を受け取っている団体は登録し、資金提供者を開示するよう求める法律を制定した。その法律をジョージアのNGOだけでなく、西側諸国が批判している。そうした法律が「カラー革命」を仕掛けづらくするからだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.29
ガザやレバノンで住民を虐殺しているイスラエル、そのイスラエルを支援している米英をはじめとする欧米諸国を批判する声が西側でも高まっている。廃墟と化した街と殺害された子どもの凄惨な状況はテレグラムなどで全世界へ伝えられたことも大きい。 こうした虐殺を戦争の巻き添えだとすることは間違っている。イスラエルは1948年5月の「建国」以来、先住民のアラブ系住民を虐殺、パレスチナから追い出してきた。ナチスと同じように、民族浄化を始めたのである。 今回の軍事衝突はイスラエルの警察官が2023年4月1日にアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺したところから始まった。このモスクはイスラム世界で第3番目の聖地だとされ、イスラム世界に対する挑発だったと言える。 4月5日にはそのモスクへイスラエルの警官隊が突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。こうした挑発行為を西側の自称「民主主義国は黙認していた。 そして10月7日にハマスがイスラエルに対する軍事作戦を実行、それを利用してイスラエル政府はガザに対する本格的な軍事攻撃を始めた。ハマスが攻撃してきた直後、イスラエル政府は敵の人質になる可能性があるイスラエル人を殺して構わないという「ハンニバル指令」を出したと言われている。 その際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における旧約聖書)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用している。 そこには神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれているが、これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていること。パレスチナからアラブ系住民を一掃するために建造物を破壊し、住民を虐殺し、生き残った人は追放する計画だ。イスラエル政府が行おうとしていることは民族浄化にほかならない。 こうした大量殺戮の実態を西側の有力メディアは「ダメージ・コントロール」しながら伝えている。パレスチナ人は戦争の犠牲になっている可哀想な人だというストーリーだが、西側メディアが擁護するイスラエルによる意図的な大量殺戮にほかならない。 それに対し、ウクライナではアメリカ政府が2004年から05年にかけて選挙へ介入(オレンジ革命)、13年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターでウクライナを植民地化することに成功して西側の強大な私的権力にとって都合の良い体制を樹立させた。そして戦乱が始まったのである。これを西側の有力メディアは「ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻」だと宣伝してきた。 クーデター後、新体制に反対する人は多く、東部や南部では特にそうした傾向が強かった。そうした反クーデター軍を倒すため、ロシア政府を巻き込んで時間を稼いでクーデター政権の軍事力を増強させる。そのために利用されたのがミンスク合意だ。 この合意でアメリカ/NATOは8年という時間を稼ぎ、兵器を供与、兵士を訓練、そして反クーデター軍が制圧していたドンバスの周辺には地下要塞を結ぶ要塞線を築いている。 そうした準備が整い、ドンバスに対する本格的な軍事侵攻が行われる兆候が見られ始めた2022年2月、ロシア軍が先手を打った。ミサイルでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍や軍事基地、生物兵器の研究開発施設などを攻撃したのだ。 その後、アメリカ/NATOはウクライナへの支援を強めていくが、戦況はロシアが優位なまま推移、すでに要塞線は突破され、ウクライナ軍の兵士は少なくなり、アメリカ/NATOの兵器庫も枯渇、今年初めにアメリカは日本や韓国にウクライナ支援を命じる事態になっている。 今年8月6日にウクライナ軍は1万人から3万人ほどの兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、予想通り失敗した。この作戦に投入した虎の子の兵器は破壊され、ウクライナ側は2万数千人がすでに死亡、残った部隊はロシア軍に包囲されているようだ。降伏しなければ殺される。 この軍事侵攻にはウクライナに残された機械化部隊が投入され、ドンバスの部隊も移動させたが、それでも戦力が足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加している。そうした部隊も壊滅的な状況だ。 その直前にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はF-16戦闘機を飛ばし始めたと発表しているが、このタイプはすでに旧式。空飛ぶダンプカーと呼ばれているF-35よりはマシかもしれないが、ロシアの戦闘機と空中戦を戦う能力はない。ロシアが問題にしているのはF-16が核ミサイルを発射できることだ。 ソ連製兵器を使ってきたウクライナ軍はアメリカ/NATOの中長距離ミサイルやF-16戦闘機に慣れていない。そこで兵器供与国はその兵器を動かせる要員をウクライナへ派遣する必要がある。ウクライナ兵を訓練しているとされていたが、簡単ではない。そこで、CIAはF-16を飛ばすために韓国のパイロットをルーマニアへ連れて行くとも言われていた。 韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留しているという。パイロットに限らず、すでに韓国はウクライナへ将兵を派遣しているようだ。 朝鮮が兵士1万人をロシアへ派遣したとウクライナのメディア、キエフ・インディペンデントが伝えたのは、そうした情報が伝えられる中でのことだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.28
日本では現行の健康保険証制度が今年12月2日に終了し、日本に住む人びとを監視するために導入されたマイナンバーカードと一体化させた「マイナ保険証」へ移行させる。 このシステムはさまざまな個人情報、例えば学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、クレジット・カードのデータ、航空券の購入記録、映画や舞台のチケット購入歴、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、図書館の利用状況、そして勿論投薬記録などが一括管理される可能性がある。こうした情報管理をアメリカではDARPA(国防高等研究計画局)などが遅くとも1970年代から開発してきた。(William D. Hartung, “Prophets Of War”, Nation Books, 2011) ACLU(アメリカ市民自由連合)によると、フロリダ州を拠点とするシーズント社はスーパー・コンピュータを使い、膨大な量のデータを分析して「潜在的テロリスト」を見つけ出そうとしていた。どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、個人の性格や思想を洗い出そうとしたのだ。図書館や書籍購入の電子化、スマートテレビの普及などと無縁ではない。勿論、インターネット上でのアクセス状況も監視される。 アメリカの国防総省にはCIFA(対諜報分野活動)というデータ収集活動があり、TALON(脅威地域監視通告)というデータベースに情報を記録、このデータを分析することで情報活動をモニター、将来の脅威を見通すとしていた。TALONは2007年に中止されたとされているが、確認はできていない。(前掲書) アメリカやイギリスの電子情報機関の活動を1970年代から暴いてきたイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルによると、1993年から西側諸国の捜査機関高官は毎年、会議を開いて通信傍受について討議を重ねてきた。そうした国際的な流れの中で、日本も1999年に通信傍受法(盗聴法)を制定したのである。(Duncan Campbell, "Development of Surveillance Technology and Risk of Abuse of Economic Information Part 4/4: Interception Capabilities 2000," April 1999) アメリカの植民地と化している日本でも個人情報を一括管理するシステムを導入するため、2016年1月にマイナンバーカードの交付と運用が開始された。そして2021年10月にマイナ保険証の本格的な運用が始まり、監視システムに健康保険証も組み込まれるわけだ。 2022年2月には日本でも「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種が始まったが、その年の6月に政府は現行の健康保険証の原則廃止を打ち出し、10月に河野太郎デジタル相は2024年秋に保険証を廃止すると表明した。 その「ワクチン」は深刻な副作用を引き起こし、死亡者数を増やしてことは明確になっているが、それでも日本政府は接種を強行、同じようにマイナ保険証の発行も強行している。 日本だけで推進されている「COVID-19ワクチン」の接種は治験だと考えられているが、そのためには接種歴のほか、少なくとも今後30年程度は病歴を追跡調査する必要がある。その調査にとってマイナ保険証は有効な手段だ。 新しい兵器にとって、その効果を調べることは使う側にとって重要なことである。原子爆弾が開発された時にもそうした調査は重要だったはずだ。 アメリカは1945年8月に原子爆弾を広島と長崎へ投下したが、その翌月に原子爆弾が人体へどのような影響を及ぼすか調査するため、「日米合同調査団」を編成した。その調査結果は核攻撃の準備に使われたと言われている。 アメリカ軍が1954年に作成した計画では、ソ連を破壊するために600から750発の核爆弾を投下し、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すことになっている。この年の終わりにはヨーロッパへ核兵器を配備した。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) 沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収されて軍事基地化が推し進められるが、これもアメリカの核攻撃計画が深く関係していた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 そして1957年の初頭、アメリカ軍はソ連への核攻撃を想定したドロップショット作戦を作成した。それによると300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、統合参謀本部のライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったカーティス・ルメイなど好戦派は、1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。 ソ連が反撃するためにはアメリカの近くから中距離ミサイルを発射するしかない。そこでソ連はキューバへ中距離ミサイルを運び込み、キューバ危機になる。1962年10月のことだ。この危機を回避することに成功したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日に暗殺された。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトであり、「ワクチン」というタグのつけられた遺伝子操作薬は生物兵器であると推測できる。ウクライナで開発していたとされる生物兵器の特性が「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」によく似ている。マイナ保険証を利用した調査の分析結果は生物兵器戦に利用されるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.27
イスラエル軍は10月25日にイランの首都テヘランの軍事目標を空爆したいう。F-35戦闘機を含む100機以上の航空機が使われたと伝えられているが、テヘランは平穏で、現地で住民が撮影した映像の大半は攻撃を感じさせない。例外的な映像には相当数のミサイルが迎撃されている様子が撮影されている。ロシアの防空システムが使われたと思われ、迎撃ミサイルが発射されただけでなくECM(電子対抗手段)も利用されたのだろう。イランのミサイルを撃墜できなかったイスラエル/アメリカの防空システムとの違いが明確になったようだ。 イランにしろ、イエメンのアンサール・アッラー(西側では蔑称のフーシ派を使っている)にしろ、レバノンのヒズボラにしろ、イスラエルを攻撃している原因はパレスチナにおける住民虐殺にある。 イスラエルは1948年5月の「建国」以来、「大イスラエル」の実現を目指して侵略、破壊、略奪、殺戮を繰り返してきた。そうした犯罪的な行為を「国際社会」を自称する西側諸国は受け入れ、現在、アメリカやイギリスは積極的に支援し、虐殺の範囲をパレスチナからレバノンへ広げつつある。 昨年10月からガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われ、その約4割が子どもで、女性を含めると約7割に達するというが、そのほか相当数の遺体が瓦礫の下に埋まっている。 これだけでも大量殺戮だが、ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘している。当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。 その惨状はテレグラムなどを通じて世界に発信され、イスラエルに対する怒りは高まっている。パレスチナ人虐殺を支援しているアメリカで行われている大統領選挙の候補者、カマラ・ハリスはインタビューの中で「人びとが抱く強い感情を否定するつもりはありません」と言わざるをえなかった。そして「画像を見た人の中で、何が起こったのか強い感情を抱かない人がいるとは思いません」と語っている。 しかし、その後に彼女の本音が現れる。「この問題に関心を持つ多くの人々は食料や雑貨の価格を下げることにも関心がある」うえ、「私たちの民主主義」を気にしていて、「ファシスト」がアメリカ大統領にならないように願っていると主張している。ハリスの周辺が作成したシナリオだけに集中し、イスラエルによる侵略、破壊、略奪、殺戮を機にするなと言っているように聞こえる。 いわゆる「グローバル・サウス」の人びとはイスラエルの背後にアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国が存在していることを熟知している。イスラエルはそうした西側諸国の手先として機能、その役割を利用して自分たちの利益を図ってきた。 その結果、中東で大規模な戦争が勃発する方向へ進んでいる。そうした状況を先日のBRICS首脳会議でもロシアのウラジミール・プーチン大統領が警告していたが、そのロシアはイスラエルに配慮し、積極的に介入することはなかった。2015年にアメリカがシリアへ軍事介入する直前にロシアは介入したが、それも限定的だ。今後、ロシアがイランをどこまで支援するか注目されている。戦争反対、和平実現と叫んでも米英やイスラエルのような国には通用しない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.26
ウクライナでアメリカ/NATOの傀儡軍がロシア軍に負けていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。日本はともかく、その事実を西側の有力メディアも否定できなくなっている。兵士も兵器も枯渇し、ウクライナの街頭では男性が拉致されて不十分な訓練で最前線に送られ、1、2カ月で83%が戦死しているとネオコン系シンクタンクのISWも伝えている。 それに対し、ロシア軍の戦死者はウクライナ軍の1割程度だと見られ、兵士はローテーションで交代しながら戦い、予備部隊も存在している。ロシアが兵器を製造する能力はアメリカ/NATOの4倍程度だという。 昨年8月の段階で、2022年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したと言われていた。ウォロディミル・ゼレンスキー政権は当初から18歳から60歳の男子が出国することを禁止、動員の対象にしていた。45歳以上の男性だけでなく少年兵も前線へ送り込んでいると言われていたが、最近は60歳程度の男性が街角で拘束され、前線へ送り込まれていると報告されている。その様子を撮影した少なからぬ映像が伝えられてきた。 イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めたベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘している。最近では45歳とも言われている。それだけ兵士が足りないということだ。 こうした戦場での劣勢を挽回するつもりだったのか、ウクライナ軍は8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。この地域には国境警備隊しか配置されていなかったことから装甲車両を連ねた部隊に攻め込まれたようだが、すぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けているようだ。 この作戦でウクライナ側はすでに2万数千人が死亡したとも言われている。この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入され、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加しているとも言われている。東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃したが、その際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊した。この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。ここで自国兵が死亡したことを隠したい政府は情報統制を強化するだろう。 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官によると、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、勢揃いした要人を暗殺しようという計画があったという。同じことをアメリカの秘密工作機関OPCは1949年に中国で計画していたと伝えられている。 ウラジミル・プーチン政権の要人を暗殺してロシア国内を混乱させ、その上でクルスクへ攻め込む予定だったのだろうが、失敗した。この計画を作成したチームには、反プーチン工作を指揮、アラブの春を仕掛けたグループにも属していたマイケル・マクフォール元駐露アメリカ大使も含まれていたようだ。 ウクライナの戦況を考えると、ロシアが他国の兵士を必要としているとは思えないのだが、ウクライナ、アメリカ、韓国などの有力メディアは朝鮮の兵士がロシアへ入った、あるいはウクライナで戦っているとする話を盛んに流している。この話を口実にして韓国はウクライナへ兵器を供与する可能性を示しているが、すでにNATO加盟国はそうしたことをする余裕がなくなっている。韓国や日本に頼るしかない。 自らが仕掛けた戦争で窮地に陥ったアメリカはイスラエルを支援して戦火を中東全域に拡大させる動きを見せ、東アジアでも軍事的な緊張を高めている。アメリカ軍が日本列島から台湾、そしてフィリピンにかけての島々にミサイル発射基地を建設、オーストラリアを軍事拠点化していることは本ブログでも繰り返し書いてきた。 国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表したが、その前から実行に移している。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入され、その後、朴槿恵は失脚した。また、アメリカは中国との戦争に備えて台湾を自分たち側へ引き寄せ、軍事拠点化しようとしている。そのオーストラリア、そしてイギリスとアメリカはAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めている。 そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示した。6月にプーチン大統領は朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結している。政治経済面だけでなく軍事面でも両国は連携するということだろう。その朝鮮の部隊をロシアが訓練する可能性はあるが、ロシアには朝鮮系を含むアジア系の国民も多く、作り話はいくらでもできるだろう。 ところで、現在の「ウクライナ体制」は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」を経て、2013年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターで成立した。東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスは反クーデター軍を編成して抵抗を始めた。オデッサもクーデターに反対する住民が多かったが、ネオ・ナチによる虐殺で制圧されている。 オレンジ革命までウクライナは「中立」を掲げていたが、その背景には東部や南部のソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された地域の住民がウクライナからの独立や自治権獲得を要求していたことがある。その民意をアメリカやイギリスをはじめとする西側の私的権力は拒否、ロシア政府も彼らを助けようとはしなかった。 しかし、ウクライナでクーデターに反対する人は多く、軍人や治安機関隊員の約7割は新体制を拒否したと言われている。クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、米英を後ろ盾とするネオ・ナチ体制はこの半島を制圧することができなかった。そのように離脱した兵士や隊員の一部は反クーデター軍に合流、当初はクーデター軍を圧倒していた。そこで欧米諸国はクーデター政権の戦力を増強し、戦争の準備をするために時間を稼いた。それがミンスク合意にほかならない。8年間に兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を中心とする要塞線を築いている。 2022年に入るとキエフ政権がドンバス周辺に配置した部隊は住民に対する砲撃を激化させ、近いうちに大規模な軍事作戦が始まると少なからぬ人が予想していた。 そうした中、2月24日からロシア軍はウクライナをミサイルなどで攻撃し始め、ドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させたほか、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を攻撃している。 この段階でロシア軍の勝利は確定的。そこでイスラエル政府やトルコ政府の仲介で停戦交渉が始まり、ほぼ合意に達したという。仲介役を務めていたイスラエルのナフタリ・ベネット首相は3月5日にモスクワへ飛び、ウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合ってウォロディミル・ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会う。 ところが、その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを裏切り者だと称して射殺。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と昨年6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 こうした交渉を潰すため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令し、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるために戦い続けさせてきた。「総玉砕」を求めたのだ。 この段階ではロシアに勝てるとアメリカやイギリスの好戦派は信じていたようだが、工業生産力や兵器の性能、兵士の戦闘能力でロシアはウクライナやアメリカ/NATOを圧倒する。戦場からウクライナ兵は減り続け、武器弾薬も枯渇している。こうしたことはロシアが軍事介入した直後から明白で、だからこそゼレンスキー政権も停戦交渉を始めたのである。**********************************************【Sakurai’s Substack】h
2024.10.26
イスラエルのベザレル・スモトリッチ財務大臣はエルサレムをダマスカスまで拡大すると公言している。パレスチナ人を虐殺し、殺されたくないならパレスチナから出て行くように強制しているのだが、彼だけがそう考えているわけではない。これは民族浄化であり、イスラエル政府は1948年5月の「建国」以来、大イスラエル構想を捨てていないのだ。 しかし、忘れてならないのはイギリスがイスラエルを作る礎を築いたということである。パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうという運動、シオニズムはエリザベス1世が統治するイギリスで生まれたのだ。 アメリカの外交安全保障政策を動かしているネオコンはシオニストの一派で、1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカが世界を制覇するプロジェクトを国防総省のDPG草案という形で作成、2001年9月にそのプロジェクトを本格的に開始した。 欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、DPG草案が作成される前からネオコンの中心的なグループに属していたポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、クラークは国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことを知る。そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。(ココやココ) 2003年にはイラクを先制攻撃で破壊、スーダンの西部、ダルフールでは資源をめぐる戦闘が激化している。当初、欧米の国々は南スーダンの石油利権に集中、ダルフールの殺戮を無視していたが、ネオコンはダルフールへ積極的に介入、その資源に目をつけた隣国チャドの政府が反スーダン政府のJEM(正義と平等運動)へ武器を供給して戦闘を激化させる。リビアのムアンマル・アル・カダフィは生前、チャドの背後にはイスラエルが存在していると主張していた。2011年にはシリアやリビアに対する軍事作戦を開始、アメリカ軍はエチオピア軍と共同でソマリアを軍事攻撃する。そして今、アメリカをはじめとする欧米諸国の支援を受けたイスラエルはレバノンを破壊しつつあり、次にイランを攻撃し始めている。 蛮行を働くイスラエルを無批判に擁護しているアメリカだが、1960年代までは違った。例えば、ジョン・F・ケネディ大統領はイスラエルの核兵器開発には厳しい姿勢で臨んでい流。ダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙を送りつけているのだ。核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告していた。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007) こうした姿勢が劇的に変化したのはケネディ大統領が暗殺された後にリンドン・ジョンソンが副大統領から大統領に昇格してからだ。ジョンソンのスポンサーはシオニストの富豪、アブラハム・フェインバーグ。この人物はハリー・トルーマンのスポンサーでもあった。 ジョンソンがイスラエルに対するアメリカ政府の姿勢を変えたことを示す象徴的な出来事が1967年6月に勃発した第3次中東戦争にほかならない。 戦争が勃発した4日後にアメリカは情報収集船の「リバティ」を地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣したのだが、イスラエル軍はその船がアメリカの情報収集船だということを確認した上でロケット弾、ナパーム弾、魚雷などを使って攻撃、撃沈させようとしている。 最初の攻撃でリバティの通信設備を破壊したのだが、船の通信兵は寄せ集めの装置とアンテナでアメリカ海軍の第6艦隊へ遭難信号を発信することに成功、それに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害している。 空母サラトガの甲板にはすぐ離陸できる4機のA1スカイホークがあったことから艦長は船首を風上に向けさせて戦闘機を離陸させ、艦隊の司令官に連絡、司令官は戦闘機の派遣を承認。その事実はジョンソン大統領へすぐに報告されたが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対して戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。自国の艦船を見殺しにしろと言っているに等しい。リバティはからくも沈没を免れたものの、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005) アメリカ政府は真相を隠す工作をすぐに開始、その責任者に選ばれたのがアメリカ海軍太平洋艦隊の司令官だったジョン・マケイン・ジュニア、つまりジョン・マケイン3世上院議員の父親だった。リバティの交信記録や近くにいたアメリカ海軍の潜水艦が集めていた情報を廃棄されている。 この出来事の背後にはアメリカ政府の「サイアナイド作戦」が存在していると言われている。ジョンソン政権では「303委員会」が秘密工作を統括、1967年4月に「フロントレット615」という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。 それだけでなく、この計画には「サイアナイド作戦」なるものが含まれていた。リバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたと推測されている。この話が事実ならば、トンキン湾事件の再現を狙ったジョンソン政権がリバティ撃沈をイスラエルの要請したということになるだろうが、リバティは沈没を免れた。 リバティに対する攻撃の後、アメリカ政府は関係者に箝口令を敷き、重要な情報を公開していない。イスラエルの法律では攻撃に関する資料が2017年に公開されるはずだったが、10年7月にベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めた。アメリカもイスラエルもこの攻撃に関する情報を隠し続けようとしている。 こうした推測が正しいなら、イスラエルはアメリカの弱みを握ったことになるが、そもそもジョンソンは親イスラエルの政治家である。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.25
イスラエルのシオニストが行なっていることはドイツのナチスが行ったことに酷似している。 イスラエルは虐殺の範囲をパレスチナからレバノンへ広げつつある。昨年10月からガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、そのほか相当数の遺体が瓦礫の下に埋まっている。ガザ保健省によると、その約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達すると言われている。 これだけでも大量殺戮だが、それだけでなくレバノンでも空爆で住民を虐殺しはじめた。ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘している。当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。イスラエルに対する怒りは高まっている。 パレスチナやレバノンで大虐殺が止まらないのは「国際社会」、つまりアメリカやその従属国が本気で止めようとしていないからだ。イスラエルは兵器なしに虐殺することはできないが、そのイスラエルへ供給されている武器の69%はアメリカから、30%はドイツから。予想の拠点はイギリスで、キプロス経由で運ばれている。停戦を望んでいると口にしているジョー・バイデン政権だが、行動は逆。つまり戦争を推進している。 こうした虐殺を副次的な被害だと言うことはできない。例えば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は昨年10月7日にハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、「われわれの聖書(キリスト教における旧約聖書)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用している。そこには神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれているが、これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていることだ。イスラエル政府が行おうとしていることは民族浄化にほかならない。 こうした狂気の政策を推進しているのはネタニヤフ首相のほか、財務大臣を務めるベザレル・スモトリッチと国家安全保障大臣を務めるイタマル・ベン-グビルだとされている。所属政党はネタニヤフがリクード、スモトリッチは宗教シオニスト党、ベン-グビルはユダヤの力。 スモトリッチはパレスチナ人を「人間以下の存在」だと信じ、エルサレムの将来はダマスカスまで拡大すると公言している。大イスラエル構想だ。 ベン-グビルはテロ組織イルグンの一員であったイラクのクルド系ユダヤ人の息子。イルグンは1931年にハガナ(後にイスラエル軍の母体になる)から離脱して組織された。当初、ゼエブ・ジャボチンスキーが率いていたが、ジャボチンスキーが死んだ後はメナヘム・ベギンが率いている。ジャボチンスキーは1940年8月にニューヨークで死亡するが、その時に秘書を務めていたのがベンシオン・ネタニヤフ、つまりベンヤミン・ネタニヤフの父親だ。 ベギンは1913年にロシアのブリスク(現在はベラルーシ)で生まれたが、ここは1919年から39年にかけてポーランド領。1939年当時、ベギンはシオニストの指導者グループのひとりだったが、ポーランドのユダヤ人には嫌悪されていたという。(レニ・ブレンナー著、芝健介訳、『ファシズム時代のシオニズム』法政大学出版会、2001年) この時期、この場所に限らず、ユダヤ人の大半はシオニズムを支持していなかった。シオニストは1933年8月、ユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることでナチス政権と合意した。「ハーバラ合意」だが、ヨーロッパのユダヤ人は文化も風習も違うパレスチナへ移住したがらない。 そうした中、1938年11月にドイツではナチスがユダヤ系住民を襲撃して多くの人を殺害、収容所へ送り込み始める。この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアへ逃れている。後にシオニストはイラクなどに住むユダヤ教徒に目をつけ、テロで脅してパレスチナへ移住させた。 ユダヤ人の多くはシオニズムを支持していなかった。この計画を打ち出したのはイギリスの支配層だ。シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったのである。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れたのだ。ブリティッシュ・イスラエル主義である。こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。 クロムウェルを支援者していた富裕層の中にポルトガル出身のフェルナンデス・カルバジャルというコンベルソ(ユダヤ教からキリスト教へ改宗した人びと)が含まれていた。