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毎年恒例のコーポロン・ノース・テキサスウインドシンフォニーのGIAプロジェクトのCDがリリースされた。このシリーズ、最近は聞いているものの、レビューを書くことも少なくなってしまった。理由は印象が薄かったり、あまり賛同できないので、奥歯に物の挟まった言い方になってしまうからで、今回もだいぶ放置してしまった。以前は一枚ごとに新作と古典を組み合わせたプログラムだったような気がするが、ここでは2011年から2015年の新作ばかりを集めている。売りはジョン・マッキーの吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」だろう。演奏時間30分あまりの大作だ。コントラ・ファゴットやコントラ・バスクラ、夥しい打楽器まで加わった大編成の曲。第3楽章ではガラス棒をピアノの弦にこすって、面白い効果を出している。昨年のコンクールでは大流行したようだが、当ブログはコンクールには関心がないので、全く知らなかった。テキサス大学ウインド・アンサンブルの創立100周年を記念して書かれたもので、ジェリー・ジェンキンの指揮ですでに録音もされている。(Refference Record)この曲は、ギリシア神話の英雄オデュッセウスの物語に基づいている。オデュッセウスはトロイの木馬で知られる知将。最初の楽章は軍楽調で、モートン・グールドの音楽を思い出す。題名の「Hubris」とはギリシャ語で〉〔過剰な〕自信、尊大さ という意味。ゼウスが嵐を起こして自分の船を沈めるさまを描いているのだろうか。斎2楽章は「Immortal thread,so weak」9日間の漂流の果てに流れ着いた島に住む海の女神カリュプソーに惚れられ、7年間も一緒に住んでしまう。その時の情景を描いた、静かで心温まる音楽。不滅の糸とは、カリュプソーがオデュッセウスの船の帆をつむいだ糸のことらしい。最後の楽章ではピアノの弦?をガラス棒でこすって面白いサウンドを出していた。トリッキーな主題が出てくるが、出来が悪くあまり面白くない。後半に第1楽章の主題が出てきて、全曲を締めくくる。規模は大きいが、あまり心に響いてこなかった。コンクールで取り上げられる理由が理解できない。当ブログの感性が鈍いためかもしれない。最も気に入ったのは、ブルース・ブロートン の「In the World of Spirits」。ギリングハムの「銀河の帝国」を思い出させるような、ダークで宇宙的なスペースを感じさせるサウンドと活きの良い楽想が小気味いい。ウイーン生まれのゲルノット・ウォルフガング作曲の「三つの短編」は原曲がヴィオラとバスーンのためのデュオ。ウインド・アンサンブル用には2012年編曲された。作曲者は、ジャズとラテン・アメリカの音楽の要素を結び付けた作品といっている。1970年代頃のジャズを感じさせる曲で、目新しさはない。今時、はやる曲だろうか。Eugene Corporon=North Texas WindSymphony:INVENTION(GIA CD-1004)1.John Williams:For The President's Own2.Gernot Wolfgang:Three Short Stories Uncle Bebop Rays of Light ) Latin Dance5.Bruce Broughton:In the World of Spirits6.John Mackey:The Ringmaster's March7.Michael Daugherty:Winter Dreams )8.John Mackey:Wine-Dark Sea Hubris Immortal Thread, So Weak The Attentions of SoulsNorth Texas Wind SymphonyEugen Corporon(cond)Recorded University of North Texas Winspere Performance Hall,Murchison Performing Arts Center,June 21-25,2015;November 7-8,2015;April 15-18,2016
2017年04月30日
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ジャズ批評の新刊案内に掲載されていた本をチェックしていて見つけた本。kindle版もあったので、kindle版を購入した。この本の著者はベーシストの鈴木良夫氏。よくある名盤紹介とはひと味違っている。アルバムの選考は、氏のジャズ仲間に入門用のベストアルバム10枚と選外だった10枚とをアンケートで答えてもらうという方式。アンケートで集まった1,000枚の中から55枚を選んでいる。よくある名盤ガイドにはないようなアルバムはほとんどないが、名盤には違いないが意外なアルバムが入っているのは、ミュージシャン独自の視点からだろう。大方の予想通り一位は「カインド・オブ・ブルー」これは何方も依存のないところだろう。