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今日も第35回日本眼科手術学会参戦記の続きです。さて1月28日(土)午後のセッションは、「白内障手術難症例に対する手術機器・周辺機器の有効な活用法」というインストラクションコースに参加しました。 ここで勉強になったことを個人的なメモ書きとして残しておきます。以下、眼科専門医向けのややマニアックな内容となりますので御了承下さい。 CCCが流れかけた時に粘弾性物質を追加する場所は「流れかけたその場所」は×で、「これから戻したい場所」が正解。そこに入れて平坦化させてCCCが戻りやすいようにする。 IFIS症例でヒーロンVを使用する時は、吸引流量は25ml/min以下に設定する。 固い核は最後の核片処理に注意。分割君で後嚢をブロックすること。 破嚢時のビスコエクストラクションでは、 1. ボトルを下げて左手ヒーロン。 2. マキュエイド入れてスポンジビト。 3. woundにビトが噛んでいる時には、八重式虹彩剪刀を前房内に入れてガシガシ切るのも有効。(← これは知らなかった) 4. その後にビスコエクストラクション、 という電車道の王道の手順を守ることが大切。 非常に勉強になるインストラクションコースでした。(続く)
2012.02.22
今回の眼科手術学会のようなメジャーな大きな学会では、器械展示場で様々なイベントが開催されていることがあります。 今回は、スタンプラリーが開催されていました。 これは器械展示場の様々な会社のブースに置いてあるスタンプを集めると商品が貰えるという物です。 私も様々なブースを回って、 頑張ってスタンプを集めました。 スタンプが全部埋まると、記念に名古屋グッズが戴けます。 上記の選択肢の中から私は、 名古屋名物、みそかつの「みそだれ」を選びました。食べるのが楽しみです。 このように学会と言うのは勉強になるだけではなく、楽しいイベントも満載なんですね。(続く)
2012.02.21
さてランチョンセミナーの後はブラブラと学会場内を散歩します。カールツァイスというカメラのレンズ等で有名なドイツのメーカーがあるのですが、ここは眼科用の手術や外来診察用の顕微鏡なども手掛けている関係で大きなブースを出していました。 偶然その前を通りかかると、 スターバックスコーヒーとコラボした臨時の「カールツァイスカフェ」が開かれていました。 ちょうど食後だったので美味しくコーヒーを頂きます。 さてその後は学会併設の器械展示場へ向かいます。ここでは、 MEテクニカという、手術関係の小器械販売を手掛ける会社のブースに立ち寄りました。最近、「柴式サイフォン式吸引器」という、白内障手術時に術野に水が溜まらない様に外眼角(目尻)に引っ掛ける器械が非常に評判がよく、実際に現物を自分の目で見てみたかったのです。 ↑ 実際に目の模型で試して見ました。魔法のように水が抜けます。これは凄いですね。 当院で現在使用している従来型の器械に較べて非常にコンパクトで、更に抜群に効果も高そうなので早速注文しました。ただ全国のメジャーな白内障手術施設から注文が殺到していて在庫が無いとの事で、私が実際に手術で使えるのはもう少し先になりそうです。 それ以外では、白内障手術で最も重要なCCCという水晶体の前嚢(ぜんのう)という袋の表面の皮をめくる手技で、その安全性を高めるCCCマーカーという器械があるのですが、 これも一度実際に手術で使ってみることにしました。 学会ではこのように様々な手術道具に実際に触れることが出来るのですが、これも学会の大きな楽しみの一つなんですね。(続く)
2012.02.17
さて1月28日(土)の学会もお昼になりました。お弁当を食べながら勉強するランチョンセミナーに向かいます。 今回参加したのは、ヒーロンVという白内障手術で用いる補助薬剤の効果的な使い方についてのセミナーでした。ここで勉強になったことを自分用のメモ書きとして残しておきます。以下眼科専門医向けの内容となります。 ヒーロンVが必須なのは、術中の虹彩の動揺の激しいIFISと成熟白内障のCCC。その成熟白内障のCCCでは、最初に眼球圧迫した上で、ヒーロンV→穿孔してから稲村式ダブルノズルカニューラで減圧→なるべく小さ目を意識してCCC→必要なら更にダブルCCC。また、成熟白内障のCCCは絶対にビスコートではやらないこと! IOLの交換・摘出にはヒーロンVが必須。ただし破嚢時にはVが抜けないので使用しないこと。 ヒーロンVは、クスリではなく道具。注入ではなくそこに置く感覚で使う。 会場との質疑応答。 Q ヒーロンVでCCCすると小さくなったりフラップが切れたりする。どうしたら良いですか?(これは自分も同じ悩みを持っており役立った) A CCCをゆっくり回す。フラップは角膜内皮側に少し持ち上げるくらいでちょうど良い。またCCCは正方形を作るくらいのイメージを持つとちょうど良い。 実践的で明日からの手術にすぐに役立つ素晴らしい内容でした。(続く)
2012.02.15
さて1月28日(土)午前中2番目のセッションは、 「眼外傷のプライマリーケア」という教育セミナーに参加しました。 この中では1つ印象深い話がありました。それは、ある患者様が「作業中に間違ってガスバーナーでちょっとだけ目をあぶってしまった!」と言って受診されたときのお話でした。患者様は「最初は凄く目が痛かったけど、ここに来たら何だかもう治った。」ということで、診察しても目にほとんど傷もないし視力も1.0出ているしで、抗生剤の目薬を処方の上帰宅されたのでした。 ところがその数日後、患者様が「突然目が見えなくなった!」と言って来院され、目を見ると眼内炎といって目の中が全てバイキンだらけ膿だらけになってしまっていたのです。 後で会社の同僚の方などに確認すると、実は「ガスバーナーでは金属片をあぶっており、その破片が飛び散った。それで痛がって受診した。」と言うことだったのです。患者様自身は痛みからかその時の記憶が無くなってしまっており、それで眼科で受傷状況をきちんと説明できていなかったのです。 この患者様は実は角膜(黒目)の隅っこからスパッと鋭利な金属片が入り込んでおり、スピードが速かったため硝子体(しょうしたい:目の奥のこと)にまで達していたのです。だから最初の診察時には目の表面側はなんとも無かったものの、数日経って目の奥に入り込んでいた汚い金属片が悪さをして目が見えなくなっていたのです。 この話の教訓は、我々眼科専門医は、 常に眼内異物があるものとして、外傷眼の診察をすべきである。 ということです。産婦人科医が「女性を見たら妊婦と思え!」と言われているのと一緒ですね。今後、常に肝に銘じていこうと思いました。(続く)
2012.02.13
さて先月名古屋で開催された「第35回日本眼科手術学会」参戦記の続きですが、ようやく本題に入ります。最初に参加したのは、 原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうかくりょくないしょう)の治療戦略という教育セミナーでした。これは目の中の水の出口(隅角)が何らかの理由で閉塞し、眼圧(目の血圧)が上昇することによって視神経の損傷が起こる病気です。 治療法はその病態によって色々なのですが、 治療法の一つにレーザー虹彩切開術(LI)というものがあります。この治療法は外来で施行可能であると言う大きなメリットがあるのですが、その反面、正確な機序・頻度は不明なものの、術後に角膜(黒目)の透明性を維持する細胞である角膜内皮細胞が減少してしまい、角膜移植をしなくてはならなくなることもあります。 なので、我々眼科専門医にとってはこのレーザー虹彩切開術というのは「悩みの種」の治療法なのです。本来原発閉塞隅角緑内障の治療と言うのは白内障手術をすることが根本的な解決策なのですが、まだ白内障がほとんど進行していなくて手術には早いと判断される場合や、逆に全身状態が悪くてとりあえずその場をしのぎたいなど、色々な事情でどうしてもレーザー虹彩切開術を選択しなければならないこともあります。 このセミナーでは、この治療法を少しでも副作用を減らして施行するコツが詳しく解説されました。 その最大のコツは「無理して目の隅っこにレーザーをしないこと」です。術後の見た目は隅っこの方が良いのですが、最周辺部にレーザーを打つのは視認性が悪くて総エネルギー量が上がりやすくなり、また大切な角膜内皮細胞に近いので目に障害を与えやすいからです。 これは非常に大切なことで私も普段から意識を徹底していますが、今回しっかりと復習できて大変勉強になりました。(続く)
2012.02.09
さて学会場に入ります。 気分が高まりますね。 学会場に着いたら、まず最初にコングレスバッグを貰います。 これは学会場で資料を入れるためのバッグですが、学会終了後はそのままエコバックにもなる優れものです。今回は上記の4つからの選択でしたが、 私はこの水色と白のストライプが綺麗なバックを選びました。 さて次はランチョンセミナー(お昼にお弁当を食べながら勉強できる一石二鳥のお得なセミナー)の整理券取りです。これは急がないと行きたいセミナーに入れなかったり、ひどい時は全て売り切れでお昼御飯そのものにあぶれてしまう事もあるのでとっても大切なのです。 今回は十分間に合いました。 さて、学会の日程表を良く見て一日の行動を考え、いよいよ勉強開始です。(続く)
2012.02.07
