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いつもつるんでは問題を起こしていた18歳のマサル(金子)とシンジ(安藤)。ある日、素人ボクサーにノックアウトされてしまったマサルは、ボクシングに目覚め、ジム通いをはじめる。付き合いで入門したシンジも加わり、ふたりは練習に没頭する。高校生活が終わり、シンジはボクシング界の逸材に成長するが、ジムにマサルの姿はなかった・・・。 北野作品は音楽が良い。作品に漂うリズムや間(ま)は、お笑いの舞台で培ってきたものでしょうか。反面、裏目にでるのは、変なところで笑いをとろうとするシーン。コントのような台詞が投入されるのは、残念に感じますが、ラストの清々しい感動を味わうと、そんなこと忘れてしまえるようでした。ふたりの青年の青春物語は、ノスタルジーと爽快さの只中で、繰り広げられていきます。ボクシングに情熱を注ぐシンジ、暴力団に入ったマサル。全く別の道を行くことになったふたりには、それぞれの栄光と挫折が待っています。前途有望な若者の足を引っ張るのは、大人たち。希望ある未来を信じて疑わない、ぐれていても真っ直ぐな彼らは、周りの大人たちから嫌というほど現実を見せられ、将来を挫かれるのです。どうしようもない大人の世界。ここで、これからは勝負しなくてはいけないと知った瞬間が、自分にもあったように、思い出されます。辛い。ツライけれど、ひとつ終わって、また次が始まる。きっと、この先になにかを見つけるであろう、キラリ光る爽快なエンディングが好きでした。主人公たちの生活は、詳しく描かれません。両親たちはいったいどうしてるの? なんて、気にしてはダメ。必要最小限にこじんまりまとまっています。これが北野監督が好きな空気感であり、ノスタルジーなのでしょうね。一連の監督作にある暴力は、監督にとってどんな位置を占めるものなのか、どんな思いがあってのことかは、まだ分からないけれど、作品には愛情を感じます。最後まで見守りたくなる二人の青年の青春が、瑞々しい感動を残してくれました。監督・脚本 北野武 撮影 柳島克己 編集 北野武 太田義則 音楽 久石譲 出演 金子賢 安藤政信 森本レオ 山谷初男 柏谷享助 寺島進 (カラー/108分)
2008.02.29
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『映画行脚』で、淀川さんに引けをとらないほど、沢山の映画をご覧になっていると知った、池波正太郎さんのエッセイ。映画だけについて語ったエッセイを探して、なくて、見つけたのがこちら。衣食住・散歩・映画・仕事・家族・旅・母―――そういった日常のテーマを綴っています。大人のユーモアと懐の深さ。狐狸庵先生こと遠藤周作氏と似た匂いを感じました。テーマは多くても、強く心に残ってくるのは死生観。いつ死んでもいい生き方をする。誰もが思っていても、忘れがちな大事なことを、有言実行してらっしゃるのがよくわかります。戦争を経験した世代は皆そうだろう、というけれど、母に対して、家人に対して、いつ死んでくれても大丈夫、やれるだけのことはしてやった、そう言える人は多くはいないでしょう。自分もちょっと、意識してやってみよう、と思わせてくれました。一週間の中に、必ず映画館へ足を運ぶ、息抜きの時がある。羨ましい映画の観かたをされているなと、思います。生活に占める映画の存在が、確固たる位置を占めていて、何物も譲らないというのが、すばらしい。今度は本職の小説のほうを、いつか手に取り、読みたいです。
2008.02.27
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清朝末期に実在した英雄ウォン・フェイフォンの活躍を描いたアクション大作第一作。列強は中国全土を侵略しようとしていた。武術師範フェイフォンが、人夫の強制徴用をするヤクザとアメリカ代表相手に戦いを挑む。 カンフー映画を観ると、未だに子どもの頃を思い出しわくわくしてきます。ずいぶん気に入って、観て育った香港映画ですが、ブルース・リーとジェット・リーの作品は大人になるまで未見でした。娯楽度の高いジャッキー作品とは違い、大人向けだったからでしょう。今でこそどちらのリーも好きですが、ハリウッド進出前のジェット・リーを観るのは、これが初めてです。長き中国の歴史に西洋文明が忍び寄る、歴史的な変動期を迎えた清朝末期。実在した英雄を主人公に、不穏な世に生きる国民たちの力強い暮らしぶりや、技磨きに余念のない武術家たちの姿を描きます。銃を持った相手にカンフーでどう太刀打ちするのか・・・侍映画にもこのテーマは登場しています。銃が野蛮な武器に思えるのも同じ。守りたい伝統と近代化の狭間で苦悩しながら、正義のために戦う医師フェイフォンは実在の人物。この頃の香港映画には不可欠だった、特有の笑いが懐かしい。お決まりのドタバタや、多用されるスローモーションには、笑いを禁じえません。それでいてカンフーの素晴らしさには目を見張るものがあり、終盤、一対一の師匠対決はそれはそれは立派なものでした。 フェイフォンのもとに滞在している、西洋から帰国したばかりの伯母とは、血の繋がらない関係。