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アガサ・クリスティ原作、ヒュー・ローリー版「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか」。とても洒落ててカッコいいドラマだったけど…あまりに話が複雑すぎて理解しきれないよ!!!つーか、必要な描写を端折りすぎてるし、細かい部分を誤魔化してる気もします。原作を読んでなければ、事件の詳細を理解できないのでは??これだからサスペンスドラマはストレスが溜まるのよね。じゃあ見るなよ、って話だけど…(^^;しかも、今回のNHK版は、字幕翻訳にもミスがあるように思います。◇翻訳が疑わしいのは、最終盤で、ボビーとフランキーが、料理人だったチャドリイ夫人宅を訪れたシーン。(チャドリイは旧姓で現在はプラット夫人です)サヴィッジ氏について尋ねた次のやりとり。ボビー「彼はミルハウスによく来ていたんですよね」プラット夫人「グラディスに聞いて。私はひとつ聞いただけ」この「私はひとつ聞いただけ」というセリフが、どうも意味不明なのよね。英語の音声は聞き取りにくいけれど、わたしの耳には「I saw him there for once」と聞こえるし、そうだとすれば「私はいちど会っただけ」と訳さねばならない。このやりとりは、「なぜエヴァンズに(遺言書の署名を)頼まなかったのか」という核心にかかわる部分なので、このセリフが意味不明じゃ真相が理解できないでしょ。◇なぜサヴィッジ氏は、遺言書の署名をグラディス・エヴァンズに頼まなかったか。それはグラディスが「本物のサヴィッジ氏」の顔を知ってたから。遺言書の署名に立ち会ったのは、たぶん共犯者のロジャーだよね。プラット夫人は、署名のときに「いちど会っただけ」なので、ロジャーのことをサヴィッジ氏と思い込んだ…というトリック。(逆に、サヴィッジ氏の死体を確認したのはグラディスだけ)だとすれば、やはり上記のセリフは「私はいちど会っただけ」と訳すべきでしょ。◇前にも書きましたが、わたしは、CBCの「アンという名の少女」のときにも、NHKの翻訳にはミスがあったと思ってる。マシューがマリラを呼ぶときに、二人称を「姉さん」でなく「おまえ」と訳していたのです。原作の「赤毛のアン」では、マシューが兄でマリラが妹なのだけれど、CBCのドラマ版では、マリラが姉でマシューが弟に変わってました。姉に対する二人称を「おまえ」と訳すのは不自然ですが、字幕制作者は、そのことを考慮せず、おおかた原作の翻訳に準拠したのでしょう。こういうミスは、もちろん翻訳者の責任でもあるけれど、NHKのプロデューサーや演出家の責任でもある。要するに、内容を理解した上でチェックをしてるのかってこと。じつは誰も内容を理解せずに、漫然と海外ドラマを放送してる可能性がある。ここからは詳細なネタバレです。今回のミステリーの複雑さは、たんに登場人物が多いだけでなく、姿を現さない人物の名前を混乱させるところにあります。たとえば上記のチャドリイ夫人も、再婚してプラット夫人に変わってましたが、ほかにも名前が変わってしまう人物が3人います。第1に、崖から落ちて死んだ男性は、ケイマン夫人の兄「アレックス・プリチャード」とされるのですが、この名前は嘘の証言にもとづいているので、本当はサヴィッジ氏の友人「アラン・カーステアーズ」です。第2に、ニコルソン院長の妻「モイラ・ニコルソン」は、じつは主犯の「ローズ・テンプルトン」(テンプルトン夫人)なのですね。再婚して姓が変わっただけでなく、偽名なのでファーストネームも変わっています。第3に、タイトルになっている「グラディス・エヴァンズ」は、主人公ジョーンズ邸の家政婦「グラディス・ロバーツ」(ロバーツ夫人)です。この人も結婚して姓が変わったのでしょうね。◇結論から先に言っちゃいますが…主人公のボビー・ジョーンズ(♂)は、「モイラは美人だから犯人じゃないっ!!」と思ってて、かたや相棒のフランキー(♀)は、「ロジャーはハンサムだから犯人じゃないっ!!」と思ってる。そして怪しげな学者がいちばん疑われる図式(笑)。でも、結果的には、「モイラとロジャーの共犯だった」というオチです。つまり、男は美人に甘いし、女はイケメンに甘いよねって話。そんな男女がバディを組んで事件の謎解きに挑み、最後はめでたく結ばれるハッピーエンドになってます。…以下、時系列に並べた事件の経緯です。1.モイラがサヴィッジ氏を服毒自殺と見せかけて殺害。ローズ・テンプルトン(のちのモイラ)が、船上で資産家のサヴィッジ氏に接触して誘惑。その後、ローズはロジャーと共謀し、サヴィッジ氏の遺言書を書き換え、料理人のチャドリイ夫人と庭師のアルフレッドに署名させる。(女中のグラディス・エヴァンズには署名を頼みません)そして翌日にサヴィッジ氏を殺害したと思われます。ただし、ロジャーは「自殺に追い込んだ」と話してます。(どうやったら自殺に追い込めるのか知らんけど)いずれにせよ使用されたのは抱水クロラールですね。2.エンジェルが転落事故死に見せかけてアランを殺害。サヴィッジ氏の自殺に疑念をもったアラン・カーステアーズは、ロバーツ夫人(=グラディス・エヴァンズ)に接触して、遺言書の謎を解こうとしていたのでしょうね。でも、モイラに雇われたエンジェルによって崖から突き落とされた。ボビーは崖下で瀕死のアランを発見し、「なぜエヴァンズに頼まなかったのか」との最後の言葉を聞き、所持品の「写真」「キーホルダー」「万年筆」を確認します。そこに現れたロジャーは、ボビーが去ったあとに、モイラの写真をケイマン夫人の写真にすり替えたのですね。モイラに雇われたケイマン夫人も「死体は自分の兄だ」と嘘の証言。3.エンジェルがモルヒネ入りのビールでボビーを殺害未遂。