健康保険証とは公的な医療システムの中心的な存在である。現在の保険証を2024年に廃止、「マイナンバーカード」と一体化した「マイナ保険証」に切り替えると河野太郎デジタル相は10月13日に発表した。さらに運転免許証とも一体化させるという。要するに「デジタルID」で人びとを管理しようというわけだ。
こうした動きで先行していたのはEUである。欧州委員会はEU市民向けの「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に実現することを予定していた。デジタル技術を使った人間管理システムで、デジタル通貨、監視カメラ、スマート家電ともリンクする。資金の動きや行動を監視、世界を支配する私的権力にとって好ましくない人物を探り出し、排除するつもりだろう。
こうしたことを少なからぬ人が見抜くはずで、抵抗が予想された。そこでタイミングよく起こったのがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動である。2020年3月11日にWHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言、恐怖を煽り、人間を管理する必要があると思わせようとしたのだが、実現できていない。
昔から支配者は庶民を監視、管理しようとしてきた。アメリカ上院で設置された情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会の委員長を務めていたフランク・チャーチ議員は1975年8月にネットワーク局NBCの「ミート・ザ・プレス」という番組に出演、そこでアメリカ政府の通信傍受能力はアメリカ国民に向けられる可能性があり、そうなると人々の隠れる場所は存在しなくなると発言している。その当時、電子技術が急速に進歩、それにともなって監視システムの能力が長足の進歩を遂げていた。
デジタル・パスポートの基盤には、2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」がある。その中で「SDGs(持続可能な開発目標)」が示されたが、地球に住むすべての人間を特定するため、デジタルIDの導入が進められることになったのだ。2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、「ID2020」というNGOが設立された。欧州委員会が「ワクチン・パスポート」を日程に載せた2019年9月にもニューヨークでID2020の総会が開かれた。
その一方、製造業や農業を庶民の手から奪い、自力で生きていけない仕組みを作ろうとしている。すべて支配的な立場の人びとから与えられるもので生きるようにしようというわけだ。つまり人間の「家畜化」にほかならない。そうしたデジタル管理社会を作り上げる上で中心的な役割を果たしているのがシリコンバレーのハイテク企業だ。
そもそもマイナンバーカードはそうした管理システムを想定して作られた仕組みであり、マイナ保険証の問題は「情報流出」でなく、情報の集中管理にある。
マイクロチップが脳へ埋め込まれる段階に到達したなら、記憶に関わる信号を捕捉し、記憶を促進、さらに外部から記憶を管理できるようになるとも見通されている。量子コンピュータが実用化されたなら人間は「端末化」する。