互いに好意を抱いていますが、その純情なやりとりが更に懐かしい。この頃のリーの演技は、いまも全然変わっていませんね。個人的に彼の話す英語がかわいくて(としか言いようがなく)好きでした。けれども、出世作となった本作では欧米を憎む主人公を演じながら、自身はハリウッド進出して結局食い物にされた感のある彼・・・なんとも皮肉な作品といえるかもしれません。続編が少なくても4.5作あり、その他に外伝やTVMもたくさん作られているシリーズもの。とりあえずこの一作目が死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれています。(写真右)海岸での訓練シーンで始まるオープニングロールは見事!一見の価値ありです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督・製作 ツイ・ハーク 製作総指揮 レイモンド・チョウ 脚本 ツイ・ハーク ユエン・カイチー 撮影 アーサー・ウォン 音楽 ジェームズ・ウォン 出演 リー・リンチェイ(ジェット・リー) ロザマンド・クワン ユン・ピョウ ジャッキー・チュン ケント・チェン ウー・マ (カラー/120分/香港製作/武状元黄飛鴻)
2008.02.26
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(あらすじ)中世のバラードを題材に、中世的情念の世界を描く。ある日、豪農の娘カリンが教会に行く途中、森の中で3人の浮浪者に出会い、辱められ撲殺されてしまう。屋敷に泊めた3人が彼らと知った父親テーレは復讐を遂げる――――。 豪農の夫(シドー)と敬虔な妻は、修道士の男や多くの使用人たちと豊かに暮らしています。夫婦には年頃の美しい一人娘(ペテルソン)がいて、甘やかしながら慈しみ大切に育ててきました。ある日曜日、遠い地にある教会へ蝋燭を届けにゆくことになったカリンは、お供に、養女インゲリ(リンドブロム)を伴って、笑顔で出かけて行きます。インゲリは身重で、出産間近なお腹を抱え、一日中汚れまみれになって働いている、カリンとは正反対の娘。子の父親はどこの誰とも言わず、望まぬ妊娠を憎み、同じくらい美しい世間知らずなカリンを憎んでいるのでした。ついに憎悪に耐え切れなくなったインゲリは、同行を拒絶し、カリンひとりで薄暗い森を進ませるのです。森で3人の浮浪者に出会ったカリンは、疑いもなく誘われるままに男たちに付いて行き、まんまと手篭めにされてしまうのでした。失意の果てに殺されてしまう。それを物陰から偶然に見ていたインゲリは、止めに入らねばならないと思うのに、日ごろの憎しみがそれを許さず、黙って息を殺ずばかり・・・・ 登場人物みんなが、生まれてから身についてきた言動を繰り広げていくだけなのに、それがすべて、なるべくして悲劇へと向かっていきます。誰にも止められません。カリンを助けることができなかったインゲリにさえ、複雑で強い理由がある。すべてが、神の御業といわんばかりの自然な演出が印象に残ります。日曜日、子羊、最後の晩餐を思わせる食事シーン、天使のようなカリン・・・・。たくさんの暗喩を感じさせる物々は、確実に意識して配置されています。絵画のように額取られて見えるシーンもあり、底にあるのはキリスト教の世界そのもの。様々なものを飲み込んで拡がったキリスト教が、いまこうして敬虔に眼前に現れても、見方を変えることはできませんが、純粋な信仰心は普遍です。そんな思いが湧き水とともに心に満ちる、小品ながら良い作品でした。 † † †監督 イングマール・ベルイマン 原作・脚本 ウルラ・イザクソン 撮影 スヴェン・ニクヴィスト 音楽 エリック・ノードグレーン 出演 マックス・フォン・シドー ビルギッタ・ペテルスン グンネル・リンドブロム ビルギッタ・ヴァルベルイ (モノクロ/90分/スウェーデン製作/JUNGFRUKALLAN)
2008.02.24
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岩井俊二監督が、自身に多大な影響を与えたと語る巨匠・市川崑の半生を独自の視点で描く。アニメーター時代など、貴重な映像も収録。 想像以上に、敬愛する岩井ワールド+ユーモアで溢れていました。声をたてて何度笑ったことでしょう。字幕で綴っていく市川崑の物語は、監督作品に関する知識だけにとどまらず、出生から昨今の仕事ぶりまでを、軽妙な親しみやすさで見せてくれます。晩年の作品はあまり惹かれないけれど、モノクロ時代・カラー初期ものは相当観てみたい気持ちになりました。先日観たばかりの「若い人」「ビルマの竪琴」でも脚本を務めていた奥さんの夏十(なっとう)さんとのお話は、すごく心に残っています。夏十さんの死には、涙が出ました。こんなドキュメンタリー、各監督ごとにあったら面白そうですね~。現役で活躍している若い監督さんが、お気に入りの名匠・巨匠の人生を撮ったら、きっと多くの需要があるのではないでしょうか。とはいってもこちらは、好きな監督が・気になる監督について、撮った作品だからこそ楽しめたんですね。演出は岩井俊二らしくあか抜けています。スタイリシュというか、まさしく岩井ワールド。敬愛の念がずっと感じられて、見る側も心地よい。冒頭。日本映画で一番多く観ているのは市川崑だと思う岩井さん!そうだったの・・・と思いきや。その後にすぐ字幕。―――三島由紀夫はあ。三島さんでしたか。。意外だと驚かされて、苦笑いです。岩井監督が市川崑さんと初めて仕事で話会った数年前、こう思ったそうです。「年の差なんて関係ない この世で一番 話の合う人に出会ってしまった」二人の歳の差はなんと48歳。本当にいい出会いだったんですね。監督・脚本 岩井俊二 プロデューサー 一瀬隆重 出演 市川崑 (モノクロ・カラー/82分)
