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投資信託の大きな特徴は「分散投資」であるというが、表面的には分散投資されているように見えても、実質的には集中投資されているファンドもあるので、注意が必要だ。たとえば、コモディティファンドの場合、商品指数の変動に債券の価格が連動するような「仕組み債」に投資することによって、間接的に商品に投資する形態が多くみられる。このようなファンドでは、最終的にはいろいろな商品に分散投資していることになるが、ファンドが直接組み入れているのは一種類の仕組み債であり、しかも多くのファンドでは資産のほとんどを同一発行体の仕組み債に集中投資していることが多い。そのため、もしもその発行体に不測の事態が起きると、仕組み債の元本や利払いが滞る、もしくは不能となる危険性がある。意外なことに、日本の投資信託法にはファンド資産の分散投資に関する規定がない。投信法で唯一ファンドの投資制限を規定しているのは、同一法人の発行する「株式」の50%超を1委託会社が運用するすべてのファンド合計で取得してはならない、ということだけである。これは、分散投資の観点というよりは、会社支配を避けるという観点からの規定であろう。ファンドが信託財産の危険分散を図るための投資制限は、ファンドの約款による任意の規定に任されているのである。約款では、通常、同一銘柄の「株式」への投資はファンド純資産の10%以内などと定められているが、そうした投資制限は株式についてのみ適用されていて、債券や短期金融商品などについては全く投資制限がない。したがって、一銘柄の仕組み債を100%組み入れることも可能なのである。米国でも欧州でも、投資信託法そのもので「分散投資」の要件を規定している。一発行体の発行証券または金融商品にファンド資産の10%を超えて投資してはならないなど、分散投資要件を株式投資だけでなく、債券や金融商品への投資についても規定している。わが国でも、仕組み債など証券化商品を通じて間接的に株式や債券、不動産、商品などに投資するファンドが増加していることに対応して、法的な手当ても含め、株式以外の証券等についても分散投資を徹底するルールを検討すべきではないだろうか。投資家としては、ファンドへの投資にあたり、最終的な投資対象にどのような中間的な投資手段を通じて投資されているか、それらの中間的な投資手段は十分にリスク分散がなされているかをチェックする必要があるだろう。※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第40号 2008年12月12日発行より)==========================================================
2008.12.12
10月30日に政府が決定した追加経済対策の一つとして、確定拠出年金の充実を図ることが盛り込まれた。具体的には、日本版401k年金で、企業が拠出する掛金に従業員が上乗せして資金を拠出する「マッチング拠出」が認められることになった。日本の401k年金制度では、企業が個々の従業員の俸給に応じて拠出した年金積立金を、加入者である従業員が自らの判断で資産運用するという方式がとられている。しかし、企業側の拠出だけでは将来の年金資金の積立に十分とは言えず、従業員が任意に上乗せして拠出することを認めて欲しいという声が加入者はもとより年金関係業界からあがっていた。マッチング拠出の解禁は、401kの資産運用に大きな変化をもたらしそうだ。401kでは加入者は企業が選定した運用商品リストから運用対象を選択するが、会社から与えられた資金だけでなく自らの意思で資金を追加して運用するとなると、運用対象の選択にも一段と注力するようになり、運用商品の追加やリストの見直しをも求める声もあがってこよう。現在、401kの運用の主力商品は投資信託である。利用されているファンドを見ると、日本株に投資するファンド及び日本の株式と債券をミックスしたバランス型が多く、外国の株式や債券だけに投資するファンドは意外に少ない。また、インデックスファンドとライフサイクル型のファンドが多いことが目立っている。将来日本で生活していくための年金資金運用だから、日本の証券で運用するというのもうなずける。また、インデックスファンドは分かりやすく、ライフサイクル型は一本のファンドで内外の株や債券に分散投資ができるという点で、401kで初めて投資信託に投資するような初心者に最適なファンドといえるだろう。ただ、投資の世界は国際化・多様化が急速に進行しており、投資信託の分野でも、先進国はもとよりエマージング国へ投資するファンドや、伝統的な資産以外の不動産や商品などに投資するファンドが続々と設立されてきている。今後、401k年金の運用においてもこれらのファンドへの投資ニーズが高まってこよう。とりわけ、マッチング拠出をしようとする加入者や若い年代の加入者はそうした傾向が強くなると思われる。マッチング拠出の解禁を契機に、401k向けファンドの品揃えの拡充が望まれる。※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第38号 2008年11月14日発行より)==========================================================
2008.12.02
米国第4位の大手証券だったリーマン・ブラザースの経営破綻は、米国の投信にも大きな衝撃を与えた。安全確実と投資家から信頼されていたMMF(マネー・マーケット・ファンド)が元本割れとなったのだ。1970年代に初めてMMFを開発したリザーブファンドの運用するMMFが、リーマンの破綻で組み入れていたリーマンの債券が無価値となり、基準価額が元本の1ドルを割込み97セントとなってしまった。その結果、資産620億ドル(6.5兆円)を擁するファンドに600億ドルの解約が殺到、ファンドは閉鎖に追い込まれた。数日後、名門投信会社のパトナムも、運用するMMFの一つが大量解約に見舞われた。パトナムのファンドはリーマンの債券は組み入れていなかったが、解約資金捻出には組入れ証券を安値で売却せざるを得ず、そうなれば基準価額が元本割れとなってしまうとして、ファンドは営業を停止した。リーマンの破綻や相次ぐ証券会社、金融機関の経営危機によって、投資家の不安が増大しMMFから大量の資金が流出する懸念が生じたため、米政府は最大500億ドルを投入して払戻しを保証する方策を打ち出し、FRB もMMFの大量解約があれば銀行への融資拡大を行うと言明している。米国のMMFは7月末で3.5兆ドル(約370兆円)の資産残高があり、米国投信全体の30%を占める大きな柱となっている。そのうち、機関投資家向けのMMFが3分の2、個人投資家向けが3分の1と、機関投資家向けのファンド残高が多いことが特徴だ。大量の解約が殺到したリザーブファンドやパトナムのファンドは機関投資家専用のMMFである。MMFは機関投資家の短期資金の運用対象となっていると同時に、米国のコマーシャルペーパーの発行高の47%を保有する最大手の機関投資家ともなっており(2007年末)、企業の短期資金調達に重要な役割を果たしている。今回、政府がMMFの強力な支援策を講じたのも、一つにはMMFの短期金融市場における役割を重視したからであろう。幸い、個人投資家向けのMMFは、現在までのところ解約動向は比較的安定しているようである。米国MMFは、元本保証はないもののSECの厳しい運用ルールによって実質上元本1ドルを維持する運用が行われてきており、個人投資家にとっても安全で有利な資産運用対象とみられてきた。にもかかわらず今回、元本割れを生じてしまったのである。日本でも2001年に一部のMMF(マネー・マネージメント・ファンド)で元本割れが生じたことがある。これに対応して投信業界は、米国のMMFをも参考に運用面・販売面のルールを策定し、MMFの安定性の確保を図って今日に至っている。米国のMMFが今後どのように改善されていくか、日本としても注目を怠れない。※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第36号 2008年10月10日発行より)==========================================================
