全296件 (296件中 151-200件目)
恋ぷに第8話。先週ほどお粗末な演出ではなかったけど、結局なんだかよく分からない話でした。終盤に来ても、謎が解けているという実感がまったくない。先週の博物館のシーンや、足から鱗が落ちていくシーンや、今週の会議室でのシーンは、物語にとって重要な場面になるはずだけど、あまりにも説得力に乏しいし、ほとんど印象にすら残らないし、ミッシングリンクが繋がっていく満足感はない。最後の3兄弟の会話も、まったく要領を得ない。演出が悪いような気もするし、脚本自体に問題がある気もするけど、全体的にぼやっとした物語になっています。前半のような輝きは戻ってこないし、ファンタジックな驚きや楽しさも見られないし、社会派としてのメッセージにも手応えを感じない。残念だけど、最終回への期待感もかなり薄まりました。
2021.06.03
恋ぷに第7話。なんだか演出のクオリティがだいぶ低かった。無理やり継ぎはぎして、どうにか埋め合わせたような感じ。カメラの動きが悪いし、キラキラした光をとらえていないし、今までのような美しい画面も見られない。車内の映像は合成っぽかったし、「昔から変わってない」という海辺の博物館は、ぜんぜん古そうには見えなかった。◇脚本の出来が遅くて、撮影が突貫工事になったのかしら。話の流れもやや唐突だったし、回想シーンが多すぎるのも気になりました。例によって、視聴率を気にした上層部が、制作に横槍を入れて内容を歪めてる可能性もある。だとしたら、またしても同じパターンの繰り返しですね。こうなると、終盤はどんどん悪くなっていきます。日テレがいちばん悪いときのパターン。いずれにせよ、第7話は捨て回でした。
2021.05.27
恋ぷに。第6話。今週は、半分ちかくが、まるでリゾートホテルみたいな、倫太郎の自宅のシーンで占められていました。とくにキスに至るまでのツーショットの場面は、回想もふくめてかなりたっぷり時間をかけていた。美しいシーンだったので、いくらでも長く見ていられたけど、物語的には何の意味があったのかよく分からない(笑)。◇全般的に、第6話は、あまり大きな進展がありませんでした。3兄弟がそれぞれ何を目指しているのか、まだ見えない。誰が本当の意味で海音の味方なのかも、まだ見えない。海音と倫太郎は、ほぼ結ばれたけれど、かつての仁子と南原教授がそうだったように、海中展望タワーの建設については喰い違ったままです。いまだに錯綜した複雑な物語になっている。そうこうしているうちに、海音は、ウツボと意思が交わせなくなりました。だんだん人間になりつつある?倫太郎と何度もキスしたから?美しい建物、美しい音楽、美しいツーショット。
2021.05.22
テレ朝「桜の塔」の第1部が終了。まあ、なんというか、椎名桔平がぜんぶ持ってった感じです…。◇当初、玉木宏は「白い巨塔」的な側面を見せてたけど、これはむしろ「竜の道」的な復讐劇であり、椎名桔平こそが「銭ゲバ」的な悪党にちがいない。…ってのが、わたしの予想でした。その予想は、まあ当たったといえば当たったのだけど、いくらなんでも当たるタイミングが早すぎるし、むしろ、今後は、裏の裏をかくようなどんでん返しが待っている、…という可能性のほうが強まってきた。◇実際、玉木宏が、「白い巨塔」的な悪役ぶりを見せていたのは、せいぜい最初の2話ぐらいまでで、いまや椎名桔平にやられっぱなしのヘタレですから、どこにもダークヒーローの片鱗は見られません。こうなると、かえって悲劇的な結末は予想しにくく、むしろ最後は弱々しい主人公が報われる形で、ハッピーエンドに終わる可能性のほうが高まってくる。同時に、いまのところ極悪人のように見える椎名桔平が、本当の意味で悪の権化なのかどうかは疑わしい。◇一方、恋愛パートのほうはちょっと先が読めません。第1部のラストで、玉木宏は仲里依紗と結婚してしまいました。そして第2部は、その5年後から始まります。この展開はちょっと意外。広末涼子の立ち位置はどうなるの?わたしとしては、玉木宏&広末涼子の、つかずはなれずの思わせぶりな関係が、最後の最後までずっと続くと思っていたし、それがドラマを牽引する力だと思っていたのだけど、まさか、玉木宏と仲里依紗のハッピーエンドなんてある?まして、岡田健史と広末でハッピーエンドなんてある?ここらへんについては、まだまだ関係が動いていくものと予想します。◇ちなみに本作は、テレ朝の刑事ドラマとしては、なかなかの新機軸になってるし、物語の構成もよく出来ていると思うけれど、なぜか…そこはかとなく…どこかしら「仮面ライダー」的な漫画っぽさが漂ってしまうのは、よくもわるくも武藤将吾の個性なんだろうねえ。その部分さえ小慣れてくれば、きっと手応えのある大人向けのドラマになると思うのだけど。
2021.05.19
テレ東の冷ダンが最終回。床下の死臭について考察しますね。ちょっとグロい話なので、苦手な人は控えてください。(画像が多めで重いかも)じつはお肉が大好物だった主人公。すでに2人食べました。※3人目以降も冷凍庫に戻して食べる予定。その事実を知っていたクジャク先生。はたして美味しいのかしら?奏でも亮でもどっちでもいいの。食べてしまえば一緒だから。右から1本、2本、3本、4本…冷凍庫も花瓶も足りないなー。青い葡萄の文鎮がステキね!ヤバい秘密は火にくべて燃やしましょう。もったいないなー。以上です。
2021.05.18
恋ぷに。あいかわらず爆走中。演出は3人目の伊藤彰記でしたが、まったくクオリティが落ちる気配なし。ほとんど欠点が見当たりません。ここまで来て、捨て回がない。いままで色んなドラマを見てきたけれど、こんなことは初めてのような気がする。◇第5話のハイライトは、倫太郎が母の指輪と再会したときの、綾野剛の迫真の演技。ファンタジーがファンタジーではなくなる瞬間でした。このとき、菅野祐悟の音楽がやけに扇情的になり、わたしはふいに、17年前のNHK「ちょっと待って神様」の、小六禮次郎の音楽を思い出しました…。海音は、海からの使者であるのみならず、倫太郎の母の生まれ変わりの女性ではないかと思えてくる。つまり、これは、人魚と人間の禁断の恋の物語であるだけでなく、母を恋うる息子の物語であるようにも見えてくるのです。◇脚本は本当によく出来ている。恋愛パート、蓮田家パート、開発パートが、たくみにシンクロしつつ、絶妙な速度とバランスで進行しています。第5話は、ここまで展開のなかで、いろんなことが明らかになってくる重要な回でした。倫太郎を失脚させた光太郎と、いがみあう兄弟の様子を見つめる父親。その家族の姿を見ると、だれひとり悪人ではないように思えてきます。しかし、そうかと思うと、いちばん無邪気なはずの末っ子の榮太郎の企みが、もっとも怪しく見えてくるのですね。鴨居研究室は、蓮田兄弟の確執に振り回されているけれど、その一員である椎木は、やはり裏で榮太郎と繋がっているようで、彼は、海音の正体にも疑問を抱き、その経歴偽装をマスコミに売ったのかもしれません。錯綜した関係性が徐々に浮かび上がってくる。◇そして、2年前の鴨居教授のデータ改ざん問題。これは、いうまでもなく、16年前の「不機嫌なジーン」の南原教授の再現です。ちょっとエロすぎない??
2021.05.13
冷ダン第3話。元刑事の探偵とか、経歴偽証の半グレの話になったので、サイコホラーというよりも、奇天烈サスペンスの可能性が出てきた感じ。でも、やっぱり恐怖のクリームシチュー…!それいらなーい!温め直さなくていいし!由貴ちゃん「じゃ聞かない。二人で黙ってお茶しましょ」(*T▽T*)
2021.04.26
すっかりハードボイルド路線が板についた玉木宏。汚れ役なのに美しいし、色気があってカッコいい。今回はテレ朝ってことで、若干、内容的にゆるいところもありますが、いつものテレ朝のなんちゃって刑事ドラマにくらべれば、むしろ緊張感があるほうかもしれません。◇脚本の武藤将吾は、どうやら「白い巨塔」をモデルにして、警察署内の出世闘争を描いていくつもりみたい。今回の登場人物たちを、かりに「白い巨塔」に置き換えると、玉木宏 :財前広末涼子:里見椎名桔平:東教授仲里依紗:東佐枝子少路勇介:菊川高岡早紀:花森ケイ子…ってことになります。◇ただし、このドラマを、たんなる「白い巨塔」の警察版だと考えるのは、それはそれでオッチョコチョイな早合点というもの。そういう人ほど、すぐに「パクリだ!」と騒ぎ立てます…なぜなら、この主人公の生い立ちは、あきらかに去年のフジの「竜の道」を意識してますから、これは、むしろ父の無念を晴らすための復讐の物語なのです。◇タイトルに「塔」の字があるからといって、中身まで「白い巨塔」と同じだと思うのは短絡的。これは釣りにすぎません。ちょうど、TBSの「ボス恋」が、映画「プラダを着た悪魔」の設定を借りながらも、しだいに差異化を図っていったように、このドラマも、名作「白い巨塔」の設定を入り口にしながら、まもなく独自路線へ入っていくに違いありません。◇もっとも重要なことは、「白い巨塔」の里見にあたる人物が、今回は、男性じゃなくて女性だということ。そして、もうひとつ重要なことは、警察組織のなかに、父を死なせた巨悪が存在するってことです。いまのところ、玉木宏と広末涼子は対立してるように見えますが、まもなく巨悪の存在を知って共闘していくはずなのです。そこが、財前と里見の関係とは大きく異なるところです。ちにみに、今回の椎名桔平のキャラクターは、日テレの「銭ゲバ」を想起させるところもある。◇◇…とはいえ、今回の主人公も、財前と同じダークヒーローには違いないので、やっぱりハッピーエンドは期待できませんよね。おそらくは「竜の道」のときと同じように、またしても壮絶な悲劇に終わるんじゃないかと予想します。それと同時に、幼馴染みでもあり、ライバルでもあり、やがて同志になっていくであろう玉木宏と広末涼子が、どんな男女の物語を繰り広げるかも見どころです。◇第1話では、玉木宏が背負い投げを喰らわして、広末涼子が受け身を取るシーンがありましたが、第2話では、広末涼子が、玉木宏に銃口を向けました。二人とも色気があってカッコよくてドキドキする。今後も、そんな男女バトルに期待します。でも、きっと最期は、広末の腕に抱かれながら死んでいくんじゃないかな…。
2021.04.23
グロいよぉぉこわいよぉぉでも、映像はすこぶる美しい。ソーセージどうなったのぉぉ?◇占い師のクジャク先生はミステリー作家でしたね。
2021.04.18
私の夫は冷凍庫に眠っている。原作は読んでませんが、第1話を見直してみると、いろいろな謎があります。◇観てない人にはネタバレだけど、気になったことを書き出してみます。・主人公は冷たいものが好き。冷たい水で手を洗う場面からはじまる。アイスフリーザーの冷気を顔に当てて恍惚となる。殺人のあとで冷たい夜風に当たりながら、「Dancing In Solitude」という曲で恍惚と踊る。「寂しさは人を綺麗にする」というクジャク先生。男性との接触を嫌う。極度の潔癖症?・主人公の過去昔から唸るような声が聞こえて目を覚ます。ずっと悪い子だった。母親とは別居。セーラー服を着た学生時代に祖父の家に転居。祖父が駄菓子屋から譲り受けたアイスフリーザー。亮が来るまではあの家に一人暮らし?・謎の婚約者亮が家に転がり込んだのは半年前。亮は夜間清掃の派遣登録員。生まれて初めて安らぎを感じた異性。主人公は性交渉を嫌うのに婚約。結婚前に、古い家具をネットで売っている。・殺害と復活死んだ亮と生き返った亮が同時に存在。何度殺しても生き返る?生き返った亮にも首を絞めた傷。ここ一週間無断欠勤、職場からは音信不通になる。生き返った亮は悪魔(デーモン)ではなく天使(ミカエル)?・サイコな環境。母親はメンタルクリニックの先生。向かいの家に住むクジャク先生は占い師。母親は亮のことを内偵。クジャク先生は原稿を書いている。クジャク先生はプッチーニの「私のお父さん」が好き。・カニバリズム殺した亮を生き返った亮に食べさせる?クジャク先生の家にカニバリズムの本。…それにしても、放送前に有料で全話配信するのはやめたほうがいいと思う。
2021.04.13