2008.02.22
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戦争映画にも様々な描き方があって、とびきり悲惨なものも、ユーモアを交えたものも様々。中でも、究極の極限状態を描いた「ノー・マンズ・ランド」は、ユーモアある秀逸な作品でしたが、本作もまた、別の角度から極限を描いた、素晴らしい作品だと思います。1985年のリメイク版は幾度か観ていますが、オリジナルは初めて。ほとんど変わらない構成であっても、幾度目でも胸を打つのは同じ。水島上等兵の極限の思いが切ない。 (あらすじ)1945年夏。ビルマ戦線の日本軍はタイ国へと撤退を続けたていた。井上小隊長(三国)率いる部隊は、水島上等兵(安井)の弾く竪琴に合わせ力強く合唱することで、苦難を乗り越えてきた。やがて終戦を知った彼らは投降し、ムドンに護送されることになったが、水島だけは未だ抵抗を続ける日本軍に降伏を勧めるため隊を離れるのだが・・・。 この反戦映画は、観る人を選びません。どの国も人にも、不条理な死に対する嫌悪と、無常を感じさせると思います。異国の地で命果てた日本人の遺体をイギリス人が弔い、ビルマ人が弔い、他人である水島上等兵が弔う―――。殺し合うのは醜い人間。けれど醜い過ちを犯したとしても、尊い精神を持っているのもまた人間。その両面を持った生き物の、最も美しいところと最も醜いところが描きこまれています。水島上等兵が奏でる竪琴の音と、力強い合唱が、どちらも素晴らしい。魂の込められた音楽は魂に響く、音楽が敵同士の心を繋いでいくシーンは圧巻でした。狂言回しである兵士の回想形式で描きますが、こうするしかなかった水島上等兵の決断に対しては淡白です。きれい事には終わらない。清い心と思ってもとても真似はできない。だからこそ尊い。ビルマに一人残った水島上等兵の気持ちを考えると、とても切ない涙が出ます。関西弁を話すビルマのおばあは、オリジナルでも北林谷栄さんが演じていました。なんだか似ていると思った!お若くて、やっぱり味がありますね~。死ぬまでに観たい映画1001本監督 市川崑 製作 高木雅行 原作 竹山道雄 「ビルマの竪琴」 脚本 和田夏十 音楽 伊福部昭 出演 三国連太郎 安井昌二 浜村純 内藤武敏 中原啓七 北林谷栄 (モノクロ/116分/日本製作)
2008.02.19
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いつの間にか、10年も前の作品になっていました。評判をよく耳にする作品です。(あらすじ)死期を迎えた大物プロデューサーを核に、彼と確執のある息子、妻、看護人、ガンを宣告されたTV人気司会者、その娘、娘に恋する警官・・・。LAに住むさまざまな人間たちの24時間を、群像劇スタイルで不思議な糸で繋いで描く。3時間を越える人間ドラマは、観るのにある程度気力がいります。10人以上の人生のドラマを丹念に映し出しながら、ラストは驚きの展開に。評判となったのは、見事な脚本。それぞれがどのように交錯するかが気になるところでした。これはさすがに予測できない! ああ、びっくりオチは竜巻に違いないと思ったのに(笑) ジェイソン・ロバーズ&ジュリアン・ムーア ジョン・C・ライリー死を間近にした癌に罹った男がふたり。それらを取り巻く人の輪が、情けなくもいとおしく、やかましく痛々しく巡っていきます。悔いを抱いて、それを清算したいと願うとき、周りの人間はどう反応するのか。悔いて繰り返すまいと踏ん張る人々は、なにを見つけるのか。すっきりまとまっていくのを想像していたけれど、大胆な非日常の後でさえ、キレイごとでは終わらない、現実的な日常がほんのりと諦めを漂わせて待っているのでした。これだけの内容ならば、3時間必要だったことも頷けます。演出もちょっと変わっていて、長尺を安定して見せられる、監督は才気溢れる方なのでしょう。でも深く感ずるところはなく、良くも悪くもやはりアメリカを感じてしまいました。いつもは脇役の多い俳優陣が、こぞって好演していたのは好印象。死ぬまでに観たい映画1001本監督・脚本 ポール・トーマス・アンダーソン 製作 ジョアンヌ・セラー 撮影 ロバート・エルスウィット 音楽 ジョン・ブライオン 出演 ジェレミー・ブラックマン トム・クルーズ メリンダ・ディロン フィリップ・ベイカー・ホール フィリップ・シーモア・ホフマン ジュリアン・ムーア ジョン・C・ライリージェイソン・ロバーズ メローラ・ウォルターズ (カラー/187分/アメリカ製作/MAGNOLIA)
2008.02.18