さて1月28日(土)の朝は、早起きして朝食会場に向かいます。 すると入り口に、「シェフが目の前でお作りするオムレツなどをご用意いたしております」 と書いてあります。おっ、これは 「オムレツ理論」 ですね。期待が高まります。 オムレツだけでなく、名古屋名物のきしめんも頂きます。 他の料理もとっても美味しかったです。やっぱりオムレツ理論は正しいですね。(笑) 朝食の後は急いでシャトルバスに乗って学会場へ向かいます。 ようやく学会場に到着しました。これから楽しいお勉強の始まりです。(続く)
2012.02.05
さて先週のことですが、1月27日(金)の夕方の17時30分に外来を早期終了させて頂いた私は、大急ぎで松山空港に向かいました。我々眼科専門医にとっての「3大学会」の一つである、第35回日本眼科手術学会総会に参加するためです。 学会は名古屋で行われたのですが、 名古屋行きの最終便に何とかギリギリで間に合いました。 ↑ 名古屋便の機体は毎回非常にコンパクトな「ちびちびボンバルディア」のプロペラ機です。私はもっと大きな飛行機が好きなんですが、東京便や大阪便に較べれば需要も少ないでしょうし、まあ仕方ないですね。 中部国際空港(セントレア)に到着した後は、名古屋の副都心の金山(かなやま)まで電車で向かいます。 泊まったのは、 ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋です。このホテルから学会場までの直通のシャトルバスが出ており、一番便利だったのです。 このホテル、学会のホームページからリンクされている旅行代理店や楽天トラベルなどでは早くから満室表記になっていたのですが、地元の旅行代理店に行ってみるとあっさり予約が取れました。こういうことは意外と良くあります。おそらく「予約枠」が違う関係かな?と思っています。 ホテルの客室からは綺麗な夜景が見えます。 夕食を食べていなくてお腹もペコペコだったので、近くのコンビニでお気に入りの発泡酒とおでんを買って部屋で食べます。 さすが名古屋だけあって、おでんには、 「みそたれ」が付いています。「やっぱり名古屋は何でも味噌文化なんだよなー」と妙に納得しながら眠りに付きます。明日からの学会が楽しみですね。(続く)
2012.02.02
当院は患者様にいつでも気軽に受診して頂きたいとの思いから、外来では予約制は採用しておりません。当初はどの時間帯でもそれほどお待たせすることはなかったのですが、開院後4年近くが経ちクリニックの認知度が高まってきたせいか患者様の数が次第に増え、そのため「いつ来ても混んでいる。一体外来はいつ空いているんですか?」という質問を戴くことがあります。 外来が空いている時間帯というのは季節によってもかなり異なるのですが、寒い今の時期だと午前8時30分の外来開始から9時30分くらいまではまずまず空いています。検査までの待ち時間が30分を超えることはまずないだろうと思います。 ところが、クリニックへのバスが多く到着する時間帯でもある午前10時前後になると急激に激しく混み始める事が多く、その混雑は12時まで続くことも多いです。なので、この時間帯に来られると「いつ来ても混んでいる。」という印象を持たれやすいかと思います。 午後は15時30分外来開始なのですが、16時30分くらいまではかなり混雑します。ところが17時を超えるとほとんどガラガラとなります。日によっては待合室に患者様が誰もいないこともあります。(笑) ですので、待つのが嫌な方には是非17時以降の受診をお勧めします。なお外来終了は18時となります。 以上をまとめると、外来が空いている時間としては8時30分から9時30分、もしくは17時以降ということになります。この時間帯ならばそれほどお待たせすることなく快適に受診して頂けると思います。 受診時の参考にして頂ければ幸いです。
2012.02.01
年に1回くらい届く謎の振込用紙。 タウンページから切り抜いた当院の広告が「見本欄」に貼ってあります。 「株式会社 日本電話広告」からで、請求額はなんと262600円!という超高額です。 よく読むと、 『裏面に参考貼付(同封)しましたのは日本電信電話(株)本年発行の電話番号広告簿に掲載されている御社の広告ですが、今年度は当社発行の全国官公庁電話広告枠(地域版)にぜひお申し込みをお願いいたします。』 中略 『又、この郵便物は当社発行の全国官公庁電話広告枠(地域版)の広告申込案内ですので、日本電信電話(株)発行の職業別電話帳と混同なさらぬ様お願いします。 尚、印刷後はご解約に応じられませんのでご容赦ください。』 と書いてあります。 NTTのタウンページの広告とは何の関係も無いことが明示されていますが、それならこのような紛らわしい切抜きを貼り付ける必要は全く無いわけで、要は「錯誤」を利用したやや悪質で振り込み詐欺に近いビジネスのようです。皆様も十分に注意してくださいね。
2012.01.26
さてJSCRSウインターセミナー最後の第5部は、「IOL(眼内レンズ)最新情報」でした。 この中では、度数計算装置ではドイツのカールツァイス社のIOLマスターがやはり測定率が一番高いこと、日本のトーメー社のOA-1000(当院で稼働中)は測定率ではIOLマスターに僅かに及ばないこと、また前房深度の測定方法が他社のマシンと異なるので第4世代の計算式(HaigisやHoliday2)を使うときには注意が必要なことなどが説明されました。 レンズの度数計算には多くの式があるわけですが、眼軸長22.5~26.0ミリの通常症例では結局普遍的なSRK/T式で良いとのことでした。(ただ私の開業している地域では眼軸22.0ミリ以下の短眼軸の方がザラにいるのですが、、、、) また、短眼軸や標準眼軸の方は正視を希望することが多いが、24.5ミリ以上の長眼軸の方は約半数が近視を希望するので注意が必要、との指摘がありました。とにかく手術前に患者様の希望をしっかりと確認することが大切であり、その際「テレビが好きですか?、それとも新聞が好きですか?」と質問し、テレビと答えた方は正視を、新聞と答えた方は近視を狙うと良い、とのことでした。 次に乱視矯正用の「トーリックIOL」については、「乱視度数が大きい、左右差が激しい、斜乱視」が良い適応であること、正しい角度で眼内に入れることが大切で、30度ズレると矯正効果が0になってしまう、ことなどが勉強になりました。 更に最近急速に広まってきたと言われる「多焦点(遠近両用)IOL」については、2010年末の段階で全白内障手術に占める割合は日本では未だに1%未満であり、アメリカでも6~7%に過ぎないということが説明されました。これはやはり多焦点IOLは術後のグレア(光がまぶしくてにじむ)、ハロー(光の周辺に輪がかかって散乱して見える)などが多いことや、暗いところで見えにくいという弱点、また価格が高額であることがネックになっているのだろうとの事でした。 このようにして「JSCRSウインターセミナー2011」が終了しました。全体を通して非常に勉強になりました。初めて知ったこともたくさんありましたし、知っていることでも改めて聞いて復習・確認できて良かったです。来年も出来る限り再参戦したいと思います。 皆様、学会旅日記にお付き合い戴き有難う御座いました。 (JSCRSウインターセミナー2011参戦記 終わり)
2012.01.23
さて今日もJSCRSウインターセミナー参戦記の続きです。セミナー2日目は、第4部 「マイマシン・マイモード このマシンをこう使え」から始まりました。以下は眼科専門医向けのやや特殊な内容を含みますので御留意下さい。 ここでは各メーカーの白内障手術機械について、各演者がその長所をアツく語りました。 まず累計売上世界一の日本アルコン社のインフィニティ については、吸引圧&還流圧のダブルセンサー搭載で前房がとにかく安定していること、吸引の立ち上がりはコントロールパネル上でコントロールできるのでわざわざベンチュリーマシンを買わなくても良いこと、等が語られました。 次にアボット社のシグネイチャー に関しては、溝堀り、分割、その後の処理でペリスタとベンチュリーを使い分けることによって効率のよい手術が出来ることが語られました。 3番目のボシュロム社のステラリス に関しては、合うドクターには物凄く良いということが語られました。具体的にはそれまで他社のマシンで15~20分かけて恐る恐る手術をしていた先生が、マシンがステラリスに変わった途端「水を得た魚」のように生き生きと伸び伸びと手術が出来るようになり、手術時間も突然7~8分に短縮された、という事例が紹介されていました。このステラリスの凄さの秘密はやはりその「ステーブルチャンバーシステム」にあり、ボシュロム社が特許を取ったので他社は真似が出来ないということでした。ただ、このステーブルチャンバーは柔らかい核で5例、固い核だと2例で詰まってしまうという弱点も合わせて紹介されていました。 4番目の唯一の国産、二デック社のフォルタス に関しては、APS(オートパルスシステム)とUS自動停止システムで、とにかく安全に手術が出来るということが強調されていました。 しばらく前に私自身は上記の全てのマシンを実際にデモさせて頂いた上で、どのマシンも素晴らしい仕上がりではあったものの、その中から最終的にインフィニティとステラリスのどちらを買うか死ぬほど悩んだ末にインフィニティを選びました。 