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フジ「アンメット~ある脳外科医の日記」。第10話は、これまで以上にずっしり重たい内容…。◇Yuki Saito のドキュメンタリー風の演出は、味わい深くもあり、怖くもありました。忘れられない悲しみがある一方で、忘れてしまう恐怖と、忘れられる恐怖がある。死別した後になってもなお、自分と相手の存在が区別できなくなるほど、強く記憶に刻み込まれてしまう人もいる。脳には内側前頭前野という場所があって、自分と他人を区別する場所なんですけど、大切な人や恋人に関しては区別しなくなるという報告があります。つまり、その人のことを自分のように感じてしまうんです。その一方で、大切な相手が目の前にいてもなお、その人が誰なのか分からなくなる人もいる。私は何を、いつまで覚えていられるのか?大切な人たちも、交わした言葉も、一緒に過ごした日々も全てなくして、最後は何も残らないのだろうか?◇でも、記憶がなくなっても、心は覚えてるかもしれない。それがわずかな望み。失われないものも、きっとある。最終回、三瓶先生はノーマンズランドの手術に挑むの???小っちゃいのに一口が大きい!
2024.06.18
TBS「アンチヒーロー」が終了。明墨の手法は、みずからが犯罪者になる捨て身の戦術。証拠隠滅から文書偽造まであらゆる手段を使った。伊達原が文書の偽造で冤罪を生み出したように、明墨も文書を偽造によってそれを暴いたってこと。そうでもしなければ、巨悪は追い込むことはできなかったし、冤罪に加担した罪悪感からも逃れられなかったのね。◇結局、緋山は殺人犯でした。名前に色のついたキャラは、全員が明墨サイドの人物でしたが、やはり《緋色=スカーレット》は、犯罪に関係する名前だったみたいです。朝ドラ「虎に翼」の岩田剛典は、法を順守して餓死してしまう役でしたが、こちらのドラマでも、法だけじゃ人間を守れないことが示された。場合によっては、法を破らないと真実にたどりつけない。法は完全じゃないし、法だけじゃ正義を守れない。実際、巨悪は暴かれて冤罪は晴らされたけれど、ボツリヌストキシンで一家を毒殺した犯人は、いまもどこかで生き延びてる。法の網をくぐる悪も存在するし、法を逆手にとった悪も存在します。「#アンチヒーロー」12年前の真犯人は…未回収のまま終わった2つの謎#長谷川博己 #緒形直人 #大島優子 #野村萬斎 @antihero_tbshttps://t.co/kQXu5Utz21— シネマトゥデイ (@cinematoday) June 16, 2024◇ある意味で、巨悪との戦いは世代間の争いでもありました。明墨&桃瀬&緑川 という同期の3人が、上の世代の組織犯罪を暴くために、組織の枠を超えて横に繋がり続けてたのですね。桃瀬と緑川と明墨は同期でした。現実にも、世代交代によってしか覆らない犯罪があるはず。とくに縦の組織によって隠蔽された犯罪は、組織の枠を超える横の繋がりがないと暴けないし、そのときには世代的な連帯が意味をもちます。◇奇しくも、この図式は、日テレの「花咲舞が黙ってない」と同じですね。銀行の組織的な闇を暴くために、相馬&川野&昇仙峡 という同期の3人が、立場を超えて横に連携していました。川野と昇仙峡と相馬も同期でした。こちらの場合は、銀行の組織そのものが、"エリア51"なる犯罪を隠蔽する人脈で形成され、その共犯者にならないと出世できない仕組みだった。紀本に接近していた昇仙峡は、伊達原に接近していた緑川と似ています。巨悪を暴くべく10年かけて内部に潜り込んでいた。紀本に取り入った昇仙峡。伊達原に取り入った緑川。◇上の世代の罪が重ければ重いほど、下の世代の負担やコストは大きくなり、無駄な時間とエネルギーを費やさざるをえなくなる。明墨の犯罪は、世代悪を浄化するための必要悪でした。#アンチヒーロー ご覧頂きありがとうございました‼️約3ヶ月間たくさんの応援ありがとうございました🐶ミル、マメ、ココアが皆さんの心に残っていますように🍀*゜ #アニマルプロ pic.twitter.com/AXEF3FmCQr— アニマルプロ/動物プロダクション【公式】 (@animalpro_1212) June 16, 2024
2024.06.17
フジ「アンメット~ある脳外科医の日記」。第9話の終盤の長回しシーンは、熱愛中とも噂される主演2人の、まるでドキュメンタリーのようでしたが…最後のセリフで、いっきに突き落とされました。えええ~っっ?!やっと想いを交じわらせて、たったいま泣きながら抱きしめたのに!…そんなことあります???#杉咲花 #若葉竜也 #アンメット pic.twitter.com/3cRkzuLZBz— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 10, 2024 ◇今季も、前季と同じく、やたらと記憶喪失のドラマが多く、前季の「ONEDAY」とか、今季の「くる恋」「9ボーダー」とかは、おおむねファンタジーと割り切って楽しめるけど、前季の「たとあな」や今季の「アンメット」は、どうしてもリアリティの真偽が気になるのよね。とくに「アンメット」の場合は、医師が原作を書いた医療ドラマだし、リアリティにこだわってるとの触れ込みだし、ただのファンタジーとは片付けられない。NHKのドラマなら、特設サイトに解説が掲載されることもあるけど、民放のドラマはそこまでやらないし、リアルとファンタジーの境目は判然としません。◇もちろん基本的にはフィクションだと思う。深夜まで詳しい日記をつけて、その膨大な日記を早朝から読み込んで、脳外科医としての仕事をそつなくこなすって、さすがにそんなことは、現実的にはありえないだろうし、前日の記憶を失なっていく人が、練習や訓練を重ねる意味があるのかって疑問もある。でも、その一方、「記憶を失っても強い感情は忘れない」「記憶を失っても自転車の乗り方は忘れない」みたいな話が出てきたりするので、それなりに根拠はあるのかな?とも思ってしまう。てんかん薬の増減によって、記憶障害が出たり、認知障害が出たりって話も、なんらかの実例にもとづいたエピソードだろうし、今回のように、直前の記憶すら失なってしまう場面も、実際の症例があってこそなのかもしれません。◇命や健康だけじゃなくて、記憶や感情など人間の本質を揺るがす疾患を扱うのが、この医療ドラマの特徴ですが、記憶喪失のリアリティについてはともかく、篠崎絵里子の脚本は上手く出来ててドラマとしては面白い。また、同じフジの「Re:リベンジ」もそうですが、大病院経営にまつわる権力の暗部についても描かれてますね。◇これまで主役級では見たことのなかった若葉竜也が、とても個性的なキャラを発揮してるのも魅力的。朝ドラ「おちょやん」のときは、ほとんど印象にも残らなかったけど、今作では彼の個性がとてもよく活きてる。ちくっとします!月10ドラマ『アンメット』制作発表会見杉咲花&若葉竜也、朝ドラ『おちょやん』コンビが再共演✨️新ドラマ出演の経緯明かす「電話でプレッシャーかけられて(笑)」#杉咲花 #若葉竜也 #アンメット pic.twitter.com/eVLPQXIN2r— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) April 15, 2024若葉竜也の出演を熱望したのは、NHKとWOWOWで共演を重ねた杉咲花だった、…という話なので、2人の交際報道もまったく驚きじゃなかったし、なんなら、すこし予測してましたw杉咲花はもともと演技が上手ですが、今回は過去作にも増して演技がイキイキしてる。きっと撮影が楽しくて仕方ないのでしょうね。視聴者の側も、2人のコンビをもっと見たい気持ちは強まってる。原作は連載中とのことなので、続編も期待できる?杉咲花、若葉竜也と熱愛報道に関係者は「ああ、やっぱりね」このまま結婚も、唯一の心配事はhttps://t.co/tIAgFout8F主演ドラマ「アンメット」で共演する若葉竜也と熱愛が報じられた杉咲花。もっとも、業界関係者は2人の交際について気づいていたそうだ。#デイリー新潮— デイリー新潮 (@dailyshincho) June 3, 2024
2024.06.11
TBS「アンチヒーロー」は最終回を残すのみ。◇予告には《全伏線回収》とあります。それは、つまり…志水(緒形直人)の冤罪が晴れるだけじゃなく、ほんとうの犯人も明らかになるってことよね!真犯人が明らかになるとすれば、すでにドラマに登場してる人物なのかしら??◇ちなみに明墨(長谷川博己)の推理はこうです。伊達原はイラついていた。清水さんを拘留してはいたものの、起訴するだけの十分な証拠は出ていなかった。このままでは証拠不十分で清水を逃がすことになる。それでは西千葉建設の横領事件の真相も遠のいてしまう。伊達原にとって、それだけは絶対に避けたいことだった。ならば、清水が犯人だと示せるような証拠を作ってしまおう。そう考えた伊達原は、科捜研の担当者に指示を出して鑑定結果を書き換えさせた。しかし、じつは伊達原(野村萬斎)の真の目的は、「検察の点数稼ぎ」とか、「横領事件の真相解明」とかじゃなく、「真犯人の隠蔽」だったかもしれません。だとしたら、その罪はもっと重い。真犯人を逃がすために別人に罪を着せたってこと。◇一方で、緋山(岩田剛典)がほんとうに殺人犯だったのかも、まだハッキリしてない気がします。白木(大島優子)は、返り血の付いた作業着を伊達原のもとへ持ち込んだけど、あれって本物なの?あれ自体が明墨の仕込みなのでは??もし緋山が殺人犯じゃないとすれば、そちらにも真犯人がいるってことですが…白木は、明墨を裏切ったと見せかけて、じつは二重スパイをやってる可能性がある。倉田(藤木直人)も、伊達原を裏切ることになるのは間違いない。緑川(木村佳乃)と瀬古(神野三鈴)も、伊達原を裏切ることになりそうな予感。明墨は逮捕されましたが、実際には伊達原のほうが包囲されつつある!ってことじゃないかしら?
2024.06.10
TBS「アンチヒーロー」第6話。あっという間だった!◇保護犬施設の紗耶は、やっぱり志水(緒形直人)の娘っぽい。でも、フルネームは「牧野紗耶」でしたね。志水とも桃瀬(吹石一恵)とも苗字が違います。◇今回の終盤では、赤峰(北村匠海)によるボード解説があって、だいぶ状況が整理されました。視聴者サービスなのかミスリードなのか分からず、ちょっと身構えましたが…(^^;でも、どうやら来週は、瀬古判事(神野三鈴)との対決になりそうです!最高裁判事の座を狙ってるらしき大物。志水(緒形直人)や松永(細田善彦)の裁判で、検察と通じて冤罪判決をおこなってきた黒幕??◇それにしても、瀬古判事を演じてる神野三鈴はハマり役!野村萬斎は見るからに悪人って感じだけど、神野三鈴は善人か悪人かが分かりにくくて、そのしたたかなラスボス感がリアルな政治家みたいです。#アンチヒーロー #神野三鈴 #小曽根真 #上白石萌音 #井上芳雄 #井上ひさし pic.twitter.com/uDK6VThYOD— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 19, 2024 ◇一方、緋山(岩田剛典)は「江越」なる人物のことを調べてて、その人物が12年前の事件にも関係してるらしい。以下は、明墨(長谷川博己)とのやりとりです。緋山:過去の携帯から履歴を探ったら、一人連絡がつきました。江越のもとで働いていた人間です。明墨:いいですねえ。そのまま探っていきましょう。あとは、その12年前のものがまだ残ってるかどうかですが…緋山:手元に残しているはずです。相手の弱みを握って支配する。江越とはそういう奴です。 明墨:その言葉、信じますよ…緋山:はい。赤峰(北村匠海)は、緋山が返り血の付いた上着を廃棄する場面を目撃したけど、彼が本当に殺人犯だったかどうかはまだ不明。明墨(長谷川博己)は、あえて緋山を泳がせて利用してるのか。それとも、ほんとうに無実だったのか。◇ちなみに、このドラマの主要人物の苗字には、色を表す漢字が入ってるのだけど…明墨(長谷川博己)赤峰(北村匠海)紫ノ宮(堀田真由)白木(大島優子)青山(林泰文)桃瀬(吹石一恵)緑川(木村佳乃) そこから考えても、緋山という名前は意味深なのよね。↓下の記事にも書いたとおり、>>100分de名著「シャーロック・ホームズ」ゴシックロマンスの緋色。伝統的に緋色/スカーレットは犯罪に結びつけられる色だからです。
2024.05.20
TBS「アンチヒーロー」第4話。前回までは、《長谷川博己の不正義に、北村匠海が疑念を抱く…》みたいな展開だったので、堀田真由の立ち位置が謎でしたが、ここにきて、《堀田真由の父=藤木直人は、長谷川博己の宿敵?》みたいな構図が見えてきました。事務所内が敵味方で入り乱れてますwでも、藤木直人は真の悪者じゃなさそう。やっぱり野村萬斎が最大の悪者なのでは?ちなみに、藤木直人は刑事部長で、野村萬斎は検事正という関係です。野村萬斎は、「検察と警察は仲間」なんて言ってるけど、藤木直人は野村萬斎を警戒しまくってる。かたや長谷川博己は、ヤメ検の弁護士なので、野村萬斎は昔の上司なのかもしれません。そんな野村萬斎は、長谷川博己の狙いが藤木直人だと察知してる。長谷川博己の狙いは、刑事部長の「倉田」&捜査一課長の「大西」。そして、長谷川博己も、野村萬斎も、堀田真由が藤木直人の娘だということを知ってる。◇12年前に、第一審で控訴もせずに死刑が確定した糸井一家殺人事件。死刑囚として収監されてるのは緒形直人。これがどうやら冤罪っぽい。このとき藤木直人が何かを隠蔽して、まだ検事だったころの長谷川博己は、その隠蔽を暴こうとしていたようです。北村匠海も、細田善彦の冤罪を晴らそうとしてますが、長谷川博己も、緒形直人の冤罪を晴らそうとしてるのね。◇今回のの連続レイプ事件でも、早見あかりの件は嘘くさいのだけど、やっぱり藤木直人が早見あかりに接触してます。その冤罪の背後には、捜査一課長の「大西」(松角洋平)と、人権派弁護士の「宇野」(和田聰宏)もからんでる。早見あかりと接触する藤木直人。ことごとく有罪にしてる無能な人権弁護士w◇もうひとつの謎は、近藤華が演じる「紗耶」と、吹石一恵が演じる「REIKO MOMOSE」ですね。紗耶は、保護犬施設で働いてる若い女性。長谷川博己とはタメ口で話す親しい間柄。たぶん緒形直人の娘なのでしょう。REIKO MOMOSEは、6年前(2018年)に40才で亡くなった女性。第2話では長谷川博己が彼女の墓参りをしてました。堀田真由が保護犬施設を訪ねると、かつて「REIKO MOMOSE」はそこで働いていた。幼いころの「紗耶」と一緒に映った写真も残ってる。しかし、紗耶の母親ではないっぽい。緒形直人と「REIKO MOMOSE」の関係は謎です。ちなみに堀田真由が、父を問い詰める長谷川博己を目撃したのも6年前。REIKO MOMOSEも、そのころに亡くなったのだと思います。明墨(長谷川博己)赤峰(北村匠海)紫ノ宮(堀田真由)白木(大島優子)青山(林泰文)志水(緒形直人)桃瀬(吹石一恵)紗耶(近藤華)伊達原(野村萬斎)倉田(藤木直人)宇野(和田聰宏)大西(松角洋平)絵里(早見あかり)松永(細田善彦)松田優作ばりの丸グラサン!黒ずくめの峰不二子ばりにバイクをのりこなす!