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昨年「ソドムの百二十日」を読みました。怖ろしい内容でしたが、映像になると尚更ショッキング。パゾリーニ監督が本作を撮ったあと、エキストラの少年に撲殺されたことも、変態の極みと言える本作を観れば納得です。撮影現場はいったいどんなだったのだろう。こんな作品が存在していることに、ある意味感慨。ビデオとはいえ、レンタル店に並んでいることに驚きますが、分類は社会派ドラマ。その方面に訴えた作品であることを踏まえて観れば良いのかもしれません。こちらも死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれています。 (あらすじ) サド原作「ソドムの百二十日」の舞台を、44年のイタリアに時代を移して映画化。4人の権力者が、美少年美少女を相手に性的な狂宴を繰り広げる。アナーキーで、グロテスクなパゾリーニの遺作。 史上一位二位を争うゲテモノであるからという理由で、映画好きな方が手に取ることは多いと思います。観ておきたい映画でしたが、やはり気分が悪くなりました。嫌悪感で、2時間がけっこう辛い。ただ良くも悪くも、ここにしかない無二の作品でした。サド=サディスト。ダンテの『神曲』を模範した四つの章で成っている、そのままの作品であります。残虐な行為に及んでいくさま、糞尿を食らうさま、どうあがいても嫌悪感でいっぱいです。この行為は美の追求である―――といいますが。? 追求しているのは本当に<美>なのでしょうか。なにかをとことん追求しているのはわかるけれど、そうは思えない。ナチス蔓延る44年のイタリアが舞台、血も涙もない4人の権力者は当時のファシストと、ラストでダンスに耽る少年警備兵たちはヒトラー・ユーゲントと重なります。原作では18世紀のスイス。設定を変えたニュアンスは伝わりました。監督 ピエル・パオロ・パゾリーニ 製作 アルベルト・グリマルディ 原作 マルキ・ド・サド 脚本 ピエル・パオロ・パゾリーニ セルジオ・チッティ 撮影 トニーノ・デリ・コリ 音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 パオロ・ボナチェッリ ジョルジオ・カタルディ カテリーナ・ボラット (カラー/117分/イタリア・フランス合作/SALO O LE 120 GIORNATA DI SODOMA)
2008.02.14
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客室乗務員のシヴァーニーは、実業家ヴィジャイに言い寄られて以来、彼に付け回される。結婚してもストーカー行為は続き、ついには夫を殺され刑務所送り。そこで女所長の暴行に苦しむ日々を送る彼女は、ヴィジャイが姉と愛娘をひき逃げしたと知り、ついに壮絶な復讐劇を開始するのだった―――「怖いですねぇ~恐ろしいですねぇ~」という淀川さんの声が聞こえてきそうな映画でした。尺が長く、近年の作品ですがローカルな驚きがいっぱいです。インド映画はボリウッドと呼ばれて人気。独自の世界観とインド文化の魅力を再確認しました。ストーカー男の執念と、男のせいですべてを失ったシヴァーニーの復讐劇。過激な血と暴力で、本国では上映禁止になったとか。もっと残虐な作品はいくらでもあるけれど、ここまで情念のこもったやり合いだと、恐ろしさ倍増です。ダンスシーンは3度ほど。無条件に楽しい気分にさせてくれます。表情豊かで可憐で艶やかで。もっと踊って!と思ってしまう。音楽や編集は切れ切れで見苦しい箇所もあるけれど、単純にエンターテイメントの真髄がここにあると思います。ラストまで驚かされてあっぱれ。どこまでもダークでしたが楽しかった。確固たるらしさを持つインド映画の、豊かな文化を思いました。† † †監督 ラーフル・ラワイル製作 リーター・ラワィル脚本 スタヌー・グプター撮影 サミール・アールヤ音楽 アーナンド・ミリンド出演 マードゥリー・ディークシト シャー・ルク・カーン ディーパク・ティジョーリー (カラー/170分/インド映画/ANJAAM)
2008.02.12
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大の男が生きる上で培った確固たるものを若い娘に揺るがされる。 元々ある弱さか、ロマンチストなのか、掴み所のない存在はふとした胸の隙間に入り込むのか。深層心理はどうあれ、そうなる人ならない人がいるとすれば、わたしは前者に惹かれる。 だからだろうか、教師と生徒の恋愛を扱った作品が好きなのは。 時代的な潔癖さが漂う恋愛劇は意外にセンセーショナル。昨今の映画にはない生々しさがあった。 頼りになりそうな好男子の間崎が、あっさりと女生徒に肩入れしていく姿はくすぐったいけれど、その後待ち受ける現実は鮮烈で、怖い作品になっている。 飲み屋を経営する母の、私生児として生まれた江波恵子。男に頼ってしか生きられない母を見ながら育った彼女の、複雑な心はわかってあげられる。 「女の幸せは、男の方からしかいただけないのでしょうか...」 真剣な瞳で質問を投げかけてくる恵子の、健気な気丈さも弱さも屈託なさも深い悩みも若さも、みんなひっくるめて魅力的。 