私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

August 17, 2012
XML
カテゴリ: 源氏物語

[源氏物語] ブログ村キーワード

思慮深い人に相談しても陰陽師などに占わせても、

「やはり源氏の大臣のおん元へお移りなされたほうが、姫君のご運勢は好くなるでしょう」

とばかり言いますので、姫を手離すまいとする気持が次第に揺らぐのでした。

おとどもそのようにお考えでしたが、
明石の女君のお気持ちを思いますと気の毒ですので、無理にとは仰せにならず、
ひと言だけ「おん袴着のことは、どうなさいますか」と御消息をお遣りになりました。
お返事には、

「何事につけ不甲斐ない身の私のもとにお引き留め申しましては、
ほんに姫君のご将来もお気の毒のように思われます。

されど田舎者ゆえ、二条院に参りましても物笑いの種になろうかと存じまして」

と申し上げますので、ひどく可哀想にお思いになります。

源氏の大臣は転居の日を陰陽師に占わせ、
しかるべき用意をこっそりとお命じになります。

明石の女君は、いとし子を手離す事はひどく辛いのですが、
『姫君の御ために好いと思う事だけをしよう』と堪えています。それでも、

「乳母ともお別れなのですね。
明け暮れの物思わしさも所在なさも、互いに親しく話し合って慰めてきましたのに、
姫君ばかりか乳母までもが二条院に行ってしまったならば、
どんなに悲しく寂しいことでしょう」

と、明石の女君が泣きます。乳母も、

「そういう宿縁なのでございましょうか。

思いがけずお仕え申すことになりましてから、
あなたさまのご親切が忘れ難く恋しく思われますので、
これからもご縁が絶えることは決してないと存じます。

いつかはきっとまたご一緒にと頼みに思っておりますが、
しばらくの間にせよ思いがけない所でお仕えいたしますのが心配でございます」

と、泣きながら過ごすうち、十二月になりました。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 4, 2017 11:14:29 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: