アメリカ大統領選でドナルド・トランプがカマラ・ハリスを破り、次期大統領に選ばれたようだ。トランプは2016年の選挙でも勝利しているが、その際には民主党だけでなくCIA、FBI、有力メディアから攻撃を受け、国家安全保障担当補佐官に選ばれたマイケル・フリン元DIA局長がホワイトハウスから追い出されている。
2009年1月から17年1月まで大統領を務めたバラク・オバマはロシアとの関係悪化に力を入れ、2010年8月にはPSD-11を承認してムスリム同胞団を利用して北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進めた。いわゆる「アラブの春」だ。
シリアやリビアではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団を投入、リビアでは体制転覆に成功、今では無法国家。シリアでは戦乱が続いている。
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒せないため、リビアから武器弾薬や戦闘員を移動させるだけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われているが、その新戦闘集団をオバマ政権は支援した。
そうした動きを危険だと判断したのがDIA。 オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。 その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。
DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。
その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘うのだが、2015年9月にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。
こうした経緯があるため、フリンはオバマ政権がダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団の後ろ盾だったことを熟知していた。武装集団を操っていたオバマ政権のネオコン、CIAなどはフリンが安全保障担当補佐官として活動することを嫌っていたはずだ。
今回、トランプは民主党だったロバート・ケネディ・ジュニアやタルシ・ガッバード元下院議員を要職につけると見られているが、このふたりを民主党幹部は恐れているだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動の暗部、ロシアとの核戦争に向かった政策に関する情報が明るみに出ることも恐怖しているかもしれない。
しかし、トランプ政権が外交や安全保障分野の政策を大きく変更することはないと見られている。ウクライナでの戦闘を「現状維持」で終わらせることは不可能であり、トランプの人脈はガザやレバノンでの住民虐殺を支援している。イスラエルではレバノンへの軍事侵攻に慎重だったヨアブ・ガラント国防相が解任された。イスラエル政府は戦乱を望んでいるのだろうが、その先には破滅が待つ。ペルシャ湾岸の産油国はアメリカやイギリスの従属、イスラエルとの関係を強めてきたが、その政策を続ければ彼らも破滅する可能性が高い。
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【 Sakurai’s Substack 】