その際決め手になったのは、グレード4.0を超えるような固い白内障を手術する機会が田舎に立地する私のクリニックでは多く、固い核を処理するにはステラリスよりもインフィニティがやはり頭一つ抜けて強いことと、インフィニティは登場後8年が経過しその間絶え間なく進化してきたので、極めて完成度が高く欠点の少ない、例えるならば「モデル末期のドイツ車」のような隙のない円熟のマシンになっているということでした。総合力ではインフィニティの方がステラリスをかなり上回っていると判断したのです。 ただグレード3.5くらいまでであれば、率直に言って既にステラリスの方が優れている部分があるとも感じました。ハイドロダイセクションを確実に回し、核の2分割さえ出来ていれば、後はステラリスが魔法のように核を安全に確実に処理してくれるからです。6クリスタルの滑らかな超音波発振、ステーブルチャンバーシステムがもたらす驚異の前房安定性は一度体験するとやみつきというか忘れられない鮮烈な体験でした。お金があれば本当は両方とも買いたかったくらいです。 私だけでなく、インフィニティとステラリスでどちらのマシンを買うべきか悩んでいる先生と言うのはきっと全国にたくさんいると思うのですが、私の個人的な考えでは、インフィニティは横発振がないとその魅力を存分には発揮できないわけなので、その独特のケルマンチップに違和感がないかどうかが最大のポイントになるのだろうと考えています。ケルマンに馴染めるのであればインフィニティは最高に素晴らしい選択肢に成り得るでしょうし、そうでなければステラリスの方が上という判断もあり得ると思います。いずれにせよ、両者共にエクセレントな仕上がりのマシンですし、どちらも間違いではないのだろう、と今回の講演を聞いても思いを新たにしました。
2012.01.19
さて今日は昨年の12月に参加したJSCRSウインターセミナー2011参戦記の続きです。 1日目のプログラムも全て終了しました。懇親会で軽くビールを飲んで喉を潤して会場の外に出ると、 街は綺麗なイルミネーションで溢れています。東京の街は凄いですね。 通りかかった小粋で素敵なお店でクリニックのスタッフへのおみやげを買った後は、 ブルーノート東京と言うライブハウスへ急ぎます。この日偶然「世界ナンバーワンのサックス奏者」と言われるデイヴィッド・サンボーンさんのライブがあり、楽しみにしていたのです。私はパッと家のCDラックを見ただけでも、 ↑ このようにたくさんのCDを持っており、以前から大ファンだったのです。 実際のライブも素晴らしい内容でした。ただ、私はちょうどステージ正面に対して真横側の席に座っていてサンボーンさんの横顔が見える位置にいたのですが、サックスを吹く度に半端なく頸動脈(けいどうみゃく)が怒張するのが、眼科専門医として少し気になりました。「トランペッター緑内障」という言葉もあるくらいで、慢性的に「いきむ(眼圧が10mmHgくらいはすぐに上昇する)」状態が続くと、視神経が痛んで緑内障を引き起こすことがあると言われているんですね。 ちなみに、たまにテレビで目の玉を自分で飛び出させることができる方が「びっくり人間」として登場することがありますが、 あれは絶対に眼に悪い(極端な眼圧変化によって緑内障になりやすい)ので、良い子の皆様は絶対に真似しないようにして下さいね。(笑) すいません、話が大幅に横道に逸れました。 美味しい食事・アルコールに最高のグットミュージック、東京の夜は楽しく過ぎていきます。明日のセミナーが待ち遠しいですね。(続く)
2012.01.14
当院では本日より今年の白内障手術を開始しました。毎年のことですが最初の手術はかなり緊張します。手術は全て「自分の両親の手術」をするようなつもりで、1つ1つの手順の全てに細心の注意を払って行っています。また、同時に常に自らの手術手技を厳しく見つめ直し、改善点があれば迅速に微調整を続けています。 今年も1人でも多くの患者様に視力回復で喜んで頂けるように、丁寧で確実な手術を心掛けて行こうと考えています。
2012.01.10
さて今日は昨年からの持ち越しとなっている、JSCRSウインターセミナー参戦記の続きです。第3部は「知っておくと役に立つ屈折矯正関連の話題」でした。この中で勉強になったのはオルソケラトロジーの話でした。 オルソケラトロジーとは、特殊な高酸素透過性のハードコンタクトレンズを夜寝るときに装用し、朝起きてはずすと、視力が一時的に回復し日中は裸眼で過ごせると言うものです。 このオルソ、最近「眼軸長の変化を抑えた」というデータがボチボチ出てきていると言うことでした。これは分かりやすく言うと「近視の進行予防が出来る」ということになります。我々眼科専門医のコンセンサスでは今まで「近視は予防できない」ものだったのですが、この常識が覆される日が近い将来やって来るのかも知れないですね。実際、お隣の韓国や中国ではこの近視進行予防の目的で学童対象に既にガンガンこのオルソが処方されています。 ただ同時にこのオルソケラトロジーは、そのレンズ形状の複雑さ に起因する洗浄不良(細かいところは綿棒でこすり洗いする必要がある)や寝ている間の目の中の酸素濃度の低下により、緑膿菌やアカントアメーバによる角膜感染症が起こりうることも指摘されていました。ただこのオルソによる角膜内皮(黒目の透明性を維持するために必要な大切な細胞)障害の報告は過去1例も無い!ということで、これはかなり意外でしたね。(続く)
2012.01.09
新年明けましておめでとう御座います。今年2012年も進化の激しい眼科学のスピードに負けないように、毎日の勉強・努力を欠かさず、全国レベルの眼科医療をここ八幡浜地域の皆様にお届けできるように頑張ります。 学会出張による臨時休診・代診などで皆様に御迷惑をかけることがあるかもしれませんが、常に最先端の臨床・研究を学び続けることは眼科専門医として非常に大切なことですので御了承下さい。 なお、新年は本日1月4日より通常診療を開始しております。それでは皆様、今年も にしわき眼科クリニック をよろしくお願い申し上げます。
2012.01.04
当院の年内の診療は、本日12月28日の午前中を持って終了致しました。 この1年間、たくさんの患者様に御来院戴けたことに感謝しています。来年もスタッフ一同笑顔を絶やさず、努力を怠らず頑張っていきます。 なお、新年は1月4日(水)診療開始となります。来年も にしわき眼科クリニック をよろしくお願いいたします。
2011.12.28
さて今日もJSCRSウインターセミナー2011参戦記の続きです。第2部は「白内障の基礎知識」でした。 この中で面白かった話は「白内障の面からみた抗酸化物質」という講演でした。 抗酸化物質は広い意味での老化防止に役立つと言われており、野菜(ほうれん草やかぼちゃなど)や果物(ブルーベリーが有名ですね)などに広く含まれています。講演の中では様々な抗酸化物質を使って白内障の進行予防効果がないかを実験した結果が示されていたのですが、テレビCMなどでも有名な「強力わかもと」が白内障進行予防に効果があるのではないか?ということがデータと共に示唆されていました。 強力わかもとは、ビール酵母・乳酸菌・消化酵素の3つの天然由来成分を含む歴史ある胃腸薬ですが、まさか白内障の進行予防にも効果がありそうとは、、、、、強力わかもと、あなどれないですね。(笑) それ以外では専門的な話になりますが、CCC(水晶体の袋の表面をめくる手技)ではコンプリートカバー(CC)がやはり大切で、ノンコンプリートカバー(NCC)だとその部位から後発白内障が出やすいことがデータと共に指摘されていました。(続く)
2011.12.26
さてJSCRSウインターセミナー2011第1部は「ビギナー奮闘記」でした。白内障手術初心者が陥りやすいワナを項目別に丁寧に解説してくれる内容でしたが、現在までに2000例以上の白内障手術経験がある私も、恥ずかしながら知らなかったこと・忘れていたこと・意識してしなかったことなどのノウハウが満載で大変勉強になりました。 この中で特に勉強になったことを自分用のメモ書きとしてまとめておきます。以下、眼科専門医向けのやや特殊な内容となっていますので御了承下さい。 CCC中に流れかけたら、戻したい部分に粘弾性物質を追加する。(流れかけた部分に入れると、その操作で流れてしまうことがあるので×) これは要は、これからCCCが進みたい方向を押し下げることによって自然に戻りやすくなる、CCCがそちらに向かう流れを作る、ということ。(これは知らなかった!) CCC中にフラップを引っ張る位置は、CCCが小さい時は遠い場所で、CCCが大きい時は近い場所で、と常にCCCの切れ方を見ながら可逆的に瞬時に柔軟に使い分けることが必要。(これは何度も教科書で読んではいたのだが、このところちょっと意識から抜け落ちていた!) 核分割時、「両手を同時に動かさない」ことが大切。2分割の時は具体的には、右手のUS tipを核の底に当ててまず左方向に押す、そこで固定して止めて、次に左手のフックを右に押す。要は「同時ではなく順番に」ということ。(これも忘れがちだが実際の手術時に意識しておくと非常に割りやすい!) いつもの溝堀で割れなければ、無理せずに溝を追加する。(まさに名言) 柔らかくて割りにくい時には、「円周方向に割る」のも有用。(やってみると本当に役立つ) この第1部、素晴らしい内容でした。ここだけでも来た価値がありましたね。(続く)
2011.12.22
