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前回、最悪の場合、資産の約3割を失うことが想定される金融商品に投資するとして、許容できる損失額が仮に100万円であれば、投資金額は330万円程度までに留めたほうが良いであろうことを説明しました。しかし、330万円の手元資金では、20年後に手にする金額は、(終価係数表から)利回り5%の場合で約870万円、8%では1,530万円と想定され、目標金額の2,000万円に届きません。そこで、目標金額との差をどう補うかが次の課題となります。年間収支のプラスの積み上がりでその差分を埋められれば良いのですが、そうでなければ、収支を改善して、定年時の資産を目標金額に近づける必要があります。例えば、共働きを検討したり、積極的なキャリアプランを実行することで収入増に繋げられますし、定年後の再雇用、再就職も大切な収入源となります。また、子供の教育費やマイホーム計画など将来の大きな支出を再検討することで将来の収支を改善することもできます。収支改善の結果として得られた資金の一部を積立商品に振り向けることも目標の達成には効果的です。先ほどの例で考えると、(減債基金係数表から)5%の利回りであれば約27,000円、8%の利回りでは約8,000円を毎月積み立てることで、定年時の目標金額に到達することが想定されます。さて、積み立てを始めるのであれば、確定拠出年金(個人型)への加入を優先的に検討したいところです。確定拠出年金は非課税の貯蓄・投資優遇制度で、運用期間中の運用益が非課税となるうえ、受け取る積立金も控除の対象となります。さらに、個人型の場合、毎月の掛け金が全額、課税所得から控除されることから、その節税効果は無視できない大きさとなります(毎月の掛け金の上限は、自営業者などの第1号被保険者で月額68,000円、第2号被保険者で23,000円、年額ではそれぞれ816,000円、276,000円)。確定拠出年金のような非課税の恩恵は得られないものの、投信積立もひとつの方法でしょう。利用者の中には、ノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬も安いインデックス型投信を中心に組み入れるケースが多くみられるようです。保有期間中に継続して差し引かれる信託報酬はマイナスの複利効果を伴いながら確実にファンドの収益率を劣化させます。老後資金準備のような長期の資産形成の手段として投資信託を考えるのであれば、より保有コストの低いインデックスファンドを軸に据えたいところです。最後に、ポートフォリオの構築では、世界の株式市場に広く分散されたインデックスファンドを中心に置くと、投資機会を広く捉えることができます。TOPIX(東証株価指数)とMSCIコクサイ(日本を除く主要先進国22ヶ国で構成される外国株式指数)の組み合わせは日本の機関投資家がグローバル株式投資のベンチマークとして長く利用しています。さらに新興国株式指数を加えてよりカバレッジの広いベンチマークとするのも最近の傾向です。それらの指数を連動対象とするインデックスファンドやETFを組み合わせたポートフォリオを資産の中核に据えることは、投資機会の拡大とコスト抑制の観点から合理的な判断といえるでしょう。最近では、厚生年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げる案が公式な場で議論されるようになりました。個人の自助努力による老後資金準備の必要性はさらに高まってきており、早期に着手する必要があります。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第107号 2011年10月28日発行より) ==========================================================皆様に長きにわたりお楽しみいただいておりました「楽天マネーニュース」ですが、勝手ながら、今回の2011年10月28日号をもって終了させていただくことになりました。これまで「楽天マネーニュース」をご愛顧いただいた皆様に厚く御礼申し上げますとともに、引き続き楽天グループのサービスをお楽しみいただけますよう努めてまいります。
2011.10.28
このところの世界的な株安を受けて金融商品への投資に躊躇する人も多いことでしょう。しかし、自助努力による将来の備えが不可欠と考えられる中、この低金利下にあっては貯蓄だけで十分な資産形成を図ることは難しく、リスク資産の活用から目を背けることはできません。今回は、資産運用を開始するにあたって注意すべきことを考えてみましょう。まず、支出の時期と概算金額を把握することが大切です。単身者であれば結婚が最初に訪れる大きなライフイベントでしょうし、子供のいる家計では学費の支出に占める割合が高まります。また、子供の成長につれて住居の問題も出てくることでしょう。会社勤めの場合、定年退職後の収入減への備えも大きな課題です。近い将来の出費に充てる予定の資金はリスクにさらすべきではなく、生活費の数カ月分の予備資金と合わせて預金口座に預け入れておくべきでしょう。足元の資産の状況と将来の資金収支の見込みから、リスク資産に投じることのできる金額を事前に把握しておき、そこから大きく逸脱しないように心掛けることが大事です。次に、目標金額を明確にすることです。最近では、年金制度に対する不信感などから老後生活に金銭的な不安を感じる人が増えており、定年後の収入減にどう備えるかが大きな課題となっています。「家計調査報告(平成22年度)」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の消費支出は234,555円でした。仮に月25万円の支出を前提にすると、20年間で約6,000万円、30年間では9,000万円ほどが必要で、ここから退職金と年金収入を差し引いた金額が自助努力で準備すべき金額となります。そして、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図ることも重要です。ここで、2,000万円を老後資金として用意しなければならないとしましょう。運用期間を20年間、期待利回りを3%として複利運用する場合、20年後に2,000万円を手にするためには(現価係数表から)1,100万円ほどの手元資金が必要となることが分かります。しかし、これが、5%の利回りであれば750万円、8%では430万円ほどの資金で済むことから、手元資金に余裕のないような状況では、つい高めの期待利回りを前提に資産計画を立てがちです。また、運用期間が短くなればなるほど、高めの利回りを設定する傾向はさらに強まります。しかし、高い利回りの裏には高いリスクが潜んでいると考えるべきです。ここでいうリスクとは、期待されるリターンのばらつきのことを指し、リスクが高いということは大きく値上がりするのと同じくらいの確率で、大きく値下がりする可能性もあることを意味します。したがって、リスク資産に投じる金額は、最悪のケースを想定して、たとえ失ったとしても日常の生活に、またその後の資産形成計画に大きな支障を生じないで済む金額に留めるべきです。例えば、最悪のケースで資産の約3割を失う可能性のある金融商品に投資するとして、許容できる損失額が100万円であれば、投資金額は逆算から330万円程度に抑えるべきことが分かります。以上のように、将来の収支を基に目標金額を決め、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図りながら投資金額を判断すると無理のない運用計画に落ち着くことでしょう。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第106号 2011年10月14日発行より) ==========================================================
2011.10.14
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