2024.05.06
テレ朝「Believe~君にかける橋~」を見ました。脚本は井上由美子です。建設事故をめぐる物語ですが、話の前提に無理があるんじゃないかしら?◇たしかに、たとえ業務上過失だとしても、多数の死傷者が出るような事故を起こしたら、わたしも実刑にするのが当然だと思うし、とても執行猶予で済まされる話ではありません。執行猶予で済む話じゃない!しかし、かりに事故原因として、A.自社の設計変更による過失B.下請け会社の意図的な手抜きの2つを仮定した場合、どちらも人災ではあるけれど、自社の責任が大きく問われるのは、どう考えてもBじゃなくてAのほうでしょ!!自社の設計ミスのせいで橋が崩落しました…なんて言ったら、企業の信用はガタ落ちです。それよりは、下請けの手抜き工事のせいにしたほうがまだマシ。まして、わざわざ下請けの手抜きを隠蔽するために、自社の設計ミスを装うなんてありえない。設計ミスのほうが、よほど自社の信用を損ねるはず。設計ミスは《不可抗力の事故》じゃなくて《人災》でしょ!悪徳業者に発注した責任よりも、安全な設計すら出来ない無能さのほうが問題でしょ。そんな企業に大規模事業を任せられない。まあ…おおかた小日向文世が、手抜きした下請け会社からキックバックを得てるとか、そういう裏があるのだろうとは思うけど、かりにそうだとしても、キムタクが小日向文世の要求を呑むこと自体が変。自分が罪を背負うばかりか、会社にとってもダメージにしかならないのだから。会社の罪を背負ったキムタクの立場は、財務省の罪を負った佐川宣寿にもちょっと似てますが、小日向文世が、会社の犯罪をキムタクに背負わせるなら、よほど彼の弱みを握って、餌をぶらさげて、従わざるを得ない状況へ追い込まなければ無理です。キムタクが、ただ会社を守るために罪を背負ったとしたら、あまりにお人好しがすぎてアホとしか言えません。…アホかなとは思うけど同情はしない。『Believe』初回 “狩山”木村拓哉、逮捕の理由にネット同情「これはエグい」(ネタバレあり) #びりーぶ #木村拓哉 @believe_tvasahihttps://t.co/sT4xd3aXyC— クランクイン! (@crank_in_net) April 25, 2024
2024.04.27
朝ドラ「虎に翼」on NHK。吉田恵里香の脚本の非凡さが、話が進むほどに際立ってきてる感じです…。前の記事にも書いたとおり、大森美香の手法に倣ってる面もあると思うけど、ただそれだけじゃないことが分かってきた。◇大森美香の手法というのは、簡単にいえば、ヒロインを不幸にしないこと。そのもっとも典型的な例が「あさが来た」です。周りに不幸なキャラは登場するけれど、ヒロインは基本的に幸福な家庭に生まれ育って、幸福な家庭に嫁いで、幸福なままに人生を終える。これが、朝ドラにもっとも適したスタイルであることを、2015年の「あさが来た」は強力に証明したと思う。いまのところ、今回の「虎に翼」も、その手法に倣ってるように見えます。しかし、吉田恵里香の脚本は、たんに大森美香の方法論を真似てるだけじゃない、…ってことが、だんだん見えてきました。◇第一に、この「虎に翼」は、たんなる伝記ドラマではない のですね。社会的なテーマを扱ってますが、それはけっして過去の話ではなく、きわめて現代的な内容になっています。朝ドラが、ここまでアクチュアルな問題に挑んだことは、過去に例がないんじゃないかと思う。◇これまでも吉田恵里香は、テレ東で「チェリまほ」を書き、NHKで「生理のおじさん」「恋せぬふたり」を書いており、果敢にジェンダーの問題に取り組んできてる。今回の「虎に翼」でも、現代社会におけるフェミ議論を挑発したりと、社会的なテーマをしたたかにエグってますし、それを朝のエンタメの枠組みのなかで巧く見せてます。こういう面においては、むしろ大森美香の「シッコウ」などを上回っている。◇わたしは、NHKの「恋せぬふたり」は見ましたが…残念ながら、テレ東の「チェリまほ」は見てなかったし、NHKの「生理のおじさん」は終盤部分を見ただけ。もともとNHKが、ジェンダーや月経の問題に取り組んでることに、ある程度の注目はしてたつもりだけど、脚本家の吉田恵里香のことは意識してませんでした。しかし、NHKは、彼女のポテンシャルを見抜いてたのでしょうね。この若い脚本家の能力をうまく引き出してると思います。◇第二に、失礼を承知で言いますが、今回の「虎に翼」には、美男も美女も登場していません。ヒロインは美女ではないし、そのお相手になる男性もイケメンではない。つまり、メインのキャラのなかに、典型的な美男や美女がひとりもいない。唯一「美女」と呼べるのは石田ゆり子だけだと思う。第4週には、いちおう岩田剛典が登場してますが、彼も一般的な「イケメン」の役回りとは違っていて、むしろ悪役になりそうな雰囲気を漂わせてます。こういうところも、従来の朝ドラのセオリーを大きく破ってますが、おそらく意図的なのでしょうね。◇すなわち、このドラマは、男性はもちろん、女性にさえも、「美」の役割=ジェンダーを求めてないのですね。そのこと自体がとても政治的だといえる。実際のところ、女に対して安易に「美」を求めるのは、本来ならポリコレに反するはずなのだけど、いまのところ、NHKにも、民放にも、その倫理規範にまともに向き合ったテレビ番組は、ほぼ存在していません。報道番組も含めて、あらゆるテレビ番組は、意識するとせざるとにかかわらず、ほぼ例外なく女に「美」を求めてしまっています。でも、今回の朝ドラは、そのことにすら抗ってるように見える。この公式ツイートはおそらく意図的なミスリード。🐯 #トラつばプレイバック 🪽寅子たちを温かく出迎えてくれたのは、クラスの中心的存在・花岡悟。花岡に「あなた方は開拓者。本当に尊敬している」と言われ、ほうけてしまう寅子たちです☺#朝ドラ #虎に翼#伊藤沙莉 #土居志央梨 #桜井ユキ #平岩紙 #ハ・ヨンス #岩田剛典 pic.twitter.com/Ehh0RqQBKy— 朝ドラ「虎に翼」公式 (@asadora_nhk) April 21, 2024 これもミスリードになってました。🐯 #トラつばオフショット 🪽無事に迎えた直道と花江の結婚式👰🏻♀️家族での記念写真&新婚夫婦2ショット!この二人ならずっとラブラブでいてくれる気がしますね…🥰#朝ドラ #虎に翼#伊藤沙莉 #石田ゆり子 #岡部たかし#上川周作 #森田望智 #永瀬矢紘#赤間麻里子 #横堀悦夫 #小須田康人 pic.twitter.com/7rPjvKERhn— 朝ドラ「虎に翼」公式 (@asadora_nhk) April 3, 2024
2024.04.23
遅ればせながら、朝ドラ「虎に翼」第1週を見ました。これってもしや「シッコウ‼」の続き??テレ朝のドラマでは、織田裕二から伊藤沙莉が「子ども六法」をもらい、本格的に法律を学びはじめるところで終わりましたが…NHKでは、石田ゆり子から戦前の「六法全書」を買ってもらって、そこから伊藤沙莉の法律家人生がスタートするっぽい。 目指すのは執行官じゃなく弁護士だけど!!ドラマのテイストも、どことなく大森美香が脚本を書いてる??と思わせるような雰囲気があって…そういえば、小林薫も「青天を衝け」の父親だったし、キャストの面子がなんとなく大森ドラマっぽいのよね。ってことで、かなりわたし好みな作風。◇なお、主人公が「梅丸少女歌劇に入りたい」と言ってたのは、たんに前作ブギウギをネタにしただけかと思いきや…ヒロインのモデルの三淵嘉子は、ほんとうに宝塚のファンだったようです。ブギウギ的にいえば、梅丸じゃなく花咲のファンだったのですね。嘉子は、男役の雪野富士子の大ファンでした。雪野は宝塚少女歌劇団雪組の男役でしたが、1934(昭和9)年に退団、若くして亡くなりました。https://news.yahoo.co.jp/articles/73500afd69bc299a8e79461519410f3d85c81a50?そして、母親の実家が四国の香川だったのも史実らしい。三淵嘉子の両親は香川出身なのですね。嘉子の父・武藤貞雄は四国・丸亀の出身で、地元の名家・武藤家に入婿して一人娘のノブと結婚した。ノブもまた当主・武藤直言の実子ではない。彼女の実父は若くして亡くなり、6人の子だくさんだった一家は生活に窮してしまう。そのため末っ子だった彼女は、伯父の直言に養女として引き取られた。https://news.yahoo.co.jp/articles/36935cc265b7af889bd8767ed68c7b80b2d411d8?ある意味で、ヒロインの母親の境遇は、笠置シヅ子にも重なる部分があるかもしれません。…かたやヒロインの父親は、香川から東京帝大へ進んだ超エリートなので、タダで銭湯に入るアホのおっちゃんではありません。【#ブギウギ 登場人物紹介💃】アホのおっちゃん:岡部たかしいつも薄汚い格好をして、よく酒に酔っているおっちゃん。大工仕事が得意。なぜか、おっちゃんだけはいつもタダで銭湯に入っている。#アホのおっちゃん pic.twitter.com/0wTKH1f3tu— 朝ドラ「ブギウギ」公式 (@asadora_bk_nhk) September 4, 2023 ◇それにしても、去年の卯年は、大河も朝ドラも「兎」だらけだったのに、なぜか今年は辰年にもかかわらず、タイトルが「虎に翼」でヒロインが「寅子」とは…これいかに??しかも苗字が「猪爪」で、初週のサブタイトルが「牛を売る」って、やたらと動物だらけだし!トラが、イノシシの爪と翼を生やしてウシを売ったら、辰年の龍になるってか??いまにも龍になりそうな虎。描いたのは北斎ではなく娘の応為だとわたしは思う。【展覧会情報】あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)では、10/6~11/19、「北斎ー富士を超えてー」展を開催。北斎の晩年に特にスポットを当てる。イギリスの大英博物館では同様の展覧会が5/23~8/13に開催。詳しくはhttps://t.co/3Cd7mSZZ0P pic.twitter.com/HDLCB3tnkI— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) March 29, 2017
2024.04.11
朝ドラ「ブギウギ」を見終わりました。世評は悪くないようだけど、個人的にはちょっと物足りなさが残りました。それは脚本のせいでもあるし、キャストのせいでもあるし、笠置シヅ子の生涯をドラマ化することの難しさのせいともいえる。◇笠置シヅ子は、日本のポップス史における最重要歌手なので、NHKが大々的に取り上げるにふさわしい人物にはちがいないけど、だからといって「朝ドラ」にふさわしいキャラクターかどうかは微妙だったのかも。不世出の歌手にもかかわらず、あっさり引退して美空ひばりにその座を明け渡してしまったので、全盛期はほんの数年間にすぎないし、それが敗戦直後の混乱期という異常な時代だったのも、ちょっと朝ドラ的には扱いにくい理由だと思う。さらには、出自が複雑だったり、未婚の母だったり、薬物中毒の疑い(←これはあくまで疑惑の域を出ないようです。しかも当時はまだ覚せい剤が違法じゃなかった)があったり、娼婦たちとの不思議な連帯があったり、自分の持ち歌を他人に歌わせなかったり、横領事件や誘拐事件に見舞われたり、いろいろとネガティブな面もあるので、それらを朝ドラ的なオブラートに包みながら脚本化するのは難しい作業だったでしょう。◇もっとも、最近の朝ドラは、たとえば「エール」の古関裕而や「スカーレット」の神山清子や「らんまん」の牧野富太郎みたいに、けっこうネガティブな面をもった人物でも果敢に取り上げてるし、あげくは「カムカム」の安子みたいに、わざわざネガティブな要素の強い架空の人物を作りあげたりもしてるから、その勢いで笠置シヅ子を取り上げるのも不可能ではなかったはずだけど、それでも今回のミッションが成功だったかどうかは微妙です。すくなくとも個人的には、これが笠置シヅ子の伝記ドラマの決定版というには物足りないし、ちょっと大胆さに欠けたと思う。主演の趣里は、東京出身にもかかわらず「コテコテの小柄な大阪人」というキャラをうまく演じてましたが、その歌唱パフォーマンスは迫力に欠けました。もちろん、趣里も、菊地凛子も、あくまで女優であって本業の歌手じゃないのだから、歌唱シーンが「なんちゃってパフォーマンス」になるのは仕方ないけど(その点でいえば李香蘭を演じた昆夏美の歌唱シーンは素晴らしかった!)、重要なのは歌唱力の問題ではなく表現のスタイルの問題なのです。おそらく演出上の方針として、笠置シヅ子の下品なまでの禍々しいパワーを再現しようという意志が最初からなかったんだと思う。趣里のパフォーマンスは、どちらかというとキャンディーズのランちゃんを彷彿とさせるような上品で可愛らしいパフォーマンスだったし、笠置シヅ子がスターだった時代の異常な雰囲気を体感させるような迫真性にはほど遠かった。…しつこいようですが、やはりわたしは「田村芽実が主演だったら…」ってことを考えてしまうのだけど。田村芽実がヒロインだったらこうだった!グルーヴ感が桁違い!歌唱シーン以外の部分でも、笠置シヅ子がスターだった時代の描写には物足りなさを感じました。曲がヒットして以降も、もっぱら家庭人としての面ばかりが強調され、およそスターらしさが見えなかったからです。端的にいって地味だった。たしかに、まだテレビもなかった時代だし、笠置シヅ子自身も庶民的なキャラの人だったから、のちの美空ひばりみたいな大スターっぷりとは違ったかもしれないけれど、すくなくとも映画や雑誌では顔が知られていたのだから、もっと一般のファンに熱狂される様子が描かれてもよかったと思う。戦後に「東京ブギウギ」で頂点に立った全盛期のスターっぷりが物足りなかったために、結局のところ、この主人公がいちばん輝いたのは、少女だった頃の《大阪の銭湯時代》だったんじゃないかしら?と思えてしまうし、そこから先の人生はすこしづつ尻すぼみだったように見えてしまうのです。◇最後の引退劇もいまいち納得感に欠けた。主人公が語った「羽鳥善一の歌にとって最高の人形ではなくなった」というセリフは、肥満を理由に引退した史実にもとづいてるのだろうけど、せっかくドラマ全体のエンディングにするのなら、もっとそれに見合うだけの物語を仕立てて欲しかったです。水城アユミを「大和礼子の娘」した設定は、とても素晴らしいアイディアなのよね。それでこそ平凡な引退劇を、ドラマのエンディングにふさわしい物語へと転換できるはずだった。つまり《大和礼子の娘にエンタメの未来を託す》という美談に仕立てれば、この物語は大団円のうちに終わったはずなのです。ちなみに水城アユミのモデルになったのは、美空ひばりよりもむしろ江利チエミだったらしい。江利チエミの母(谷崎歳子)は東京少女歌劇団を経て吉本興業で活躍したスター女優であり、父(久保益雄)はその吉本興業の専属ピアノ奏者で、両者ともに笠置シヅ子とは旧知の仲だった。なので、水城アユミを「大和礼子の娘」にした設定は、あながちフィクションではないのですね。しかしながら、美空ひばりと江利チエミを掛け合わせて「大和礼子の娘」に仕立てた設定は十分に活かされなかった。そもそも水城アユミとの出会いのシーンからして微妙な感じでした。せっかく大和礼子の娘に(赤ん坊のとき以来)再会したのだから、そこは母娘のように感動的なハグをすべきだったでしょ!たとえ「持ち歌」にかんする確執があったにせよ、それを乗り越えて水城アユミに未来を託す美談にすれば、きっと感動的なエンディングになっただろうと思う。物語的に考えたら、歌手の引退という突然の決断は、たんに羽鳥善一への恩義に報いて済む話ではないのです。東京へ送り出してくれた父と母の恩義にも報いねばならないし、幼馴染のタイ子ちゃんへの恩義にも報いねばならないし、大和礼子や歌劇団の盟友たちの恩義にも報いねばならない。さらには、自分に希望を託してくれた亡き弟や愛助の思いにも報いねばならない。それらをすべてひっくるめて納得感のある引退劇にするためには、やはり大和礼子の娘へとバトンを渡し、彼女にエンタメの未来を託す美談に仕立てるべきでした。へたに「さよならコンサート」みたいなフィクションをでっち上げるよりも、史実どおりに紅白を最後のステージにして、そこで水城あゆみにエンタメの未来を託すエンディングにしたほうがよかったと思う。ついでにいえば「義理と人情」をドラマの結論にしたメッセージも(スマイルカンパニーとジャニーズ事務所じゃあるまいし!)まったくの時代錯誤としか思えないので、むしろ終戦後の混乱期から復興期への転換を後押しするような、希望に満ちたメッセージで終わらせて欲しかったです。