何、このドラマ。すごい。気持ち悪いけど…めちゃくちゃ面白い。今まで見たことのないタイプのドラマです。最近のテレ東がだいぶ攻めてるのは感じてたけど、それにしても予想を超えてきた内容。サスペンスなのか、ホラーなのか…強いていえば「ツインピークス」みたいな感じ?理解不能な怖さ。原作も、脚本も、演出も、知らないスタッフの名前ばかり並んでいて、映像はわりとNHKのテイストに近いけど、演出のスタイルは、いままでのどのドラマとも違う。なにを見せられてるのか全然わからない。本仮屋ユイカの顔も、浅田美代子の顔も、まるで別人みたい。いい意味で素人みたいなリアルさが出てます。ほんとに何だろう?このドラマ…初回を見た限りでは、今季ベストの予感大です…。 ひさしぶりにツインピークスの音楽が聴きたくなった
2021.04.12
TVerで再視聴。ハイスペックイケメンが貧乏女子に恋をする逆ツンデレドラマ。まるで「トム&ジェリー」みたいな世界。映像も綺麗だったけど、なにより池永正二の音楽がお洒落でカッコよかった。
2021.04.01
フジテレビの「朝顔」が終了。卒園式の「マイウェイ」には、さすがに総ツッコミが入ってましたね。いくらなんでも渋すぎる(笑)。でも、つぐみちゃんは、あんなに小さいのに、まったく演技とは思えない調子で、けっこう長い台詞も喋るのが不思議です。◇このドラマの魅力のひとつは、主人公たちの生活がものすごく庶民的なこと。今回も、「どうしてホテルのクッキーはこんなに美味しいの?」みたいな会話がありましたが、この感覚にちょっと懐かしささえ覚えてしまう。そして、近年のテレビドラマには珍しいくらい、主人公の家屋が周囲にくらべて際立って古いです(笑)。◇◇もうひとつ、このドラマの最大の特徴は、周りの人たちが底抜けにノーテンキなのに、主人公の父と娘が、いつもどこか沈んでいることです。口では言わずとも、どこかでずっと震災の記憶を抱え続けている。そのことの重さが、この作品の稀有な要素になってます。◇今回の第2シリーズで、いちばん印象的だったのは、先週の第18話でした。無実であるにもかかわらず、松本教授が「私が殺した」と自首してきた回。彼女はこう言いました。>動物の自殺は、人間ほど多くない。>人間は、些細なことで、>幸福な記憶を思い出しもするけど、>不幸な記憶を思い出しもするから。もし、記憶なんてものを失うことができれば、人間は、こんなに自殺などせずに済むのですよね。◇これと対比されるのが、アルツハイマーで記憶を失くしていく父の物語。彼が失っていくのは、おそらく大脳皮質の「人間的」な部分です。ほかの動物には備わっていない機能であり、たぶん生存そのものには支障がない。彼は、記憶を失うことで、幸福な経験も忘れていくけれど、同時に不幸な経験も忘れていくはずです。家族や共同体の記憶を消し去っていく。それは、人間としては悲しいことのように見えるけど、動物として見れば、ごく普通のことなのかもしれない。「記憶の喪失」というのは、人間レベルで見れば "病気" かもしれないけれど、動物レベルで見れば、むしろ "健康" なのかもしれない。これって、けっこう哲学的な問いです。案外、AI時代になったら、人間は記憶を必要としなくなるかもしれない。動物として生きるのには邪魔ですから。◇◇ちなみに、わたしなら、痴呆老人のために結婚式を挙げたりしません。式の翌日に、また「式はいつやるんだ?」とか言われそうだし。それに合わせてたらキリがないよね。でも、写真を撮って目の前に置いておけば、しばらくは忘れないのかなあ…?覚えてるうちに話をさせて録音しておくのも、ひとつの手なのかもしれませんね。 ↓折坂悠太も庶民派です。
2021.03.23
TBSの「天国と地獄」が終了しました。全体的な感想としては、ズコっっ、、って感じ。そんなに熱心に見てなかったので、細かいところまでは確認できませんが、ほんとに、これで伏線が回収されたの?最終回だけでも、分からないことだらけです…。◇まずもって、日高がいったい何を背負おうとしてたのか分からない。最後は真相が明かされて、望月は警察学校へ異動になりましたが、それを回避するために死刑になる必要ってあったの?自分が死刑になってまで、兄の罪を背負おうとしたり、望月の罪まで背負おうとしたりしてたけど、そんな奇特なほどお人好しで自滅的な人が、よくもまあ会社の経営なんてしてましたね。感心しますよ。っていうか、社員さんが気の毒かも。◇最終回は、なにやら日高と望月のラブストーリーっぽくなって、陸はいさぎよく「身を引いた」みたいになってたけど、え?日高ってゲイじゃないの??つーか、そもそも陸は、なぜ望月と同居していたのでしょうか?望月の恋人だったっけ? ただの居候なのでは?◇◇◇ラストシーン。満月の歩道橋の上で、奄美大島の丸い石を手渡すと、日高と望月はふたたび入れ替わりました。でも、すぐに戻って石を返せば、また簡単に元に戻ると思うよ。満月まだ出てるし。もう階段落ちをやる必要もないのだし、ちょいちょい入れ替わりができると思う。便利な世の中です。サントラがアマゾンで聴けます。
2021.03.22
日本アカデミー賞。さして権威ある賞とは思われてないし、わたしもさほど信用してないけど(笑)、今年は「ミッドナイトスワン」が作品賞だったりして、ちょっと意外な印象も与えているようです。◇まあ、審査うんぬんの話はともかく、わたしとしては、長澤まさみのスピーチを聞いていて、ちょっと感じるものがありました。名目上は「MOTHER マザー」での受賞だったのですけど、彼女のスピーチそのものには、コロナ禍での映画制作全般についての思いがあふれていました。もしかすると、竹内結子や三浦春馬を失くした悔しさも、ちょっと頭をよぎっていたのかもしれません。◇それと同時に、わたしは、ついつい、現在の綾瀬はるかと長澤まさみの活躍を見比べてしまう。綾瀬はるかも、長澤まさみも、もともとの性格がクソ真面目なうえに、アスリートみたいにフィジカルな印象も強いので、べつに戦闘してるわけじゃないんだけど、その姿が、文字どおり”全力を尽くしてる”ように見えてしまうんですね。年齢的には、綾瀬のほうが2つ年上で、「海街diary」のときにも、綾瀬が姉役で、長澤が妹役だったのだけど、2人の主要なキャリアは、2004年の「セカチュー」のときに、ほとんど同時にはじまった。東宝の一番手だった長澤まさみは映画版に出演して、綾瀬はるかのほうは、まだホリプロ二番手みたいなグラビアタレントでしたが、一躍、ドラマ版のほうに抜擢されたのでした。◇「セカチュー」の映画版は、坂元裕二と行定勲の実力者コンビで成功したのだけど、その後の綾瀬と長澤の道のりの違いを思うと、むしろドラマ版の成功が大きな意味をもちました。当時、森下佳子はまだ新進の脚本家で、平川雄一朗はまだ若手の演出家だったのだけど、綾瀬はるかにとっては、このTBSタッグとの活動が、現在の「天国と地獄」にまでずっと続くものになるのです。綾瀬がテレビドラマ界の女王として君臨している現状は、このTBSタッグでの活動があるからに他なりません。もしも、2004年に綾瀬のほうが映画版に出て、長澤のほうがテレビドラマ版に出ていたら、その後のキャリアも、まったく逆になってたかもしれない。◇長澤まさみは、東宝という大映画会社の看板ってこともあり、いまや上白石姉妹や浜辺美波の先輩ってこともあって、とくにここ数年は、自分自身に大きな責任を背負わせていたように見えます。場合によっては、プロデューサー的な役回りまで果たしてたように見える。たぶん、綾瀬はるかがテレビで成功すればするほど、長澤まさみはいっそう映画に向かうんだろうと思う。もしかしたら、それと同じことは、一世代下の"すずもね"にも当てはまる気がして、萌音がテレビで成功すればするほど、広瀬はいっそう映画に向かっていくのかなぁ、と思わせます。もちろん、今後、長澤まさみがテレビで活躍する余地だってあるし、逆に、綾瀬はるかが映画で実績を残す可能性もあるんだけど、とりあえず一昨日の授賞式を見てたら、2人の活動はそれぞれのピークを迎えましたよね… (T_T)みたいな感慨に浸らされたのでした。ってことで、今夜は「天国と地獄」の最終回です。 ↓プライムビデオでも見れます
2021.03.21
いちおう最終回を前にして、どんでん返しの可能性についても考えてみたいと思います。◇なぜ十和田は自殺したのか?かりに朔也が実行犯だったとしても、なぜあそこまで猟奇的な殺し方をするのか?「あな番」や「恐怖新聞」みたいに、犯罪や不幸を数珠つなぎに強制する装置として、あの空集合のマンガが機能している…なんてパターンも考えられないわけではない。「仁」のときに、バニシングツインの謎を放り投げて終えたように、「天国と地獄」でも、空集合の謎を放り投げたまま終わる可能性はあります。その場合、ほんとうの黒幕は闇の中…って感じでしょうか。◇一方で、「サイコな2人」というタイトルが、かりに "サイコパスな二人"という意味ならば、「殺人鬼としての特性を二人で分け合った」ということになります。その場合は、やっぱり日高(もしくは望月?)が実行犯じゃなきゃいけないし、彼が送ってきた動画もフェイクじゃなくて本物ってことになるし、ボストンの連続殺人も彼の仕業ってことになります。かたや、彩子という名前が「サイコ」とも読めるとか、さらには、co.earthの社名が「陸とともに」とも読めるとか、そこらへんに仕掛けが隠れてる感じもないではない。ただ、わたしとしては、たんに "サイコロジカルに結びついた二人"という意味で、あくまで「日高は手を汚してない」という解釈が成り立つと思いますけど。◇今回のドラマは、過去の森下作品にくらべてイロモノ的な要素が強いし、最後の最後に、かなり大胆などんでん返しをやらないともかぎらない。しかし、そうはいっても、すでに入れ替わりのSFになってる時点で、もはや「ナンデモアリ」な設定なわけだし、あまりにも荒唐無稽などんでん返しというのは、サスペンスとしての側面を台無しにしかねないし、かえって視聴者の失笑を買って終わる可能性もあります。つまり、どんでん返しってのも程度問題であって、あまりにもバカバカしいどんでん返しは禁じ手なのですよね。そこらへんの兼ね合いで、許容範囲内のどんでん返しがありうるか。それによって最終話の内容が変わってくるのかなあ、と思う。
2021.03.16
やっぱり、完全に「白夜行」の図式ですよね。ただし、いまだに「北村一輝=武田鉄矢」と思ってる人も多いようです。それは、たぶん物語の構図を見誤っている。立ち位置としては、あきらかに「綾瀬はるか=武田鉄矢」です。(なぜなら「日高&朔也」こそが「雪穂&亮司」に相当するからです)◇とはいえ、2人の罪を知った刑事の演技としては、さすがの綾瀬はるかも、武田鉄矢の凄みにまでは及びませんでした。これは、脚本自体の弱さに起因すると思うのですが、そもそも東朔也の罪には、亮司ほどの切実さが感じられないのですよね。亮司は、あくまで雪穂を守るために罪を背負ったのですが、東朔也の場合は、私怨と、余命わずかになった自暴自棄から、かなり衝動的に犯罪に走っているにすぎない。しかも、あろうことか、その罪を、弟の日高にまで背負わせようとしています。亮司と雪穂のあいだには、純粋すぎるほどの「愛」があったのですけど、朔也と日高のあいだには、なんらかの「兄弟愛」はあるものの、複雑な「妬み」や「逆恨み」の感情も混じっている。その感情は、たしかにリアルといえばリアルであって、理解できる部分もあるのですけど、亮司ほど痛切なものではなく、共感もしにくいのです。武田鉄矢の演技には、亮司に対する強い情愛と共感が宿っていました。しかし、綾瀬はるかは、東朔也の罪には共感しにくいだろうと思います。むしろ、共感するとすれば、兄の罪をすこしでも引き受けようとした日高のほうにでしょうが、彼は、結果的にはたいした罪を犯していませんし、亮司ほど悲劇的な運命にはありません。そこが「白夜行」の物語にくらべて、ちょっと弱い。◇◇さて、物語の図式はほぼ明らかになりました。最終回には、いったい何が残ってるんでしょうか?おおよそ決着はついた気がするんですけど(笑)。せいぜい残っている話があるとすれば、奄美大島の秘密ぐらいかなあ。でも、奄美に上陸する前に、兄弟は船上で確保されてしまいましたし、もう兄のほうは死んでしまったかもしれない。いったい東朔也は、奄美に来て何をしようとしたのか?奄美で兄弟が知るべきこととは何だったのか?日高と望月を入れ替わらせた奄美の伝説とは何だったのか?…もしかすると、望月やセク原が、それを後日談のような形で辿っていくのかもしれませんが、森下佳子のいままでのパターンからすると、そこらへんを放り投げたまま終わらせる可能性もあります…(笑)。