慕われればつい心を許してしまっても仕方がないとおもえる。 けれど、それにはどれほどの覚悟がいるのかを、同僚の女教師・橋本が言うように理解しきれなかった間崎。 彼の苦悩は、橋本と江波の嫉妬でさらに深くなってゆく。一つの生涯に入らんためには 他の生涯において死ななければならない アナトール・フランス ラストの字幕、その通りの結末と言っていい。 原作とは違ってくる中盤からの、恵子の狂気と間崎の変貌ぶりについていけず、多分にがっかりして終わったはずなのに、あとからあとから湧いてくるのは、凄まじい映画だった―という好感触なのがおもしろい。 市川崑作品とはことごとく相性が良いのだ。監督 市川崑 製作 藤本真澄 原作 石坂洋次郎 『若い人』 脚本 内村直也 和田夏十 市川崑 音楽 芥川也寸志 出演 池部良 久慈あさみ 島崎雪子 杉村春子 小沢栄 (モノクロ/114分)
2008.02.11
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これは面白い!愛を感じますね~。いろんな雑誌でのお二方の対話は、1976年『キネマ旬報』から始まり、1984年『現代小説』の‘84年度洋画ベストテンでおわります。全部あわせたら300~400近い映画タイトルが登場しているのではないでしょうか。前半話題に上る映画は古く、知らない作品ばかりですが、ただ読んでいるだけでも楽しいからよし!(大半は現在観られない映画の話だった)淀川さんは、来年生誕100年を迎えられる1909年の生まれ。池波さんは1920年の生まれ。御二方ともすでに永眠されています。対話のなかで淀川さんは「もう死ぬ」と何べんも仰っていて、池波さんが「私も死ぬ」というと「あんたはまだ来たらダメよ」なんて(笑)冗談ばかりですが・・・結局は池波さん、淀川さんより8年も早く逝かれたんですね。映画の創生期から、ずっと映画を観続けてきた人の言葉は、どんな映画評とも違った魅力でいっぱいです。詳しいのみならず、思い入れの深さも背景もわかった上で、映画を達観できることが素晴らしい。どんな映画にも、なにか答えることができたら、誰とでも話ができる。話したい作品について、必ず相手が応えてくれる二人の関係は羨ましいほど。年月が経てば映画の数はうなぎ上り。たとえば100年後に生まれる子どもたちは、淘汰されて残った名画を拾うようにして観ていくんだろうな。いま私が観ているのより、もっと淘汰されて。そう考えたら、生まれたばかりの映画と一緒に生きてこられた淀川さんや池波さんが、ほんとうに羨ましく思えます。こんなラッキーな御仁は、もう生まれない。驚くほどいっぱいの映画をごらんになってきた二人は、会話も粋でした。淀川さんの独特な口調がそのまま文字になっていて、ある意味すごい(笑)脈絡のなさというか、助詞・助動詞間違ってませんか? と思うんだけどそれがないと淀川さんじゃなくなっちゃう。漫才でもされてるのかという会話は、一読の価値ありな一冊でした。とくに笑った箇所をおひとつ。 淀川 「あなた夢ご覧になる?」 池波 「ほとんど見ますね。見ない日はないくらい」 淀川 「あ、そうですか。あんたのような健康な人が」 池波 「いや、よく夢は不健康のもととか言うでしょ、ウソなんですよ。健康にはさしさわりないんです」 淀川 「まあ、そうですか。あなたピンク色だね、顔がきれいだねえ、まアほんとうに(笑)」 池波 「淀川さんもピンク色ですよ」 淀川 「いいえ、私は死期が迫ってるから」
2008.02.10
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よく作られた作品でした。実際にヒトラーの秘書をしていた女性の証言をもとに、その最期とドイツの敗戦までを描きます。当時を描いた近年の佳作といえば『シンドラーのリスト』。こちらは、人々が虫けらのように殺され、あまりの冷酷さに再度見返すことが難しいほどの映画でした。本作はノンフィクションでありながら、映画らしいドラマを演出した、人を選ばない、より幅の広い作品になっていました。それでいて考えさせることができる。(あらすじ)1942年、トラウドゥル・ユンゲは数人の候補の中からヒトラー総統の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで彼女は、冷静さを失い狂人化していくヒトラーを目の当たりにするのだった・・・・。 人類史上屈指の残忍な男に残されている人間性が、見事に表現されていました。秘書のユンゲや恋人には、優しい顔と弱さを見せていたヒトラー。神経質に怒鳴りちらす、血も涙もない男のもうひとつの一面に、つい引き込まれていきました。ブルーノ・ガンツの名演がただただ素晴らしいというものあるけれど、人間として好奇心に駆られる人物像であることはたしかでした。その好奇心でもって、総統の秘書となったのが当時23歳のトラウドゥル・ユンゲ。地下要塞で過ごした彼女はずっと、大虐殺やドイツ市民の無残な死を、自分と結びつけることができなかった――そう冒頭で証言します。それでも「若さのせいにしてはいけない」と、おばちゃんになった彼女は締めくくります。