さて張り切って到着したセミナー会場でしたが、 中は拍子抜けするほどのガラガラでした。あれー!?、せっかく四国の隅っこから張り切って来たのにな。。。。。。。 充実の講師陣・内容からはあり得ないくらいですね。いつも通り会場の最前列のど真ん中に座ります。 こんなに空いているのはおそらく、 1. セミナーの告知が第一回目ということもあり遅れたため認知度が低かった。 2. 日程的に他の大きな学会と重なって参加者が分散した。 3. 専門医の単位が貰えない勉強会なのでそれも影響した。 くらいかな?と推察しています。 さてセミナーは全部で5部構成でした。次回から1部毎に勉強になった内容をまとめて行きたいと思っています。(続く)
2011.12.19
さて12月3日(土)はセミナー開始に間に合うように早起きして、ホテルの朝食会場へ向かいます。 会場では「オムレツを作ってくれるシェフ」がいました。並んでオムレツを貰います。 私は以前から思っているのですが、「朝食会場でその場でオムレツを作ってくれるホテルは大体サービスが上質」ということがあります。「オムレツ理論」ですね。オムレツをその場で作ると言う手間がかかるようなことにまで人員を配置しているということは、ホテル全体がサービスへのコストをかけていることの証明ではないか?と思っています。特に日系のホテルに多いのですが、宿泊料金が高額で「高級」とされていても朝食会場にこのオムレツがないことがあり、そういったホテルは全体的にサービスの質が低いと感じています。 さてそんなくだらない事を考えている内に (笑)、セミナーの開始時刻が迫ってきました。急いで会場へ向かいます。(続く)
2011.12.15
さて12月2日(金)は、前述のJSCRSウインターセミナー2011参加のため外来を17時30分で早期終了させて頂き、そのまま車に飛び乗って県都にある松山空港へ向かいました。 空港に着いたのは19時20分、なんとか東京行きの最終便に間に合いました。 季節柄、松山空港もクリスマスイルミネーションで華やいでいます。19時50分発の最終の東京行きの飛行機にはどこかで見た顔がたくさんあります。他科の先生方ですね。我々医者の世界は一生が勉強の日々。努力を怠るものは第一線のトップレベルの臨床現場からは退かざるを得ない厳しいバトルフィールドであり、休憩と平穏を得るのは引退した後と覚悟しています。実力・気力が衰え、患者様のお役に立てなくなるその日が来るまで、皆様から信頼される限り日々自らの知識と技術を磨き上げるための鍛錬が続きます。 空港でのんびりしていると、偶然隣に循環器内科医の後輩が座っていました。「これから東京で2日間ぶっとおしで豚の心臓を使ってトレーニングです。」と言っていました。そういえば私も研修医の頃には豚の目を使って白内障手術の練習を良くしていました。目も心臓も豚は人間に良く似ているんですね。見た目は全然違うのに不思議です。。。。。。 さて羽田空港到着後はモノレールで浜松町へ。そこからは地下鉄大門駅までスーツケースをガラガラ引いて歩いて移動し、六本木を目指します。 ふー。ようやくホテルに到着しました。時間は23時00分。四国の片隅から首都東京は本当に遠いです。「あー、疲れた。もう寝よう。」と思ってふと窓の外を見やると、 東京タワーが光っています。「夜中でも都会は明るいんだなあ。」と感心しながら、眠りに就きます。(続く)
2011.12.12
さて、しばらく前のことですが12月3日(土)、4日(日)に開催された、「第50回日本白内障学会 第26回日本白内障屈折矯正手術学会合同学術総会 ウインターセミナー2011」(以下、JSCRSウインターセミナー2011と略す)へ参加してきました。 このセミナーは今年から始まりました。記念すべき第一回目ですね。その内容は、 上記のように「まさに白内障漬けの2日間」とでも言うべき内容で、我々白内障手術専門医にとっては夢のような素晴らしいプログラムでした。 ところが実は、全く同じ日程で日本網膜硝子体学会・日本眼循環学会・日本糖尿病眼学会という3つの大きな学会の合同総会が開かれていました。私は元々はそちらの学会に参加の予定だったのですが、JSCRSウインターセミナー開催のお知らせが突然クリニックに届き、そちらの方が自分にとっては役立つと判断して急遽参戦することにしたのでした。(続く)
2011.12.09
ネットを巡回していて興味深い記事を見つけました。以下に引用します。 40代中堅専門医はプライド高く助言断るから誤診が多いの指摘- NEWSポストセブン(2011年11月25日16時00分) 医師が犯してはいけない最大の罪は誤診だ。しかし現実に医療の世界では、誤診が今も後を絶たない--。脳神経外科医で森山記念病院の堀智勝名誉院長は苦渋をにじませた。 「医師の思い込みが誤診を生みます。私の知っている例では、ある脳神経科医が、頭痛ばかりか首にも痛みを訴える急患を、筋緊張性頭痛だと決めつけてしまいました。ところが数日後、患者さんはくも膜下出血で死亡してしまいました」 千葉県がんセンター・前立腺センターの植田健泌尿器科部長は、誤診に繋がる別の面を指摘する。 「医師にはプライドが高い人が多い。そこに手術件数の豊富さや大病院での実績が加わると、最新の診断機器による結果が一部分からなくても、気軽に周囲の医師へ質問したり、助けを求めたりできない。あるいは地位の高さから助言をしてくれる仲間がいないという状況にも陥ってしまいがちです」 医師の多忙さが誤診を生む温床ともなっている。 「一人で診察しなければならなかったり、雑務も含めて忙しい医師は、学会に参加できる機会が限られ、医学雑誌や論文を読む時間もありません。これでは最新知識を得るチャンスが少なくなります。また、外来や病棟での多忙さから、患者の個別対応が遅くなることがあります。そのため、重篤な病気の兆候を見逃すことになりかねないのです」 こういうケースは、地方の小さな民間病院に勤め、一人で働く若手の医師に多いという。 ジャーナリストの富家孝医師は、40代の中堅どころの医者、とりわけ専門科医に誤診が起こりがちと警鐘を鳴らす。 「専門医の自信から、他の医師の意見を求めることなしに、自分の経験だけで診断を下してしまう。中高年の患者が手足の痺れや視野狭窄を訴えたら、彼らは脳卒中を疑います。ところが、若い患者だと発生症例の少なさを理由に、頭から脳卒中じゃないと決めてかかるのがその典型です」 ※週刊ポスト2011年12月2日号 (引用終わり) この中で私が「その通りだなあ」と痛感したのが、「 医師の多忙さが誤診を生む温床ともなっている。一人で診察しなければならなかったり、雑務も含めて忙しい医師は、学会に参加できる機会が限られ、医学雑誌や論文を読む時間もありません。これでは最新知識を得るチャンスが少なくなります。」という部分でした。 私も一人で診察をしている地方開業医であり、常に自覚を持って努力をしていないとあっという間に最新の医療レベルから取り残されかねない境遇にいます。そのため、「常に普通の眼科専門医の倍は勉強する」ことを自らに課しており、具体的には5年間で100ポイント、つまり1年間に20ポイント取れば良い眼科専門医更新に必要な単位(各種の学会や勉強会・雑誌への参加や発表などで得られる)を最低その倍の40ポイントは取る様にしています。また全ての勉強会では常に一番前の席に座り集中して勉強するようにしています。 ちなみにこの1年では、 50ポイントを獲得し、今年も目標を達成しました。来年は更に上積みして60ポイントを目指しています。 これからも八幡浜地域の皆様に安全で快適な眼科医療を提供し続けて行けるように、日々努力をしていこうと決意しています。
2011.12.06
電気溶接の仕事を眼を保護せずにすると、人工光源から出るUVC(波長が非常に短くて眼に有害な紫外線)による、電気性眼炎(でんきせいがんえん)という状態を引き起こしてしまうことがあります。 具体的には、上記の写真のように黒目(角膜)の表面に細かい傷が入ってしまいます。かなり強い眼痛を伴うので、多くの患者様が慌ててクリニックに駆け込んで来られます。 先日もこの電気性眼炎の患者様が来院されたのですが、眼を拝見すると黒目(角膜)のキズだけでなく、白目(結膜)も異常なくらい充血しています。 私が「これはよっぽど目を擦られたのですか?」と質問すると、患者様が、 「職場の上司が、 すぐに目に牛乳を入れると良い というので、そうしました。」 とのことでした。 電気性眼炎に牛乳、これは眼の表面が痛んで感染に弱くなっている状況に追い討ちをかけることになるので、治すどころかむしろ危険と思います。なので、皆様も溶接で目を焼いてしまった時には、牛乳を入れるのではなくすぐに眼科専門医を受診する、ようにして下さいね。
2011.11.30
もうすぐ12月ですね。当院ではスタッフが頑張ってくれて、昨日から冬のイルミネーションを開始しました。 昨年との違いですが、クリニック側面の奥にいたトナカイが、 この1年でツタが成長して埋もれて隠れてしまうので、国道沿いに移動しました。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非また聞かせてくださいね。
2011.11.25