氏はミュージシャンなので、専門的な見地からの解説はもちろんあるが、実際にそこに参加しているミュージシャンとの思い出が満載で、大変面白かった。マイルスとは当時ニューヨークに在住していた菊池雅章のロフトで出逢ったそうだ。マイルスが来た途端、ピリピリした雰囲気になって、最初に言われた言葉が「I hate jap」彼一流のジョークだったと書かれてあるが、あの顔で言われるとビビりそうだ。中には辛辣なコメントも書かれている。オスカー・ピーターソンの「プリーズ・リクエスト」について、「どうしてそんなにいっぱい音を弾くの?」と疑問を呈している。この時のトリオでは、レイ・ブラウンを高く評していて、暴走するピーターソンをコントロールしていたのはブラウンだと言う。。マイルスの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」では、チックコリアが当時マイルス・バンドのメンバーだったウエイン・ショーターに「譜面ないか」と聞いたら、豚の絵を描いて、これだよって見せられたそうだ。要するに耳で聞いてやれということで、当時のマイルス・バンドのレベルが桁外れだという証拠だろう。例を挙げるときりがないが、全編がこのような調子で、凡百のガイドとは全く違う。アート・ブレーキーを評して「太陽みたいな人」と言っているのも実際に一緒にプレイした人ではわからないコメントだ。文章も大変わかりやすく、何よりも氏のおだやかなひと柄が滲み出ていて、読んでいて心が温かくなる。55枚のうち国内版で手に入らないのは2015年当時フラナガンのオーバーシーズのみ。これほど充実しているのも日本ならではのことだ。まだ、全部読んでいないが、取り上げられたアルバムのページを読んでるからアルバムを聴くと、別な味わいがあるかもしれない。日本人のジャズミュージシャンで文章を書く人といえば、山下洋輔と山中千尋を思い浮かべるが、鈴木氏もかなりの書き手であることがわかる。次回作もぜひ期待したい。人生が変わる55のジャズ名盤入門 鈴木良夫 著 2016年4月1日 発行 竹書房
2017年04月28日
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ミュージック・ストアー・ジェイ・ピーの決算セールで手に入れた一枚。今は亡きヨークシャービルディングソサエティバンドのソプラノ・コルネット奏者ピーター・ロバーツの のアルバム。彼は1950年生まれで、1960年に当地のグライムソープ・ジュニア・バンドに入ったのを皮切りに、いろいろなバンドで活躍している。ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドには1997に入団している。残念ながら2009年時点で、リタイヤしているようだ。このバンドは、高名なソロイストが何人もいる。当ブログは彼らの名前は全く知らないが、バンドの演奏を聴いていて、そのうまさが痛感される場面が何回もあった。その中でもこの方は一層輝いていた。この方の最も優れているところは、驚異的な息の長さだろう。少なくとも、普通の人の倍以上の長さのフレーズを一息で吹いてしまう。全く素晴らしい能力だ。勿論イギリスらしい細かいビブラートのついた柔らかい音色も素晴らしい。技巧的にも隙がなく、僅かな乱れも感じられない。band powerのレビューに書かれていたが、ソプラノ・コルネットは柔らかい音を出すのがすごく難しいのだそうだ。聞いていると雲の上に乗っかって、ふわふわ浮いているような気分でとても気持ちがいい。このアルバムで目立つのはオペラからの曲で、実際の歌手の歌に比べても、遜色ないどころか、上回っていると感じる。実に滑らかで音楽的なフレージングは惚れ惚れとする。特に、ノルマのアリア「清らかな女神よ」は、難曲として知られるが、テンポが幾分早いとはいえその驚異的な息の長さに、聞き手も息?を呑んでしまう。他の曲もいたずらに技巧を見せつけるような曲がなく、とても楽しめる。ポピュラーでは、ジョン・バリーの「ある日どこかで」やカラベリの「Let Me Try Again」がいい感じだった。「Let Me Try Again」はシナトラの歌を思い出しながら聞いてしまった。黄金期のヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドのバックも素晴らしい。Peter Roberts:Legend(EGON SFZ 119)1.Joseph Turrin:Escapade2.Ennio Morricone(arr.Pullin):La Califfa/3.Trad(arr. Allison):Silver Threads Among The Gold4.Trad(arr.Langford):The Lark In The Clear Air5.Leoncavallo(arr.Ray Farr):On With The Motley6.Bennett(arr.Elgar Howarth):Trumpet Voluntary7.Andrew Lloyd Webber(arr.Ray Steadman-Allen):Pie Jesu8.Vincenzo Bellini(arr.Peter Roberts):Cavatina(from