ウクライナとロシアの代表がベラルーシのゴメリで2月28日に交渉を行うと報道されている。ボロディミル・ゼレンスキー大統領は2月25日にロシア政府と中立化について話し合う用意があると発言、ロシア政府は代表団を派遣する用意があると応じたが、26日にゼレンスキー大統領のミハイル・ポドリャク顧問が交渉を拒否するとしていた。
ゼレンスキー政権の態度が不安定だが、ロシア軍の進撃が速いため、交渉を持ち出して止めようとしたとする見方もあった。実際、ウラジミル・プーチン大統領は作戦の中断を指示したが、これをウクライナ側の反撃で止まったとする人もいた。するとゼレンスキー政権が態度を豹変させたわけだ。ロシア軍の作戦が再開されるとゼレンスキーは再び交渉すると言い始める。
ウクライナ側で戦闘の主体になっているのは「アゾフ大隊(またはアゾフ連隊)」をはじめとする親衛隊だと見られている。この軍事組織はネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)が主体で、リーダーのひとりである ドミトロ・ヤロシュ は昨年11月から参謀長の顧問を務めていると伝えられている。
ヤロシュが率いる「右派セクター」は2014年2月のクーデターで住民に対して特に残虐な行為を働いていた。ヤロシュは2007年頃からNATOの秘密部隊ネットワークに参加しているとも言われ、アゾフ大隊を率いている人物はヤロシュの部下だ。
外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物 「フォーリン・アフェアーズ」に掲載されたダグラス・ロンドンの記事 によると、ロシアが東部や南部での軍事作戦で終わらせようと考えてもウクライナ側が戦闘をやめないとしているが、これはロシアに対する脅しという意味もありそうだ。
ポドリャク顧問が交渉を拒否すると語った翌日、イギリスのリズ・トラス外相はロシア軍をウクライナで止められなければ、NATO軍と戦わせることになると発言、プーチン大統領は国防大臣と参謀総長に対し、核兵器部隊を特別戦闘任務につかせるように命令したと伝えられている。単純に考えれば、愚かな人物をイギリスは外務大臣に据えているということになるが、ロシア側の反応をみた可能性も否定できないだろう。
EUもロシアを挑発している。例えばジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表によると、 EUは戦闘機を含む4億5000万ユーロ(約590億円)相当の武器/兵器をウクライナへ提供 、EUの執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は武器/兵器の購入資金を融資すると語り、ロシアだけでなくその友好国も「制裁」、ロシアのメディアを禁止するとしている。ウクライナのEU加盟についても前向きの姿勢を見せた。EUはウクライナとロシアの講和を望んでいるとは思えない。アメリカも同じだろう。
アメリカでは今年11月8日に中間選挙の投票が予定されているが、ジョー・バイデン大統領の人気はなく、与党の民主党には強い逆風が吹いている。 ドンバス(ドネツクやルガンスク)に対するウクライナ側からのミサイル攻撃が2月17日からエスカレート 、学校も標的になっていたことが現地での取材で判明、何らかの軍事作戦をアメリカ政府が考えていたのかもしれない。