さて、平成23年11月6日(日)は、地元愛媛県松山市で開催された愛媛県眼科学術講演会に参加してきました。この日記ではあまり地元での勉強会については言及してきませんでしたが、もちろん以前から時間の許す限り積極的に参加しています。 特にこの講演会は事前に郵送されてきたプログラムの内容を見た瞬間に素晴らしい内容であることを確信し、「その日、自分の葬式でない限りは絶対に参加しよう!」と楽しみにしていたのです。今日はその内容をレポートしてみたいと思います。 なお、一部に専門的な内容を含んでいますことを御了承下さい。 特別講演が3題あったのですが、どれも明日からの日常診療にすぐに役立つ実践的で素晴らしい内容でした。1題目は「緑内障性紙神経症の診断と経過観察 コツと落とし穴」でした。ここで抜群に勉強になったのは以下の内容でした。 1. OCT(光干渉断層計)がないと診断できない視神経障害というのは確実に存在する。ただし、「ノンコン高眼圧症」ならぬ「OCT緑内障」の診断を下してしまうリスクもはらんでいる。それを避けるためにはOCT検査結果の「左右非対称性(緑内障のほとんどは左右非対称)」、また視野検査結果との「相応性」を確認することが大切である。(自分もOCT緑内障を量産しないように肝に銘じなくてはと思いを新たにした。) 2. OCTは素晴らしい器械だが、緑内障の進行判定に使うのはまだ危険。進行判定にはやはり視野検査が頼りである。そしてその視野検査をどの程度の頻度で施行すべきかについては、2008年のBJOに掲載された論文等から考えて、初回検査から緑内障の進行具合を示すグラフである「MDスロープ」を引ける5、6回目までは4ヶ月に1回が推奨される。進行スピードを把握できたらその後は6ヶ月に1回で良い。(以前から視野検査の頻度に悩んでいた。今回クリアカットに教えて頂いて本当に助かった。) 2題目は「フルオレセイン染色による眼表面疾患の見かた」でした。ここで特に勉強になったのは以下の内容でした。 1. フルオレセイン染色検査では、水滴を良く切って眼瞼縁にソッとつけるようにして無駄に涙液量を増やさないように意識することが検査の正確性を保つために大切である。(基本事項だが忘れがちと感じた。) 2. Blue Free Filter(BFF)というフィルターを使うと、通常のコバルトフィルターでは見えないものまで観察できる。具体的には結膜の上皮障害が良く分かる。このBFFはほとんどのメーカーの細隙灯顕微鏡に装着できるので是非使ってみて欲しい。(後で講師の先生に聞くとフィルターは12万円くらいするとのことで、ちょっとぷちぼったくり気味かなと思ったが、早速自分のクリニックでも注文した。) 上記のBFFフィルターですが、早速当院でも注文して装着しました。 このBFFフィルターを通すと、今まで観察しにくかった結膜上のSPK(細かいキズ)がはっきりくっきり色鮮やかに見えて、ドライアイ患者様の診察にものすごく役立ちます。まだ装着されていない先生には強力にお勧めできるアイテムと思います。 勉強会の話に戻りますが、3題目は「外来でできる! 眼形成小手術のあれこれ」でした。ここで格別に勉強になったのは以下の内容でした。 1. 霰粒腫の切開では挟瞼器を使わないやり方もある。その方がトータルの出血量が少ないし、指で挟んで取り切れたかを確認しやすい。また鋭ヒをガーゼでくるんで取り残しがないかを確認すると良い。(自分も一度挟瞼器を使わずにチャレンジしてみようと思った。) 2. 涙小管炎は見逃されやすいが日常臨床で意外に多い。涙洗で通水は可能だが出血がある、涙点付近に炎症がある、そういった症例では綿棒2本で涙点を圧迫すると菌塊が出てくることがあるので、意識して診察すべきである。(自分もかなり見逃していると思った。明日から気をつけたい。) このように3題とも本当に勉強になり、明日からの毎日の診療ですぐに役立つエクセレントな内容でした。頑張って八幡浜から出かけて良かったです。
2011.11.23
先日のことですが「遠くも近くも見えないので眼鏡屋さんで何回もメガネを作り変えたんだけど、どうしても合わないので、ぴったりのメガネの処方箋を出して欲しい」との訴えで、高齢の女性が受診されました。 「とりあえず、今お持ちのメガネを見せていただきましょう。」と言うと、出るわ出るわ、メガネが4つも5つも出てきます。「これは遠近両用で作ったけど、頭がクラクラと痛くなるので使っていない」、「これはアーケードの中の人気のあるお店でしばらく前に作って一番マシだけど、でもやっぱり満足はしていない」、「これは近所に移動眼鏡屋さんが来てくれたので、行ってみたらメガネ作ってくれたんだけどあんまり合わない」、「これは大手チェーンの眼鏡屋さんで最近作って貰って、その時に合わないようなら眼科に行って処方箋を出して貰ったら無料でレンズを交換してあげると言われたやつなんだけど、キツイ感じのするメガネで使っていない」など、1つ1つチェックして見たのですが、どれも度数にそれほどの差があるわけではなく似たようなメガネです。 そこで目の方を診せて頂くと、白内障が高度に進行してしまっておりそれで目の力が落ちて、どのメガネをかけても見えない状態になっていたのでした。患者様は「見えないのはメガネが悪いせいだ」と思い込まれていたのですが、悪かったのはメガネではなく目の方だったんですね。こういう患者様は本当に良くいらっしゃいます。 眼鏡屋さんに行って「メガネが合わないんだけど」と言えば、眼鏡屋さんは喜んでいくらでもメガネを作ってくれます。なぜならそれが仕事だからです。 でもそれは、 床屋さんに行って「ねえ、髪の毛切ったほうがいいかな?」と質問するのと同じかもしれないのです。 床屋さんは髪を切るのが仕事ですから「切ったほうがいい」と答えるに決まっていますよね。(笑) つまり、メガネで目の全ての問題が解決するわけではないということです。何回もメガネを交換しても見え方が良くならない時には、ぜひ眼科専門医の受診も検討してくださいね。
2011.11.18
今日の日記は、久々に第65回日本臨床眼科学会参戦記の続きです。 さて歴史ある第65回日本臨床眼科学会のプログラムも全て終了しました。学会終了の開放感と安堵感、高揚感に包まれながら、私は銀座の街に出てブラブラとランチスポットを探します。 穏やかな秋の日差しを受けて幸せな気分になりますね。 歩いていると、贈答用のフルーツで有名な銀座千疋屋(せんびきや)に偶然辿り着きました。 ランチをしているようなので早速入ってみました。 珍しいメニューもありましたが、保守的な私は普通にランチを注文します。(笑) ランチメニューの「エビとアボガドのトマトクリームスパゲティ」も美味しかったですが、 食後に付いていたミニパフェが絶品でした。流石、銀座千疋屋ですね。 美味しい御昼御飯を済ませて、もう少し銀ブラを続けます。(臨眼参戦記は後少しだけ続きます)
2011.11.13
さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09
しばらく前に朝のニュース番組をテレビで見ていると、「常識チェンジは何故起こる?」という興味深い特集をしていました。 この中では新しく常識になった例として、ハチに刺されたらおしっこをかけるのではなく冷やして病院へ行くこと、鎌倉幕府が開設されたのは1192年(イイクニ)ではなく1185年(イイハコ)に変わったこと、などが紹介されていました。 私も「へーえ」と思いながら見ていたのですが、その中で偶然眼科の話がありました。それは、「水泳後の目の洗浄はほどほどに」というものでした。その内容を具体的に見てみましょう。 番組ではあるスイミングスクールで、子供たちが水泳後に目を洗わないことが常識となっていることがまず報告され、それに出演者が驚いて「どうして?」と疑問を持つという流れでした。 そこで眼科学会の偉い先生が登場し、 プール後の目の洗いすぎが良くない理由を説明しました。 我々の眼の表面と言うのは、上から油層、水層、ムチン層(分かりやすく言うと納豆のネバネバのような層。眼の表面を守るのに重要な役割をしている)の3層があるのですが、目を洗いすぎるとこのムチン層が剥がれ落ちてしまい、 そこにバイキンが付きやすくなってしまうのです。 そのため大切なことは、水泳をする時には必ずゴーグルをつけて雑菌の多いプールの水が目に入らないように予防した上で、目の洗浄はほどほどにする、ということなんですね。 ただこの話で難しいのは、実は学校の教育現場では「水に慣れさせる」目的でゴーグルの使用を禁止し、付けずにプールの中で目を開かせる、という我々眼科専門医からすると卒倒しかねないような、危険で野蛮な行為が平気で現在でも行われているという事実があるからなんですね。ゴーグルを付けずにプールに入るのであれば、その後に軽く洗眼することは理にかなっている部分があります。 本当はゴーグルさえしていれば「水泳後の目の洗浄は不要」が正解なのですが、学校現場の実態を踏まえて「水泳後の目の洗浄はほどほどに」を正解としているのです。 ちなみに、私の日記ではすでに2009年の4月に、プール後の洗眼は悪影響 という題で、水泳をした後に目を洗うことは効果が無いばかりか逆に危ないということをお伝えしています。 以上をまとめると、 1. プールに入るときは必ずゴーグルをする。その場合は洗眼は不要。 2. 学校の先生が「ゴーグルしたらダメ!」と言うときは、仕方が無いのでプールを出た後に軽く目を洗う。 のが正解ということになります。皆様もこの「眼科の新常識」、是非覚えて置いてくださいね。
2011.11.07