Norna)9.Philip Sparke:Flowerdale10.Pietro Mascagni:Intermezzo11.Kenneth Downie:The Isle of Mull12.Andrew Lloyd Webber(arr.Eliot/Nunn):Memory13.George Gershwin(arr.Heyward):Summertime14.John Barry(arr.Klaas van der Woude):Somewhere In Time15.Caravelli(arr.Jourdan/anka/Cahn):Let Me Try AgainPeter Roberts(splano Cornet)The Yorkshire Building Society BandDavid King(cond)Recorded 13th,17th-19th October 2003 at Peel Hall,Salford University
2017年04月26日
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最近電子書籍を購入する機会が増えている。おもに単行本のkindle版だが、購入する動機は書籍よりも安価だからだ。数日前にアメリカに入る子供から雑誌NUMBERの最新号のリクエストがあった。当人は雑誌を炊事する前提で連絡してきたようだった。いつもは本屋で購入して入る雑誌だったが、電子書籍がないかアマゾンで検索したところ、kindle版があることがわかった。当人がkindle版を購入すれば問題ないのだが、外国では購入できないようだ。Amazon.comでも日本の書籍が購入はできるようだが、数はそれほど多くはない。残念ながら、この雑誌はリストにはなかった。仕方がないので、kindle版を共有することを考えたが、他人と共有するのは差し支えがある?本もあるので、それは出来ない。kindle版は出力できないので、以前はコピーしてワードに貼り付けて、テキスト化という荒技を使ったこともある。今回はその方法を使うことは、なぜか頭に浮かばなかった。色々調べたら、calibreというソフトがDRMを解除できたり、pdfに出力できることがわかった。DRMはDigital Rights Managementの略でデジタルデータの著作権のことだ。pdf化はすんなり行ったが、欲を言えば、自動で最適な用紙サイズにするモードがあれば良かった。NUMBERは変A4なので、仕方なくA4で出力した。ちょっと読みずらいが我慢してもらうことにした。容量が数十メガになってしまったので、dropboxで送った。自炊するよりは手間がかからないとはいえ、やはり面倒臭い。できるかどうか分からないが、特定の電子書籍のみ共有できないか考えてみたい。ところで、一連の作業をしているうちに、電子書籍が普及したら本屋は商売にならないという事に気がついた。電子書籍は、場所を取られるわけではないし、雑誌の場合、バックナンバーの保存も気にすることがないし、良いことだらけだ。当ブログの場合、紙媒体での1番の悩みは、この問題だ。電子書籍でも、欲を言えば、自分の書庫を横断で検索できれば、バックナンバーの閲覧も楽になる。この機能があれば、アルバムの批評がどうなっていたか、ある特集の内容を見たいなどの用途に威力を発揮するのだ。紙だと、その作業をやる気にもならない。現在購読している雑誌に電子媒体があるか、ちゃんと調べていないが、電子書籍への移行も考える必要がありそうだ。ただ、今まで購読していた本屋とは長いつきあいで、簡単に電子書籍に移行するのも気がひけるし、なかなか悩ましい。数日後書籍をPCでダウンロードした。電子書籍は何時もiPadで見るのだが、今回初めてiPadでのダウンロードに思いのほか時間がかかり、その日は結局見ることができなかった。次の日見てもダウンロードが終わっていなかったが、数時間後に終わっていた。早速読もうとしたら、2ページ以降は読むことができなかった。色々やっても解決しないので、アマゾンのカスタマーセンターに連絡。3回くらい電話して、やっと解決した。結局iPadのkindleアプリを削除して、再インストールで復旧したが、原因は不明なので、解決したわけではない。やはり電子書籍特有のリスクはある訳で、全てが上手くいくということはないようだ。今回は電話での問い合わせで、短時間で解決したのでよかった。これがメールだと、いつ終わるかわからない。チャットでも電話には敵わない。やはり直接話すのが一番だ。
2017年04月23日