2008.12.02
投資信託は長期投資というが、実際には投資家は何年くらい投資信託を保有しているだろうか。投資信託の保有期間を見る一つの方法は解約率から推定することである。投信協会のデータによると、7月中の株式投信の解約額を純資産総額で除した解約率は1.8%であった。年率では21.6%になる。この解約率からすると、平均的な投資家は保有している投信を4.6年で全部解約していることになる。つまり投資家の保有期間は約4年7カ月と推定される。この数字は、投資家の実態調査からもほぼ裏付けられるようだ。投信協会が2007年に行ったアンケート調査によると、投資信託を購入する場合の保有期間を「3年以上5年未満」とする人が多く、特に男性では3人に1人がそう答えている。投資信託の保有期間は長期化の傾向にあるようだ。過去10年間で見ると、1999年には年間解約率が88%にも達し、保有期間はわずか1年強と短かった。それが近年では解約率が20%~30%程度に低下し、保有期間は3~5年に長期化してきている。保有期間の長期化の背景には、2000年代に入ると株式市場の不振で基準価額が低迷したため、90年代のように短期間で利益を得て解約し、他のファンドに乗換えることが難しくなったことがあるだろう。また、銀行等金融機関による投信販売が増加したこともあるだろう。預貯金から投信へ移行してきた投資家層は、従来の証券会社の顧客に比べて長期保有目的の投資家が多いといわれる。さらに、毎月分配型のファンドが急拡大してきたことも見逃せない。毎月分配型は、ファンドの投資利益の一部を分配金という形で毎月還元するから、投資家はファンドを解約して利益を確定する必要がない。この仕組みが解約率の低下に役立っているといえよう。事実、7月の毎月分配型の解約率は1.2%と平均よりかなり低かった。ただ、保有期間が長期化したといっても、投信先進国である米国に比べれば日本の保有期間はまだ短い。米国投信協会のアンケート調査によれば、米国では10年以上保有するという投資家が42%にも達しているのに対し、日本では5年以上保有するという投資家は6%と少ない。これは、米国では、退職後の資金作りという明確な目標をもって投信を購入しているので長期保有を考える人が多いが、日本では、明確な目標を持たずに購入しているため保有期間の目標を定めていない人が多いことによると思われる。※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第34号 2008年9月12日発行より)==========================================================
2008.12.02
投資信託の長期実績を見る場合、「このファンドは過去10年間に平均年率12%のリターンをあげており、市場指数を年率2%上回る好成績を収めている。」などということが多いが、それだけでは十分とは言えない。平均年率が市場指数を上回っているといっても、それはある一時期、たとえば1999年のIT相場の時期に突出したリターンを上げたためかもしれない。長期的に信頼できるファンドとは、市場指数に比べて安定的によい成績を上げているファンドといってよいだろう。そこで、10年以上の運用実績がある国内株式型アクティブ運用ファンドで5月末の純資産残高が100億円以上のファンド13本について、1998年から2007年までの10年間、各年の年間リターンが市場指数(TOPIX)のリターンを上回ったか下回ったかを星取表にしてみた。すると、次のような結果になった。9勝1敗:1本(アクティブバリューオープン)7勝3敗:1本(インベスコ店頭・成長株オープン)6勝4敗:5本(スーパートレンドオープン、リサーチ・アクティブ・オープン、小型ブルーチップオープン、JF中小型オープン、ノムラ・ジャパン・バリュー・オープン)5勝5敗:5本(MHAM株式オープン、システムオープン、利益還元成長株オープン、三井住友・日本株オープン、フィデリティ・ジャパン・オープン)4勝6敗:1本(ノムラ・ジャパン・オープン)さすがに10戦10勝はないが、勝率6割以上のファンドが半数を超え、市場指数に負け越したファンドは1ファンドに過ぎない。好成績をあげているファンドの顔ぶれを見ると、大型・中型ファンドが意外に多いことに気がつく。株式市場では、大型株相場の時代・小型株相場の時代、あるいはグロース株主導・バリュー株主導の局面など、長期的には循環変動がみられる。そうした市場のサイクルや投資スタイルの消長などに影響されることなく、一貫して市場を代表するような株式に広く分散投資してきたことが、長期的に安定した好成績をもたらしているということが言えよう。 ※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第32号 2008年8月8日発行より)==========================================================
2008.12.02
投資信託の購入にあたって投資家はどんな情報を重要視しているか。米国と日本ではかなり異なっているようだ。米国投信協会のアンケート調査によると、米国の投資家が最も重視する情報は、「販売手数料や運用経費などの投資コスト」(72%)で、次いで「過去のパフォーマンス」(69%)、「ファンドのリスク」(61%)の順となっている(重複回答)。一方、日本では、調査項目はやや異なるが、投信協会のアンケート調査で「投資信託購入の決め手は」という質問に対して、最も多かった回答は「安全性の高さ」(37%)で、次いで「分配金の頻度と実績」(36%)、三番目が「過去の運用実績」(35%)となっている(重複回答)。米国で最も重要視されている「手数料」情報は六番目と重要度が低い(6%)。日米でこのように重要視する情報に差があるのは、投信購入者層の年齢差にあると思われる。米国の投信保有者の中心層が40代の投資家であるのに対し、日本では投信保有者の約40%が、60代、70代の投資家で占められている。このため、退職後の年金を補う収入源として投信の分配金に大きな関心を寄せているのも頷ける。ただ、ファンド選びには、リスク、リターン、コストの三要素をチェックすることが肝要であり、日本の投資家も米国のようにもっとコスト意識を高めるべきであろう。では、どんな方法で投資家は投信情報を入手しているか。この点については、日米で大差はないようだ。米国では、最大の情報源は「プロのフィナンシャル・アドバイザー」、すなわち証券会社や金融機関の販売員および独立のフィナンシャル・プランナーなどで(73%)、その次が「投信会社その他のウエブサイト」(46%)となっている。一方、日本の投資家の情報源として最も依存度が高いのは「証券会社等で説明を受け資料請求する」(68%)で、次いで、「インターネットで調べる」(41%)となっている。とりわけ、日米とも、若い年代の投資家ほどインターネットへの依存度が高い。インターネットを通じた投信情報の取得は今後ますます増大するだろう。だが現状は、目論見書一つとっても、紙媒体の長文の情報がそのままウエブサイトに掲載されているにすぎない。インターネット対応という観点から、投信情報の改善を図ることが望まれる。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第30号 2008年7月11日発行より)==========================================================