さて第65回臨眼参戦記の続きです。10月10日(月)の続いてのインストラクションコースは、 「緑内障専門医養成講座 正常眼圧緑内障診断力のブラッシュアップ」でした。大変人気のある講座で立見の人もたくさんいましたね。 緑内障の診断には近年飛躍的に進歩したOCTという器械が絶大な力を発揮します。OCTの凄さについては 以前の日記 でも書いていますので、是非ご覧下さい。ちなみに当院では日本のトプコン社の名機3D OCT-2000を昨年導入済みです。 その早期診断力は抜群で、率直に言って我々眼科専門医の能力を既に超えています。そのため、緑内障診断で一番大切なことは「緑内障センサー」をアップさせて、少しでも怪しいと思ったらすぐにOCT検査をする、ということになっています。この1・2年で劇的に変化した部分ですね。 それ以外では、視野検査データを徹底的に読み込む技術 患者様が疲れたり寝てしまったりして(視野検査というのはしんどい上に単調で眠くなるんですね)きちんと正確に検査できなかった場合の視野結果のバリエーションの解説など、バラエティ豊かな内容でとっても勉強になりました。(続く)
2011.11.04
さて学会は10月10日(月)の最終日となりました。最初に参加したのは、 「レーシック術後集団感染の事例から倫理を考える」というインストラクションコースでした。 数年前に東京の某眼科で屈折矯正のレーシック手術の術後に多数の感染性角膜炎が発症したという事例があったのですが、それに関してどのような倫理上の問題があったのか?を分析するものでした。 手術に絶対はありませんし、不幸にも術後に感染症を発症する可能性というのはどうしても0%にすることは出来ませんが、上記の施設では感染症発生後も感染源の原因究明をせずに5ヶ月間に渡って手術を続けて被害を拡大させたこと、手術の利点・欠点を説明する「インフォームドコンセント」を全く行っていなかったことが問題だったとの指摘がありました。私も自ら手術をする立場ですし、これからも常に最善を尽くし細心の注意を払って行かなければならないと痛感しました。 さて、今日はそのレーシック手術の利点・欠点をまとめておこうと思います。 まず利点ですが、 1. 手術の痛みがほとんどなく、完成度の高い術式であること。 2. そのため術直後より良好な視力が出ることが多いこと。 3. メガネ・コンタクトレンズから開放されること。 4. 初期コストは高いが、長期的に見るとメガネやコンタクトに較べて割安になること。 5. 視力の長期予後も悪くないこと。 あたりかと思います。 次に欠点ですが、 1. 手術できる方には限界があること(近視が強すぎたり、円錐角膜といって黒目の形が特殊な方は危険が高くてできない)。 2. 術後にドライアイ症状が悪化することがあること(角膜知覚の低下による。ただし一般的には6~12ヶ月で回復する)。 3. 角膜拡張症(keratectasia)という、術後に黒目の一部が飛び出てくる重篤な合併症を起こすことが稀にあること。 4. 術後に感染症を起こす可能性が今回の事例のように0ではないこと。また角膜の一部を削り取ってしまう術式のため、術後には元の状態に戻せないこと。 5. 角膜が薄くなるので、術後に眼圧測定値が低く出る(平均2~5低下)ようになること。それにより将来的に緑内障を見逃されたり、緑内障の治療効果の判定が困難になる可能性があること。 などがあります。 いずれにせよ、レーシック手術と言うのは健康な状態の眼にメスを入れる、美容外科的な要素の強いものですので、しっかりした実績・十分な説明と同意・術後のしっかりしたメンテナンス体制のある施設で受けることが必要と思います。
2011.11.02
さて10月9日(日)午後のセッションは、「OCTの読み方」というインストラクションコースに参加しました。 OCTというのは目の中を3次元で解析する装置で、今や日常診療に無くてはならないものです。眼科専門医として現在最も注力して勉強しなければならない分野の一つですね。 さて一日の勉強が終わって会場の外に出てみると、すっかり日も暮れていました。なんだか屋台がたくさん並んでいます。学会のプログラムを見直してみると、 なんと、たくさんの屋台は学会参加者への無料のおもてなしの一つだったのです。 美味しくビールとおつまみを戴きます。爽やかな秋風に吹かれて学会の夜は過ぎて行きます。。。。。。(続く)
2011.10.31
さて10月9日のお昼は、友人の先生と銀座の街を散策して食べることになりました。「銀ブラ」ですね。滅多にしたことがないのでちょっと嬉しかったです。でも入ったのは何故か「北海道スープカレー」のお店でした。せっかくの銀座なのに変ですね。(笑) でも、2人とも野菜が大好きなので何故か意見が一致したんですね。 食べ終わって街を歩いていると、銀座のアップルストアの前に人だかりが出来ていました。 アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブス氏の死を惜しんで、多くの方が献花をしていたんですね。 私も以前はパソコンはマックユーザーでした。世界は時代を変えた天才を失くしたんだなあ、と実感しましたね。
2011.10.28
さて10月9日(日)午前中には、「近視予防の最前線」というシンポジウムに参加しました。 近視というのは世界的に見て我々日本人を含むアジア人に多いことが元々知られています。ところが例えばアメリカでも1999~2004年の近視の頻度は1971~1972年のなんと8倍!に増加しています。つまり、近視と言うのは世界的に増えているんですね。これはパソコンの急激な普及等で眼を酷使することが増えたのが原因の一つだろうと言われていますが、はっきりとした理由は分かっていません。 そして近視の中でも特に度の強い「強度近視」になると、網膜の萎縮・出血・はく離や緑内障などの眼の病気を起こす確率が跳ね上がることが以前から指摘されています。 そのため、いかにして近視の進行を予防するか、というのは大変重要なテーマとなってきています。このシンポジウムでは近視予防メガネやオルソケラトロジーによる近視進行予防効果の具体的なデータの発表があって大変勉強になりました。ただ、どの手法もまだ決定的!と言うほどの効果はないという印象も持ちました。 近視の進行のメカニズムはまだ完全には解明されていないのですが、現段階で注意できることもあります。それは、「度の強すぎるメガネは絶対にかけない、できれば少し弱め・ゆるめの度のメガネにする」ことかと思います。というのは、「度の強すぎるメガネの装用は近視を進行させるリスクファクターである」ということはどうも間違いなさそうなんですね。
2011.10.26
今日の日記は「第65回日本臨床眼科学会」参戦記の続きです。 さて本屋さんで思わぬ時間を取られた私はようやく器械展示場へたどり着きました。 臨眼の最大の楽しみの一つは実はこの広大な器械展示場かもしれません。1年で最も参加者の多い学会なので、それに対応して各検査・手術器械メーカー、製薬会社などが大量のブースを出店しているんですね。 会場にはこのように巨大な目薬のボトルが飾ってあったりして、歩いているだけでも楽しいです。ちなみにこの「ネバナック点眼液」というのは最近発売された白内障術後用の炎症を取る目薬なのですが、効果抜群の名薬です。ただし名前の通り、「点し心地がネバい」という弱点があり、患者様によっては点眼を継続できないこともあります。「いい薬にはそれなりに欠点もある」ことが多い、それが「目薬の法則」なんですね。 さて、器械展示場では日本の二デック社の「OPD-Scan III」という、角膜(黒目)の形や屈折力を調べる装置を見るのが目的でした。今年は新しい白内障手術器械を買ってしまったのでもう予算が厳しいのですが、来年以降で何らかの角膜形状解析装置のクリニックへの導入を目指しているんですね。 会場をウロウロしていると、私と同じようにランチョンセミナーの整理券を取れず失意に沈んでいる先生に偶然出会いました。お昼御飯は銀座の街に食べに行こうと約束して、ようやく本来の学会の目的であるシンポジウムに向かいます。(続く)
2011.10.24
当院では院長の私を含め全員が名札を付けています(当たり前ですが)。名札をつないでいるプラスチックの部分が切れてしまったので新しいものに交換しました。 名札にはスタッフが可愛くデコレーションをしてくれたのですが、 ↑ なんだかアザラシがたくさん貼ってあります。 私が「これはもしかして、私の体形がアザラシに似ているから?、、、、、」と質問すると、 「違います(笑)。今、アラちゃんとか、アザラシが流行っているからです。」とのことでした。あー、良かった。 ちなみに写真の上側の白いのが子供のアザラシで、下のゴマっぽいのが大人だそうです。しばらくはこの「アザラシ名札」で患者様とお会いすることになりそうです。
2011.10.21
お昼の弁当権利を取り逃し、失意の中で学会場地下の器械展示コーナーへ向かった私は、途中書籍展示コーナーを発見します。学会場には医学書専門の本屋さんが出張店舗を出しており、たくさんの専門書を同時に見比べて検討・購入できるのでそれも楽しみの一つなんですね。 すると、そこで偶然私は勉強熱心で教科書マニアで有名な先生に出会います。その先生と色々話しながら結局2冊の専門書を買い求めました。 このように、良い教科書に出会いやすいのも学会の魅力の一つです。特に今回の臨眼のような大きな学会だと出張している本屋さんの規模も大きくて嬉しいんですね。 「学会と言うのは、そこに参加しているだけでどんどん賢くなる」という面があり、だからこそ我々医師は本能的に学会に行きたがります。同業者から見て腕の良い医者ほどそうですね。なので、学会は決して「夜の課外活動」ばかりが目的というわけではないんですね。(笑)
2011.10.20