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前から見たいと思っていた「パートナー」(原題 Passengers)を「ジャッキー」と梯子で見てきた。120年をかけて宇宙移民を目的とした5000人乗の超大型宇宙船アヴァロン号の航行中に人工冬眠ポッドの故障により到着予定よりも90年も早く起きてしまった男の物語。現代ならではのストーリーだろうが、クライシスものとしては従来の映画と大差がない。ただ、逃げ場がないという点では一層切実な問題だ。この映画のカギは、主人公が技術者で、宇宙船を何とかできる技術があったこと。他にもいくつかの偶然があるが、これがないと映画が成り立たない。リスク回避はいつまでたっても終わりがないが、宇宙船のメーカーが、想定外はないと言い切っているところは、どこかで聞いたセリフのようだ。映画はハッピーエンドで終わらないが、救いがある所がいい。今更ながらだがFSXの威力が凄まじい。無重力状態になって、プールの水が巨大な水玉になるシーンなどリアルそのもの。登場人物は主に二人で、最後にもう一人が出てくる程度。主人公のジム(クリス・プラット)とオーロラ(ジェニファー・ジョーンズ)の二人は申し分ない演技。特に、ジェニファー・ジョーンズの最後の奮闘ぶりは、手に汗握るという表現がぴったりの熱演。バーテンのアンドロイド アーサー役の マイケル・シーンがいい味を出している。公式サイト
2017年04月21日
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ビル・エヴァンス・トリオの未発表のライブを聴く。1976年11月にアメリカのウィスコンシン大学マジソン校のユニオン・シアターで行われたライヴ。マジソンと言えば「マジソン郡の橋」で有名なマジソンのことみたいだ。この組み合わせでは、同年録音した『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』や『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』があるがライブは初めて。録音担当は当時22歳だったラリー・ゴールドバーグとジェイムス・ファーバー。ゴールドバーグはのちにボストンの公営ラジオWGBHで活躍し、ファーバーはマイケルブレッカーやメルドーの録音を手掛けている。録音は1976年にしてはテープ・ヒスがきつく中音部も貧弱で、同じ年のスタジオ録音に比ぶべくもないが、鑑賞する分には全く差し支えない。サウンドはダークでビル・エヴァンスのイメージとは違っているが、こういうのも悪くない。御馴染みのナンバーが多いが、マンネリ感が無い。マイルスみたいに虫が脱皮するように、丸ごと変わっていく生き方もあるが、エヴァンスのような生き方もある。エヴァンスは何十年も同じことをしているわけではなく、メンバーを変え、レパートリーを変えてトリオを維持している。それが、トリオという決まりきったフォーマットを新鮮に保っている秘訣かもしれない。ジグムンドはブックレットの中で、当時のレパートリーは16曲から20曲で、「Up With The Lark」から始めることが多かったと語っている。ライブのためか、アグレッシブな表情が目立つ。「ninha」は聞いたことのない曲だが、他のアルバムでも録音されているのだろうか。レイモンド・エヴァンス( 1915-2007)の作曲した抒情的で美しいナンバー。ビル・エヴァンスの名作「Turn Out Of The Stars」に似た、甘く切ない旋律でエヴァンスにぴったりの曲だ。このアルバムで最も魅かれたナンバー。因みにレイモンド・エヴァンスはビル・エヴァンスとは何の関係もない映画音楽の作曲家らしい。昨日、春ののどかな暖かさの中で、窓を開けてこのアルバムを聴きながら車を運転していた。この季節にふさわしい音楽で、とても気持ちが良かった。(閑話休題)「All of You」 でゴメスのアルコ・ソロがあったが、この前ロベルト・オルサー・トリオのユーリ・ゴロウベフのスーパーなアルコ・ソロを聞いてしまった後では、その下手さ加減が気になった。アルバムとしては以前レビューした 「Some Other Time」には比べるべくもないが、1976年当時のライブを聞くことができるという価値はある。特に録音されていないナンバーと思われる「ninha」の価値は高い。また、前述したアルバムとの違いを見つけるのも一興だろう。当ブログとしては、スタジオ録音のほうが落ち着きがあって聞きやすいという感想だった。ないものねだりだが、もう少し録音が良ければとは思ってしまう。Bill Evans:On A Monday Evening(FANTASY FAN 00095)1.Sugar Plum2.Up With The Lark3.Time Remembered4.T.T.T. (Twelve Tone Tune)5.Someday My Prince Will Come6.Minha (All Mine)7.All Of You8.Some Other TimeBill Evans(p)Eddie Gomez(b)Eliot Zigmund(ds)Recorded live in cocncert at the Madison Union Theatre,Madison,WI,on Monday,November 15,197
2017年04月19日