ボビーも、ケイマン夫人を死んだ男(=アラン)の妹だと信じ、彼が死に際につぶやいた言葉を伝えてしまいますが、このせいでエンジェルから命を狙われることになる。移動遊園地での仕事中には、少年たちから「雇用主からの差し入れ」とビールを貰いますが、致死量のモルヒネが入っていたために死にかけます。ブエノスアイレスからの仕事依頼も偽造でした。ボビーの友人ノッカーまでもがエンジェルに襲撃される。4.エンジェルが首吊自殺に見せかけてトーマス医師を殺害。トーマス医師はロジャーのことを疑って調べてたらしい。しかし、エンジェルが彼を殺害。警察はそれを自殺と断定。ボビーは警官に「自殺は不可解だ」とうったえますが、警官は「不可解な自殺もありうること」と諭したうえで、資産家のサヴィッジ氏の自殺も不可解だったと言います。5.ロジャーが兄のヘンリーを拳銃自殺に見せかけて殺害。ロジャーは「カインとアベル」の話をしてましたが、もともと兄のヘンリーとは仲が悪く、当主のくせにモルヒネに散財するのも憎かったらしい。あらかじめ拳銃で兄を殺したあと、爆竹音を銃声に偽装してアリバイを作ったようです。◇以下は、2人による謎解きの手順です。ボビーは、宿のキーホルダーや宿台帳から、崖で死んだ男がアラン・カーステアーズだと知り、彼が資産家のサヴィッジ氏の友人だったことも、2人が映った写真から知ることになります。フランキーも、海陸軍クラブが引き取ったアランの荷物の中に、サヴィッジ氏からの大量の手紙を見つけ、サヴィッジ氏とローズ・テンプルトンとの恋愛を知ります。ただ、その時点ではローズが誰なのかを分かってません。…その一方で、ボビーとフランキーは、ヘンリーの妻と恋愛関係にあるニコルソン博士が、モルヒネ中毒のヘンリーを入院させようとしてると知り、さらにニコルソン博士の営む精神病院の周辺で、モイラやケイマン夫妻やエンジェルの姿なども見かけ、ニコルソン博士への疑惑をどんどん強めていきます。とくにボビーは、モイラ・ニコルソンから怪しげな電気療法のことを聞き、妻のモイラも何らかの被害者だと思い込むわけですが、これこそが最大のミスリードになります。…なお、ボビーは、トミー(=ヘンリーの息子)が使っていた万年筆を見て、それがサヴィッジ氏から貰ったものだと知りますが、これがミスリードになったか、真相につながったかは微妙。◇そして、最後の事件は以下のとおり。6.ロジャー&エンジェルがボビー&フランキーを殺害未遂。ボビーとフランキーは旧テンプルトン邸(通称ミルハウス)に監禁され、ロジャーとエンジェルに電気ショックで殺されかけますが、間一髪のところで仲間のノッカーに救出されます。電気療法を悪用したのはニコルソン博士ではなく、その妻のモイラ(=ローズ・テンプルトン)と、彼女の一味であるロジャーやエンジェルだったわけです。つねにボビーとフランキーを守ってくれるのは、黒人のノッカーやアラブ系の使用人ですね。彼らは忠実な善人として登場する形になってる。7.モイラがボビーを殺害未遂。ロジャーがロバーツ夫人を殺害未遂。ボビーは最後までモイラを被害者だと信じてますが、もともとモイラをいぶかしく感じていたフランキーは、彼女がボビーの紅茶に抱水クロラールを入れたのを暴き、モイラの正体こそローズ・テンプルトンなのだと見破ります。そのころ、ボビーの家では、家政婦のロバーツ夫人(=グラディス・エヴァンズ)が、ロジャーによって殺されかけるのですが、ボビーが駆けつけてロジャーを取り押さえます。そして収監されたロジャーからすべての真相が語られます。◇いろいろツッコミどころはある気がしますが、個人的に最大のツッコミどころは、車の偽装事故を見破るほど明晰なニコルソン博士が、なぜモイラのような女と結婚し、彼女の正体がローズ・テンプルトンだとも気づかず、片方では他人の妻と恋愛関係になり、妻の犯罪には気づかぬまま、護衛として雇ってるエンジェルの犯罪にも気づかず、不倫相手の義弟であるロジャーの犯罪にも気づかず、ケイマン夫妻の犯罪にも気づかないのかってこと。周りの人間が犯罪者だらけだよね。ちなみに、この間抜けなニコルソン博士を、脚本・演出のヒュー・ローリー自身が演じてました。なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文庫) [ アガサ・クリスティ ] 楽天で購入
2024.03.28
だいぶ遅れをとりましたが、「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」第7話の《死神の呪い》と、最終話の《失われた記憶》を見ました。◇◇まずは第7話《死神の呪い》から。いきなりですが、ニコラの台詞です。ハロウィンの起源はケルトのサウィン祭で、あの世へと通じる門が開かれて、死者の魂が帰ってくる晩ですよ。たぶん、このエピソードの隠れテーマは、ブルターニュ地方のケルト文化だったのよね。◇フランス北西部のブルターニュ地方は、イギリス海峡に面した半島部分に位置するのだけど、5~6世紀ごろに、ブリテン島からケルト民族(=ブリトン人)が移住し、Bretagne(ブルターニュ)という地名も、ラテン語の「Brittania」(=ブリトン人の土地)に由来するらしい。現在でもなお、フランス語とは異なる「ブルトン語」が話されてて、ドラマのなかでは、フルニエ先生だけが理解できる言葉だったようです。ヨーロッパのなかで、もっともケルト系の言語が残ってる地域なのですね。ブリトン人の移動。https://ja.m.wikipedia.org/ケルト系言語の分布。https://ja.m.wikipedia.org/ブルターニュ地方に伝わる死神のアンクウ(L'Ankou)も、そんなケルト文化の名残なのかもしれません。