半分ドキュメンタリーであるぶん、重さが違う。この言葉の重さは『シンドラーのリスト』で生き延びたユダヤ人が画面に映し出されたのと同じだと思う。総統を取り巻く人々の描写も、複雑でありながら見事。実在の軍人が辿った、たくさんの波乱の生涯や功績や非情さ。事実だと思うからこそ、目を背けられません。巧みによく描ききっていると感心するのみでした。残虐さをあえて見せるか、見せないか。見せないで表現するほうがよほど難しいと思う。いかに死に様が恐ろしくても、あえて見せずに撮る方法を選んだシーンは、絶妙に選ばれていて、監督の手腕を感じます。観て良かった。恐ろしいなかに、うっすらと横たわるユーモアが素晴らしい。禁煙である要塞での煙草の扱いかた、乱痴気騒ぎが物語る様も見事です。監督は『es[エス]』が鮮烈だった、オリヴァー・ヒルシュビーゲル。監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル 原作 ヨアヒム・フェスト 『ヒトラー 最期の12日間』 トラウドゥル・ユンゲ 『私はヒトラーの秘書だった』 脚本 ベルント・アイヒンガー 音楽 ステファン・ツァハリアス 出演 ブルーノ・ガンツ アレクサンドラ・マリア・ラーラ ユリアーネ・ケーラー トーマス・クレッチマン (カラー/155分/ドイツ・イタリア合作/DER UNTERGANG)
2008.02.08
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「レッド・バイオリン」がミステリアスで良かったフランソワ・ジラール監督の最新作。9年ぶりの新作です。前作に同じく、にわかにミステリアスな物語。2時間弱に詰め込まれる中身が膨大で、そこに巧さを感じますが、結果後に残るものが薄いのは前作に同じ。監督にわかっていても、観客には伝わっていない、そんな感じです。(あらすじ)19世紀のフランス。戦争帰りの青年エルヴェ(ピット)は美しいエレーヌ(ナイトレイ)と結婚し幸せの只中にいた。彼の住む村では製糸工場が稼働するが、やがて蚕の疫病が発生してしまう。そこでエルヴェは、世界で最も美しい絹糸を吐く蚕の卵を求め、果てなく遠い日本へと赴く役目を任される。辿りついた日本は幕末の時代。裏の顔を持つ蚕業者・原十兵衛が治める村で、十兵衛の妻として仕える少女と運命的な出会いをしたエルヴェだったが―――。 まず、主人公がフランス人なのに英語を話しているところに違和を感じました。珍しいことではないけれど、作品によっては言葉は大事ではないでしょうか。製作にアメリカは入ってないのだから、ハリウッド色の濃くない別の主役はいなかったのでしょうか。ジラールはカナダ人、英語じゃなきゃダメだったのかと思うと残念。前作はどうたったろう、もう忘れてしまった。愛し合う新婚夫婦。夫は危険な軍人をやめ、製糸工場を経営するやり手のバルダビュー(モリナ)に雇われ、蚕の卵を求めて遠い異国・日本へ旅立ちます。遥かなる陸路を進み、極寒の大地を横切り、数か月もかけて到達した未知の国・日本。言葉も風習もわからぬまま、世話になったのは村の蚕業者・原十兵衛(役所)の屋敷でした。そこで彼をもてなす、絹のように美しい十兵衛の妻(芦名)。出逢ってすぐ互いに惹かれあう二人でしたが、取引が終わり急いで帰国の途につかねばならないエルヴェは、日本語で書かれた一枚の手紙だけを受け取り、村を去るのでした。同じ旅がもう一度繰りかえされ、その度に夫婦の様子がほんの少しずつ変わっていく妙。ふたりの愛は変わらないのに、夫エルヴェの心には消えない恋慕があります。後ろめたさよりも、ただぬぐえない惹かれる思い。いつしか居ても立ってもいられず、日本人の未亡人(中谷)が経営する娼館を訪れ、手紙の日本語の意味を尋ねますが、それを知ったらなお更に、再び会いに日本へ行きたいという思いが募るのでした。危険な道であるのに、国情は悪化しているのに、もう一度日本へ行きたいと・・・子どもができないという悩みこそあれ、仲睦まじく愛し合っている夫婦は、蚕を手に入れたことで富み、新居や広い庭まで手に入れて幸せに暮らし続けます。庭園には花が咲き誇り、美しいふたりの愛の結晶のよう。軍人でなくなったあとも、まだ危険な人生を歩んでいるエルヴェは、平安以外のなにかを無意識のうち、求めていたのでしょうか。妻エレーヌがひとつの所から動かないのと反対に。彼女が行動を起こすのは、ただ一度だけでした。安らぎを愛す妻と、危険に突き進んでいってしまう夫、愛し合う二人の違いが仄かに切ない。後半、彼の元に送られてくる一通の日本語の手紙。日本から届いたその手紙を、再びエルヴェが訳すころ・・・三度目の渡日が決まるのでした。エレーヌの不安は募るのに・・・。妻が病に倒れてから、どことなくミステリアスにきた物語が大きく動きます。妻の愛、美しい女に惑った夫。どちらも「レッド・バイオリン」と同じく、ある出会いによって人生を変えられてしまう。けれど妻の愛が第一の見所なら、それは上手くいってはいません。日本でのシーンに大げさなものはないけれど、神秘と静寂が、フランスのシーンを霞ませていました。ふたつの世界はかけ離れていて、接点が薄れ、情緒が続かない。かといって日本でのシーンがすごくいいわけでもなく。