そうした関係もあり、クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。イングランドでは13世紀からユダヤ教徒が追放されていた。 イギリス外務省は20世紀初頭、ロシアとドイツを戦わせようと画策している。イギリス外務省はドイツとの戦争に反対していたグレゴリー・ラスプーチン排除するため、1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関SIS(通称MI6)のチームをペトログラードへ派遣。そのメンバーに含まれていたオズワルド・レイナーはオックスフォード大学の学生だった当時からフェリックス・ユスポフ公と親密な関係にあり、流暢なロシア語を話した。 暗殺には3種類の銃が使われているが、トドメを刺したのは455ウェブリー弾。イギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだった。スティーブン・アリーはユスポフ家の宮殿で1876年に生まれたと言われている。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 戦争の障害になっていたラスプーチンが排除された後、1917年3月にロシアではメンシェビキ、エス・エル(社会革命党)、産業資本家が革命を成功させ、アレクサンドル・ケレンスキーの臨時革命政府を成立させた。二月革命だ。この政府はドイツとの戦争を継続させる。 この展開を嫌ったドイツは亡命中だったボルシェビキの幹部をロシアへ運び、11月の十月革命に繋がった。その際、シオニストはボルシェビキと対立するが、イギリスのウィンストン・チャーチルたちはシオニストを支援している。 蛇足ながら、「ロシア革命」は二月革命と十月革命、全く別のふたつの革命の総称だ。つまり、「ロシア革命はボルシェビキの革命だ」と言うことはできない。イギリスの金融資本が仕掛けた革命をボルシェビキはドイツの支援で潰してしまったのだ。 その一方、イギリスは中東を支配する拠点として新たな国、サウジアラビアとイスラエルを作り、イギリスやアメリカの金融資本はナチスを資金面から支援していた。ナチスは1918年にドイツで創設された「トゥーレ協会」と関係が深い。協会の名前は北方神話の土地、ウルチマ・トゥーレに由来し、そのシンボルはナチスと同じ鉤十字だ。(Christopher Simpson, "The Splendid Blond Beast," Common Courage, 1995) キリスト教を生み出したのがユダヤ人だという話を受け入れられないヨーロッパ人の中には、その源流を北極周辺に求める人もいた。そこにはアトランティスという大陸があり、そこから文明は広まっていったというのだ。トゥーレとアトランティスは同じものを指しているとする人もいる。 トゥーレ協会の源流は「ゲルマン騎士団」だとされ、メンバーには多くの貴族が名を連ねていたという。トゥーレ協会が母体となり、1919年に「ドイツ労働者党」が結成され、その翌年には「国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」へ改称される。アドルフ・ヒトラーが指導者となるのは1921年からだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.24
イランに対するイスラエルの攻撃計画に関するアメリカの国防総省とNSA(国家安全保障局)の機密文書とされるものを10月18日に中東スペクテイターがテレグラムで公開した。国防総省の国家地理空間情報局からの視覚情報報告書を含む文書には、イランへの攻撃に備えてイスラエル空軍の基地で進行中の活動の詳細も記載されている。これらの文書は本物だと見られている。 公開された文書によると、イスラエル空軍はイラン攻撃の準備を継続し、10月13日に実施された演習に続いて2回目の大規模な軍事演習を実施したとしている。またハツェリム基地、ラマト・ダビド基地、ラモン基地で16発のALBMと40発の空中発射ミサイルなどの兵器が取り扱われていたという。 文書全体は外国人には公表しない最高機密に分類され、項目によってはアメリカとイギリス、あるいは「ファイブアイズ」、つまりアングロ・サクソン系のアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが閲覧することを許している。中東スペクテイターが公開するまでアメリカの「同盟国」もアクセスできなかった文書があるわけで、イスラエルによるイラン攻撃計画の全体像を彼らは知らされていなかったことになる。 ファイブアイズはアメリカとイギリスの情報機関の組織であり、イスラエルと連携しているのだが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関は米英の配下にあるメンバー。この6カ国に含まれない西側諸国はそれ以下の存在だ。 この文書をリークした人物はイスラエルによるイラン攻撃にブレーキをかけようとしたのだと推測されている。イスラエル側にはアメリカ政府が意図的にリークしたと疑っている人もいるようで、両政府の信頼関係が損なわれる可能性があるだろう。 日本ではイスラエルがハマス、ヒズボラ、そしてイランを軍事的に圧倒しているかのように伝えられているが、本ブログで繰り返し書いてきたように、イスラエルは窮地に陥っている。 イスラエルは10月16日にハマスの指導者だったヤヒヤ・シンワルを殺害しているが、シンワルは戦闘の最前線でイスラエル軍と戦い、最後まで屈服しなかった。イスラエル軍はハマスを制圧できてなことを示している。ヒズボラはイスラエルに対する激しいミサイル攻撃を継続中であり、イランでは親米派の政権もイスラエルと戦わざるをえない状況になっている。 1967年6月にイスラエル軍はエジプトを奇襲攻撃して完勝、占領地を広げることに成功したが、73年10月にはヘンリー・キッシンジャーと親しいエジプト大統領のアンワール・サダトがシリアと連携してイスラエルを奇襲攻撃した。 窮地に陥ったイスラエルではゴルダ・メイア首相の執務室で核兵器の使用について議論されている。その際、モシェ・ダヤン国防相は核兵器を選択肢として見せる準備をするべきだと発言したという。アメリカのウィルソン・センターの調査によると、核兵器使用の準備をするという提案はメイア首相が拒否して実行されなかったというのだが、閣議で核兵器の使用が決まったという情報もある。 その後、10月16日にイスラエルの機動部隊がスエズ運河を越えてエジプト軍の背後に回り込みはじめ、エジプト陸軍の第3軍が壊滅の危機に陥った。キッシンジャーはメイア首相に対し、軍の動きを抑えるように頼むが、失敗した。 その日、ソ連のアレクセイ・コスイギン首相はエジプトへ飛んで停戦するように説得し、キッシンジャーは20日にモスクワへ飛ぶ。22日にキッシンジャーはイスラエルから停戦の内諾を得るのだが、イスラエルはエジプトへの攻撃をやめない。アメリカの足下を見透かしての強硬策だ。 それに対し、10月24日にソ連のアナトリー・ドブルイニン駐米大使は米英両国が平和維持軍を派遣してはどうかとキッシンジャーに提案する。その一方、レオニード・ブレジネフ書記長はリチャード・ニクソン大統領宛の手紙の中で、アメリカがソ連と手を組めないのならば、ソ連は単独で行動すると警告していた。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009/William Colby, “Honorable Men”, Simon & Schuster, 1978) その直後、キッシンジャーはすぐにWSAG(ワシントン特別行動グループ)を招集して討議しているが、ニクソンには知らされていない。その会議で決まったことは、ニクソン名義でブレジネフへソフトな内容の返信を送り、その一方でアメリカが核戦争の警戒レベルをDEFCON(防空準備態勢)を通常の5から3へ引き上げているということ。ニクソンはこの決定を追認している。25日には全世界のアメリカ軍に対して「赤色防空警報」が出されたともいう。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009) メイアは核戦争の危機が迫っていると考え、ダヤン国防相は核攻撃の準備を始める。2基のミサイルに核弾頭をセット、目標をダマスカスとカイロに定めた。キッシンジャーはイスラエルに停戦を強く求め、停戦は実現したものの、イスラエルに「懲罰」を与えるという計画は失敗に終わった。 その後イスラエルは中性子爆弾、あるいは未知の核兵器を使ったという噂もあるが、そうしたことがなかったとしても、第4次中東戦争の際には核兵器を使おうとしている。今回、イスラエルがイランを核攻撃しても不思議ではない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.23
BRICSの首脳会議が10月22日から24日までロシアのカザンで開催される。ロシアのウラジミル・プーチンのほか、中国の習近平、インドのナレンドラ・モディ、南アフリカのシリル・ラマポーザ、エジプトのアブドルファッターフ・アル・シーシー、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン、エチオピアのアビ・アハメド、そしてイランのマスード・ペゼシュキヤーンが参加する。ブラジルのルイス・シルバは直前に転倒、軽い脳出血を起こしたことからビデオでの参加になるという。 その前、10月15日と16日にはパキスタンのイスラマバードでSCOサミットが開催された。現在、SCOの正式加盟国は中国、ベラルーシ、インド、イラン、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、ロシアの10カ国。 この会議にはオブザーバー加盟国としてモンゴルが、また対話国としてアルメニア、アゼルバイジャン、バーレーン、カンボジア、エジプト、クウェート、モルディブ、ミャンマー、ネパール、カタール、サウジアラビア、スリランカ、トルコ、アラブ首長国連邦が、さらにゲストとしてトルクメニスタンも参加。当初、オブザーバー国として参加すると言われていたアフガニスタンは招待されなかったが、繋がりは強化されている。 BRICSとSCOの加盟国が重複、両組織がひとつになることも考えられるが、アメリカによる支配の柱であるドルをBRICS諸国は放棄し、貿易の85%を現地通貨で支払っている。それに続いてCISも外国取引の85%を国内通貨で決済しはじめた。アメリカによる支配からの離脱が進んでいるとも言える。こうした動きの中心はロシアと中国だ。 ロシアのプーチン大統領はイスラエルとの関係を重視していた。ソ連がイスラエルと一線を画し、アラブ寄りだったことを戦略的な間違いだと考えていたようだが、その戦略変更をガザとレバノンの状況が揺るがしている。イスラエルとロシアとの間に亀裂が入り、イランとロシアとの関係が強まってきたのだ。イランへロシアの防空システムS-400が運び込まれたとする推測もある。 イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は10月11日、トルクメニスタンのアシガバートでプーチン露大統領と会談、中東情勢について協議したという。プーチン大統領はペゼシュキアン大統領に対し、モスクワとテヘランの国際情勢に関する立場は非常に近いと語ったとされ、両国の友好的な関係を示したと言える。その数時間前にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はイスラエルがイランの民間核施設を攻撃した場合、「深刻な挑発」になると警告している。 しかし、ペゼシュキアン政権とプーチン政権との関係は5月19日に搭乗していたアメリカ製のベル212ヘリコプターが墜落して死亡したエブラヒム・ライシが大統領だった当時より良くない。このヘリコプター墜落はアメリカにとって好ましいものだった。 その親欧米政権をも動かしたのがイスラエル軍による9月27日の南レバノン空爆。「バンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)」約85発が投下され、ヒズボラ幹部を殺害している。その中には指導者だったハッサン・ナスララも含まれていた。 この攻撃でペゼシュキアン大統領も動かざるをえなくなり、イランはイスラエル南部と中部に180機以上の弾道ミサイルを発射、イスラエルが誇る防空システム「アイアン・ドーム」を突破してイスラエルの軍事基地や情報機関の本部周辺に着弾、相当数の戦闘機が破壊されたともされている。その光景はインターネット上で伝えられた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.22
ウクライナのウォロディ ミル・ゼレンスキー大統領は10月16日、議会で「勝利計画」の要点を明らかにした。ウクライナのNATOやEUへの加盟を実現し、ロシア深奥部を攻撃するための長距離ミサイルの使用制限を緩和することが含まれている。 長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃はアメリカ/NATOの軍事衛星、偵察機、人的な情報網などが集めた情報を必要とするだけでなく、オペレーターもミサイル供与国は派遣する必要が生じる。つまりアメリカ/NATOが直接ロシアを攻撃することを意味し、ロシアはアメリカ/NATOを直接攻撃することになる。つまり世界大戦の勃発であり、それは核戦争になる可能性が高い。 それをロシアのウラジミル・プーチン大統領は指摘、核戦争に勝者はいないと警告しているのだが、それを西側ではプーチンが核戦争で脅したとする人がいる。そうした主張は、ロシアに対しておとなしく攻撃されて殺されろと言っているに等しい。米英の情報機関にコントロールされている有力メディアはともかく、西側の支配層でもゼレンスキーの要求が受け入れられていない理由はそこにある。 ウクライナがNATOに加盟できない場合、残された唯一の選択肢は核兵器を保有することだとドナルド・トランプに伝えたとゼレンスキーは10月17日、欧州理事会で語っている。核武装されるのが嫌ならNATOへ加盟させろというわけだが、NATOに加盟するとはアメリカの命令に従う属国になることを意味する。 ウクライナを戦乱へと導いたのはアメリカにほかならない。アメリカの外交/安全保障政策を決めてきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、翌年の2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。 ネオコンは1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見てロシアも「脅せば屈する」と確信、中立政策を掲げていたウクライナをアメリカの属国にするため、2004年から05年に「オレンジ革命」を仕掛けた。 しかし、この「革命」政権が行った新自由主義政策は西側の私的権力の手先になった特権集団を生み出す一方、大半の国民を貧困化させた。ボリス・エリツィン時代のロシアと同じだ。そこで2010年の大統領選挙では「オレンジ革命」で大統領への就任を阻止されたビクトル・ヤヌコビッチが当選。そこでバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使い、クーデターを実行した。 このクーデターをホワイトハウスで指揮したのは副大統領のジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだとされている。 このクーデターでキエフにはネオ・ナチ体制が樹立されたが、ウクライナがソ連から「独立」するのと同時にウクライナからの独立や自治権を求めていた東部や南部は反クーデターの抵抗運動を開始した。この抵抗運動を潰すためにアメリカ/NATOはキエフ政権を支援、軍事力を増強し、反クーデター軍が支配する東部のドンバス周辺に複数の地下要塞を結ぶ要塞線を築いた。 2021年1月にバイデンが大統領に就任すると、サリバンは国家安全保障補佐官になり、ヌランドは同年5月から国務次官を務め始め、このチームにアントニー・ブリンケンが国務長官として参加している。 クーデターから8年後の2022年にキエフ政権はドンバスに対する大規模な攻撃を仕掛ける動きを見せるが、実際に動く直前にロシア軍がミサイル攻撃を開始してウクライナ軍に大きなダメージを与え、ウクライナ政府はロシア政府と停戦交渉を開始、ほぼ合意に達した。これを潰したのがアメリカやイギリスだということは本ブログでも繰り返し書いてきた。 一連の戦いはネオコンが冷戦でソ連に勝利したと考えたところから始まった。21世紀に入ってロシアが再独立に成功するが、そのロシアも簡単に制圧できると西側諸国は考えたようだ。 その判断が間違っていたことに気づいた人が西側でも少なくないようだが、ネオコンは今でも世界制覇の妄想から抜け出せないでいる。そのネオコンの後ろ盾になっている私的権力はロシアの富を奪うことを前提にして多額の投資をしてきた。ロシアに勝たせるわけにはいかないはずだ。ウクライナに核武装させ、ロシアとの核戦争へと導いて共倒れにさせて「漁夫の利」を得ようとしているとも見られている。彼らは核戦争になっても自分たちのいる場所は安全だと信じているのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.21
