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2025.11.20
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 国連の安全保障理事会は11月17日、ドナルド・トランプ米大統領のガザ計画を承認する決議を採択した。13カ国が賛成し、中国とロシアは棄権している。当初の決議案ではパレスチナ主権の可能性について言及されていなかったのだが、追加されたことでアラブ諸国やパレスチナ自治政府が決議を支持、ロシアは拒否権を行使するという姿勢を撤回、中国も棄権に加わった。

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 ガザを民族浄化して地中海リゾート開発を行うべきだとトランプが公言していたことを考えると、この決議はトランプが構想する開発を実現するための地上げを承認するためののものだと見ることもできる。

 この決議によると、ガザの復興調整を担う暫定政権としての平和委員会設立を歓迎、暫定的な国際安定化部隊(ISF)を設置する権限をその委員会に与えている。その委員会を指揮するのはトランプ大統領になるため、ISFもトランプの指揮下に入る。





 ガザではイスラエルによる破壊と殺戮に抵抗するため、ハマスが武装闘争を続けてきたが、そのハマスを武装解除することが決議では定められている。

 ハマスが武装解除されたのち、イスラエル軍はガザから撤退するというのだが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナ国家への反対を改めて表明し、そのような事態は決して起こらないと断言している。ハマスもこの決議について、これはガザに国際的な監視メカニズムを押し付けるものであり、パレスチナ国民はこれを拒否していると宣言、決議を拒否した。つまり、今回の決議では当事者の意思が無視されている。

 ハマスが武装解除を拒否する可能性は小さくないが、そうなると、トランプが指揮する部隊とハマスの戦闘が始まる可能性がある。しかもハマスが武装解除されなかった場合、イスラエル軍はガザに居座るとしており、三つ巴の戦いになるかもしれない。イスラエルやアメリカの影響下にあるパレスチナ自治政府が出てきても、事態が複雑になるだけだろう。安定化部隊はパレスチナ自治政府と連携しないという見方をする人もいる。

 パレスチナでは今回と似たような展開の出来事があった。1981年6月7日にイスラエル軍はイラクのオシラク原子炉を空爆、7月17日にはベイルートにあったPLO(パレスチナ解放機構)のビルに対して大規模な空爆を実施した。

 それに対して国連のブライアン・アークハート事務次長がイスラエルを説得するようにアメリカ政府へ働きかけ、停戦が実現する。イスラエル側ではアリエル・シャロン国防相も準備不足だとして停戦を望んでいた。

 シャロンは1982年1月にベイルートを極秘訪問、キリスト教勢力と会い、レバノンにイスラエルが軍事侵攻した際の段取りを決め、1月の終わりにはアメリカに送るメッセージについて話し合うためにペルシャ湾岸産油国の国防相が秘密裏に会合を開いた。イスラエルがレバノンへ軍事侵攻してPLOを破壊してもアラブ諸国は軍事行動をとらず、石油などでアメリカを制裁しないという合意を取り付けることが目的だった。

 1982年6月に3名のパレスチナ人がイギリス駐在のイスラエル大使を暗殺しようとするが、この3名に暗殺を命令したのはアラファトと対立していたアブ・ニダル派だった。イスラエル人ジャーナリストのロネン・ベルグマンによると、暗殺を命令したのはイラクの情報機関を率いていたバルザン・アッティクリーティだという。(Ronen Bergman, “Rise and Kill First,” Random House, 2018)

 この出来事を口実にしてイスラエル軍はレバノンへ軍事侵攻するが、8月21日にアメリカの仲介で戦闘は終結、西側諸国が監視する中、パレスチナの戦闘員は9月1日までにベイルートから撤退。西側諸国は難民と難民キャンプの保護を保証していた。

 撤退の直後、イスラエルのメナヘム・ベギン首相はレバノンのバシール・ジェマイエル大統領と会談し、イスラエルとの和平条約への署名を強く求めたが、イスラエルとの和平条約の締結を拒否し、残存するPLO戦闘員を掃討するための作戦を承認しなかった。

 パレスチナ難民の安全を保証していた国際部隊は9月11日にベイルートから撤退、ジェマイエルは9月14日に暗殺され、その翌日にイスラエル軍は停戦協定を無視して西ベイルートへ侵攻するが、パレスチナ難民キャンプへはファランヘ党の部隊を入れることにしていた。

 ファランヘ党を中心とする部隊は9月16日、イスラエル軍から提供されたジープに乗り、イスラエル軍から提供された武器を持ち、イスラエル軍の命令に従って行動、サブラとシャティーラの難民キャンプに侵攻し、大量虐殺を始めた。1万数千名の市民が殺されたとされている。その際、レイプなどの残虐行為も行われたという。

 パレスチナ人を虐殺したのはレバノンのファランヘ党だが、そのファランヘ党にパレスチナ人を虐殺させたのはイスラエルであり、反イスラエル感情は世界に広がる。

 要するに、イスラエルはパレスチナでの民族浄化を放棄することはなく、保護するという西側諸国の保証は信用できない。ハマスが武装解除に応じようとしないのは当然なのだ。トランプ政権もそうした展開を予想しているだろう。西側諸国にしろ、アラブ諸国にしろ、ロシアや中国にしろ、ハマスが武装解除に応じなければ、イスラエル軍がガザ占領を続けることを容認する口実ができる。

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最終更新日  2025.11.20 00:00:06


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