2021.03.15
ともに罪を背負ってきた日高と朔也。彼らの関係は、「白夜行」でいうならば、雪穂と亮司の関係に似ています。そして、2人の罪を知る望月の立場は、「白夜行」でいえば、笹垣(武田鉄矢)の立場と同じです。これまでは、雪穂=望月、亮司=日高だと解釈していましたが、それは、おそらく違うのですよね。◇亮司は雪穂に、「あなたは俺の太陽だった」と言いました。日高と朔也こそが、文字どおり「太陽」と「新月」の関係にあり、彼らのあいだに立つ望月は、文字どおり「満月」の象徴なのですよね。◇当初、《天国》と《地獄》というのは、《望月》と《日高》の関係を意味している、と思われました。つまり、善と悪の対比を意味してるように見えた。しかし、そうじゃない。おそらく天国と地獄というのは、異なる運命をたどった《日高》と《朔也》の関係を意味している。つまり、それは幸福と不幸の対比なのです。◇「白夜行」の最終話、雪穂と亮司は、歩道橋のもとで別れました。そして「天国と地獄」の物語は、日高と朔也が歩道橋で別れたところから始まっている。おそらく森下佳子は、2人の運命に何らかの決着をつけようとしています。
2021.03.14
たぶんコロナの影響だと思うけど、今季は橋部敦子のドラマが2作放送されてるので、ついつい見比べています。テレ朝の「モコミ」のほうは、いわゆる《僕シリーズ》の女性版って感じで、正直、今までの焼き直しという印象もあります。一方、フジの「知ってるワイフ」のほうは、韓国ドラマのリメイクということもあり、従来の橋部作品とはだいぶ趣きがちがうし、物語のダイナミズムがかなり激しい。◇しかし、2つのドラマには共通性もあって、どちらも主婦に対して厳しいのですよね。「モコミ」でいえば母親役の富田靖子。「ワイフ」でいえばモンスター化した広瀬アリスや瀧本美織。彼女たちは、つねに夫や家族に苛立っていて、自分の価値観を周囲に押しつけては責め立てます。彼女たちは、ほんとうは被害者でもあるんだけど、それにもまして加害者としての面があぶり出されている。おそらく、女性の視聴者の多くは、つい主婦の側に同調してしまうので、夫や家族のほうに「非」を見ようとするけど、橋部敦子は、そのような一方的な見方を許さないのです。◇橋部敦子の脚本は、主婦だけでなく、どの登場人物に対しても厳しいですね。一方を悪者にする描き方ではなく、どちらが間違っているとも言いにくい描き方をしている。それは、視聴者にとっては、ちょっとフラストレーションのたまる描き方だし、もっと単純な善悪の図式を望む視聴者は、このフラストレーションを脚本家のせいにしたり、場合によっては韓国社会のせいにしたりしてるようです。しかし、単純でないところにこそリアルがあるわけで、それは脚本家のせいでも韓国社会のせいでもありません。それが現実です。2つのドラマはSFファンタジーなので、最終的にはSF的な解決が与えられるのかもしれませんが、それでもなお、物語で示された困難なリアリティは、視聴者の実際の生活に投げ返されることになります。そういう厳しさがある。◇◇ところで、今季は、主演女優賞の最有力候補として、池脇千鶴と広瀬アリスの名前が挙がるはずです。わたしとしては、綾瀬はるかも素晴らしいと思うのですが、彼女の場合は、もう十分に評価が確立してますから、やはり今季は池脇千鶴か広瀬アリスに絞られるでしょう。わたし自身は、「知ってるワイフ」の広瀬アリスの演技にかなり驚いてて、今回は大倉忠義とのW主演賞もありえるんじゃないかと思ってる。◇正直、わたしは、これまで広瀬アリスに対して、「コメディ女優」のレッテルを張っていました。パワフルで面白い役には向いてるけれど、ストレートな恋愛ドラマには不向きだと思っていた。でも、その思い込みは、みごとに覆されました。もし、わたしが、このドラマの制作者だったとしても、まず大倉忠義を主演にするなど思いつかなかったろうし、まして広瀬アリスをヒロインにしようとは考えなかったと思う。かりに候補に挙げられたとしても、わたしなら、たぶん広瀬アリスと瀧本美織の役を逆にしたはずだし、大倉忠義と松下洸平の役も逆にしてしまったかもしれない。そのくらい、大倉忠義と広瀬アリスの主演という発想は、かなり奇抜で冒険的なものだったと思います。でも、蓋を開けてみれば、この配役は大当たりでした。このキャスティングを考えた人はお見事です。◇わたしは朝ドラの「わろてんか」のころから、広瀬アリスの演技を目にするようになりましたが、考えてみると、彼女はどんな役でも魅力的に演じていて、まったくハズレがないです。思っていた以上に、演技のキャパが広いのかもしれないし、もしくは作品の選び方が上手なのかもしれません。↓韓国版
2021.03.12
NHK-Eテレのドラマ「ハルカの光」。脚本は矢島弘一。黒島結菜も好きだし、古舘寛治も好きだし、映像も綺麗なので、なんとなく見ていました。第4話では、古舘寛治の弾き語りも聴けてよかったです。◇ただ、このドラマでやや物足りないのは、肝心の名作照明についての紹介が、いかにも借りもの的な通りいっぺんの説明に終始して、物語のなかへ十分に消化しきれていないこと。そこだけは、妙に「Eテレ」的なのです。毎回、ひとつの名作照明を取り上げるのですが、その説明を聞いた後でも、その照明の個性や魅力は、いまひとつ伝わってこない。上っ面の知識を伝えるだけで終わっている。◇わたしが思うに、ほんとうに掘り下げるべきなのは、照明の「光」についての認識ではなく、むしろ「陰翳」についての認識なのだろうと思う。照明器具の個性や魅力は、その周囲に創り出される陰翳によるものだからです。そもそも、どんな照明器具であったとしても、光源そのものには、さほど大差はないのです。同じ発電所から引いた電気エネルギーを、ただ光エネルギーに変換してるだけであって、せいぜい、蛍光灯か白熱球かLEDかの違いでしかない。むしろ重要なのは、その照明器具が、いかに光源を覆い遮って、その周囲に独特の陰翳を作り出すか、ということなのです。◇陰翳についての認識を、物語のなかで深めていかなければ、その照明の個性や魅力も十分には伝わらない。ひとりの人生の陰翳に、その照明の陰翳がいかに寄り添っていくのか。そのことこそが、ほんとうは大事なのだと思います。このドラマのもうひとつのテーマは、東日本大震災からの復興なので、物語の焦点が最終的に「光」へ収斂するのは、あらかじめ必然なのでしょうが、かりにそうだとしても、まずは陰翳についての認識が深まってこそ、それぞれの光のもつ意味が見えてくるのだろうと思います。◇もし次回作があるのなら、そのことを考慮した物語を目指してもらいたい。そのためには、Eテレの教科書的な説明だけでは、おそらく不十分だろう、と思います。
2021.03.02
天国と地獄 〜サイコな2人〜。第7話まで来て、奄美のシヤカナローの花と丸い石、被害者の名前の数字と抜けた歯の完全収集。まだ未回収の謎は散らばってる。森下佳子の物語の構造も、まだはっきりとは見えてきませんが、おそらく、今作は、なんらかの意味で、「白夜行」と「JIN−仁−」の変奏なのだと思う。◇まず「JIN−仁−」には、《階段落ち》と《双子》の要素がありました。満月の夜に階段から落ちると、現代の南方仁は、幕末の南方仁に入れ替わる。そして脳内から摘出された胎児型腫瘍は、いわゆるバニシングツインであり、すなわち「生まれなかった双子」でした。いっぽうの「白夜行」には、《太陽と月》や《歩道橋》の要素がありました。亮司と雪穂が「太陽のもとで歩く」という夢は、黄昏時の歩道橋で交錯しつつも破れ、結局、彼らの運命は月の支配から逃れられません。◇ちなみに、大林宣彦の「転校生」は、階段落ちからの男女入れ替わりの物語であり、新海誠の「君の名は。」は、黄昏カタワレ時の男女入れ替わりの物語なのですが、両者に共通していたのは、思春期の男女が異性の体を手に入れるという、淡いエロティシズムでした。しかし、今回の「天国と地獄」には、そうした側面が希薄です。なぜなら、そもそもゲイである日高陽斗には、女の体への関心がほとんどないからです。つまり、これは「男女」の入れ替わりの物語というよりも、やはり「善悪」の入れ替わりの物語なのであり、もっといえば、人間の運命が善と悪へ分岐するまでの、本来なら代え難い「境遇」の入れ替わりの物語なのです。そして、そこに、自分であるかもしれなかった「双子」の物語も交差します。◇日高と望月は、《太陽》と《満月》の隠喩だったのですが、望月と朔也は、《満月》と《新月》の隠喩にもなっています。新月とは、存在しているのに見えない月のことです。それは、存在したのに生まれなかったバニシングツイン、もしくは空集合のような存在だともいえる。太陽は満月だったかもしれないし、さらに満月は新月だったかもしれない。この入れ替わりの物語は多重構造になっています。そのうえで、オッフェンバック/黒澤明的な天国と地獄の対比を、ベートーベン的な運命の物語に組み直しています。月は、完全に満ちたときに太陽と入れ替わり、完全に欠けたときに闇と化すのです。当初、わたしは、このドラマにとても期待していたのだけど、正直いって、あまり乗りきれてはいない。駄作とまではいわないものの、過去の森下×綾瀬の黄金コンビの名作群に比べると、最高傑作とまでは言いがたい気がする。一般には、高橋一生が絶賛されてますが、わたしは、さほどいいとは思えない。綾瀬はるかの男っぷりは、いままでになく色香に満ちててカッコいいけど、高橋一生のオネエ演技は、ちょっとコミカル要素が強すぎるし、綾瀬はるかの雰囲気へ寄せているようにも見えない。これは、おそらく演出の問題であって、思えば、大林宜彦の「転校生」のときも、小林聡美の男っぷりが見事だったのに対して、尾美としのりの女々しさはわざとらしくて、かなり違和感があったのを覚えています。◇今作は、綾瀬はるかのカッコよさを見せることについては、申し分なく大成功してると思うけど、コミカルな演出はあまり有効ではなく、むしろ「白夜行」的にシリアス度を高めたほうが、ドラマの緊張感ははるかに増しただろうと思います。そして、森下佳子のオリジナル脚本の説話手法が、従来のような原作のある脚色ものにくらべて、ちょっと無理があるかもしれないなあ、という気もしてます。
2021.03.01
天国と地獄〜サイコな2人〜。森下佳子×綾瀬はるか。おなじみTBSのゴールデンコンビ。サスペンスとしては「白夜行」以来、SFとしては「仁」以来って感じでしょうか。毎回ジャンルは違うけど、どこかしらテイストは似てるので安心感がある。それに、さすがは人気作を手がけてきた脚本家らしく、サスペンスであっても、物語の叙述はとっても分かりやすく、難解なところがありません。◇今回は、階段から転げ落ちて男女が入れ替わるという、大林宣彦の追悼を兼ねた「転校生」以来のジャパンSF伝統芸。NHKの「転・コウ・生」(コウの転生?)では、柴咲コウとムロツヨシにもやらしてたけど、いわゆる萌音の声で「入れ替わってるぅ~?!」ってやつ。…かと思ったら、むしろ「仁」のタイムスリップのセルフパロディっぽかったですね。◇作品のテーマは、まだよく分かりませんが、とりあえずは、オッフェンバックじゃなくて、生誕251年目のベートーベンによる天国と地獄・・・って感じでしょうか?「白夜行」や「仁」でもこのあいだの「転コウ生」でも満月が出てたけれど、やはり満月の夜に男女が入れ替わるのですね。日高と望月の入れ替わり。太陽と満月の入れ替わり。奄美大島のシヤカナローの伝説。そこらへんが物語のベースにあるようです。◇ちなみに、感染予防も重要な危機管理だと思うのだけど、警察署内で誰もマスクをしてなかったのは、どういうことなんだろう?それから、女に変身してしまった高橋一生は、いかにも女々しい演技をしていたのですが、もともと綾瀬はるかは男勝りなキャラなので、あんまり似てないのが気になった。NHKで柴咲コウと入れ替わったときは、わりと似てたのにね。
2021.01.19