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4/11を持ってWindows vistaのサポートが終了した。バージョンアップをしていないパソコンが14万台もあるそうで、当ブログもその栄えある?一員だ。さしあたってどうなるものでもないが、バージョンアップを考えている。本当はWindows10に一足飛びに行きたいところだが、vistaからアップグレードすることはできないので、Windows7にアップグレードして、その後Windows10に移行するという方法が良さそうだ。Windows upgrade checkerで調べたら、アップグレードは可能らしい。ところが空き容量が足りないという問題があることがわかった。10ギガほど足りないので、小手先でのダイエットは無理そうで、ハードディスクのパーティションの切り直しを考えなければならない。またWindows7のアップグレード版を購入したのだが、それがproで手持ちのPCのvistaはultimateなので、上書きインストールができない。データーを退避して、アプリを再インストールしなければならない。かねてからPCでのリアルタイムDSD変換を考えていたので、この際速いPCの購入も検討する必要がありそうだ。どっちにしても、今後いろいろ手間がかかりそうで、悩みの種が増えてしまった。
2017年04月17日
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ふと思い立ってクロノス・カルテットの音楽をSpotifyで聴いていて気に入った一枚。メキシコ音楽特集で2003年のリリース。いつものクールな表情ではなく、かなり熱く濃厚なラテンの空気を感じさせる。ゴツゴツとした感触が弦楽四重奏の領域を逸脱していて、なんともスリリングだ。最初の「シナロアの男」 は音を変調させていて、一瞬不良品かと思ったほどで、強烈なインパクトがある。曲は知らない曲ばかりで、知っているのはタブーくらいか。スタジオでのレコーディングだが、民族音楽を現地録り、みたいな生々しさが感じられ、インパクトがある。これは、メキシコでのレコーディングをオーバーダブしているからだが、一部メキシコの市中の音も入っていて、臨場感が俄然増している。曲は短いものが多いが、当ブログにとっては耳新しい音楽を聴けることで、思わず興奮してしまう。これほど面白く聞かせるのもアイナダマールで知られるアルゼンチンの作曲家ゴリホフを中心としたこったアレンジが大いに貢献している。編成も弦楽四重奏から打楽器や声楽を加えた編成や室内楽までとバラエティに富んでいて、飽きさせない。多分、弦楽四重奏だけだとこんなに面白くはならなかったと思う。こういうアレンジは現地の人たちでないと出来ない仕事だろう。全曲聞きものと言ってもいいと思う。「ナチョ・ベルドゥスコ」のストリートオルガンを思わせるサウンドや音楽の終わった後の街中の喧噪(花火の音も聞こえる)、冗談音楽みたいな「ミニスカート」、ラテンのムード音楽みたいに濃厚な「ペルフィディア」(途中の草笛みたいなサウンドはヴァイオリンなのだがどうやって出しているのだろうか?)、人を食ったようなアレンジで笑わせる「チャボ組曲」など枚挙にいとまがない。「シナロアの男」のダンス・ミックスの、踊りだしたくなるような強烈なリズムで最後を締めくくっているのも憎い。異彩を放っているのは、レブエルタスの「センセマヤ」で、ラテン音楽の剛直な面よく出ていて、かなり刺激的だ。とにかく、これほどユニークなアルバムを作れたのはプロデューサーたちの功績が大きい。勿論それを可能にしたクロノスの腕のさえも見事だ。大傑作であることは確かで、もっと早くに知りたかった。Spotifyがなかったら、恐らく知らずに終わったかもしれない。そう思うと、現代に生きている幸運に感謝せずにはいられない。(大袈裟?)Kronos Quartet:Nuevo(NONSUCH 7559-79649-2)1. Severiano Briseno(arr. O. Golijov):El Sinaloense2. Agustin Lara(arr. O. Golijov):Se Me Hizo Facil3. Juan Garcia Esquivel(arr. O. Golijov):Mini Skirt4. Trad(Son Huasteco)(arr. O. Golijov):El Llorar 5. Alberto Dominguez(arr.:S.Prutsman):Perfidia6. Silvestre Revueltas(arr.:S.Prutsman):Sensemaya7. Osvaldo Golijov:K'in Sventa Ch'ul Me'tik Kwadulupe ("Festival for the Holy Mother of Guadalupe")8. Margarita Lecuona(arr. O. Golijov):Tabu9. Belisario Garcia de Jesus,Jose Elizondo(arr.:S.Prutsman):Cuatro Milpas ("Four Cornfields")10. Roberto Gomez Bolanos(ARR.R.Gallardo):Chavosuite11. Ariel Guzik(arr. Kronos Quartet):Plasmaht12. Chalino Sanchez(arr. O. Golijov):Nacho Verduzco13. Cafe Tacuba(arr. O. Golijov):12/1214. El Sinaloense (Dance Mix)Kronos QuartetRecorded Augst 2000 and August 2001 at Skywalker Sound,Nicasio,CA(except 1,13,14)Recorded January 2001 at O7Henry Studios,Burbank,CA(1,13,14)