◇ちなみに、この回に使われた音楽は、こころなしかハリーポッター風だったのですが、ブリテン島のウェールズやスコットランドにも、ケルトの文化は残ってるみたいだし、ハリポタに出てくるホグワーツ魔法学校も、スコットランドにある設定らしいから、もともとケルトっぽい要素が入ってるのかしら?ハリーポッター風の音楽?Erwann Kermorvant「Night Walk」◇◇さて、次は、最終回《失われた記憶》です。ラファエルはいままでにない大ピンチ!交通事故に遭って、記憶喪失になって、殺人容疑までかけられてしまった。逆行性健忘は、月9「ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜」にも出てきましたね。◇この回の隠れテーマは、おそらくサッカー界の闇だったのだと思う。以下は、ニコラたちの話です。ジャン・マルク・ルーヴェのような代理人は、おもにアフリカや南米に行って世界的なスターになれる原石を探す。選手の家族は借金をして、名門クラブのトレーニング費用を法外な現金で払わされる。なかにはヨーロッパのビッグクラブで成功した例もあるが、競争に負けた子たちは容赦なく捨てられ、犯罪組織の餌食になり、麻薬や窃盗、売春に手を染める。ラファエルは、ルーヴェのことを「人身売買と現代の奴隷制の黒幕」と呼んだ。実際に、こういう問題はあるようです。映画 『ソカ・アフリカ -欧州移籍の夢と現実』お金を要求するだけして、サボのように選手を遺棄してしまうような人身売買めいた代理人に騙されている選手がほとんどなのがアフリカの実態だと、同じアフリカの代理人(FIFA公認)は語る。しかも、その被害は問題視されながらも変わっていないし、クラブ側もそれをさして問題視はしてない。1996年に16歳でカメルーンから欧州に来た Njiki Bodo 選手は、フランスやベルギーのクラブをたらい回しにされたあげくに、ほとんど奴隷的といえる契約にブリュッセルの路上で困窮することになり、欧州でスキャンダルとして大きく報道された。しかし、その実態は十数年たっても改善されたとはいえないようだ。英国のガーディアン紙は、ビッグクラブを夢見てやってくるアフリカのサッカー少年たちが、路上でニセブランドのカバンを売るような境遇に陥っていると告発している。https://www.asahi.com/sports/soccer/world/goal/GOC201301290057.htmlサッカーと貧困ビジネスの闇…悪質詐欺師がサッカー少年を騙して人身売買「サッカーでの栄光を求めて、アフリカからヨーロッパに人身売買される未成年は、年間15,000人以上と推定されています。プレミアリーグは、悪質なエージェントに騙されないよう注意勧告した結果、被害は減少しています。しかし、それでも詐欺被害は無くなりません」イギリスのスポーツ安全保障センターのフレッド・ロード氏が指摘するように、弱者から金を搾り取る悪質な詐欺は後を絶たない。アフリカの少年達は偽造パスポートを渡され、プレミアリーグと全く関係のないネパールなどの国に送られ、お金も身分証もないまま、違法薬物の運び屋や過酷な肉体労働を強いられる。https://bq-news.com/bq180730a性奴隷にされたサッカー選手7名が救出される…人身売買組織が関与『Marca』によれば、今回スペインの治安警備隊にあたるグアルディア・シビルによって救出されたのは南米出身の7名で、その中には未成年の選手も1名いたとのこと。彼らは、ある組織によって「給与が高い仕事とプレーできるクラブ」を約束されてスペインに連れて行かれていたという。しかし、いざスペインに到着すると、組織は選手たちのパスポートを剥奪し所持品や金品なども没収。カディス県にあるプラド・デル・レイという街の小さな部屋に彼らを住まわせ、同性愛者向けの売春を強要していたという。https://news.line.me/detail/oa-rp82321/b4a63c773d70ラファエルが殺人現場で見たポスターには、メキシコ風の骸骨の絵と「CONCERT XOCHITL」の文字。XOCHITLは、メキシコの女性の名前でしょうか?自殺したディエゴ・ラッソは南米の選手かもしれません。なお、日本では、小学館と漫画家の関係が取り沙汰されましたが、代理人=エージェントってのも安易には信用できませんね。◇◇それはそうと…第6話では、ラファエルがノラの恋を後押ししましたが、第7話では逆にノラがラファエルの恋を後押し!そして、ついに最終話では、記憶を失った2日間のあいだに、◆署で1回 ◆車の中でも ◆ソファでも合計6~7回もバンしたって。(…笑うとこ?)署内ってのは、さすがにどうなの?…(~~;結果、ラファエルは妊娠!一方、テツオは奨学金を打ち切られて東京へ?!ええ~?!そんな終わり方?でも、シーズン5が撮影中なのだそうです。最終回の挿入曲。Racoon Racoon「Unnamed」↓それ以前の挿入曲のプレイリストもありました↓https://open.spotify.com/playlist/6w01cEYoiWUvQ0tRJPQdcH
2024.03.09