テレ東の「共演NG」を最終話まで視聴。とにかく鈴木京香が美しかったです。◇内容は、まあ、秋元康がふだんからやっているような、「炎上商法」のネタバラシみたいなもので、たしかにコンセプトは面白かったんだけど、中盤以降は同じパターンの繰り返しなので、案の定、全6話でとっとと終了してしまいました。◇でも、とにかく鈴木京香が美しかった。どうしてテレ東の鈴木京香はこんなに美しいんでしょう。そして中井貴一とのキスシーン!こんなにも美しい59歳と52歳のキスシーンって世界にありますか?ふつうなら「オエッ」てなっちゃう年齢なのに。考えてみれば、NHKの「君の名は」で真知子役を演じた鈴木京香と、1953年の「君の名は」で春樹役を演じた佐田啓二の息子。菊田一夫や古関裕而の業績をふまえた、なかなかに由緒正しいキスシーンなのでした。◇業界的には、共演NGという裏事情をドラマ化したことが、革新的だと面白がられていたようですが、一般の視聴者にとっては、そんな業界の裏話なんぞ別にどうでもいいわけで、むしろ美しすぎる50代の恋愛のほうに、はるかに事件性があったと思います。
2020.12.26
TBS「危険なビーナス」が終了。全体をとおして、とても面白かったです。できれば、最終回は、もっとゾクゾクするくらいに、たっぷりと盛り上げてほしかったけど!◇楓の正体は、明人の妻でもなければ、真犯人でもなく、なんと警察の女スパイだった!という驚き。ショックを受けた伯朗。そのまま助手の陰山元美と結ばれるのかと思いましたが、これまた、最後は奇想天外などんでん返しで、そのスパイ女と結ばれてしまいました!なかなかに夢のある結末です(笑)。後日譚も見てみたいですねえ。スパイ女と獣医師との結婚生活。陰山との三角関係も、まだまだ続くと思う。◇欲をいえば、最終回の内容は、もっともっと盛り上げてほしかったな。寛恕の網が燃えてしまうまでのエピソードと、楓の正体が判明してからの伯朗の逡巡のエピソードを、2回に分けて、じっくり描いてもよかったと思う。素数フラクタルの「寛恕の網」の絵については、その凄さがイマイチ伝わらなくて、ちょっと食い足りなかったし、ラスボスが小日向文世ってパターンも、いいかげん使い古された感じがあって、正直「またかよ…」と思ってしまいました(笑)。◇楓の正体が分かって落ち込んだ伯朗が、彼女への思いを断ち切れずに、元美とのあいだで揺れ動く様子は、もっと時間をかけて描いても良かったと思うし、明人との兄弟愛や、両親との家族愛を、事件の真相を振り返りながら確認していく過程も、もうすこし丁寧に描いてほしかったですね。せめて最終回は拡大スペシャルにしてほしかった。妻夫木聡/吉高由里子/ディーンフジオカ/中村アン戸田恵子/染谷将太/坂井真紀/小日向文世/斉藤由貴堀田真由/麻生祐未/安蘭けい/田口浩正/池内万作/栗原英雄ウラム螺旋/フラクタクル図形/サヴァン症候群/研究記録
2020.12.16
フジテレビ「ルパンの娘」が終了。第2シリーズでは、橋本環奈と小畑乃々ちゃんが加わって、大貫勇輔のミュージカルシーンもかなり増量された。その一方で、泥棒一家と警察一家は和解してしまったので、ロミジュリ的な要素に乏しく、第1シリーズのようなインパクトや緊張感には欠けました。全体的に、画面が暗いのも気になった。第1シーズンのときは、あんなに暗かったかなあ?華やかさよりも、むしろ泥臭さが目立った感じ。◇加藤諒は、メインキャストから外れていたし、テントウムシが飛び立つときの、ジョン健ヌッツォみたいなダバダバ音楽が、あまり効果的に使われていなかったのも残念。最後のほうでは、両家の爺ちゃんが登場して、渉がついに肉声を解禁させて、娘の杏が泥棒デビューしたけれど、期待したほど大きな盛り上がりにはならなかった。◇そして、ルパンとホームズの関係は、まだまだ分からずじまい。北条美雲と三雲玲の謎も、ナターシャとかいう修道女との関係も放置されたまま。ルパンのファミリーネームと、ホームズのファーストネームが、おなじ「MIKUMO」である理由は何?渉と美雲を結婚させて「三雲美雲」にさせたいだけ?◇映画の制作が予告されましたが、スクリーンでどう化けるかは、ちょっと未知数ですね。個人的には、ぜんぶ円城寺親子のミュージカルでもいいけど!華麗に踊りながら敵をやっつけるとか、素敵すぎました(笑)。深田恭子/瀬戸康史/グレーテルのかまど
2020.12.15
朝ドラ「エール」が終了です。今作の内容には、おおむね満足しています。とくに戦争以降の描き方は見応えがありました。◇ただ、最終週を見て、あらためて思ったのは、このドラマが、当初の予定とは、かなり違ったものになったのだ、ということ。今年は、東京オリンピックが延期になりましたが、ドラマのほうも、やはりオリンピックをすっ飛ばしてしまった感じ(笑)。開会式をテレビで見るシーンでは、東京の友人たちや、福島の家族の姿が映ったのに、豊橋にいる梅や五郎の姿が映らなかったのも残念でした。もしかして、森七菜のスケジュールが調整できなかったのでしょうか?◇◇今回の朝ドラは、1.脚本家の降板によって、2.志村けんの死によって、3.東京オリンピックの延期によって、かなりの改変を強いられたと思います。NHKのディレクターみずからが脚本を手掛けたのは、朝ドラ史上初めてのことかもしれませんが、ある意味では、NHKに対する自己批判もふくむ形で、かえって忖度のない内容に仕上がった気もします。◇最終週の脚本の変更。たとえば、小山田耕三(=山田耕筰)の手紙のシーン。これは、そもそも実話ではないはずだし、当初の脚本にすら無かったものだと思います。おそらく、志村けんが生きていれば、主人公に対する謝罪の場面は、もっと早い段階で描かれていたはずですよね。しかし、そのシーンが撮影できなくなったために、やむなく「死後の手紙」という形になったのでしょう。結果として、このドラマにおける山田耕筰の立ち位置は、かなり分かりにくいものになってしまいました。けっして、ただの悪役ではなかったはずですが、本来はどう描く予定だったのでしょうか?◇◇オリンピック開会式のシーンにも、大幅な脚本の変更が加えられたはずです。この開会式の場面は、すでに第1話で予告されていましたが、最終週で描かれた内容は、それを受けたものにはなっていませんでした。たんに、うわべだけ「伏線の回収」と見せかけたにすぎません。第1話で、主人公は、自分の曲が受け入れられるかどうかに自信がもてず、トイレに引きこもってしまうのですが、「長崎の鐘」を聴いたという青年の言葉に救われ、ようやく気を取り直して、指揮台へ向かうのですよね。本来、この場面は、作品全体のテーマにもかかわるような、きわめて重要な意味をもっていたはずです。おそらく、林宏司の当初の構想において、主人公は、オリンピックが開催された1964年になっても、いまだ戦争に加担したことの罪悪感を、完全には脱しきれずにいたはずなのです。だからこそ、長崎出身の青年の言葉を足掛かりとして、オリンピックに「夢と希望」を託し、その戦争という過去を乗り越えようとしたのでしょう。そう考えるならば、主人公が「オリンピックマーチ」を指揮するシーンは、このドラマにおける最大のクライマックスになったはずです。◇しかし、脚本家が降板し、さらには、今年のオリンピックが延期になったことで、このシーンの意味合いは大きく変わってしまいました。主人公が指揮台に立つシーンは省略され、「オリンピックマーチ」の演奏は一部分に短縮され、開会式のエピソードそのものが、かなり淡白なものに終わった。つまり、このエピソードは、本来の重要性を失ったのです。戦争に加担したことに対する主人公の罪意識は、すでに「長崎の鐘」を書くことで克服されており、「オリンピックマーチ」を書くときには、さしたる葛藤も逡巡もなくなっていました。作曲に時間がかかったのは、その作業があまりに「幸福だったから」にすぎません。◇今回の朝ドラは、コロナの影響で10話分ほど回数が減ったのですが、たとえそうだとしても、削るべきエピソードは他にいくらでもあったはずです。けれど、脚本を引き継いだディレクターの吉田照幸は、あえて、もっとも重要だったはずのオリンピックパートを、大幅に削ったわけですね。作曲のエピソードについていえば、「オリンピックマーチ」よりも、「長崎の鐘」や「栄冠は君に輝く」のほうに、より重心を置いて、熱を注いだ形になりました。◇結局、「いだてん」のクドカンも、「エール」の吉田照幸も、本来のNHKの思惑とは反対に、オリンピックをほとんど美化しなかったのです。わたしは、それでよかったと思います。オリンピックを美化しようという当初の構想のほうが、むしろ間違いだったのだから。そもそも、古関裕而が、”オリンピックマーチの完成によって戦争の罪を克服した”という安易な解釈にもとづく物語は、あまりにも御都合主義的な創作だというほかありません。ドラマの考証を担当した刑部芳則によれば、「オリンピックマーチ」の曲の構造は、「皇軍の戦果輝く」という軍歌の構造につながっているらしい。刑部は、このことを、古関の創造のための「忘却」によるものだと述べています。しかし、たとえ忘れていたにせよ、忘れていなかったにせよ、「戦争のための国威発揚」と、「オリンピックのための国威発揚」とを、同じような発想、同じようなメンタリティで、作曲してしまっていること自体が、やはり微妙な問題を孕んでいるというべきなのです。それを安易なかたちで美化するのは避けたほうがいい。◇本来なら、今年は、2度目の東京オリンピックが開催されるはずであり、この朝ドラも、現実のオリンピックに並走させるつもりだったのでしょう。しかし、正直なところ、現在の日本人は、オリンピックなんぞに「夢と希望」を託す気分じゃありませんし、吉田照幸による脚本の改変も、こうした状況と気分を的確に反映したものになったと思います。◇◇さて、この朝ドラの最終回は、NHKホールでのコンサートでした。多くのミュージシャンやミュージカル俳優を、メインキャストとして起用したドラマですから、このコンサートは、おそらく当初から予定されていたものでしょう。それどころか、本来なら、無事に閉幕したオリンピックを振り返りながら、観客も入れた大規模な公演をおこなうつもりだったと思います。しかし、コロナの影響もあいまって、だいぶ控えめなコンサートになってしまった。◇わたしとしては、井上希美や小南満佑子のソロ歌唱による曲も聴きたかったし、野田洋次郎が、古賀政男の曲を歌うところも見たかったです。ちなみに、わたしは、最後の最後まで、二階堂ふみの歌唱場面が"吹替"だと思い込んでいました(笑)。彼女の歌った「長崎の鐘」にビックリです。あんなに歌える人なんですね。
2020.11.29
今季は、「危険なビーナス」「恋する母たち」「リモラブ」の3作品に注目しているのですが、なかでも「リモラブ」は、かなり内容が斬新かつ意欲的で、独創性が高い。おバカな変人ばかりが登場するところは、ちょっとアメリカンコメディっぽいけれど、このテイストにもすっかり慣れました(笑)。◇第6話では、ついにお互いの正体が判明。美々のなかでは、SNSのなかのイリュージョンの恋と、現実世界のなかのリアルな恋がめでたく重なったのですが、青林のほうは、やはり草モチと美々とのギャップに混乱して、いちどは「ごめんなさい」と拒絶。このとき美々は、檸檬と青林の双方を一気に失いました。イリュージョンとリアルの両方で失恋した。それでも、なんとか平静を装い、いつもの産業医として気丈に振舞って、その悲しみを表さずに去った場面は、このドラマ最大の神シーンだったと思います。◇とはいえ、やっぱり檸檬との幸せな日々を忘れられない美々(笑)。「恋とは幻想である」とか、「恋とは勘違いである」とはよく言うけれど、むしろ「幻想こそが恋なのだ」ということを、美々は、あらためて確認した形です。現代は、リアルが勝つ時代ではなく、イリュージョンこそが勝つ時代なのです。イリュージョンのなかにこそ、見える真実がある。最後には、めでたく両思いになれた二人。このときの青林の心の変化は、あいかわらず唐突でよく分からないけれど、まあ、来週へ繋ぐためのサービスシーンだとも言えます。とにかく、これによって、リモラブはもはやリモラブではなくなり、めでたくリアルラブの世界に突入したわけですが、はたして、このままほんとうにリアルラブを発展させるのか、それとも、あくまでリモラブの世界を追求しつづけるのか、まだまだ分かりません。わたしの予想では、リモラブとリアルラブの「ずれ」を、さらに浮き上がらせていくのではないでしょうか。◇ところで、世間では目下、コロナウィルスの第3波で混乱していますが、ドラマの中では、むしろ感染の緊張がだいぶ緩和して、ラーメン屋台の場面などでは、ソーシャルディスタンスが急速に縮まったりしています。このへんにも、ドラマと現実のずれ、イリュージョンとリアルのずれ、撮影時期と放送時期のずれが生じてしまっていますが、…まあ、仕方ないですよね。