イスラエルは10月16日、ガザで戦っていたハマスの指導者だったヤヒヤ・シンワルを殺害した。戦闘の中でイスラエル軍の戦車がある建物を砲撃、その中にいたハマスの覆面をした戦闘員はふたつの手榴弾を投げて応戦したという。その後、イスラエル軍はドローンを送り込んで調べた上で砲撃して殺害した。翌日の朝にイスラエル側はその戦闘員がシンワルだということに気づき、DNAを調べて確認したとされている。その死をイスラエルの国防大臣が発表、ハマスも確認した。 イスラエルはシンワルが人質に囲まれた状態で隠れていると宣伝してきたが、その嘘をイスラエル軍がばらしてしまった。彼を英雄にしたとも言える。そのイスラエル軍はイスラエル建国の前からパレスチナに住むアラブ系住民を虐殺してきたが、今行われている攻撃は2023年春に開始されている。 2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺し、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。こうした挑発行為を西側の自称「民主主義国」は黙認していた。 そして10月7日、ハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃して今回の戦闘が始まった。この軍事作戦をハマスが「アル・アクサの洪水」と名付けたのはそのためだが、そこにイスラエルの影を見る人もいる。ハマスの歴史がそうした見方をさせるのだ。 イスラエルはPLOを率いていたヤセル・アラファトの力を弱めるためにライバルとしてハマスを創設した。イスラエルの治安機関であるシン・ベトはムスリム同胞団のメンバーだったシーク・アーメド・ヤシンに目をつけ、1973年にムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を、そして1976年にはイスラム協会を設立させた。ハマスは1987年にイスラム協会の軍事部門として作られたのである。 1967年の3月から4月にかけてイスラエルは軍事的な緊張を高めるため、シリアを挑発した。ゴラン高原のシリア領にトラクターを入れて土を掘り起こしたのだ。シリアが威嚇射撃するとイスラエルは装甲板を取り付けたトラクターを持ち出し、シリアは迫撃砲や重火器を使うというようにエスカレートさせ、その年の6月に第3次中東戦争が勃発した。 この戦争でイスラエルは圧勝、約43万9000人の新たなパレスチナ難民がヨルダン川東岸へ移動しているが、この時にゲリラ戦でイスラエル軍を苦しめたのがファタハであり、そのスポークス・パーソンを務めていたのがヤセル・アラファトだ。1969年2月にアラファトはPLO(パレスチナ解放機構)の執行委員会議長に選ばれ、アラブ人社会の中でファタハの存在は大きなものになっていくと同時にイスラエルから命を狙われるようになる。 2004年11月11日にアラファトは死亡(おそらく暗殺)しているが、同じ年の3月22日にヤシンはイスラエル軍に暗殺されている。 アラファトとヤシンは同じ2004年に死亡したが、イスラエルの首相へ返り咲いたネタニヤフは09年、ヤシンなきハマスにパレスチナを支配させようと計画。そのためにカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。 しかし、ハマスの内部でも世代交代があり、若い世代はパレスチナ解放を重視するようになる。そこで創設時に近い考え方をするハマス幹部はカタールに住み、パレスチナ解放を目指す幹部はパレスチナやレバノンを拠点にするようになったようだ。シンワルやイスマイル・ハニヤは新しい世代だと言えるだろう。 昨年10月以降、ガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、瓦礫の下に埋まっている遺体は相当数に及ぶと見られている。ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘、当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。イスラエルに対する怒りは高まっている。 こうした状況の中、ハマスの求心力は強まりそうだ。しかもヒズボラやイランのミサイル攻撃をイスラエルの防空システムが対応できないことが明確になっている。 10月19日にはヒズボラのドローンがイスラエルの防空システムを掻い潜り、イスラエルの軍用ヘリコプターの横を通ってテルアビブ北部にあるネタニヤフ首相の自宅に命中している。首相本人はいなかったようだが、首相を直接狙えることを示した。ウクライナ同様、パレスチナでもアメリカは窮地に陥っている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.20
ウクライナのウラジミール・ゼレンスキーは自国が核兵器を保有するか、NATOに加盟したいと語った。ゼレンスキーは9月下旬にアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領のほかふたりの大統領候補、つまり民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプと会談、その際、トランプにも同じことを伝えたというが、この主張は西側にロシアとの核戦争を求めているのだと理解する人もいる。 アメリカ/NATOはウクライナを舞台にした戦闘でロシアに負けている。その結果、ウクライナ側兵士の死傷者は増え、武器弾薬が不足している。さすがに「ウクライナは勝っている」という宣伝は無理になり、「ロシアを勝たせてはならない」という主張に変化した。 そうした状況をイギリスのベン・ウォレス前国防大臣も明らかにしている。昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘しているのだ。 また、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は今年2月、ドイツのウクライナへの砲弾供給を昨年に比べて今年は3から4倍に増やすと述べた。ウクライナへ十分な弾薬供給を維持するのに苦労しており、同盟国からの軍事援助が減ったことで懸念が高まっているとしていた。EU外相を務めていたジョゼップ・ボレルは1月31日、EUは3月までにウクライナに約束していた砲弾100万発のうち、約半分しか提供できないと述べている。 しかし、実際のところ、アメリカ/NATOの兵器供給は2022年にロシア軍が軍事介入した直後の段階で不足、ウクライナの戦死者も膨らんでいた。だからこそ、ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と和平交渉を開始、合意に達していたのだ。その交渉を壊し、戦争を継続させたのがアメリカとイギリスにほかならない。そうした西側の判断が間違っていたのだ。 アメリカの選挙システムは事実上、民主党と共和党の二者択一を要求している。それ以外の政党、あるいは個人として立候補し、当選することは至難の業だ。 勿論、例外的な人物もいた。例えば2000年の大統領選挙では、その前年に実施された世論調査でジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまりジョン・F・ケネディ大統領の息子が共和党や民主党の候補者を5ポイントほどリードしていたのだ。ケネディ・ジュニアは出馬の意思を示していなかったが、彼の大統領就任を望む有権者が多かったということである。 もしケネディ・ジュニアが立候補したなら、投票数でトップになる可能性は高い。そこで選挙人が投票結果に拘束されるのかどうかという点が議論された。選挙人が別の候補者に投票することは可能なのか、不可能なのかということだ。アメリカの大統領選挙は候補者本人に投票するのではなく、選挙人を選ぶからだ。アメリカの大統領選挙が機能不全に陥る可能性すらあった。 しかし、そうした懸念を吹き払う出来事が1999年7月16日に起こる。ケネディ・ジュニアが操縦する単発のパイパー・サラトガが墜落したのだ。目的地であるマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島へあと約12キロメートルの地点だった。本人だけでなく同乗していた妻のキャロラインとその姉、ローレン・ベッセッテも死亡している。 いくつかの点から考えて操縦ミスで落ちた可能性は小さい。例えば、墜落した位置からするとパイパー機は自動操縦で飛んでいた可能性が高い。 現在、こうした例外的な人物は見当たらない。ハリスかトランプになると一般的には考えられている。通常、アメリカの外交/安全保障政策はどの政権でもシオニストが握っている。ジョン・F・ケネディ大統領は在任中、シオニストの命令に従わなくなったが、暗殺された。 ジョー・バイデン政権の場合、外交/安全保障政策はアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官を中心に動いている。バイデン政権が始まった当初はバイデン大統領や今年3月まで国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドもこのグループに加わっていた。このグループはシオニストの中でも好戦的なネオコンだ。 しかし、アメリカの支配システムが揺らいでいることもあってアメリカの支配層は割れている。システムが安定していれば、次の政権も基本的に同じ政策を実行するはずだが、状況が違う。ウクライナで戦争を主導してきたネオコンはアメリカの支配層で孤立しつつあるようで、戦争を継続してロシアを破壊、分裂させようと必死だ。トランプが大統領に選ばれた場合、状況は変化する可能性がある。 そこで、イスラエルやロシアがトランプ政権の誕生を見通して様子を見る一方、ウクライナはバイデン政権の間に何とかしたいのだと考える人もいる。パレスチナやレバノンでイスラエルが住民を虐殺しているにも関わらず動きの鈍いロシアにイランが苛立っている原因もそこにあると分析する人もいる。 ロシアはイスラエルによる攻撃に備え、イランに防空システムS-400を配備済みだろうと推測されているが、もしその推測が間違っていたなら、ロシアにとって困難な状況を作り出すことになるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.19
パレスチナやレバノンで住民を虐殺しているイスラエルをイエメンのアンサール・アッラー(西側では蔑称のフーシ派を使っている)は攻撃している。そこで、イスラエルによる虐殺を支援しているアメリカとイギリスはイエメンの首都サナアの周辺を6回、サアダ州を9回にわたって空爆したが、攻撃は山岳地帯、サアダの小さな通信網、そして空っぽのキャンプを狙ったもので、兵器庫は攻撃していない。 その攻撃でアメリカ空軍はB-2ステルス爆撃機を使用した。イエメン軍は過去1年間に11機以上の無人攻撃機MQ-9 リーパを撃墜、アメリカ軍はイエメンの防空能力が高いと判断していると見られている。そのイエメンのアンサール・アッラーは報復を宣言している。 アメリカやイギリスをはじめとする欧米諸国はイスラエルによる残虐行為を支援してきた。イスラエルの命令に欧米諸国が従っているとする人たちもいるが、中東を支配するため、米英が汚い仕事をイスラエルにやらせているという見方もある。その仕事を請け負っているのがシオニストだが、最近はシオニストの中でも狂信的な勢力が力を持っている。 そうした勢力に属しているベザレル・スモトリッヒ財務大臣はフランス語チャンネル「アルテ」が制作・放映したドキュメンタリー「イスラエル:権力の極右派」の中で、パレスチナ全土だけでなくシリアまで及ぶユダヤ人国家の設立を目指していることを認めた。ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク、エジプトの領土も含む場所は神がユダヤ人に与えたのだと主張する「大イスラエル」構想だ。これは1948年の「建国」時点から消えていない。 パレスチナに「ユダヤ人の国」を築くというシオニズムは遅くとも16世紀後半に生まれている。エリザベス1世が統治していたイギリスで出現したブリティッシュ・イスラエル主義から派生しているのだ。 その当時、イギリスのエリート層の中に、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が現れた。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だというのだ。 例えばスチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、あるいはオリヴァー・クロムウェルの周辺にもそう信じる人がいたという。ピューリタンの少なくとも一部はそのように信じていたようだ。 ちなみに旧約聖書の記述によると、イスラエル民族の始祖はヤコブ。彼には12人の息子があり、それぞれ支族を形成、そのうちユダ族とベニヤミン族の後裔とされる人びとが「ユダヤ人」と呼ばれている。残りは行方不明で、旧約聖書を信じる人びとから「失われた十支族」と呼ばれているのだが、ユダヤ人の定義から外れるので無視されたのだろう。 キリスト教はユダヤ教から派生したのだが、ヨーロッパでキリスト教が支配システムに組み込まれると、自分たちを神と結びつけるために聖書を都合よく解釈するようになる。もっとも、その前に新旧聖書は改竄されているようだが。 イギリスのシオニストは自分たちが救済されるためには、パレスチナにユダヤ人を集めなければならないと考えた。そこで彼らはユダヤ教徒のエリートとも手を組むのだが、大多数のユダヤ人からは拒否されていた。 その後、ユダヤ人の中にもシオニストが増えていくが、ベンヤミン・ネタニヤフ政権の閣僚にはそうした類の人が少なくない。スモトリッヒ財務大臣だけではないのだ。 例えば、昨年10月、ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人と敵だと記述されている「アマレク人」とパレスチナ人を重ねて見せた。 彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。 また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。 パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣告通りのことをイスラエルは行っている。彼らにとって「アマレク人」はパレスチナ人だけを指しているわけではない。 アメリカ、イギリス、イスラエルはブリティッシュ・イスラエル主義で結びついている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.18
朝鮮が兵士1万人をロシアへ派遣したとウクライナのメディア、キエフ・インディペンデントが伝えた。「この問題に詳しい西側外交官」の情報だというのだが、その話を裏付ける証拠や根拠は示されていない。その怪しげな話をウォロディミル・ゼレンスキーも主張している。 アメリカが東アジアにおける軍事的な緊張を高める中、ロシアは朝鮮との関係を強化しているが、そうした朝鮮軍派兵の話をウラジミール・プーチン大統領の報道官は否定、ドミトリー・ペスコフ外相は偽情報だと一蹴している。 ウクライナにおける戦闘はアメリカ/NATOの傀儡軍とロシアとの間で行われているのだが、戦況は圧倒的にロシアが優勢。ウクライナ軍だけでなくアメリカ/NATO全体の兵器が枯渇している。 当然のことながら多くのウクライナ兵が死傷、イギリスのベン・ウォレス前国防大臣は昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘。街中で兵士にできそうな男性が徴兵担当者に拉致される様子が撮影され、世界に発信されている。西側諸国はウクライナ人に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦え、つまり「総玉砕」しろと命じているが、それでは追いつかない。 アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵がウクライナ軍へ加わり、相当数の死傷者が出ている。アメリカのやり方を考えると、朝鮮の名前を出してきたのは東アジアからも戦闘員がウクライナ軍へ参加しているのかもしれない。 8月6日には1万人から3万人ほどの兵力でウクライナ軍がロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、この作戦は西側でも無謀だと言われていた。戦力不足を補うため、この侵攻部隊にもアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているが、壊滅的な状況だ。 ウクライナ軍はクルスクでの作戦に参加させるため、残り少なくなった精鋭部隊を投入しただけでなく、ドンバスから部隊を回したのだが、ロシア軍はドンバスから部隊を移動させることなく予備部隊を投入して対応。その結果、ドンバスでロシア軍の進撃スピードが高まった。8月以降、ウクライナ軍の死傷者数はそれまで以上に膨らんでいる。それを誤魔化すため、アメリカ政府は主語を入れ替え、「ウクライナ」を「ロシア」にしているようだ。ロシア軍はクルスクに侵攻したウクライナ軍を包囲し、ドンバスの接触線沿いの村や町を数多く占領している。 バラク・オバマ政権が始めたロシアとの戦争は悲惨なことになっているのだが、オバマ政権の副大統領はジョー・バイデンにほかならない。そのバイデンが大統領に就任してから対ロシア戦争を本格化させた。ルビコンを渡ったのだ。その戦争にアメリカが負けていることを選挙前に認めることはできない。 アメリカのニューズウィーク誌によると、ウクライナでロシア軍が発射している砲弾の数はウクライナ軍の4倍だというが、これは生産力の差でもある。現在、ロシアの生産力はアメリカ/NATO諸国の数倍だと言われている。必然的にウクライナ兵の死傷者数はロシア兵の死傷者数より多くなる。ロシア兵の死傷者数はウクライナ兵の1割程度というのが常識的な見方だ。 ロシアが朝鮮やイランから兵器を調達する必要はないのだが、ロシアが両国との関係を強化していることは事実だ。プーチン大統領は6月に朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結した。政治面だけでなく軍事面でも両国は連携することを定めている。 アメリカはオーストラリアやイギリスとAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めているが、そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示したとも言える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.17
イスラエルが30日以内にガザの悲惨な人道状況を改善しなければ、アメリカからの武器供給が影響を受けるリスクがあるとアントニー・ブリンケン国務長官やロイド・オースチン国防長官はイスラエルの指導者に書簡を送ったとアメリカのニュース・サイト、アクシオンが伝えた。 アメリカの政府がイスラエルによるガザでの破壊と虐殺を止める気があるならば、武器供給を止めれば良いと指摘されてきた。アメリカからの供給が止まれば1、2カ月でイスラエルの武器は枯渇し、戦闘を継続できなくなるからだ。 一見、アメリカはイスラエルによる残虐行為を止める気になったように思えるが、少なからぬ人が30日後にはアメリカの大統領選挙が終わっていると指摘している。選挙前には何もしないと言っているのだ。選挙が終われば約束は忘れられる。 この宣伝は、イスラエルによるパレスチナ人虐殺を支援しているジョー・バイデン政権に対するアメリカのイスラエル教徒の怒りを鎮めることが目的だろうと言われている。本気なら30日も待つ必要はない。しかも、この話が政府の公式発表でなくメディアの「報道」という形であることも嘲笑されている。 ワシントン・ポスト紙によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はバイデン政権に対し、イランに対する攻撃は石油施設や核施設でなく軍事施設を目標にすると伝えたという。イランの石油施設を攻撃した場合、アメリカの利権である中東の従属産油国の石油関連施設が破壊される可能性が高く、アメリカからイスラエルに対し、そうした施設を攻撃目標から外すように命令された可能性はある。そうした条件の下、この攻撃をアメリカ政府は承認しているようだ。イスラエルがイランを攻撃した後に30日以内云々の約束が守られるようには思えない。そもそもアメリカもイスラエルも、これを約束だとは考えていないだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.16
