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そう申し上げますと、大宮はため息をおつきになって、
「ほんにここまで深くお考えになってのことでございましたか。
そうとは知らず、右大将なども『六位とは、あまりにひどい』と首をひねっておりました。
若君も幼心にたいそう口惜しいようでございます。
大将や左衛門督の子どもなど見下しておりました者たちが、
皆それぞれ位が上がって一人前になっているというのに、
自分は六位の浅葱色の袍であることを『ひどく辛い』と思っているようでございまして、
それが可哀想で」
と申し上げます。源氏の大臣はお笑いになって、
「一人前に私を恨んでいるのですな。何と思慮のない若輩者でございましょう」
と、可愛くお思いになります。
「学問などして、少しは物の分別がつくようにでもなりましたら、
自ずと分かることでございましょう」
と大宮にお話申し上げます。
入学に際して字を作る儀式は、二条院の東の院でなさいます。
貴族の子弟が大学へ進学することは稀ですので、
上達部、殿上人たちが我も我もと参集なさって、従五位下の文章博士たちでさえ、
反って気後れがするほどなのです。
「私の子であっても遠慮せず、法式の例に従い厳格に実施せよ」
との仰せがありましたので、博士たちは無理に冷静を装い、
身に着かない借り衣装の不格好な姿で恥かしげもなく、
面もち、声使いももっともらしく振舞います。
並んで座に着く作法から始まり、君達には何から何まで初めて見る事ばかりなのでした。