実際のところ、笠置シヅ子と美空ひばり(あるいは江利チエミや雪村いづみ)との違いは、その時代背景の違いでもあったのです。つまり、戦中・戦後の混乱期に禍々しいエネルギーを放った笠置シヅ子と、「もはや戦後ではない」といわれた復興期に明朗な希望を託された美空ひばりとでは、そもそも時代から求められたものが違っていた。笠置シヅ子の引退劇は、そのような時代の変わり目を象徴するものにしてほしかった。◇さらに苦言をいえば、2人体制による脚本も文句なしに成功したとは言いがたい。前々から言ってることだけど、シナリオ全体を共同で練りあげるならともかく、ただパートごとに分担するという手法はあまり感心できません。今回の「ブギウギ」の場合、脚本家の交代でテイストが損なわれるほどの問題は生じなかったけど、さすがに技量の差までは隠しきれませんでした。とくに戦時中のパートは脚本家の力量不足が顕著だった。笠置シヅ子は、戦時中の苦難よりも、戦後の「出産」「恋人との死別」というスキャンダルのほうが大きな苦難だったから、そちらをメインの脚本家が担当し、代わりにサブの脚本家が戦時中パートを担当する形になったのだろうけど、残念ながら、えなりかずきをはじめとするバンドメンバーのキャラ立ちは弱すぎたし、地方巡業のエピソードも心を動かすだけの要素には乏しかった。淡谷のり子と特攻隊のエピソードや、服部良一の上海でのエピソードについても、ただ史実の上っ面をなぞっただけで、十分にエモーショナルな物語とはなっていなかった。史実にもとづきながら、それをエモーショナルな物語に仕立てるのは難しいことだと思うけど、それこそが脚本家の腕の見せどころなのだし、もうちょっと脚色の技量を発揮してほしかったです。◇そして、笠置シヅ子の伝記ドラマを作るうえで、いちばん難しいのは生まれ故郷の四国・香川の問題だったかもしれません。おそらく香川には「実母の実家」「実父の実家」「養母の実家」「養父の実家」「実母の嫁ぎ先」の5つの家があるはずですが、それらの家との関係についてNHKがどれほど把握できていたのか分からないし、そのファミリーヒストリーをむやみにほじくり返すことの難しさもあったかもしれない。ドラマに登場したのは、法事のおこなわれた「実父の実家」と、葬儀のおこなわれた「養父の実家」と、異父兄弟のいる「実母の嫁ぎ先」だったのですが、それにかんしてさえ史実どおりではなく、おそらく何らかのフィクションに仕立てる必要性があったのではないかしら?実際、娘の愛子が実母と対面するシーンなどはフィクションだった可能性が高い。愛子のモデルになった娘の亀井ヱイ子さんは、放送前のイベントに柳葉敏郎と一緒に出てきたりしてたようだけど、あまり詳しい情報が出てこないせいもあり、いろんな出版物や情報番組などをとおして史実ネタに尽きなかった前作の「らんまん」に比べると、ちょっと煮え切らないようなモヤモヤした感じも残りました。とはいえ、フィクションを交えてでも、娘を捨てた笠置シヅ子の実母を描く意味はあったと思います。上白石萌音の「カムカム」を見たときは《娘を捨てる母親の物語》がかなり踏み込んだものに思えたけれど、むしろ今回の「ブギウギ」を見て思ったのは、昔も今も親子が離れ離れになるのは珍しいことじゃなく、それほど異端視すべきものでもないのだってことですね。今回のドラマでは、いちおう実母との再会が感動的に描かれてましたが、実際には疎遠なままの場合もあるだろうし、わだかまりが消えない場合もあるだろうと思います。笠置シヅ子 その言葉と人生 [ 亀井 ヱイ子 ] 楽天で購入 余談ですが…NHKは「名曲アルバム」や「クラシックTV」や「歴史探偵」などの番組でも、笠置シヅ子関連の内容を放送してました。それらを見てあらためて知ったのは《美空ひばりが横浜から誕生した必然性》もさることながら、《服部良一と笠置シヅ子が大阪から誕生した必然性》も確実にあるってこと。要するに、街が才能を育んだのですね。以下は、上記の番組からのメモです。・道頓堀には江戸時代から芝居小屋が並んでおり、そこで文楽も始まった。・笠置シヅ子は3才から日本舞踊や三味線を習い、芸事が身近にあった。・大阪松竹座が大正12年に現在と同じ場所に建てられた。・関東大震災によって人口移動が起こり、大阪が日本最大の都市になった(大大阪時代)。・道頓堀にダンスホールや劇場が林立し、道頓堀ジャズが隆盛した。・関東大震災から10年ほど経って大阪発の娯楽文化が東京へと逆流した。・松竹が東京に設立した楽劇団の副指揮者に服部良一が就任した。・服部良一が笠置シヅ子に求めたのはジャズのような地声唱法だった。・朝鮮特需に乗じた「買い物ブギ」は「東京ブギウギ」をも超える売上になった。ちなみに、わたしは「ラッパと娘」も三連符のリズムからなるブギウギだと思ってましたが、NHKの解説によれば、同じ三連符のシャッフルビートでも「4拍ならスイング」「8拍ならブギウギ」と分類するようです。そこからすると戦前の「ラッパと娘」はブギウギじゃなくてスイングなのですね。いずれにしてもシャッフルビートは日本の音頭と同じだから、服部良一と笠置シヅ子が作った「ご当地ブギ」の数々は、ある意味では「ご当地音頭」みたいなものだったと思います。やがて、このシャッフルする8ビートのブギウギは、均等な8ビートのロックンロールへと発展するわけですね。◇…ところで、このたびWikipediaを読んで知ったことですが、一般に使用されている「笠置シヅ子」という名前の表記は、歌手を引退したあとの女優時代のものであって、歌手時代の正式な表記は「笠置シズ子」なのだそうです。知らなかった!!わたしも慣例にならって「シヅ子」と書いてますが、歌手時代の彼女のことを書くならば、厳密には「シズ子」と表記するのが正しいのだろうと思います。
2024.04.05
だいぶ時間が経っちゃいましたが、テレ朝「アイのない恋人たち」が終了。◇近年の遊川和彦の作風とは違ってて興味をひかれました。遊川のドラマは、日テレの「女王の教室」や「家政婦のミタ」で成功して以降、だいぶワンパターンだったから飽きてたのよね。でも、今回はオーソドックスな作りが逆に新鮮だった。現代の若者の恋愛や親子関係のサンプルを、ありったけにぶち込んだような内容でしたが、さしずめ「男女7人」の現代版って感じ?ドラマだけに、いろんなエピソードが極端に詰め込まれてたけど、ひとつひとつの話は現代の若者のリアルなんだろうな、…と思いながら見てました。もはや恋愛することは労力でしかないのね。ほんの些細なことが相入れなくても上手くいかないし、上手くいったとしても、短い期間で終わってしまう。◇若手の演技派7人の組み合わせも面白かったです。福士蒼汰×前田公輝×本郷奏多岡崎紗絵×深川麻衣×成海璃子×佐々木希とくに福士くんは、わたしが見たなかではいちばん良かったと思うし、彼のキャラにも合ってました。ちなみに、なぜ脚本家の設定にしたのでしょうね。遊川が自分自身を投影するにはあまりに若すぎて青臭いし、だれか後輩の脚本家にモデルでもいたのかしら?◇しかし!!結末がいかにもテキトーなのは相変わらずのパターン(笑)。遊川のドラマは、収拾がつかないほど色んな問題をぶち込んでしまうので、最後はいつもテキトーな終わらせ方になる。さすがにバッドエンドじゃ希望がなさすぎるし、なんとかハッピーエンドにしたかったのは分かるけど、そうはいっても、あからさまに手の平を返すようなハッピーエンドは、強引すぎて失笑するしかありませんでした。
2024.04.04
クドカンの「ふてほど」最終話。寛容ソングはずいぶんと長尺でしたねwだいたい予想はしてましたが、最後は、震災の行方不明者が未来に生きる希望を残した形。もともとクドカンは、お決まりの《入れ替わり》とか《タイムリープ》とか、1980年代の大林宣彦が、「転校生」や「時かけ」で定式化したモチーフを、これまでも繰り返し使ってきたのですよね。…たまたま最近、その大林宣彦の「時をかける少女」を、U-NEXTで初めてちゃんと観たのだけど、あの物語は、ただのタイムリープの話ではなく、じつは《代理》をテーマにした話だと知りました。それがクドカンにも継承されてるなと感じます。◇大林版の「時かけ」における深町くんは、未来人として現代に存在してるのではなく、むしろ未来人であることを隠すために、他のだれかの《代理》として出現しています。ある部分では、すでに亡くなったはずの「深町家の孫」の代理として存在し、ある部分では、芳山和子の中の「吾郎ちゃん」の記憶をすり替えながら、やはり、その代理として存在してる。のちの角川版や細田版では、この《代理》というテーマが十分に追求されていません。◇これは、すでに下のシネマレビューにも書いたことだけど↓https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?SELECT=24063芳山和子が深町くんに抱いた恋心は、じつは吾郎ちゃんに抱いていた感情の《代理》なのです。それは、ちょうど、富田靖子の「さびしんぼう」で、主人公が白塗りの少女に抱いた恋心が、じつは主人公の母親への想いの《代理》だった、…という構造とほとんど同じです。それによって、もっとも身近な誰かへの想いに気づく物語になってる。◇そして、もうひとつ、すでに存在しないはずの「深町家の亡くなった孫」が、タイムパラドックスによって存在してる面があって、そこには「存在しえなかった死者」を現出させる意図も感じる。大林宣彦は、そういう物語を被爆地の広島で撮ったのです。タイムリープの物語というのは、たんに過去や未来へ時間旅行するだけの話じゃなく、「存在しないはずの誰かが存在すること」の意味を問う物語なのですよね。…今回のクドカンのドラマでも、「存在しないはずの誰かが存在すること」の意味を、かなり意識的に掘り下げたと思う。つまり、阪神大震災で亡くなった人々が、タイムマシンで未来に出現する設定になってて、仲里依紗が演じる渚は、すでに亡くなった若き母と姉妹のように接したり、すでに亡くなった若き祖父と恋人のように接したりします。これも、尾美としのりが富田靖子に恋したのと似ていて、本来は母や祖父に抱きがたい感情が生まれてる。その意味でも、クドカンは、大林と同様の《代理》の物語を追求してると思う。残念ながら、わたしは観てないけど、クドカンがもっとも意識したのは谷口正晃版なのかも。◇スピルバーグの「Back to the Future」もふくめ、その後の《タイムリープ》の多くの作品には、そういう視点が抜けていて、物語としての深みに欠けます。とくにスピルバーグの場合は、筒井康隆よりも藤子不二雄を模範にしてるのよね。人間関係が「ドラえもん」とまったく同じなのです↓https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?SELECT=24063なお、先月の「アストリッド&ラファエル」の記事にも書きましたが、この《タイムリープ》という和製英語は、筒井康隆が「時をかける少女」で発明した造語のようです。時をかける少女 [ 原田知世 ] 楽天で購入 さびしんぼう [ 富田靖子 ] 楽天で購入
2024.03.31
門脇麦×永瀬廉「厨房のありす」最終話。自閉症の女の子の人情ラブコメに、アストリッド風の謎解きサスペンスを加えたドラマ?…かと思いきや、最後はけっこうスゴい話で、実父がとんでもないサイコパスの極悪人だったのね。◇それまでの内容も、ゲイカップルの偽装結婚の話とか、いろいろ詰め込みすぎって感じもしたけど、まあまあ面白かったし、最後はしっかりしたメッセージ性もあって、なかなかちゃんとした結末でした。◇自閉症の問題もふくめて、マイノリティの立場を肯定するお話でしたが、それと同時に「非合理な家族神話」への批判でもあった。極悪人の実父は、「結局オレはお前の父親で、お前は人殺しの娘だけどな」という捨てゼリフを残しましたが、殺人犯でなくとも、悪い親って子供にこういうことを言いがちだよね。それは、親の傲慢さ以外の何ものでもない。◇ヘテロセクシャルな実父よりも、ホモセクシャルな養父のほうが良心的だったという結論。たとえ血縁であっても、悪人まで親と思う必要はないってこと。逆に、たとえ親が仇どうしであっても、その子供までが憎しみ合う必要はないってこと。これって、たんに個人の問題ではなく、社会全体のコンセンサスの問題でもあるし、もっといえば、民族間や国家間の問題でもあります。◇最後に主人公が言ってましたが、食べ合わせの悪い食材どうしでも、料理しだいでは調和させることができるのね!知らなかった!!ありすのレシピブックも出てました↓厨房のありす公式ガイド ありすのやさしいごはんレシピ (TVガイドMOOK) 楽天で購入
2024.03.31
二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプ「Eye Love You」の最終話です。そもそもミン・ハナさんは、どうやって侑里もテレパスだと知ったんだっけ?予知能力者だから?それとも遠隔テレパスなの?◇ミン・ハナさんが、「テレパスの恋人はかならず死ぬ」とか、「33秒見つめ合ったらテレパスは消える」とか、そういう法則を勝手に信じこみ、自作の絵本に描いたのはいいとしても…その迷信を、登場人物の全員が信じてしまう…ってのはどうなの??しかも、いちばん狂信してたのは、よりによって大学院の教授(=杉本哲太)だよねw生物学的な裏付けでもあったのかい!◇ちなみに、アイヌの「オハイヌ」(空聞き)ってのは、ほんとうに実在する習俗らしいのだけど、そのオハイヌの幻聴能力が、星空の下の「33秒」の見つめ合いで消える…みたいな伝承があるのかどうかは、ネットで調べてみても確認できません。…むしろ、この「33秒」とやらで思い出されるのは、ほかでもなく、あの統一教会の教義なのよねえ。◇どこかで聞いた話だけど、統一教会には妙な数的法則にこだわる教義があって、たとえば教祖たる文鮮明の再臨を、意味不明な周期的ロジックで説明するらしい。そして統一教会は、なぜかしら「3の倍数」を特別視するらしく、> 3は原理数> 三数は安定と調和の数> 三数は天の数、三数は完成数> 神は三数的存在…みたいな考え方があるようなのです。参考:統一教会において3は「原理数」、「三位基台(さんみきだい)」っていう重要な教義もあります→https://t.co/1LGcsubRQw silent hill 「サイレントヒル」はコナミ発売のゲームで映画化もされ、娘シャロンを宗教団体から救うために母が奔走するホラー映画 →wiki https://t.co/SZH0r1wEoc— 紀藤正樹 MasakiKito (@masaki_kito) July 17, 2022これはおそらく、キリスト教の「三位一体」から来てるのでしょうけど…こういう妙なロジックに疑念をもつ人は、たぶん統一教会の信者にはならないでしょうね。しかし、今回のドラマの登場人物みたいに、謎のロジックでもすんなり受け入れる人は、統一教会の信者になる資質があるかもしれないww3の倍数 その1。3の倍数 その2。3の倍数 その3。いかにもテキトーな数式。アイヌ伝承のでっちあげ?サブリミナル的な刷り込み?よりによって、このドラマの最後は、「日本人女性がソウルで韓国人男性に抱きつく」というクライマックスを迎えたので、もしや統一教会のメディア戦略なのでは?!…みたいな疑念が思わず頭をよぎったのでした。◇Twitterには「#eyeloveyouファンミ 」みたいなタグが見受けられますが、韓国系アーティストや韓国ドラマに関連して、そうしたファンミーティングが付きものだとすれば、そこが統一教会の勧誘の場になってる可能性は否定できません。かりに統一教会系の団体主催ではなく、一般のファンが主宰するイベントだとしても、そこに教団の勧誘員が潜り込む可能性は十分にありうる。TBSがどういう姿勢でいるのか知りませんが、すくなくとも報道部はそこまでを注視する必要があるし、必要に応じて注意喚起をする責任も負うはずです。ソウルにて日本人女性が韓国人男性に抱きつく。べつに、わたしは嫌韓なわけじゃないし、日本人と韓国人が恋愛するのも自由だし、統一教会にかんしても、基本的に信教は個人の自由だと思うけど、法外な献金をむしり取られるような顛末には、気をつけないといけませんよね。◇◇◇なお、中川大志くんは、今回も、大学時代からヒロインをずっと見守るだけの、なんだか可哀想な噛ませ犬の役どころ!でも、最後はミン・ハナさんとの恋を匂わせたので、こちらは日本人男性&韓国人女性のカップルに??ちなみに、そういう組み合わせって、統一教会でも認められるのかしら?