原作は「海の上のピアニスト」の作者でもあるアレッサンドロ・バリッコ。きっと本は、もっと良いのでしょう。ドラマがあって浪漫があって。その浪漫を感じさせてくれるのは、ジラール監督の上手さでもあるのですが、今回は今ひとつ足りませんでした。娼館の未亡人を演じた中谷美紀は、以前読んだ彼女の著作で思ったとおり、見事な発音を披露していました。役所さんの英語は相変わらずお達者。こんな風に、日本人が海外の作品で活躍している姿を拝見すると嬉しくなります。反面、芦名星は、絹のようには美しくなかったかな~と思ったり。一目会って恋に落ちた、叶わぬ恋の苦しみというのが、彼女の涙からも演技からも伝わらないのは残念でした。今回あらためて気づいたのは、キーラ・ナイトレイがあまり好きじゃないこと。若さがないよね、若いのに!「穴」で初めて観てから良さがわかりません。マイケル・ピットはディカプリオに似てる。タイプじゃないのは丸顔だからでしょうか。主演に対する思いいれもないからか?余計に辛口なのでした。この作品、ジラール監督と気付かなければ、きっと劇場では観ていませんでした。監督 フランソワ・ジラール 製作 ニヴ・フィックマン ナディーヌ・ルケ ドメニコ・プロカッチ 酒井園子 原作 アレッサンドロ・バリッコ 『絹』 脚本 フランソワ・ジラール マイケル・ゴールディング 撮影 アラン・ドスティエ 編集 ピア・ディ・キアウラ 音楽 坂本龍一 出演 マイケル・ピット キーラ・ナイトレイ 役所広司 芦名星 中谷美紀 アルフレッド・モリナ 國村隼 (カラー/109分/カナダ・イタリア・フランス・イギリス・日本合作/SILK)
2008.02.06
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もとはTVドラマだった10篇の短編が、のちに質の高さから劇場公開に至ったキエシロフスキの『デガローグ』。ワルシャワ郊外の住宅地を舞台として、旧約聖書の十戒をモチーフに、様々な人間模様を綴ります。DVDにはそれぞれに2話ずつ収録されています。『ある運命に関する物語』 (あらすじ)世の中のものすべてが数字で解釈できると信じる大学講師の父と、その考えを楽しみ父を尊敬する息子と、信心深い伯母。この三人に運命の日が訪れる―――。 確かなものはなにもないという、監督の率直な表現を真摯に受け止めるだけ。主人公たちが、無言で語るその言葉の多さは、きっと他に類をみないほどです。暗くて静かでも、作品から視線を離せない、キエシロフスキの手腕に溜め息がでます。素晴らしい。「死とはなに?」そう尋ねる少年に、父は答えます。「魂はほんとうはないんだよ。あると考える方が楽なだけさ。死んだ後に残るのは、その人が生きた記憶・・・」この会話がそのまま伏線になって、不穏な空気が流れ始める。神を信じない合理主義の弟(父親)と、それに倣う息子に、伯母さんは疑問を投げかけています。ほんとうに、神はいないのかと。クリスマス間近のある寒い日。早く池でスケートがしたいと、親子は方程式で氷の厚さをはじき出します。翌日、夕方になっても帰らない息子を案じながら、父は昨夜の計算が誤りであったことに、気づき始めるのです。運命の誤差を。息子の命と引き換えに彼が得たものは、なんだったのだろう。なにもかもが数字ではじき出せると信じる彼が、予感というものに頼ったことが印象に残ります。『ある選択に関する物語』 (あらすじ)主人公である医者の前に現れる婦人。彼女はアパートの上階に住む人妻で、彼が診るガン患者の妻でした。彼女は夫の死期は近いのか、それとも助かるかと幾度も詰め寄ります。ある理由を抱えて―――。 孤独な医者と、奔放に生きてきたらしい人妻。二人は水と油のように、交わることが難しい。医者は彼女を助けたいと心から思うことはできないし、理解もしきれない。彼女は利己的で、目下の決断を下すことさえ、まともにできないほど混乱しています。夫以外の相手と関係を持ち、いま身篭っている人妻。病院のベッドで病に臥せる夫の、回復の確立を知りたくて仕方ありません。堕胎を決めかねて悩み、ついには医者に何度も詰め寄るのでした。この選択は究極。死ぬなら産む、生きるなら堕ろす。同情の余地ない彼女の行いと決断は、やはり誤った選択をしてしまいます。“神様の罰が当たった”もしも神がいるのなら、そう言われるような結末。監督 クシシュトフ・キエシロフスキ 製作 リシャルト・フルコフスキ 脚本 クシシュトフ・キエシロフスキ クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 撮影 アンジェイ・ヤロシェヴィチ 音楽 ズビグニエフ・プレイスネル (カラー/567分/DECALOGUE)
2008.02.03