2020.11.19
「トンカツなのに檸檬」とか、「ビーフジャーキーなのに檸檬」とか、「キャベツなのに檸檬」とか、何が何やらわからなくなってますが、要するに、それぞれの食材に檸檬をしぼった感じ?あるいは、主人公がほんとうに愛しているのは、トンカツでもビーフジャーキーでもキャベツでもなく、あくまでも檸檬なのだというところにこそ、一定の真実があるのかもしれない。この先、世の中でVRとかARが普及すると、他者イメージの概念が変わってしまって、「檸檬」とか「草モチ」のようなアバターのままで、一生を添い遂げるカップルだって出てくるのかもしれません。実際、「ビーフジャーキー」や「キャベツ」といった外見のイメージよりも、「檸檬」として接してるときのほうが、その人の本質に触れている気がしないでもないし、「檸檬」のような男性こそが自分の理想だという厳然たる事実は、どんなことがあっても変わらないのかもしれない。川栄李奈が、セフレとのリアルな関係よりも、ソーシャルディスタンスを保った松下洸平との関係のほうに、本物の関係を見ようとしてるのは、そういう未来を暗示してるのかもしれません。#リモラブ ~普通の恋は邪道~/波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.11.03
「#リモラブ ~普通の恋は邪道~」第3話。予想をこえて奇想天外!かなりおかしなドラマ!常識のはるか上空を飛んでいます。でも、水橋文美江の作家性が強力に出てきた気もします…。◇主人公のキャラが理解しにくいと思ってましたが、理解しにくいのは、波瑠だけじゃありませんでした。すでに恋人がいるのに、見知らぬ女と5ヵ月もSNSで会話しつづけていた、松下洸平もかなり理解不能だし、そんな松下洸平になりすまして、波瑠とつきあいはじめた間宮祥太朗もだいぶ理解不能だし、川栄李奈にいたっては、もはや何喋ってるのか意味が分からなすぎて、宇宙人並みに交信不可能なレベルでした(笑)。思わず「セフレ 南アフリカ」で検索してみましたが、べつに南ア共和国にそういう文化があるわけじゃなさそうです。◇奇想天外なコメディではあるけれど、なにか妙にリアルな部分もある。SNSに依存して、四六時中そればかり気になってしまうとか。SNSでやりとりしてるうちは楽しいけど、リアルに繋がりはじめると、デートの準備やら時間の拘束やらで疲れて、やっぱり元の生活に戻りたくなるとか。自分の部屋に友人を招いてみたものの、早く帰って欲しくてたまらないとか。結局、ひとりでテレビ見てる時間がいちばん大事とか(笑)。◇極端な設定のなかに、現代的なテーマが露骨に浮かび上がってきます。実際、面と向かって彼氏には言わないまでも、セフレまがいの関係を別にもってるような人は、きっと現実にも存在するのだろうし、彼氏に言っちゃう分だけ、まだしも川栄李奈のほうが正直なのかも…(笑)。そういえば、モーリー・ロバートソンみたいに、おたがいオープンにしてるカップルもいますよね。◇来週は、間宮祥太朗のウソがばれるはずです。でも、偽物の相手が偽物なら、本物の相手も本物とは言いがたい。とにかく全員が狂ってるのだから。タイトル通り、普通の恋は、どこにも期待できそうにありません。もはや誰が本命とかいう次元の話ではなくなってる(笑)。リモートを媒介にしただけで、「本物の人間関係」というのものの行方が、哲学的・SF的なまでに分からなくなってるのですよね。そこに現代社会のリアルを感じます。波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.10.29
この朝ドラは、当初、脚本家の降板騒ぎがあり、バラエティ系の演出家が脚本を兼ねるということで、ややイロモノ的な作品になるのかと思っていました。実際、前半はそういう面もありました。でも、戦中のパートになったら、いままでの作品にはないほど硬派な表現を見せて、それは戦後のパートになっても続いています。このような展開は、とても予想外だったので驚きです。◇戦後になって大きく変わったことは、人々の姿が、とても下品になったということです。これは、かなりリアルな戦後の表現なのだと思います。戦前は、とても上品で優雅な人々の生活が描かれていました。しかし、戦後になると、汚い建物、汚い服装、人々の粗暴な行動、品のない言葉遣い、そういったものが目立つようになりました。実際、戦後というのは、けっして明るい時代ではなかったと思います。「明るい時代にしよう」という希望をもった人はいたけれど、けっして誰もが明るく生きられる時代ではなかった。市街には戦傷者や孤児があふれていたし、物資や食料は不足していたし、家族が死んだ記憶や、人を殺した記憶が、多くの人々のなかに生々しく残っていたし、なりふりかまわずに、他人を押しのけるような人間でなければ、生きていけなかった時代だと思います。そういう人間ばかりが生き残ったともいえます。日本人は、戦前のような端正な美しさを失って、醜くなったと思います。本来の礼儀正しさや品のよさは、失われてしまった。バブル期にも、悪徳業者やヤンキーが増えたのですが、戦後にも、詐欺師やチンピラが町にあふれかえって、社会は荒廃したと思います。◇お金持ちのお坊ちゃんだった久志が、酒や博打に溺れるようになったのも、けっして例外的なことではなかったのだと思います。
2020.10.28
今回も美しい女性たちがたくさん出てきて、女の嫉妬とやさしさをふりまいて、妻夫木聡を翻弄する展開。楽しい(笑)。事件の真相には、いっこうに近づいた気配がありません。強いていえば、勇磨(ディーン)や百合華(堀田真由)は、犯人候補から外れたのかなあ、と思うけど、本当にそう言えるかどうかは、まだまだ分からない。今回は、兼岩家(小日向文世&坂井真紀)の出番はなし。矢神家のシーンも少なかったけど、看護師の杏梨(福田麻貴)に焦点が当たりましたね。伯朗は、シングルマザーの彼女にも色気を感じてる!陰山(中村アン)も、相変わらず出番が多いけど、彼女の素性はまったく見えてこない。傍観者にしては出番が多すぎる。いちばん怪しい(笑)。妻夫木聡/吉高由里子/ディーン・フジオカ/染谷将太/中村アン/堀田真由/福田麻貴(3時のヒロイン)/R-指定(Creepy Nuts)麻生祐未/坂井真紀/安蘭けい/田口浩正/池内万作/栗原英雄/斉藤由貴/戸田恵子/小日向文世
2020.10.26
カノブツ。遅ればせながら見終わりました。脚本は「心の傷を癒すということ」の桑原亮子。ももクロのれにちゃんが好きなので見てたのですが、なんだかボンヤリした内容の物語でした。断片的には面白い要素も散りばめられてましたが、見終わってみて、結局どんな話だったのか、いまいち整理しきれない(笑)。とくに終盤の展開は分かりにくく、描くべき内容が全6話に収まりきれてなかった気もする。脚本家は、周到にいろんな伏線を配置してたようだけど、それがスタッフに共有されていたのかどうか怪しい。視聴者にとっては、かなり分かりにくいドラマでした。◇あらためて、物語の内容を時系列で整理してみます。7年前、女性漫画家の小鳥遊玲は、南貝荘の部屋で『氷の武将』の連載に取り組んでいましたが、右手が動かなくなったため、連載終了を決意します。しかし、玲の想い人であった編集者の中路は、「君が描かないなら別の漫画家に引き継がせる」と告げます。絶望した玲は、父親の開発した不老長寿装置コールドスリープに入って、自分自身の肉体を凍らせてしまいます。それ以来、南貝荘の部屋には、玲の幽霊=生霊が現れるようになり、押し入れの中はお札だらけになりました。それから7年後、漫画家を志望するミャンマー人のエーミンが、南貝荘に入居して玲の幽霊と共同生活をはじめます。一方、漫画『氷の武将』は、かつて玲のアシスタントだった千春が、ゴーストライターとして連載をつづけていました。しかし、千春は、玲から引き継いだ漫画も、想い人の中路のことも、自分のものにできずに苦しんでいました。千春は連載を断念しそうになりますが、エーミンと玲の協力によって危機を乗り越え、それ以降は、ゴーストライターとしてではなく、自分の作品として連載しつづける決心をします。かたや玲の幽霊は、生前(?)の自分のことを完全に思い出して、いったん姿を消します(成仏?)。しかし、1年後、プロの漫画家になったエーミンのもとへ、コールドスリープから蘇生した玲がおとずれます。…以上が物語の大筋です。◇これは、たぶん、冷たい海の底に沈んでいた氷の武将が、南の海で蘇生するまでの物語なのだと思います。冷たい海を象徴するのが、「コールドスリープ」という肉体冷却装置であり、南の海を象徴するのが、インド洋に生息するという「ウミウサギ」の貝殻です。ウミウサギの貝殻は、玲から千春の手に渡り、それが南洋の彼方からミャンマー人のエーミンを引き寄せた。そんな図式になっています。そして、この物語の内容を暗示するのが、『氷の武将』という劇中の漫画であり、その舞台となったのが「南貝荘」というアパートなのです。たぶん「氷の武将」は「氷の微笑」のパロディなのでしょう…(笑)ちなみに、不老長寿装置「コールドスリープ」を開発した玲の父親は、いつも亀を連れていますが、これはたぶん「浦島太郎」とか「亀は万年」の隠喩なのでしょう。◇結局のところ、中路をめぐる恋の行く末については、決着が示されません。おそらく、千春が中路と結ばれて、玲はエーミンと結ばれたのだろうと思います。千春は、ウミウサギと、連載漫画と、中路とを、すべて玲から受け継いで、自分のものにしたわけです。『氷の武将』の登場人物に当てはめるならば、玲は武将であり、千春は鎖奈ということになります。(玲=鎖奈ではないのです)武将は、鎖奈に向かって、「そなたの心のままにワシの首をもっていけ!」と託すのですね。その結果、千春は、玲のすべてを受け継ぐのです。◇しかし、恋の行く末よりも、もっと大事だったのは、玲と、エーミンと、千春と、中路の、4人の連帯の物語です。エーミンは、海岸を眺めながら、水平線のうえに4つの丸いものを描きました。これは、おそらく白いウミウサギなのですが、つまり、南の海で蘇生した4人が、たがいに協力しあって生きていく未来を暗示しています。ここらへんの伏線は、とても分かりにくいのですね。◇ちなみに、終盤には、ミスリードになるような台詞があり、これは物語のなかで覆されていくのですが、ここらへんの展開も、かなり分かりにくいです。ひとつは、「わずかな可能性に期待するより、落選したほうが100%あきらめがついて楽だ」という玲の消極的な言葉。これは、漫画賞を獲得しようとするエーミンに投げつけた言葉なのですが、実際は、かつて連載を放棄して漫画を諦めた自分自身のことを言っています。けれど、じつは玲は、けっして漫画を諦めて自殺したのではなく、いったん凍ることで未来の自分に託したのだということが、やがて明らかになります。◇もうひとつ、ミスリードになっていた台詞は、「僕の好きな人が、僕のことを全然好きじゃない」「この世は、少ない幸せを椅子取りゲームみたいに取り合ってる」というエーミンの消極的な言葉。お寺の僧侶でもあるコンビニの店長も「それが世の理だ」と言います。しかし、これを覆すのが、草野とドゥアンの恋のエピソードです。「草野が妻子を連れていた」というのは勘違いで、じつは妹と甥だった、という話です。これをきっかけに、それまで「起・承・承・承」の漫画しか描けなかったエーミンは、はじめて「起・承・転・結」の漫画を描くことに成功します。そして、ここから玲との関係も「転」に回りはじめるのですね。玲とエーミンが、ミャンマー風の仏塔パゴダで何を祈ったか分からないのですが、日本の仏教(コンビニ店長)には実現できなかったことが、ミャンマーの仏教(パゴダ)の力で実現できたのかもしれません。このへんの流れも分かりにくかったです。◇最終的に、エーミンが漫画賞に入選したのかどうか分からないし、蘇生した玲の右手が治癒したのかどうかも分かりません。玲が「父をモデルにした漫画を描く」と言った意味も分からない。そもそも右手が動かなくなった原因は何だったのでしょうか?そして、なぜコールドスリープから蘇生できたのでしょうか?凍っていた玲の体は、エーミンへの思いの力で暖かくなっていたともいうのですが、ドラマを見ていると、たんにエーミンの体温を吸い取っただけのように見えてしまう。実際、エーミンはどんどん冷やされて弱っていったのだし、玲はそれを恐れて、いったんコールドスリープに戻ったのです。もしかすると、その後も玲の体はどんどん暖かくなって、ついには凍っていた右手も溶けて、2人で新しい作品に着手できるようになったのかもしれません。しかし、そう解釈するには、かなりの脳内補完が必要ですね…(笑)。森崎ウィン/高城れに(ももいろクローバーZ)/和田正人/村上穂乃佳/中島広稀/白鳥玉季/高橋努/ブラザートム/古舘寛治
