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2022.10.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 ロシア軍がウクライナでの新たな軍事作戦の準備を進める中、キエフ政権やネオコンは核攻撃やダムの爆破を口にしてロシアを牽制、ルーマニアで軍事演習しているアメリカの第101空挺師団が軍事介入するという話をアメリカの有力メディアは流している。

 現在、ネオコンの宣伝マンを務めているデイビッド・ペトレイアスはアメリカ中央軍やISAF(国際治安支援部隊)の司令官、そしてCIA長官を務めた人物。欧米のメディアに登場して「プーチンは絶望的な状況にある」と主張、核兵器が使用される可能性があると人びとを脅す一方、アメリカ軍が登場してロシア軍をウクライナから追い払うと宣伝している。(例えば​ ココ ​や​ ココ ​)

 ペトレイアスはネオコンの一派で、ISW(戦争研究所)を創設したキンバリー・ケイガンと親しい。キンバリーの夫はフレデリック・ケイガン、その兄はロバート・ケイガン、その妻はビクトリア・ヌランド。いずれもネオコンの中核グループに属している。

 10月22日にペトレイアスはレクスプレス誌のインタビューで、ロシア軍がウクライナでアクションを起こせば、NATO軍としてでなくアメリカ主導軍として反撃すると語った。NATOの内部に彼の思い通りに動かない国が存在しているということだろう。

 ネオコンは2002年頃から統合参謀本部と対立している。その前年の9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後からだ。

 この攻撃は「9/11」とも呼ばれているが、それ以来、アメリカは国外で侵略戦争を本格的に開始、国内では憲法の機能が停止、ファシズム化が進む。攻撃の直後にジョージ・W・ブッシュ政権は詳しい調査をしないまま「アル・カイダ」が実行したと断定、その「アル・カイダ」を指揮しているオサマ・ビン・ラディンを匿っているという口実でアフガニスタンに対する攻撃を開始、国内では「愛国者法(USA PATRIOT Act/ niting and  trengthening  merica by  roviding  ppropriate  ools  equired to  ntercept and  bstruct  errorism Act of 2001)」が制定され、事実上、アメリカ憲法は機能を停止させられたのだ。

 そしてブッシュ政権は2003年3月19日、イラクに対する先制攻撃を宣言、アメリカ主導軍によってサダム・フセイン体制は破壊されたが、この軍事作戦で殺されたイラク人は100万人程度とも言われている。例えば、アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2003年の開戦から06年7月までに約65万人のイラク人が殺され、イギリスのORBによると、07年夏までに94万6000名から112万人が死亡、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたと推測している。

 ​ ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官 ​によると、9/11の10日ほど後にドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。そこに載っていた国はイラク、シリア、イラン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン。ラムズフェルド国防長官は2001年12月に統合参謀本部のグレゴリー・ニューボルド作戦部長をオフィスに呼びつけ、イラク侵攻作戦について報告させているのだが、9/11とイラクが無関係であることは当時から明確だった。

 ブッシュ政権は2002年にイラクを攻撃する予定だったと言われているが、戦争に「大義」がなく、無謀だとして統合参謀本部が反対したという。そこで翌年にずれ込んだようである。

 こうした背広組と制服組の対立を正面から最初に取り上げたのは2002年7月28日付けのワシントン・ポスト紙に掲載されたトーマス・リックスの記事。軍の幹部が軍事侵攻に反対していることを人びとに知らせたわけだが、その少し前、7月5日付けのニューヨーク・タイムズ紙ではアメリカの対イラク軍事作戦の内容が報道され、7月10日付けの同紙にはそれを補足する情報が載っている。

 そこで、ドナルド・ラムズフェルド長官は7月12日付けのペンタゴン幹部宛てのメモで、リークを止めるように命令しているのだが、その内容までがロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されてしまった。背広組と制服組との対立はそれほど深刻だということだ。

 イラク侵攻作戦を開始する前、エリック・シンセキ陸軍参謀総長が議会でラムズフェルドの戦略を批判、グレグ・ニューボルド海兵隊中将も2002年10月に統合参謀本部の作戦部長を辞している。

 ニューボルド中将は2006年4月、タイム誌に「イラクが間違いだった理由」を書き(Greg Newbold, “Why Iraq Was a Mistake”, TIME, April 9, 2006)、その直前にはアンソニー・ジニー元中央軍司令官もテレビのインタビューで国防長官を批判、同年3月にはポール・イートン少将、4月に入るとジョン・バチステ少将、チャールズ・スワンナック少将、ジョン・リッグス少将もラムズフェルド長官を批判している。

 ​ 軍の抵抗 ​を考え、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団を使った体制転覆作戦が始動、「アラブの春」につながったと言われている。シリアに対する侵略戦争もその一環。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めたものだ。その時に「アル・カイダ」というCIAの「ムジャヒディン(ジハード傭兵)」登録システムが作られた。

 ウクライナのネオ・ナチを率いているひとりで、昨年11月からバレリー・ザルジニー軍最高司令官の顧問を務めている ドミトロ・ ヤロシュは2007年5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めている。

 クーデター直後の2014年3月にヤロシュは声明を発表、チェチェンやシリアでロシアと戦ったサラフィ主義者などイスラム系の武装集団への支援を表明した。現在、ウクライナにはこうした背景を持つ戦闘員が入っていると言われている。

 アメリカのCBSはロシア軍がNATOを攻撃した場合、ルーマニアで軍事演習しているアメリカの第101空挺師団が軍事介入すると「報道」していたが、この部隊は軽武装で、ロシア軍と正面からぶつかる能力はない。アメリカやその属国に対するイメージ戦略だと考えられている。

 米英の情報機関や特殊部隊、ネオ・ナチ、ジハード傭兵はロシア軍とすでに戦っている。アメリカ/NATOは兵器を供給衛星写真を含む軍事情報をキエフ軍へ提供、兵士を訓練、作戦を指揮しているようだが、アメリカの統合参謀本部はウクライナでロシア軍とアメリカ軍が軍事衝突する事態を避けようとしている。NATOの内部でもネオコンと一線を画す動きがあるようだ。

 アメリカにはふたつの戦闘システムが存在する。ひとつは正規軍であり、もうひとつはCIAと特殊部隊だ。ベトナム戦争の特定の地域の農民を皆殺しにする「フェニックス・プログラム」をCIAと特殊部隊は実行している。1968年3月に引き起こされたミ・ライ(ソンミ村)事件もフェニックス・プログラムの一環だった。

 この作戦は1967年6月にICEXとしてスタート、ウィリアム・コルビーが68年から71年まで指揮していた。そのコルビーはフランク・チャーチ上院議員が委員長を務める「情報活動に関する政府による作戦を調査する特別委員会」でCIA長官としてCIAが行なっていた秘密工作の一端を明らかにした。

 その際、コルビーは公聴会で「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」とも証言している。こうした虐殺を南ベトナム民族解放戦線が行ったように見せかけることも工作の重要な要素だったという。(Tom O’Neill, “Chaos,” William Heinemann, 2019)

 なお、コルビーは1996年の春にカヌーで出かけたまま行方不明になり、数日後に遺体が発見されている。






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最終更新日  2022.10.25 01:59:46


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