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原作を読んだ相方が面白いといい、次は映画、というので便乗して一緒に観ました。帰省する前に観たので、ずいぶん経ってしまいましたが、それから原作を読んだので合わせて感想を書いてみますこの映画が気になったのはトヨエツブーム(笑)と、「ユリイカ」の青山真治監督だったから。けれど、先の読めないミステリーにはなっていても、人間ドラマがかなり薄れてしまった感があり、原作を先に読んだ方には別物になっている、そう言われても仕方ない出来でした。ほとんど前情報がなく観ても、途中眠たくなって。「ユリイカ」は偶然の佳作だったのかな、青山監督。(あらすじ) 中学受験を控えた家族が、塾の講師・津久見(豊川)を招き、湖畔の別荘で勉強合宿を開く。家族とは別居中の並木俊介(役所)も、妻・美菜子(薬師丸)と子どものため、合宿に参加していた。そんな俊介に、仕事仲間で愛人の英里子が突然別荘に会いにきた。その夜、別荘のリビングで彼女が殺されているのが発見され、美菜子が犯行を告白するが、スキャンダルを恐れた他の親たちは、積極的に事件の隠ぺい工作を進めるのだった・・・。 美菜子は再婚で、俊介と娘に血の繋がりはありません。それでも父親としての努力をしてきたつもりの俊介。湖畔の別荘に来て、とんでもない事件に巻き込まれて、来る前には考えてもみなかった未来を選ぶことになる―――そこがおもしろい所。映画ではうまく表現できていませんが、見えない真実に翻弄されます。異常な状況で物語は進んでいく。身元をわからなくするため、死体の顔を潰したり、指紋を焼いたり。異常な連帯感のなかで、犯罪は重ねられていきます。率先して指揮する藤間役には、柄本明。彼の淡々とした喋りがよく似合う。原作のイメージと同じでした。完璧に、なかったことにしたはずの事件。でも真実は、意外なところから浮かびあがり、驚きの結末を迎えるのです。自分の子どもの心でさえ、わかることが出来ない親たちの情けない姿が炙り出される。殺された愛人が持っていた写真の伏線も、おそろいの靴に隠された伏線も、映画のなかで削られた部分を補足できてはいなくて、隠された本当の意味は本を読んでから、わかりました。裏口入学についてのあれこれも、ずいぶん端折っているので、お粗末な作品と思ったのも無理はないでしょう。普通のミステリーで、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。原作は単なるミステリーでは終わらず、真実がわかったからこそ、主人公がある決意をするところで締めくくられています。一気に読める本でした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 青山真治 原作 東野圭吾 脚本 青山真治 深沢正樹 音楽 長嶌寛幸 出演 役所広司 薬師丸ひろ子 柄本明 黒田福美 眞野裕子 豊川悦司 (カラー/118分/R15)
2008.02.02
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美しい姉と、おデブちゃんな妹。憎みながらも愛し合う、ふたりの姉妹の休暇には、甘い恋と意外な結末が待ち受ける。相手を見つめれば自分が見えてくる―――。初体験の相手はだれでもいい、と話すのは妹。初めての相手は愛する男(ひと)と、そう話すのは美しい姉。似ていない姉妹が辿る初体験を軸に、前半と後半が別の映画のようなタッチで描かれた異色作。監督は性を描いた作品が多いという、女流監督カトリーヌ・ブレイヤ。 海辺の町にバカンスにやってきた一家。年頃の二人の娘は、どちらが早く初体験の相手をみつけるかに夢中だ。姉のエレナは、カフェで知り合ったイタリア人青年と恋に落ち、順調に親密になっていくけれど、妹のアナイスは空想の恋で遊ぶばかり、、。当然、姉に嫉妬するけれど、同時に、誰よりもエレナの身を案じているのはアナイスなのだった。エレナの初体験を寝たふりで盗み見る、アナイスの涙にドキンとさせられる。怒涛の変化を遂げていく中盤。彼の贈った指輪が、母親の宝石箱から盗んだ高価なものだとわかり、大人たちは無理矢理ふたりを引き裂こうとする、あれよあれよと悲劇へむかって物語は突き進んでいく―――。伏線が見事で、いい意味で予測のつく展開をしていった。高価な指輪も、運転の苦手な母も、ロックした車での居眠りも。アナイスのとったラストの行動は良くできていて感嘆ものだった。彼女の歌う暗い歌が、物語を盛り上げている。本国ではこれはどういう位置づけの曲なのだろう、すてき。 ♪腐りかけた心臓を 窓辺におこう カラスよ ついばみにおいで 来世を信じているから カラスよ ついばみにおいで 尖った 黄色のくちばしで なにを 蘇らせるの? 腐りかけたった心臓を 窓辺におこう以前、「ラスト・ショー」で書いたけれど、ロストバージンの描き方の違いが、国柄でこんなふうにも変わるのが面白い。私は断然こちらの描き方が好きだ。若者の心、姉妹のなかで育ってきた光と闇。意外と純粋さを感じていたのに、怖ろしいラストが待っている。† † †監督・脚本 カトリーヌ・ブレイヤ 製作 ジャン=フランソワ・ルプティ 共同製作 コンチータ・アイロルディ 撮影 ヨルゴス・アルヴァニティス 出演 アナイス・ルブー ロキサーヌ・メスキダ リベロ・デ・リエンゾ (カラー/86分/フランス・イタリア合作/A MA SOEUR !) 死ぬまでに見たい映画1001本に選ばれています。
2008.02.01
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