2024.03.27
カンテレ「春になったら」最終話を見ました。リアルに死期の迫った人の生前葬を、《旅立ちの祝福》というコンセプトで挙行するのは、ちょっとブラックな感じもするのだけど、実際に、そういう生前葬をする人はいるらしいし、死ぬことをポジティブな《旅立ち》と捉えるのも、ひとつの宗教観念なのかしら…?◇でも、まあ、基本的には上手くまとまって満足度の高い終わり方。脚本の構成としては、「出産/死」「結婚式/お葬式」…をめぐるドタバタな騒動を、シンメトリックに、かつコミカルに描く設定。それがとても上手く機能していたし、それぞれのキャラの位置づけも明解で、お手本のように整ったドラマだったといえる。◇現実には、こんな綺麗な死に方のできる人は少ないでしょう。しかも、父親から見て、これ以上ないほど理想的な娘だよね…ってのが大前提としてあるし、その意味では、一種のファンタジーだと思うけど、こういう希望のもてるドラマも必要でしょう(笑)。下町の父と娘のお話だったので、なんとなく「朝顔」の続きっぽくもありましたが、上野樹里&時任三郎の「朝顔」は、全体に暗いトーンの作品だったのと違い、今作は、つねに明るいトーンなのが救いでした。お天気には左右されるけど、野外ウェディングってのも洒落てますよね。神社の参道をバージンロードにしたのも素敵。◇式にはケイト・ベネットなる女性歌手が登場しました。毎回、劇中では、男性歌手と思しき英語の曲も使われてましたが、調べてみてもアーティスト名も曲名も分からないし、ドラマのオリジナルだったんでしょうか?https://t.co/gXQIhZGIVy pic.twitter.com/Na3CJoqqYL— BrooklynParlor OSAKA (@Brooklyn_Osaka) April 22, 2017最終回はTVerで無料配信中!#春になったら 🌸 メイキング❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈.*✿撮影前のひとコマ📹✨ウエディングドレス姿の瞳(#奈緒 )に初対面した雅彦さん(#木梨憲武 )本当に瞳ちゃんのウエディングドレス姿、素敵です👗💕最終回はTVerで無料見逃し配信中!… pic.twitter.com/8kPOYQwyEu— 『春になったら』奈緒×木梨憲武W主演【月曜よる10時 カンテレ・フジテレビ系】 (@haru_ktv) March 26, 2024
2024.03.26
TBS「さよならマエストロ」最終話を見ました。なんだか不思議な結末。娘がバイオリンをやめたエピソードもピンと来なかったけど、父と和解してバイオリンを再開する理由もピンと来なかった。とにかく、父と和解してオケのコンマスになったものの、両親の離婚が確定したので家族は崩壊。そのうえ、父をドイツへ送り出したので、素人同然の市長の娘が指揮者になったところで、オケの存続も絶望的だよね。指揮の演技についていえば、西島秀俊より當真あみちゃんのほうが上手だったけど!彼女は実際にピアノもバイオリンも弾けるらしい。どう考えてもバッドエンドなのに、雰囲気だけはハッピーエンドの体で終わってる(笑)。シューマンはライン川に身を投げて死んだのですが、そのシューマンの「ライン」を最後の希望の曲にするのもスゴイ。強引というべきか、究極の楽観主義というべきか。終わりよければすべてよしとは言うけれど、終わりが悪くてもすべてよしって感じ???視聴率は、今季の民放ドラマでダントツの1位!…いろんな意味で不思議なドラマでした。◇もともと地方オケの物語だったので、日テレ「リバーサルオーケストラ」の二番煎じでしたが、キャストはかなり豪華だったよね。リバーサルオーケストラは、キャストも物語も地味だったから…(^^;西島秀俊と芦田愛菜が主演で、新木優子や宮沢氷魚や當真あみが脇役で、西田敏行や石田ゆり子や満島真之介も出てくるって豪華すぎ!お話もそれなりには面白かった。でも、個人的にいうと、クラシック音楽の魅力は感じにくかったです。印象に残った曲も演奏シーンもなく、劇伴音楽もクラシックの要素には乏しかった。どちらかといえば、チェット・ベイカーのジャズとか、アマポーラみたいな軽音楽のほうが印象に残ってる。まあ、さすがにシューマンの「ライン」は耳に残りましたが。このドラマを見て、クラシック音楽に関心をもった人はいるのかしら?高校生から指揮者を目指そうとする人とか、娘にバイオリンを習わせようとする人はいるのかな。◇ところで、いちばん謎だったのが第5話なのよね。おばさまが歌謡曲を探していた話。ビゼーのカルメンに似てるようで違う…と言われ、「マエストロに訊いてみたら?」との助言も無視して、なぜか歌謡曲のCDの歌詞カードだけを探しまくり、金井克子の「他人の関係」だと突き止めるのだけど、あのエピソードって何だったの???あまりにも意味不明なので、もしや、あのおばさまが、オケ復活の鍵を握る伏線なのでは?!…みたいな深読みもしてみたけれど、ぜんぜん違いました (^^;クラシック音楽のドラマなのに、歌謡曲のエピソードって必要ですか?もしかしたら、「ハバネラ」のシンコペーションと、「他人の関係」のシンコペーションが似てる、みたいなことだったのかしら??でも、続編も噂されてるらしいので、もしも続編があるとしたら、コンマスを中心にオケのメンバーが奮闘して、市長の協力とか、あの歌謡曲のおばさまの協力も得て、地方オケが奇跡の復活を遂げ、ドイツで成功したマエストロを客演に迎える、…みたいな話になるのかも。それならそれで面白いとは思う。【楽天ブックス限定先着特典】さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~ DVD-BOX(マグカップ) [ 西島秀俊 ] 楽天で購入
2024.03.21
フジ月9「君ここ」が終了。お世辞にも、出来がいいとは言えなかったけど、主演の2人も好きだし、映像も綺麗だったので、なんとか我慢して見とおしました。今季は、月10の「春になったら」も、クドカンの「ふてほど」も、あらかじめ死ぬことが分かってる物語。このドラマの場合は、最後の最後に奇跡が起こってハッピーエンド!…って予想もなくはなかったけど、やはり死ぬのがデフォルトだったみたい。◇五感を失なった暗闇のなかで、何十年も生きていくと考えるだけでも怖い。その暗闇に耐えつづけるために出来るのは、唯一「希望の種」を植えつけること、…ってのは第9話だったかな。これはけっこう深い話だったかも。でも、最後はまた「逆の奇跡」が起こって、恋人の命と引き換えに五感を取り戻しました。◇五感を失なっても、運動神経は失われないから、声を出したり動くのは可能じゃないかと思ったけど、どうやら脳死状態になる設定だったようです。もしかしたら脚本家は、「五感を失えばおのずと運動神経も失われる」と考えたのかしら?まあ、実際のところ、「感覚神経だけ失なって運動神経が残る」なんて症例は存在しないだろうし、どうせファンタジーなんだから、いかようにでも設定できますけどね。◇今季は、TBSのドラマも、「ふてほど」がタイムリープで、「Eye Love You」がテレパシーだし、SFファンタジーの設定が多い。このドラマは、さしずめゲーテのファウストって感じ?メフィストフェレスみたいな黒服が出てきて、魂と引き換えに望みを叶えてやる…と。結果的には、「五感を失なう=心を失なう」ってことだったので、その意味でもファウスト的な設定でした。◇たまたま最近、1983年版の映画「時をかける少女」を見たのだけど、あれは舞台が広島で、主演が長崎出身の原田知世。このドラマも長崎が舞台だったから、ちょっと80年代のSFジュブナイル的なものを期待してた。荒唐無稽なファンタジーになるのも前提で。でも、あまりにも子供だましがすぎた感じ。クドカンの「ふてほど」の場合は、ファンタジー設定が笑いのネタになってるけど、「君ここ」や「Eye Love You」の場合は、ご都合主義的なファンタジー設定が、たんなる作品の欠点に見えてしまう。◇たとえば、母親だとバレたら月明かりに溶けるけど、たがいに分かってても口にしなければ大丈夫、…みたいな謎設定も、ご都合主義に見えました。母であることを隠し通すのが条件なら、太陽が千秋を母だと認識した時点ですでにアウトなのでは?と思いきや、太陽が千秋を「母さん」と呼ぶまでアウトにはならないよう。何だこのルールの既視感と思ったら、これ「ハリポタのヴォルデモートシステム」だわ。名前を呼んではいけないあの人の名を口に出すと、死喰い人に殺されてしまうアレです。https://woman.mynavi.jp/article/240311-18_1190537/それから、赤色が見えないという設定も、いまいち何の意味があったのか分からず。色覚障害の男性と、視力を失くした女性が、心のなかで同じ色彩を感じる、みたいな結末?…かとも思ったけど、最後に予備の花火を見る結末は、なんだか、かえってマヌケな感じもしましたね。どっちにしろ彼と同じ色は見れないわけで。◇長崎を舞台に選んだ理由もあまり分からなかった。とくに花火が有名ってことでもないっぽい。じつは1983年の「時かけ」には、死者を蘇らせるという裏のテーマがある気がしてて、そのことが被爆地を舞台にした理由かもしれないのだけど、このドラマはどうだったのでしょうね。ある意味、存在しないはずの死者が存在する話ではあったし、日下や千秋にかんしては、過去の死者が時空を超えて現代に蘇る話でもあった。太陽のセリフには、「長崎で鳴らされる爆竹は死者の魂を呼ぶためのもの」みたいなのもありました。そして、これはたぶん、クドカンの「ふてほど」にも関係する問題だと思う。◇それから、ずっと最初から気になってたけど、本来は「根暗」なはずの2人が、全然そういうキャラに見えなかったのよね。これは演技の問題というより、脚本と演出プランの問題だろうと思いますが。…山田くんは十分に演技派なのだから、前作の「ペントレ」にしろ今作の「君ここ」にしろ、こんな子供だましのファンタジーじゃなくて、もうちょっと作品を選んだほうがいいのでは?…と思ってしまいます。宇多田ヒカルも、なぜ今回の仕事を引き受けたのか不思議。まあ、脚本のコンセプトに惹かれたのでしょうけど。もっと長崎の情緒を味わいたかったな。
2024.03.19
フジ・カンテレ月10「春になったら」見てます。末期ガンの父と、嫁ぐ娘の話。物語のテーマはオーソドックスともいえる。俳優陣も演技派ぞろいで安定した内容。これは第4話ぐらいのシーン。1週おくれの第6話ですが…。父の雅彦(木梨憲武)をはじめ、ようやくみんながカズマル(濱田岳)の存在を受け入れました。予想どおりの展開ではあるけど、やっぱり泣いてしまう。忘れられないような幸福な時間。じんわりとした神回だった。龍ちゃん(石塚陸翔)の存在に救われる。子供がいるだけで救われることってあるよね。「ピザ食べたい」とか「おじい」とか言ってくれるだけで、老いることの寂しさが紛れます。たとえ血がつながってなくても。ふとした瞬間に死ぬのが寂しくなる…というのは、とてもリアル。
2024.02.27
テレ朝「松本清張二夜連続ドラマスペシャル」を見ました。どちらも女性脚本家によるシスターフッド的な物語で、松本清張を意外な面から捉え直した形ではある。◇第1夜は「顔」。浅野妙子の脚本。後藤久美子&武井咲の主演。オスカー「国民的美少女」の先輩と後輩。顔を隠して生きてきた殺人犯の女性が、やっぱり最後はバレてしまうという話。なぜ逆光のシルエットを見て、顔まで思い出したのかは解せなかった。後藤久美子にかつての美少女の面影はなく、ただの色黒のオバサンかと思っちゃったw演技もあからさまにぶっきらぼうでしたが、なかば意図的なのかしら?なお、原作のほうは、女性じゃなくて男性の物語だったらしい。◇第2夜は「ガラスの城」。大森美香の脚本。木村佳乃&波瑠の主演。大森ドラマ常連女優の先輩と後輩。途中で語り手が失踪するのは面白かったけど、真犯人はまあ予想した通りだった。なお、原作では、波瑠の役どころのほうが年上の設定らしい。◇2作品とも、サスペンスとしての意外性には乏しく、ドラマとしての脚色も、可もなく不可もなしって感じでしたね。
2024.01.21
最終話。華ちゃんは誰と結婚したかと思いましたが、お相手は出てきませんでした。結局、メインの4人は誰ともくっつかず。ちょっと意外な結末ですね。朱里は、進吾との復縁も匂わせて終わった。◇そもそも愛子先生が登場したのは、田中さんを海外へ連れ出す伏線だったのねえ。会社も辞めて、海外に留学して、ついにベリーダンスが本業になったってこと?ベリーダンスの留学は、まさかイランやイラクじゃないと思うので、やっぱりトルコあたりでしょうか?◇留学帰りの田中さんは、2年間の海外生活を経て、ちょっと目がギラついてました…!(笑)もしや、日本社会の抑圧から解放されて、愛子先生ばりに人格が変わっちゃった??かたや、田中さんが進化する一方で、他の3人は何も変わってなかったですね…w目がギラギラしてる海外帰りの田中さん!すこし肉食系になった??
2023.12.26
昨日の記事で「たそがれ優作」のことに触れましたが、何気にずっと見てました。テレ東らしい、ゆるめのドラマ。寅さんよろしく、いつも女性にフラれてしまう、しがない役者稼業の話。そこに、テレ東ドラマお馴染みの、グルメ要素も加わっていました。◇主人公は地味なバイプレーヤー。といっても、昔の大部屋役者みたいな底辺の職業じゃない。それどころか、いつも夕方前には仕事が終わって、いいお店で、綺麗な女優さんとお酒飲んだりして、世間一般の哀れなサラリーマンやフリーターに比べたら、かなり羨まれる身分じゃないかと思える。そもそも若い女の子にフラれるのは当たり前なのだし、「何たそがれてんのよ」ってのが当初の率直な感想でした。坂井真紀のセリフと同じく。だから、はじめのうちは、このタイトルに違和感をおぼえていた。原作漫画の題名だから仕方ないけど。◇主演の北村有起哉は、最近よく目にするようになった俳優ですが、北村和夫の息子なんですねえ。知らなかった!ぜんぜん美形じゃないし、それこそ地味なバイプレーヤーですが、若い頃からずっとこういう世界を見てきた人なのだろうな。ダンスが出来たり、ギターが弾けたりして、いろいろな芸事が自然と身についてる感じ。◇かたや、昨日の記事にも、瀬戸さおりのことを書きましたが、ヘアメイクとスタイリストと3人一緒のときは、いつも楽しそうだったのよね。お菓子食べながら台本の練習したり、なんかお気楽で。でも、業界のことはよく知りませんが、さすがに優作の専属じゃ、あの2人は食べていけないよね。他のタレントの担当も掛け持ちしないと。◇そして、わたしがいちばん楽しみだったのは、毎朝のアパート前での浅田芭路ちゃんとの掛け合い!朝ドラ「舞いあがれ」の舞ちゃん役の子だけど、彼女はじつに芸達者だねえ…。お洒落をキメた優作を見るなり、「孫にも衣装」と言ったのも笑いましたが、いきなり流暢な英語を喋り始めたのもスゴかった。芭路ちゃんは、ほんとに英語が話せるのかしら?Helloちゃんだけに。最終回の葉山のシーンも綺麗だったな。お魚がめっちゃ美味しそうだった。羨ましい!お店のグルメもさることながら、優作が自分でつくる朝ごはんも美味しそうだったよね。
2023.12.24
毎年、12月の「グレかま」は、世界各地のクリスマスのお菓子を取り上げますが、今回は南仏プロバンスでした。◇それと同時にスピンオフドラマも放送され、ヘンゼル(瀬戸康史)が大正時代へタイムスリップしてた。朝ドラのことを意識したのか、少女歌劇団を舞台にした百合ネタがあったり、さらには、かまどの中の人(キムラ緑子)がTBSネタで、別班VIVANTならぬ「別嬪VEPPINT饅頭」を開発してたw怪しげな「VEPPINT饅頭」。百合っぽい2人。テレ東「たそがれ優作」じゃ大酒呑みだった北香那w和洋折衷のシュークリーム!https://www.tsuji.ac.jp/hotnews/cat621/cat709/post-836.htmlhttps://www.nhk.jp/g/blog/kki6ifv311昔の洋菓子って、バタークリームのイメージが強いけど、すでに大正時代に生クリームがあったんだね。朝ドラを見てても、大正時代の音楽やファッションは、とてもモダンだったと思うけれど、お菓子の文化もかなり先進的だったと感じる。◇一方、通常回で取りあげたのは、Xmasの南仏プロバンスで作られる、イエスと十二使徒をあらわす13種のデザート。このうちの4種は、四人の乞食(=4つの托鉢修道会)を意味し、フルーツの色でそれぞれの修道服を表すらしい。それぞれの修道服の色は、ドミニコ会:白色聖アウグスチノ会:濃紫色フランシスコ会:灰色カルメル会:茶褐色とのことなのだけど、どの色にどのフルーツが対応してるのか、ネットの情報はバラバラで一致していない。NHKの説明では、ドミニコ会:ドライいちじく聖アウグスチノ会:クルミとヘーゼルナッツフランシスコ会:レーズンカルメル会:アーモンドとなってましたが、英語のWikipediaによると、ドミニコ会:レーズン聖アウグスチノ会:クルミまたはヘーゼルナッツフランシスコ会:ドライいちじくカルメル会:アーモンドとなってて微妙に違います。さらに、ドミニコ会:アーモンド聖アウグスチノ会:レーズンフランシスコ会:いちじくカルメル会:ヘーゼルナッツと書いてるサイトも見受けられる。◇これらのフルーツを薄いチョコにのせた、マンディアン(托鉢修道士)というお菓子もあるそうです。上記の4種フルーツのほかには、イエスの故地・中東にちなんだナツメヤシの実デーツ、善悪を意味する白&黒のヌガー、さらにフリュイコンフィ、カリソン、フーガスなど。とにかくデザートを13種類そろえるわけですね。13種のデザート。粘土製のサントン人形も可愛い。https://www.tsuji.ac.jp/hotnews/cat621/cat709/post-834.htmlちなみに、13のデザートを食べ残しておくと、夜中に先祖の霊が来て食べていくそうです。ヨーロッパではハロウィンだけでなく、クリスマスにも先祖が来るんですね。◇まったくの余談ですが…テレ東の「たそがれ優作」に、瀬戸くんの妹の瀬戸さおりが出てました。瀬戸くんが童顔なせいもあって、妹のほうが、むしろ姉に見えます…(笑)いつも楽しそうだった3人。ヘンゼルも「弟」の設定ですが、見るからに瀬戸くん自身が弟キャラなのよね。でも、実際には2人の妹の「兄」なのだと。◇これまた余談ですが、いつもグレーテルが帰ったあと、お菓子の量がぜんぜん減ってませんよねえ。だから、わたしは、ヘンゼルが独り言をつぶやいてるだけで、じつはグレーテルも、かまども、すべて彼の妄想なんじゃないかと睨んでますwほんとは姉なんか存在してなくて、ひとりでヤバい幻覚を見てるだけじゃないかしら?