2020.10.23
「#リモラブ ~普通の恋は邪道~」第2話。いままでのドラマにないほど、無様にジタバタしすぎる女性を描いてて、かなり斬新で面白いお話だとは思うけど、しばしば台詞がベタすぎるのと、主人公のキャラと行動がちょっと極端すぎて、ついていけないところがあります。登場人物がありえないほど鈍感すぎたり、悪い意味で、ツッコミどころも多い。◇檸檬くんの正体は、もしかしたら最終回まで分からないまま?かとも思いましたが、ラストで種明かしがありました。赤の他人を檸檬くんと勘違いするのもイタイけど、檸檬くんに恋愛感情が皆無というのは、もっとイタイですね。松下洸平の役どころは、「スカーレット」の八郎よりさらに煮え切らない男!優柔不断なヤサ男のおかげで、周りの女性は惑わされて被害を受ける。◇松下洸平の誘いに応じて、あのまま居酒屋に行って、間宮祥太朗のことを檸檬くんと勘違いする展開もありえたけど、あえてそうしなかったのは、今後あらためて間宮祥太朗との絡みがあるからでしょうか?そもそも檸檬くん候補は、4人ぐらいしかいないしね(笑)。波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.10.22
SUITS/スーツ2が終了。米版や韓国版はおろか、シーズン1も見ておらず、萌音が参加した最終章から見始めただけですが、およその内容は理解できました。13話では、女性昇進差別を証明する決め手に欠いていたものの、原告側の女性たちから人事評価表をかき集めて、7掛け採点や画一的な評価パターンの実態を暴いて逆転。14話では、上杉の横領・不倫についての秘密保持契約が足枷になって、尾形を解雇した正当性を証明できずにいましたが、あらたに上杉の不倫についての証言を周辺からかき集めて逆転。わりと話は単純です(笑)。ハーバードだの、東大ロースクールだのと、えらいエリートたちの法廷闘争の中で、さぞかし高度な頭脳戦が展開されるのかと思いきや、やってることは、そこらの刑事ドラマと大差ない(笑)。まあ、それでも、ファームの中であーだこーだとやってる姿が、なんとなく見てて楽しいという、そういう類のドラマだと思います。萌音&小手の(最後には結婚するんじゃないの?ってぐらい)無駄すぎる藤蟹バトルも、馬鹿っぽくて楽しめました。◇◇しかし、最終回は、ちょっとツッコミどころが多すぎた気がする。蟹江が、ロースクールの試験に落ちた真琴を、これまた無駄な嘘で慰めようとしたのも解せないし、そのことで真琴が鈴木を責めたてるのも、(経歴詐称をカミングアウトさせる伏線だとはいえ)あまりの逆ギレじゃないかと思いました。◇「ダービー」とかいう外資系ファームにかんしても、そもそも観月ありさしか表に出てこないので、その実像がまったく見えてこない。たんに元恋人とバブルを回顧するような話になってる。甲斐と鈴木は、「ダービー」のことを悪しざまに言うけれど、どのぐらい悪どい企業なのか具体的に見えないのです。甲斐は、「自分たちは正攻法で行く」みたいなことを言ったけど、実際にやってることは、メールを盗み見たうえで敵にカマをかけるという、なんとも泥臭い戦法でした(笑)。端から見ると、何が正攻法で何が悪どい手法なのかよく分からない。◇甲斐が辞任するしないの問題は、ダービー側が「上杉の過去の横領・不倫」を問題視したおかげで、棚ボタ的に解決したようなのですが、わたしが思うに、すでにファームを去っている人物の過去の話なんぞより、現役で経歴詐称のニセ弁護士が働いてることのほうが、よっぽど問題でしょ。それに、幸村と甲斐は、今回の件で互いの信頼を決定的に失ったと思うのですが、そこらへんも、なし崩し的に終わってしまいました。織田裕二/中島裕翔/新木優子/中村アン/小手伸也/上白石萌音/鈴木保奈美/伊東四朗/吉田鋼太郎
2020.10.21
危険なビーナス。第2話もなかなか好調です。今季いちばん面白いかも。前回よりはコミカルな要素が抑えられて、そのぶん、緊張感が増しました。見たところ、コミカル担当は妻夫木聡だけっぽい。ディーン・フジオカが出てくると、主役の存在感を喰ってしまいそうだけど、わたしはそれでも構わない(笑)。妻夫木&吉高由里子は敵の裏をかいたけど、ディーン&麻生祐未はそのまた裏をかいていた、というところで今回の話は終わりました。◇美女が犬猫病院におとずれるたび、ちょっとドキドキな展開になるのも笑えます。助手の中村アンもかなり魅力的だし。わたしはネタバレ情報には接してないので、謎解きを純粋に楽しんでるのですが、事件には直接関係なさそうな中村アンや、小日向文世&坂井真紀夫妻の登場が、不自然に多くなればなるほど、じつは彼らも怪しいんじゃないの?って感じがします。妻夫木聡/吉高由里子/ディーン・フジオカ/染谷将太/中村アン/堀田真由/福田麻貴(3時のヒロイン)/R-指定(Creepy Nuts)麻生祐未/坂井真紀/安蘭けい/田口浩正/池内万作/栗原英雄/斉藤由貴/戸田恵子/小日向文世
2020.10.20
事実上、途中で終わってしまった「カネ恋」。10月20日発売のシナリオブックには、未放送回をふくむ全話の内容が完全収録されるそうです。それを読めば明らかになるとは思うのですが、いちおう、この作品の全体的なテーマを、わたしなりに考察してみたいと思います。◇このドラマのテーマは、「ほろこびは繕うほどに愛着が増す」ということだったと思います。お金があるうちは、新しいものに買い替えればいいけれど、お金がなくなったら、ほろこびを繕いながら使っていくしかないし、大事に繕うことで、物への愛着もわいていく。人間関係も、たんに新しいものに取り替えてしまうのではなく、いろんなほころびを繕いながら、欠点を直したり、過ちを許したりしながら、大事に育んでいくことで、愛情が生まれていく。「おカネの切れ目が恋のはじまり」というのは、そういう意味なのだと思います。◇すべての登場人物が、ほころびを繕うことの大切さに気づいたとき、何がどう変化して、誰と誰が結ばれることになったのか。それまでの慶太は、お金で新しい物を買っては、古い物を平然と捨てていました。まりあは、古い人間関係を捨てて、新しい人間関係に取り替えていました。しかし、玲子は、母とともに鎌倉の古民家で暮らし、古く壊れたものを繕いながら生活し、さらには、早乙女のことを許し、父のことを許しながら、人間関係を大事に繕っていこうとしていました。欠点や過ちを繕うほどに、人や物との関係がむしろ深まっていきます。たとえば子供のおもちゃも、ただ新しいものに買い替えるのではなく、なんども修理しながら使えるような、あるいは修繕するほど進化していくような形が、ありうるのかもしれません。ぬいぐるみは、洗濯や綿の入れ直しをして長く愛し続けられるし、AIのロボットは、知能や経験をアップデートしていくことができる。慶太が開発すべきなのは、そういう玩具だったかもしれません。◇それにしても、なぜ慶太は「猿」だったのでしょうか?ヘラヘラした三浦春馬が、なんとなく猿っぽかったからでしょうか?方丈記の文章に「猿」が出てくるのは偶然でしょうか?猿渡一族の経営する玩具メーカーは、その社名が「モンキーパス」で、その主力商品はAIロボットの「サルー」で社長の相棒は「猿之助」で、息子の慶太の相棒は「猿彦」でした。玲子が幼いときに父に買ってもらったのは、ラケットで空振りをする猿の玩具だったけれど、その製造元がモンキーパスだったことが、玲子がそこへ入社するきっかけだったようですし、彼女が猿の絵皿に恋をしたのも、どこかで猿に愛着をもっていたせいかもしれません。◇ちなみに、わたしは、せいぜい「せかほし」を時々見ていた程度で、あるいは歌って踊る姿がスゲーと思ってた程度で、とくに三浦春馬のファンでも何でもありませんが、『カネ恋』最終回の放送後に、ほかのファンサイトなどを差し置いて、なぜかこのサイトが検索上位に挙がってしまったのは、かなりビビッたと同時に、なんだか申し訳ない気持ちでした…。読んでくださったみなさん、ありがとうございます。そういえば、最終回でミスチルの主題歌が流れてきたとき、わたしは、ちょっとしたデジャヴにおそわれました。よくよく考えてみたら、わたしは『14才の母』というドラマを、リアルタイムで見ていた人間なので、今回の「turn over?」という曲が、あのときの「しるし」にどこか似ている気もして、それが脳味噌のどこかでつながったのかもしれません。
2020.10.18
今回の朝ドラがはじまったとき、森山直太朗と野田洋次郎というミュージシャンの出演は、大きな注目を集めました。しかし、今にして思えば、これはたんに「ミュージシャンが俳優として音楽ドラマに出た」というだけのことではなかったと思います。この2人の起用には、制作者側のかなり強い思惑を感じます。◇森山直太朗の代表曲は「さくら」ですが、これはもともと軍歌「同期の桜」を想起させる面がありました。歌詞のなかで「あの日の唄が聴こえる」の後に、こう続くからです。さくらさくら 今咲き誇る刹那に散りゆく運命と知ってさくらさくら ただ舞い落ちるいつか生まれ変わる瞬間を信じ泣くな友よ 今惜別の時さくら さくら いざ舞い上がれ永遠にさんざめく光を浴びてさらば友よ またこの場所で会おうさくら舞い散る道の上で軍歌の「同期の桜」では、次のように歌われます。貴様と俺とは 同期の桜咲いた花なら 散るのは覚悟みごと散りましょ 国のためあれほど誓った その日も待たずなぜに死んだか 散ったのか離れ離れに 散ろうとも花の都の 靖国神社春の梢に 咲いて会おう「同期の桜」における桜とは、靖国神社の桜のことを意味しています。かつて作詞家の阿久悠は、歌詞のなかに愛国的な要素を盛り込むのを嫌って、「国旗はもちろん、桜の花ですら耐えられない」と語ったそうです。戦中世代にとって、桜とは軍国主義の象徴だったのです。◇ちなみに、靖国神社の桜は、昭和41年以降、例年の「開花宣言」のための標本木になっています。気象庁は、あえて靖国の桜を標本木に指定した根拠を示していませんが、靖国神社の桜から「過去の記憶」を払拭し、国民の親しみを取り戻すための政治的な方策とも見えます。ゆずの北川悠仁などは、「ガイコクジンノトモダチ」という曲のなかで、君と見た靖国の桜はキレイでしたと書いたりしていますが、すくなくとも戦中世代にとって、靖国の桜は、たんなる美しい花ではなく、強烈なまでに政治的・歴史的な意味を帯びていたのです。◇森山直太朗が演じた藤堂先生は、かなり複雑なキャラクターでした。若い頃には、軍人である父に反発し、生徒たちに「好きな道へ進め」と教えましたが、自分の子供が産まれると、軍人だった父の生き方を見直して予備役将校となり、ビルマでは、部隊長として戦闘の指揮をとり、最後は、愛する妻子を残して死んでいきます。鉄男や五郎は、裕一に対して「軍歌など書かないでくれ」と言いましたが、藤堂先生は、裕一にそのようなことを言いませんでした。あくまで架空の人物ではありますが、もしも藤堂先生が裕一にむかって、「本当に好きな音楽を書くべきだ」と諭していたら、裕一は軍歌を書くのをためらったのではないかと思えます。しかし、藤堂の死後には、鉄男までもが軍歌の制作に意欲的になります。モデルの野村俊夫も、古関裕而とともに戦時歌謡をいくつも手掛けています。◇森山直太朗と、藤堂先生は、どこか重なり合う部分があるのかもしれません。藤堂先生の人物像が複雑だったように、森山直太朗の「さくら」には両義性が見て取れるからです。ちなみに森山良子は、「さとうきび畑」のような反戦歌で知られていますが、息子の直太朗は「夏の終わり」のことを反戦歌だと述べています。◇一方、野田洋次郎の演じる木枯正人は、軍歌を書くことに消極的でした。モデルである古賀政男が、実際にそうだったのかは疑わしいのですが、一般的に、古賀政男は、軍歌や戦時歌謡によってではなく、あくまで叙情的な歌謡曲の作家として認知されています。◇しかし、RADWIMPSの野田洋次郎は、2018年に「HINOMARU」という曲を書いて、その国家主義的な内容の歌詞が物議を醸しました。アメリカ育ちの彼が、みずからのアイデンティティを希求するあまり、ある意味では素朴に、ある意味では安易に、国家や国旗への同化に傾いてしまった結果とも見えます。これは、台湾系であるユーミンが、しばしばコンサバな姿勢を見せるのにも似ています。◇森山直太朗にせよ、野田洋次郎にせよ、彼らはたんなるミュージシャンではありません。同時代において、それなりの政治性をも負ったソングライターです。彼らが、今回の役柄の重さを、どれだけ承知して引き受けたかは分かりませんが、同時代のソングライターである2人にとって、それぞれが演じた人物の生き方、そして古山裕一=古関裕而のたどった運命は、けっして他人事ではないだろうと思います。
