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「風が吹くまま」 アッバス・キアロスタミ監督作品
埃っぽい茶色な道を一台の古い車が走っている。
時々車内の会話が聞こえるが、どこを目指し、何が目的で走っているのか分からない。
音楽もまったくなし。
見ていくうちに3人の撮影隊が、
クルド人の小さな村の風変わりな葬式を取材に来たことが分かってくる。
100歳を過ぎたばあさんが死にかかっているという。
額の禿げあがった、どこか禿鷹に似た男が主人公だ。
彼は2日の日程で、葬式を撮影するらしい。
ところがそのばあさんは2日どころか2週間たっても死なず、
結局禿鷹は退散することになる。
その間の、村人たちとの交流を描いたフランス・イラン映画。
禿鷹風貌の主人公は携帯に連絡が入るたびに、電波状況の良い高台の墓地まで
埃の舞う道を、いちいち車を飛ばして上らなくてはならない。
葬式を待っているわりには自分の身内の葬式には「帰れない」と無関心だし、
葬式を撮りたいはずなのに、生き埋めになった村の男を救おうと奔走する。
このあたりに、辻褄の合わない人間の心の滑稽さがあっておもしろい。
彼は言う。
「人は自動車と同じで、働きすぎても暇すぎてもいらいらして、オーバー・ヒートする。
暇は人をダメにする」
映画の中で、「フルーク」の詩が読まれる。
~~~~~★~~~~~
私の小さい夜 風と木の葉が逢瀬する。
私の小さい夜 壊れる恐怖が潜んでる。
聞いて 暗闇のささやきを
この幸せは まるで他人事
私は不幸に慣れてしまった。
聞いて 暗闇のささやきを。
何かの前兆か 月は不安げに赤く
今にも壊れそうな屋根の上では
まるで葬列に加わる人々のように
雲が雨の誕生を待っている。
それはほんの一瞬の期待。
外では夜が震えてる。
地球は回転を止める。
窓際で見知らぬ自分が
あなたと私の心配をしてる。
緑のあなた
思い出に燃える手を 私の手に置いて
命の温もりにあふれるくちびるを
私の恋するくちびるに重ねて
風が吹くまま
心は風のままに
~~~~~★~~~~~
この魅力的な詩のタイトルが、映画の題名らしい。
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