2023.12.23
カンテレの「トキコイ」。マギー&キケロの活動がはじまるところで終わりました。髪型的にはアトム&メルモって感じでしたが…。◇まずは各話サブタイトルのおさらい。たぶん以下のタイムトラベル映画が元ネタですよね。第1話「アバウト・タイムパトロール」⇒『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013)第2話「10年先の彼女」⇒『1秒先の彼女』(2020)第3話「きみがぼくを見つけた夜」⇒『きみがぼくを見つけた日』(2009)第4話「ある日浅草のどこかで」⇒『ある日どこかで』(1980)第5話「バスクラッシュ・エフェクト」⇒『バタフライ・エフェクト』(2004)第6話「バック・トゥ・ザ・エイティーズ」⇒『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)第7話「私は明日、20年後のきみとデートしない」⇒『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)第8話「サマータイムパトロール・ブルース」⇒『サマータイムマシン・ブルース』(2005)第9話「ミッドナイト・イン・オフィス」⇒『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)第10話「恋は大デジャブ」⇒『恋はデジャ・ブ』(1993)第11話「時をかけろ、恋人たち」⇒『時をかける少女』(1983)最終話は自己パロディかと思いましたが、タイトルのロゴから察するに、やっぱり1983年の「時かけ」なのかなと思う。pic.twitter.com/QIWvRXLczo— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) December 20, 2023内容的には、「過去から来た男」とか「ARQ:時の牢獄」とかも、引用してた気がしなくはない。◇2人が全宇宙の運命を握ってるという意味では、セカイ系だったともいえます。なぜか今季は、「ONEDAY」「すべて忘れてしまうから」「たとえあなたを忘れても」など、記憶にかんするドラマが多かった。たとえあなたを忘れても? ちなみに《はがし》ってのは、「記憶はがし」のことだと思ってましたが、「カップルはがし」のことだったらしいw吉岡里帆はコメディのほうが合うね。王舟の音楽は、なんとなくコロンボに似てた。
2023.12.20
田中さんと笙野がくっつきそうな流れ?朝倉あきは、噛ませ犬としてはだいぶ強力ですよね。でも、笙野にフラれてしまいそうです。田中さんの存在を知って、彼女のほうから身を引くのかしら?父子家庭で古風な娘に育った…って設定が細かい!前クールで毎熊克哉との絡みはありませんでした(=彼女たちの犯罪)NHKは朝倉あき主演で何か作ったら?見るからにNHK向きでしょ!時代劇でも現代劇でも。#朝倉あき #孤独のグルメ https://t.co/Fg1Sswq2Y8 pic.twitter.com/CSTLbBgHYN— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) December 19, 2023◇田中さんも、笙野も、モテ期に入ってるのだなあと思う。田中さんは、ずっと三好に憧れてたはずだし、笙野は笙野で、朝倉あきみたいな古風な子が、ずっとタイプだったはずだから、はたから見ると、「田中さんは三好とくっつけばいいじゃん!」「笙野は朝倉あきとくっつけばいいじゃん!」と思うのだけど、人生は皮肉なもので、ずっと欲しかったものが手に入りそうになると、なぜか気持ちが冷めてしまってる。その結果、笙野の分際で朝倉あきをフるとか、田中さんの分際で三好をフるとか、そういう逆転現象が起きてしまう。◇視聴者のあいだでも意見が割れてる。わたし自身も、「田中さんは三好とくっつけばいいじゃん!」「笙野は朝倉あきとくっつけばいいじゃん!」と思うところはある。田中さんと笙野の関係は、男女の恋愛というよりも、人として尊重しあえる友情じゃないの?…と考えてしまう。◇朱里と小西についても評価が割れてますw小西肯定派の田中さん。断じて小西否定派の華ちゃんw
2023.12.19
月9の「ONEDAY」も記憶を失くしてる話だし、上田誠の「トキコイ」も記憶を消される話だけど、ドラマの記憶喪失ネタって、たいていはファンタジーなのよね。…でも、このドラマは、リアルモードで見ればいいのか、ファンタジーモードで見ればいいのか、いまいちよく分からなかった。◇NHKの記事によると、記憶障害は、けっして珍しくないらしい。https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/852/だから、このドラマも、ただの悲恋ネタじゃなく、リアルな疾病として扱った作品といえなくもない。でも、自分の名前さえ忘れてしまうのに、車の運転や土地勘は失わず、キッチンカーの運営ができるのは不思議だったし、そもそも、空はどこで寝泊まりしてるのかも分からず、材料の仕入れとか、銀行の入金とか、そういう作業を自分で出来てるのかも謎でした。#たとえあなたを忘れても #堀田真由 #萩原利久 pic.twitter.com/UxiyLW93EE— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) December 18, 2023 そのほか、実家の場所は忘れてるのに、廃墟の場所は覚えてるとか、茜にしても、親友や恋人のことは忘れてて、デートした喫茶店のことも忘れてるのに、プリクラの撮り方は覚えてたりとか、どうもディテールに不可解なことが多かった。解離性健忘は、患者によって症状がさまざまで、何を覚えてて何を忘れるのかも、人それぞれなんだろうけど、もうちょっとディテールに説得力があれば、リアリティのある話として見ることも出来たと思う。映像は綺麗でしたけどね。まるでシチリア島みたいな、淡路島での質素な結婚式も、なんか狙いすましてる感じだったし。ゴッドファーザー的な?最後のシーンも、ちょっと神秘的で面白かったです。朝、空が目を覚まして、どうも記憶を失くしてるっぽいのだけど、部屋にたくさんの写真が貼ってあって、テレビには廃墟ピアノを弾く妻も映ってて、息子と妻は何も言わず寄り添ってくる。脳内の記憶が失われても、外側の記憶が覚えてるのね。◇まあ、健常者だって、すべてを記憶しながら生きてるわけじゃなく、じつはいろんなことを忘れながら生活してるのだし、たとえば老人性痴呆の場合も、いろんなことを忘れていながら、目の前の状況の連続性のなかで、とりあえず生活を続けてるだけなのかもしれません。
2023.12.18
想像以上に救いのない終わり方…。どちらも博愛の物語だったのに、「ゆりあ先生」のほうはハッピーエンドで、「泥濘の食卓」のほうはバッドエンドでした。…誰ひとり幸せにならない悲劇。◇具体的な描写は、ドラマっぽく極端にデフォルメされてましたが、じつは、これって意外にリアルな話だと思う。スーパーの店長の男は、なかば親切心から不倫してる感じだったし、主人公も、主人公の母親も、ハルキの幼馴染みの女の子も、一方的な愛情を暴走させてるだけで、本人にはまったく悪気がない。そこが怖い。じつは、世の中って、そういう人だらけじゃないかしら?親子関係でも、恋愛関係でも、自分の愛情が報われないと嫉妬や憎悪に変わるし、愛された側はそれを受け止められずに疲弊する。◇主人公の名前は「深愛」でしたが、愛が深くても幸せになれるとはかぎらない。深すぎる愛がミスマッチなら、かえって不幸と破滅を招いてしまうよね。そこがリアルだなと思いました。マッチングって大事です。恋愛でも、親子でも。
2023.12.17
第7話。小西がぶっちゃけました。男の「学歴・年収」と女の「若さ・可愛さ」は等価交換。そして、じつは、小西と朱里のコミュニケーション能力の高さが、その「学歴・年収」や「若さ・可愛さ」に支えられてる。それは、すなわち、自分の本性や本心を取り繕い、「学歴・年収」や「若さ・可愛さ」を武器にして、見かけだけを相手の求めに沿わせていく能力のこと。…笙野と田中さんが、コミュ力の欠如ゆえにこじらせてるのに対して、小西と朱里は、逆に、コミュ力がありすぎてこじらせてる感じ。そういう実情が垣間見えました。日テレは、前季の「こっち向いてよ向井くん」も、なかなかエグイ内容だったけど、今作も負けず劣らずエグってると思います。◇朱里が小西に突き刺した一言。> 私のこと好きだ好きだって言ってるけど、> いつもヒョウヒョウとしてソツがない!> いまいち本音が見えないよ…朱里は、笙野のことを見てるうちに、男性の価値観が変わってきたのかしら?異性の扱いは上手だけど、本音が見えない小西。本音しか言わないので、しばしば失礼な笙野。究極の選択ですね…wチヤホヤしてもらうぶんには、小西みたいな男のほうが一緒にいて気分がいいし、女子に合わせられない笙野みたいなヤツは気分悪い。でも、逆にいえば、笙野みたいな男は中身が丸見えなだけに嘘がなく、小西のような男は、いつも嘘っぽくて中身が見えない。一方、朱里と違って、田中さんの場合は、彼女自身がコミュ力に依存してないだけに、むしろコミュ力の欠けた人に共感があるのよね。うわべのコミュ力をあまり信じてない。だから、笙野みたいな人にもわりと寛容で、はじめから「根はいい人でしょ」と受け入れてる。小西と朱里みたいに、なまじコミュ力の高い人どうしの付き合いだと、エネルギーのあるうちは楽しいものの、おたがい演じることに疲れてくるし、本音が見えた途端に修復不能になったりします。◇朱里は、そのことに気がつきはじめた。核心を突かれた小西は、もう元のチャラ男には戻れなくなりました。でも、案外、それでよかったのかもしれません。うわべだけのコミュ力の高さなんて、かならずしも幸福に結びつくものではない。その虚しさは、小西がいちばんよく分かってるはず。
2023.12.06
フジ生方美久「#すき花」第8話。志木美鳥(田中麗奈)の人生の断片が繋がりました。とても胸を打つ内容で、久々に、むさぼるように見入っちゃった。◇前作の「silent」もそうだったけど、本筋とは無関係な話で神回になるのが不思議wむしろ、こっちこそメインのストーリーじゃないの??…と思ってしまいます。奈々(夏帆)が登場した「silent」の第6話でも、それまでの話はぜんぶ前フリで、ほんとうの主役は奈々じゃないかと思えたけど、今回もそんな感じ。実際、志木美鳥の登場で、今回の物語の多くの伏線が回収されています。◇まだ全貌は明らかじゃありませんが、少女時代の美鳥(上坂樹里)は家庭で暴力を受けてたっぽい。母親から疎まれ、親戚にもたらい回しにされてた。誰に暴力を受けてたか分からないけど、夜々(今田美桜/泉谷星奈)の毒母が過干渉だったのとは対照的に、美鳥の毒母は、おそらくネグレクトだったと思われます。育児放棄の美鳥ママ/共依存症の夜々ママ中学時代には、学校中の嫌われ者だったものの、しばしば同級生の椿(松下洸平/土田諒)の家に来て、椿から将棋を教わったり、椿の母から料理を教わったり、花屋を手伝ったりしていた。しかし、別れも告げず新潟へ転校してしまった。…高校の夏休みには、福岡の夜々の家に身を寄せてました。幼かった夜々は、母親の言いつけを破り、美鳥からこっそり将棋を教わったのだけど、もともと美鳥に将棋を教えたのは、じつは椿だったわけです。のちに夜々が東京で居候したときは、美鳥のつくる美味しいご飯を食べたけれど、もともと美鳥に料理を教えたのは、じつは椿の母でした。そして夏休みが終わると、母や兄のいる北海道ではなく、やはり新潟の高校へ帰ったとのことですが…そこは《愛着のない場所、誰も待っていない場所》だった。なぜ新潟の高校へ通っていたかは謎です。父の実家だったのか。あるいは寮生活だったのか。◇そのまま新潟で塾講師の仕事につき、結婚して「小花」姓になったころは高校の非常勤講師に。塾の教え子がゆくえ(多部未華子)と赤田(仲野太賀)で、高校での教え子が紅葉(神尾楓珠)なのですね。新潟の塾時代にも、やはり生徒たちから嫌われてましたが、ゆくえと赤田の2人だけは、なぜか美鳥を慕っていた。ゆくえと赤田がいまも固い友情で結ばれてるのは、たんにウマが合うからだけじゃなく、嫌われ者の塾講師のために連帯してたからなのね。いわば、戦友ってこと。そういう歴史を経たからこそ、いまも2人は性別を超えた親友でいられてるのだし、そのことが分かると、ゆくえと赤田の友情がすごく説得力を帯びてきます。その後、離婚をして東京に移って、高校生だった夜々を居候させたりして、やがて一軒家を買って塾をはじめたものの、北海道の母が要介護の状態だと知り、疎遠だった母と兄のところへ引っ越したのですね。でも、すぐにまた東京へ戻ってきた。◇◇◇志木美鳥は、親戚中から嫌われていたけれど、福岡の夜々だけは唯一の味方だった。東京の中学時代には、学校中の生徒から嫌われていたけど、椿と椿の母だけは彼女の味方でいた。新潟では、塾の生徒たちから嫌われてたけど、ゆくえと赤田だけは彼女の味方だった。そして…ゆくえが講師をしてる現在の塾では、クラスのみんなから嫌われ、先生にも味方してもらえない希子ちゃん(白鳥玉季)に、穂積くん(黒川想矢)だけが味方をしてます。じつは、そういうところで繋がってる人たち。「周りが嫌ってるから自分も嫌う」という同調主義にあらがうことの辛さ。◇来週は、紅葉と美鳥のエピソードが紐解かれるはずです。
2023.12.01
第6話。ダンサーと身バレした田中さんを、笙野&朱里がみごとに救いましたね。笙野は、「田中さんマニアを増やせばいい!」と言って勇気づけてましたが、けっこう説得力のあるセリフでした。たしかに、出社拒否でも、登校拒否でも、ほんの数人の味方がいるだけで、気持ち的にずいぶん楽になるでしょうね。田中さんを《宣伝に失敗したマニア向け商品》呼ばわりw◇結局、このドラマって、だれひとり悪者がいないのかも。最終的には、みんな良い人かもしれません。犬猿の仲だった笙野と朱里も、いまや2人でSabalanの手伝いをしたり、小西をまじえて松戸まで小旅行をしたり、なにかと一緒にいることが多くなりました。朱里のマンションの前では、たまたま遭遇した小西と進吾が、一触即発の状況になるかと思いきや、なぜか意気投合しちゃったみたい(笑)。◇朱里は最終的に小西とくっつくの?それとも進吾との関係を作りなおす?ちょっと先が読めなくなりました。女友達からは、「二股小西なんて女の扱いに慣れてるだけ!!」と叱られてましたが、まあ、それも一面の真実ではある。実際のところ、男は「あざと女」が好きだし、女は「あざと男」が好きよね…。異性の扱いが上手いのだから仕方ない。それゆえ、男も女も、結婚詐欺にあったり、ホストに騙されたりするのです…。◇その一方、朱里は、どこかしら笙野に嫉妬してて、これが"両想い"ならぬ"両ツンデレ"に見えてしまう。笙野は朱里が思うほど悪い男じゃないし、朱里は笙野が思うほどチャラい女じゃありません。だから、この犬猿の仲は反転する可能性が十分ある。◇第5話を見たときは、小西→朱里→笙野→田中→三好→愛子先生みたいな片想いの連鎖になるっぽい…とわたしは予想して、だとすれば、いわば恋愛の年功序列で、小西以外はみんな「年上LOVE」かと思ったけど、いまのところ、その予想が当たるかどうかは微妙な情勢です。
2023.12.01
生方美久の「#すき花」。クワトロ主演ってことで、坂元裕二の「カルテット」と同様の設定でしたが、志木美鳥(田中麗奈)の加入でクインテットになる予感?◇ドラマの前半は、恋愛感情なしに4人の男女が交流して、生きづらさや人間関係の不満について、愚痴を共有しあうワークショップみたいな内容でしたが、いろいろと斬新すぎて、正直、あまり乗り切れてなかった…(^^;でも、先週の第7話から、ちょっと今までとは違う展開に。◇紅葉(神尾楓珠)はゆくえ(多部未華子)のことが好きで、夜々(今田美桜)は椿(松下洸平)のことが好きだと判明!ここにきて禁断の恋愛要素が出てきた。それと同時に、椿の邸宅の元の住人が、4人の共通の知人の「志木美鳥」だった疑いが浮上!ちょっとサスペンスっぽい要素も現れました。いい意味で、フツーのドラマっぽい面白さになってきたかも。◇志木美鳥という人は、ゆくえがたまに電話してた北海道の女性ですね。同年代の親友かと思ってましたが、かつての憧れの塾講師だったようです。いっとき桜新町の一軒家で塾をやっていた。それが、おそらく現在の椿の家なのね。現在は北海道の実家で母の介護をしてる。◇そして、志木美鳥は、椿の中学の同級生でもある。ほとんど学校に来なくて、たまに来れば誰かしらを殴っていた、とww。でも、ほんとうは良い人で、椿自身は仲よくしてるつもりだったらしい。学校へ来るたび誰かを殴っていた志木美鳥。さらに、志木美鳥は、夜々の従姉妹です。高校生のときに将棋を教えてくれた優しい人。東京の家に居候させてもらったこともある。でも、親との関係が悪く、親戚とも疎遠で、夜々も長らく会っておらず、連絡先も知らない。ちなみに結婚してたときは「小花美鳥」だった。何かとワケありな志木美鳥。そして、結婚してたころの小花美鳥こそ、紅葉が会いたがってた学校の先生です。いつもイライラして不機嫌だったらしいけど、なぜ紅葉は彼女に会いたかったのでしょう?いつもイライラして不機嫌だった小花美鳥。志木美鳥が家を買い戻したら、クワトロ主演からクイント主演に変わりそうですね。
2023.11.30
今回も、注目のまとは笙野です(笑)。笙野のキャラって、いままでのテレビドラマになかった類型なので、とても面白い。わたしは憎めない人だと思ってしまうけど、視聴者のあいだでも見方はさまざまでしょうね。もちろん朱里みたいに敵視する人もいる。◇ちなみに先週の笙野は、田中さんに「1ミリも下心がない」と言ってましたが、同僚の小西にそそのかされるうち、すこし田中さんを女性として意識しはじめた?田中さんを「オバサン」呼ばわりしてたから、もっと若い設定かと思ってたけど、じつは彼も2年前に四十肩になってて、現在は36才。つまり、40才の田中さんとは4才ちがい。微妙な年の差ではあるけれど、思ったほど離れてないし、恋愛も十分にありえる。ただ、田中さんのほうは、笙野のことをまったく恋愛対象と見てませんね。◇むしろ、朱里のほうに可能性がある、という予感も…(笑)。朱里は最後に笙野への殺意を口にしましたが、じつは、あの感情の中身って、田中さんを傷つけたことへの「怒り」でもあるけど、田中さんの心に入り込んでたことへの「嫉妬」でもある。そこが微妙なところ。案外、笙野への朱里の気持ちが、どこかで反転するかも。笙野に殺意を抱く朱里(笑)。 最後のめるる、丹下左膳みたいな顔になってるけどw#セクシー田中さん pic.twitter.com/jgCFkFZ1dn— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 12, 2023
2023.11.13
テレ朝の「あな忘」第3話までを見ました。◇初回を見たときは、> 荒唐無稽な記憶喪失をネタに、> それを音楽ドラマと組み合わせて、> 生方美久の「silent」みたいな純愛路線に仕立てる。> …みたいのが浅野妙子の狙いでしょっ!!と思ったのですが、ちょっと見方が変わってきました。◇音楽ドラマの面でいうと、その元ネタは、「羊と鋼の森」とか「蜜蜂と遠雷」とか、「ピアノの森」とか「のだめ」とか、そこらへんだろうと思ってましたが…病院でのピアノの連弾シーンで思い出した!この《きらきら星変奏曲》の連弾シーンって、「羊と鋼の森」にもあるけど、もとはといえば、朝ドラ「純情きらり」が先よね!つまり、桜子と達彦の連弾こそが元ネタであって、そのシーンの発明者は、ほかならぬ浅野妙子だったわ(笑)。わたしとしたことが、すっかり忘れてた。なので、音楽ドラマとしての元ネタは、朝ドラ「純情きらり」かもしれないし、意外に純愛路線の元ネタも、そこかもしれません。◇◇記憶喪失についても、てっきり荒唐無稽なフィクションかと思ってたけど、エンドクレジットを見ると、ちゃんと「医療監修」のスタッフが入ってるよね。…ってことは、それなりにリアリティのある話かも。正直なところ、このドラマを、「荒唐無稽なエンタメ」と割り切るべきか、「社会問題を扱った真面目な作品」と見るべきか、判断がつかなくなってきた(笑)。◇◇◇空(萩原利久)は、自分の名前も肉親のことも忘れてしまうのに、車の運転は忘れてないし、廃墟の場所も覚えてるし、かつて流行った「だんご三兄弟」の歌も覚えてます。そもそも記憶障害の患者に、車の運転って許容されるのかしら?免許証の所在とか、道路交通法とかも覚えてる?◇彼の母親(檀れい)は、肉親であることを打ち明けず、息子に独り暮らしをさせています。幼馴染みの沙菜(岡田結実)は、仕事のない週末だけ彼の手伝いをしている。空が経済的に自立できてるのか、母親がひそかに支援しているかは謎。記憶を失くしても、仕事の内容は覚えているものなのか、沙菜が一から教えているのかも謎。ついでにいうと、標準語と関西弁が入り混じる設定も謎。◇記憶喪失について、本人は、「不自由を感じてないから病気とも思わない」と言いますが、沙菜に言わせれば、「飽きるほど苦しんだから苦しむのをやめただけ」とのこと。こうした考え方にも、リアリティがあるのかどうか、よく分からない。実際の症例に取材してるのかしら?ちなみに、保(風間俊介)のセリフによれば、これは「解離性健忘を繰り返す珍しい症例」らしい。記憶を失っても不自由は感じない。でも、苦しくないはずはない。解離性健忘を繰り返す珍しい症例。◇リアリティでいうと、病院が薬物を過剰投与したせいで、せん妄などの薬害を引き起こした、みたいな話や、主人公の働く携帯ショップでは、悪徳商法やブラック労働の実態が描かれたりして、けっこう社会批判的な内容が含まれています。これらを、どこまで真に受けるべきなのか?ただのフィクション?病院の過剰な薬物投与と薬害。携帯ショップの悪徳商法。ブラック労働。ちなみに、あの廃墟は、本当に神戸に実在するようです。崩れる危険はないのか。不法侵入にならないのか。そこらへんのリアリティも気になってしまう。神戸港が一望できるのね。なお、ボロボロに見えた壁は、斬新な壁紙だったことが判明(笑)
2023.11.07
セクシー田中さん。安定の面白さ。登場人物が全員かわいい。下心見え見えなのも嫌だけど、面と向かって「あなたに1ミリも下心はありません!」って言われるのもねwまあ、40すぎてるんだし、下心もたれないのが普通だとは思うけど。◇田中さん(木南晴夏)と笙野(毎熊克哉)は、互いにまったく恋愛感情をもってませんが、今後、どんな関係に発展していくんでしょうか。恋愛とはちがう次元の絆で結ばれていくってこと?一緒に料理したり、アラブ音楽や動物の話で盛り上がったり、なんだかんだ楽しく飲み明かしてるのを見ると、けっして相性は悪くないのよね。そして、朱里(生見愛瑠)はいまのところ、笙野をものすごく敵視してますが…このままトム&ジェリー的な関係が続くのか。それとも、どこかで関係が変化するのか。そのあたりも見どころです。正夢?