2008.12.02
みなさんは最も古い株式インデックスが何かご存知ですか。答えは、アメリカの「ダウ・ジョーンズ工業株価平均指数」です。このインデックスは、1896年まで遡ることができますが、初期は、12銘柄の単純平均で計算され、株価がどのように動いたかを伝えるための、あくまで報道を目的としたものでした。1960年前後から、アメリカの「S&P500株価指数」の算出が始まりますが、従来に比べると、より多くの銘柄で構成されるようになります。また、個別銘柄の投資比率も「発行済株式数」を基にした時価総額加重平均で算出されるようになり、年金基金やミューチャルファンドがパフォーマンスを図る際のベンチマークとして広く利用するようになりました。しかし、2001年以降は、それまでの「発行済株式数」から「浮動株式数」を基にした時価総額加重方式へ変わります。浮動株とは、「株式市場で流動的に取引されている株券」のことで、具体的には、発行済み株式総数から一部の株主に固定的に保有される株式(大株主上位の保有株や自己株式、役員の保有株など)を除いたものを指します。浮動株を考慮に入れない「発行済株式数」を基にした時価総額加重方式が主流の時代には、浮動株の少ない銘柄に大量の売買が起こり、株価形成に歪みが生じるケースが散見されました。このような、実態を反映しないインデックスをベンチマークに使用し続けるとファンドの運用成績を判断するうえで、投資家に誤解を与えかねないという声が高まったことから「発行済株式数」ではなく、「浮動株式数」を基にした個別銘柄の時価総額を用いて、それぞれの銘柄の投資比率を算出するようになったのです。2001年以降にMSCI(Morgan Stanley Capital International社)やFTSE(Financial Times Stock Exchange)などが、この「浮動株基準株価指数」を採用すると、世界的な潮流となりました。(日本の東証株価指数(TOPIX)も2005年10月末から段階的に「浮動株基準株価指数」に移行しました)なお、個別銘柄やポートフォリオのリターンが、サイズ(規模)や投資スタイル(バリューとグロース)の違いの影響を受けることが広く認識されるようになり、各インデックス・プロバイダーが、サイズ毎/スタイル毎のインデックスを提供するようになったのも、この頃です。最近では、時価総額加重型ではなく、個別銘柄の企業価値を客観的に説明するファンダメンタル指標を利用したインデックスも登場しました。インデックスも多様化していますので、時々、注意を払ってみてください。==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第29号 2008年6月27日発行より)==========================================================
2008.12.02
投資信託の運用には二つの運用方式がある。一人のファンドマネージャーが運用のすべての決定権を持ち、銘柄選択からポートフォリオ構築まで一人でやってしまうファンドマネージャー制と、二人以上のファンドマネージャーが運用チームを結成し、チームの合議によって銘柄を選択し運用するというチーム運用制である。1990年代末のIT相場全盛の時代には、1年間で基準価額を2倍にも3倍にも値上がりさせたファンドマネージャーが続出し、ファンドマネージャー制が大きくクローズアップされた。しかし、ITバブルの崩壊とその後の株式市場の長期低迷で、そうしたスターファンドマネージャーの名はマスコミから姿を消し、忘れられた存在となってしまった。代わって投信運用の主流となってきたのがチーム運用である。この背景にはいくつかのトレンドの変化がある。一つは、2000年代に入ってからの株式市場はバリュー株相場が続いていることだ。ファンドマネージャーの運用手腕が発揮されやすいのはグロース株相場の時代である。二つ目に、投信が401kなどの年金運用に参入したことにより年金運用の考え方が投信にも取り入れられ、組織的な運用プロセスが重視されるようになったことがある。ファンドマネージャー制では運用に個性が発揮され機動性に富むが、そのファンドマネージャーが離脱した場合に運用の継続性に問題が生じる恐れがある。インデックスファンドが増えたこともあげられる。インデックスファンドは、ファンドマネージャーの銘柄選択を必要とせず、計量モデルによるチーム運用が一般的だ。ただ、いずれの運用方式をとるにせよ、重要なことは、ファンドのパフォーマンスは一人一人のファンドマネージャー(チームメンバー)の技量に依存しているということだ。したがって、投資家がファンドを選択する際には、ファンドマネージャーの経歴や、これまでどのような運用スタイルのファンドを運用し、どのようなパフォーマンスを上げてきたかなどを知ることが必須要件となろう。にもかかわらず、現状ではファンドマネージャーについてのディスクロージャーが非常に少ない。目論見書にファンドマネージャーの氏名、あるいはチーム運用の場合にチームメンバーの氏名すら記載していないファンドが多いのだ。ファンドマネージャーに関する情報開示の充実を望みたい。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第28号 2008年6月13日発行より)==========================================================
2008.12.02
急ピッチの原油高や穀物の相場上昇などを背景に、コモディティ投資に注目が集まっています。海外には、コモディティを連動対象とするETFが数多く上場していますが、今回はバークレイズ・グローバル・インベスターズ(BGI)が提供する「iShares S&P GSCI Commodity Indexed Trust(ティッカー:GSG)」と「iPATH S&P GSCI TOTAL RETURN INDEX ETN(GSP)」を取り上げてみましょう。「iShares」とは、BGIが手掛けるETFシリーズで、「iPATH」は同じBGIが提供するETN(Exchange Traded Note)のシリーズ名です。ETFが株式などのポートフォリオを原資産とするのに対して、ETNはインデックスに連動してリターンが変動する(リンク債のような)債券を購入します。債券を組み入れるだけで、ベンチマーク・リターンが得られることから、現物拠出が難しいような資産を投資対象にする場合によく利用されるようです。GSGとGSPはどちらも「S&P GSCI コモディティトータルリターン指数」を連動対象とし、上場先は「NYSE Arca」、運用報酬はともに年率0.75%です。