またまた一週おくれで、「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」第6話の《タイムトラベル》を見ました。めっちゃ面白かった!!いつもならオカルトっぽい要素があっても、ちゃんと種が明かされるのだけど…ついに今回はマジモンのSF??◇2059年からやってきた殺人未遂の女。未来では地球温暖化が深刻化し、キリンやオランウータンが絶滅し、環境運動家の男が極右政党と組んで独裁者になってる…と。でも、未来の独裁者が逮捕されて、石油企業オペラ社の不正が暴かれれば、タイムパラドックスが生じて未来が変わる?◇はじめのうちは、オペラ社がその女を暗殺者として雇い、環境運動家の男を消そうとしたと推察されました。そして女は、その報酬の大金をワイロに使って、護送車から脱走したのじゃないかと疑われた。でも、実際は、環境運動家の男こそが、オペラ社から大金をせしめて、おなじ環境運動家の女性を殺害していたのですね。なので、オペラ社が男を暗殺する理由などなく、女に大金を支払う理由もありませんでした。そう考えると、やっぱり女は脱走したんじゃなく、タイムリープで未来へ戻ったとしか考えられない!※余談ですが「タイムリープ」ってのは和製英語だそうです。◇でも、ラファエルは、猫が引っ掻いた女の子の手首の傷を確認しませんでした。それが未来人の傷と同じかどうかは、視聴者のご想像におまかせします!…って感じ?そこらへんの演出もニクい!まあ、女がほんとに未来人だと証明したかったら、DNAを鑑定して、レイプ犯だった環境運動家の男と父娘関係を調べれば、確実だったのだけどね。◇◇今回のエピソードには、SFっぽい本筋以外にも、いろいろと興味深い部分がありました。…ひとつは、環境運動家の男が、スラノヴスキーという東欧・ロシア系の姓だったこと。これには何かモデルや背景があるのかしら?ためしに「SRANOVSKI」でググってみたけど、何の情報も出てきませんでした。「スワロフスキー(SWAROVSKI)」なら、オーストリアの高級ガラスブランドですけども。…ちなみに、殺された仲間の女性は真面目なヴィーガンで、オペラ社の不正も本気で暴こうとしてたのに、スラノヴスキーのほうは、もともと悪質なレイプ魔で、金のためにオペラ社と手を組んだり、権力のために極右政党と手を組んだりしていた。彼にとって環境運動は、金と権力を握るための見せかけ・隠れ蓑だった?◇ついでながら、「ヴィーガンの死体は腐敗しやすく肥料になりやすい」って話も興味深い。いってみりゃ有機農法だよね…。ツバキの花は、品種によって、開花時期が11月〜4月ごろまでバラバラだけど、肥料しだいで開花が早まったりするのかしら。ふつうの椿も、ヴィーガンの死体を埋めれば寒椿になる??◇ノラとニコラの以下の会話も気になりました。ノラがニコラに、> ベビーブーム世代の人は音楽の趣味もいいし、> X世代やZ世代の人よりも好きだわみたいな思わせぶりなことを言ったのだけど、こういう世代分類って世界共通なのねえ…。ネット情報によると、X, Y, Z世代は米国発祥の概念だそうです。かたやベビーブーム世代ってのは、日本でいう「団塊ジュニア」のことかと思いましたが、Wikipediaによると、アストリッドやラファエルは30才の設定らしいので、たぶんニコラもそのぐらいの年齢だと思うし、いわゆるY世代(ミレニアル世代)のことですね。しかし、そこにフランスのベビーブームがあったかどうかは、調べてみても分からなかった。◇もうひとつ気になったのは、「アストリッドはニルスの指ぬきだ」という表現。たぶん指ぬき=保護者ってことだと思うけど、日本ではあまり耳慣れない言い方。フランスの慣用句なのかしら?ためしに「指ぬき・フランス」でググってみたら、可愛いアンティークの指ぬき画像がたくさん出てきました(笑)。フランス語の指ぬきは男性名詞の「dé」だそうですが、残念ながら比喩や慣用句の用法までは調べきれない。SAJOU ファインボーンチャイナ 「A」 指ぬき シンブル 【DÉ DE COLLECTION PORCELAINE - POINT DE CROIX - LETTRE A】 フランス MER_DE_FISMES_A 【予約】 楽天で購入 サジュー 指ぬき シンブル ホワイトポーセリン 【DÉ DE COLLECTION PORCELAINE BLANCHE BRODEUSE SAJOU ROSE】 手芸 パッチワーク キルティング フランス MER_DE_REIMS_ROSE 【予約】 楽天で購入 Sajou(メゾンサジュー) 指ぬき シンブル アセテートクリスタル 【DÉ DE COUTURIÈRE ÉCOSSAIS】 フランス MER_DE_ECOSSAIS_01 【予約】 楽天で購入
2024.02.27
またも周回おくれですが、「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」第5話の《盤上の殺意》を見ました。今回は、犯人のチェスおたくっぷりが炸裂!アストリッドがチェス対決で自白させた結末もお洒落だった。◇わたしはチェスができないし、小ネタの多くもチンプンカンプンだったけど、チェス好きにはたまらない内容だったかも。いちおう、わたしなりに、ドラマに出てきたチェスネタを調べてみました。ほとんどはニコラが話してたネタです。1.ロシアの「ルーク」は舟。チェスの「ルーク」という駒は、塔や城塞みたいな形をしてますが、ロシアでは「ラディヤ=船」と呼ぶらしい。チェス駒の概念は国や地域で異なるのですね。これは「ルーク」だけの話じゃない。もともと、古代インドのチャトランガという盤ゲームが、ペルシャでシャトランジになり、中国でシャンチーになり、日本で将棋になり、ヨーロッパでチェスに変わったとのことで、その結果、チャトランガの「ラタ=戦車」が、将棋では「香車」や「飛車」に変わったのだけど、これがチェスでは「塔」や「船」に変わってる。その経緯や理由は謎です。◇…ちなみにロシアといえば、今回のドラマには、「ロシアン・ザグレブが制作したチェス駒」が出てきて、これが事件解決の糸口になってましたね。きっと職人の手彫りによる高級品なのでしょうが、ネットで調べても詳しいことは分かりませんでした。日本でいったら、天童市の将棋の駒みたいな感じ?2.チェスとフリーメイソンの関係。これもよく分からないけど、たぶん「テンプル騎士団のチェス」のことだと思う。