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クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル1』を観た。『パルプ・フィクション』でそのセンスの良さに感心したタランティーノの他の作品を観てみたかったというのが主な理由だ。とにかくまあ残酷シーンの連続で、一度は途中で見るのをやめてしまった。どうも残酷シーンは苦手で、小説を読みながらでもしんどくなって読むのをやめてしばらく寝込んでしまったりするような体質なのだ。例えば、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』でもそのような状態になってしまったことがある。日を改めて気を取り直して途中から観るのを再開し、その後はなんとか普通に最後まで観ることが出来た。特にこれといって面白いところはなかったのだが、その中でもそれなりに楽しかったのは、俳優達のたどたどしい日本語を聞くことだった。こんなところに楽しみを見出す私もたいがい悪趣味ではあるが、こんな映画を撮ったタランティーノさんもかなり悪趣味だなと思った。まあタランティーノだから全然許せるわけで、こういう悪趣味さを持っていることもまた彼の優れたところの影の一部であるのだろう。映画のDVD版に、出演者のインタビューが収録されていることがよくあり、それを聴くとその映画やそれに登場するキャラクターにはそんなに深いところがあったのかと思わされるわけだが、そういった出演者の言葉はそう真剣に聞くべきものでもないのだろう。本人はその役を演じてきたわけだから思い入れも深いわけだが、その思い入れと我々がそのキャラクターから感じる印象とが一致する保証は全くない。役者の独善的な思い込み勘違いであるとみなすべき場合も多いことだろう。タランティーノが趣味で作ったといった感じの作品だ。
2006/07/23
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アート・スピーゲルマンの漫画『マウス』を読んだ。と言っても一ヶ月近く前のことだけれども。本作品はピュリツァー賞を受賞しており、名作に数えられているらしい。内容的には、作者の父親のアウシュビッツ体験を描いている。特徴としては、ユダヤ人が鼠、ドイツ人が猫、ポーランド人が豚(確かそうだったと思う)の姿形で描かれているということだ。そもそもこの作品を知るようになったのは、柴田元幸先生のインタビュー集『柴田元幸と9人の作家たち』を聴いてからのことだ。とにかく、早口で留まるところなく話し続けるスピーゲルマンが印象的なインタビューだった。柴田先生はこの『マウス』を大学の授業でもよくテキストとして使用しているらしい。学生たちに人気のテキストだそうだ。アメリカの漫画がどのようなものだか知りたいという気持ちもあり、また、漫画一般にも触れてみたいという気持ちもあり、本作を読んでみたのだった。全般的な感想としては、期待はずれだった。単調で紋切り型で、特に真新しいものを感じなかった。ほとんど全てが予想の範囲内で推移し、新たな世界に触れることが出来なかった。小説や映画などを読んだり観たりする目的として、これまで自分の中になかったものに触れたいという気持ちがある。すでに自分の中にあるものやその変形に触れることが出来るだけだと期待はずれだということになってしまう。もう一つ思ったのは、スピーゲルマンは漫画家のメンタリティの持ち主なのだなということだった。漫画をほとんど読んだことのない私なので、あくまでもごく限られた漫画体験から感じたことなのだが、漫画的なトーンが背景にずっと流れているような感じがした。つまり、漫画用の舞台設定の上で話が展開しているというか。というわけで、あまり馴染めないものを感じたのだった。
2006/07/23
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ゴダールの『女と男のいる舗道』を観た。金井美恵子さんの『小春日和』を読んで、なんとなくゴダールを観てみたいと思ったのだ。ゴダールと言えば、『気狂いピエロ』と『勝手にしやがれ』を遠い昔に観て、なんだかよく分からないなという印象を持った程度なのだが、金井さんがどうもゴダールを敬愛されているようなので気になっていたというわけだ。それはそうと、金井さんの小説はやはり面白い。ある文芸批評家が金井さんのことを天才少女と評しているのを読んだのだが、金井さんの天才ぶりはいかほどのものなのだろうと気になる。フランス映画をフランス語で解するのだろうか。バルトなどもフランス語で読んでいるのだろうか。彼女の文章を読んでいれば、彼女が相当頭とセンスがよく教養も深く広いということはよくわかるのだけれども。話を『女と男のいる舗道』に戻すが、まず観始めて思ったのは、やはりよく分からないなということだった。フランス語のセリフを聞いていてもまったく何を言っているのか分からないし、日本語の字幕を見てもよく分からない。単に映像と音楽ぐらいしか手がかりがないような感じだった。そもそも本作は1ダースの断章から成っており、話の流れも断片的だしセリフも断片的な感じになっている。セリフを原語で理解することの出来ないことの弊は相当なものではないかと思われる。というわけで、フランス語を聞いて理解できるようになりたいものだと思った。理解出来ないながらもじっと見続けていると、段々とよさが分かってくるようになった。主人公のしぐさなどに独特なところがあるし、カット構成などもやはり独特な感じがあった。頭で理解しようとしてはいけないのだろう。まずは、現れてくる映像と音楽とセリフとに身を委ねること。頭でよりも肌で感じようとすること。とりあえずは、これが、今の私が初めて本作を観るにあたって採るべき鑑賞態度だったのだろう。観終わってみて、やはりこの作品はよい作品なのだろうし私の好きな作品なのだろうと思う。演劇チックなわざとらしさがないのがまずよいし、無理に物語っぽくしていないところがよい。ゴダールはもう少し追っかけてみようと思う。金井美恵子さんの本をアマゾンなどで探してみたのだが、絶版になっているものが多い。そのくせ古本屋などで見かけることもひどく稀なことだ。金井さんは必ずしもマイナーな作家というわけではないだろうが、優れた作品も簡単に手に入らないというのは残念なことだ。古本屋に出回らないということは、読者が書棚に大事に取っておいているということなのだろうし、古本屋に出ることがあっても誰かが目ざとく見つけてさっさと買って行ってしまうということなのだろう。そういう意味で、古本屋に沢山本が並んでいるかどうかということが、その作家が優れた作家であるかどうかのバロメーターともなっているわけで、古本屋でよく見かける作家の本はどうせつまらないだろうからやめておこうなどと参考にしたりしている。などといいながらも、金井さんの本を7冊ほど古本の通販で手に入れることが出来た。読みたい本が手に入った瞬間というものは、やはり心うきうきとする。
2006/07/23
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