さてようやく学会場にたどり着いたわけですが、東京国際フォーラムは本当に広いんですね。毎回その大きさに圧倒されます。 受付を済ますと、 ↑ 学会では毎回上記のような「コングレスバック」というものが戴けます。会場で各種資料を入れて持ち歩くためのバックなのですが、学会が終わってもエコバックとして使えますし、可愛いデザインのものが多いので学会の楽しみの一つなんですね。 そしてそれに勝る学会の大きな楽しみが、 お昼の「ランチョンセミナー」です。工夫を凝らされた美味しいお弁当を食べながら勉強できるもので、私は毎回とっても楽しみにしているんですね。 このランチョンセミナーは事前に整理券を取らないと入ることが出来ません。少し寝坊して会場に到着した私は真っ先に配布所に向かいます。というのは、人気のあるセミナーから売り切れになってしまうことがあるんですね。。。。 ところが配布所に到着してみると、なんと既に全てのセミナーの整理券の配布が終了してしまっていました。 今回の臨眼には主催者側の予測を上回る8000人を超える参加者がいたとのことで、いつもの感覚だと間に合う時間でもアウトだったんですね。 寝坊した自分が悪いのですが、出鼻をくじかれ失意にくれる私はフラフラと地下の器械展示コーナーへ向かいます。そこには無料のドリンクコーナーがあるはずで、今後の作戦を練り直そうとしたのです。すると、、、、、(続く)
2011.10.19
さてブルーノート東京でのライブが終わって地下鉄の表参道駅へのんびり歩いて向かっていると、すでに夜の11時くらいというのに、 深夜営業の靴屋さんがありしかも凄い人だかりです。首都東京の持つパワーに圧倒されますね。 地下鉄駅のそばには珍しいポスターが。やっぱり日本の文化・経済の中心地は東京なんだなあ、と実感します。 さてホテルでゆっくり眠って、10月9日(日)の朝御飯です。私は1泊1万円ちょっとの格安プランで泊まったのですがしっかりと朝食も付いていました。東日本大震災後には東京の日系の高級ホテルは軒並み稼働率の低下に苦しんでいるという話がありますし、それが割安な宿泊プランの出現に関係しているのかもしれないですね。 さてちょっと朝寝坊をしてしまったこともあり、急いで学会場へ向かいます。ホテルは新橋駅直結のロケーションで、線路の高架下に沿って有楽町駅までトコトコと1駅歩きます。 さて、ようやく学会場の東京国際フォーラムへ到着しました。 ところが、この後私を思わぬ悲劇が襲います。それは、、、、、、、(続く)
2011.10.17
さて先週末は眼科の世界では1年で最大のイベントである、第65回日本臨床眼科学会(以下、臨眼りんがんと略す)へ参加してきました。 学会は10月7日(金)~10月10日(月)までの4日間をかけて盛大に行われたのですが、私は10月8日(土)の午前中までは外来診察を行ったために、10月8日の夜になってようやく東京に到着しました。私がクリニックを開業している愛媛県八幡浜市は四国の左隅に位置し、最寄の松山空港まで車で1時間30分はかかる(高速道路も全部はつながっていません)ので、東京に行くというのはなかなか大変なんですね。 宿泊したのは、会場の有楽町の東京国際フォーラムからは歩いて15分ほど離れた「第一ホテル東京」でした。私はいつも地元の「共盛社」というとっても親切な旅行代理店で色々な手配をお願いするのですが、たまたま安い料金プランが出ていたとのことでお勧めされたんですね。1泊1万円ちょっとだったのですが、着いてみると立派な高級ホテルでびっくりしました。 さてこの日は学会終了までに会場に到着できないことはあらかじめ分かっていたので、表参道にある「ブルーノート東京」というライブハウスに出かけることにしていました。 この日のライブは、ブラジリアン・シンガーのタニア・マリアさんでした。パワフルなステージで定評のある方で実際に素晴らしい内容でしたね。 このブルーノートでは美味しい食事をしながらライブを観れるのですが、それがまた楽しみの一つなんですね。 久々の東京の夜が楽しく更けて行きます。やや遅れての参戦となったものの明日からの学会が楽しみですね。。。(続く)
2011.10.15
さて当院では新型白内障手術機械のインフィニティを購入したところですが、今日は製造販売元の日本アルコン社のサージカル担当の方にお願いして、A-Vit(エービット:前部硝子体切除)の勉強会をしました。 このA-Vitというのは、白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合にトラブル処理に使う機械です。登場頻度は極めて低いのですが、だからこそ事前の入念な準備が必要なんですね。 本物のセットを開けて、インフィニティに接続して使用してみます。 このインフィニティには、アキュラスという硝子体(しょうしたい:目の奥のドロドロした物質)切除用の本格的で切れ味の良いカッターをつなぐことが出来ます。しかも25Gという極めて細い最新型の物が使えます。傷口を拡大せずに小さな切開創から使用できるので患者様の負担も軽いんですね。 ただ、インフィニティで唯一問題なのは、A-Vit使用時に毎回「Vitrectomy Cut I/A」モードを選び直さなくてはならないことです。元々の設定が「Vitrectomy I/A Cut」モードになっており、これを修正できないんですね。 A-Vit時には、必ずCut→I/Aモードを最初に使用する必要があります。I/A→Cutモードを先に使うと網膜はく離などの重い合併症に繋がることがあるので要注意なんですね。 素晴らしいマシンであるインフィニティがこんな単純なおかしな設定を修正できないというのは不思議な気がするのですが、サージカル担当の方によると「アメリカでは専門が別れているので、白内障手術専門医は本当に白内障しかしない。トラブルが発生して追加のA-Vitが必要になるとそのまま硝子体手術専門医に送るシステムになっておりあまりA-Vitを使わないので、多分そのせいで細かい設定に大らかで気にならないのでしょう。」ということでした。 うーんなるほど、機械を通してその国の医療システムが透けて見えると言うことなんですね。とっても勉強になりました。
2011.10.13
本日の日記は眼科専門医向けのやや特殊な内容となっております。ご了承下さい。 さて、白内障手術と言うのはテレビ等でも喧伝されているようにほとんどの場合は短時間でうまく行くわけですが、我々手術する外科医側から見ると、それぞれの工程での一つのミスが命取りになることもあり、術中は全く気を抜くことが出来ません。 これは白内障手術というものが極めて完成度が高く無駄がないものとなっているためですが、そのため手術終了後には毎回「廃人同然」というくらいの疲労感に襲われます。毎週極限の緊張感・ギリギリのストレスポイントの中で戦っているので、我々白内障手術専門医は常に覚醒して持てる能力の全てを発揮しなければならない状態で働いており、だからこそ患者様にとって最善のクオリティの高い眼科医療を提供できていると言う部分もあります。 さてこの「患者様には優しいが、手術する側から見ると余力が少なく厳しい」白内障手術を実際に行うに当たっては様々な無数の注意点があるわけですが、手術に臨むその瞬間にたくさんの注意点を同時に思い浮かべることはなかなか出来ません。そのため私は大切なポイントに絞り下記の3つのことに気を付けています。 1. なるべく大きなCCC(水晶体の前嚢という袋の表面をめくる手技のこと)を作る。 2. 短めの強角膜切開(白内障の手術操作のための傷口のこと)を作る。 1は、ハイドロダイセクション時のCBSを防ぐこと、US中の前嚢チョップを防ぐこと、術中の操作性を上げること、様々な効果がありますし本当に大切です。 2は、術中の操作性が良くなり、結果としてOPの難易度が下がり安全に施行することが出来るのでこれまた大切です。切開(3面)が長すぎると、角膜に皺が寄って極端に視認性が落ちたりとOPの難易度が急激に上がったりすることがあるので、常にそうならないように気を付けるべきです。 そして、上記の1.2を確実に実現するためには、 3. 常にZ軸(目の縦軸方向)を意識してOPをする。 ことが大切です。CCCの最初の穿孔についても十分な角度が無いと池田式CCC摂氏がうまく刺さらないですし、強角膜切開の4面の穿孔時にもZ軸方向へのベクトルはやはり必要です。またUS中に適切な高さで核を処理するのにもZ軸の意識は大切ですし、最後のIOL挿入にしてもZ方向へのベクトルがなければ永遠にクルクル回ってしまうということにもなりかねません。 このようなシンプルな原則を胸に、そして万一のトラブル発生時には多くの引き出しから適切で最適な選択肢を選び取れるように、これからも毎日の勉強を続けて行きたいと考えています。
2011.10.11
さて明日10月7日(金)から10月10日(月)までの間、東京国際フォーラムで「第65回日本臨床眼科学会 通称:臨眼(りんがん)」が開催されます。 この臨眼、眼科では最大規模の学会であり、我々眼科専門医にとっては「1年で最大のイベント」です。現在日本には約13000人の眼科医がいるのですが、その半分は臨眼に参加するほどなのです。もちろん私も参加しますが、外来診療のほうは10月8日(土)まで通常通り行いますので御安心下さい。 ところでこの臨眼なんですが、先ほども書いたとおり全国の眼科医の約半数が学会に参加します。そのため、この期間中に目の大怪我や網膜剥離などの重い病気になってしまうと、緊急手術をしてくれる病院がなかなか見つかりません。実際私も数年前に臨眼開催中に緊急手術の必要な網膜剥離の患者様が来院され、搬送先が決まらず大変困ったことがありました。 ですので、「目がどうもおかしいんだよなあ」と感じている方がいらっしゃいましたら、是非早めに(明日ならまだかなりの眼科医は地元に残っていると思います)お近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2011.10.06