2017年04月15日
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ホセ・ジェイムズの新作はディストリビューターのコメントによると、『「混乱の時代における愛の尊さ」をテーマにした、コンテンポラリーR&Bアルバム』とのこと。いままでは、ロバート・グラスパーとおなじ路線だった(と思う)が、今回はジャズからはほとんど離れている。前半は従来の路線に近く、後半はソウルっぽいという感じだろうか。最後のオリータ・アダムスとのデュエットではジャズのテイストを感じさせる。因みにオリータ・アダムスはwikiによると「ソウル、ジャズ、ゴスペルシンガー、ピアニスト」だそうだ。このナンバーでは、ゴスペル的な色が濃い。最もノリのいい曲は「Live Your Fantasy」だろうか。アップテンポで踊りたくなりそうだ。続く「Ladies Man」も同趣向でノリノリのナンバー。「You Know I Know」「Break Through」などは、口ずさめるような優しいメロディーだ。ここでは、ホセの歌手としての実力がいかんなく発揮されている。R&Rとの違いは、電子楽器をおかず的に有効に使ったところにあると思う。電子楽器が最も目立っているナンバーは、「Last Night」か。ちょっとコミカルなフレーズと、他のいろいろな効果音が楽しい。ただ、これらに気をとられると、ホセの歌手としての本質が分からなくなりそうだ。ヴォーカルとしては至極真っ当で、ヴォーカルに限れば、いままでで一番いい出来ではなかっただろうか。「Closer」でのバックできこえるラップの短いフレーズのミニマル的な使い方もなかなか面白い効果を出している。何回も聞いているとそのサウンド空間に身を浸しているのが心地良く、癖になりそうで、危険な音楽だ。多分従来のファンとは別な層のほうが受け入れられる感じがする。当ブログとしては、以前から全面的に共感していたわけではなく、惰性で聴いていた部分もあるが、今回のアルバムは今までで一番共感できる。どうも今までのアルバムもじっくりと聞いてみる必要がありそうだ。JOSE JAMES:Love in a Time of Madness(BLUENOTE B002604702)1. Always There2. What Good Is Love3. Let It Fall4. Last Night5. Remember Our Love6. Live Your Fantasy7. Ladies Man8. To Be With You9. You Know I Know10. Breakthrough11. Closer12. I'm YoursJose James(vo)
2017年04月13日
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ゴースト・イン・ザ・シェルの実写版を見た。ネットでの評価はあまり芳しくないようだが、それなりに楽しめた。攻殻機動隊についてはよく知らない。テレビは見ていないし、映画版も2,3年前にDVDでみただけだ。続編の「イノセンス」は映画館でみたが、あまりよく理解できなかった。今回初めてストーリがおぼろげながら理解できたような気がする。実写ならではの圧倒的な迫力と、おどろおどろしさがよく出ている。街の風景は随分と金がかかっているようで、それをみているだけでも楽しい。義体が出てくるシーンも全く違和感がない。脳を義体に組み込むシーンなど、一種の美しささえ感じられるほどで、街中のホログラム広告の描写といい、技術の進歩に驚く。ただ、裸の素子は肉襦袢を着ているみたいで、映画のムードをぶち壊している。また街中の描写が原作よりも中国色が強まっていて、気に入らない。まあ、制作会社に中国の会社が2社入っているので仕方がないのだろうが。。。キャストは充実している。主人公草薙素子役のスカーレット・ヨハンソンは、唯一無二の存在感がある。多分日本人でこの役をやれる女優はいないだろう。ただし、アクションは今一歩切れ味が欲しかった。荒巻課長役のタケシはなかなか評価が難しい。声が不明瞭で、表にあまり出てこない。もう少し重厚な役作りはできなかっただろうか。それに撃ち合いのシーンが、暴力団の撃ち合いみたいで、安っぽかった。クゼはちょっとキモい。字幕版での鑑賞だったが、素子の母親役の桃井かおりは英語を話しているのに、たけしだけが日本語を話しているのもどういう意図だろうか。バトー役のピール・アスベックは太目だが原作のイメージにかなり近い。音楽はクリント・マンセル。アニメ版の川井憲次の「謡」(うたい)も使われていている。やはり攻殻機動隊の音楽には欠かせないナンバーだ。この音楽を聞いた時、ブルガリアン・ヴォイスのハーモニーに似ているとは思っていたが、民謡歌手たちの合唱とは思わなかった。発声方法が似ているからだろうか。公式サイト