過去のパフォーマンスは、どちらもベンチマークに“おおむね”連動しているといえますが、日次データを使って、ベンチマークとの収益率の差を細かく比較してみると、GSGが-1.7%程度で、GSPは-1.5%程度(期間:06年7月~08年5月)、また、トラッキング・エラー(ベンチマーク・リターンとの乖離の程度を示す尺度)は、GSGが4%程度で、GSPは1%程度(どちらも月次データを年率化)となっており、GSPの方が安定して、相対的に高い連動性を維持していることが分かります。GSPでは、債券の発行体がインデックス・リターンを提供するわけですから、対ベンチマークでのトラッキング・エラーは基本的にゼロになります。(ただし、債券を購入する際に支払う手数料が下方乖離の要因になります。)一方、GSGの場合は、ポートフォリオ(商品先物)の維持にコストがかかり、それがGSPに比べて連動性の劣る原因になっているものと考えられます。ただし、一般的に、ETNではリンク債を発行する金融機関の信用リスクをETNの購入者(最終投資家)に負わされることになるので、注意が必要です。GSPは今のところ、日本での取り扱いはありません。ETNの商品性も一長一短といえなくもないのですが、利用者にとっては選択肢の幅が広がることから、いずれ日本からも投資ができるようになると良いでしょう。==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第27号 2008年5月30日発行より)==========================================================
2008.12.01
最近、米国の投信協会から発表された投信保有者に関するアンケート調査に、大変興味深いデータが載っている。ジェネレーション(世代)別の投信保有状況である。それによると、米国の投信保有者の構成比率は、ジェネレーションYと言われる1977年以降生まれで2007年現在30歳以下の若い投資家が10%、ジェネレーションX(1965-1976年生まれ、31-42歳)が24%、ベビーブーム・ジェネレーション(1946-1964年生まれ、43-61歳)が45%、そして、サイレント・ジェネレーションと言われる1945年以前生まれの62歳以上の投資家が21%となっている。ベビーブーマー世代が約半分を占め投信投資家の中心になっていることは予想通りだが、意外なのはベビーブーマーの次のジェネレーション、X・Y世代の投資家が34%も占めていることである。現在の日本では、毎月分配型の高利回りファンド人気が象徴するように、投資信託の中心的な購買層は高年齢の投資家である。投信協会のアンケート調査(2006年)によると、日本の投信保有者の49%は60歳以上の投資家であり、米国のX・Yジェネレーションに相当する20代・30代の投資家はわずか11%に過ぎない。なぜ、米国では若い世代が多いのに日本では少ないのか。その理由の一つは401kなど確定拠出年金制度の普及の差にあると思われる。米国ではX・Y世代の80%以上が確定拠出年金に加入していて、この年金プランを通じて初めて投信を購入したという投資家が少なくないといわれる。もう一つは、米国の若い世代は多様な資金作りに投信を利用していることだ。調査によれば、どのジェネレーションも投信購入の最大の目的は「退職後に備えた資産形成」であることに変わりはないが、Y世代では「持ち家その他大型商品の購入」、X世代では「教育資金作り」がそれに次ぐ大きな目的となっている。米国で、ターゲット・イヤー型のファンド(目標年限を定めて積極運用から安定運用に徐々に移行していくファンド)が盛んなのも、こうしたニーズを反映したものと思われる。日本では、投信というと老後に備えた長期投資というイメージが強いが、その他のいろいろな目的のために、期間を定めて資金作りをする手段として投信がもっと利用されてよいし、そのための商品の品揃えが望まれよう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第26号 2008年5月16日発行より)==========================================================
2008.12.01
今回は、「パッシブ・ファンド」についてまとめておきましょう。お目当ての投資信託を単体で購入する場合には、その投資信託がどのような方法で運用されているのかを事前に確認を十分に済ませる人でも、バランス・ファンドや変額年金などの場合は、案外、その中に組み入れられている投資信託の運用内容について、あまり意識していないということが多々あるようです。「パッシブ・ファンド」とは、市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とします。インデックス・ファンドが代表的なように、分散が十分に効いたポートフォリオを保有します。ちなみに、インデックス・ファンドは、ベンチマーク(運用成果の比較対象)となるインデックスのすべての構成銘柄(資産額によっては、下位の銘柄を除く、代表的な銘柄だけという場合もありますが)に投資します。ベンチマークとしては、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が日本では一般的です。パッシブ・ファンドのメリットは、コストの安さにあります。一度、ポートフォリオを構築したら、資金の増減や、ファンド内で保有する構成銘柄の変化に伴う売買をする程度で、比較的維持コストがかかりません。だから、信託報酬などの手数料が安く設定されているというわけです。また、リスクをはじめとする運用内容が把握しやすいという点もパッシブ・ファンドの長所といえるでしょう。一方、短所としては、株価指数の構成内容の変化がファンド内の売買コストを高めたり、構成内容の変化に乗じて儲けようとする他の市場参加者の投資行動から不利益を被る場合がある、という点が挙げられます。後者は、俗に「コバンザメ投資」と呼ばれますが、これは、指数の算出機関(インデックス・ベンダー)によって構成銘柄の追加・削除といった内容の周知が事前に行われることから、パッシブ・ファンド以外の市場参加者に先回りをされる(変更日前に除外銘柄を売却し、追加銘柄を購入する)状況を指します。日本株インデックス・ファンドの場合、公募投信向けでは、0.5%前後の信託報酬でも、機関投資家向けの私募投信の形になると、かなりの低報酬で提供する運用会社もあることから、バランス・ファンドや変額年金の投資対象にパッシブ・ファンドが組み込まれていることがよくあります。これらの金融商品を保有している方は、それぞれの資産クラスがパッシブ・ファンドかどうか、確認してみてください。パッシブ・ファンドで構成されている割には、払っている報酬は高すぎはしませんか? ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第25号 2008年4月25日発行より)==========================================================
2008.12.01
