型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2019.06.09
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カテゴリ: 新しいこと
「好きな作曲家は誰?」と聞かれたら、
迷わずアルフレート・シュニトケを挙げます。
彼の音楽は本当に身に染み入るからです。

旧ソビエトの作曲家はどれだけ苦労したのでしょうか。
とてつもなく暗いのだけど、だからこそ素晴らしい音楽がたくさん生まれました。
基本的に平和な世界でも暗いニュースはありますが、
自分に押し迫る労苦はその比ではないのだと感じます。
音楽で人を救うことなどできない、
その悲しみを実体験として音楽にしたのではないでしょうか。


シュニトケは多様式主義でモーツァルトのような曲から、
プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、より新しい不協和。

シュニトケは、心ある普通の音楽をつくれる作曲家でしたが、
あえて受けるストレスで新たな多様式スタイルで闘いました。
想像するに、彼は出せるものをその時々で出しかなかったのです。
だから曲の幅広さが他の人には理解できません。
これぞ芸術なのですが理論を体系化できる文献はありません。
しかし、これを体系化する必要はあると思います。
シュニトケは不協和音を自分のシステムとして世界をつくらずに、
それをハプニングかのように万人が「あれ、おかしい」と思えるような、
未完成の状態で音楽を提示しました。




シュニトケはなぜこのような「聖しこの夜」をつくったのでしょうか。
現代の日本でこれをクリスマスにかけても誰も喜ばないでしょう。
このようなパロディがおもしろいというくらいだと思います。

ハプニングやアクシデントを音楽に表した作曲家は他にもいて、
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、チャールズ・アイヴズ、

日本では柴田南雄、水野修孝がいます。
中でもシュニトケは筋金入りの芸術です。

シュニトケの作風とはともかく何でもありのグローバルなもの。
その洗礼を受けるのが交響曲第1番です。
冒頭、このチャイムはどうやって叩いているのだろうとか思います。
5’18”までは並々線の楽譜でカオスを演出したところ拍手まできます。
しかし、ここまでは普通の現代音楽。
そこからも割と楽しい部類の現代音楽が続きますが、
時折協和音やどこかで聴いたことのあるような音が断続的に現れ始めます。
遂に18'20"頃からおかしくなり始め、20’10”にはベートーヴェン「運命」が現れます。
23'からはバロック様式に、そしてロシア趣味なマーチなどが現れた後、
27’55”には完全にジャズになります。
多様式を超えてジャンルも超えています。
これはちょっとやり過ぎな感はもちろんあります。




このような多様式を特徴としていたシュニトケですが、
映画音楽もたくさん書いており、単なる変人ではないということがわかります。
従来の非和声音、どんなに音をぶつけても音楽は健在であり、
そのぶつかりこそが芸術なのです。




Agonyとは「苦しみ」という意味です。
こんなタイトルは今の人は誰も喰いつきません。
だけどそれが芸術で、暗いとか明るいとかそんなことは芸術に関係ないのです。
第1曲の4'30"まででいいのでとにかく聴いてください。
3’21”からの弦楽器が圧巻です。
これでシュニトケがわかります。

1994年に留学先のパリから、
ドイツのハンブルクに住んでいたシュニトケに連絡をしましたが、
当時彼は脳疾患になったところで返信をもらえませんでした。
シュニトケは1998年に亡くなりました。5





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最終更新日  2019.07.01 21:41:12
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