2017年04月11日
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ショックを受けていらっしゃる方もいるようで、下記のようなコメントが書かれていた。日本の配信サイトで一番ポイントをくれた HD-Music が終了するのは、とても残念です。出典:https://plaza.rakuten.co.jp/leppard/diary/201703310000/当ブログはハイレゾに目覚めたのが最近で、HD-Musicもセールをしていることから知ったサービスだった。ポイントも付くし、何よりもクラシックのハイレゾが安く購入できたのが有難かった。デッカのセールでカラヤンの蝶々夫人、ブリテンの戦争レクイエムなどを安価に購入出来た。特に「蝶々夫人」はBD付のCDの購入を考えていたので、とてもラッキーだった。2014年2月から2017年5月までという短い年月でしたが、個人的にはとてもいいサービスだったと思っている。短命に終わった原因はなんだったのだろうか。iTunesやmoraのような強力なプラットホームではないし、ストリーミング配信が台頭してきたことも悪い材料だったのかもしれない。ところで、HD-Musicはクラシックやジャズのレパートリーが充実しているのが何よりも嬉しかった。少しがっくりきていたが、次の日に嬉しいプレゼントのお知らせメールが来た。レコチョクで3500円までのハイレゾアルバム1枚をダウンロード可能なクーポンが配布されるというものだった。当ブログみたいな新参者に対しても頂けるなんて、何とも太っ腹だ。早速レコチョクのラインナップを見たが、クラシック、ジャズともレパートリーがかなり貧弱だ。その中で渡辺貞夫のアルバムが多数ラインナップされていたので、未購入の比較的新しいアルバムをダウンロードしようと思っている。ところで、HDTracksという世界最大のダウンロードサイトからの購入が何とかできないか検討している。ここは、日本のダウンロードサイトよりもかなり安価で、おまけに解説なども付いてくるので大変魅力的だ。ところが、日本ではダウンロードできない。ネットを調べるとプロキシがアメリカであれば購入できるらしいので、アメリカのプロキシを使って登録しようとしている。また、昨日、 イザベル・ファウストのヴァイオリン協奏曲全集を見ていて、バスケットが表示されていることに気が付いた。もしかしてと思って、ハルモニアムンディで検索すると、ヒットしたものは購入可能の様だった。どうも、ある特定のレーベルは日本でも購入可能なようだ。プロキシを変えて購入してまた元に戻すというのは、ちょっと面倒くさいので、とりあえず購入できるレーベルを探してそこに絞って購入してもいいかもしれない。この方法だと、おきて破りではないので、気分的にも楽だ。
2017年04月08日
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最近spotifyで聴いて、気に入ったアルバムを購入する機会が多くなった。このアルバムもその一つで、きっかけはミラバッシのアルバムを最近聴いていなかったことから見つけたもので、Claire Taïbというフランスの歌手とのデュオ。姓はなんと発音するのかわからない。ブックレットにはバイオグラフィーらしいものはなく、ネットで調べてみでも見つけることが出来なかった。写真からは30代半ばのようだ。歌はうまいが、なかなか辛口で悪くない。タイトルは「Songs for Tomorrow」という意味で、副題は「ベルナール・ディメに捧ぐ」とある。この作詞家の名前は初めてお目にかかったが、1931年フランス生まれで、1981年にパリで死去している。フランシス・レイなどと組んで多くのシャンソンも手掛けているそうだ。アズナブールの曲が多いが、Taïb(4,5,10)やミラバッシの作曲した曲(7)も含まれている。多分有名な曲も含まれているのだろうが、シャンソンに疎い当ブログとしては、どれもがいい歌に聞こえる。Taïbの作曲した「Le bel ornement」(鐘のオーナメント)はなかなかコケティッシュな味わいがある。10曲目の「Colere」(怒り)は題名の通り激しいパッションが伝わってくる。ミラバッシの「Ne t'en va pas deja」は「ハウルの動く城」に似たメロディーで、疾走する。アルバム中最もジャズっぽい曲だろう。もとも盛り上がるのはアズナブールの「Les Bateaux Sont Partis」でエンディングは感動的だ。全曲を通して、ミラバッシの的確で温かみのあるバッキングが光っている。雄弁ではあるが、歌を決して邪魔しないところはさすがだ。ジャズではないが、ジャズファンの方にもぜひお聴き頂きたい。Claire Taïbの映像は多数アップされているので、ご興味のある方は是非。歌がうまくて美人なので、日本でも人気が出そうな感じがする。