昨秋の金融商品取引法の施行によって、投資信託募集の際のリスク情報の開示が強化された。その結果、最近の投信の目論見書では、数ページにわたって、株価変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、為替変動リスク、カントリーリスク、流動性リスクなど、いろいろな投資リスクがリストアップされており、なかには天災地変によるリスクやファンドマネジャー交替のリスクまであげているファンドもある。ファンドへの投資に関する様々なリスクをリストアップし注意を喚起してくれるのは結構なことだが、どのファンドも単にリスクの種類を羅列しているだけで、その記述内容は「株価変動リスクとは何か」といった一般論に終始している。だが、投資家が本当に知りたいのは、それらのリスクファクターによってファンド全体としてどの程度の投資リスクが想定されるのか、他のファンドに比べてリスクが高いのか低いのかという点であろう。リスクの程度を他のファンドと比較できる形で表示することはなかなか難しい。しかし、欧米の投資信託では投資家の立場に立っていろいろな工夫がなされている。米国では、目論見書に過去10年(満たない場合は設定来)の各暦年のリターンの変動率を棒グラフで表示し、併せてリターンが最高・最低をつけた四半期の実績を付記することになっている。これを見れば、投資家は基準価額の変動リスクがどのくらい大きいファンドなのか、おおよそのイメージをつかむことができ、他のファンドとの比較も容易にできる。欧州では、最近、EUの証券監督当局が、目論見書に数量的指標による5段階のリスク/リターン表示を導入する提案を行っているという。日本でも何らかの形で、ファンドへの投資リスクの程度について、投資家が想定できるような表示方法を検討すべきではなかろうか。ただ、日本での問題点は、販売されるファンドの多くが新規募集のファンドで実績データがないことである。そのような新ファンドについては、投資家は、(1)リスク/リターンがある程度分かる運用実績が出るまで購入しない (2)類似ファンドが他に存在していれば、そのリスク/リターンの状況を参考にする (3)面白そうだから直ちに投資したいという場合は、当初は少額だけ購入し実績が出てきたら追加して買付けるという方法をとるのがよいだろう。投資信託への投資は長期投資なのだから。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第24号 2008年4月11日発行より)==========================================================
2008.12.01
最近では、海外ETFを取り扱う証券会社が増え、私たちのような個人投資家でも簡単にアクセスできるようになりました。数多くのETFが海外に上場しているということは、その分だけ、連動の対象となるインデックス(株価指数)も数多く存在するということです。そこで、今回は、海外のインデックス(株価指数)について、考えてみましょう。海外のインデックス・プロバイダーをご存知でしょうか。主なところとしては、MSCI指数を算出する「モルガン・スタンレー・キャピタル・インク」、アメリカの投資情報会社である「スタンダード・アンド・プアーズ社」、イギリスの「FTSEグループ(FTSE)」、そして米国の「ラッセル・インベストメント・グループ」が有名です。これらの会社のホームページには、算出・公表しているインデックスの一覧とそれぞれの中身の説明が掲載されています。インデックスの説明の中に、「浮動株調整」という言葉が出てきます。一体、何のことでしょうか。浮動株とは、「株式市場で流動的に取引されている株」を指し、具体的には、発行済み株式総数から大株主上位の保有株や自己株式、役員の保有株などを除いたものと定義されます。「大株主上位の保有株や自己株式、役員の保有株」は、一部の株主に固定的に保有されるもので、これらを含めてインデックスを構成すると、実態を反映しない指標をベンチマークにすることになり、ファンドの運用成績を判断するうえで、投資家に誤解を与えかねないケースが考えられます。浮動株調整されているということは、実際に投資可能かどうか(投資適格性といいます)が考慮されている、より公正な指数ということです。ちなみに、2001年にMSCIが浮動株調整方式を採用してから、浮動株を考慮に入れることがグローバルな流れになりました。最後に、自分の投資するファンドのパフォーマンスが「配当込み指数」、「配当無し指数」のどちらと比べられているのかを知ることも大事です。これは、インデックスを構成する個別銘柄に割り当てられた配当の再投資を前提に算出された指数かどうかということです。実際のファンドには、構成銘柄に配当がつくわけですから、その分、「配当無し指数」よりはパフォーマンスが良くないとおかしいことになります(その他の条件で違いがないという前提を置いた場合)。例えば、MSCIコクサイ指数には、「配当無し指数(プライス・インデックス)」、配当込み指数の中でも、現地の源泉徴収税を差し引かずに算出した「配当込み指数(グロス)」と、現地の源泉徴収税を差し引いて算出した「配当込み指数(ネット)」があります。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第23号 2008年3月28日発行より)==========================================================
2008.12.01
投資信託のメリットは、分散投資によって投資リスクの低減を図ることができるという点にある。ところが、投資家が何本かのファンドを組み合わせて投信ポートフォリオを作ると、新たなリスクが発生する恐れがある。それは、保有するファンド間で投資内容が重複するというリスクである。たとえば、投資スタイルの分散を図るため、日興の「利益還元成長株オープン」と大和の「ダイワ・バリュー株・オープン」を組み合わせたとする。両ファンドの今年1月末のポートフォリオを見ると、トップ5銘柄のうち3銘柄は同一の銘柄が組み入れられている。定義の仕方いかんで、同じ銘柄がグロース株にもバリュー株にもなるのだ。また、グローバルファンドで外国株に分散投資したつもりが、日本株の組入れが多く、すでに保有している日本株ファンドと合わせると日本株部分のウエイトが高まりすぎる、ということもありえよう。このように、複数のファンドを組み合わせると、特定の銘柄やセクター、地域に投資が集中することになって、意図せざるリスクが発生する恐れがある。したがって、できるだけ重複を避けて十分に分散された投信ポートフォリオを構築するには、次の点に注意するとよいだろう。グロース・バリューという投資スタイル別分散をするときは、併せて大型株・小型株という規模別の分散も考慮する。銘柄の重複がなく、分散投資効果が高まるだろう。グローバルファンドに投資するときは、地域別の投資配分に特に注意しよう。通常、グローバルファンドは、各国市場の時価総額ウエイトの指数をベンチマークとしているので、米国株の組み入れが多い。このため、米国株ファンドをすでに保有している場合にグローバルファンドを追加すると、米国株がオーバーウエイトになる可能性がある。また、グローバルファンドには、日本を含むもの、含まないもの、エマージング国も対象とするもの、しないものがあるので、ファンド名だけで判断せず投資内容をよく見極めることが必要だ。さらに、同一投信会社のファンドへの集中を避けることも、十分な分散投資という観点から望まれる。日本の投信会社は、合議制やチーム制で運用を行っているところが多いので、同じ運用会社のファンドはどれも似たような運用になりがちだからだ。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第22号 2008年3月14日発行より)==========================================================
2008.12.01