日本を取り巻く環境は厳しい。東アジアでも軍事的な緊張が高まり、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で人類の存続を危うくしかねない遺伝子操作薬を世界規模で接種、経済状況は悪化しつつある。いずれも原因を作ったのはアメリカだ。 アメリカの安全保障分野を支配しているシオニストの一派であるネオコンは1992年から世界制覇プロジェクトを始めた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。 1990年代からネオコンは旧ソ連圏を分割、ユーゴスラビアを先制攻撃で破壊し、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された2001年9月11日以降、アメリカは世界制覇戦争を始めた。2011年からはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を手先として使い、中東を戦乱で破壊、ウクライナはネオ・ナチを使って植民地化、さらにガザで住民虐殺を続けるイスラエルを支援してエネルギー資源の供給を危うくしている。そして東アジアでは中国を挑発する一方、日本などで戦争の準備を進めている。 日本やEUはアメリカが短期間で勝利すると信じていたのかもしれないが、ウクライナではロシアに圧倒され、テロでインフラやロシア市民を虐殺しようとし、パレスチナではイスラエルによるアラブ人の大量殺戮を支援している。東アジアでは日本列島から台湾にかけてミサイル発射基地を建設、中国やロシアを攻撃する準備を進めている。 このまま進めば世界は破滅する可能性が高いのだが、日本ではそうしたことを懸念する声をあまり聞かない。日本は明治維新以降、イギリスやアメリカの巨大金融機関の影響下にある。これは第2次世界大戦の前も後も同じだ。その支配システムは米英金融資本の下に築かれた天皇制官僚構造にほかならない。 その構造は日本の人間、社会、自然を破滅へと導いているのだが、その構造を変える動きは見られない。せいぜい、その枠組のなかにおける「政策の民主化、または自由主義的な妥協」を目指すだけだが、そうした動きも頼りない。ヨーロッパ諸国はナチズムが復活、日本より状況は悪い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.16
THAAD(終末高高度防衛)ミサイル砲兵連隊とそれに関連するアメリカ軍人約100名をイスラエルへ配備することをアメリカの国防総省が承認したと発表された。THAADは成層圏よりも上の高度で目標を迎撃するために開発されシステムだ。ジョー・バイデン大統領は昨年にもアメリカ軍にTHAADバッテリーを中東へ配備するよう指示している。 イスラエル軍が9月27日に南レバノンを約85発のバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)で攻撃した後、10月1日にイラン軍は180機以上の弾道ミサイルを発射、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部などを攻撃した。 イスラエル政府は厳しい報道管制を強いているが、目標の周辺にミサイルが着弾していることが確認されている。イスラエルの防空システム、アイアン・ドームは「撃墜率が高い」と宣伝されてきたが、それは御伽話にすぎないことが明確になった。THAAD配備の理由はそこにあるのだろうが、THAADの性能もロシア製の防空システムに比べてかなり低いと見られている。 シオニストの一派であるネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒し、シリアとイランを分断して弱体化させると主張していた。 欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、1991年に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にし、2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された10日ほど後、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。その後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。(ココやココ) そのイランをアメリカ政府のネオコンやイスラエル政府は破壊しようと目論んでいる。イランの現大統領は親欧米派のマスード・ペゼシュキアンだが、イスラエルやアメリカがイランを攻撃すれば、イラン政府は報復攻撃せざるをえない。イスラエル/アメリカはイランを混乱させた上でカラー革命を計画している可能性もあるが、イスラエル軍によるパレスチナ人虐殺もあり、難しいだろう。 ネオコンは1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成したが、その中で、中東や南西アジアにおける彼らの目標はこの地域を支配し続けること、欧米諸国によるこの地域の石油へのアクセスを維持することだとし、さらに中東や南西アジア、ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏で脅威が出現しないようにするともしている。潜在的なライバルを抑え込むということだ。 本ブログでもすでに書いたことだが、ネオコンの思想的な基盤であるシオニズムは、16世紀後半、エリザベス1世が統治するイギリスで出現したブリティッシュ・イスラエル主義から派生している。自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物がエリート層の中に現れたのだ。例えばスチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)のほか、オリヴァー・クロムウェルの周辺にもそう信じる人がいたという。彼らの信仰によると、自分たちが救済されるためには、パレスチナにユダヤ人を集めなければならない。そこで彼らはユダヤ教徒のエリートとも手を組むことになる。 イスラエルは1948年5月に建国されるが、大多数のユダヤ教徒はナチスの弾圧後でもパレスチナへ向かわず、オーストラリアやアメリカへ逃げた。そこでイラクなどに住むユダヤ教徒に対するテロを実行、安全な場所はイスラエルだけだと信じさせようとしている。 そうした経緯もあり、パレスチナへ集まったユダヤ教徒は宗教色が濃くなり、現在ではカルトとしか言えない集団の影響力が強まっている。イスラエルのベザレル・スモトリッヒ財務大臣はフランス語チャンネル「アルテ」が制作・放映したドキュメンタリー「イスラエル:権力の極右派」の中で、パレスチナ全土だけでなくシリアまで及ぶユダヤ人国家の設立を目指していることを認めた。ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク、エジプトの領土も含む場所は神がユダヤ人に与えたのだと主張する「大イスラエル」構想だが、これは1948年の「建国」時点から消えていない。 ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域は神がユダヤ人に与えたのだとする主張の根拠とされているのはキリスト教徒が言うところの旧約聖書。ユダヤ教では旧約聖書の初めにある部分を「モーセ5書(トーラー)」と呼ぶ。土地を所有しているのは神であり、ユダヤ教徒はトーラーを守るという条件の下でその土地に住むことを許されたのだが、シオニストは神によってユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域はユダヤ人のものになったと主張している。 昨年10月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人と敵だと記述されている「アマレク人」とパレスチナ人を重ねて見せた。彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたとしている。 また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣言通りのことをイスラエルは行い、アメリカをはじめとする西側諸国はその大量殺戮を支援しているのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.15
ヒズボラは10月13日にもイスラエルの軍事施設を攻撃した。ヒズボラの力が衰えたようには見えない。 イスラエル軍は9月27日に南レバノンを約85発のバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)で攻撃、ハッサン・ナスララを含むヒズボラの幹部を殺害した。その報復としてイラン軍は10月1日に180機以上の弾道ミサイルを発射、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部などを攻撃している。 ミサイルが衛星で誘導されていなければ精度は落ちるが、モサドの本部から約300メートルの地点にミサイルが着弾していることは確認されている。軍事基地にも被害が出ているようだ。イスラエルが宣伝してきた防空システム、アイアン・ドームは機能していない。 イランの攻撃はイスラエルによる挑発攻撃への報復。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。 10月1日の攻撃に対し、アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「イランの攻撃には重大な結果が伴う」と語っているが、イランに対する報復は行われていない。攻撃の相手はレバノンばかりだ。しかも、イスラエル軍は地上部隊をレバノンへ軍事侵攻させたが、ヒズボラの待ち伏せ攻撃に苦しんでいる。 アメリカ主導軍は1991年1月にイラクへ軍事侵攻したが、サダム・フセイン体制を倒す前に停戦。欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、その直後に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツは怒り、イラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。(ココやココ) ウォルフォウィッツが属すネオコンは1980年代からイラクのフセイン体制を倒して親イスラエル体制を樹立させ、イランとシリアを分断してシリアを体制を転覆させ、イランを弱体化させるというプランを持っていた。裏では、イラクをイスラエルの植民地的にして石油を確保するつもりだったとも言われている。現在でもアメリカ軍はシリアの油田地帯を不法占領しているが、その目的も同じだ。 2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、その出来事を利用してジョージ・W・ブッシュ政権は1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて世界制覇戦争を本格化させる。 この攻撃から10日ほどのち、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。そこのスタッフは攻撃する理由がわからないと口にしていたという。その6週間ほど後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。 そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。5年間に7カ国を破壊することになっていた。リストのトップに書かれているイラクが攻撃されたのは2003年3月、そして今、イランに矛先を向けている。 しかし、アメリカはイランに勝つことはできない。圧倒的に戦力が不足しているからだ。イラクでの経験から考えて、イランを占領するためにアメリカ軍は約240万人を投入する必要があると推計されている。予備役を投入してもアメリカ軍にそれだけの戦力はない。 イギリスの首相がリシ・スナックからキア・スターマーへ交代してからキプロスにあるイギリス空軍の基地からイスラエルへアメリカ特殊部隊を運ぶ頻度が倍になったと言われているが、それでイランに勝てるわけではない。 しかし、アメリカはイギリスの戦略を引き継ぎ、中東全域を掌握しようと考えている。その手先として機能しているのがイスラエルだが、今後、どうなるかは不明だ。アフガニスタンの管理を任せるために組織したタリバーンは自立し、アメリカの命令に従わなくなった。イスラエルではカルトが影響力を強め、コントロールが難しくなりそうだ。ウクライナではネオ・ナチを使っているが、ウクライナの敗北が避けられない状況の中、ネオ・ナチのコントロールが難しくなっている。 しかも、イランの場合はロシアや中国と同盟関係に入っている。イランがイスラエル/アメリカに攻撃された場合、ロシアや中国が傍観する可能性は小さい。すでにイランへはロシアの防空システムが持ち込まれている可能性が高く、イスラエル/アメリカの軍事侵攻を待ち構えているのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.14
イスラエル当局はアメリカ人ジャーナリストのジェレミー・ロフレドを逮捕した。10月1日にイラン軍は180機以上の弾道ミサイルを発射、イスラエルの軍事基地や情報機関の本部を攻撃した。イスラエル政府は否定しているが、周辺でミサイル攻撃の様子が撮影されたほか、何人かのジャーナリストが着弾地点を実際に調べている。そうした取材、報道していたひとりがロフレドだ。保釈にはなったが、出国は禁止されている。 攻撃された場所はF-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部など。ロフレドは、ネゲブのネバティム空軍基地からテルアビブのモサド本部まで、イランのミサイル攻撃を受けた軍事基地や情報機関モサドの本部を訪れて被害を確認している。 このイランによる攻撃はイスラエルに対する報復だった。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。 こうした攻撃に対するイラン政府の報復は不可避だと考えられたが、動きは鈍かった。焦らしているとする推測もあったが、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領によると、イスラエルを攻撃しなければイランに対する実質的な制裁の解除と、ハマスの条件に沿ったガザでの停戦保証を欧米の当局者は提案、その提案をペゼシュキアは信じというのだが、それが事実ならあまりにもお粗末。愚かすぎた。 そして9月27日、イスラエル軍は南レバノンにバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)約85発を投下して破壊。レバノン社会医学協会のライフ・レダ会長はイスラエルがバンカー・バスター爆弾BLU-109の弾頭に劣化ウラン弾を使っている疑いがあると語った。サイード・ナスララをはじめとするヒズボラの幹部が殺されたほか、少なからぬ市民が犠牲になっている。そのイスラエルによる攻撃でペゼシュキアンは目が覚めたのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.13