2020.10.17
「エール」の戦争描写が衝撃的すぎて、視聴者のあいだに物議を醸しています。わたし自身、藤堂先生の死や、弘哉くんの死は、ある程度予測できましたが、梅にまで死の危機が迫る展開は予想外でした。結局、朝ドラ的な配慮もあって、豊橋の登場人物が命を落とすことはありませんでしたが、それでも梅の死をいったん意識させたことは衝撃的でした。◇「エール」の戦争描写が、視聴者に衝撃を与えたいちばんの理由は、日常との落差がきわめて大きかったことだと思います。このドラマは、基本的にはコミカルな演出で、おだやかな日常を描いていました。太平洋戦争がはじまると、さすがに服装や食事は質素になりましたが、それでも、日常のおだやかさは失われませんでしたし、演出にもコミカルな要素は残っていました。…しかし、主人公の裕一がビルマに派遣されたことで、ドラマの描き出す世界観がいっきに変わりました。画面が急に暗くなった感じがしました。その時点で、なんらかの悲劇が起こることは予想できたのですが、その内容は、想像をはるかに超えるものでした。わたしは、てっきり、「今週は外地の悲劇が描かれるだけ」と思っていました。内地で空襲などが描かれるのは、きっと来週以降だろうと勝手に思い込んでいたのです。むしろ、外地の悲劇的な状況と、内地の穏やかな状況が対比して描かれると思っていました。ところが、実際には、水曜から木曜とたて続けに、「外地の悲劇」と「内地の悲劇」が描かれました。見ている側に心の準備をする余裕はありませんでした。聴き慣れたテーマ曲やクレジットロールも省略され、いきなり視聴者は「日常」から「非日常」へ突き落とされました。外地の悲劇と内地の悲劇が、わずか2日間に凝縮して描写され、あっというまに終戦を迎えてしまいました。これは予想外でした。◇すくなくとも、藤堂先生や弘哉くんにかんしては、それなりの「死亡フラグ」が立っていたと思います。しかし、梅には、どこにも「死亡フラグ」など立っていませんでした。そこに最大のリアルがあったと思っています。なぜなら、現実の世界には「死亡フラグ」など存在しないし、悲劇に対しても「心の準備」などありえないからです。◇ちなみに、戦争というのは、一般的に「4年ぐらいで終わるもの」だといわれています。(双方の国力がそれ以上もたないからです)太平洋戦争があったのも、昭和16年から20年までの4年間です。最初の2年くらいは、大きくは変化のない日常が維持されます。ドラマのなかでも、登場人物たちは、優雅に音楽を演奏したり、喫茶店でコーヒーを飲んだりしていました。しかし、後半の1~2年のあいだで、あっという間に日常は崩壊します。生活必需品までがいっきに枯渇し、軍人でない人まで戦地に送られるようになります。実際の戦争でも、そういう状況に陥ります。かなり急激に日常が崩壊していくわけですが、多くの国民は、ギリギリまでそのことに気づかないのです。そして、崩壊しはじめて気づいた頃には、もう遅いのです。もちろん、誰も「心の準備」など出来ないし、誰にも「死亡フラグ」などは立ちません。にもかかわらず、もっとも死んでほしくない人が死んだりします。それが戦争のリアルだと思います。今回のドラマの衝撃は、そのような戦争の現実に近い体験を与えました。唐突ともいえる形で、おだやかな日常が一気に崩壊し、予兆に気づく暇もなく、非日常の状態へといきなり突き落とされたのです。それが視聴者のはげしい動揺につながったと思います。
2020.10.16
ここのところ、わたしの日テレドラマへの信頼は、すっかり失われているのですが、はたして今季はどんなもんでしょうか…?◇まずは『極主夫道』。日テレの「頑張ってる感」が、もはや涙ぐましい。なんだかテレ東をお手本にしてる気もしますが(笑)。まあ、最近のテレ東のドラマは、たしかに日テレよりよっぽど上をいってますから、テレ東に学ぶことも必要かもしれません。演技派のキャストをそろえてますけど、ほとんど俳優の顔芸だけで笑わせてる気が、しないでもありません。◇◇次に「リモラブ」。うん。これは、ひさびさに日テレらしさを感じるかも。主演の波瑠にも安定感があるし、演出にも、音楽にも、いかにも日テレらしいテイストがあります。ただ、肝腎の、水橋文美江による脚本の善し悪しは、まだ、いまのところ見えにくい。「スカーレット」が素晴らしかったので、わたしの期待値としては、だいぶ高いのですけど。◇冒頭は、小津安二郎の、映画『お茶漬けの味』のパロディからはじまりました。この最初のシーンを見ると、主人公はハイスペックな高飛車女子かと思うのですが、実際は、そうでもなくて、むしろ真面目すぎて非モテな女子のキャラなのですね。とくに高収入というわけでもなさそうです。最後には、SNSで知り合った顔の見えない男性にのめりこみ、それを部下の男子だと勘違いし、急に異性として意識しはじめるという、ちょっと情緒不安定な側面を見せて終わりました。主人公の人物像に、いまいち一貫性が見出しにくい(笑)。感染予防にまつわるドタバタを、どういう方向性で描こうとしているのか、そこらへんも、まだ見えてきません。極主夫道/玉木宏/川口春奈/志尊淳/白鳥玉季/MEGUMI/滝藤賢一/橋本じゅん/稲森いずみ/竹中直人#リモラブ ~普通の恋は邪道~/波瑠/高橋優斗/松下洸平/間宮祥太朗/及川光博/川栄李奈/福地桃子/江口のりこ
2020.10.15
「危険なビーナス」第1話。斉藤由貴と、吉高由里子は、ただ愛する人と一緒になりたかっただけなのに、財産目当てで矢神家に入り込んだ女だと疑われている。この点で重なっているのですね。吉高由里子は、斉藤由貴の無念を晴らしていく形になるのでしょうか?◇TBSによる東野圭吾のドラマ化ってことで、てっきり「白夜行」みたいなシリアスな内容かと思ったら、今回のドラマは、むしろ三谷幸喜のサスペンスコメディみたいなテイストで、どちらかといえばフジテレビっぽい感じがしました。◇◇◇ちなみに、斉藤由貴と吉高由里子。今回は役柄の上でも重なってますけど、なにげに実像の上でも重なってます。ふたりとも、かつて銀色夏生に愛された少女ですから。いままでは、あまり両者の接点はなかった気もしますが、もしかして初共演なのでは?ただし、今回も、ドラマのなかで同じ画面に収まる機会はなさそうです。斉藤由貴は、すでに故人という設定だし。いまのところは、番宣も別行動だし。(由貴ちゃんは単独で番宣してます)でも、銀色夏生ファンの人たちは、両者が一緒に並ぶところも見てみたいだろうと思います。妻夫木聡/吉高由里子/ディーン・フジオカ/染谷将太/中村アン/堀田真由/福田麻貴(3時のヒロイン)/R-指定(Creepy Nuts)麻生祐未/坂井真紀/安蘭けい/田口浩正/池内万作/栗原英雄/斉藤由貴/戸田恵子/小日向文世
2020.10.12
カネ恋。最終話。先週のキスシーンを最後に、失踪したまま戻ってこない、という展開でした。失踪というよりも、たんにフラリと気まぐれに出ていった感じだし、てっきり、今週も、三浦春馬は出てくるものだと思っていたので、途中までは、そのつもりで見てたのですけど、伊豆からの帰りの電車のなかで、北村匠海が、「いいかげん、帰ってきましたかね?」と言ったので、そのときに、ようやく、「ああ、もう帰ってこないのね…」と気づきました。つまり、この最終話は、ほぼ全編がキャスト亡き後に撮影されていたわけですが、途中までは、まったくそのことに気づきませんでした。◇いろいろと思うことはあります。急遽、この最終話を作り上げたキャストもスタッフも、すごいなあ、とは思うけど、その一方で、よくもわるくも、テレビドラマって、途中で終わらせようと思えば、どうとでも終わらせられるんだなあ…というのも、一つのいつわらざる感想です。実際、途中で放送回数が短縮されて、むりやり終わらされるドラマってあるわけだし、視聴者も、それとは気づかずに見てたりするわけだし、それでも、何の疑問ももたずに、納得してる視聴者もいるわけですよね。ある意味、テキトーに騙されているんだなあ、と(笑)。◇今回の脚本についていうと、故人への思いも盛り込みながら、短期間で最終話を書き上げた手腕もさることながら、それだけになおさら、本来なら、このドラマは、どういう物語になる予定だったのか?…というのが、いちばん興味のあるところです。実際、けっこう面白い話だったと思う。お金に不自由なく育っていた少女が、父が横領罪で逮捕されたことをきっかけに、一転して清貧女子にはなったものの、ずるずると投資ビジネスの起業家の男に貢ぎ続け、そのあとは大企業の御曹司と恋をする、というお話です。おカネというものを、最終的にはどう見せようとしていたのでしょうか?◇今回の第4話で意外だったのは、早乙女(三浦翔平)が再登場していたこと。彼は、けっして先週で退場だったわけではなくて、最後まで絡むキャラだったのでしょうね。瑠璃(大友花恋)と結ばれる予定だったのでしょうか?かたや、ガッキー(北村匠海)のほうは、まりあ(星蘭ひとみ)との恋愛フラグが立ってたように見えます。まりあのキャラは、たんに金持ち目当ての現金な女なのか、それとも本当の愛情を求めている女なのか、よく分からないままに終わってしまいました。ひかり(八木優希)については、彼女が慶太の実妹でないことが、父親から慶太に知らされる予定だったようですね。そこから慶太とひかりの関係はどう変わっていくのでしょうか?◇シナリオブックが発売予定のようです。どういう内容になっているのかしら?せっかくなら、今回の脚本をもとにして、タイトルとキャストを変えて、続きの物語を見てみたいです。
2020.10.07
「カネ恋」第3話。なかなか面白かったです。たとえ悪い男が相手でも、恋に落ちたら盲目になりますよねえ…というお話。15年越しの片想いなら、なおさらのこと。傍目から見ればフラれて良かったのですが、本人がはげしい喪失感に襲われるのは無理もありません。けっこうリアルなエピソードでした。◇わたし的には、早乙女(三浦翔平)のキャラが興味深かったです。彼はどれほど「悪い男」だったのでしょうか?考えてみると、なかなか難しいです。板垣(北村匠海)を、10万円近いセミナーに入会させようとしたり、けっこうエゲつない商売をしてるように見えます。玲子(松岡茉優)も、あのくらい高額な受講料を払い続けてたのかも。しかし、もともと、そういうサービスを売る仕事なのだから、いくら高額だとはいえ、詐欺とまでは言いがたい。受講者はみんな、リスクを承知のうえで書籍やセミナーに投資しています。未婚と偽っていたのは道義的に問題があるけど、いわばメディア的なイメージ戦略であって、本業とは直接関係のないことだし、それをもって犯罪とまでは言えない。そういうメディア戦略については、妻も、秘書も、了解していたはずです。べつに、結婚詐欺をやっていたわけではないし、妻子を隠して不倫していたわけでもありません。むしろ、顧客の女性たちとは恋愛関係にならないように、一定の距離を保っていたようにも見えますし、玲子との適切な距離を保ちつづけていたのも、そのためだったのだろうと思える。最後に、玲子に「じつは…」と言いかけたのは、彼女との恋愛関係に発展してしまう前に、真実を打ち明けようとしたからであり、そこには、彼なりの誠意や線引きがあったように見えます。早乙女の行為は、法的にも犯罪とは言いがたいし、女性に対する裏切りとも言いがたい。グレーではあるけど、極悪とまでは言えない。なかなかに微妙なキャラなのでした。◇玲子が「早乙女は独身だ」と信じ込んでいたように、慶太は「ひかりは妹だ」と信じています。2人とも騙されていて、しかも、騙されることにお金を使っている。そして、ある意味では、騙されることから幸せを得てもいたのです。