…といっても、▽Wikipediaに画像が掲載されてるだけで、https://ja.wikipedia.org/wiki/チェスの歴史それ以上の情報はネットを調べても出てこない。他方、「十字軍とサラセン人のチェス」を描いた絵も、ネット上にたくさん出てきます。つまり、チェスは、ヨーロッパ人とアラブ人の共通の遊びだった?それとも、チェスの伝播が十字軍遠征に関連してる?3.宇宙論の「クイーン」は変わりゆく魂。この話もよく分からなかったのですが、ちょっと気になったのは、甚野尚志の『中世ヨーロッパの社会観』という本です。1992年の『隠喩のなかの中世』を改題・文庫化したもので、もともとの単行本の内容紹介には、蜜蜂・人体・建築・チェス盤のなかに、宇宙の神的な秩序や社会の理想的なあり方を見出した中世ヨーロッパの人々の世界観を再現する。と書かれてます。中世ヨーロッパには、チェスに見立てた宇宙論があったのかもしれません。中世ヨーロッパの社会観【電子書籍】[ 甚野尚志 ] 楽天で購入 4.宰相シッサの米粒の説話。この話はネットでも確認できます。米粒じゃなくて麦粒になってる場合が多いけど。英語のWikipediaにも詳細な記事が載ってます。https://en.wikipedia.org/wiki/Sissa_(mythical_brahmin)https://en.wikipedia.org/wiki/Wheat_and_chessboard_problemいわく、インドの宰相シッサは、チェスを発明した褒美として何を望むのか王に問われ、> チェス盤の1マス目に1粒、> 2マス目に2粒、3マス目に4粒、4マス目に8粒、> …とマス目ごとに粒の数を倍にして、> 最後の64マス目に置かれた小麦の粒が欲しいと言ったのですね。これは2の63乗になる。似たようなものとしては、日本の曽呂利新左衛門の説話があって、彼は、豊臣秀吉から褒美を問われた際に、> 1日ずつ米粒を倍にした100日目の米粒が欲しいと言ったそうです。これは2の99乗になる。◇これは要するに指数関数の話で、> 折り紙を26回折ったら富士山より高くなるってのと同じようなことです。2の26乗は、67,108,864。2の63乗は、9,223,372,036,854,775,808。2の99乗は、633,825,300,114,114,700,748,351,602,688。https://ja.wikipedia.org/wiki/2%E3%81%AE%E5%86%AAなお、曽呂利新左衛門は秀吉に仕えたお伽衆で、落語の始祖ともいわれてますが、実在した人物かどうかは不明だそうです。インドの宰相シッサも、おなじく伝説上の人物です。5.囲碁の打ち手とチェスの打ち手。アストリッドは、テツオとの囲碁練習が功を奏して、犯人とのチェス対決にも動じませんでした。これって、ある意味、チェスに対する囲碁の優位性を示してる気もする。実際のところ、囲碁の打ち手(局面数)はチェスよりはるかに多く、チェスが10の120乗、囲碁は10の360乗だそうです。木製 チェス セット ポーランド製 Olympia オリンピア ブラウン35cm×35cm chess set ハンドメイド 駒盤 数量限定販売 楽天で購入 初心者の木製囲碁入門セット ※木製新桂13路9路盤・プラスチック碁石椿(白石84粒・黒石85粒)・ブロー碁笥・囲碁入門本(1冊選択) 楽天で購入
2024.02.24
またまた一週おくれですが、「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」第4話の《不死の男》を見ました。今回のテーマは"トランスヒューマニズム"。すなわち《超人間主義》です。遺伝子工学などによって、人間が生物学的な限界を超えるという思想。ストーリーは、いままででいちばん面白かったかな。◇以下は、簡単なあらすじネタバレ。メッタ刺しに殺されたのは遺伝子研究者の男。ところが、凶器に付着してたのは被害者自身の指紋とDNAだけ。もしかして自分で自分をメッタ刺しにした??そんなことありえない!!DNA型が同じ一卵性双生児の犯行とも疑われたけど、被害者に双子の兄弟など存在しません。結局、犯人は被害者の息子でした。…といっても、それはほんとうの息子ではなく、齢の離れたクローン人間だった …というオチ!クローン人間の息子が父を殺す一方で、アストリッドの腹違いの弟ニルスは、父の顔さえ知らないのに、亡き父と同じように鉛筆の噛み癖をもっていた…。そんな2つのエピソードが対比されてます。◇今回、とくに興味をひかれたのは2つの名前でした。ひとつは、遺伝子操作で誕生した赤ちゃんの「アンティゴネー」。もうひとつは、被害者の男が名乗っていた「イザーク・ラクデム」。◆アンティゴネーギリシャ神話のアンティゴネーはオイディプス王の娘です。彼女は、オイディプスの次王クレオーンと対立しました。このアンティゴネーとクレオーンの対立は、神の法(ピュシス)と人間の法(ノモス)の対立といわれてます。それは言い換えれば「自然」と「人工」の対立なのですね。今回のお話では、遺伝子操作の犠牲者である赤ちゃんアンティゴネーを見て、アストリッドが涙を流すシーンがありましたが、遺伝子工学にもとづく超人間主義が、神=自然の法則への冒涜と位置づけられてるわけです。◆イザーク・ラクデム一方、この名前は、デュマの未完の小説から採られてるらしい。その名も「Isaac Laquedem」という1853年の作品。主人公の名前が題名になってるようですが、残念ながらネットで検索しても邦訳が見当たらない。調べてみると、これは「さまよえるユダヤ人」のヴァリエーションで、すなわち不死伝説に材をとった物語のようです。ヨーロッパに伝わる「さまよえるユダヤ人」とは、十字架に向かうイエスを罵ったために、その再臨まで地上を彷徨いつづけるよう呪われた男のこと。つまり、永久に死ねなくなって、いつまでも生きることを強いられたユダヤ人です。◇この「さまよえるユダヤ人」の不死伝説は、その後、さまざまな文学作品などに変奏されてます。ワーグナーの「さまよえるオランダ人」もその一つですが、このアレクサンドル・デュマの「Isaac Laquedem」もそうなのね。日本でいうと、手塚治虫の「火の鳥」や、萩尾望都の「ポーの一族」や、大今良時の「不滅のあなたへ」などの漫画作品も、やはり不死をめぐる物語なので、この「さまよえるユダヤ人」のヴァリエーションかもしれません。Isaac Laquedem【電子書籍】[ Alexandre Dumas ] 楽天で購入