2023.11.07
カンテレ「トキコイ」第4話。せつない!> きついよこれ。> 好きになって、ゼロになって。> また出会って、また恋に落ちて。> しんどいよ…覚えてないけど。恋をして、記憶消されてまた恋をして、また記憶消されて…って、これ「あな忘」と同じだよねw◇ちなみに、下の記事によると、https://realsound.jp/movie/2023/10/post-1470610.html各話のサブタイトルは、過去のタイムトラベル映画をもじってるそうです。第1話「アバウト・タイムパトロール」⇒『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013)第2話「10年先の彼女」⇒『1秒先の彼女』(2020)第3話「きみがぼくを見つけた夜」⇒『きみがぼくを見つけた日』(2009)第4話「ある日浅草のどこかで」⇒『ある日どこかで』(1980)どれも観たことない!w◇浅草帰りに、みんなで「Lucky」という名のポッキー食べてた!幸いだから?全員でラッキーポッキー!
2023.11.01
日テレ「セクシー田中さん」面白い。もともと相沢友子の脚本って、正直、あまり信用してないのだけど、今作はかなり好感触。原作があるせいか、けっこう深みも感じます。第2話は、毎熊克哉が若干気の毒でしたが、性悪なめるるは面白すぎたし、阿波踊りみたいなベリーダンスの練習も笑えました。悪人顔のめるる。最後のベッドのシーンは…夢?…現実?きっと、朱里(生見愛瑠)が勝手に怒ってただけで、田中さん(木南晴夏)本人は、笙野(毎熊克哉)のことを悪く思ってないのでしょうね。スーパーで鶏肉も譲ってくれたし(笑)。笙野のほうも、田中さんの語るベリーダンスの歴史や多面性に、すこし心を動かされたのかもしれない。ベリーダンスの表の面と裏の面。猥雑さと崇高さ。ベリーダンスって、これが正当って言い切れる正解が見えないんです。起源も曖昧で、多種多様すぎて、もともとは祭事的な要素が強かったとも言われる。豊穣を祈って踊られる一方で、ハレムで感動的に踊られていて、安易なセクシーさの表象としての一面もあります。女性性や精神を解放して、誰にも媚びずに自由に生きる手段としてのスピリチュアルな一面もある。正解を自分で選び取るしかない。他者の意見をはねのけて強くありたいのか。すべてを内包してやわく共存したいのか。田中さんをとおして、朱里が笙野を見る目も変わっていくのかな。…つーか、予告編を見たら、朱里と笙野のキスシーンらしき場面も?!//✨第3話11/5(日)‼️ 日曜ドラマ✨💃「#セクシー田中さん」💃\\第2話ご視聴ありがとうございました!第3話もお楽しみに❣️見逃した方はTVer▶️https://t.co/VQDBwpqtltHulu▶️https://t.co/LVLGkC9O8z第2話ダイジェストはコチラ🔽https://t.co/t0UsgVfGm8 pic.twitter.com/c6oYB0djtC— 『セクシー田中さん』【公式】日テレ系【日曜よる10時30分放送】 (@ntv_tanakasan) October 29, 2023 めるるは、外見は華やかなのに、ちょっと男性不信ぎみな役どころです。その意味では、前作の「日曜の夜ぐらいは」にも通じる。しかも、朱里の男性不信の原因は、前作でカフェプロデューサーだった川村壱馬(笑)。めるるとカフェプロデューサー抜け駆けしてたのねw#生見愛瑠 #川村壱馬 #セクシー田中さん #日曜の夜ぐらいは pic.twitter.com/F1zmr2WS2x— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) October 22, 2023逆に、田中さんのほうは、見た目は地味だけれど、じつは女の子っぽいものが好きなファンシー気質。恋愛に対しても、わりと素直に憧れてるのでは?三好(安田顕)にもひそかな想いを寄せてるらしい。田中さんが憧れる「ときめきトゥナイト」の真壁くん。…古すぎw ◇もう15年も前ですが、おなじ日テレに「斉藤さん」というドラマがあって、わたしがもっとも好きな作品だったのだけど…今回の「田中さん」って、ちょっとそれを彷彿とさせるところがあります。原作は小田ゆうあの漫画で、キャラはぜんぜん違いますが、ミムラが観月ありさに憧れる設定だったので、やはりシスターフッドの物語だったのよね。
2023.10.30
カンテレ「トキコイ」第3話。時空賊マギー&キケロが登場?!通常なら「Maggy & Cicero」という綴りになるけど、張り紙では「MAGI & KIKERO」になってる。どう考えても「MEGU & KAKERU」の別名よねw◇常盤廻めぐ&井浦翔かけるは、転生した芳山和子&ケン・ソゴルと思ってましたが、時間の辻褄合わせをするべく犯罪者になった??実際、クローン技術を使えば、過去人と未来人の自由恋愛も可能になりますね。過去へ来たときの挨拶。…カップルの強盗といえば、ボニー&クライドのことも思い浮かびます。1930年代のテキサスの殺人強盗犯。彼らをモデルにした、1967年の映画の邦題は「俺たちに明日はない」。ちなみに、1965年のゴダールの「気狂いピエロ」も、やはり殺人強盗をした男女の逃避行の話で、ライオネル・ホワイトの原作には、未来がなく《あるのは現在だけ》とのセリフがあります。でも、マギー&キケロは、現在だけに縛られることなく、過去から未来までを自在に飛び回るのね。なお、ボニー&クライドを題材にした曲はたくさんあって、映画が公開された1967年には、ジョージー・フェイム(英)の曲がヒットして、翌1968年にも、ブリジット・バルドー&セルジュ・ゲンスブール(仏)やマール・ハガード(米)の曲がヒットしてます。2003年にはビヨンセ&ジェイZの曲もある。ビヨンセはテキサス出身だから地元のネタですね!アントワーヌ・デュアメルの美しいテーマ曲。
2023.10.25
テレ朝「あな忘」第1話。浅野妙子だったのか~w堀田真由&萩原利久は「癒し系カップル」だと思ってたし、てっきりピュアな純愛路線かと思ったけど、浅野妙子のあざとさが随所に透けて見えるwまあ、そのあざとさこそが浅野妙子らしさだし、嫌いじゃないんだけどね…。◇記憶障害者の純愛ドラマと見せかけて、…貧困女子の苦境とか、…昔のライバルとの確執(vs 森香澄)とか、…職場のいじめ(vs 松井玲奈)とか、…幼馴染への嫉妬(vs 岡田結実)とか、いつもみたいなドロドロ要素が混じってくんでしょ。そして不穏な展開になればなるほど、視聴者の反感を招くのも想定済みw風間俊介の手の傷とか、こがけんが職場にいるのも気になります。◇大雑把にいうなら、《疾病ドラマ》と《音楽ドラマ》の掛け合わせ。それが、このドラマ企画の肝。あざといよね~w映画でいうなら、「キミスイ」×「羊と鋼の森」とか、「セカコイ」×「蜜蜂と遠雷」みたいな感じ?とくに「セカコイ」は、眠るたびに記憶を失う健忘症の話だったから、今回の設定によく似てます。健忘症の設定として、・自分の名前も忘れてしまう。・家族はいないけど幼馴染みはいる。・記憶を失くしたら電話にも出ない。などが整合的なのかは、いまのところ微妙です。◇疾病系のドラマでいうと、「セカチュー」や「キミスイ」は、病に冒された美少女の話だったけれど、「セカコイ」や「silent」では、障害を抱えた美青年の話になってます。↑勘違い!記憶障害は莉子のほうだったwつまり、男性に障害があるほうが最近のトレンドってこと。障害を抱える美青年を演じたのは、「セカコイ」では道枝駿佑、「silent」では目黒蓮だったわけですが、今回はジャニタレでなく萩原利久を当てはめた。…なお、このドラマは、生方美久「silent」との関連性がさかんに言われてる。公式HPのコメントが「silent」の文章のパクリだったとか、どうでもいいニュースがネットに流れたりもしてますが、それ自体が「silent」との関連性を視聴者に意識させるための、意図的な仕掛けだった気がしなくもない。◇かたや音楽系のドラマでいうと、廃墟のピアノは「ピアノの森」っぽくもあるし、月が出てくるのは「蜜蜂と遠雷」っぽくもあるし、コンクールのトラウマは「のだめ」っぽいのかな。日テレの「リバーサルオーケストラ」もそうでしたね。ふたりで月や太陽に手をかざすのは、森下佳子の専売特許じゃなかったっけ?(笑)瀬戸内海の浜辺の流木も、なんとなく既視感がある。…ちなみに神戸にホテルの廃墟があるとしたら、震災前のバブル時代に建てられたものだろうけど、あれだけ建物が崩壊してるのに、ピアノだけ新品同然で調律も狂ってないのは、これもまた意図的なツッコミどころなのかしら?廃墟とはいっても、他人の所有物なら不法侵入になるし、いつ崩れるかもわからない危険な場所だから、物語の中でもそこらの問題が出てくる可能性はある。◇個人的にいうと、神戸が舞台なのは好印象です。コテコテの関西ではなく、おっとり・はんなりな関西を舞台にするのは、民放の恋愛ドラマとしては目新しいかも。じつは「セカコイ」も、(舞台は関西ではなかったものの)道枝駿佑と福本莉子が大阪出身だったから、わたしは「上方のエレガンス」をもっと押し出すべきだと、去年のブログ記事に書いたのよね。その意味で、今回の企画には、わたしの主張が反映されたと言えなくもない。実現させたのは東宝じゃないけど。…堀田真由は滋賀出身なので、おっとり系の関西にはもってこいのキャラクター。岡田結実も大阪出身なので関西弁ネイティブ。松井玲奈もキツめの関西弁を喋ってましたが、彼女は兵庫生まれの愛知育ちだそうです。萩原利久は埼玉人ですがwボロボロなのか斬新なデザインなのか判別しがたい壁紙。ぶっちゃけ、いろんなネタを掛け合わせただけのドラマだから、これといってテーマ性らしきものは感じられないのよね。奇しくも、今季は、テレ朝で橋部敦子と競合してますが、ベテラン同士の女性脚本家対決も、内容の期待度からいえば、橋部敦子のほうが上だなw…まったくの余談ですが、テレ東の「すべて忘れてしまうから」。テレ朝の「たとえあなたを忘れても」。とってもまぎらわしいです!
2023.10.23
NHK連ドラ「ブギウギ」見てます。いつもながら、朝ドラの子役たちは上手ですね~。現代の子とは思えないほど、みんな大正~昭和の子供になりきってたし、細かい心情の変化もよく表現できてて、どんな演出をしたらあんな演技が出来るの?…と不思議に思ってしまう。他方、水川あさみと柳葉敏郎は、実際には親子ほども年が離れてるのに、なんの違和感もなく夫婦を演じてるのが凄い。◇ところで、第1~2週にかけて、主人公の「出生の秘密」が少しずつ仄めかされました。あまりにも小出しなので、見過ごしてしまいそうです。ほぼ史実どおりだと思いますが、西野キヌ(中越典子)のモデルが谷口鳴尾。花田ツヤ(水川あさみ)のモデルが亀井うめ。3才で亡くなった花田武一たけいちのモデルが亀井正雄ですね。 NHKプラスではまだ全話視聴できるので、忘れないように、これまでのシーンをメモしておきます。◇まずは第1話の主人公のモノローグから。あ、家族はもう1人おった。ワテには双子の兄、武一兄ちゃんがおったけど、3才のときに病気で死んだ。ワテはよう覚えてへんけど、そのころはワテも病弱やったみたいや。つぎに第4話の回想シーンから。12年前の梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)の会話です。おかえりおかえり、ご苦労やったな。どやった香川? みんな喜んどったやろ、赤ん坊見せたら。(2人の赤ちゃんを見て)…双子やったかいな?ちゃうわ。何で?ふふ。…まあええわ。1人も2人も一緒や。お、こっちは女の子か。あ~、ツヤちゃん似やんな。そして第9話から。弟の六郎のセリフ。姉やん!姉やん!ワイと姉やん、ほんまの姉弟やないかもしれへんわ。アホのおっちゃんが言いよったんよ。ワイはカッパの子で、姉やんはクジラの子やって。ツヤはこうも言いました。あの子だけは絶対死なせたらあかんのや。顔向けできん。◇さらに、第2話にも、12年前の回想シーンがありました。ツヤが赤ちゃんを抱いて子守唄を歌っており、その横にはもうひとりの赤ちゃんが眠っており、後ろには顔色の悪いキヌ(中越典子)が座っていた。子守歌の詞はこうです。れんげも摘もか たんぽぽ摘もか今年のれんげも よう咲いた耳に鉢巻き スッチョチョンのチョンもひとつまわして スッチョチョンのチョン地域によって歌詞は違うらしいのですが、ツヤが歌っていたのは、おそらく香川バージョンでしょう。https://www.worldfolksong.com/songbook/japan/warabeuta/renge-tsumoka.html◇なお、ツイッターによると、今後「香川編」があるとのこと。たぶん主人公が実母に会いに行くのですね。今日は「香川編」に登場するキヌさん、治郎丸さん、トシさんと、ある事情で銭湯「はな湯」にやってくる女性・光子さんをご紹介しました。香川編はモデルの笠置シズ子さんの出生地、香川県東かがわ市と丸亀市でロケを行いました。美しい風景をどうぞお楽しみに💃#ブギウギ pic.twitter.com/X5WJk8CCXM— 朝ドラ「ブギウギ」公式 (@asadora_bk_nhk) September 7, 2023◇…ちなみに、ドラマの内容には何の不満もないのですが、おりしもジャニーズや宝塚の問題がある中で、ツヨポンの演じる服部良一が登場したり、「義理人情」だの「ご縁とご恩」の話が出たり、宝塚や松竹の歌劇団がモデルになってて、スパルタ指導やら退団やらの話が出てきたりするので、…何ともタイミングがわるいな~、と思わずにはいられない。そして、しつこいようですが、個人的に田村芽実の主演を期待してたことも、いまだに、ちょっと引っかかっています。
2023.10.15
カンテレ「時をかけるな、恋人たち」。いろいろとツボでした(笑)。SJって、杓子定規か!…タイムパトロールによる《つじつま合わせ》の話。小ネタ・パロディ満載のコメディでしたが、どこかで出会っていた未来人と過去人の恋物語で、キュンとさせるところもありますね。◇記憶が消されると同時に、あの曲も消えちゃったのかしら?貴方のそばにいたくて未来より今がほしくて魔法なら解けないで時のみずうみを巡った2人ゼリーな恋人透きとおる記憶の中でふれていてよこれは、あきらかに、芳山和子とケン・ソゴルのパロディだよねえ。吉岡里帆が演じる常盤廻は「時はめぐる」のシャレ。永山瑛太が演じる井浦翔も「時をかける」に関係がありそう。…と思ったら、脚本はヨーロッパ企画の上田誠でした。2018年にも「続・時をかける少女」を舞台化してる。このときは萌歌が主演です。それ以前にも、・サマータイムマシン・ブルース(2005)・藤子F不二雄のパラレルスペース第2話「あいつのタイムマシン」(2008)・家族八景~Nanase, Telepathy Girl's Ballad(2012)みたいな戯曲やドラマを書いてたらしく、こういうテーマがよっぽど好きなんだろうな。【#上白石萌歌】上白石萌歌が主演を務めた、舞台「続・時をかける少女」のDVDが、いよいよ本日8/31(金)発売です!!特典には、出演者によるオーディオコメンタリーや、舞台のサウンドトラックCDがついていて超お得♪ぜひチェックしてみてください!!https://t.co/7GUSEv8fQc pic.twitter.com/dqQYlkiH2h— 東宝芸能 (@TohoEnt) August 31, 2018 今回のドラマの企画は、吉岡里帆と上田誠の京都つながりで始まったそうですが、もともと吉岡里帆&上白石萌歌の繋がりもあります。12/20(日)18:00-の「UR LIFESTYLE COLLEGE」@lifestyle_ur は、上白石萌歌×吉岡里帆 対談🎧女優、声優、歌手とマルチに活躍する上白石萌歌。歌声のすばらしさに「いつも目頭が熱くなる」という吉岡里帆が、その魅力とライフスタイルに迫ります✨#jwave pic.twitter.com/VqnRdQ2txJ— J-WAVE 81.3FM (@jwave813fm) December 17, 2020八丁堀「だんだん飲み込めてきたね」がいちばんのツボwフォゲッターwなぜ扇子もってるのwなぜ雪駄をはいているw2253年のGEO?王舟の甘くてロマンティックな音楽も素敵でした。チリビーンズ「I like you」も可愛かったです。王舟って、テレ東「コタキ兄弟」とNHK「カノブツ」も担当してたのね。どちらの音楽も好きだった。
2023.10.11