2020.09.30
え?!全15回?まだ4話も残ってんの?最終章なのに?ずいぶんと長い最終章ですね。もはや、最終章詐欺なのでは?なんつって(笑)。◇たんなる萌音めあての視聴(笑)。今までまったく見てなかったので、何のこっちゃ話はさっぱり分からない!なにやらハーバード大経歴詐称で、二股キス不倫の鈴木くんが、正義感に燃えすぎてるとかなんとか。でも、萌音の役どころには満足。ちょっと高圧的なキャラが可愛い。「恋つづ」より、こっちの役のほうがいい。ただ、検事から弁護士に転身しちゃったので、今後はキャラが変わっちゃうのかも。きっと検事より弁護士のほうが儲かるんだろうね。登場人物の弁護士は、めちゃくちゃリッチな生活してるし。◇え?!萌音がカバーアルバム?リクエスト受付だ?そりゃ、何の曲でもいいけど、とりあえずはadieuとのデュエットでしょう。織田裕二/中島裕翔/新木優子/中村アン/今田美桜/小手伸也/鈴木保奈美上白石萌音/吉谷彩子/伊藤健太郎第11話 第12話 第13話 第14話 第15話
2020.09.22
テレ朝の『妖怪シェアハウス』が終了。先週までは、ゆるゆる系の脱力ドラマだったのに、なぜか最終回だけは、やたらと気合が入っていました(笑)。てっきり編集長の原島さんと結ばれて、ハッピーエンドで終わるものと予測してたのに、なんとまあ、自分が妖怪になってしまうという驚きの結末。そっちに行きますか…。けっこうビックリです。◇かなり奇想天外だったけれど、これはこれで、意外にアリだと思います。「妖怪の本体は人間だ」という結論でもあり、それと同時に、「妖怪の世界=常識外の世界を肯定する」という前向きなメッセージにもなっていました。主人公が向かった常識外の世界とは、天狗様のいる山岳世界(=高尾山?)のようでもあり、いわゆる引きこもりの世界でもあったようです。なかなかのエンディングですね。◇もともと、このドラマには、ちょっと「ローカル感」が乏しくて、そこに物足りなさを感じていました。やっぱり妖怪ドラマを作るなら、京都か鎌倉を舞台にしなきゃダメでしょ!とも思ってたし、せっかく小芝風花を主演にするなら、なおさら京都訛りのドラマにすべきでは?とも思ってたし、かりに都内を舞台にするとしても、もっともっと江戸っぽさを出さなきゃね、とも思ってたけど、まあ、昨日の最終回についていえば、なかなか妖しい雰囲気も醸し出せてて良かったです。◇全体にキャスティングもよかったし、民話風の妖怪案内も勉強になりました。とくに松本まりかは、『純情きらり』と『竜の道』を同時に見てたこともあり、その振り幅の広さに驚かされました。彼女は、今シーズンの助演賞候補です。そして、さらに振り幅がすごかったのが大東駿介!!編集長の原島さんは、いままでの彼にはない知的な役どころで、とてもカッコよかったけど、それと同時に『浦安鉄筋家族』も見てたので、あまりの振り幅の凄まじさに目眩を覚えました。浦安の春巻先生のインパクトは、いちど見たら二度と一生忘れられません。原島さんと春巻先生は、ほんとうに同一人物だったのでしょうか?大東駿介も、助演賞確定です。◇ちなみに『浦安鉄筋家族』は、テレ東の屈指の作品にして、21世紀最大の傑作ウンコドラマだったのですが、同じテレ東といえば、黒島結菜&鈴木京香が主演した、『らーめん才遊記』もなかなか出来がよかったです。いまのテレ東のドラマ制作能力は、脚本も演出もしっかりしていて、キー局を上回っていますね。小芝風花/大東駿介/味方良介/毎熊克哉/松本まりか/池谷のぶえ/大倉孝二/miwa
2020.09.20
遅ればせながら「おじカワ」最終回。眞島秀和ことチベットスナギツネと、今井翼ことパグ太郎の、おじさん同士の微笑ましい友情物語。登場するのは、眞島秀和、今井翼、桐山漣、藤原大祐、という男性4人。◇女性をほとんど絡ませることなく、男性だけでファンシーな世界を作りあげるという、なかなか野心的な作品ではありました。ほんのすこし山本未来が絡みましたけど、もともと彼女自身にほとんど女っ気がないので(笑)、事実上、男性だけの物語になっていた。いわゆるBLものではないけれど、否応なく「おっさんずラブ」的な世界になっていた。個人的には、もうすこし女っ気があったほうが物語がスリリングになったかなあ、という気はします。愛加あゆが眞島秀和に絡んで、そこに富田望生と森七菜が割って入るとか、そんな"おじキュン"展開にも期待したのですが。◇男性たちは、勇気をふりしぼって、たがいに「可愛いもの好き」をカミングアウトするのですが、最後の最後まで、女性に対してのカミングアウトはありませんでした。そこが、すこし物足りないといえば物足りない。「可愛いもの好きのおじさん」に対する、女性側の拒絶や和解の過程を描けば、もっと物語はスリリングになった気がします。まあ、山本未来の場合は、「はなから気づいてたけど、何とも思ってなかった」というオチでしたが(笑)。実際、女性のほうは、ごく普通に受け入れるか、身も蓋もなく興味がないか、のどちらかですよね。◇パグ太郎に初対面したときの、キョドった眞島秀和にはちょっと萌えました。今井翼も、なかなかいい味を出していたので、堂々の優秀助演賞をあげたいけど、できれば、彼がドールハウスに耽溺する姿にも萌えたかったです。
2020.09.19
「カネ恋」第1話。三浦春馬の遺作ですが、とくにテロップが表示されることもなく、普通の新ドラマとして、当たり前のようにスタート。◇いつものお仕事系ラブコメかと思っていましたが、「方丈記」と「清貧」の話が出てきたり、「鎌倉の古民家」が舞台になってたり、「一杯のかけそば」にじんわりしたり、予想外の内容だったので、いつのまにかのめり込んで、純粋に作品への興味が湧いてきました。現在の格差社会を題材にしながら、お金のことを考える物語になっています。できれば、当初の予定通り、全8話で見たかったとは思うけど…とりあえずは虚心で楽しむことにします。大島里美/松岡茉優/三浦春馬/三浦翔平北村匠海/星蘭ひとみ/草刈正雄/キムラ緑子
2020.09.16
『竜の道』が終了。原作は未完ですから、とくに終盤部分は、まったくのオリジナルストーリーだったはずですが、ふたを開けてみれば、最終回の出来がいちばん良かったです。(むしろ中盤までの展開に不満が残りました)最終回でグダグダになるドラマは多いけど、これほど最終回の出来がいいドラマも珍しい。◇テレビドラマのなかでは、わりと簡単に人を殺せるものなので、最初のうちは、「はやくエンケンを殺せばいいのでは?」などと思ってましたが、ここまで話を引っ張ったことで、人ひとりを殺すことの意味がとても重くなって、最終回で沖の首に手をかけるシーンには、通常のドラマでは味わえない感覚がありました。◇最終回の出来がよかっただけに、それまでに不可解な点が多かったのが惜しいです。いまさら言うのもなんだけど、そもそも、わたしは、第1話で夫婦が心中したこと自体が解せない。夫だけ死ぬならともかく、実子1人と養子2人を置き去りにして、夫婦そろって自殺する選択は理解に苦しみます。むしろ一家全員で心中するほうが説得力がある。◇3人の残された子供が、児童養護施設ではなく、意地悪な養父母に引き取られた理由も分かりませんでした。あの一家には、3人を養わなきゃならない義理があったのでしょうか?たんなる善意だったのか。自殺した夫婦が養育費を託していたのか。それともキリシマ急便が多額の見舞金でも出していたのか。◇ヤクザの親分の態度にも理解に苦しむ部分が多かった。「データは録ったけど渡さない」ってのはたんなる気まぐれな約束違反に思えるし、ただ意地悪して弄んでるだけのように見えました。沖がじつは彼の隠し子だったという話も、なんだか取ってつけた不要な蛇足のように感じました。◇◇◇今季は、さほど傑出したドラマはないけれど、《助演賞》をあげたいと思う役者が3人いて、そのうちの2人が、このドラマのエンケンと松本まりかです。(ちなみに、もう1人は大東駿介です)エンケンは、『未解決の女』も同時に見ていただけに、その振り幅の大きさに感嘆させられました。ふだんはコミカルな役も多い俳優ですけど、今回ばかりは、"モノホン"を演らせたときの凄味を見せつけられた。もはや演技のレベルを超えていました。カッコよくて、凄まじかったです。松本まりかも、『純きら』の薫子と(←14年前だけど)、『妖怪シェア』のお岩さんを見ていたので、これまた同一人物とは思えない振り幅の大きさ。なかでも今回の令嬢役は、いままでの彼女の役でいちばん美しかったです。◇玉木宏も、いままではコミカルな役が多かったけど、今回のようなハードボイルドな役を見れたのはよかった。どことなく、アラン・ドロンとか、マルチェロ・マストロヤンニみたいに見えてしまいました。玉木宏/高橋一生/松本穂香/奈緒/今野浩喜遠藤憲一/松本まりか/細田善彦/落合モトキ/斉藤由貴/西郷輝彦
2020.09.16
親バカ青春白書。最終回は、ガタロー&美咲の恋と、父親に嫉妬する娘の物語。ちょっとフランス映画みたいなお洒落な話でした。日本のドラマとしては珍しいパターンですね。さくらとハタケの恋じゃなくて、ガタローと美咲の恋がメインになるのは、予想の斜め上をいく展開で驚きでしたけど、恋愛のトキメキという点では、「わたナギ」のおじキュンよりも説得力があった。ドラマの前半は、まるでバブル期の大学ノリが甦ったような、かなり馬鹿っぽい内容だったので、急にこんなお洒落な展開になったのが意外です。正直、第5話まではクソドラマかと思ってましたが、最後の6話と7話は、なかなか印象に残りました。ムロツヨシ/永野芽郁/中川大志/小野花梨/今田美桜/戸塚純貴/新垣結衣/ドラゴン桜
2020.09.14
「親バカ青春白書」第6話。ムロツヨシ本人の演出。段ちがいに素晴らしいです。今までは何だったの? って感じ。俳優陣の演技のキレもよいし、カメラの位置も動きも素晴らしい。新垣結衣も段ちがいに美しく見える。脚本まで出来がよく思えてきます。撮る人が違うと、こんなにも違うものでしょうか?わたしは、俳優としてのムロツヨシよりも、俄然、監督・演出家としてのムロツヨシに興味が湧いてきました。壊滅している日テレドラマの、唯一の希望の光かもしれません。いっそ日テレは、すべての作品をムロに演出させたらいいのでは?
2020.09.07
竜の道 ~ 二つの顔の復讐者。初回の冒頭シーンを見れば、悲劇的な物語になる予感はあるんだけど、もともと東野圭吾っぽい設定でもあるし、最初からちょっと既視感があるのも事実。もうすこし、「モンテクリスト」感とか、「シャーロック」感とかを出せていれば、そういう既視感も吹き飛ばせただろうけど、残念ながら、ディーンのドラマのような「攻め」の姿勢は感じられない。いまひとつフックが足りないから、どちらかというと地味な印象のほうが強いです。玉木宏とか、遠藤憲一とかのキャスティングは、けっして間違ってはいないと思うけど、異様な緊張感を高めるまでには至っていない。だから、今野浩喜などのコミカルパートも、物語を中和してるというより、かえって全体を間延びさせる結果になっている。(そもそも馬鹿正直な設定だった今野浩喜のキャラは変貌しすぎてる気もする)そして、これは原作の問題なのだろうけど、あまりにも復讐相手の懐に入り込みすぎ、あまりにも遠回りしすぎている結果、もはや何を目指してるのかワケわからなくなってるし、だんだん「何やってんの?」という気持ちも強くなってきます。そこまで出世したんなら、「もう復讐とかしなくてもいいんじゃね?」的な感じが強まってくる気がするのですよね。そんなわけで、けっして大きな欠点のあるドラマではないけれど、ちょっとした「さじ加減」がうまくいっていない。そこらへんが、ドラマを作るセンスの問われるところですよね。
2020.08.13
全296件 (296件中 151-200件目)