核兵器廃絶の訴えに反対する人は少ないだろうが、現在、核戦争勃発の可能性はかつてなく高まっている。1962年10月のキューバ危機よりも危険な状態だという人もいる。それにもかかわらず、大多数の人は気にしていないようだ。「核兵器廃絶」は中身のない掛け声にすぎないと言われても仕方がないだろう。 2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブ退役大将は2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている。核兵器と第3次世界大戦を気にせず、ロシアを攻撃しろということだろう。2022年4月9日、イギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。 アメリカには核兵器を脅しの道具に使った歴史がある。例えば、ドワイト・アイゼンハワーは1953年に大統領となった直後、泥沼化した朝鮮戦争から抜け出そうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) その後、アメリカは矛先をインドシナへ向けるのだが、そうした中、1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まる。1971年にベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書を有力メディアへ流したダニエル・エルズバーグによると、1958年の危機当時、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。 アイゼンハワー政権で副大統領を務めたリチャード・ニクソンは大統領になっていた1972年4月、北ベトナムを核攻撃してはどうかと国家安全保障補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーに語ったというのだが、キッシンジャーの側近だったロジャー・モリスによると、ニクソンは北ベトナムに対する核攻撃の計画を1969年10月から11月の期間に指示したとしている。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワーが朝鮮戦争を終わらせる手法を見ていたニクソンは「凶人理論」の信者になり、核攻撃しかねないと思わせればアメリカ主導の和平に同意すると考えていたようだ。パキスタンの政治学者、エクバル・アーマドによると、北ベトナムの代表団と和平交渉している間にキッシンジャーは12回にわたって核攻撃すると脅したという。(前掲書) また、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように思わせなければならないと語ったが、その意味するところは同じである。ジョー・バイデンを担いでいるシオニストの一派、ネオコンも脅せば屈すると信じている。 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅して以降、核兵器の使用にも前向きになった。彼らはアメリカが唯一の超大国になったと信じ、他国に配慮することなく好き勝手に振る舞えると考えたのである。 ロシアや中国は相当数の核兵器を保有しているが、それでも問題ないとアメリカの支配層は考えるようになったようだ。例えば、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日が近い、つまり核戦争で中露に勝てる日が近づいているとしているのだ。 彼らの論理によると、ソ連の消滅でアメリカは核兵器の分野で優位に立ち、近いうちにロシアや中国の長距離核兵器を先制攻撃で破壊できるようになるだろうというのだ。リーバーとプレスはロシアの衰退や中国の後進性を信じ、アメリカが技術面で優位にあるという前提で議論している。ブリードラブも同じように考えている。 バラク・オバマはアメリカ大統領に就任した後に「核兵器のない世界の平和と安全を求めるアメリカの決意」を表明、2009年4月にオバマ大統領はロシアの元大統領ドミトリ・メドベージェフ氏とともに「核のない世界を実現する」と誓約し、その直後にプラハで「核兵器のない世界の安全」を求めると演説しているが、口先だけで終わった。オバマはかつてないほど核兵器を増強することになる。 そもそも核兵器はソ連を破壊するため、イギリス主導で開始された。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づくプロジェクトが始まり、MAUD委員会が設立されている。アメリカでは1941年6月にフランクリン・ルーズベルト大統領がEO(行政命令)8807という大統領令を出し、OSRD(価格研究開発局)が設置された。 MAUD委員会のマーク・オリファントは1941年8月にアメリカへ派遣されてアーネスト・ローレンスと会い、アメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになったと言われている。この年の10月にルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃する2カ月前のことである。 マンハッタン計画を統括していた陸軍のレスニー・グルーブス少将は1944年、ポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(前掲書) そして1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州トリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験を行い、成功。それを受けてハリー・トルーマン大統領は原子爆弾の投下を7月24日に許可。そして26日にアメリカ、イギリス、中国はポツダム宣言を発表、8月6日に広島へウラン型を投下、その3日後には長崎へプルトニウム型を落としている。 日本は8月15日に「玉音放送」と呼ばれる天皇の声明が放送されたが、その半月後にグルーブス中将に対し、ローリス・ノースタッド少将はソ連の中枢15都市と主要25都市への核攻撃に関する文書を提出。9月15日付けの文書ではソ連の主要66地域を核攻撃で消滅させるには204発の原爆が必要だと推計している。そのうえで、ソ連を破壊するためにアメリカが保有すべき原爆数は446発、最低でも123発だという数字を出した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.12
対ロシア戦争の一環としてウクライナを乗っ取る工作を指揮してきたネオコンのひとり、ビクトリア・ヌーランドがNED(全国民主主義基金)の理事会メンバーに就任すると発表された。彼女は国務次官に任命する前の2018年から21年にかけてもNEDの理事を務めている。 NEDはCIAが工作資金を流す仕組みのひとつで、1983年11月に創設されている。第2次世界大戦後、世界では大戦後の混乱を利用して植民地が次々と独立、欧米の巨大企業が利権を失い始めた。その利権を守るためにCIAはファシストや犯罪組織などと手を組み、利権を維持拡大するために配下の軍人を使ったクーデターを実行していく。 しかし、1970年代になると、そうしたクーデターに対する批判がアメリカ議会でも強まり、やり方を変える必要性が生じた。そこでロナルド・レーガン政権のCIA長官、ウィリアム・ケーシーは1983年に民主化や人権を看板に掲げて民間を装った組織の創設を考える。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) CIAは1970年代後半から情報をコントロールするためにメディアや映画界の支配を強化。その一環としてメディアの資本規制が緩和されて所有者の寡占が進んだ。 また、ロナルド・レーガン大統領は1983年1月、NSDD11に署名して「プロジェクト・デモクラシー」や「プロジェクト・トゥルース」が始まった。そして設立されたのがNEDにほかならない。こうしたタグは効果的だった。 NEDへはアメリカ国務省のUSAIDを含む政府の資金が流れ込んでいるが、その実態はCIAの工作資金。NEDからNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターなどを経由して工作対象へ流れていく。NEDをはじめ、こうした団体の名前が出てきたらCIAの影響下にあると考えて間違いない。 ヌランドと同じネオコンのエリオット・エイブラムズが理事長を務めるイスラエルのティクバ基金はベンヤミン・ネタニヤフ政権を樹立させるために資金を提供していると言われている。現在、イスラエルはガザやレバノンで住民を大量虐殺しているが、その黒幕はネオコン。アメリカのジョー・バイデン政権もネオコンに支えられているわけで、イスラエルによる虐殺はアメリカ政府も共犯関係。現在、国務副長官を務めているカート・キャンベルもネオコンで、東アジアにおける工作を仕切っている。 ウクライナ、パレスチナ、東アジアはネオコンが仕掛けているひとつの作戦だと言えるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.11
レバノン社会医学協会のライフ・レダ会長はイスラエルがバンカー・バスター爆弾BLU-109の弾頭に劣化ウラン弾を使っている疑いがあると語ったという。アメリカ政府は100発のバンカー・バスター爆弾BLU-109をイスラエルへ供与したと昨年12月にウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。 断面積を変えずにバンカー・バスター爆弾を重くして貫通力を高めるため、劣化ウランを使うことはある。戦車から発射される砲弾に使われるのも同じ目的のためだが、劣化ウランの弾頭は貫通力が強いだけでなく、破壊のあと有毒ガスを放出する。劣化ウランを使ったバンカー・バスター爆弾をガザで使えば、その地域は放射性物質で汚染されることになる。 劣化ウラン弾は2003年3月にアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃した際に使用し、問題になった。ファルージャでアメリカ主導軍はイラク人を大量殺戮、劣化ウラン弾も使われたのだ。 その後、ファルージャやバスラでは新生児に奇形や脳の障害などが多発しているという報告がある。環境汚染毒物学紀要という専門誌に掲載された論文によると、ファルージャで2007年から10年にかけて生まれた新生児の場合、半数以上に先天性欠損があったという。1990年代以前には2%以下、2004年に占領軍から攻撃される前は約10%だとされている。 バスラの産院における先天性欠損の割合は、1994年から95年にかけて1000人のうち1.37人だったが、2003年には23人、そして2009年には48人に増えている。また、ファルージャやバスラの子どもたちの頭髪から鉛が通常の5倍、水銀が通常の6倍と異常に高いともいう。そうした原因は劣化ウラン弾だと一般的には言われている。劣化ウラン弾が環境を汚染し、放射能障害を引き起こすことは間違いない。 MERIP(中東研究情報プロジェクト)によると、2004年4月と11月にアメリカ軍が爆撃したファルージャの子供たちに先天異常が急増した原因の1つが劣化ウランである可能性があるとしている。。 2006年にイスラエルはレバノン南部を攻撃しているが、その時にイスラエル軍はアメリカが供給したバンカー・バスター爆弾を使用したのだが、それ以外の強力な兵器が使われた疑いもある。 ヒズボラとイスラエル軍が激しい戦闘を繰り広げたキアムとアトティリで着弾地点で濃縮ウランをクリス・バスビー博士が発見した。新タイプの核分裂装置/兵器、あるいは濃縮ウランを使用したバンカー・バスター爆弾をイスラエルは使ったのではないかと言われた。 バスビーはイギリスの科学者で、イギリス政府後援のCERRIE(体内放射体からの放射線リスク検討委員会)やイギリス国防省のDUOB(劣化ウラン監視委員会)のメンバーだったこともある。 1962年に北太平洋のジョンストン島で実施された核実験、ドミニク作戦の一環として実施された大気圏内核実験、フーサトニックと謎の核兵器を結びつける人もいる。フーサトニックでLRL(ローレンス放射線研究所)はリップル・コンセプトと呼ばれる新しい設計をテスト、その実験は99.9%クリーンだったとされている。それ以前およびそれ以降に設計されたすべての核兵器を凌駕する性能特性が実証されという。 イスラエルが2006年にレバノンへ軍事侵攻してヒズボラに敗れて退却しているが、その直後にバスビー教授はレバノンへ入って調査、残されたクレーターの中でも濃縮ウラニウムを見つけたという。同教授はファルージャでも同じものを発見している。 過去にイスラエルがこうした兵器を使用したとするならば、今回も使う可能性は高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.10
イスラエル軍は9月30日、南レバノンへ地上部隊を侵攻させたとする声明を発表したが、レバノン領内にはヒズボラの強力な防衛線が築かれていて、イスラエル軍を待ち構えていた。死傷者をレバノンからイスラエルへ運ぶヘリコプターの光景が撮影されている。イスラエルにとって予想外の展開になっているのかもしれない。 地上軍を侵攻させる前、9月27日からイスラエル軍は南レバノンにバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)約85発を投下して破壊、それによってヒズボラは壊滅的なダメージを受けたと判断したのかもしれないが、その判断は間違っていたようだ。 ヒズボラはイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)やイラクやシリアの反シオニスト勢力と同じように、イスラエル軍によるガザでの住民虐殺を止めるためにイスラエルを攻撃している。 ガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、瓦礫の下に埋まっている遺体は相当数に及ぶと見られている。ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘、当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。しかもガザやレバノンでの惨状はテレグラムやXなどで世界に発信され、イスラエルや欧米に対する怒りが広がっている。 ジョン・ケリー元国務長官は先月、WEF(世界経済フォーラム)のパネルで、アメリカ憲法の修正第1条、つまり信教、言論、出版の自由を定めた条項が「偽情報」の拡散を政府が阻止するのを妨げる「大きな障害」だと主張した。1970年代の後半から情報操作や言論統制が強化されてきたが、それでも「民主主義」は装っていた。ここにきてそうした装いを脱ぎ捨てたようだ。実際、政府の政策にとって都合の悪い事実を伝えるジャーナリストに対する弾圧が強化されている。 ソ連最後の大統領、ミハイル・ゴルバチョフはニコライ・ブハーリンを研究、西側の体制を民主主義だと錯覚していた。その錯覚がソ連を消滅させることになったのだが、ソ連が解体された後もロシアの少なからぬインテリは欧米に幻想を抱いていたようだ。資本主義になればインテリは富豪になれると思っていたのかもしれない。似たようなことは中国やイランでも起こっている。 南レバノンに対するイスラエル軍のバンカー・バスター爆弾による攻撃でサイード・ナスララをはじめとするヒズボラの幹部が殺された。7月31日にテヘランでハマス幹部イスマイル・ハニエが暗殺されたケースでも言えるが、イスラエルに機密情報が流れている。欧米やイスラエルに接近し、ビジネスにつなげたいと考えている要人がイランにもいるはずで、そこから情報が漏れているかもしれない。 ハニエが暗殺された後、イランは報復すると宣言していたが、なかなか動かなかった。イランのマスード・ペゼシュキアン大統領によると、イスラエルを攻撃しなければイランに対する実質的な制裁の解除と、ハマスの条件に沿ったガザでの停戦保証を欧米の当局者は提案したのだという。この話を信じたとするならば、ペゼシュキアンやその取り巻きはゴルバチョフと同じように西側幻想に浸かっていたことになる。 ナスララ暗殺の後、10月1日にイラン政府は180機以上の弾道ミサイルを発射した。F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部などがターゲットだ。 イスラエルは防空システム「アイアン・ドーム」で防御に成功したと宣伝しているが、インターネットで伝えられている映像(例えばココ)を見ると、イランが主張するように大半はイスラエルの防空システムを突破している。 ロシアにしろ、中国にしろ、イランにしろ、そうした幻想から抜け出す必要がある。抜け出せればアメリカを中心とする体制は崩壊する。抜け出さなければ、ロシア、中国、イランなどには破滅が待つ。 昨年10月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人と敵だと記述されている「アマレク人」とパレスチナ人を重ねて見せた。 彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。 また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。 パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣告通りのことをイスラエルは行っている。彼らにとって「アマレク人」はパレスチナ人だけを指しているわけではない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.09
ジェフリー・エプスタインなる人物が2019年7月にアメリカで逮捕された。性犯罪の容疑だが、彼が行なっていたことは未成年の女性と有力者を引き合わせ、ふたりの行為を盗撮し、それを利用して後に恫喝の材料に使うということ。 イツァク・シャミールがイスラエルの首相時代、特別情報顧問にすえていたアリ・ベンメナシェによると、エプスタインはパートナーだったギスレイン・マクスウェル、彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同様、イスラエル軍の情報機関(アマン)のために仕事をしていた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) 2005年3月、フロリダの警察を訪れた女性が14歳になる義理の娘のエプスタインによる猥褻な行為について訴えている。13カ月にわたって捜査、家宅捜索も行われたのだが、その時に事件を担当した地方検事がトランプ政権で労働長官を務めたアレキサンダー・アコスタにほかならない。 アコスタによると、その時にエプスタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたとしている。結局、エプシュタインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けるのだが、刑務所へは入れられていない。 エプシュタインの自宅から少なからぬ有名人(顧客)の連絡先が書かれた「黒い手帳」が2009年に持ち出された。持ち出した人物は手帳を5万ドルで売ろうとしてエプスタインが行っていた「ビジネス」に関する情報の一部が漏れた。 かつてFBIに君臨していたJ・エドガー・フーバーも有力者の弱みを握り、政財界に大きな影響力を行使していたと言われている。同じことをイスラエル軍の情報機関も行なっていたわけだが、エプスタインたちだけが行なっているわけでもないはずだ。犯罪組織も同じことをしているだろう。 こうした恫喝の仕組みを行使する前に、買収工作が行われる。アメとムチで有力者を操るわけだ。イスラエル政府がこうした仕組みを利用してアメリカを操る可能性は高いが、アメリカ側も同じことをしている。イスラエルとアメリカが対立しているなら「刺し合い」になる。 現在、イスラエルで首相を務めているベンヤミン・ネタニヤフは犯罪捜査の対象になっている。国民に支持されているわけでもない。首相の座を降りたなら、逮捕起訴されると考えている人も少なくないのだ。 その不安定なネタニヤフ政権の背後にはネオコンのエリオット・エイブラムスとも言われている。この人物をジョー・バイデン大統領は昨年7月3日、ACPD(公共外交諮問委員会)の委員に指名する意向を表明した。 日本の外務省によると、公共外交とは「広報や文化交流を通じて,民間とも連携しながら,外国の国民や世論に直接働きかける外交活動」。つまり内政干渉の一形態。ネオコンはイスラエルの内政に干渉してネタニヤフを首相とするカルト政権を作り上げた。その象徴的な存在が国家安全保障大臣を務めているイタマル・ベン-グビルだろう。 ジョー・バイデン大統領はハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、「シオニストであるためにユダヤ人である必要はない」と断言、自らがシオニストだと訴えた。それだけでなく、上院議員だった1986年6月、ハイデンはイスラエルがアメリカの利権を守る上で重要な存在だと議会で主張している。 ハマスの創設にイスラエルが深く関与していることは本ブログでも指摘してきたが、ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、2009年にネタニヤフが首相へ返り咲いた時、PLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとした。そのため、ネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。 昨年10月7日にハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃したが、この攻撃に疑惑の目が向けられているのはそうした背景があるからだ。イスラエルはハマスやヒズボラの内部に情報網を張り巡らせていると言われ、電子的な監視システムも整備されている。事前に攻撃を察知できなかったとする話は胡散臭い。また欧米やイスラエルにはパレスチナからレバノン、さらにシリアにかけての地域を支配したい理由がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.08