2024.02.14
一週おくれですが、「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」第2話の《千夜一夜物語》を見ました。今回はイラン難民の話。このドラマを見てると、フランスは移民社会なのだなあと分かります。黒人や日本人も出てくるし、北米先住民が出てきたこともあるし、むしろ生粋のフランス人のほうが少ない気がする。◇今回の物語の背景について、いろいろ気になったので調べてみました。1.ジン&イフリート&シャフリヤール被害者は、シャフリヤールという別人を名乗っていました。これは「千夜一夜物語」の王の名前でもある。サーサーン朝のシャフリヤール王は、不貞を犯した妻と奴隷を殺したあと、若い娘を毎晩ひとりずつ殺したのですね。しかし、シェヘラザードが物語を話しはじめたので、その続きが気になった王は、娘殺しをやめたわけです。…ジンというのは、アラブ世界で信じられている精霊/魔物です。精神病などを「ジンが憑依した」と解釈するそうです。スーフィーの占い師や祈祷師は、ジンを操って病気の治療をしたりするらしい。ディズニーの「アラジン」ではジーニーとして登場します。イフリートも、このジンの一種で、魔法のランプから出てくるのもイフリートです。今回のドラマでは「火の精霊」と説明されてました。被害者は、まるでイフリートに焼き殺されたかのごとく、真っ黒焦げの死体で見つかったわけです。2.スーフィズム&コーヒー&セマー後述するように、被害者の正体は別人でしたが、本物のシャフリヤールはスーフィーの男性で、もともとはイラン南部の羊飼いだったらしい。じつはスーフィーは、アラビア語で羊毛を意味する「スーフ」に由来し、羊毛をまとった貧しい人々の意味だったようです。…スーフィズムというのは、イスラム教より古くから存在する、神秘主義的で実践性の強い原始宗教です。ドラマのなかでニコラ・ペラン警部は、「その実践主義が教義に合わず、イラン政府に迫害されてる」と話してました。…こういう原始宗教は世界中に存在しますよね。たとえば日本では、仏教が観念的なのに対して、神道のほうは、より実践的で神秘的です。仏教のなかでも、顕教より密教のほうが実践的かつ神秘的です。また、キリスト教の世界でも、原始的な神秘主義はグノーシスとして異端視される。… ドラマのなかで被害者の娘を名乗っていた女性は、トルコ人のコミュニティに加わっていて、くるくる回るダンスを踊ってました。これは、メヴレヴィー教団の旋回舞踊「セマー」ですが、やはりスーフィズムから生まれた宗教行為で、トランス状態になるまで回って神を体感するらしい。トルコ政府は、メヴレヴィー教団の活動を禁止してるものの、観光客向けの芸能として「セマー」を容認してるようです。…加害者のひとりであるタクシードライバーの女性は、乗客にコーヒーを提供してました。じつはコーヒーの文化も、イエメンのスーフィズムに発祥しています。瞑想や修行に取り組む際、食欲や睡眠欲に打ち克つために、覚醒作用のあるコーヒーが飲まれたのだそうです。3.イラン革命防衛隊と女性による反政府デモ今回のドラマの加害者たちは、イラン革命防衛隊から迫害を受けたり、家族や恋人を殺されたりした3人の女性でした。これはおそらく、2017~18年に起こったイラン反政府デモを題材にしてます。フランスでこの回が放送された前年の2022年にも、やはりイランで大きな反政府デモがありました。これらはおもに女性を中心としたデモであり、BBCなどの記事によると、多くの人が逮捕され、不当な裁判で死刑判決を受けたり、拷問を受けて不可解な死に方をしたり、行方不明になったりしているようです。https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64092881さらに、こちらには、スーフィーへの弾圧のことも書かれています。https://www.moj.go.jp/isa/content/001380819.pdf…ドラマのなかで、シャフリヤールを名乗っていた被害者は、かつて革命防衛隊に属していた男でした。ニコラの話によれば、イラン政権は、彼が反体制派に殺されたと思ってるが、実際は脱走していたので、微妙な立場にあった。誰かに正体を知られたら庇護を受けられなくなるし、もし国に戻れば、民衆にリンチされるか、反逆罪で処刑される運命だった。とのことです。民族心理学者のカウンセラーが、3人の女性に復讐殺人を教唆したのは、上記のようなイランの政治的混乱のなかで、被害を受けた女性たちの悲劇を知っていたからです。その背景を知らなければ、最後にラファエルが涙を流した理由も分からない。◇◇◇余談ですが、第1話のタイトルは「ドラゴンの目」でしたね。辰年だけに??! …と思ったけど、去年のフランスのドラマだから、たんなる偶然。シーズン4では、黒人のアルチュールが休職した代わりに、保険会社から警察に出戻ったノラが加わりました。頭も切れて、なかなかセクシーな美人だし、またもラファエルの恋敵が現れた感じです。でも、ラファエルも負けず劣らず、髪型をボブに変えて、前シーズンより女っぽくなった。アストリッドの腹違いの弟は、なんだか変わった男の子です。◇◇これまた余談だけど…Tverで年明けに、テレ朝「未解決の女~警視庁文書捜査官」を再配信してました。考えてみたら、あの設定はアストリッド&ラファエルに似てる!麻見和史の原作「警視庁文書捜査官」シリーズは、2015年にはじまってて、大森美香のドラマも2018年にはじまってるので、2019年にはじまったフランスのドラマよりも早い。波瑠&鈴木京香の立場は、アストリッド&ラファエルとは逆だけど、波瑠のキャラは、どことなくアストリッドに重なります。