夏ドラマ、ひととおり見終わりました。メモ代わりの感想です。◇・転職の魔王様小芝風花は金髪ヤンキーから元の臆病キャラに戻った感じ(笑)。成田凌は、表情を抑えたキャラでしたが、なかなかハマってました。最後は、笑顔で仕事ができる商社マンの道に戻らず、あえて転職の魔王として生きる道を選んだのね…。まあ、人生の選択はそれぞれですが。第1話は求職者の側から見たハードな内容でしたが、第2話からは求職者へ紹介する立場になったので、だいぶ楽な気持ちで見れました。転職が難しいのは、労働者の立場が弱いからですよね。労働者を酷使したり使い捨てたりする企業の態度が変わらないのは、企業側が一方的に労働者を評価するばかりで、労働者側が企業を評価する仕組みがないからです。組合も企業に飼いならされてしまっている。その結果、企業に使い捨てられた大量の人材が、鬱病や引きこもりや自殺に追い込まれ、国内の就労人口不足に拍車をかけているのですが、これは日本が労使関係のいびつなバランスを放置してきたツケです。ビッグモーターの例を見れば分かるとおり、たった一人の暴虐な経営者のせいで、数千・数万という消費者や労働者が不幸になります。それを防ぐためには、株主の視点だけでなく、あらゆる角度から企業を評価する指標が必要です。企業に殺されている人は非常に多い。だからこそ人権とビジネスの現状は改善しなければ。◇・18/40〜ふたりなら夢も恋も〜社会的なテーマに取り組んだシリアスな内容かと思ってたので、貧困や育児放棄の問題をどう乗り越えるのかしら?と心配してたけど、出産した後は「お母さんになりたい人が2人。お父さんになりたい人が2人。おじいちゃんになりたい人が2人。おばあちゃんになりたい人が2人」と…育児放棄の心配はまったくなくなった。コウちゃんの養育費を取り付けたうえに、裕福なキャリアウーマンや社長の息子も支援してくれたので、経済的にも不安がなく、かなりファンタジックな内容になってしまった。じつは登場人物の半分以上が、みんな髙嶋政宏の会社から恩恵を受けてる特殊な設定だったので、髙嶋政宏の会社が潰れたら全員が共倒れになるのでは?とも思ったけど(笑)。たしかに日本社会は若年出産にもっと寛容になるべきだし、そのための希望を抱かせるのも大事だけど、あまりにも物語がファンタジックにすぎると、かえって現実とのギャップに悲観してしまうのでは?という気もする。ちなみに、今回は上杉柊平も表情を抑えたキャラでしたね。若年出産は奇跡?海外の学生結婚と学生出産。いつも広めの画面構成。熟年の美男美女。子役は「らんまん」の綾でした。◇・ウソ婚脚本も演出もよかったのだけど、最終回にはカタルシスが感じられなかった。たんに「世話の焼ける2人だったね…」という印象しか残らない。「ウソ婚してた2人がウソ婚に騙される」というオチなのだけど、周りがお膳立てして気づかせるのでなく、せめて当人どうしが互いの本心に気づいてほしかったですね。散々ふりまわされた周囲の人たちが気の毒に見える。とはいえ、脚本の技術には卓越したものが感じられました。グダグダした無駄がなく、最小限のセリフや場面の効果を最大限に生かしていた。この脚本家は「シロクロパンダ」も書いてたらしい。菊池風磨もハマり役でした。美形ではないし、カッコつけのクズっぽいキャラなのに、なぜか憎めないという代わりのきかない個性。ジャニーズうんぬんの問題はともかく、この役は彼以外にありえなかった気がする。なお、NHKのアストリッドとラファエルにも「青いバラ」の話が出てきましたが、このドラマでも「ブルーローズ」が重要な役割を果たしてました。その開発が成功したせいで、青いバラの花言葉は「不可能」から「奇跡/夢は叶う」に変わったんだって!アストリッドとラファエルの記事にも書いたけど、その開発に成功したのは日本とオーストラリアの企業です。ジャニタレの起用にかんして言うと、とくに国内ドラマにかんしては、「ジャニーズだから起用する」ってのも不公平だけど、「ジャニーズだから排除する」ってのも不公平なわけで、(あくまでジャニーズの問題が処理される前提ですが)個々の作品ごとに適役を選ぶことに尽きるだろうと思います。ただ、東宝あたりがどう考えるか知らんけど、映画の場合は海外からの評価もあるのでジャニーズの起用は難しいところもある。ただの集客目当てでジャニーズに頼る姿勢は改めなければならない。◇・最高の教師~1年後、私は生徒に■された最終回の生徒がいちばんヤバかったですねえ。いじめとは何の関係もない生徒でしたけど。ちなみに生徒が自殺から救われたときに見たのが真っ赤な夕日だったのに、その直後に刺された教師が見たのは昼間の太陽だったのは何故?(笑)それはともかく、このドラマを見てて思ったのは、こんな絶望的で切羽詰まった問題を子供たちに考えさせるくらいなら、学校のシステムそのものを変えてしまった方がいいということ。本来、学校とは勉強する場所であって、イジメをなくす努力をさせられる場所ではありません。ところで、脚本を書いたツバキマサタカの正体は(武藤将吾とも言われてたけど)誰だったんでしょう?人生2周目の主人公がすべてお見通しで真実を言い当てるあたりは、むしろ遊川和彦の「女王の教室」や「家政婦のミタ」にそっくりでした。せいぜい湯川のコンセプトに沿って弟子の新人が書いてたとかじゃないの?真面目な内容に取り組んでるのは分かるけど、ややシナリオの技量に乏しくて説得力には欠けました。脚本家自身の考えを登場人物たちに喋らせて強引な結末に着地させてることが多く、ポリフォニックな要素が不足していたし、ある種の全体主義に見えてしまうのです。◇・真夏のシンデレラ第8話以降しか見てないのに言うのもなんだけど、やっぱり神尾楓珠とのほうがお似合いだったのでは?(笑)間宮祥太朗も、やはり今回は表情を抑えたキャラで、いまいち本来の魅力が出ていませんでした。このCM可愛いと思いますよ!
2023.10.11
テレ朝「ハレーションラブ」を見終わりました。警官が怪しいという予想は当たったけど、かなり内容が入り組んでました。なんとか時系列にまとめてみましたが、もしかしたら、いろいろ間違ってるかもしれません。《15年前》星合台の交番横の空き家。加賀孝之(20)が空き家の隣に住む女子高生の餅田日和(18)を無理やり連れ込んで撮影。このとき孝之はライターを落とした?七夕の日に、孝之は父を継いで交番に配属。日和は2階のベランダでフィルムを燃やしたが、これが隣の空き家に燃え移り、たまたま深山朱莉(6)と遊んでいた藤原晶(11)が焼死。餅田家にも延焼して、日和を助けようとした母が一酸化炭素中毒死。火災現場には孝之のライターと、ベランダから落ちた日和のフィルムと短冊が残されたが、孝之の父はライターとフィルムを隠蔽。朱莉はショックで記憶を失う。朱莉が空き家で撮影していたフィルムは母が隠蔽。いじめを苦にした晶の放火自殺だと噂がたち、藤原家は星合台を去る。このとき晶の弟の昴は6才。家を失った餅田家も星合台を去る。このとき日和の妹の真美は15才。その後、孝之は、晶をいじめていた槙田柚生と橋本隼斗を脅すようになる。《1年前》孝之は、火災現場で拾ったフィルムの切れ端を日和に送付。それを見た日和は「晶くんのせいではない」と手紙に書き残して自殺。日和の恋人の浅海恭介は、その手紙とフィルムの切れ端を日和の妹の小田桐真美に託す。真美は探偵を装い、匿名の手紙だとして晶の弟の昴に送付。《現在》昴と浅海と真美が星合台へ移住。昴は、兄をいじめていた槙田と橋本を放火犯と疑い、誘拐して尋問。しかし、彼らの放火でないと知るや、こんどは朱莉を疑い、自宅兼店舗に大量の短冊を貼りつけるなど心理的に追い詰める。晶の放火でなかったことを知った槙田は、自分たちを脅し続けた孝之を問い詰めるが、孝之はその場で槙田を殺害。朱莉の家から回収した大量の短冊を口に入れて死体遺棄。さらに橋本にも暴行を加えて脅迫。15年前のことを調べ始めた朱莉は、母が隠していたフィルムに、空き家でライターをもつ幼い自分が写っているのを発見。昴は朱莉を誘拐して尋問するが、そこへ浅海と孝之が駆けつける。その後、槙田と朱莉を尋問したときの動画が拡散される。(孝之に通報して、昴の動画を拡散したのは真美と浅海?)孝之に脅迫された橋本は、昴を襲撃。さらに、それを目撃した三原椎奈をも襲撃。その後、孝之に脅されていた事実を昴に告白して自殺。孝之は、浅見と昴を拉致して殺害しようとするも、そこへ孝之の父と朱莉が駆けつけて逮捕される。真美と浅海は、消去法で放火犯を探り当てようとしたものの、結局、火災の原因は日和だった…というオチなのだと思う。◇とにかく音響が不気味で、音楽もよかったです。
2023.10.10
テレ朝「#ナンウマ」が終了。最終盤の第8~9話は、唐突な展開と矢継ぎ早なセリフの応酬が続き、ちょっと強引な印象を受けました。もしかして、(野島伸司がそれを容認するとは思えないけど)10話分を無理やり全9話にねじ込んだのか?…と穿った見方までしてしまった。もうちょっと、ゆったり、じっくり見たかったのだけど。◇簡単にいえば、三島に救われたすいが、逆に三島を救う…という話でした。ある意味、2人ともコモリビトだったわけです。三島公平は、妹の蕾に「アガサ」の仮面をかぶらせ、みずからも「公文竜炎」の仮面をかぶることで、虐待されたトラウマの傷口を守ってきたわけですが…すいは、「アンディキムならそんなことしない!」と言って、兄妹の仮面を叩き割るべく積極介入をはじめた。三島がすいを救った物語が「ナンウマ」であり、それはもう完結して出版サイン会も行われたのだけど、すいが三島を救うのは、そのあとの物語になります。漫画のタイトルは「何曜日に生まれたの」。◇公文竜炎は、悠馬と純平に、「大事なのは歴史だよ」と言って、やさしく時間を巻き戻すように促しました。実際、それによって、リリ子と純平の関係は回復し、2人は「体外受精」という結論に至ります。接触恐怖症のリリ子&ゲイの純平であっても、子供を作る夢を叶えるのは不可能じゃない。しかし、すいと悠馬の関係が回復することはありませんでした。すいにとっては、もはや悠馬との歴史よりも、三島との歴史のほうが大きくなっていたのでしょう。三島がやっていたことは、いわば「見守りストーキング」です。アガサになった蕾の様子を監視しつづけ、すいの行動を盗聴しつづけたのだから…。奇しくも、日テレのドラマ「癒やしのお隣さん」が、やはり見守りストーカーを受け入れる話でしたが、すいも「ずっと見守られていた」と解釈したようです。それが三島とすいの10年の歴史になっている。しかし、妹の蕾に対する軟禁や監視は、たしかにそれも「見守り」ではあるけれど、芽衣に言わせれば「キショい共依存」であって、どこにも出口がありません。すいは、その共依存を打ち壊すべく介入したのだと思う。すいが救われたのも、たんに見守られていたからではなく、三島がその本性を現して積極介入をしてくれたからです。すいの父に命を救われた公文竜炎は、「見知らぬ人間を助けるなんてナンセンス」と言いましたが、10年前の三島公平は、事故に遭った純平とすいを助けたのだし、その後も、すいのことを見守りつづけ、みずからリスクを背負った積極介入のすえに救い出してくれた。◇すいは積極介入を開始します。三島の妹に対して試みたのは、オレンジウィッグのアガサに閉ざすことなく、かといって、黒髪の蕾に戻すのでもなく、いわば「レインボーな人格」へ開かせることでした。そもそもオレンジなんて、しょせん七色のうちの一要素にすぎない。ひとりの人間の中には、もっと多様な人格が眠ってる。コモリビトがファッションモデルになることだってある。…そして、最後は、公文と久美と父が共謀してすいを騙したように、すいも同級生や父と共謀して三島のことを騙しました。それによって、公文竜炎の仮面を叩き割り、もういちど三島公平を引きずり出すことに成功した。…2人はそのまま、ホントの海へ行きましたとさ。◇…ちなみに、すいは父に引き取られ、三島兄妹は母に引き取られて育ったのですが、どちらも母を憎んでいた点で共通しています。ここに、ちょっと生々しい部分がある。三島兄妹を虐待したのは母と再婚した義父でしたが、血の繋がらない子を襲うのは動物としての本能だから、公文は「男を招き入れた女親のほうが悪い」と言うのです。一方、すいは、「自分のファンと結婚するのが幸せだ」と言う父に対し、「そうだったら自分は産まれていない」と答えるのですが、父は「誰が母親でもすいは産まれていた!」と言い切ります。すると、すいはその言葉に喜ぶのですね。瑞貴は、父のDVにさらされた女性でしたが、三島とすいは、むしろ母の存在を消去したいのだなと思う。◇すいは、公文のファンというよりも三島のファンだから、三島は、自分のファンと結ばれることになるでしょう。かたや、悠馬や、純平や、健人は、自分のファンと結ばれたことになるのかしら??(笑)そして、公文の熱狂的ファンの少女は、殺人未遂で逮捕されました。現実世界にアンディキムがいないことを悲嘆したのでしょうか?彼女がリアルな世界で救われることはあるのでしょうか??
2023.10.09
シッコウ!!〜犬と私と執行官〜。ぜんぶ見終わりました。大森美香のテレ朝作品ですが、「未解決の女」のスタイリッシュな作風とは、だいぶ印象が違ってました。おじさんばかりの荒っぽい職場のドラマ。◇最終回は、父親が子供を連れて家を出てしまうお話。福原愛ちゃんの逆パターンですね。実際、これって、虐待でもないかぎりは、どちらが正しいとも言いきれないだろうなと思う。ドラマはわりと美しい終わり方になってて、全9話のなかでは、いちばん「落着感」があったかも。◇このドラマの「一件落着」とい言葉は、名探偵コナンcase closed のパロディであるだけでなく、あきらかに遠山の金さんを逆手に取ったものですね。遠山の金さんでは、桜吹雪を見せつけ、悪者を退治し、不幸な人たちが救われて一件落着となる。大岡越前も基本的には同じ。それが世にいう「大岡裁き」ってやつ。でも、このドラマでは、債務者の不幸が救われるわけじゃなく、むしろ路頭に迷わせると言うほうが正しい。それが近代司法の現実というわけですね。いろんな形で「犬」も絡んでいる。老子いわく、天地は仁ならず、万物を以て芻狗と為す。自然界には仁愛など存在せず、万物は「わらの犬」も同然である。人間も犬もゴミも区別されることはない。実際、裁判所は不遇な人間に対して非情だし、ペット業界も犬や猫に対して非情です。織田裕二が演じる執行官は、犬嫌いなのに「裁判所の犬」だと蔑まれている。そんななかで、伊藤沙莉は、いわば「犬奉行」の役回りでしょうか。◇わたしは以前、朝ドラ「風のハルカ」や「あさが来た」について、大森美香は、ただ不幸を遠ざけてるだけ!…と批判したことがあります。https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202108280000/たとえば…朝ドラ「風のハルカ」でいえば、アスカや正巳や奈々枝が不幸だった。朝ドラ「あさが来た」でいえば、姉が嫁いだ眉山家の人々が不幸だった。大河「青天を衝け」でいえば、尾高家の長七郎や平九郎らが不幸だった。大森美香のドラマにおいて、主人公は基本的にずっと幸福なのですよね。しかし、不幸な人々は、主人公から少し離れたところを通り過ぎるだけで、けっして救われることがないし、その不幸は主人公に降りかかることもない。◇今回のドラマでは、人々の苦境に正面から向き合っているけれど、やはり彼らが救われるわけではないし、ただ、目の前を通り過ぎていくだけです。主人公にその不幸が襲いかかるわけでもない。その意味で、大森美香の「不幸」の描き方は、よくもわるくも一貫してる。◇実際、不幸というのは、そう簡単に乗り越えられるものでも、そう簡単に救われるものでもないのよね。ユゴーの「レ・ミゼラブル」や、モンゴメリの「赤毛のアン」のように、不遇な環境に生まれた主人公が、そこから救われて不幸を乗り越え、最終的に幸福を勝ち取る物語なら、さぞかし劇的になるだろうけど、それを安易にやったら、ただの噓っぽいファンタジーになってしまうし、大森美香がそういう物語を書かないのは、よくいえば彼女の誠実さゆえかもしれない。◇とはいえ、今回の主人公の場合、両親の離婚のような境遇を乗り越えた前提があり、それだけに苦しみを強いられた債務者たちに共鳴したり、その不幸が乗り越えられるよう祈る気持ちがあります。終盤には次のセリフがありました。> たしかに胸が痛いこともありました。> けど、人間って案外悪くないって思ったんです。> どんなに辛い状況になっても、> もういちど生きていこうとする人がいた。> 目をつぶらずに歩き出そうと人生をリスタートしてた。> ときには図太くて、ときには気高くて、> そういう生きていく力を人はもってるんだなって。> そんな人生に触れるたびに、> 仕事とかを忘れて勇気をもらいました。> 私、執行官になって、もっと人間を知りたい。これは、大森美香自身の言葉のようにも思えたし、ある意味では、伊藤沙莉が、大森美香の分身のようにも見えました。◇作品の出来からいうと、題材そのものがちょっと地味だったうえに、遠山の金さん的な「落着感」にも乏しかった。債務者の苦境を描いて最後に執行!…というワンパターンだったので、中盤はマンネリ感があったのも否めない。でも、視聴率や評判は悪くなかったようですね。織田裕二も、従来の圧の強いイメージが払拭されて、役の幅が広がるきっかけになったでしょう。伊藤沙莉は、見ててとても面白かった。エンディングでは、5年間の実務を経て執行官になったっぽいけど、未解決の女のように第2シーズンもあるのかしら?
