《櫻井ジャーナル》

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2024.10.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 イランに対するイスラエルの攻撃計画に関するアメリカの国防総省とNSA(国家安全保障局)の機密文書とされるものを10月18日に中東スペクテイターがテレグラムで公開した。国防総省の国家地理空間情報局からの視覚情報報告書を含む文書には、イランへの攻撃に備えてイスラエル空軍の基地で進行中の活動の詳細も記載されている。これらの文書は本物だと見られている。







 公開された文書によると、イスラエル空軍はイラン攻撃の準備を継続し、10月13日に実施された演習に続いて2回目の大規模な軍事演習を実施したとしている。またハツェリム基地、ラマト・ダビド基地、ラモン基地で16発のALBMと40発の空中発射ミサイルなどの兵器が取り扱われていたという。

 文書全体は外国人には公表しない最高機密に分類され、項目によってはアメリカとイギリス、あるいは「ファイブアイズ」、つまりアングロ・サクソン系のアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが閲覧することを許している。中東スペクテイターが公開するまでアメリカの「同盟国」もアクセスできなかった文書があるわけで、イスラエルによるイラン攻撃計画の全体像を彼らは知らされていなかったことになる。

 ファイブアイズはアメリカとイギリスの情報機関の組織であり、イスラエルと連携しているのだが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関は米英の配下にあるメンバー。この6カ国に含まれない西側諸国はそれ以下の存在だ。

 この文書をリークした人物はイスラエルによるイラン攻撃にブレーキをかけようとしたのだと推測されている。イスラエル側にはアメリカ政府が意図的にリークしたと疑っている人もいるようで、両政府の信頼関係が損なわれる可能性があるだろう。

 日本ではイスラエルがハマス、ヒズボラ、そしてイランを軍事的に圧倒しているかのように伝えられているが、本ブログで繰り返し書いてきたように、イスラエルは窮地に陥っている。

 イスラエルは10月16日にハマスの指導者だったヤヒヤ・シンワルを殺害しているが、シンワルは戦闘の最前線でイスラエル軍と戦い、最後まで屈服しなかった。イスラエル軍はハマスを制圧できてなことを示している。ヒズボラはイスラエルに対する激しいミサイル攻撃を継続中であり、イランでは親米派の政権もイスラエルと戦わざるをえない状況になっている。

 1967年6月にイスラエル軍はエジプトを奇襲攻撃して完勝、占領地を広げることに成功したが、73年10月にはヘンリー・キッシンジャーと親しいエジプト大統領のアンワール・サダトがシリアと連携してイスラエルを奇襲攻撃した。

 窮地に陥ったイスラエルではゴルダ・メイア首相の執務室で核兵器の使用について議論されている。その際、モシェ・ダヤン国防相は核兵器を選択肢として見せる準備をするべきだと発言したという。アメリカのウィルソン・センターの調査によると、核兵器使用の準備をするという提案はメイア首相が拒否して実行されなかったというのだが、閣議で核兵器の使用が決まったという情報もある。

 その後、10月16日にイスラエルの機動部隊がスエズ運河を越えてエジプト軍の背後に回り込みはじめ、エジプト陸軍の第3軍が壊滅の危機に陥った。キッシンジャーはメイア首相に対し、軍の動きを抑えるように頼むが、失敗した。

 その日、ソ連のアレクセイ・コスイギン首相はエジプトへ飛んで停戦するように説得し、キッシンジャーは20日にモスクワへ飛ぶ。22日にキッシンジャーはイスラエルから停戦の内諾を得るのだが、イスラエルはエジプトへの攻撃をやめない。アメリカの足下を見透かしての強硬策だ。

 それに対し、10月24日にソ連のアナトリー・ドブルイニン駐米大使は米英両国が平和維持軍を派遣してはどうかとキッシンジャーに提案する。その一方、レオニード・ブレジネフ書記長はリチャード・ニクソン大統領宛の手紙の中で、アメリカがソ連と手を組めないのならば、ソ連は単独で行動すると警告していた。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009/William Colby, “Honorable Men”, Simon & Schuster, 1978)

 その直後、キッシンジャーはすぐにWSAG(ワシントン特別行動グループ)を招集して討議しているが、ニクソンには知らされていない。その会議で決まったことは、ニクソン名義でブレジネフへソフトな内容の返信を送り、その一方でアメリカが核戦争の警戒レベルをDEFCON(防空準備態勢)を通常の5から3へ引き上げているということ。ニクソンはこの決定を追認している。25日には全世界のアメリカ軍に対して「赤色防空警報」が出されたともいう。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009)

 メイアは核戦争の危機が迫っていると考え、ダヤン国防相は核攻撃の準備を始める。2基のミサイルに核弾頭をセット、目標をダマスカスとカイロに定めた。キッシンジャーはイスラエルに停戦を強く求め、停戦は実現したものの、イスラエルに「懲罰」を与えるという計画は失敗に終わった。

 その後イスラエルは中性子爆弾、あるいは未知の核兵器を使ったという噂もあるが、そうしたことがなかったとしても、第4次中東戦争の際には核兵器を使おうとしている。今回、イスラエルがイランを核攻撃しても不思議ではない。

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最終更新日  2024.10.23 10:19:06


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