2024.01.30
NHK「アストリッドとラファエル」シーズン3。第7話は《知性のある植物》がネタになってました。◇知性のある植物については、Nスペの「超進化論」でも取り上げられてたし、いとうせいこうやスティービーワンダーに絡んで、朝ドラ「らんまん」にも繋がるテーマだと思ってたので、ついつい、そっちの方面から興味をそそられてしまった。↓くわしくはこちら。https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202301080000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202304290000/◇今回のエピソードには、じつにいろんな植物ネタが出てきていました。・マンチニールは死のリンゴ!・オジギソウには知性と感受性がある!・アカシアのタンニンでアンテロープが死ぬ?・医療用大麻でラスタマンが喜ぶ?・糞人参とトリカブトはマラリアの薬?・ボードレールの「悪の華」(Les Fleurs du mal)・アカシアの毒をもってトリカブトの毒を制する?・青いバラの色素デルフィニジンは実在する!たぶん、植物オタクを大喜びさせるような、かなりマニアックな内容だったと思います。わたしは植物オタクじゃありませんが、「いわゆる"毒リンゴ"ってあるんだなあ…」とか、「猫がアカシアで中毒を起こすのは事実らしい」とか、「大麻合法化とラスタファリアニズムの関係?」とか、調べてみたら、いろんなネタが折り込まれている。◇まず犯罪トリックをネタバレすると、殺害に用いられた「悪の花」の正体は…樹液で皮膚を火傷させるマンチニールでも、タンニンで捕食者を攻撃するアカシアでもなく、抗マラリア薬として服用されていたトリカブトだった。しかも、そのトリックと犯人を見破ったのは、知性あるオジギソウの「パコ」だった…というオチ!ニコラとテツオが、ボードレールの詩について語り合う場面もありましたが、表題の「悪の華」はもちろんボードレールから取られてる。◇殺されたのは、2人の女性。植物学者のフランソワーズと疫学者のデルフィーヌです。2人は同性愛者で恋愛関係にありましたが、デルフィーヌには夫がいたので、いわゆる不倫でした。ナイジェリア出身のデルフィーヌは、両親をマラリアで亡くし、自身もマラリアに感染していて、治療のためにトリカブト入りの薬を服用していた。フランソワーズは、恋人を病から救うため、重篤な副作用のあるトリカブトではなく、糞人参という別の植物でマラリア薬を作ろうとしていた。同時に、彼女は、青いバラの開発にも成功していて、アジサイの遺伝子から抽出した青い色素を、恋人の名にちなんで「デルフィニジン」と名づけていた。◇これらについて調べてみると、どうやら虚実入り混じる話のようなのです。…たとえば、青いバラの開発は実際に成功しています。それを手掛けたのは日本とオーストラリアの企業。(サントリーフラワーズとCalgene Pacific)その色素が「デルフィニジン」という名前なのも事実。(名前の由来は調べても分かりませんでした)ドラマの中ではアジサイとなっていましたが、実際にはパンジーの遺伝子から取られたらしい。(鬼滅の青い彼岸花も作れるかも?)https://ja.wikipedia.org/wiki/青いバラまた、糞人参が抗マラリア薬なのも事実です。(トリカブトもマラリアに効くのかは不明ですが)https://ja.wikipedia.org/wiki/クソニンジンナイジェリアでマラリアの感染が多いのも事実。(世界のマラリア患者の4分の1以上を占めるらしい)フランスにはアルジェリア移民がたくさんいるけれど、ナイジェリア移民がマラリアを持ち込むこともあるのかしら?https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/africa/nigeria.html◇さらに、次のアルチュールの話にも虚実が入り混じってる。デルフィーヌの出身はナイジェリアで、両親をマラリアで亡くし、WHOの決定に抗議して、フランソワーズと同時に製薬会社を退職した。このセリフだけを聞いても、WHOの何の決定に抗議したのか分からないのですが、これって実際にはマラリアではなく、おそらく新型コロナの話から作られたエピソードなのです。…というのも、「糞人参やトリカブトは新型コロナの治療に効く」との説があり、2020年の半ばまで、WHOはこうした説に否定的だったのです。糞人参のWikipediaにはこうあります。WHOは当初、新型コロナウイルス感染症の治療薬になり得るとうたわれている薬用植物については、効果や副作用、安全性などの試験が必要として、クソニンジンなどを用いた代替医療を巡り警鐘を鳴らしていたが、2020年9月19日になって、一転して新型コロナウイルス感染症の治療法となる可能性があるとして、WHOはクソニンジンを含む薬草を用いた植物療法の臨床試験計画を承認した。ちなみに、ドラマの中では、フランソワーズが「一年半前に退職した」とされていましたが、この回がフランスで放送されたのは2022年9月16日ですから、上記のWHOの動きは、おおむね時期的に一致する気がします。