2023.10.08
日テレ「癒やしのお隣さん」を見終わりました!…11話まではダイジェスト視聴ですがw◇1997年に「ストーカー~逃げきれぬ愛」があって、あれも日テレの作品でしたが、もう四半世紀が経つのですね…。あのときはストーカー男の自殺に終わっていた。しかし、今回はハッピーエンド…。ちょっとストーカー男に同情的な結末になってる。…でも、ストーカー男のキャラ設定は、あのときのドラマにけっこう似てます。親に抑圧されてきた依存型の人間なのです。自殺こそしなかったけれど、自虐的で自己犠牲的な気質も共通してる。最終話で、田辺桃子の演じる主人公が、こう喝破しました。> ご両親の期待に応えるために生きて> こんどは私を守るために生きようと思った?> あなたは自分の人生を誰かに託したいだけなんですよ!> わたしをそれに利用しただけ。これって本質を言い当ててると思う。親との共依存のなかで育った人は、別のあらたな共依存関係を求めようとするのですね。◇わたし自身、四半世紀前のドラマを観たときから、うっすら感じてたことだけど、同じストーカーとはいっても、遠くから覗き見してるだけのタイプと、追いかけて攻撃してくるタイプとでは、まったく類型がちがうんじゃないかしら?…たとえば、女性に置き換えてみると、石川ひとみの「まちぶせ」とか、あみんの「待つわ」の主人公なんかも、あきらかに依存型の粘着ストーカー気質です。相手の男性にとっては迷惑かもしれないけど、はたから見てると同情してしまうところもあるし、多少の恨みがましいことは言っても、相手に危害を加えたりする意思はない。…男性の場合も、そういう依存型で自虐系のストーカーは、よほどの逆恨みでもされないかぎり、危害を加えてくる可能性は低いかなあと感じる。そもそも、そういう自虐系のストーカーって、男性の場合も、女性の場合も、おおむね「非モテ系」じゃないでしょうか。◇それとは逆に、危害を加えてくる攻撃型のストーカーは、早い話、妻や恋人に暴力をふるうDV男であって、自尊心を損なわれた復讐のために、別れた後になっても追いかけてくるケースでしょ。そういう自尊心や支配欲が強いタイプの男は、意外に「モテ系」が多いんじゃないかとも想像する。つまり、ほんとうは類型のまったく違う人間が、なぜか同じ「ストーカー」という概念で、一緒くたに括られてしまってる疑念はあるのです。◇道端で待ち伏せしたり、木の陰から覗き見してるようなタイプの人は、昔の村社会だったら、さほど問題にもならなかったと思うけど、現代のように、プライバシーが重視される都市型社会になって、世知辛くも犯罪者扱いされてしまってる感はある。もちろん程度の問題ではあるし、当事者からすれば、この上なく気持ち悪いだろうけど、せいぜいのところ、それは粘着オタク的・マニア的な片想いであって、ことさら犯罪者扱いするほどでもないのでは?…ってところはある。◇性暴力についても言えることですが、たとえ同じことをされていても、それが「暴力」であるか否かは、受け手の側の印象や判断によって左右される。今回のドラマのように、ストーカー的な粘着行為をされても、受け手に許容される場合はあるかもしれない。もちろん、あまり勘違いを助長してはいけないけど、ぶっちゃけて言うならば、女性にとっても、ストーキングされるうちが花ってところはあるしw今回の主人公の女の子の場合も、じつはストーキングされてる時期こそが、事実上の「モテ期」になってる感じがあって、それが意外にリアルだなあと思ったりするのよね。ストーカーがいなくなると同時に、女としての旬が終わってしまうというのも、実際にありうることだろうなと思います…(^^;坂本龍一が書いた唯一のドラマ主題歌だったのでは?(…と思ったけど他にもあるらしい。)うまく言えないけど、これ聴くと、ちょっと泣いちゃうのよね。高岡早紀がいちばん綺麗なときだったとも思う。
2023.10.06
TBS「ヴィヴァント(ヴィヴァン)」を見終わりました。序盤から、この物語は、かつての"馬賊もの"に似てる気がしてましたが、まさにそのような話だったと思います。◇最後は、バルカの腐敗した現地政府を排除して、日本人のノコルがその国家運営を担うという結末。だけど、いくら軍隊を掌握してるといっても、彼に国家の運営などできるわけがないと思う。いずれ周囲の勢力に脅かされ翻弄されることになる。あれだけの豊富な地下資源を有していたら、米中の代理戦争の舞台になりかねないし、日本がそこに影響力を行使するようになったら、旧満州のような傀儡国家の建設へ至るのでは?たとえ当初の目的が、現地における人権状況の改善だったとしても、それは、いつのまにか、資源を目当てにした大陸進出の口実に置き代わるでしょう。◇かつての"馬賊もの"も、当初は欧州の植民地支配からアジアを解放すべく、独立の夢のために駆け抜ける物語だったわけですが、やがて関東軍の暴走にさらされ、本来の理想は、八紘一宇や大東亜共栄などの領土的野心に置き代わり、ついには満州での傀儡国家の建設へと至り、731部隊や東部33部隊の暗躍を許すことになる。そう考えると、今回のドラマの主人公が、日露戦争の英雄と同じ名前の「乃木」であり、この物語を作ったのが、福澤諭吉の玄孫だということが不気味に思えます。しかも、このドラマでは、文民統制の逸脱を危険視した政府高官(橋爪功)が、最大の悪のラスボスのように設定されており、自衛隊別班はまるで正義の組織のように印象づけられてる。◇◇◇そもそもドラマとして面白かったのかというと…「乃木が射殺したはずの別班メンバーが生きていた」というあたりから、わたしの気持ちは引いてました。あのとき、ノコルがとどめを刺したり遺体を処理したりしていれば、彼らは全員死んでいたはずです。そういう悲惨な結果も厭わない別班の残酷さを表現した、…とも言えなくはないけど、櫻井と乃木の作戦はあまりにも無謀に思えます。◇終盤での、どんでん返しに次ぐどんでん返しは、もはやどの機関が何のために動いてるのかも分からなくさせたし、実際のところ、CIAやFBIがどう関係してるかも分からなかった。最後は、ノゴーン・ベキが生きていることを匂わせる演出でしたが、あそこまでこれ見よがしのどんでん返しが続いてしまうと、秋元康の「あな番」のときみたいに、観てるほうは、いいかげん白けてしまって、正直「もうどっちでもいいよ…」という感想しか湧いてこない。◇もし続編があるとしたら、これはやはり日本の傀儡国家建設へ至るのではないかしら?くれぐれも、ネトウヨをはじめとする現代日本人に、妙な領土的野心を焚きつける話にならないよう祈ります。フクシマの放射能汚染は、ほかならぬ自国の政策の結果なのだから、「美しき我が国を汚す者は何人たりとも許さない!」とかいう安倍晋三みたいな言い草は、いまや「どの口が言ってんの?」ってことにしかならないのよね。
2023.10.05
#ナンウマ。第7話。ありゃー。なんだか話が「高校教師」みたいになってきましたよ…。オレンジウィッグの堕天使が、妹かもしれないとは思ってたものの、義父との生活のなかで殺人未遂を犯し、その後は病院で自傷行為を繰り返していると。ここにきて、いかにもな野島ワールドが出てきちゃった感じ。◇かたや、瑞貴の悪女っぷりは芝居だったことが判明!子供が欲しい夫と、子供を産みたくない妻。夫婦の本質的な齟齬。「パートナーの夢を奪う愛なんて存在するの?」って、その言葉はけっこうキツいなー。だって、そんな夫婦は世の中にたくさんいるでしょう!双方の夢を叶えられる結婚のほうが少ないのでは?夫が離婚を望んだならともかく、自分のほうから相手を慮って離婚を仕掛けるのは、わたしにはちょっと理解できない。ましてオーナー夫婦がその作戦に協力したってのも、かなり不可解な感じがします。そして、この話を補欠キャプテンは知ってたの?◇夫を思いやって自ら離婚を仕掛ける瑞希。悪魔との取引に違反しないよう自らの恋を禁じる公文。両者は同じ問題を抱えているように見える。そして、ついに盗聴がバレました!たしかにね。すいが怒るのも無理はない。盗聴って、盗撮よりも罪深い気がするよ。そんななかで、すいは思い出す。バイク事故のとき二人を救助したのは公文だった?◇ちなみに、今週は3人女のボッチ飯でしたね(笑)。サイコパス女。ニセ悪女。ライバルは病気の妹?こちらは一昨年のひとり焼肉! 肉がデカい!
2023.09.29
テレ朝「ハヤブサ消防団」を見終わりました。なるほどね~。面白かったです。犯罪ミステリーというより、宗教社会vs世俗社会の葛藤についての話って感じ。◇信者のマインドコントロールと、それを解くことの難しさも描かれてました。池井戸潤の原作は、2021年6月から2022年5月までの連載。その2か月後に安倍晋三が暗殺されて、統一教会の問題が明るみになったことを考えると、けっこう予言的な内容だったのでは?もうひとつ想起されるのは、上九一色村を拠点にして大量殺人を犯したオウム真理教と、麻原彰晃の不在のあとに存続しつづける後継団体のこと。◇でも、それ以上に、わたしは《戦前の天皇制》のことを思い起こしました。宗教は、教祖が絶対的な権力をもってる場合もあるけど、じつは教祖がむりやり祭り上げられて、周りの連中がその権威を利用してる場合もある。戦前の天皇制はその典型で、天皇自身が権力をふるっていたというよりも、軍部がその権威を利用していたという面が強い。…戦争が終わって、天皇が過ちを認めて人間宣言をおこなうと、それまで天皇を祭り上げていた連中は、一転して天皇を「裏切り者」とみなすわけですよね。現在のネトウヨも、皇族を悪しざまに扱き下ろしたりしています。利用価値のあるうちは「神」と崇めるけれど、都合が悪くなると平気で罵倒するようになる。そういうところも、今回の物語にそっくりだと思いました。◇キリスト教も、死者を祭り上げることで成立した宗教です。それを創始したのは、イエス自身ではなく弟子のパウロだから。教祖が死んでいるからこそ、都合のいい物語を作り上げることができる。ダン・ブラウンの「ダヴィンチコード」は、"イエスに子供がいた"と暴露するミステリー小説ですが、かりにそれが真実であれば、キリスト教にとっては不都合なスキャンダルになります。天皇制の場合も、キリスト教の場合も、教祖が「ただの人間」だとバレるのは非常に都合が悪い。作りあげた神話がぜんぶ嘘になってしまうから。ふつうに結婚したり、ふつうに子供を産んだりすることを、信者は認めようとしない。そういう教祖の人間的な部分は隠さなければならない。◇ジャニーズ信者とか、山下達郎信者とかも、信じたい部分だけを信じて、醜悪な真実からは目を背けつづけています。それだけではなく、真実を暴こうとする被害者を「敵」とみなして攻撃もする。これは、天皇やイエスが「ふつうの人間」であることを認めようとしない、宗教原理主義者と同じです。あるいは、地動説を主張するガリレオを断罪した中世の坊さんとか、ダーウィンの進化論を悪魔の教義とみなす米国の福音派と同じ。彼らにとって「真実」は都合が悪いからです。わたしは7月10日の記事で、「ジャニヲタと達郎信者とネトウヨが共闘する」と書いたけど、それも信仰の心理によって説明がつきます。信者にとって「不都合な真実」は共通の敵になる。
2023.09.24
日テレ「彼女たちの犯罪」を見終わりました。ほぼ全員不幸な結末。最後は百合要素もありましたが、原作とは違っているとのこと。石井杏奈が痛みを堪えながら憔悴していく演技とか、毎熊克哉がどんどん荒んでいく演技とかも凄かった。悲しい結末でしたが、なかなか面白かったです。◇前半は、不倫した愛人と不倫された妻が共謀するという、ドロドロの昼ドラ的展開でしたが、後半になって、本格ミステリーの様相を強めていきました。ひたすら《事件前》と《事件後》の時間を往ったり来たりして、ようやく第5話になって事件が起こる…という構成も斬新。毎熊克哉はいかにもピッタリ!って役どころ(笑)。野間口徹がしれっと優秀な刑事なのもよかったな。さらっと親友を裏切った朝倉あき!(笑)人生の席替え=トレードのお話でもありました。戸籍が欲しい女と、戸籍がいらない女。夫が欲しい女と、夫のいらない女。命を失う女と、命を捨てる女。無いものは欲しいけど、得たものはいらなくなる。日産ラシーン。ブラウンでルーフとワイパーが白。まあ、ツッコミどころがないわけではなく、学生時代の髪型とか(笑)万年筆だけで逮捕状が出たりとかは、さすがに「ん?」と思いましたが。身寄りがなく他人の戸籍を使ってる女が、怪しまれずにエリート医師と結婚できるかしら?…ってのも不思議なところではある。◇深川麻衣と前田敦子は、AKB共演としては最良のものだったと思います。でも、AKBヲタの人たちって、こういう作品にはまったく興味なさそう(笑)。JABBERLOOPのジャズソウルも、Omoinotakeのエンディング曲もなかなかでした。これは前のアルバムから。こちらがサントラの曲。昼ドラっぽくて好き(笑)深川麻衣の出演するMV。
2023.09.23
#ナンウマ。第6話。ホントの海ですべての真実が語られて、バイク事故と引きこもりの謎は解けました。しかし、また新たな謎が浮上!それは、主人公と同級生の謎じゃなくて、公文竜炎の二重人格と、アガサについての謎です。◇かつて純文学作家だった三島公平は、悪魔と取り引きをして魂を売りわたし、ラノベ作家の公文竜炎に生まれ変わったらしい。さながら、メフィストフェレスに魂を売ったファウストのように。あるいはパガニーニやロバート・ジョンソンのように。そして、三島公平の人格は、いまは公文竜炎の支配下に置かれている。一般的にいうと、悪魔=堕天使ルシファーだし、アガサが「オレンジウィッグの堕天使」なら、アガサこそが悪魔なのかもしれません。◇アガサは自殺未遂を繰り返していて、そのたびにアンディキムが彼女を救っている。そのゲームを通して2人は愛し合っている。公文竜炎こそがアンディキムなのかしら?そもそもアガサは実在してるの?あるいは公文にだけ見える幻影?同居してる芽衣ってセフレだっけ?◇それにしても、いちどは消えていたはずの三島公平が、なぜ黒目すいの前に現れたのでしょうか?2人は好き避けをするほど惹かれ合ったけれど、すいが真実を明かしたせいで、三島公平の人格はふたたび姿を消してしまった。◇高校生のときは、黒目すいも、雨宮純平も、江田悠馬に想いを寄せていたのだけど、それはもう過去の話…。離婚した瑞貴は、いまごろになって「悠馬を返す」と言うけれど、現在の黒目すいが愛してるのは、江田悠馬ではなく、三島公平なのでしょう。ホントの海での告白シーンは美しかったなー。重い告白を、波の音がすべて包み込んで、打ち消してくれた。すいは、純平の同性愛の秘密をひとりで抱え、瑞貴や悠馬の恨みもひとりで引き受けて、10年ものあいだ引きこもってしまった。両親の離婚とは無関係に、すい自身が父に引越しを頼んだのですね。補欠キャプテンだった健人は、バイクに細工などしていませんでした。まあ、盗撮はしてたみたいだけど…(笑)。
2023.09.22
日テレ「こっち向いてよ向井くん」見終わりました。センスがよくて、やたらとお洒落なドラマだった。近年の日テレドラマにはなかったほど、制作陣に突出して非凡なものを感じました。赤楚くんも、過去イチのハマり役!◇ただ、話の中身は、なんだか不毛で虚しい気がしないでもなく…(^^;ダメ出しされる赤楚くんや天音くんが気の毒で、見終わったあとは疲労感と虚無感だけが残ることも。恋愛の間違い探しといっても、一時的な正否や勝ち負けを問うてるだけで、実際は、どこにも正解なんて存在しないのよね。ある時期までは正解と思えたことでも、時間が経ってみたら間違いだったりもするし、終りなき「間違い探し」の果てに、何の着地点にも辿り着けず終わるかもしれない。◇いまどき、80年代バブルの頃のように、他人の恋愛にダメ出しをして、マウント取って優越感を得るのが目的じゃなかろうし、そういう意味では、コメディタッチのわりに、シニカルかつペシミスティックな物語だった気もする。実際、この感じって、ちょっと30年前の「東京ラブストーリー」に似てて、とくに"アイシングクッキー女"が出てきたところは、いわゆる"おでん女"を彷彿とさせました。藤原さくらがクッキー女に敗北するのは、鈴木保奈美がおでん女に敗北したのと同じですね。違いがあったとすれば、鈴木保奈美が負けを認めなかったのに対して、藤原さくらが最後に自分の非を認めたところかな。▶ https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202112240000/◇最終的に、波瑠も、生田絵梨花も、藤原さくらも、女子全員が「結婚否定派」だったというオチ。この少子化の時代にあって、なかなかに極限的な結末ですwまあ、藤原さくらの場合は、結婚は否定しても、出産は否定しないらしかったけど。たしかに事実婚という選択をする人はいますしね。…赤楚くんと波瑠のカップルは、とても現代的な感じがしましたが、どっちみち結婚する気のない相手なら、生田絵梨花と付き合ったままでも、さほど変わらなかったのでは?って気もする…(^^;◇ちなみに、赤楚くんと波瑠は、実年齢では波瑠のほうが3つ年上なのだけど、(赤楚くんが29才、波瑠が32才)役柄では赤楚くんが1つ年上の設定だったらしい。(赤楚くんが33才、波瑠が32才)わたし的には、むしろ実年齢の設定がよかったのに…と思う。そのほうが今っぽいのでは?…原作漫画はまだ連載中らしいので、2人の今後があるなら見てみたい。妹夫婦の事実婚がどうなるかも興味はあります。◇そして、音楽もめちゃくちゃオシャレでしたね。サントラはYouTubeに全曲あがってますが、これは一聴の価値あり!FUKUSHIGE MARIって、ゲス極・ちゃんMARIのソロ名義なのね。すばらしい才能です。最終回にチラッと出演してましたね。最後にチラッと出演してました。
2023.09.20
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