サブプライムローン問題とそれに伴う米景気の減速を受けて、世界の株式相場が昨年末から大幅に下落しています。個別銘柄の信用リスクも、特にサブプライムローンに絡む企業の中で急速に高まっているところが目立ってきました。アメリカのカントリーワイド・ファイナンシャルやイギリスのノーザン・ロックといった住宅ローン関連会社の株価が大幅な調整を余儀なくされたことは、日本でも報道されたとおりです。グローバルな株価指数であるMSCIコクサイ指数の構成銘柄の中にはこの1~2カ月で株価が7~8割下落したものもあります。1月には、カナダで倒産処理手続きを申請した銘柄が1社ありました。かつてエンロンやワールドコムが破綻した時も、信用リスクの高い銘柄をポートフォリオから積極的に外す、いわゆる信用スクリーニングの是非が議論されました。特に、年金基金などの機関投資家の間では、倒産銘柄が含まれていることを心良しとしない面があり、外国株式のパッシブポートフォリオでも信用スクリーニングを望む声があるように聞いています。しかし、例えば、MSCIコクサイのようなグローバル指数の場合、それぞれの銘柄の時価総額がベースとなって構成比率が決まることから、ある企業の信用リスクが高まり、その過程で株価が下落したとしても、同時にコクサイ指数全体に占める構成比率も低下することになります。したがって、仮に、その企業が実際に倒産したとしても、ポートフォリオ全体のパフォーマンスに与える影響は比較的、軽微に留まります。また、MSCIの場合は、四半期に一度(2、5、8、11月)、構成銘柄の見直しがあり、時価総額が基準を満たさなくなった銘柄が削除されることになります。つまり、倒産確率の高い銘柄は、株価下落に伴う時価総額の低下を受けて、事前にベンチマークから除外される仕組みになっているわけです。(これがTOPIXの場合だと、上場廃止か東証二部への指定替えになるまで、倒産確率の高い銘柄が構成銘柄として長く留まることが考えられます。)ここ最近、モノライン(金融保証会社)の動向が注目されていますが、業界二位のアムバック・ファイナンシャル・グループは、今月末の定期見直しでMSCIコクサイの構成銘柄から外れます。他にも、信用リスクが急速に高まった銘柄が数社、構成銘柄から除外される予定です。MSCIコクサイをベンチマークとする外国株式投信を保有する投資家は、その点で、多少安心かもしれません。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第21号 2008年2月22日発行より)==========================================================
2008.12.01
1月下旬の世界同時株安によって投資信託の基準価額が大幅に急落し、新年早々肝を冷やした投資家も多かったことだろう。投資信託は長期投資だから目先の基準価額の上げ下げに一喜一憂することはないと分かっていても、基準価額1万円のファンドが1日に500円も600円も値下がりするのを見ると、先行きどうなるのかと不安に駆られるのが人間の心理というものだろう。そうした投資家の不安にファンドを運用している投信会社はどう対応しているか。投信会社のホームページで、世界同時株安時にどのような情報を発信しているかを調べてみた。国内の証券会社・金融機関系列の投信会社に多くみられるのは、国内株式市場、世界株式市場、アジア・新興国株式市場などマーケット別に、下落の背景や今後の見通しをコメントした「マーケットレター」の類である。ただ、その内容は一般論に終始していて、個々のファンドについて具体的な対応や運用方針を示しているものは少ない。投資家が知りたいのは自分が持っているファンドの見通しだ。その点、外資系の投信会社は個々のファンドごとにレポートを発信し、基準価額下落の要因分析や市場環境の見通しを踏まえて、今後の運用方針を表明している会社が多く、投資家の不安に親切に対応しているといえる。投資家にとって投信会社よりも身近なコンタクト先はファンドを購入した証券会社や銀行等金融機関であろう。そこで、主だった販売会社のホームページもチェックしてみた。まず、総合証券会社だが、ほとんどの会社が取扱いファンドの運用会社が発表しているコメントを掲載していないのは驚きだ。銀行等金融機関についても同様で、投信のページにファンドの内容紹介や購入手続きは詳細に記載されているが、投信会社が発信している臨時コメントやレポートは全く掲載されていない。ファンドを販売した後のアフターサービスをもっと充実させてもらいたいものだ。そうした中で、もっとも投資家の立場に立って情報を提供している販売会社は、独立系のネット証券会社だろう。ほとんどの会社が、取扱いファンドを運用している投信各社のレポートをホームページ上にひとまとめにして、投資家の目につきやすい形で掲載している。投資家が複数の投信会社のファンドを保有している場合、各投信会社のホームページをいちいちチェックしなくても一箇所で情報を入手できるので大変便利である。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第20号 2008年2月8日発行より)==========================================================
2008.12.01
世界の取引所には、953本のETFが上場されています(2007年11月時点)。アメリカで549本、ヨーロッパで336本、アジア・パシフィックで68本という内訳です。日本の上場ETFは現在17本程度ですから、欧米にかなり溝をあけられています。しかし、それだけ拡大の余地がある分野だともいえるでしょう。日本の大手運用会社は、2008年を「ETF元年」と位置づけて商品開発に積極的に取り組んでいるので、今後、急ピッチで市場の整備が行われるものと期待されます。ETFには、(1)インデックス連動型なので値動きが分かりやすい (2)運用コストが安いので長期運用に向いている (3)取引所でリアルタイムな取引ができる、といった特徴があるので、個人投資家にとって、利用価値の高い運用ツールといえるでしょう。海外では、株価指数にとどまらず、債券やコモディティ、REITといった多様な指数に連動するETFが上場しているので、利用者にとっては、投資対象の選択肢が大幅に増えることになります。また、日本でも上海や韓国の株式指数に連動するETFが上場されていますが、 ETFによって、これまで個人では投資できなかった市場に低コストでアクセスすることが可能になります。アメリカでは、確定拠出年金-401(k)で投資できる資産のひとつとしてETFが利用されています。個々人が自分に合った分散投資の組み合わせを策定し、実行するうえでETFは極めて有効ですし、既に保有する資産の分散度合いを深めるために追加的に使う上でも都合のよい商品だからです。「パソコンの部品が市販されているからといって、自分で部品を集めて組み立てる人はそう多くないように、自分でETFを組み合わせてポートフォリオを自作するようなニーズが日本にどれほどあるのか」、という意見を耳にすることがあります。しかし、決めつけてしまうのはどうでしょうか。最近の個人投資家のコスト意識の高まりは無視できないものがありますし、日本でも確定拠出年金の運用商品としてETFが採用されることがないとも限りません。日本の取引所や運用会社は、早急に商品ラインナップの充実、多様化を進めて、将来に備えるべきではないでしょうか。利便性を高め、なおかつ、利用者のニーズを外さない商品開発を心掛れば、国内ETFの存在感も飛躍的に増し、1年後には、市場が様変わりしていることでしょう。皆さんも、今後のETFの動きに注目してください。==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第19号 2008年1月25日発行より)==========================================================
