心のポテトサラダ

2006/02/23
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「本多静六自伝 体験八十五年」 本多静六 実業之日本社 星3つ

1冊目を読んだのは、多分中学生の頃で、母親の持っていた色あせた本でした。
小学校の頃だったかもしれません。
株式の事が書いてあったような記憶があります。
結婚前にやっていた株への興味で、母親がその当時買ったのでしょう。

何気なく読んでいた新聞の下の欄の広告に、神田昌典さんの紹介文とともに本多静六という名前を見つけ、久しぶりに読んでみることにしました。

最初本の題名通り、85年の人生を振り返って、明治・大正・昭和の時代背景と、ご自身の歩みを淡々と書かれているものだと思っていましたが、ほとんどが大学に奉職するまでの30年間の記述でした。
苦しい生活の中に、工夫を見つけ、家計からはとても出来そうもない勉学の道に、お金を工面しながら歩んだ努力が書かれていました。

人生の最期の時期に書かれたエッセンスが、仕事につくまでの勉学時代の事で、「人生日々努力」を最も濃く体験した時代だったのでしょう。

この本を読み終えて、私の恵まれた環境を再認識し、どんな環境でも、コツコツ頭を使って工夫すれば、なんでも成し遂げることができる人間の能力の大きさを感じました。
暴れん坊のガキ大将が勉強に目覚め、農繁期は実家で仕事をしながら、農閑期は東京に出て勉強をする。
士官学校出などの優等生に混じって大学にビリで入り、とうとう半年留年してしまうが、その後のがんばりで半年早く卒業を迎えるまでになり、さらに席次1番になる。

裕福な跡取り娘に婿をもらおうという家があり、そこから縁談話が来る。
この跡取り娘さんは、日本で4人目の女医さんで、成績優秀、語学堪能の才媛。
これに合う婿は、東大1番しかいないということで、白羽の矢が・・・

まだ結婚したくない本多さんは、お見合いにぼろ服で向かうが、これが反対に気に入られる。
それではと、無理して4人前の大食いを披露すると、これまた、これぐらいでないとと、気に入られる。
ではと、ドイツへの留学を条件に出すと、なんとOK。
何か明治の人のスケールの大きさを感じます。


今度は、自分がこの家を支える立場になってしまう。
こうなれば、4年と悠長な留学が出来なくなり、猛烈に勉強して2年で4ヵ年の単位をすべて取り、博士号までとって日本に帰って来る。

学生時代から交流のある、後藤新平から渋沢栄一まで、各界の大立者との交流とともに、日比谷公園・大学演習林・国立公園・・・多くの仕事をこなした。
その一方で、給料1/4天引貯金・毎日1枚原稿を書くなどの決め事をコツコツ続ける。
やがて俸給よりそちらの利子収入などの方が多くなり、大学教授では考えられない資産を築く。

なんという人生・・・痛快です。

本多さんが外国を見て帰って来ると必ず一席設けて、その話を聞きに来る人が3人いる。
後藤新平は、自分が招待しておきながら、ふんぞり返って目をつぶって寝ているようにも見えるが、その後、さぞ自分が見聞してきたように、さらに大風呂敷を広げて新聞などに発表したりする。
渋沢栄一は、秘書を1人連れてきて、細かくメモを取らせ、納得いかない部分は仔細に質問を浴びせてきてかなわないが、後日それが形になって実現していくのが痛快である。
彼らは、本多さん以外にも、洋行帰りを招いて話を聞いて、安価なネタ元を抱えて自分の仕事に役立てている。

後藤新平はドイツ留学時代にひょっこり尋ねてきて、本多さんがちょうど授業を取っていた、当時世界一と言われていた経済学者の講義に、自分も出られるように斡旋しろと半ば強引。
しかしドイツ語がサッパリ分からないので、今度はドイツ語を教えろというので、後家さんを紹介する。
ところが後藤さん、しばらくすると、紹介した後家さんの家に転がり込んで、半ば後釜のように1日中ドイツ語と接して飛躍的に習得していく。
しかし博士号を取るのに最も大変な経済学で取るのは諦め、元々医者なので、論文さえ出せば取れる医学系の博士号をとる。
それも日本でやってきたものを友人に頼んでドイツ語に翻訳して取ったといういい加減さ。
そう言えば、当の本多さん自身、本職の林学ではなく経済学で博士号を取りながら、奉職は農学部という適当さ。

85年生きてきた方の書く文章だからかもしれませんが、激動の時代ではありますが楽しく読めました。
感じ入った部分もたくさんあり、本多式「幸福について」と「成功の近道」は、なかなかいいもので、この本は、子供達に1冊ずつプレゼントすることにしました。

何か過去にも、本多さんの本をプレゼントしたことがあるようにも思うのですが、まあいいか。
今まで数冊、これはという本をプレゼントしてきた。
これは、親子の力関係から、子供に私の思いを面と向かって伝えてこなかったことへの繕いです。
親は意識しなくても、子供にとっては親の言葉は重いものです。
友人に忠告されたのとは全く違う重さがあります。

子供達には、親のことなど関係なく、自由に世の中を羽ばたいて欲しいと思っています。
親の考えが子ども達の自由を妨げたりしないように、昔の元服である15歳を記念して書いたたった1通の手紙と、他は本のプレゼントでのみ、私のいいなと思うことを伝えています。
この本は、充分にそれに値する本です。





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Last updated  2006/02/23 06:17:10 PM
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のりまき@ Re[1]:引越し の巻(06/10) ものぐさ父さん 日記の内容変化もあり、…
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