まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.01.30
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一週おくれですが、
「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」
第2話の《千夜一夜物語》を見ました。

今回はイラン難民の話。

このドラマを見てると、
フランスは移民社会なのだなあと分かります。

黒人や日本人も出てくるし、
北米先住民が出てきたこともあるし、
むしろ生粋のフランス人のほうが少ない気がする。



今回の物語の背景について、
いろいろ気になったので調べてみました。

1.ジン&イフリート&シャフリヤール


被害者は、
シャフリヤールという別人を名乗っていました。
これは「千夜一夜物語」の王の名前でもある。

サーサーン朝のシャフリヤール王は、
不貞を犯した妻と奴隷を殺したあと、
若い娘を毎晩ひとりずつ殺したのですね。

しかし、
シェヘラザードが物語を話しはじめたので、
その続きが気になった王は、娘殺しをやめたわけです。



ジンというのは、
アラブ世界で信じられている精霊/魔物です。
精神病などを「ジンが憑依した」と解釈するそうです。

スーフィーの占い師や祈祷師は、
ジンを操って病気の治療をしたりするらしい。






イフリートも、このジンの一種で、
魔法のランプから出てくるのもイフリートです。
今回のドラマでは「火の精霊」と説明されてました。

被害者は、
まるでイフリートに焼き殺されたかのごとく、
真っ黒焦げの死体で見つかったわけです。

2.スーフィズム&コーヒー&セマー


後述するように、
被害者の正体は別人でしたが、

本物のシャフリヤールはスーフィーの男性で、
もともとはイラン南部の羊飼いだったらしい。

じつはスーフィーは、
アラビア語で羊毛を意味する「スーフ」に由来し、
羊毛をまとった貧しい人々の意味だったようです。



スーフィズムというのは、
イスラム教より古くから存在する、
神秘主義的で実践性の強い原始宗教です。

ドラマのなかでニコラ・ペラン警部は、
「その実践主義が教義に合わず、イラン政府に迫害されてる」
と話してました。



こういう原始宗教は世界中に存在しますよね。

たとえば日本では、
仏教が観念的なのに対して、
神道のほうは、より実践的で神秘的です。

仏教のなかでも、
顕教より密教のほうが実践的かつ神秘的です。

また、キリスト教の世界でも、
原始的な神秘主義はグノーシスとして異端視される。

… 

ドラマのなかで被害者の娘を名乗っていた女性は、
トルコ人のコミュニティに加わっていて、
くるくる回るダンスを踊ってました。

これは、
メヴレヴィー教団の旋回舞踊「セマー」ですが、
やはりスーフィズムから生まれた宗教行為で、
トランス状態になるまで回って神を体感するらしい。

トルコ政府は、
メヴレヴィー教団の活動を禁止してるものの、
観光客向けの芸能として「セマー」を容認してるようです。



加害者のひとりであるタクシードライバーの女性は、
乗客にコーヒーを提供してました。

じつはコーヒーの文化も、
イエメンのスーフィズムに発祥しています。

瞑想や修行に取り組む際、
食欲や睡眠欲に打ち克つために、
覚醒作用のあるコーヒーが飲まれたのだそうです。

3.イラン革命防衛隊と女性による反政府デモ


今回のドラマの加害者たちは、
イラン革命防衛隊から迫害を受けたり、
家族や恋人を殺されたりした3人の女性でした。

これはおそらく、
2017~18年に起こったイラン反政府デモを題材にしてます。
フランスでこの回が放送された前年の2022年にも、
やはりイランで大きな反政府デモがありました。

これらはおもに女性を中心としたデモであり、
BBCなどの記事によると、
多くの人が逮捕され、不当な裁判で死刑判決を受けたり、
拷問を受けて不可解な死に方をしたり、
行方不明になったりしているようです。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64092881

さらに、こちらには、
スーフィーへの弾圧のことも書かれています。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001380819.pdf



ドラマのなかで、
シャフリヤールを名乗っていた被害者は、
かつて革命防衛隊に属していた男でした。
ニコラの話によれば、
イラン政権は、彼が反体制派に殺されたと思ってるが、
実際は脱走していたので、微妙な立場にあった。
誰かに正体を知られたら庇護を受けられなくなるし、
もし国に戻れば、
民衆にリンチされるか、反逆罪で処刑される運命だった。
とのことです。

民族心理学者のカウンセラーが、
3人の女性に復讐殺人を教唆したのは、
上記のようなイランの政治的混乱のなかで、
被害を受けた女性たちの悲劇を知っていたからです。

その背景を知らなければ、
最後にラファエルが涙を流した理由も分からない。







余談ですが、
第1話のタイトルは「ドラゴンの目」でしたね。
辰年だけに??! …と思ったけど、
去年のフランスのドラマだから、たんなる偶然。

シーズン4では、
黒人のアルチュールが休職した代わりに、
保険会社から警察に出戻ったノラが加わりました。
頭も切れて、なかなかセクシーな美人だし、
またもラファエルの恋敵が現れた感じです。

でも、ラファエルも負けず劣らず、
髪型をボブに変えて、前シーズンより女っぽくなった。

アストリッドの腹違いの弟は、なんだか変わった男の子です。





これまた余談だけど…

Tverで年明けに、
テレ朝「未解決の女~警視庁文書捜査官」を再配信してました。
考えてみたら、あの設定はアストリッド&ラファエルに似てる!

麻見和史の原作「警視庁文書捜査官」シリーズは、
2015年にはじまってて、
大森美香のドラマも2018年にはじまってるので、
2019年にはじまったフランスのドラマよりも早い。

波瑠&鈴木京香の立場は、
アストリッド&ラファエルとは逆だけど、
波瑠のキャラは、どことなくアストリッドに重なります。



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最終更新日  2024.03.14 20:01:28
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