2008.12.01
投資信託で資産運用を行う投資家は、投資目的やリスク許容度に応じて何種類かのファンドを組み合わせて運用している人が多いと思われる。しかし、一旦ファンドを購入した後は、ファンドへの投資配分がどう変化しているかを定期的にチェックしている人は意外に少ないのではないだろうか。ファンドは価格が変動する株式や債券に投資しているから、昨年のように相場が大きく変動すると、投資配分が偏ってしまう可能性がある。そこで、当初想定したリスクレベルに戻すために、当初の投資配分比率を越えている部分のファンドを売却し不足している部分のファンドを買い増すという「リバランス」を定期的に行うことがよいと言われている。しかし、実際にリバランスを行うことは、口で言うほど簡単ではない。まず、現実の投信ポートフォリオでは、ファンドを売却すると売却益に対し、10%の税金(現行)がかかる。一方、ファンドを買付けるときは販売手数料をとられる。したがって、リバランスを行うと、税金と販売手数料分だけ資産が目減りすることになる。このため、頻繁なリバランスはコストがかさむので避けたほうがよい。また、パフォーマンス向上の観点からも、短期に売買したのでは値上がり益を十分に獲得できないうちに売却することになるので好ましくない。定期的なリバランスの時期が来ても、当初の配分比率から著しくかけ離れていなければリバランスを行わないというのも現実的な対応といえる。たとえば、当初の配分比率から5%以上乖離した時だけリバランスを行うことにするのである。こうすれば無駄なリバランスを避けることができる。また、配分比率が高くなったファンドを売却するのではなく、新規資金を追加投入して最も配分比率が低下したファンドを買い増すという方法もある。これならば、売却時の税金による資産の目減りを避けることができる。ただ、いずれの方法をとるにせよ、買い増すファンドは、現在は不振であっても長期的には有望と期待されるファンドでなければ買い増しをする意味はない。極端にパフォーマンスが見劣りするならば、リバランスするよりもそのファンドを売却し、別のファンドに乗り換えた方がよい。その意味でも、まず、ポートフォリオを定期的に点検することが重要だ。その上で、リバランスを実行するかどうかを決めればよい。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第18号 2008年1月11日発行より)==========================================================
2008.12.01
海外の有価証券を投資対象とする投資信託は、国内の有価証券に投資する投資信託に比べて相対的に高いコストを負担することになります。なぜなら、日本の投資家が、海外の有価証券に投資する場合は、現地国で決済業務や保管・管理業務を代行してくれる保管銀行(カストディアンと呼びます)に対して、手数料を支払う必要があるからです。カストディアンに支払う手数料をカストディー・フィーと呼びます。これは、配当金や利子の受領といった日々の保管・管理業務に対する対価と、売買に伴う決済業務に対する対価から成ります。保管・管理業務に対する手数料は預かり資産に一定料率を乗じた金額が徴収されますが、決済業務に支払う手数料は、取引毎に、1件当たりいくら、という形で掛かってきます(トランザクション・フィーといいます)。例えば、アメリカ株式の場合、1件当たり2,000~3,000円程度(保管銀行によって異なります)を支払うことになります。仮に100銘柄を買えば、200,000~300,000万円相当が、1,000銘柄を買えば、2,000,000~3,000,000万円相当がトランザクション・フィーとしてかかります。つまり、売買件数が増えれば増えるほど、支払う手数料が増えるというわけです。特に、投資銘柄数が1,000銘柄を越えるような外国株式インデックス・ファンドでは、ポートフォリオ構築時に相当数の売買が必要になりますし、公募型では、日々の追加設定・解約に応じた株式売買が頻繁に発生しますので、カストディー・フィーがかさむ傾向にあります。このカストディー・フィーは、ファンドの純資産から定期的に引かれていきます。私たちが新聞等で知る基準価額はこのフィーが控除された後のもので、実際にどれくらいファンドで支払ったかは、外からは分かりにくくなっています。そこでファンドの売買回転率に注目しましょう。売買回転率とは、ある期間内に運用資産が売買によってどれくらい入れ替わったかを示す指標です。一般的には、売却金額と購入金額のうち少ない方の金額を資産の時価平均残高で割って求めます。回転率が高いほど、多くのカストディー・フィーを支払った、といえます。カストディー・フィーは、運用上、どうしてもかかる、避けられないコストです。しかし、確実にファンドのパフォーマンスを劣化させる要因ですから、シビアに見るべきでしょう。なお、売買回転率が運用報告書に記載されているファンドもあれば、明示されていないものもありますので、そのような場合は、運用報告書内の「期中の売買及び取引の状況」を参考にしてください。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第17号 2007年12月28日発行より)==========================================================
2008.12.01
金融商品取引法(金商法)が完全施行されてから2カ月が経過しました。新聞報道等によると、金商法施行後は投資信託の販売ペースが落ちているそうです。金商法は、投資家保護を強化する観点から、販売会社に顧客の投資知識、経験、財産の状況、投資目的をよく考慮して販売することや、顧客に投資リスクや手数料について詳しい説明をすることを求めています。このため、販売員は、ファンド販売に際して、顧客の属性の把握やファンド内容の説明に今まで以上に時間を取られているといいます。このような金商法への対応策として、販売会社の中には今まで取り扱ってきたファンドのリストを見直して、できるだけ説明のしやすい少数のファンドに販売を絞る、という動きも出てきているようです。実際、10~11月の投信販売状況を見ると、今年の前半に大人気だった国内外の株式・債券・REITなど多種の資産に分散投資する資産分散型ファンドの販売が鈍化して、代わって高金利ソブリン債ファンドやブラジル、トルコなど新興国に絞って投資するファンドなど、投資対象資産が単一・明瞭で説明のしやすいファンドが売れ筋となっています。投資家の投資目的は様々であり、リスク許容度も異なります。投資家によっては、多資産分散型ファンドのように広くリスクを分散するバランス型のファンドを求める人もいれば、最新の高度な金融工学を駆使したハイリスク・ハイリターンのファンドを望む人もいるでしょう。それらのファンドを、「説明が煩雑・難しいから」といって避けていたのでは、真に投資家の立場を考慮した販売とは言えないのではなでしょうか。そうした観点からすると、最近、オンライン専業証券会社のなかで、取り扱いファンドを数多く増やし、様々な投資家のニーズに応えようとする動きが出てきたことは注目に値します。投資家の立場からすれば、現在日本で公募されている投資信託のすべてが品揃えされていて、その中から自分に最も適していると思うファンドを選択できるような場(マーケット)ができることが理想でしょう。多数のファンドを一箇所で横比較して、トレーディングができるようになって初めて、パフォーマンスが優れたファンドを選ぶとか、コストの安いファンドを選ぶ、といったファンドの選択が現実のものとなります。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第16号 2007年12月14日発行より)==========================================================