◇ところで、フランソワーズが育てていた「パコ」はオジギソウであり、トリカブトを解毒するために食べたのはアカシアの葉でしたが、これらの植物には、日本にだけ特有の面倒くさい事情があります!!…というのも、なぜか日本では、ニセアカシアが「アカシア」と呼ばれ、本物のアカシアは「ミモザ」と呼ばれ、本物のミモザが「オジギソウ」と呼ばれているからwたとえば、北原白秋の「アカシアの花が咲いてる」(この道)とか、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」は、たぶん北海道や大連のアカシア並木を歌ってるのですが、…それはニセアカシアのことです。牧野富太郎が聞いたらブチ切れそうな話ですよね。ついでにいうと、「糞人参くそニンジン」ってのもすごい名前w日本語吹き替えではこの単語を連発してたので、個人的にかなりのパワーワードでした。これも日本ならではの名前だと思います。◇さて、余談ですが、アストリッドはつねづね「恋愛は理解不能」と言ってたのに、今回のエピソードでは、むしろラファエルのほうこそが、ニコラの恋心に気づいてなかったことが判明!おそらくはニコラもラファエルの恋心に気づいてないのですね。つまるところ、恋愛が理解できないのは自閉症の問題じゃないってことwそれどころか、アストリッドはテツオとのキスを成功させたので、立場が完全に逆転してしまいました。どうせなら、恋愛のことも「パコ」に聞けばよかったのにね。
2023.09.11
海外ドラマの「アストリッドとラファエル」を、第2シーズンぐらいから、ちょこちょこ見てます。フランスのドラマなんだけど、そこまでフランスっぽくはありません。すくなくともフランス映画のような感じではなく、どちらかといえばBBCや米国ドラマの雰囲気に近い。女警視のラファエルは、ロサンゼルスとかにいそうな豪快姐さんだし、複数の黒人キャストもレギュラーで登場します。◇海外の映画やドラマを見るときは、いつも原語で副音声を聞きながら字幕で見るのだけど、…このドラマにかぎっては日本語の吹き替えです。フランス語だと、なんか調子が狂うのよねwBBCのドラマを、フランス語の吹き替えで見てるみたいな感じになる。それよりは、日本語の吹き替えのほうがしっくりくるし、貫地谷しほりのアテレコのほうが自然に聞こえる。◇…とはいえ、物語の題材は、どことなく「ダヴィンチコード」っぽい。そこが、いちばんフランス的なのかなと思う。※モリアーティ教授みたいな犯罪者が出てくるところはホームズっぽいけど。たとえば、第2シーズンと第3シーズンの話のネタは、およそ以下のような感じです。・超能力者の偽魔術・ヤクザの入れ墨と侍のハラキリ・宇宙人による誘拐・パイプオルガンと中世ネウマ譜・魔女と豚の呪い・ユダヤの巨人ゴーレム・薔薇十字団とヘルメス文書・アルコール依存症の更生グループ・ディープステートの陰謀論・修道士の聖痕とイエスの再臨・カナダの先住民虐殺・精神科の閉鎖病棟・自閉症エコラリアと鉄道ダイヤグラム・東欧のドラキュラと黄金の血つまり、オカルト、エキゾチズム、カトリシズムの闇などがテーマになってる。もちろん、オカルト的なのは事件の外見だけで、謎解きをすればトリックがわかる…という仕掛け。◇主人公のアストリッドは、自閉症スペクトラム障害です。日本でも、橋部敦子の「僕の歩く道」のような自閉症のドラマはあった。自閉症の特徴は、非言語のコミュニケーションが苦手ということ。言外の意味が汲み取れないし、情緒的な共感も出来ません。細部にわたる記憶力がよすぎて疲労しやすいため、変化を嫌い、規則的な反復を好んで安心する傾向がある。他人から触られるときの予測不可能な刺激も苦手。(キスシーンはちょっと笑えました)アストリッドいわく、「自閉症は病気ではないので治りません」とのこと。ちなみに、彼女に貫地谷しほりの声を当てた人は見事ですね。本人のキャラとは真逆のように思えるけど、すこし堅めの声が不思議なくらいハマってます。◇そして何故か、このドラマには日本人がけっこう出てくる。アストリッドの恋人はタナカテツオという日本人。シーズン2の第2話はサムライとヤクザの話。シーズン3の第6話には日本人のバイオリニストも登場。アストリッドは、資料室の倉庫に正方形の置き畳を敷いて、なにやら茶室のような空間を作ってます。茶道の規則的な所作で落ち着けるのかな。https://t.co/GxvfDlm5Pa— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) September 3, 2023 ◇でも、フランスにおける日本人のイメージってよく分かりません。自閉症のアストリッドが心を許せるのは、なぜ豪快姐さんのラファエルと、日本人のタナカテツオなのか?日本人男性は几帳面かつ繊細というイメージなのかしら。世界的なタナカさん&世界的なテツオさん。 でも、テツオは「鉄男」じゃなくて「哲夫」だろうな。 雰囲気的に。 そして、なぜバッハを演奏するバイオリニストは日本人なのでしょう?たしかにバッハの音楽そのものが、数学的な規則性と反復から出来ているとは言えるけど、そういう特徴が日本人に向いてるってこと?◇そこそこ面白いドラマではありますが、フランス本国で30%近い視聴率を獲得してると聞くと、逆に「そこまで面白いか?」とも思ってしまう。正直なところ、事件のトリックも、いまいち判然としないまま置き去りにされることも多いし。フランスの一般の視聴者がこのドラマのどういう部分を好んでるのか、興味深くある反面、なかなか謎です。
2023.09.03
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