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松村進吉「立ってろ」高校3年、西尾君の体験。ある日の数学の小テストの最中、後方から彼の頭上を越えて 『ビュンッ』と、1本の鉛筆が黒板の方向へ飛んで行った。それは凄い勢いで回転しながら、一直線に教卓に命中。教室中に 『バシンッ』 という乾いた音を響かせた。『・・・・誰だ!』教卓から立ち上がった教師と、運悪く1番最初に目を合わせてしまったのが他ならぬ西尾君であった。『・・・・お前か。お前の方から飛んできたな、西尾』『いや。違います』『違わないよ。もうテストはいいから、後ろに立ってろ』『ええっ?』『ったく、この馬鹿が・・・・。こんな大事な時期に・・・』突き放すような口調に、これ以上の抗議は無駄と悟った。クラスの連中は、呆れた様子だった。西尾君は全く腑に落ちないまま、数歩後ろに下がった。彼の席は最後列だった。
2014.09.21
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久田樹生「東北より」タクシー運転手に従事している運転手が言う。『夜は海岸付近でお客様を乗せません』乗せたらいつの間にか消えている、という話ではない。客を乗せ、目的の場所まで行けば帰りはひとりになる。そういう時に限って、海岸線の近くを通ることになってしまうことが多い。そんなとき、空のはずの後部座席に沢山の人影が見えるのだ。『だから、夜、海岸近くではお客様を乗せないんです』何故、影たちがタクシーに乗るのかは分からない。
2014.09.08
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加藤一「しゃせー」今はいぶし銀の男前になっている真さんは、若い頃は新宿の有名ホストクラブのナンバーワンだった。ホストの世界では1日でも早く入ったほうが先輩。後輩の接客は先輩が教える。挨拶もできないような奴もいるので、挨拶から教える。その店では、挨拶が完璧な奴がカウンターにいた。ホストが出勤してくると 『しゃせー』 と頭を下げてお辞儀をする。お客様が入店すると、これまた『しゃせー』と頭を下げる。店の人間は、この挨拶を手本としている。そいつは深々と頭を下げると、その姿勢のままじわじわ薄くなって消えてしまう。カウンターからは1歩も出ない。『彼、指名はできないの?』と戯れに訊ねてくる客もいる。
2014.09.07
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