2008.12.01
海外に上場するETF(Exchange Traded Fund:株価指数連動型上場投資信託)の品揃えが、この1年程で急増しています。低コストの海外ETFを活用して、国際分散の効いたポートフォリオを自分の手で構築してみるのも面白いでしょう。ひとつのやり方に、SPDR TRUST SERIES 1(SPDR)とiSHARES MSCI EAFE INDEX FUND(EAFE)を組み合わせる方法があります。SPDRは、米国のS&P500指数(米国の主要企業500社で構成)に連動するETFで、アメリカン証券取引所に上場しています。信託報酬は年率0.0945%とかなりの低水準です。EAFEは、MSCI EAFE指数に連動するETFで、ニューヨーク証券取引所に上場しています。EAFE指数のEAFEとは、Europe, Australia Far Eastの頭文字を取ったもので、アメリカを除く先進国21ヶ国で構成される、いわばアメリカ人にとってのグローバル指数です。信託報酬は年率0.35%と、海外インデックス投信の半分以下の水準です。両者を組み合わせることで、先進22ヶ国への分散投資が可能になります。それでは、どのような比率で組み合わせればいいのでしょうか。時価総額で見た先進22ヶ国の国別構成比率では、アメリカの割合は47%程度(10月末時点)ですので、SPDRとEAFEをざっくり1対1で組み合わせれば良いことになります。注意点は、MSCI EAFE指数の中に日本株が20%ほど組み入れられている点です。両者を1対1で組み合わせることで全体に占める日本株の割合は10%程度になりますが、10%では低すぎないかという疑問が沸いてきます。自国の投資比率をどのような割合にするかは、よく議論されるところですが、参考までに日本の年金基金では、国内株式と海外株式の割合を大体6対4としているところが多いようです。仮に、この比率に合わせるためには、日本株部分を何らかの手段で追加する必要があります。例えば、SPDRを1口(投資金額16万円程度/口)、EAFEを2口(投資金額9万円程度/口)購入し、そこにTOPIX(東証株価指数)に連動するETFを3口(投資金額15万円程度/口)を加えてみます。総投資金額は80万円弱、EAFEに含まれる日本株部分も考慮に入れた地域別比率は、日本61%、米国21%、その他海外18%となり、想定する比率に近くなります。海外ETFの種類はかなり充実してきていますので、自分の納得のいく組み合わせをいろいろと考えてみてください。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第15号 2007年11月30日発行より)==========================================================
2008.12.01
最近、新聞や雑誌でETFの記事やニュースをよく目にします。ETFとは、Exchange Traded Fundの頭文字をとったもので、日本語では「上場投資信託」と訳されています。文字通り投資信託の一種ですが、通常のオープン投信とは異なった特徴をもっています。最も大きな違いはファンドの販売の方法です。通常のオープン投信ファンドは、証券会社や銀行などで購入、換金ができますが、ETFの購入は証券会社を通じて取引所で買い付け、換金は取引所で売却することになります。通常のオープン投信の購入・換金は、1日1回、取引所の引け後に投信会社が計算する基準価額で行われますが、ETFは取引所に上場されているため、取引時間中であればいつでもその時の市場価格で売買が可能です。また、一般の株式同様、指値注文や信用取引もできます。現在、日本で取引されているETFはすべて株価指数等に連動を目指すインデックスファンドです。インデックスファンドは、通常のオープン投信にも数多くあります。それらに比べてETFの特長は、運用のコスト(投資家からみればファンドを保有するコスト)が安いことです。ETFの設定・解約は、現金ではなくファンドに組み入れられている株式の現物の拠出・受取りという形で行われますから、通常のオープンのように設定のたびにファンドで株式を買い付け、解約のたびに組入れ株式を売却する必要がありません。このため運用コストが安くて済むのです。ETFの運用コスト(信託報酬)は、通常のインデックスファンドが0.5~0.6%程度であるのに比べ、0.1~0.2%程度と低くなっています。では、インデックスファンドを購入する場合、オープン投信のインデックスファンドよりもETFの方が好ましいでしょうか。必ずしもそうとは限りません。ETF購入にあたっては次の点に考慮が必要です。オープン投信を換金する時は、証券会社や銀行など取扱い金融機関を通じて投信会社に解約請求すれば必ず基準価額で換金できます。ETFの場合は、個人投資家は直接解約請求をすることはできません。換金は取引所で売却することになります。取引所での売買はマーケットの需給関係の影響を受けますから直ちに売却できるという保証はなく、また売却価額も基準価額と等しくはなりません。また、ETFの売買単位は、たとえば日経225型で現在17万円程度、TOPIX型で16万円程度となっています。オープン投信では、通常、1万円から購入でき分配金は1円から無駄なく再投資できます。これに比べると、ETFは少額の積立投資や分配金の再投資を行いにくいことが難点といえましょう。さらに、ETFの売買には株式取引と同じ売買手数料がかかります。最近は株式手数料も低率となっていますし、大口割引やインターネット取引割引も一般的ですが、頻繁にETFを取引すると売買コストがかさむ点に要注意です。ETFとオープン投信のインデックスファンド、どちらを選ぶかはファンドへの投資方法を考慮して決めたらよいでしょう。ETFならマーケットのタイミングを見て売買し、キャピタルゲインの獲得を狙うことも可能です。その場合は、売買手数料が安くなる大口資金での購入やオンライン証券でのインターネットによる取引などがよいでしょう。また、一時にまとまった金額を投資し長期にバイ・アンド・ホールドできるのであれば、保有コストが安いETFが選択肢となるでしょう。一方、定期的に積立投資を行う場合や、分配金の完全再投資をして複利効果を高めたいのであれば、オープン投信のインデックスファンドの方が好ましいと言えるでしょう。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第14号 2007年11月9日発行より)==========================================================
2008.12.01
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