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周囲の女房から『思慮が深い』などとおだてられて、その気になると、
やがて尼にまでなってしまいます。
出家を思い立った時にはたいそう心が澄んだような気になり、
還俗するような気も起りません。
ところが、見知った人が、
「まあまあ、出家とは何と悲しいことでしょう。
このような尼姿になろうとは、またよくも決心なされたものですわね」
などと慰問し、そのついでに、男が女の出家を聞きつけて涙したという話をすると、
女のそばに仕える人や古い女房達も、
「男君の御心ざしは深かったものを、あたら尼になどおなりになって」
など言いますので、
女は思わず額髪をかき探り、短く切ってしまった軽率さにべそをかくことになるのです。