Claire Taïb:Chansons Pour Demain: Hommage a Bernard Dimey(EPM MUSIQUE 5713279)1.Les mots a entendre2.La salle et la terrasse3.La mer a boire4.Les diables sont partis5.Le bel ornement6.Si tu me payes un verre7.Ne t'en va pas deja8.Les matins qui vont suivre9.L'amour et la guerre10.Colere11.J'aimerais tant savoir12.La planete ou mourir13.L'enfant maquille14.Les bateaux sont partis15.De t'avoir aime16.SyracuseClaire Taïb(vo)Giovanni Mirabassi(p)
2017年04月05日
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御喜美江の新譜が出た。小品集以来5年ぶりだという。きっかけは、アコーディオン奏者のヴィヴィアンヌ・シャッソの音源をspotifyでチェックしていて、御喜美江の演奏を聴いていなかったことを思い出したからだ。spotifyで検索したら、このアルバムが出ていたことを知って早速購入。もう一つバッハが出ていたが、これはリマスター盤で危うく買いそうになってしまった。今回はバッハの平均律からピックアップしたもので、この曲に取り組んだ時の心境を御喜自身がブックレットに書いていた。それによると、平均律を弾こうと思い立ってから録音する前でに5年もかかったそうだ、何度も挑戦してうまくいかなかったが、これがお別れと思って全曲を弾いた数日後に、もう一度弾いてみたら今まで見えなかった風景が見えてきたとのこと。これほど長い年月を費やした原因は「濃度」だという。数限りない沢山の美しさ、驚き魔力、冒険が隠されていて、そのために弾けば弾くほど新しい発見が絶えなかったという。その時になって初めて全景が見えるようになったのだろうが、全景が見えるためには五年という歳月が必要だったのだろう。ブックレットにはこの曲はバッハの知らないピアノで演奏されることが多いので、アコーディオンで弾かれてもおかしくないということがHorst A.Scholz氏により書かれているが、確かにその通りだと思う。まあ、バッハは何の楽器で弾かれようが音楽が変わってしまうことはないのは誰しもが思うことだろう。どの曲も温かみがあり、流麗な表現で気持ちよく聴くことが出来る。テンポ、ダイナミックスとも申し分ない。ピアノやチェンバロでないため、かえって気楽に聞けるというのもいい点だ。まじめな音楽なのだがしゃちほこばった音楽ではなく、何よりもとてもさわやかだ。ピアノやチェンバロで聞くよりは、数段とっつきやすいので、最初にこの曲を聴くのには適しているだろう。最後のロ短調のフーガでは曲が終わった後に2分ほどの静寂が記録されている。これはトーンマイスターのハンス・キップァー氏の希望によるものだという。演奏が終わった後の余韻を楽しむのも一興かと思う。ただし、ボリュームを上げると教会の外の音もかすかに聞こえるので、あまりお奨めしない。当ブログはCD層を24bit 96kHzにアップコンバートした音しか聴いていないが、録音は素晴らしくいい。ジャケ写にメーカーと型番が写っていたので調べて見たら、400万はくだらないとのこと。名門メーカーの製品だが、高いのにびっくりした。まあ、手作りだろうから、それくらいの値段でもおかしくないかもしれないが、組み立て工数がかかるのだろうか。ところで、御喜はジャケ写やブックレットの写真を見ると少し老けたように感じる。1956年生まれなので年の割には若く見えるが、もう少し若いと思っていたので、軽いショックを覚えた。御喜美江:J.S.バッハ (1685-1750) : 平均律クラヴィーア曲集 第1巻、第2巻より(BISBIS-221701-02. 前奏曲とフーガ ハ長調 BWV846 (第1巻 第1番) 03-04. 前奏曲とフーガ ハ短調 BWV847 (第1巻 第2番) 05-06. 前奏曲とフーガ 変ロ短調 BWV891 (第2巻 第22番) 07-08. 前奏曲とフーガ ニ長調 BWV850 (第1巻 第5番) 09-10. 前奏曲とフーガ ヘ長調 BWV880 (第2巻 第11番) 11-12. 前奏曲とフーガ 変ロ短調 BWV867 (第1巻 第22番) 13-14. 前奏曲とフーガ 嬰ヘ長調 BWV858 (第1巻 第13番)15-16. 前奏曲とフーガ 嬰ヘ短調 BWV883 (第2巻 第14番) 17-18. 前奏曲とフーガ ト長調 BWV884 (第2巻 第15番) 19-20. 前奏曲とフーガ ト短調 BWV861 (第1巻 第16番) 21-22. 前奏曲とフーガ ニ長調 BWV874 (第2巻 第5番) 23-24. 前奏曲とフーガ ロ短調 BWV869 (第1巻 第24番) 御喜美江 (アコーディオン: Giovanni Gola / Hohner 1972)2016年10月 / レンナ教会 (スウェーデン)
2017年04月01日
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