アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドなるグループを編成している。このクワドの首脳会談が9月21日、アメリカのデラウェアで開かれ、「最近の海洋における危険で攻撃的な行動に深刻な懸念」を表明したようだ。
イギリスの戦略を引き継いだアメリカは他国に比べて優位に立っていた海軍力を使い、ユーラシア大陸の周辺部を支配してきたが、その状況が変化している。ミサイルの発達は航空母艦を含む水上を航行する艦船を脆弱なものにし、アメリカの制海権が揺らいでいると言えるだろう。
そうした状況に対応するため、アメリカはさまざまな方策を講じているが、そのひとつがクワドだ。岸田文雄首相が言うところの「自由で開かれたインド太平洋」には、その前に「アメリカにとって」という文言が隠れている。
アメリカは2017年11月にオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋から太平洋にかけての海域を一体のものとし、太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされたのだが、インドネシアはアメリカと一線を隠す動きを見せ、ここにきてインドもアメリカに従属しない姿勢を見せている。
そこでアメリカが目をつけたのがフィリピンにほかならず、軍事的な連携を強めている。そしてバングラデシュでは今年6月から8月にかけて学生が主導する反政府運動によってシェイク・ハシナ政権は倒され、ムハマド・ユヌスを首席顧問とする暫定政府へ移行した。デモは雇用配分制度に対する不満が原因で、火炎瓶が飛び交う激しいものだった。
ハシナはインドや中国と友好的な関係あったが、暫定政権はパキスタンやアメリカの支援を受けていたとされている。そのアメリカはベンガル湾の北東部にあるセント・マーチン島に注目してきた。この島に軍事基地を設置し、ミャンマーの港湾を利用している中国に対抗しようとしていたと言われている。ハシナはクーデターの背景にこの島があると示唆している。ベンガル湾をアメリカに支配させていたら、権力を維持できたかもしれないというのだ。ハシナは今年5月、外国の軍事基地許可を拒否していた。
バングラデシュはアメリカ海軍にとって重要な物流拠点になる可能性があり、同国の海軍基地は中国とインド洋をつなげるCMEC(中国・ミャンマー経済回廊)を監視できるとアメリカは指摘、マラッカ海峡のコントロールにも役立つとも考えている ようだ。バングラデシュのクーデターは自然発生的なものだとしても、アメリカの戦略にとって願ってもない結果をもたらす。ベンガル湾地域でアメリカが中国に対して優位に立つことができるというわけだ。
暫定政権を率いるユヌスはアルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞(ノーベル賞ではない)を受賞した人物だが、トム・ハイネマンが2019年に制作した「マイクロ債務」というドキュメンタリーによると、商業銀行の金利が通常12から13%のところ、ユヌスが1970年代に設立したグラミン銀行は30から40%。高利貸しと言うべきだろう。こうした高利で借りた人は返済のため、さらに高利の業者からカネを借りなければならず、多くの貧困層を借金漬けにした。かつて、日本でも問題になった仕組みだ。
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【 Sakurai’s Substack 】