ウクライナのアレクサンドル・シルスキー軍最高司令官は2月17日、アブディフカから部隊を撤退させると発表した。犠牲を少なくするために撤退するべきだと主張していたバレリー・ザルジニー前司令官をウォロディミル・ゼレンスキー大統領は解任、ソレダルやバフムートで自軍の兵士を「挽肉器」に押し込んだと批判されていたシルスキーに交代させていたのだ。撤退が遅れたことで犠牲者は増えるだろう。
その前日、西側では「ロシアの反体制派指導者」と宣伝されているアレクセイ・ナバルニーがシベリアの刑務所で死亡したと発表された。散歩中に気分が悪くなり、意識を失ったとされている。死因は明確になっていないが、血栓である可能性があるという。
西側での宣伝とは違い、ナバルニーはロシアで人気がない。支持者は2%程度だとされていたが、今ではほとんどいないだろう。刑務所へ入られれた理由は財政詐欺。彼は弟とダミー会社を設立、数千万ルーブルを盗んだとされ、兄のオレグ・ナバルニーは3年半の禁固刑を受け、アレクセイも執行猶予のついた禁固刑を受けていた。
アレクセイの場合、その前、キーロフ州知事の顧問として別のダミー会社を通じて150万ルーブル盗み、執行猶予付きの判決を受けている。ロシアでも2度執行猶予付きの判決を受けた人はほかにいないようだ。このときの条件として居住地を変えないこと、月に2回出頭することが決められていたが、2020年だけでも彼の違反回数は6回だ。
そして2023年8月、ナバルニーは再び有罪判決を受けたが、特別体制のコロニーに19年間収容という寛大な措置が取られている。そしてシベリアへ送られた。
ロシア国内でナバルニーは影響力がなく、ウラジミル・プーチン大統領が恐れるような存在ではないが、西側の支配層にとってはまだ宣伝材料として使える。その配下にある大手メディアはナバルニーを英雄視する「報道」を展開した。
そうした中、ナバルニーの死が注目されている。ウクライナのゼレンスキー大統領は彼が「プーチンに殺された」と宣言したが、勿論、根拠などは示されていない。
そうしたメディアが支援するアメリカのジョー・バイデン政権は苦境に陥っている。これまで大量の武器弾薬を供給、莫大な資金を注ぎ込んできたウクライナでゼレンスキー政権軍が壊滅的な状況で、2月13日にはウクライナ向けの600億ドルを含む950億ドルの対外援助法案が上院で可決されたものの、難産だった。
2月9日にはタッカー・カールソンがウラジミル・プーチン露大統領との2時間以上という長時間のインタビュー映像を公開したが、カールソンの「X」アカウントだけでもアクセス数は2億件を超えている。そのなかでプーチンはウクライナに軍事介入した歴史的な背景や米英が停戦合意を壊した事実を説明、天然ガス用パイプライン爆破にも触れたが、アメリカは選挙で選ばれた人々によって運営されていないとも指摘している。西側の大手メディアが封印していた話が発信、西側で作り上げられた「邪悪なプーチン」というイメージも薄らいだ。
その前、2月8日に司法省のロバート・ハー特別検察官はジョー・バイデン大統領を機密資料の不正な持ち出しに関する問題で起訴しないと発表したが、その理由は大統領が自分の長男の死亡日を思い出せないような「記憶力の劣る高齢者」だからというもの。大統領として不適格だと思えるが、選挙で選ばれた人々によって運営されていないアメリカでは「記憶力の劣る高齢者」が大統領でも構わないのだろうか。
ちなみに、ウクライナのハリコフに住みながら同国のクーデター体制を取材していたチリ系アメリカ人のゴンサロ・リラは逮捕され、収監されていたウクライナの刑務所において拷問の上、死亡している。適切な治療も受けていなかった。
また、ロンドン警視庁の捜査員が2019年4月11日にエクアドル大使館の中で逮捕されたジュリアン・アッサンジはイギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束されている。