イスラエルはガザで住民を虐殺、アメリカやイギリスをはじめとする欧米諸国はそうした行為を本気で止めようとしていない。それだけでなく、そうした残虐行為をやめさせようとする国や組織、そして抵抗するパレスチナ人をテロリスト扱いしてきた。 言うまでもなく、「パレスチナ問題」は先住のアラブ系住民が住む豊かな土地にイスラエルなる人工的な「国」を作り上げたことから始まった。 シオニストはパレスチナから先住民を消し去るため、1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動させ、虐殺を始める。虐殺を恐れて逃げ出さなければ殺すという計画だ。そして1948年5月にイスラエルの建国が宣言されたのだが、このシオニストをユダヤ人/教徒と混同してはならない。 シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がった。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れたのだ。ブリティッシュ・イスラエル主義である。スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)のほか、オリヴァー・クロムウェルの周辺にもそう信じる人がいたという。 クロムウェルを支援者していた富裕層の中にポルトガル出身のフェルナンデス・カルバジャルというコンベルソ(ユダヤ教からキリスト教へ改宗した人びと)が含まれていた。そうした関係もあり、クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。イングランドでは13世紀からユダヤ教徒が追放されていた。 クロムウェルがユダヤ人の帰還を認めた理由のひとつは新約聖書のマタイによる福音書23章の37節から39節の記述だという。そこには「エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、自分に遣わされた人々を石で打ち殺す者よ、めん鳥が雛を羽の下に集めるように、わたしはお前の子らを何度集めようとしたことか。だが、お前たちは応じようとしなかった。見よ、お前たちの家は見捨てられて荒れ果てる。言っておくが、お前たちは、『主の名によって来られる方に、祝福があるように』と言うときまで、今から後、決してわたしを見ることがない。」と書かれている。 この時代、スペインやポルトガルは世界各地を襲撃、略奪している。その重要な侵略先のひとつはアメリカ大陸で、例えば1521年にエルナン・コルテスは武力でアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を滅ぼして莫大な金銀を奪い、インカ帝国(現在のペルー周辺)ではフランシスコ・ピサロが金、銀、エメラルドなどを略奪しながら侵略を続けて1533年に帝国を滅ぼしている。 彼らは莫大な量の貴金属を盗んだだけでなく、先住民を奴隷として酷使、鉱山開発も行った。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山である。スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。全採掘量の約3分の1は「私的」にラプラタ川を経由してブエノスアイレスへ運ばれ、そこからポルトガルへ向かう船へ積み込まれていた。(Alfred W. McCoy, “To Govern The Globe,” Haymarket Books, 2021) このようにしてスペインは略奪した貴金属を船で運んだが、そうした船を海賊に襲わせ、財宝を奪い、人間をさらっていたのがイギリスにほかならない。エリザベス1世の時代だ。イギリス王室に雇われた海賊の中にはジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーが含まれている。 ホーキンスは西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売り、金、真珠、エメラルドなどを手に入れている。こうした海賊行為をエリザベス1世は評価、ナイトの爵位をホーキンスに与えている。 ドレイクは中央アメリカからスペインへ向かう交易船を襲撃、ホーキンスと同じように英雄として扱われた。女王はそのドレイクをアイルランドへ派遣して占領を助けさせるが、その際、ラスラン島で住民を虐殺したことが知られている。ドレイクもナイトになっている。 ホーキンスとドレイクの後継海賊がローリー。占領者のイングランドに対して住民が立ち上がったデスモンドの反乱を鎮圧するため、アイルランドにも派遣された。ローリーもナイトの爵位が与えられた。(Nu’man Abo Al-Wahid, “Debunking the Myth of America’s Poodle,” Zero Books, 2020) パレスチナを含む中東地域は古代文明を生み出した場所であり、富だけでなく知識があった。「十字軍」と称する強盗集団もその富と知識を盗みに行ったわけで、改めて押し込もうとしたのがシオニズムだとも言える。 19世紀から帝国主義体制に突入したイギリスでは、外相だったアーサー・バルフォアが1917年にウォルター・ロスチャイルドへ出した書簡からイスラエル建国が具体化していく。建国の大きな目的のひとつはスエズ運河の安定的な支配だっただろう。 運河によって地中海と紅海を感染が行き来できることはイギリスの戦略上、重要。そのためにイギリスは先住のアラブ系住民を弾圧する一方、ユダヤ人の入植を進めた。1933年からドイツではナチスが実権を握り、この年の8月にシオニストはナチス政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意した。「ハーバラ合意」だ。 ユダヤ人弾圧によってユダヤ教徒をパレスチナへ向かわせることができるとシオニストは考えたようだが、ヨーロッパのユダヤ人はパレスチナへ移住したがらない。文化も風習も違うわけで、当然だ。 1938年11月にドイツではナチスがユダヤ系住民を襲撃、多くの人が殺され、収容所へ入られ始めるが、この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアへ逃れた。そこで、シオニストはイラクなどに住むユダヤ教徒に目をつけ、テロで脅してパレスチナへ移住させる。 宗派や宗教の対立が激しくなるのは欧米の帝国主義者が乗り込み、中東を植民地化してからだ。パレスチナ問題もこうした帝国主義者によって生み出された。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.07
イランは10月1日に数百機の弾道ミサイルをイスラエルの軍事基地などに向けて発射、イスラエル政府は数日以内に大規模な報復を開始すると主張していたが、レバノンの住民を虐殺しているものの、イランに対する報復は今のところない。 10月1日の攻撃では、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部などがターゲットだという。イスラエルは防空システム「アイアン・ドーム」で防御に成功したと宣伝しているが、インターネットで伝えられている映像(例えばココ)を見ると、イランが主張するように大半は命中したようだ。 イスラエルがイランに対して報復攻撃を実行した場合、イランはイスラエルの基地だけでなく重要なインフラを破壊する可能性が高く、それだけでなく中東全域のアメリカ軍基地やアメリカの影響下にある国の石油施設を攻撃するとも言われている。イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)やイラクやシリアの反シオニスト勢力もアメリカ軍基地を攻撃すると推測されている。 イスラエルによるパレスチナ人虐殺はアメリカ政府の承認なしには実行できないはずで、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はジョー・バイデン政権のジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官やトニー・ブリンケン国務長官らと連携しているはずだ。 アメリカ側のグループはウクライナでロシアに戦争を仕掛け、苦境に陥っているが、中東でも厳しい状況になっている。このままイランを攻撃すれば世界は中東の石油を絶たれることになりかねず、抵抗は強くなるだろう。その抵抗を抑えこねなければ、イスラエル政府のカルト集団は攻撃できない。 形勢を逆転させるため、アメリカの好戦派はウラジミル・プーチン露大統領の暗殺を何度か目論んだようだが、失敗している。最近の例としては、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、要人が揃ったところで暗殺しようと計画したとセルゲイ・リャブコフ外務次官は語っている。 アメリカ/NATOが残り少なくなったウクライナ軍に外人部隊を合流させてロシアのクルスクへ軍事侵攻したのはその9日後。この攻撃はロシア軍の反撃で壊滅的な状況になった。作戦が無謀だったからだが、これを計画したのは軍人でなく、マイケル・マクフォール元駐露アメリカ大使を含むネオコン一派だと言われている。 ウクライナで2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたが、その直前、12年1月には大使としてモスクワに赴任、その3日後にロシアの反プーチン派NGOの幹部を大使館へ招き入れ、2月に予定されていたロシアの大統領選挙に対する工作を指示したと見られている。 この対プーチン工作は失敗に終わったが、その工作で反プーチン派の人形として使おうとしたのがアレクセイ・ナワリヌイ。この人物はアメリカのエール大学で奨学生として学んでいるが、その手配をしたのはマクフォールにほかならない。 ムスリム同胞団を使い、中東から北アフリカにかけての地域でアメリカ支配層にとって目障りな体制を転覆させようと目論んでいたオバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認した。その計画を作成したチームのひとりがマクフォールだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.06
10月1日から総理大臣を務めている石破茂はアジア版NATOの創設やアメリカの核兵器の共同運用などを掲げた。日本はアメリカ、オーストラリア、インドとクワド(日米豪印戦略対話)を構成、9月21日にはこの4カ国はアメリカのデラウェアで首脳会談を開いたが、インドは石破のアジア版NATO構想には賛同しないと語っている。 NATO(北大西洋条約機構)の事務総長だったイェンス・ストルテンベルグは2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言しているので石破の発言が突飛だとは言えないのだが、ユーラシア大陸の東部でもアメリカを中心とする世界秩序から離れ始める国が増えていることを考えると石破発言は不適切だったと言える。 クワドに参加しているインドもアメリカと距離を置き始めていることもあり、アメリカは2021年9月、イギリスやオーストラリアとAUKUSなる軍事同盟を創設したと発表、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。 それに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフはAUKUSについて、中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘している。アメリカ政府はそうした主張を認めなくないだろう。アメリカの好戦派、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は昨年、ワシントンはインド太平洋地域にNATOを創設するつもりはないと述べている。 NATO(北大西洋条約機構)は1949年に誕生した。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国。その目的について初代事務総長のヘイスティング・ライオネル・イスメイはソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあると公言している。イスメイはウィンストン・チャーチルの側近で、ソ連を敵視していた。 一般的にNATOはソ連の軍事侵攻に備えるために組織されたとされているが、実際はヨーロッパをアメリカの支配下に置くことが目的。そのための地下組織も作られている。 ドイツは1941年6月にソ連へ攻め込む。バルバロッサ作戦だ。西側から攻められることをアドルフ・ヒトラーは考えていなかったようで、この作戦でドイツ軍は戦力の4分の3を投入する。10月頃にイスメイはヒトラーと同様、モスクワは3週間以内に陥落すると推測していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ところがドイツ軍は苦戦、1942年8月から43年2月にかけて行われたスターリングラードの戦いで主力が降伏してドイツの敗北は決定的になる。そこでアメリカとイギリスは1943年1月にカサブランカ会談を行ない、善後策を協議した。そして7月にシチリア島上陸作戦、そして1944年6月にはノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)を実行、ソ連に対抗した。ノルマンディー上陸作戦でドイツが敗北したという印象はハリウッドによって作られたにすぎない。 西部戦線でもドイツ軍と戦っていたグループも存在する。レジスタンスだが、ウォール街やシティにとって問題だったのは、レジスタンスの主力がコミュニストだということだ。そこでイギリスとアメリカの情報機関はジェドバラというゲリラ部隊を編成した。 戦後、この部隊が中心になってアメリカの破壊工作機関OPCやNATOの秘密部隊が作られた。その秘密部隊は全てのNATO加盟国に設置、米英情報機関の下、連携して活動している。各国政府の指揮下にはないということである。中でも有名な部隊はイタリアのグラディオ。1960年代から80年代にかけて爆弾テロを繰り返し、クーデターも計画した。フランス大統領の暗殺未遂やアメリカ大統領の暗殺にジェドバラの人脈は関係していたと疑われている。今ではロシアとの直接的な軍事衝突を主張している。石破はこうした仕組みを東アジアにも作ろうと考えているのだろうか?**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.05
イランが10月1日に発射した数百機の弾道ミサイルがターゲットにしていたのは、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部など。イランのミサイルはイスラエルが誇る防空システム「アイアン・ドーム」を突破、大半が命中したことは撮影された多くの映像で確認されている。「被害は軽微」というイスラエル政府の発表は逆効果だ。 そのイスラエル政府は数日以内に大規模な報復を開始すると主張している。イランの石油精製施設や核関連施設を攻撃するのではないかとも言われているが、そうなった場合、イランは中東の親米国にある石油施設を破壊する可能性がある。その前にイスラエルを破壊するかもしれない。またイラクやシリアの反シオニスト勢力は中東全域のアメリカ軍基地を攻撃すると見られている。 バラク・オバマ政権当時からジョー・バイデンやジェイク・サリバンはアメリカを戦争へと導いてきた。退任したビクトリア・ヌランドも背後では蠢いているだろう。現政権ではトニー・ブリンケン国務長官も好戦派のひとりだ。バイデンに判断能力があるとは思えないので、ホワイトハウスでロシアやイランとの戦争を率いているのは国家安全保障担当大統領補佐官のサリバンだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、パレスチナに「ユダヤ人の国」を作り上げたのはイギリスを支配していたアングロ・サクソンとユダヤの富豪たちだ。 シオニズムを出現したのはエリザベス1世が統治していた16世紀後半のこと。この時期にイギリスではアングロ-サクソン-ケルトが「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信仰が現れたのである。ブリティッシュ・イスラエル主義とも呼ばれている。 ちなみに、旧約聖書の記述によると、イスラエル民族の始祖はヤコブだとされている。彼には12人の息子があり、それぞれ支族を形成、そのうちユダ族とベニヤミン族の後裔とされる人びとが「ユダヤ人」と呼ばれている。残りは行方不明で、旧約聖書を信じる人びとから「失われた十支族」と呼ばれている。 ところで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は修正主義シオニズムの直系。父親のベンシオンはゼエヴ・ウラジミル・ジャボチンスキーの秘書だった。ネタニヤフ政権には狂信的なユダヤ至上主義者も少なくない。 ネタニヤフ自身、昨年10月にガザで戦闘が始まった直後、パレスチナ人虐殺を正当化するために「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)と語っている。 旧約聖書には、「アマレク人」を家畜ともども殺し、その後に「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたと記述されている。 アマレク人は歴史の上で存在が確認されていないが、この民族をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せた。パレスチナ人が生活していた歴史を破壊で消し去るということだろう。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザやレバノンでイスラエルで行われていることであり、イランやロシアも殲滅する対象だと考える勢力がアングロ・サクソンとユダヤのエリートには存在している。こうした勢力はロシアも「ゴグ」とみなしているのだ。 ウクライナでは西側に支援されたネオ・ナチ体制がロシアに敗北しつつあるが、欧米はロシアの勝利を容認できない。そこでウクライナ人に「総玉砕」を命じている。 ウクライナにおけるロシアの勝利を容認できないアメリカ政府はイスラエル政府にガザでの虐殺やレバノンへの軍事侵攻、さらにイランに対する挑発を容認した。これはロシアを中東へ引き出すことが目的ではないかと推測する人もいるが、そこで戦乱が広がれば世界経済の崩壊は避けられない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.04
アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「イランの攻撃には重大な結果が伴う」と語った。彼はイランの報復攻撃について「重大なエスカレーションであり、重大な出来事だ」と主張、「失敗し、効果がなかった」としているが、現地からと見られる映像はそうした主張を否定している。 そのイランの攻撃とは、イスラエル南部と中部の軍事基地に向かって数百発の弾道ミサイルを発射したもの。イスラエルは厳重な報道管制を強いているが、それでも着弾の映像が世界に向かって発信されている。 その映像を見ると、イスラエルが誇っていた防空システム、アイアン・ドームは機能していない。イランは第1波攻撃で80から90%が標的に命中したとしているが、映像はその主張の信憑性を高めている。その直前にはヒズボラがテルアビブ郊外にあるイスラエル軍情報部アマンが拠点を置くグリロット軍事基地、そして情報機関モサドの本部をファディ4で攻撃している。 イランやヒズボラの攻撃はイスラエルからの攻撃に対する報復。イスラエル軍はガザで住民を虐殺、イランの大統領就任式に出席したハマスの幹部イスマイル・ハニヤを暗殺、バンカー・バスター(地中貫通)爆弾を使ってハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を暗殺しているが、いずれもアメリカ政府の承認なしには不可能だ。 そのアメリカ政府で戦争へと国を導いてきたのはジョー・バイデン大統領、サリバン補佐官、トニー・ブリンケン国務長官を中心とするネオコン集団だ。今年3月まで国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドも好戦派のひとりだった。 ネオコンが台頭してきたのは1970年代、ジェラルド・フォード政権の時だ。フォードはリチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚した後、副大統領から昇格したのだが、ニクソンが再選された選挙でネオコンの後ろ盾が動いている。 ニクソンが再選されたのは1972年の大統領選挙。この時、民主党の候補者はジョージ・マクガバン上院議員が選ばれた。ジョン・F・ケネディに近く、戦争反対を明確にしていた人物で、民主党の幹部は衝撃を受けた。そこで党の内部ではヘンリー・ジャクソン上院議員を中心に反マクガバンのグループが編成される。CDM(民主党多数派連合)だ。 ジャクソン議員のオフィスにはリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、エリオット・エイブラムズ、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなど後にネオコンの中核グループを形成する人々が在籍し、訓練を受けていた。 こうした工作もあってニクソンは再選されたのだが、そのニクソンがデタントを主張する。戦争を望んでいる支配層は次にニクソンを潰しにかかったわけだ。そしてフォード政権が誕生、デタント派の粛清が始まる。その中でも重要な意味を持つと考えられているのは国防長官とCIA長官の交代。1975年11月に国防長官はジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ交代、76年1月にCIA長官はウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ交代している。粛正を主導したのはそのラムズフェルド、そしてリチャード・チェイニーだ。 そのチェイニーはブッシュ政権で国防長官を務めている。その政権で国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心とするネオコンはソ連が消滅した翌年、1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONAで室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。 このネオコンは1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見てロシアも「脅せば屈する」と確信、世界制覇は近いと考え、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを作成したようだ。その後、ロシア軍は南オセチアやシリアで動き、その強さを世界に示したのだが、ネオコンはそれでもブラフで勝てると信じ、ウクライナへ攻め込んだ。オレンジ革命、そして2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを手先として利用したクーデターである。 そのクーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権。指揮したのは副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバン。2021年1月にバイデンが大統領に就任すると、サリバンは国家安全保障補佐官になり、ヌランドは同年5月から国務次官を務め始めた。 その好戦派はイスラエルの後ろ盾でもある。ガザでの虐殺やレバノンに対する攻撃の背後にもサリバンたちはいるはずだ。イスラエルはアメリカの支援なしに戦争を数カ月以上続けることができない。 ガザでイスラエル軍は建造物を破壊し、住民を虐殺しているのだが、ハマスを屈服させることができない。レバノンに対する攻撃も成功しそうにない。 地上戦でイスラエル軍はヒズボラに勝てないと言われていたが、予想通りの展開になっているようだ。ヒズボラが待ち構えている場所へ飛び込み、すでに少なからぬ死傷者が出ているようだ。10月2日にはハレット・アル・マハフェルからレバノンへ侵入しようとしていたイスラエル歩兵部隊とヒズボラが遭遇、激しい戦闘になり、イスラエル占領軍は死傷者を出し撤退したという。死傷者をレバノンから運んでくるヘリコプターが撮影されている。ホワイトハウスの好戦派はイスラエルを救うためにアメリカ軍を介入させようとするだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.03
イランはイスラエル南部と中部に約400発の弾道ミサイルを発射、イスラエルが誇る防空システム「アイアン・ドーム」を突破して着弾する光景はインターネット上で伝えられている。第1波攻撃で80から90%が標的に命中したとイラン側は主張しているが、映像はその主張の信憑性を高めている。極超音速ミサイルも使われたとする話も伝わっている。 これまでイランがイスラエルに対する報復攻撃を行わなかったのは、報復攻撃を自重すれば戦闘を中止するとアメリカやヨーロッパの指導者が約束したからだとイランのマスード・ペゼシュキアン大統領は語っている。もし本当に欧米指導者の約束を信じたとするならば、あまりにも愚かだ。ロシアと欧米とのやりとりを見ても西側が約束を守らないことを理解できる。 今後、ハマス、イラクの反シオニスト軍やイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)も攻撃を強めそうで、アメリカ政府は軍事介入を検討している可能性があるが、アメリカ軍がイラクの領空をイラン攻撃に利用した場合、イラクにある全てのアメリカ軍基地が正当な攻撃対象になると反シオニスト軍は警告している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.02
イスラエル軍は9月30日の声明で、南レバノンへ地上部隊を侵攻させたと述べたが、ヒズボラはイスラエル軍との戦闘は起こっていないと発表した。レバノン領内にヒズボラは強力な防衛線を築き、大量のミサイルを保管している。ハッサン・ナスララを含む幹部がイスラエル軍の空爆で殺害され、住民の死者は1700名を超えたが、すでに次の指導部はすでに動き始め、反撃が始まっている。ヒズボラはそうした事態を想定して対応策が講じられていた。 イスラエル軍は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻したが、その際にイスラエル軍は敗北、「メルカバ4」戦車も破壊されている。イスラエル軍が地上戦を始めた場合、その時以上に厳しい状況に陥る可能性がある。そこでイスラエル軍の地上部隊は南レバノンへ侵攻しないのではないかと言われていた。 しかし、イギリスはイスラエル軍の訓練を実施してきた。それについて質問されたイギリスの国防省は情報の公開を拒否している。この方針は保守党政権も労働党政権も同じだ。ちなみに、現労働党政権を率いるキール・スターマー首相はイスラエルとの関係が深い。 軍事訓練だけでなく、物資の支援もイギリスはアメリカと同様に行ってきた。両国は自分たちの軍事拠点があるキプロスから物資をイスラエルへ運び込んでいると伝えられていたが、キプロスにはイギリス空軍のアクロティリ基地があり、イギリス空軍だけでなくアメリカ空軍の偵察航空団も駐留しているのだ。 イスラエルのハーレツ紙によると、昨年10月7日からイスラエルへアメリカ軍の大型輸送機が20機、そしてイスラエルと各国がリースした民間輸送機が約50機、物資を輸送している。その後、6機以上のイスラエル軍機がイギリスへ飛来しているとする情報が伝えられた。イギリスのグラスゴー、バーミンガム、サフォークとオックスフォードシャーの空軍基地に来ているという。イギリスの基地を飛び立ったイスラエルの輸送機はネゲブ砂漠にあるベールシェバに到着しているというが、そこあるネバティム空軍基地は兵站の拠点だ。 その一方、ヒズボラはテルアビブ郊外のグリロット軍事基地、そして情報機関モサドの本部をファディ4で攻撃したとしている。グリロット基地はイスラエル軍情報部アマンの拠点で、電子情報機関の8200部隊も入っている。イスラエルのメディアによると、ヒズボラからイスラエルに対して発射されたロケット弾の集中砲火は戦争開始以来最大規模だという。 ヒズボラは9月25日にハイファ南部の海軍基地にドローン攻撃を仕掛け、モサド本部に向かってカデル 1弾道ミサイルを発射、8月25日にはグリロット基地をミサイルとドローンで報復攻撃したが、その際、数百のミサイルを発射してアイアン・ドームと迎撃ミサイルを消耗させた上で無数のドローンを目標に向かわせたという。それ以降、イスラエル政府は厳しい報道管制を敷いているが、それでも被害状況は漏れている。 ガザでの虐殺に続いてレバノンを攻撃したイスラエルに対するイスラム世界の怒りは高まっている。イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイスラエルに向かってミサイルを発射、イランの最高指導者はヒズボラを支援するよう呼びかけている。この呼びかけにイラク、シリア、イエメン、パレスチナの戦闘員が応じると見られている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.02
ウクライナ軍は9月28日から29日にかけてボルゴグラードにある兵器庫を攻撃した発表されたが、数時間後にその発表を否定する報道があった。9月29日に衛星が撮影した画像に兵器庫付近での火災は写っているものの、兵器庫の敷地内は燃えていない。しかも、兵器は地下深くにある。 9月18日にはモスクワから北西約400キロメートルの地点にあるトロペツで大きな爆発があった。数百機のドローンによって兵器庫が攻撃されたと報道されている。ウォロディミル・ゼレンスキー政権によると、ウクライナの治安機関、情報機関、特殊部隊が実行したというが、ロシア軍は兵器を地下深くに保管しているため、ドローンでの攻撃では破壊できない。おそらく、兵器に損害は出ていないと見られている。 アメリカやイギリスの好戦派はウクライナの敗北が明らかにしたくないはず。敗北が明らかにならなければ、どのように凄惨な状況でも勝利していると宣伝できる。何しろ彼らは圧倒的な宣伝マシーンを保有している。それを使い、人びとを騙し続けて時間稼ぎしたいのだろうが、戦況が大きく変化するとは思えない。 アメリカをはじめとする西側の支援を受けたウクライナ軍だが、8年かけてドンバスの周辺に築いた要塞戦をロシア軍に突破され、敗走している。「攻撃」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人ほどの兵力でウクライナ軍はロシアのクルスクへ軍事侵攻した。 当初、クルスクには国境警備隊しかいなかったことから装甲車両を連ねたウクライナ軍に攻め込まれたが、すぐにロシア側は航空兵力で反撃を開始、続いて予備兵力も投入されてウクライナ軍を包囲しながら殲滅している。 侵攻軍にはドンバスから移動させたウクライナ兵のほかアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているとされているが、すでに1万数千人が死傷して戦線から離脱、投入された戦闘車両の半数以上が破壊されたようで、通常の戦闘でウクライナ軍が勝利することは困難な状況である。 前線で戦うウクライナ兵の平均年齢は45歳と言われ、都市部では男性を拉致するチームが徘徊している。その様子はテレグラムで世界に発信されてきた。イスラエル軍に殺されたガザの子どもたちの映像もテレグラムで伝えられていた。西側がテレグラムを潰しにきたのは必然。そうした立場を理解できていなかった同社のCEOが賢いとは言えない。 敗北が決定的なウクライナ軍はロシア領に住む住民を狙ったテロ攻撃を開始、メディアの見出しになる出来事を引き起こして戦争を演出しようとしている。全体の戦況がどうであろうと、局所的に「絵になる」出来事を引き起こせばプロパガンダ機関、つまり有力メディアで自国民を騙すことはできる。第2次世界大戦終盤の「大本営発表」のようなものだ。 アメリカの外交や軍事の分野を支配してきたのはシオニストである。リチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚した後、副大統領から昇格したジェラルド・フォードの時代に台頭したネオコンもその一派だ。 そのネオコンは「脅せば屈する」と信じている。1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見て確信に変わったようだ。その後、ロシア軍は南オセチアやシリアで動き、その強さを世界に示したのだが、ネオコンは今でもブラフで勝てると信じ、1992年2月に彼らが作成した世界制覇プランに執着している。 そのプランに従い、2004年から05年にかけての「オレンジ革命」、13年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターでウクライナを植民地化することに成功、東部や南部のロシア語圏に住む人びとを殺害、追い出しにかかったのだが、抵抗にあい、その目的を達成できていない。2022年春にはドンバスに対する大規模な攻撃を計画していたようだが、その前にロシア軍が動き、計画は失敗。その直後にウクライナ政府は停戦しようとロシア政府と交渉を開始したが、それをアメリカやイギリスが潰した。 2022年2月にロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた直後、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はイスラエルやトルコを仲介役としてロシアのプーチン政権と停戦交渉を開始、3月5日には停戦が内定、仲介していたイスラエルナフタリ・ベネット首相はドイツへ向かい、シュルツと会っている。 ところが、その3月5日にウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。現在のSBUはCIAの下部機関だ。 4月9日にはイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。 それ以降、ウクライナでの戦闘はロシア軍とNATO軍の戦いという様相を強めていき、ロシア軍の報復攻撃の質も変化してきた。最近は西側が送り込んだ特殊部隊員、傭兵、オペレーターなどをターゲットにするようになっている。 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃した際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。 そこで、アメリカの国務省や安全保障部門、あるいはイギリス政府はウクライナに長距離ミサイルを供与し、ロシアの深奥部を攻撃させようとしているが、今のところアメリカの国防総省がブレーキをかけているようだ。そこでウクライナ軍は西側の支援を受けながらドローンなどで攻撃、メディアで勝利を宣伝している。 彼らが最後に使う脅しは核戦争。核戦争で脅せばロシアも中国も屈服するとネオコンは今でも信じている。ルビコンを渡り、負けるわけにはいかない彼らは信じるしかないのだろうが、その先には核戦争による人類の死滅が待つ。それを黙示録カルトは願っている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.01
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