さて数年前から「出る出る!」と言われながら実際にはなかなか登場せず、一部では「出る出る詐欺だ!」とまで言われていた(笑)、ドライアイの大型新薬「ムコスタ点眼液」がついに近日中に登場します。 我々の涙には「油層・水層・ムチン層」という3つの層があります。その中の1つ「ムチン層」は、一番内側に存在する層であり、角結膜(黒目と白目)の表面を覆って涙液層を親水性にして、目を乾燥から守るバリアの役割をしています。 涙のムチン量が減少することでムチン層を覆う水層が不安定になってしまい、ドライアイ発症原因となります。この『ムコスタ点眼液』は、角膜や結膜ムチンの産生を促すことによって涙の安定性を図り、ドライアイに治療効果をもたらす点眼液です。 このムコスタ点眼液、まだ発売前ではありますが、私はまず間違いなく名薬だろうと思っています。 というのは、『ムコスタ点眼液』の有効成分「レバミピド」は大塚製薬が自社開発したもので、内服薬としてはずいぶん以前から発売されています。そして、胃潰瘍や胃粘膜病変に抜群な効果を発揮するベストセラー薬として知られています。 内服で良い薬は、目薬になっても良い。 これはほぼ外れたことのない、 目薬の法則 なのです。 先行して発売されている参天製薬のドライアイ新薬のジクアス点眼液 に続いてこのムコスタ点眼液が発売になれば、日本のドライアイ治療は更に進歩することになるでしょう。同じ「ムチン産生促進薬」であるジクアスとムコスタ、果たしてどちらがより効くのか? 非常に興味深いですし、発売後のガチバトルが楽しみですね。
2011.10.03
さて前回の日記の続きですが、最終的には日本アルコン社の「インフィニティ」というマシンを購入しました。 このインフィニティは、白内障手術機械の歴史上最も多く売れ、現在世界で最も多く使用されているマシンです。発売は2003年と古く既にモデル末期なのですが、この8年間続々と新機能が搭載され、絶え間なくアップグレードされてきたことにより未だに高い戦闘力を誇っています。その最大の特徴は、 通常の白内障手術機械が、水晶体を削るための超音波が縦にしか出ないのに対して、このインフィニティは横にも出るということです。 そして横に出る超音波というのは、縦に較べて効率が良い上に目へのダメージが少ないのです。ただ、横発振だけでは機械が詰まったりすることもあったのですが、 数年前にOzil IP(オジールアイピー)と言って、横発振だけでは無理な場合に必要な時のみに縦発振を入れることが出来るようになり、その欠点もほぼ解消しました。 ここで何故私が最終的にインフィニティを選んだのかをまとめておきます。 1. どのマシンもそれぞれに特色があり選択は困難だったが、発想を変えて「もしも値段が全部一緒だったら自分はどれを買うだろう?」と考えたときに、インフィニティが一番だった。総合力で他社を上回った。 2. インフィニティは発売後8年が経過し、その間に欠点・弱点を一つずつ潰してきておりとにかく完成度が高い。良く「輸入車買うなら、熟成度の高いモデル末期を買え!」みたいな話があるが、まさにそれと同じ状況だった。 3. 私の開業しているエリアは高齢化率が極めて高く、そのために白内障が非常に進行した患者様が多い。そういった進行した「固い核」に対して、やはりインフィニティが他社に対して相対的に優れていた。 ということでした。ただ、他社のマシンにもそれぞれに良い所はありました。ボシュロム社のステラリスは通常の核の固さの症例であればその前房(目の中の手術スペース)の安定性は驚異的でインフィニティを全く寄せ付けないレベルでしたし、アボット社のシグネイチャーもスペックが高くダブルポンプ搭載で本当に良いマシンでした。また唯一の国産ニデック社のフォルタスも基本性能に磨きをかけ実力のあるマシンでした。 最終的にはボシュロム社のステラリスと日本アルコン社のインフィニティの2つが残り、最後の最後まで悩みました。率直に言えば、通常レベルの白内障であれば、手術の快適度・ストレスの少なさはステラリスに軍配が上がると感じました。ステラリス、本当に驚異的に良いマシンと思いました。ただ進行した白内障になるとインフィニティに軍配が上がることと、ステラリスはデモさせていただいた期間が短くて自分用のセッティングを煮詰めきれないまま最終判断せざるを得なかったこともあり、今回はインフィニティを選びました。 ディーラーの吉田メディカル様、アーガス様、また機械メーカーの日本アルコン社様、アボット社様、ボシュロム社様、ニデック社様、本当に有難う御座いました。私はこれからニューマシンを得て、今まで以上に安全な白内障手術を提供できるように頑張って行きたいと思っています。
2011.09.29
さて当院では、この半年程をかけて様々なメーカーの新型白内障手術機械をデモさせて戴きながら新規購入を検討してきたのですが、この度ついに購入マシンが決定しました。 購入候補は、日本アルコン社の「インフィニティ」 アボット社の「シグネイチャー」 ボシュロム社の「ステラリス」 唯一の国産、ニデック社の「フォルタス」 の4つでした。どのマシンも現在私が使用しているCV7000よりは様々な意味で大きく進化しており、その選択は楽しくも苦しいものでした。 そして、私がこのいずれも魅惑的な4つの中から最終的に買ったマシンは、、、、、、(続く)
2011.09.27
今日の日記は眼科専門医向けのやや特殊な内容となっております。ご了承下さい。 さて、この数年のことですが、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)というおしっこの出方が悪くなる病気で、治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増しています。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多いのですが、これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されています。 泌尿器科の先生にとってはありふれたお薬で、非常にカジュアルに気軽に処方されているのですが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こすことが知られています。 これは、お薬の影響で虹彩(茶目)がフニャフニャになってしまい、術中の水の流れでうねったり縮んだりして手術が難しくなることを言うのですが、その症状がシビアな場合には手術の安全性に関わることもあり、我々白内障手術専門医の大きな悩みの種となっています。 これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからなのですが、α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できることが知られるようになってきました。ただし、そのためにはミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけません。また、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っていますが、原液でないと前房(目の中)内濃度が足りないし、そのミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理です。 ただ、身近なところで出来る範囲でもこのIFISを予防する手段は色々あります。今日はその対策を個人的メモ書きとしてまとめておきます。 1. そもそも白内障手術前に、α1遮断剤を飲んでいないかをしっかり確認する。割と「そういえば泌尿器科の先生に内服開始を勧められている」ということも多く、その場合は先に手術をさせて貰えば良い。また、現在α1遮断剤を内服中の場合、休薬してもIFIS発症は予防できないというデータが多いが、個人的な臨床体験からは「休薬すると少なくともパワフルなIFISはほとんどない」のも事実であり、症例の難易度によっては可能であれば一時的な休薬をお願いすることも魅力的なオプションだと思う。 2. 実際の手術に際して1番効果があるのはこれ。新品のネオシネジン点眼液(フェニレフリン)を1mlシリンジに吸っておいて、手術の洗眼後に結膜下注射しておく。その量は0.1mlくらい、感覚としては少し結膜が膨れるくらいで十分で、これでIFIS発症率を大幅に減少させることが出来る。 3. 散瞳不良症例はIFIS発症の可能性が高いので、必要に応じてBSS2.5mlにMP1滴入れてそれを前房内投与する。(ただし想定リターンがリスクを上回る場合のみ) 4. それでも無理で術中にパワフルなIFISを起こした場合には、前房形成能の高いヒーロンVを適宜使用する。(ただし個人的にはヒーロンVにはあまり過度な期待を抱かない方が良いと考えている) 以上です。これからもより安全で効果的なIFIS対策を追い求めて行きたいと考えています。
2011.09.25
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